JP2004344029A - 遺伝子破壊微生物およびそれを用いたピリミジンヌクレオシド化合物の製造方法 - Google Patents

遺伝子破壊微生物およびそれを用いたピリミジンヌクレオシド化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】煩雑なデアミナーゼ失活処理を施さずに4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物の製造法を提供する。
【解決手段】シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を持つ微生物において、シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼ遺伝子を同時に欠損した微生物を用いて4位にアミノ基を有するピリミジンヌクレオシド化合物を製造する。
【効果】本発明によれば煩雑なデアミナーゼ失活処理を施さずに4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体をもつヌクレオシド化合物が効率的に製造できる。さらに、該遺伝子を相同組換えにより破壊した菌株は、野生株と何ら変わらない増殖性を示し、工業的に有利な高濃度培養も容易に実施できる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬品等の合成原料として有用なピリミジンヌクレオシド化合物の製造方法に関する。シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を同時に欠損した微生物に、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性を有する酵素を発現させた微生物を用いるピリミジンヌクレオシド化合物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を製造する方法としては、乳酸菌のヌクレオシド・デオキシリボシルトランスフェラーゼ−IIを用いる方法が特開2002−17393号公報で開示されている。該公報では、精製酵素を用いているため菌体反応による生成物の分解等については開示されていない。
【0003】
大腸菌プリンヌクレオシドホスホリラーゼを用いる方法が欧州特許公開第1254959A2号公報で開示されている。該公報によれば、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物の製造する際に、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体あるいは対応するヌクレオシド化合物が脱アミノ化されて反応収率が低減する事があり、デアミナーゼを選択的に失活させる処理を施す方法が開示されているが、処理が煩雑であり工業的に必ずしも有利な方法ではない。
【0004】
上述の方法においては、上記デアミナーゼのみが失活し、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性を有する酵素は失活しない条件を見出さなければならず、大腸菌プリンヌクレオシドホスホリラーゼ以外の酵素を用いる場合には必ずしも利用できる方法とは限らない。
【0005】
更に、医薬品としてヌクレオシド化合物を製造する場合、その類縁体が製品に混入する事は当該ヌクレオシド化合物を原料として更にヌクレオチド等を製造するに際して大変な問題である。該公報では完全にデアミナーゼ活性は消失できず、わずかな副生物を除くために精製工程が複雑化する問題も含んでいる。
【0006】
該公報において、Bacillus属のシチジンデアミナーゼ欠損株を用いることで脱アミノ化を防ぐ方法も開示されている。Bacillusはシチジンデアミナーゼしか持たないために単独の欠損で対応するヌクレオシドを製造できるが、工業的に製造するためには高密度培養が難しかったり、遺伝子操作系が煩雑などの問題を抱えていた。
【0007】
【特許文献1】特開2002−17393号公報
【特許文献2】欧州特許公開第1254959A2号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のとおり、デアミナーゼを欠損させることが4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を製造するに際して有効であることが示唆されていたが、シトシンデアミナーゼとシチジンデアミナーゼの両遺伝子を同時に欠損させた場合の効果は知られておらず、また、従来知られていた技術から単純には予測することもできない。
また、シトシンデアミナーゼとシチジンデアミナーゼの両遺伝子を同時に欠損させたとしても、必ずしも上記遺伝子産物のみが該酵素活性をもつとは必ずしも明らかになっていなかった。
【0009】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、煩雑なデアミナーゼ失活処理を施さずに4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物の製造法を提供する事である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、シトシンデアミナーゼとシチジンデアミナーゼの両方の遺伝子を突然変異の誘発や相同組換えにより同時に欠損した微生物に、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性を有する酵素を発現させる事で、煩雑なデアミナーゼの失活処理を施さず対応するヌクレオシド化合物を効率的に製造できることを見出した。
【0011】
特にシトシンデアミナーゼとシチジンデアミナーゼの両方の遺伝子を相同組換えを用いて破壊し該遺伝子以外の遺伝子を欠損していない微生物を用いれば、従来の技術では不可能であった微量のデアミノ体をも含まない純度の高いヌクレオシド化合物を煩雑な精製工程を採用することなく得ることが出来ることを見出した。
【0012】
即ち本発明は以下のとおりである。
[1] シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を本来有する微生物であって、且つ該シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼ遺伝子を同時に欠損した微生物。
[2] 前記微生物が大腸菌である[1]記載の微生物。
[3] シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を相同組換えにより破壊し、該遺伝子以外の遺伝子を欠損していない[1]または[2]記載の微生物。
[4] 4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性を有する酵素が発現している[1]から[3]の何れか一項に記載の微生物。
[5] 前記微生物の処理物を用いて4位にアミノ基を有するピリミジンヌクレオシド化合物を製造する方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、シトシンデアミナーゼとは、シトシンの4位のアミノ基を脱離し、ウラシルとアンモニアを生成させる機能を有する酵素である。該酵素はシトシン以外にも5−メチルシトシンも基質となることが知られている。該酵素は、酵母、細菌に存在することが知られている。
【0014】
本発明において、シトシンデアミナーゼ遺伝子とは、シトシンデアミナーゼをコードする遺伝子であり、例えば大腸菌であれば、遺伝子記号codAと表記され、塩基配列(GenBank accession No. S56903(コード領域は塩基番号130−1413)で示されている。
【0015】
本発明において、シチジンデアミナーゼとは、シチジンの4位のアミノ基を脱離し、ウリジンとアンモニアを生成させる機能を有する酵素である。該酵素はシチジン以外にもデオキシシチジン、5−ハロゲン化シチジン、5−または6−アザシチジン、シトシンアラビノシドも基質となることが知られている。該酵素は、広く生物界に分布し、哺乳類、鳥類、魚類などの組織、酵母、細菌に存在する。
【0016】
本発明において、シチジンデアミナーゼ遺伝子とは、シチジンデアミナーゼをコードする遺伝子であり、例えば大腸菌であれば、遺伝子記号cddと表記され、塩基配列(GenBank accession No. X63144(コード領域は塩基番号67−1059)で示されている。
【0017】
本発明において、シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を本来有する微生物とは、遺伝子操作等の人為的な方法で両遺伝子を当該微生物に導入したのではなく、生物種として原初的にその染色体DNA等に両遺伝子を有することを意味する。
【0018】
本発明においてシトシンデアミナーゼとシチジンデアミナーゼの両遺伝子を同時に欠損した微生物とは、上述のシトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を本来有する微生物を更に該シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を同時に何らかの手段により欠損された微生物を指す。本発明の微生物は上記の性質を保持している限りその由来、種類は特に制限されない。
本発明の微生物としては代表的には上記の性質を有し且つ分類学的に大腸菌に分類される微生物が例示できる。
【0019】
本発明の微生物は、例えば自然界から元々存在していた両遺伝子を何らかの理由で欠いている微生物を単離したり、突然変異の誘発により該遺伝子が発現しない変異株を取得する方法や、トランスポゾンを用いて該遺伝子周辺を脱落させる方法、更には相同組換えによる該遺伝子のみを欠損させる方法が利用できるが両遺伝子を欠損できればその方法は特に制限されない。
【0020】
突然変異の誘発やトランスポゾンなどにより目的遺伝子以外の遺伝子を欠損させる事で微生物の増殖性が悪くなることがある。また、遺伝子組換えにより特定の酵素を発現させる場合、各種変異を導入された株より野生株の方が高い発現量を示すことが多い。更に、野生株のように増殖性がよいと高密度培養が容易となり、工業的には有利である。そのため相同組換えによる特定の遺伝子のみを欠失させる方法が好適な方法といえる。
【0021】
本発明において、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体とは、ピリミジン骨格を有し4位にアミノ基を持つ化合物であり、例えばシトシン、5−アザシトシン、5−メチルシトシン、5−フルオロシトシンなどを例示できる。
【0022】
本発明において、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体に対応するヌクレオシド化合物とは、リボースやデオキシリボースなどの糖類と4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体とがN−グルコシド結合により結合した化合物であり、例えばシチジン、デオキシシチジン、5―アザシチジン、5−フルオロシチジン、5−メチルシデオキシチジンなどを例示できる。
【0023】
本発明において、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性とは、リン酸化糖あるいはヌクレオシド類と上述の4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から上述の対応するヌクレオシド化合物を合成するる反応を促進する触媒としての機能を指している。
【0024】
よって、本発明における4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性を有する酵素とは、上述の活性を有する酵素を指す。例えば、リン酸化糖と4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成できるヌクレオシドホスホリラーゼやヌクレオシド類と4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成できるヌクレオシドリボシルトランスフェラーゼ、ヌクレオシドデオキシリボシルトランスフェラーゼなどを挙げる事ができる。
【0025】
リン酸化糖と4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成できるヌクレオシドホスホリラーゼとは、リン酸化糖と4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する酵素を指しており、この要件を満たす限り動物、植物、微生物の何れの起源であっても構わない。このようなヌクレオシドホスホリラーゼの具体例としては、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリシア(Escherichia)属に含まれる微生物の従来のプリンヌクレオシドホスホリラーゼとして知られている酵素で前記活性も有するものを好適な例として挙げることができる。具体的な例として、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)のプリンヌクレオシドホスホリラーゼのDNA塩基配列を配列番号:8に、該塩基配列より翻訳されるアミノ酸配列を配列番号:9に例示した。また、近年の遺伝子工学の進歩により塩基配列の一部を失活、挿入、置換によりアミノ酸配列を改変することが容易となった。かかる技術水準に鑑み、該塩基配列の一部を、所望とする酵素活性に影響を及ぼさない範囲内、例えば酵素活性を維持または向上できる範囲内で、改変してアミノ酸配列を改変したものも本発明のシトシンヌクレオシドホスホリラーゼに包含されるものとする。例えば、配列番号:9に示したアミノ酸配列に、目的とする酵素活性に影響を及ぼさない範囲内で2〜3個のアミノ酸の欠失、置換または付加が行われたものや、配列番号:8の塩基配列に目的とする酵素活性に影響を及ぼさず、かつ、その相補配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る範囲内での欠失、置換または付加等の変異を生じさせた塩基配列によってコードされたアミノ酸配列を有するものを用いることができる。
【0026】
本発明における本発明の微生物を用いて4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を製造する方法は、概略以下のとおりである。
即ち、4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体を基質として、対応するヌクレオシド化合物を合成できる酵素を発現している微生物であって、シトシンデアミナーゼとシチジンデアミナーゼの両遺伝子を本来有する微生物であって且つ該シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼ遺伝子を同時に欠損した微生物の菌体、培養液それらの処理物を用い、水性媒体中で適切なpHや温度などの反応条件を選んで反応させることにより行われる。この場合、水性媒体とは水或いは水を主成分としてpH緩衝能を有するような溶媒である。
【0027】
反応の条件は通常はpH4〜11、好ましくは7〜10、温度10〜80℃、好ましくは30〜50℃の範囲で行うことができる。反応の時間は任意であるが1時間から20時間程度で行うことができる。
その他反応に際しては、基質や触媒として用いる菌体が沈殿しない程度に攪拌できれば十分である。
【0028】
本発明において、微生物の菌体、培養液それらの処理物とは、微生物の菌体或いは培養液中の菌体を超音波、浸透圧ショック等で破壊して得られたもの、また、菌体及び該破壊物を固定化担体等で固定化したもの、或いは破壊物等から精製された酵素などが含まれる。
【0029】
反応の際に基質として用いられる4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体の使用量は通常は0.1〜50(重量)%、好ましくは5〜20(重量)%の範囲で行うことができる。
【0030】
基質に対する微生物の菌体、培養液それらの処理物の使用量は、反応が進行すればどのような量でもかまわないが、基質・生成物の分解活性を持たないため相当過剰に添加しても反応収率を低下させることはない。触媒濃度は通常0.1(重量)%〜10(重量)%程度で行うことができる。
【0031】
以上のようにして得られた反応液より4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体に対応するヌクレオシド化合物を採取する方法は、水性媒体に対する該誘導体と生成物の溶解度差を利用したり、イオン交換や吸着樹脂を用いる方法で行うことができる。例えば、反応液に活性炭を加え反応液中の菌体などを濾過により除き濾液を濃縮、晶析する事で高純度のヌクレオシドを得ることができる。反応によってデアミノ体の含有量は従来の技術に比して格段に押さえられているので、デアミノ体の除去を目的とした煩雑な精製は不要である。
【0032】
【実施例】
以下に実施例で本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0033】
[分析法]
生成したヌクレオシド化合物はすべて高速液体クロマトグラフィーにより定量した。分析条件は以下による。
カラム;Develosil ODS−MG−5 4.6×250mm(野村化学)
カラム温度;40℃
ポンプ流速;1.0ml/min.
検出;UV254nm、
溶離液;50mMリン酸1カリウム:メタノール=8:1(V/V)
【0034】
実施例1(シトシンデアミナーゼ欠損株の作製)
エシェリヒア・コリK−12 W3110株(ATCC27325)(ATCCはアメリカンタイプカルチャーコレクションの意味)を50mlのLB培地に接種し、37℃で一夜培養した後集菌し、リゾチーム1mg/mlを含む溶菌液で溶菌した。溶菌液をフェノール処理した後、通常の方法によりエタノール沈殿によりDNAを沈殿させた。生じたDNAの沈殿は、ガラス棒に巻き付けて回収した後、洗浄し、PCRに用いた。
【0035】
PCR用のプライマーには、エシェリヒア・コリの既知のシトシンパーミアーゼ(以下codBと表記する)をコードする塩基配列から既知のシトシンデアミナーゼ(以下codAと表記する)をコードする塩基配列(GenBank accession No.X63656)に基づいて設計した配列番号1及び2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(北海道システム・サイエンス株式会社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーの5’末端付近及び3’末端付近には、それぞれEcoRI及びHindIIIの制限酵素認識配列を有する。
【0036】
制限酵素HindIIIで完全に消化した前記大腸菌染色体DNA 6ng/μl及びプライマー各3μMを含む0.1mlのPCR反応液を用いて、変性:96℃、1分間、アニーリング:55℃、1分間、伸長反応:74℃、1分間からなる反応サイクルを、30サイクルの条件でPCRを行った。
【0037】
上記PCR反応産物及び温度感受性プラスミドpTH18cs1(A set of temperature sensitive−replication/−segregation and temperature resistant plasmid vectors with differnet copy numbers and in an isogenic background GENE 241(2000)185−191)配列番号:3を、EcoRI及びHindIIIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡(株))を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリDH5αを30℃にて形質転換した。形質転換株をクロラムフェニコール(Cm)10μg/mlを含むLB寒天培地で培養し、Cm耐性となった形質転換株を得た。得られたコロニーをCm10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。
このプラスミドをPstIで消化し、大きなフラグメントを回収してライゲーション・ハイ(東洋紡(株))を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリDH5αを形質転換した。形質転換株を、クロラムフェニコール(Cm)10μg/mlを含むLB寒天培地で培養し、Cm耐性となった形質転換株を得た。得られたコロニーをCm10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。設計通りの大きさであったプラスミドを前記W3110株に30℃で形質転換し、Cm10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体を寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体をCm10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。
さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えによりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンから通常のプラスミド抽出操作を行なってもプラスミドが検出されないことを確認した。
【0038】
次に上記クローンをLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとCm10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するCm感受性のクローンを選んだ。
【0039】
これらの目的クローンをCm10μg/mlを含むLB液体培地5mLで37℃、20時間培養し菌体を10000rpm、5分間の遠心分離により分離した。集菌体を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1mLに懸濁した。
活性測定は10mMのシトシン、100mMのトリス塩酸緩衝液1mLに菌体懸濁液0.1mLを加え50℃で1hr保温し、10倍に希釈して液体クロマトグラフィーにて分析した。
得られた10クローンのうち2クローンがcodA活性を完全に欠いており、ウラシルを検出できなかった。この菌株をW3110/codA欠損株と命名した。
【0040】
実施例2(シトシンデアミナーゼ・シチジンデアミナーゼ欠損株の作製)
PCR用のプライマーには、エシェリヒア・コリの既知のシチジンデアミナーゼ(以下cddと表記する)をコードするcdd遺伝子の塩基配列(GenBank accession No. X63144基づいて設計した配列番号:4及び5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(北海道システム・サイエンス株式会社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーの5’末端付近及び3’末端付近には、それぞれEcoRI及びHindIIIの制限酵素認識配列を有する。
【0041】
制限酵素HindIIIで完全に消化した前記大腸菌染色体DNA 6ng/μl及びプライマー各3μMを含む0.1mlのPCR反応液を用いて、変性:96℃、1分間、アニーリング:55℃、1分間、伸長反応:74℃、1分間からなる反応サイクルを、30サイクルの条件でPCRを行った。
【0042】
上記反応産物及び実施例1で調製した温度感受性プラスミドpTH18cs1を、EcoRI及びHindIIIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡(株))を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリDH5αを形質転換した。形質転換株を、クロラムフェニコール(Cm)10μg/mlを含むLB寒天培地で培養し、Cm耐性となった形質転換株を得た。得られたコロニーをCm10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。
このプラスミドをBglIIで消化し末端をBKLキット(タカラ酒造(株))により埋めてライゲーション・ハイ(東洋紡(株))を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリDH5αを形質転換した。形質転換株を、クロラムフェニコール(Cm)10μg/mlを含むLB寒天培地で培養し、Cm耐性となった形質転換株を得た。得られたコロニーをCm10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。
このプラスミドがBglIIで消化されない事を確認し、このプラスミドをW3110/docA欠損株に30℃で形質転換し、Cm10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体を寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体をCm10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。
さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えによりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンがプラスミドを細胞質中に持たないことを確認した。
【0043】
次に上記クローンをLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとCm10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するCm感受性のクローンを選んだ。
【0044】
これらの目的クローンをCm10μg/mlを含むLB液体培地5mLで37℃、20時間培養し菌体を10000rpm、5分間の遠心分離により分離した。集菌体を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1mLに懸濁し、cddの活性を測定した。
活性測定は10mMのシチジン、100mMのトリス塩酸緩衝液1mLに菌体懸濁液0.1mLを加え50℃で1hr保温し、10倍に希釈して液体クロマトグラフィーにて分析した。
得られた10クローンのうち8クローンがcdd活性を完全に欠いておりウリジンを検出できなかった。この菌株をW3110/codA・cdd欠損株と命名した。
【0045】
実施例3(シトシンホスホリラーゼ生産菌の調製)
PCR用のプライマーには、エシェリヒア・コリの既知のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(以下PNPと表記する)をコードするdeoD遺伝子の塩基配列(GenBank accession No. AE000508(コード領域は塩基番号11531−12250)に基づいて設計した配列番号:6及び7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(北海道システム・サイエンス株式会社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーの5’末端付近及び3’末端付近には、それぞれEcoRI及びHindIIIの制限酵素認識配列を有する。
【0046】
制限酵素HindIIIで完全に消化した前記大腸菌染色体DNA 6ng/μl及びプライマー各3μMを含む0.1mlのPCR反応液を用いて、変性:96℃、1分間、アニーリング:55℃、1分間、伸長反応:74℃、1分間からなる反応サイクルを、30サイクルの条件でPCRを行った。
【0047】
上記PCR反応産物及びプラスミドpUC18(宝酒造(株))を、EcoRI及びHindIIIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡(株))を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリDH5αを形質転換した。形質転換株を、アンピシリン(Am)50μg/ml及びX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLB寒天培地で培養し、Am耐性で且つ白色コロニーとなった形質転換株を得た。
【0048】
このようにして得られた形質転換株よりプラスミドを抽出し、目的のDNA断片が挿入されたプラスミドを、pUC−PNP73と命名した。pUC−PNP73をW3110/codA・cdd欠損株に形質転換した。
得られた形質転換体をAm50μg/mlを含むLB培地100mLで37℃・1晩振とう培養した。培養液を13000rpmで10min遠心分離し、得られた菌体を20mLの100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した。懸濁液を再度13000rpmで10min遠心分離し、得られた菌体を2mLの100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、10mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)に懸濁し、−20℃にて凍結保存した。
【0049】
実施例4(デオキシシチジンの合成)
20mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、20mMのシトシン(和光純薬製、特級)、100mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、実施例3で得られた菌体液0.1mlからなる反応液1.0mlを50℃で20時間反応させた。反応液を希釈した後分析したところ、10.7mMのデオキシシチジンが生成していたが、デオキシウリジン、ウラシルは全く検出できなかった。
【0050】
実施例5(5−フルオロデオキシシチジンの合成)
20mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、20mMの2−フルオロシトシン(SIGMA)、100mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、実施例3で得られた菌体液0.1mlからなる反応液1.0mlを50℃で20時間反応させた。反応液を希釈した後分析したところ、10.7mMの2−フルオロデオキシシチジンが生成していたが、2−フルオロデオキシウリジン、2−フルオロウラシルは全く検出できなかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば従来のような煩雑なデアミナーゼ失活処理を施さずに、シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を本来有する微生物であって、且つ該シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼ遺伝子を同時に欠損した微生物を用いて4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物が効率的に製造できる。
【0052】
更に相同組換えによる該遺伝子の破壊株は、完全にシトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両酵素活性を消失している。係る微生物を用いて反応を行うことにより得られるヌクレオシド化合物には微量のデアミノ体も検出されず、本発明の製造方法により製造されるヌクレオシド化合物は、従来の製造法で得られたヌクレオシド化合物が有していた煩雑な精製工程を大幅に簡略化出来るため、医薬品或いは医薬品製造中間体として特に優れている。
【0053】
さらに、該遺伝子を相同組換えにより破壊した菌株は、野生株と何ら変わらない増殖性を示し、工業的に有利な高濃度培養も容易に実施できる。
【0054】
【配列表】
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Claims (5)

  1. シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を本来有する微生物であって、且つ該シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼ遺伝子を同時に欠損した微生物。
  2. 前記微生物が大腸菌である請求項1記載の微生物。
  3. シトシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼの両遺伝子を相同組換えにより破壊し、該遺伝子以外の遺伝子を欠損していない請求項1または2記載の微生物。
  4. 4位にアミノ基を有するピリミジン塩基誘導体から対応するヌクレオシド化合物を合成する活性を有する酵素が発現している請求項1から3の何れか一項に記載の微生物。
  5. 前記微生物の処理物を用いて4位にアミノ基を有するピリミジンヌクレオシド化合物を製造する方法。
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