JP2004338326A - インクジェット記録装置およびその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】再分極処理が必要な時期を正確に見極めて適切な時期に再分極処理を行うことができるインクジェット記録装置およびその制御方法を提供することである。
【解決手段】圧電セラミック層12、該圧電セラミック層12の一方の表面に配置された共通電極14および圧電セラミック層14の他方の表面に配列された複数の個別電極15を備えた圧電アクチュエータ16を有するインクジェット記録ヘッド11と、圧電セラミック層12における個別電極15が配列された面と同じ面に、個別電極15と共通電極14との間の静電容量を検査するために設けられた検査用電極21と、この検査用電極21による検査結果に基づいて再分極処理が必要であると判断された場合に、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧を印加して圧電セラミック層12を再分極する再分極処理手段とを備えたインクジェット記録装置およびその制御方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】圧電セラミック層12、該圧電セラミック層12の一方の表面に配置された共通電極14および圧電セラミック層14の他方の表面に配列された複数の個別電極15を備えた圧電アクチュエータ16を有するインクジェット記録ヘッド11と、圧電セラミック層12における個別電極15が配列された面と同じ面に、個別電極15と共通電極14との間の静電容量を検査するために設けられた検査用電極21と、この検査用電極21による検査結果に基づいて再分極処理が必要であると判断された場合に、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧を印加して圧電セラミック層12を再分極する再分極処理手段とを備えたインクジェット記録装置およびその制御方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット方式のプリンタおよびその制御方法に関し、より詳しくはインクジェット記録ヘッドに圧電アクチュエータを有するインクジェット記録装置およびその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータの普及やマルチメディアの発達に伴って、情報を記録媒体に出力する記録装置として、インクジェット方式のプリンタの利用が急速に拡大している。かかるプリンタにはインクジェット記録ヘッドが搭載されている。このインクジェット記録ヘッドとしては、ヘッドの小型薄型化が容易で、高精度の印字が可能になり、電気信号に対する応答速度が10−6秒台と非常に高速であるという点で、圧電方式が広く用いられている。
【0003】
この種のインクジェット記録ヘッドは、一般に、積層された複数の圧電セラミック層と、該圧電セラミック層の間に配置された共通電極と、最上層の前記圧電セラミック層の表面に配列された複数の個別電極とを備えた圧電アクチュエータを、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に、インク流路と個別電極との位置を揃えて取り付けたものである。そして、共通電極と所定の個別電極との間に駆動電圧を印加して個別電極直下の圧電セラミック層を変位させることにより、インク流路内のインクを加圧して、流路部材の底面に開口したインク吐出孔からインク滴を吐出する。
【0004】
上記の圧電セラミック層は、印加される駆動電圧に応答して変形するように、予め分極処理が施されている。分極処理は、通常、圧電セラミック層に高電圧を印加することにより内部の電気双極子を一方向に揃えることによって行われる。
【0005】
ところが、圧電アクチュエータの製造工程では、圧電セラミック層を分極した後で、寸法調整のための加工や接着剤の硬化のための加熱などにより圧電セラミック層が高温になることによって、圧電セラミック層の分極状態が悪影響を受け、分極状態が劣化して圧電アクチュエータの圧電特性が低下するという問題があった。
【0006】
この問題に対して、特許文献1には、圧電セラミック層の分極状態に影響を及ぼす処理を行った後に圧電セラミック層に分極処理を施すことが提案されている。この特許文献1に記載された方法によれば、最適な状態に分極処理された圧電セラミック層を得ることができるとされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法ではインクジェット記録装置を製造した直後には良好な圧電特性を示し優れた画質の印刷を行うことができるものの、製品出荷後には周囲の様々な環境から影響を受けるため、時間の経過とともに圧電セラミック層の分極状態が劣化して画質が低下するという問題がある。
【0008】
この問題に対して、特許文献2および特許文献3には、圧電セラミック層に分極電圧を印加して圧電セラミック層を再分極する再分極処理手段を備えたインクジェット記録装置が開示されている。これらの特許文献2および特許文献3に記載されたインクジェット記録装置によれば、製品出荷後に時間の経過とともに圧電セラミック層の分極状態が劣化した場合でも、圧電セラミック層を再分極して圧電特性を回復させることができるので、画質を良好な状態に維持することができるとされている。
【0009】
また、上記特許文献3には、前記再分極処理手段に加えて、さらに圧電アクチュエータの静電容量を測定する測定手段(静電容量センサ)を備えたインクジェット記録装置が提案されている。このインクジェット記録装置では、静電容量センサからの検出信号に基づいて圧電アクチュエータの静電容量が予め定めた基準値以下か否かをチェックし、静電容量が低下して基準値以下となっているときには再分極処理を行う。このインクジェット記録装置によれば、上記のように静電容量の測定結果に基づいて再分極処理を行うようにすることで、再分極回数を少なくすることができ、無駄を省けるとされている。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−193623号公報
【特許文献2】
特許第3024533号公報
【特許文献3】
特開平9−141859号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3には、上記測定手段として静電容量センサ(特許文献3の図4参照)という語句が記載されているのみであり、具体的な測定手段はなんら記載されておらず、具体的にどのようにして静電容量を測定するのか明確ではない。
【0012】
本発明の目的は、再分極処理が必要とされる時期を正確に見極めて適切な時期に再分極処理を行うことができるインクジェット記録装置およびその制御方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、個別電極が配列された面と同じ側の圧電セラミック層の表面に個別電極とは別に設けた検査用の電極と共通電極との間の静電容量値が、個別電極と共通電極との間の静電容量値と高い相関性を有するという知見を得た。この知見に基づいて、本発明者らは、検査用電極と共通電極間の静電容量の測定結果を基にすれば、個別電極と共通電極との間の静電容量を正確に把握し圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かを正確に見極めることができるので、適切な時期に再分極処理を行うことができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明のインクジェット記録装置およびその制御方法は、以下の構成からなる。
(1) 圧電セラミック層と該圧電セラミック層の一方の表面に配置された共通電極と前記圧電セラミック層の他方の表面に配列された複数の個別電極とを備えた圧電アクチュエータを有するインクジェット記録ヘッドと、前記圧電セラミック層における前記個別電極が配列された面と同じ面に、前記個別電極と前記共通電極との間の静電容量を検査するために設けられた検査用電極と、この検査用電極による検査結果に基づいて、前記個別電極と前記共通電極との間に分極電圧を印加して前記圧電セラミック層を再分極するための再分極処理手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
(2) 前記検査用電極が、前記圧電セラミック層の表面の相互に離隔した複数箇所に設けられている(1)記載のインクジェット記録装置。
(3) 前記検査用電極が、四角形の前記圧電セラミック層の四隅に設けられている(2)記載のインクジェット記録装置。
(4) 前記分極電圧と、印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧とが同じ電源から印加されるように配線されている(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
(5) 前記圧電アクチュエータの厚みが100μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法であって、前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この計測結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極が必要であると判断された場合に前記個別電極と前記共通電極との間に分極電圧を印加して前記圧電セラミック層を再分極することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
(7) 印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧が引き打ち方式であり、前記分極電圧が前記駆動電圧の1.2〜5倍である(6)記載のインクジェット記録装置の制御方法。
(8) 印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧が押し打ち方式であり、前記分極電圧が前記駆動電圧と略同一かそれより大きい(6)記載のインクジェット記録装置の制御方法。
(9) 前記分極電圧の印加時間が10秒以下である(6)〜(8)のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法。
(10) 前記分極電圧が15〜50Vである(6)〜(9)のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【0015】
前記(2)記載のインクジェット記録装置によれば、前記検査用電極が圧電セラミック層の表面の相互に離隔した複数箇所に設けられているので、静電容量の検査精度がより向上する。
【0016】
前記(3)記載のインクジェット記録装置によれば、圧電セラミック層の四隅、すなわち圧電セラミック層のデッドスペースに検査用電極を配置することで、個別電極の配列の妨げになることがないので、圧電アクチュエータを小型化・高集積化する上で弊害が生じず、スペースを有効利用することができる。また、圧電アクチュエータは、個別電極が配列されている部分以外に余白が多く存在すると、焼成後に反りが発生しやすいが、上記のように四隅の余白に検査用電極を配置することにより、反りが生じるのを抑制することができ、圧電アクチュエータの寸法精度も向上する。
【0017】
前記(4)記載のインクジェット記録装置によれば、駆動電圧と分極電圧の電源が共用されているので、電源コストの上昇を抑制でき、装置の小型化に寄与できる。
【0018】
前記(5)記載のインクジェット記録装置によれば、圧電アクチュエータの厚みが100μm以下と薄く形成されているので、駆動電圧および分極電圧を小さくでき、電源の小型化と省電力化を実現できる。
【0019】
前記(6)記載のインクジェット記録装置の制御方法によれば、検査用電極と共通電極との間の静電容量の計測結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極処理が必要であると判断された場合に圧電セラミック層を再分極することによって、再分極処理を必要以上に行わなず、必要な時期にのみ行うことができるので、製品出荷後においても常に安定した圧電特性を得ることができるとともに、ランニングコストを削減することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置およびその制御方法について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット記録装置は、後述するインクジェット記録ヘッドを備え用紙への印字を行う印刷手段と、この印刷手段にインクを供給するインク供給手段と、プリンタの各部位に電力を供給する電力供給手段と、用紙を搬送する印刷媒体搬送手段と、インクジェット記録ヘッドにおける圧電アクチュエータ内に配置された個別電極と共通電極との間に分極電圧を印加して圧電セラミック層を再分極する再分極処理手段とを備えている。
【0021】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置に備えられたインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。図1に示すように、このインクジェット記録ヘッド11は、セラミック層13上に、圧電セラミック層12と、該圧電セラミック層12の一方の表面に配置された共通電極14と、圧電セラミック層12の他方の表面に配列された複数の個別電極15とを備えた圧電アクチュエータ16を、インク吐出孔17を有する複数のインク流路18が配列された流路部材19上に、インク流路18と個別電極15との位置を揃えて取り付けたものである。そして、共通電極14と所定の個別電極15との間に駆動電圧を印加して個別電極15直下の圧電セラミック層12を変位させることにより、インク流路18内のインクを加圧して、流路部材19の底面に開口したインク吐出孔17からインク滴を吐出することができる。
【0022】
また、インクジェット記録ヘッド11には、圧電セラミック層12における個別電極15が配列された面と同じ面に、個別電極15と共通電極14との間の静電容量を検査するための検査用電極21が設けられている。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録装置に備えられた再分極処理手段は、静電容量を検査する命令が出されたか否かの判断、再分極処理が必要か否かの判断、個別電極15と共通電極14間への分極電圧の印加などを行う図示しない制御系を備えている。図2は、この再分極処理手段により行われる再分極処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置では、前記制御系に備えられた中央処理装置(CPU)により静電容量を検査する命令が出されたか否かが定期的に確認され(S1)、検査命令が出されていないと判断された場合には(S1,NO)、静電容量の計測は行われない。一方、検査命令が出されたと判断された場合には(S1,YES)、検査用電極21と共通電極14との間の静電容量が計測される(S2)。
【0024】
次に、計測された静電容量の信号がCPUに送られ、この静電容量計測値が予め設定された基準値と比較されて再分極処理の要否が判断される(S3)。静電容量が基準値よりも大きいため再分極処理は不要であると判断された場合には(S3,NO)、再分極処理は行われない。一方、静電容量が基準値よりも小さいため再分極処理が必要であると判断された場合には(S3,YES)、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧が印加され、圧電セラミック層12が再分極される(S4)。
【0025】
本実施形態のインクジェット記録装置は、上記のような再分極処理手段を備えていることにより、分極状態を劣化させやすい劣悪な環境で使用され、比較的短時間で圧電特性が低下する場合であっても、その劣化を検知して必要な時期に再分極処理を行うことができるので、常に安定した圧電特性を得ることができる。
【0026】
図3は、インクジェット記録ヘッド11の駆動が引き打ち方式により行われる場合において、再分極処理時、待機時および駆動時(印字時)に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【0027】
引き打ち方式で圧電アクチュエータ16を駆動させる場合、図3に示すように、待機時には個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1を印加してインク流路18の容積を減少させておき、印字時には個別電極15と共通電極14との間の印加を停止してインク流路18の容積を増大させた後、再び個別電極15と共通電極14との間に駆動電圧V1を印加してインク流路18の容積を減少させることによりインク吐出孔17からインク滴を吐出させる。そして、次の印字までの間は、個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1を印加してインク流路18の容積を減少させたまま待機する。
【0028】
検査用電極21により静電容量が計測され、基準値よりも小さいため再分極処理が必要であると判断された場合には、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧V0が印加され、圧電セラミック層12が再分極される。引き打ち方式の場合、分極電圧V0は、駆動電圧V1の1.2〜5倍、好ましくは2〜4倍であるのがよい。分極電圧を駆動電圧よりも大きくすることによって、分極の信頼性を高めることができ、次に分極が必要になるまでの時間をより長くすることができるので、特に長時間使用する場合に好適である。また、引き打ち方式の場合には、上記のように待機時においても個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1が印加されているので、上記条件で再分極処理を行えば、長い間圧電特性が維持される。
【0029】
引き打ち方式における分極電圧V0の上限は、電源のサイズ等によるため特に限定されないが、好ましくは100Vとするのがよい。これにより、省電力化および小型化に寄与できる。また、個別電極15と共通電極14との間の距離、すなわち圧電セラミック層12の厚みを5〜30μm程度に薄くすることによって、分極電圧V0を50V以下に下げることができるので、電源のさらなる省電力化および小型化に寄与できる。分極電圧V0の下限は15V、好ましくは40Vとするのがよい。
【0030】
引き打ち方式における分極電圧V0の印加時間は、10秒以下、好ましくは2〜5秒であるのがよい。分極時間を10秒以下とすることで、再分極処理のための待ち時間が少なくて済む。再分極処理は、常温(室温)で行うことができる。
【0031】
なお、図3に示す引き打ち方式では、再分極処理を行った後で電圧の印加を停止し、ついで個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1を印加して待機状態に入っているが、図4に示すように、再分極処理を行った後、個別電極15と共通電極14との間に印加する電圧を分極電圧V0から待機電圧V1にしてそのまま待機状態に入るようにしてもよい。
【0032】
押し打ち方式で圧電アクチュエータ16を駆動させる場合、図5に示すように、待機時には個別電極15と共通電極14との間に電圧は印加されず、印字時には個別電極15と共通電極14との間に駆動電圧V2を印加してインク流路18の容積を減少させることによりインク吐出孔17からインク滴を吐出させる。そして、再度電圧の印加を停止して待機状態に入る。
【0033】
押し打ち方式の場合も引き打ち方式と同様に、静電容量が計測され、基準値よりも小さいため再分極処理が必要であると判断された場合には、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧V0が印加され、圧電セラミック層12が再分極される。押し打ち方式の場合、分極電圧V0は、駆動電圧V2と略同一かそれより大きいのが好ましい。押し打ち方式を採用することによって消費電力を低減し、再分極処理を効果的にかつ短時間で終了することが可能になる。
【0034】
押し打ち方式における分極電圧V0の上限は、電源のサイズ等によるため特に限定されないが、好ましくは100Vとするのがよい。これにより、省電力化および小型化に寄与できる。また、個別電極15と共通電極14との間の距離、すなわち圧電セラミック層12の厚みを5〜30μm程度に薄くすることによって、分極電圧V0を50V以下に下げることができるので、電源のさらなる省電力化および小型化に寄与できる。分極電圧V0の下限は15V、好ましくは40Vとするのがよい。
【0035】
押し打ち方式における分極電圧V0の印加時間は、10秒以下、好ましくは2〜5秒であるのがよい。分極時間を10秒以下とすることで、再分極処理のための待ち時間が少なくて済む。再分極処理は、常温(室温)で行うことができる。
【0036】
本実施形態のインクジェット記録装置では、分極電圧と駆動電圧とは、図示しない同じ電源(電力供給手段)から印加されるように配線されている。これにより、電源コストの上昇を抑制でき、装置の小型化に寄与することができる。
【0037】
圧電セラミック層12の材質としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT系)、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)およびニッケルニオブ酸鉛(PNN系)からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とする圧電セラミックスが好適である。圧電セラミック層12の厚みは、特に限定されないが、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは8〜15μmであるのがよい。
【0038】
セラミック層13は、絶縁性の高いものであれば良いが、圧電体であること、特に圧電セラミック層12と略同一の熱膨張率を有するものであることが好ましく、圧電セラミック層12と略同一の組成であることがより好ましい。これにより、同時焼成が可能となり、熱膨張差に起因して焼成時に発生する熱応力によって反りや歪みが生じるのを防止することが容易となる。セラミック層13の厚みは、特に限定されないが、80μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20〜50μmであるのがよい。また、圧電アクチュエータ16の総厚みは100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは30〜60μmであるのがよい。このように、総厚みを100μm以下にすることで、駆動電圧と分極電圧を小さくできるので、電源の小型化と省電力化に寄与できる。
【0039】
また、圧電セラミック層12およびセラミック層13は気孔率が1%以下、特に0.8%以下、更には0.5%以下であることが、インク等の液体の染み込みを効果的に防止でき、インク漏れを低減することができるので好ましい。
【0040】
共通電極14の材質としては、Ag、Pd、Pt、Rh、Au、Ni系材料の単独または2種以上の組み合わせが好ましく、特にAg−Pd系合金がより好ましい。共通電極14の厚みは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度であるのがよく、0.5〜8μm、好ましくは1〜3μmであるのがよい。
【0041】
個別電極15および検査用電極21の材質は、例えば上記した共通電極14と同様の金属を使用することができるが、特に電気抵抗および耐食性に優れるAuを使用するのが好ましい。個別電極15および検査用電極21の厚みは0.3〜5μm、好ましくは0.5〜2μmであるのがよい。特に、検査精度を向上させるという点で、個別電極15と検査用電極21の材質および厚みは同じであるのが好ましい。
【0042】
次に、圧電アクチュエータ16の製造方法について説明する。
(a) まず、前記した圧電セラミックスの粉末を用いてグリーンシートを必要枚数形成した後、このグリーンシートに貫通孔を形成する。
(b) ついで、貫通孔が形成されたグリーンシートにスクリーン印刷を用いて、ビア電極となる導体を充填するとともにグリーンシートの略全面に共通電極パターンを形成する。
(c) ついで、ビア電極パターンおよび共通電極パターンが形成されたグリーンシートに対して、共通電極パターンを狭持するように、グリーンシートを積層して積層体を形成する。
(d) さらに、この積層体を所定の形状に切断した後、900〜1100℃程度で焼成して圧電アクチュエータ本体を形成する。
(e) 最後に、この圧電アクチュエータ本体の表面に導電ペーストを印刷して所定の位置に検査用電極パターンおよび個別電極パターンを形成し、600〜850℃程度で焼成する。これにより圧電アクチュエータ16を得ることができる。なお、個別電極および検査用電極は、圧電セラミック層、共通電極およびセラミック層と同時焼成することもできる。
【0043】
次に、インクジェット記録ヘッド11の製造方法について説明する。
流路部材19は圧延法等によって得られ、インク吐出孔17およびインク流路18はエッチングにより所定の形状に加工されて設けられる。この流路部材19は、Fe−Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましく、特にインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましく、Fe−Cr系がより好ましい。
【0044】
圧電アクチュエータ16と流路部材19とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ16や流路部材19への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が130〜250℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ16と流路部材19とを加熱接合することができ、これによりインクジェット記録ヘッド11を得ることができる。
【0045】
<他の実施形態>
図6は、本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドの他の実施形態を示す斜視図であり、図7はその断面図である。図6および図7に示すように、このインクジェット記録ヘッド11aには、四角形の圧電セラミック層12の表面でかつ相互に離隔した四隅に、検査用電極21がそれぞれ設けられた圧電アクチュエータ16aが備えられている。なお、他の部位については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
図8は、本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドのさらに他の実施形態を示す斜視図である。図8に示すように、このインクジェット記録ヘッド11bの圧電アクチュエータ16bには、相互に離隔した四隅の他、中央付近にも、検査用電極21が設けられている。このように、検査用電極21を設ける部位は、特に限定されることはなく、任意の箇所に設定することができる。なお、他の部位については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
上記のようなインクジェット記録ヘッド11a,11bを備えたインクジェット記録装置では、検査用電極21が複数箇所に設けられているので、静電容量の検査精度がより向上し、圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かをより正確に見極めることができる。また、圧電アクチュエータ16aは、個別電極15が配列されている部分以外に余白が多く存在すると、焼成後に反りが発生しやすいが、上記のように四隅の余白に検査用電極を配置することにより、反りが生じるのを抑制することができ、圧電アクチュエータ16aの寸法精度も向上する。特に、インクジェット記録ヘッド11aでは、圧電セラミック層12の四隅、すなわち圧電セラミック層12のデッドスペースに検査用電極21が配置されており、個別電極15の配列が妨げられないので、圧電アクチュエータ16aを小型化・高集積化する上で弊害が生じず、スペースを有効利用することができる。
【0048】
なお、本発明では、圧電セラミック層の形状、並びに検査用電極の配置場所および個数は特に限定されるものではない。
【0049】
また、本発明のインクジェット記録装置では、検査用電極と共通電極間に分極電圧を印加してこの部位のみを分極し、分極された後の検査用電極と共通電極間の静電容量を計測し、計測された検査用電極と共通電極間の静電容量と、個別電極と共通電極間の静電容量とを比較することによって、分極の劣化状態を検知することもできる。
【0050】
さらに、本発明では、検査用電極により計測された結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極が必要であると判断された場合に再分極処理を行うだけでなく、所定の印字枚数毎、所定の稼働時間毎、プリンタ起動時などに自動的に再分極処理を行うようにしてもよい。また、プリンタまたはプリンタを制御するコンピュータ等の端末に、再分極処理を命令するボタンやスイッチを設けることによって、必要に応じてプリンタ利用者が再分極処理を開始させることもできる。
【0051】
【実施例】
以下、参考例および実施例を挙げて本発明のインクジェット記録装置およびその制御方法についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
参考例
チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする厚み15μmの圧電セラミック層と、この圧電セラミック層の一方の表面に配置された、Ag−Pd合金からなる厚み2μmの共通電極と、前記圧電セラミック層の他方の表面に複数配置された、Auからなる厚み1μmの個別電極とを備えた圧電アクチュエータである試料1および試料2を用いて、以下のようにして再分極処理の効果を調べた。
【0053】
すなわち、上記の圧電アクチュエータを0℃と60℃の雰囲気中にそれぞれ30分間曝露するサイクルを200サイクル繰り返した後、個別電極と共通電極間に20Vの分極電圧を印加して再分極処理を行い、分極電圧の印加時間とその時の静電容量を調べた。結果を表1に示す。なお、温度サイクル試験を行う前の試料1および試料2の静電容量(初期値)は、それぞれ2.70nF、2.66nFであった。
【表1】
表1から、試料1および試料2は、分極電圧を2秒間印加した時点で静電容量がほぼ初期値にまで回復していることがわかる。
【0054】
実施例
チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電セラミック層と、この圧電セラミック層の一方の表面に配置された、Ag−Pd合金からなる厚み2μmの共通電極と、前記圧電セラミック層の他方の表面に複数配置された、Auからなる厚み1μmの個別電極と、この個別電極と同じ面の隅に配置された、Auからなる厚み1μmの検査用電極とを備えた、図1に示すような構成の圧電アクチュエータ(試料3〜26)を作製した。各試料の圧電セラミック層の厚みおよび圧電アクチュエータの総厚みは表2に示す値となるようにそれぞれ調整した。
【0055】
次に、インク流路とインク供給孔をエッチングによって形成したFe−Cr系金属からなる板と、同じくインク吐出孔をエッチング法によって形成したFe−Cr系金属からなる板を熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤にて接着し流路部材を得た。ついで、この流路部材のインク流路開口面側に熱硬化性のエポキシ接着剤を塗布し、上記の圧電アクチュエータをインク流路と個別電極とが揃うように位置決めし、図1に示すようなインクジェット記録ヘッド(試料3〜26)を作製した。
【0056】
次に、各試料の個別電極と共通電極間に50Vの分極電圧を10秒間印加して分極した後で個別電極と共通電極間の静電容量(初期値)をそれぞれ計測した。ついで、各試料に対して200℃、10分の条件で熱処理を行った後、個別電極と共通電極間の静電容量(熱処理後)を計測し、さらに検査用電極と共通電極間の静電容量も計測した。なお、静電容量は、両電極に測定用プローブを直接当ててインピーダンスアナライザーにより測定した。
【0057】
次に、表2に示す分極電圧および分極電圧の印加時間で各試料の圧電セラミック層に対して再分極処理を行った後、個別電極と共通電極間の静電容量(再分極後)を計測した。結果を表2に示す。なお、表2には、各圧電アクチュエータの駆動時の駆動電圧および印加方式も参考として記載している。また、静電容量の回復率は、(再分極後/初期値)×100から算出した。
【表2】
試料No.3〜26では、94.2%以上の高い回復率が得られた。特に、圧電アクチュエータの総厚みが100μm以下である試料4〜26では、97%以上の回復率が得られた。
【0058】
また、各試料において、熱処理後に計測した検査用電極と共通電極間の静電容量は、個別電極と共通電極間の静電容量(熱処理後)と高い相関性を有していた。このことから、検査用電極と共通電極間の静電容量を計測することにより、個別電極と共通電極間の静電容量を正確に把握し圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かを正確に見極めることが可能であるということがわかった。したがって、インクジェット記録装置に上記のような検査用電極を設けることにより、適切な時期に再分極処理を行うことができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、個別電極が配列された面と同じ側の圧電セラミック層の表面に静電容量を検査するための検査用電極が設けられているので、個別電極と共通電極との間の静電容量を正確に把握し圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かを正確に見極めることができる。これにより、適切な時期に再分極処理を行うことができる。したがって、製品出荷後においても常に安定した圧電特性を得ることができるので、良好な印刷状態を維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置に備えられたインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【図2】本発明における再分極処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】引き打ち方式において、再分極処理時、待機時および駆動時に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【図4】引き打ち方式において、再分極処理時、待機時および駆動時に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【図5】押し打ち方式において、再分極処理時、待機時および駆動時に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【図6】本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドの他の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
11,11a,11b インクジェット記録ヘッド
12 圧電セラミック層
13 セラミック層
14 共通電極
15 個別電極
16,16a,16b 圧電アクチュエータ
17 インク吐出孔
18 インク流路
19 流路部材
21 検査用電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット方式のプリンタおよびその制御方法に関し、より詳しくはインクジェット記録ヘッドに圧電アクチュエータを有するインクジェット記録装置およびその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータの普及やマルチメディアの発達に伴って、情報を記録媒体に出力する記録装置として、インクジェット方式のプリンタの利用が急速に拡大している。かかるプリンタにはインクジェット記録ヘッドが搭載されている。このインクジェット記録ヘッドとしては、ヘッドの小型薄型化が容易で、高精度の印字が可能になり、電気信号に対する応答速度が10−6秒台と非常に高速であるという点で、圧電方式が広く用いられている。
【0003】
この種のインクジェット記録ヘッドは、一般に、積層された複数の圧電セラミック層と、該圧電セラミック層の間に配置された共通電極と、最上層の前記圧電セラミック層の表面に配列された複数の個別電極とを備えた圧電アクチュエータを、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に、インク流路と個別電極との位置を揃えて取り付けたものである。そして、共通電極と所定の個別電極との間に駆動電圧を印加して個別電極直下の圧電セラミック層を変位させることにより、インク流路内のインクを加圧して、流路部材の底面に開口したインク吐出孔からインク滴を吐出する。
【0004】
上記の圧電セラミック層は、印加される駆動電圧に応答して変形するように、予め分極処理が施されている。分極処理は、通常、圧電セラミック層に高電圧を印加することにより内部の電気双極子を一方向に揃えることによって行われる。
【0005】
ところが、圧電アクチュエータの製造工程では、圧電セラミック層を分極した後で、寸法調整のための加工や接着剤の硬化のための加熱などにより圧電セラミック層が高温になることによって、圧電セラミック層の分極状態が悪影響を受け、分極状態が劣化して圧電アクチュエータの圧電特性が低下するという問題があった。
【0006】
この問題に対して、特許文献1には、圧電セラミック層の分極状態に影響を及ぼす処理を行った後に圧電セラミック層に分極処理を施すことが提案されている。この特許文献1に記載された方法によれば、最適な状態に分極処理された圧電セラミック層を得ることができるとされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法ではインクジェット記録装置を製造した直後には良好な圧電特性を示し優れた画質の印刷を行うことができるものの、製品出荷後には周囲の様々な環境から影響を受けるため、時間の経過とともに圧電セラミック層の分極状態が劣化して画質が低下するという問題がある。
【0008】
この問題に対して、特許文献2および特許文献3には、圧電セラミック層に分極電圧を印加して圧電セラミック層を再分極する再分極処理手段を備えたインクジェット記録装置が開示されている。これらの特許文献2および特許文献3に記載されたインクジェット記録装置によれば、製品出荷後に時間の経過とともに圧電セラミック層の分極状態が劣化した場合でも、圧電セラミック層を再分極して圧電特性を回復させることができるので、画質を良好な状態に維持することができるとされている。
【0009】
また、上記特許文献3には、前記再分極処理手段に加えて、さらに圧電アクチュエータの静電容量を測定する測定手段(静電容量センサ)を備えたインクジェット記録装置が提案されている。このインクジェット記録装置では、静電容量センサからの検出信号に基づいて圧電アクチュエータの静電容量が予め定めた基準値以下か否かをチェックし、静電容量が低下して基準値以下となっているときには再分極処理を行う。このインクジェット記録装置によれば、上記のように静電容量の測定結果に基づいて再分極処理を行うようにすることで、再分極回数を少なくすることができ、無駄を省けるとされている。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−193623号公報
【特許文献2】
特許第3024533号公報
【特許文献3】
特開平9−141859号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3には、上記測定手段として静電容量センサ(特許文献3の図4参照)という語句が記載されているのみであり、具体的な測定手段はなんら記載されておらず、具体的にどのようにして静電容量を測定するのか明確ではない。
【0012】
本発明の目的は、再分極処理が必要とされる時期を正確に見極めて適切な時期に再分極処理を行うことができるインクジェット記録装置およびその制御方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、個別電極が配列された面と同じ側の圧電セラミック層の表面に個別電極とは別に設けた検査用の電極と共通電極との間の静電容量値が、個別電極と共通電極との間の静電容量値と高い相関性を有するという知見を得た。この知見に基づいて、本発明者らは、検査用電極と共通電極間の静電容量の測定結果を基にすれば、個別電極と共通電極との間の静電容量を正確に把握し圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かを正確に見極めることができるので、適切な時期に再分極処理を行うことができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明のインクジェット記録装置およびその制御方法は、以下の構成からなる。
(1) 圧電セラミック層と該圧電セラミック層の一方の表面に配置された共通電極と前記圧電セラミック層の他方の表面に配列された複数の個別電極とを備えた圧電アクチュエータを有するインクジェット記録ヘッドと、前記圧電セラミック層における前記個別電極が配列された面と同じ面に、前記個別電極と前記共通電極との間の静電容量を検査するために設けられた検査用電極と、この検査用電極による検査結果に基づいて、前記個別電極と前記共通電極との間に分極電圧を印加して前記圧電セラミック層を再分極するための再分極処理手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
(2) 前記検査用電極が、前記圧電セラミック層の表面の相互に離隔した複数箇所に設けられている(1)記載のインクジェット記録装置。
(3) 前記検査用電極が、四角形の前記圧電セラミック層の四隅に設けられている(2)記載のインクジェット記録装置。
(4) 前記分極電圧と、印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧とが同じ電源から印加されるように配線されている(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
(5) 前記圧電アクチュエータの厚みが100μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法であって、前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この計測結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極が必要であると判断された場合に前記個別電極と前記共通電極との間に分極電圧を印加して前記圧電セラミック層を再分極することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
(7) 印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧が引き打ち方式であり、前記分極電圧が前記駆動電圧の1.2〜5倍である(6)記載のインクジェット記録装置の制御方法。
(8) 印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧が押し打ち方式であり、前記分極電圧が前記駆動電圧と略同一かそれより大きい(6)記載のインクジェット記録装置の制御方法。
(9) 前記分極電圧の印加時間が10秒以下である(6)〜(8)のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法。
(10) 前記分極電圧が15〜50Vである(6)〜(9)のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【0015】
前記(2)記載のインクジェット記録装置によれば、前記検査用電極が圧電セラミック層の表面の相互に離隔した複数箇所に設けられているので、静電容量の検査精度がより向上する。
【0016】
前記(3)記載のインクジェット記録装置によれば、圧電セラミック層の四隅、すなわち圧電セラミック層のデッドスペースに検査用電極を配置することで、個別電極の配列の妨げになることがないので、圧電アクチュエータを小型化・高集積化する上で弊害が生じず、スペースを有効利用することができる。また、圧電アクチュエータは、個別電極が配列されている部分以外に余白が多く存在すると、焼成後に反りが発生しやすいが、上記のように四隅の余白に検査用電極を配置することにより、反りが生じるのを抑制することができ、圧電アクチュエータの寸法精度も向上する。
【0017】
前記(4)記載のインクジェット記録装置によれば、駆動電圧と分極電圧の電源が共用されているので、電源コストの上昇を抑制でき、装置の小型化に寄与できる。
【0018】
前記(5)記載のインクジェット記録装置によれば、圧電アクチュエータの厚みが100μm以下と薄く形成されているので、駆動電圧および分極電圧を小さくでき、電源の小型化と省電力化を実現できる。
【0019】
前記(6)記載のインクジェット記録装置の制御方法によれば、検査用電極と共通電極との間の静電容量の計測結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極処理が必要であると判断された場合に圧電セラミック層を再分極することによって、再分極処理を必要以上に行わなず、必要な時期にのみ行うことができるので、製品出荷後においても常に安定した圧電特性を得ることができるとともに、ランニングコストを削減することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置およびその制御方法について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット記録装置は、後述するインクジェット記録ヘッドを備え用紙への印字を行う印刷手段と、この印刷手段にインクを供給するインク供給手段と、プリンタの各部位に電力を供給する電力供給手段と、用紙を搬送する印刷媒体搬送手段と、インクジェット記録ヘッドにおける圧電アクチュエータ内に配置された個別電極と共通電極との間に分極電圧を印加して圧電セラミック層を再分極する再分極処理手段とを備えている。
【0021】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置に備えられたインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。図1に示すように、このインクジェット記録ヘッド11は、セラミック層13上に、圧電セラミック層12と、該圧電セラミック層12の一方の表面に配置された共通電極14と、圧電セラミック層12の他方の表面に配列された複数の個別電極15とを備えた圧電アクチュエータ16を、インク吐出孔17を有する複数のインク流路18が配列された流路部材19上に、インク流路18と個別電極15との位置を揃えて取り付けたものである。そして、共通電極14と所定の個別電極15との間に駆動電圧を印加して個別電極15直下の圧電セラミック層12を変位させることにより、インク流路18内のインクを加圧して、流路部材19の底面に開口したインク吐出孔17からインク滴を吐出することができる。
【0022】
また、インクジェット記録ヘッド11には、圧電セラミック層12における個別電極15が配列された面と同じ面に、個別電極15と共通電極14との間の静電容量を検査するための検査用電極21が設けられている。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録装置に備えられた再分極処理手段は、静電容量を検査する命令が出されたか否かの判断、再分極処理が必要か否かの判断、個別電極15と共通電極14間への分極電圧の印加などを行う図示しない制御系を備えている。図2は、この再分極処理手段により行われる再分極処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置では、前記制御系に備えられた中央処理装置(CPU)により静電容量を検査する命令が出されたか否かが定期的に確認され(S1)、検査命令が出されていないと判断された場合には(S1,NO)、静電容量の計測は行われない。一方、検査命令が出されたと判断された場合には(S1,YES)、検査用電極21と共通電極14との間の静電容量が計測される(S2)。
【0024】
次に、計測された静電容量の信号がCPUに送られ、この静電容量計測値が予め設定された基準値と比較されて再分極処理の要否が判断される(S3)。静電容量が基準値よりも大きいため再分極処理は不要であると判断された場合には(S3,NO)、再分極処理は行われない。一方、静電容量が基準値よりも小さいため再分極処理が必要であると判断された場合には(S3,YES)、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧が印加され、圧電セラミック層12が再分極される(S4)。
【0025】
本実施形態のインクジェット記録装置は、上記のような再分極処理手段を備えていることにより、分極状態を劣化させやすい劣悪な環境で使用され、比較的短時間で圧電特性が低下する場合であっても、その劣化を検知して必要な時期に再分極処理を行うことができるので、常に安定した圧電特性を得ることができる。
【0026】
図3は、インクジェット記録ヘッド11の駆動が引き打ち方式により行われる場合において、再分極処理時、待機時および駆動時(印字時)に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【0027】
引き打ち方式で圧電アクチュエータ16を駆動させる場合、図3に示すように、待機時には個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1を印加してインク流路18の容積を減少させておき、印字時には個別電極15と共通電極14との間の印加を停止してインク流路18の容積を増大させた後、再び個別電極15と共通電極14との間に駆動電圧V1を印加してインク流路18の容積を減少させることによりインク吐出孔17からインク滴を吐出させる。そして、次の印字までの間は、個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1を印加してインク流路18の容積を減少させたまま待機する。
【0028】
検査用電極21により静電容量が計測され、基準値よりも小さいため再分極処理が必要であると判断された場合には、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧V0が印加され、圧電セラミック層12が再分極される。引き打ち方式の場合、分極電圧V0は、駆動電圧V1の1.2〜5倍、好ましくは2〜4倍であるのがよい。分極電圧を駆動電圧よりも大きくすることによって、分極の信頼性を高めることができ、次に分極が必要になるまでの時間をより長くすることができるので、特に長時間使用する場合に好適である。また、引き打ち方式の場合には、上記のように待機時においても個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1が印加されているので、上記条件で再分極処理を行えば、長い間圧電特性が維持される。
【0029】
引き打ち方式における分極電圧V0の上限は、電源のサイズ等によるため特に限定されないが、好ましくは100Vとするのがよい。これにより、省電力化および小型化に寄与できる。また、個別電極15と共通電極14との間の距離、すなわち圧電セラミック層12の厚みを5〜30μm程度に薄くすることによって、分極電圧V0を50V以下に下げることができるので、電源のさらなる省電力化および小型化に寄与できる。分極電圧V0の下限は15V、好ましくは40Vとするのがよい。
【0030】
引き打ち方式における分極電圧V0の印加時間は、10秒以下、好ましくは2〜5秒であるのがよい。分極時間を10秒以下とすることで、再分極処理のための待ち時間が少なくて済む。再分極処理は、常温(室温)で行うことができる。
【0031】
なお、図3に示す引き打ち方式では、再分極処理を行った後で電圧の印加を停止し、ついで個別電極15と共通電極14との間に待機電圧V1を印加して待機状態に入っているが、図4に示すように、再分極処理を行った後、個別電極15と共通電極14との間に印加する電圧を分極電圧V0から待機電圧V1にしてそのまま待機状態に入るようにしてもよい。
【0032】
押し打ち方式で圧電アクチュエータ16を駆動させる場合、図5に示すように、待機時には個別電極15と共通電極14との間に電圧は印加されず、印字時には個別電極15と共通電極14との間に駆動電圧V2を印加してインク流路18の容積を減少させることによりインク吐出孔17からインク滴を吐出させる。そして、再度電圧の印加を停止して待機状態に入る。
【0033】
押し打ち方式の場合も引き打ち方式と同様に、静電容量が計測され、基準値よりも小さいため再分極処理が必要であると判断された場合には、個別電極15と共通電極14との間に分極電圧V0が印加され、圧電セラミック層12が再分極される。押し打ち方式の場合、分極電圧V0は、駆動電圧V2と略同一かそれより大きいのが好ましい。押し打ち方式を採用することによって消費電力を低減し、再分極処理を効果的にかつ短時間で終了することが可能になる。
【0034】
押し打ち方式における分極電圧V0の上限は、電源のサイズ等によるため特に限定されないが、好ましくは100Vとするのがよい。これにより、省電力化および小型化に寄与できる。また、個別電極15と共通電極14との間の距離、すなわち圧電セラミック層12の厚みを5〜30μm程度に薄くすることによって、分極電圧V0を50V以下に下げることができるので、電源のさらなる省電力化および小型化に寄与できる。分極電圧V0の下限は15V、好ましくは40Vとするのがよい。
【0035】
押し打ち方式における分極電圧V0の印加時間は、10秒以下、好ましくは2〜5秒であるのがよい。分極時間を10秒以下とすることで、再分極処理のための待ち時間が少なくて済む。再分極処理は、常温(室温)で行うことができる。
【0036】
本実施形態のインクジェット記録装置では、分極電圧と駆動電圧とは、図示しない同じ電源(電力供給手段)から印加されるように配線されている。これにより、電源コストの上昇を抑制でき、装置の小型化に寄与することができる。
【0037】
圧電セラミック層12の材質としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT系)、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)およびニッケルニオブ酸鉛(PNN系)からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とする圧電セラミックスが好適である。圧電セラミック層12の厚みは、特に限定されないが、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは8〜15μmであるのがよい。
【0038】
セラミック層13は、絶縁性の高いものであれば良いが、圧電体であること、特に圧電セラミック層12と略同一の熱膨張率を有するものであることが好ましく、圧電セラミック層12と略同一の組成であることがより好ましい。これにより、同時焼成が可能となり、熱膨張差に起因して焼成時に発生する熱応力によって反りや歪みが生じるのを防止することが容易となる。セラミック層13の厚みは、特に限定されないが、80μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20〜50μmであるのがよい。また、圧電アクチュエータ16の総厚みは100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは30〜60μmであるのがよい。このように、総厚みを100μm以下にすることで、駆動電圧と分極電圧を小さくできるので、電源の小型化と省電力化に寄与できる。
【0039】
また、圧電セラミック層12およびセラミック層13は気孔率が1%以下、特に0.8%以下、更には0.5%以下であることが、インク等の液体の染み込みを効果的に防止でき、インク漏れを低減することができるので好ましい。
【0040】
共通電極14の材質としては、Ag、Pd、Pt、Rh、Au、Ni系材料の単独または2種以上の組み合わせが好ましく、特にAg−Pd系合金がより好ましい。共通電極14の厚みは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度であるのがよく、0.5〜8μm、好ましくは1〜3μmであるのがよい。
【0041】
個別電極15および検査用電極21の材質は、例えば上記した共通電極14と同様の金属を使用することができるが、特に電気抵抗および耐食性に優れるAuを使用するのが好ましい。個別電極15および検査用電極21の厚みは0.3〜5μm、好ましくは0.5〜2μmであるのがよい。特に、検査精度を向上させるという点で、個別電極15と検査用電極21の材質および厚みは同じであるのが好ましい。
【0042】
次に、圧電アクチュエータ16の製造方法について説明する。
(a) まず、前記した圧電セラミックスの粉末を用いてグリーンシートを必要枚数形成した後、このグリーンシートに貫通孔を形成する。
(b) ついで、貫通孔が形成されたグリーンシートにスクリーン印刷を用いて、ビア電極となる導体を充填するとともにグリーンシートの略全面に共通電極パターンを形成する。
(c) ついで、ビア電極パターンおよび共通電極パターンが形成されたグリーンシートに対して、共通電極パターンを狭持するように、グリーンシートを積層して積層体を形成する。
(d) さらに、この積層体を所定の形状に切断した後、900〜1100℃程度で焼成して圧電アクチュエータ本体を形成する。
(e) 最後に、この圧電アクチュエータ本体の表面に導電ペーストを印刷して所定の位置に検査用電極パターンおよび個別電極パターンを形成し、600〜850℃程度で焼成する。これにより圧電アクチュエータ16を得ることができる。なお、個別電極および検査用電極は、圧電セラミック層、共通電極およびセラミック層と同時焼成することもできる。
【0043】
次に、インクジェット記録ヘッド11の製造方法について説明する。
流路部材19は圧延法等によって得られ、インク吐出孔17およびインク流路18はエッチングにより所定の形状に加工されて設けられる。この流路部材19は、Fe−Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましく、特にインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましく、Fe−Cr系がより好ましい。
【0044】
圧電アクチュエータ16と流路部材19とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ16や流路部材19への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が130〜250℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ16と流路部材19とを加熱接合することができ、これによりインクジェット記録ヘッド11を得ることができる。
【0045】
<他の実施形態>
図6は、本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドの他の実施形態を示す斜視図であり、図7はその断面図である。図6および図7に示すように、このインクジェット記録ヘッド11aには、四角形の圧電セラミック層12の表面でかつ相互に離隔した四隅に、検査用電極21がそれぞれ設けられた圧電アクチュエータ16aが備えられている。なお、他の部位については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
図8は、本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドのさらに他の実施形態を示す斜視図である。図8に示すように、このインクジェット記録ヘッド11bの圧電アクチュエータ16bには、相互に離隔した四隅の他、中央付近にも、検査用電極21が設けられている。このように、検査用電極21を設ける部位は、特に限定されることはなく、任意の箇所に設定することができる。なお、他の部位については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
上記のようなインクジェット記録ヘッド11a,11bを備えたインクジェット記録装置では、検査用電極21が複数箇所に設けられているので、静電容量の検査精度がより向上し、圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かをより正確に見極めることができる。また、圧電アクチュエータ16aは、個別電極15が配列されている部分以外に余白が多く存在すると、焼成後に反りが発生しやすいが、上記のように四隅の余白に検査用電極を配置することにより、反りが生じるのを抑制することができ、圧電アクチュエータ16aの寸法精度も向上する。特に、インクジェット記録ヘッド11aでは、圧電セラミック層12の四隅、すなわち圧電セラミック層12のデッドスペースに検査用電極21が配置されており、個別電極15の配列が妨げられないので、圧電アクチュエータ16aを小型化・高集積化する上で弊害が生じず、スペースを有効利用することができる。
【0048】
なお、本発明では、圧電セラミック層の形状、並びに検査用電極の配置場所および個数は特に限定されるものではない。
【0049】
また、本発明のインクジェット記録装置では、検査用電極と共通電極間に分極電圧を印加してこの部位のみを分極し、分極された後の検査用電極と共通電極間の静電容量を計測し、計測された検査用電極と共通電極間の静電容量と、個別電極と共通電極間の静電容量とを比較することによって、分極の劣化状態を検知することもできる。
【0050】
さらに、本発明では、検査用電極により計測された結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極が必要であると判断された場合に再分極処理を行うだけでなく、所定の印字枚数毎、所定の稼働時間毎、プリンタ起動時などに自動的に再分極処理を行うようにしてもよい。また、プリンタまたはプリンタを制御するコンピュータ等の端末に、再分極処理を命令するボタンやスイッチを設けることによって、必要に応じてプリンタ利用者が再分極処理を開始させることもできる。
【0051】
【実施例】
以下、参考例および実施例を挙げて本発明のインクジェット記録装置およびその制御方法についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
参考例
チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする厚み15μmの圧電セラミック層と、この圧電セラミック層の一方の表面に配置された、Ag−Pd合金からなる厚み2μmの共通電極と、前記圧電セラミック層の他方の表面に複数配置された、Auからなる厚み1μmの個別電極とを備えた圧電アクチュエータである試料1および試料2を用いて、以下のようにして再分極処理の効果を調べた。
【0053】
すなわち、上記の圧電アクチュエータを0℃と60℃の雰囲気中にそれぞれ30分間曝露するサイクルを200サイクル繰り返した後、個別電極と共通電極間に20Vの分極電圧を印加して再分極処理を行い、分極電圧の印加時間とその時の静電容量を調べた。結果を表1に示す。なお、温度サイクル試験を行う前の試料1および試料2の静電容量(初期値)は、それぞれ2.70nF、2.66nFであった。
【表1】
表1から、試料1および試料2は、分極電圧を2秒間印加した時点で静電容量がほぼ初期値にまで回復していることがわかる。
【0054】
実施例
チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電セラミック層と、この圧電セラミック層の一方の表面に配置された、Ag−Pd合金からなる厚み2μmの共通電極と、前記圧電セラミック層の他方の表面に複数配置された、Auからなる厚み1μmの個別電極と、この個別電極と同じ面の隅に配置された、Auからなる厚み1μmの検査用電極とを備えた、図1に示すような構成の圧電アクチュエータ(試料3〜26)を作製した。各試料の圧電セラミック層の厚みおよび圧電アクチュエータの総厚みは表2に示す値となるようにそれぞれ調整した。
【0055】
次に、インク流路とインク供給孔をエッチングによって形成したFe−Cr系金属からなる板と、同じくインク吐出孔をエッチング法によって形成したFe−Cr系金属からなる板を熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤にて接着し流路部材を得た。ついで、この流路部材のインク流路開口面側に熱硬化性のエポキシ接着剤を塗布し、上記の圧電アクチュエータをインク流路と個別電極とが揃うように位置決めし、図1に示すようなインクジェット記録ヘッド(試料3〜26)を作製した。
【0056】
次に、各試料の個別電極と共通電極間に50Vの分極電圧を10秒間印加して分極した後で個別電極と共通電極間の静電容量(初期値)をそれぞれ計測した。ついで、各試料に対して200℃、10分の条件で熱処理を行った後、個別電極と共通電極間の静電容量(熱処理後)を計測し、さらに検査用電極と共通電極間の静電容量も計測した。なお、静電容量は、両電極に測定用プローブを直接当ててインピーダンスアナライザーにより測定した。
【0057】
次に、表2に示す分極電圧および分極電圧の印加時間で各試料の圧電セラミック層に対して再分極処理を行った後、個別電極と共通電極間の静電容量(再分極後)を計測した。結果を表2に示す。なお、表2には、各圧電アクチュエータの駆動時の駆動電圧および印加方式も参考として記載している。また、静電容量の回復率は、(再分極後/初期値)×100から算出した。
【表2】
試料No.3〜26では、94.2%以上の高い回復率が得られた。特に、圧電アクチュエータの総厚みが100μm以下である試料4〜26では、97%以上の回復率が得られた。
【0058】
また、各試料において、熱処理後に計測した検査用電極と共通電極間の静電容量は、個別電極と共通電極間の静電容量(熱処理後)と高い相関性を有していた。このことから、検査用電極と共通電極間の静電容量を計測することにより、個別電極と共通電極間の静電容量を正確に把握し圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かを正確に見極めることが可能であるということがわかった。したがって、インクジェット記録装置に上記のような検査用電極を設けることにより、適切な時期に再分極処理を行うことができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、個別電極が配列された面と同じ側の圧電セラミック層の表面に静電容量を検査するための検査用電極が設けられているので、個別電極と共通電極との間の静電容量を正確に把握し圧電セラミック層の分極状態が劣化しているか否かを正確に見極めることができる。これにより、適切な時期に再分極処理を行うことができる。したがって、製品出荷後においても常に安定した圧電特性を得ることができるので、良好な印刷状態を維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置に備えられたインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【図2】本発明における再分極処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】引き打ち方式において、再分極処理時、待機時および駆動時に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【図4】引き打ち方式において、再分極処理時、待機時および駆動時に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【図5】押し打ち方式において、再分極処理時、待機時および駆動時に個別電極と共通電極との間に印加される電圧を示すグラフである。
【図6】本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドの他の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明のインクジェット記録装置に備えられるインクジェット記録ヘッドのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
11,11a,11b インクジェット記録ヘッド
12 圧電セラミック層
13 セラミック層
14 共通電極
15 個別電極
16,16a,16b 圧電アクチュエータ
17 インク吐出孔
18 インク流路
19 流路部材
21 検査用電極
Claims (10)
- 圧電セラミック層と該圧電セラミック層の一方の表面に配置された共通電極と前記圧電セラミック層の他方の表面に配列された複数の個別電極とを備えた圧電アクチュエータを有するインクジェット記録ヘッドと、
前記圧電セラミック層における前記個別電極が配列された面と同じ面に、前記個別電極と前記共通電極との間の静電容量を検査するために設けられた検査用電極と、
この検査用電極による検査結果に基づいて、前記個別電極と前記共通電極との間に分極電圧を印加して前記圧電セラミック層を再分極するための再分極処理手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記検査用電極が、前記圧電セラミック層の表面の相互に離隔した複数箇所に設けられている請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 前記検査用電極が、四角形の前記圧電セラミック層の四隅に設けられている請求項2記載のインクジェット記録装置。
- 前記分極電圧と、印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧とが同じ電源から印加されるように配線されている請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記圧電アクチュエータの厚みが100μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法であって、前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この計測結果に基づいて再分極処理の要否を判断し、再分極が必要であると判断された場合に前記個別電極と前記共通電極との間に分極電圧を印加して前記圧電セラミック層を再分極することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
- 印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧が引き打ち方式であり、前記分極電圧が前記駆動電圧の1.2〜5倍である請求項6記載のインクジェット記録装置の制御方法。
- 印字時に前記個別電極と前記共通電極との間に印加する駆動電圧が押し打ち方式であり、前記分極電圧が前記駆動電圧と略同一かそれより大きい請求項6記載のインクジェット記録装置の制御方法。
- 前記分極電圧の印加時間が10秒以下である請求項6〜8のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法。
- 前記分極電圧が15〜50Vである請求項6〜9のいずれかに記載のインクジェット記録装置の制御方法。
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-
2003
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