JP2004347328A - X線撮影装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】デュアルエネルギーX線撮影で取得した被写体の2種類の撮影データを変数とし、2変数より光電効果像及びコンプトン散乱像を直接導出する近似関数を使用する。光電効果像及びコンプトン散乱像を作成する際に必要な非線形連立方程式演算を省略し、演算速度の高速化及び演算精度の向上を図る。
【効果】被写体判別能を向上できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はX線撮影装置に関し、特にデュアルエネルギー法に基づいて被写体の組成に関する情報を高速かつ精度良く取得するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
デュアルエネルギー法は、異なる2つのエネルギースペクトルを有するX線によって取得された被写体のX線透過像に基づいて、被写体中における光電効果によるX線減衰量及びコンプトン散乱によるX線減衰量を導出する方法である。上記導出量に基づき、被写体の組成情報である原子番号及び密度が導出できるため、本技術は、例えば、空港や税関等において使用される爆発物検査装置等に適用されている。
【0003】
特許文献1によれば、被写体透過後にX線検出器で検出されるX線の信号強度は(数1)で示される。
【0004】
【数1】
但し、(数1)において、εはX線のエネルギー、S(ε)被写体に入射するX線のエネルギースペクトルである。(数1)において、Lp及びLcはそれぞれ光電効果によるX線減衰量、コンプトン散乱によるX線減衰量であり、それぞれ(数2)及び(数3)で示される。
【0005】
【数2】
【数3】
但し、(数2)及び(数3)において、sをX線ビームライン上の位置とする。ρ(s)、w(s)、Z(s)をそれぞれ位置sにおける被写体の密度、原子量、原子番号とする。更に、(数1)において、fKN(ε)は単一電子に対するコンプトン散乱確率であり、(数4)に示すKlein−Nishinaの式で与えられる。
【0006】
【数4】
但し、(数4)においてα=ε/mc2(mは電子の静止質量、cは光速)とする。(数2)及び(数3)によれば、Lp及びLcはそれぞれX線の光電効果による減衰係数分布ap(s)及びコンプトン散乱による減衰係数分布ac(s)の積分値となっている。従って、被写体の全周方向から測定したLp及びLcに対して公知のCT再構成アルゴリズムを適用することにより、ap(s)及びac(s)が求まる。その結果、被写体の平均原子番号分布及び密度分布がそれぞれ(数5)及び(数6)で求まる。
【0007】
【数5】
【数6】
デュアルエネルギー法では、高エネルギーのX線及び低エネルギーのX線を用いて取得した被写体の撮影信号IH、ILより、Lp及びLcが導出される。このために、(数1)の近似式である(数7)及び(数8)が用いられる。
【0008】
【数7】
【数8】
但し、JH=lnIH、JL=lnILとする。すなわち、撮影信号IH、ILに対して非線形連立方程式(数7)及び(数8)を解いて、Lp、Lcを求める。(数7)及び(数8)中の近似多項式の係数p0〜p7及びq0〜q7は、組成及び密度が既知である8種類の被写体(以下、キャリブレーションファントムとする)の撮影信号を用いて決定される。例えば、p0〜p7は上記8種類のキャリブレーションファントムに対して取得した8つの撮影信号JH[0]〜JH[7]を用いて、(数9)に示される連立方程式より求まる。
【0009】
【数9】
但し、(数9)において、Lp[i]、Lc[i](i=0〜7)はそれぞれ(数10)及び(数11)で与えられる。
【0010】
【数10】
【数11】
(数10)及び(数11)において、d[i]はi番目のキャリブレーションファントムの厚さとする。同様に、(数9)においてJH[j]をJL[j](j=0〜7)、pjをqj(j=0〜7)と置き換えると係数q0〜q7が求まる。
【0011】
【特許文献1】
米国特許第4029963明細書
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来のデュアルエネルギー法では、被写体の撮影信号より光電効果によるX線減衰係数Lp、及び、コンプトン散乱によるX線減衰係数Lcを求めるために、(数7)及び(数8)で示される非線形連立方程式を解く必要がある。しかし、このような演算は計算量の増加を伴うばかりでなく、場合によっては上記Lp、Lcの導出精度を低下させるという問題があった。これは(数7)及び(数8)で示される近似多項式の精度が十分でないために上記非線形連立方程式に多重解が発生し、その結果誤った解が選択されてしまうことがあるためである。これにより、例えば、爆発物検査装置において、その爆発物判別能が低下する等の問題があった。
【0013】
本発明の目的は、デュアルエネルギー撮影データから被写体の組成情報を高速かつ精度良く検出できるX線撮影装置を提供することにある。
【0014】
本発明の目的及び新規な特徴の詳細は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち代表的な発明の概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。(数7)及び(数8)からなる非線形連立方程式を解く演算を省略するために、両式の逆関数を定義し、これらを次式で近似する。
【0016】
【数12】
【数13】
但し、(数12)、(数13)において、JHo、JLoはエアキャリブレーション後の投影データを対数変換したデータであり、それぞれJHo=ln(Iair/IH)、JLo=ln(Iair/IL)とする。(数12)において、近似多項式の係数u0〜u6は7種類のキャリブレーションファントムに対して高エネルギー及び低エネルギーのX線によって取得した14個の撮影データJHo[0]〜JHo[6]、JLo[0]〜JLo[6]を用いて(数14)に示される連立方程式より求まる。
【0017】
【数14】
同様に、(数14)において、Lp[j]をLc[j](j=0〜6)、ujをvj (k=0〜6)と置き換えることで、(数13)に示される近似多項式の係数v0〜v6が求まる。(数12)及び(数13)を用いれば、検出信号IH、ILより非線形連立方程式を介さずに直接Lp、Lcが求まる。従って、非線形連立方程式の多重解に起因するLp、Lcの導出精度の低下を防止できる。
【0018】
(数12)及び(数13)に示される近似多項式の精度を向上するために、上記キャリブレーションファントムの個数をI個(7<I)に増加してもよい。この場合、最小2乗法を用いて多項式の係数u0〜u6、v0〜v6を導出できる。例えば、係数u0〜u6は、(数12)の右辺による近似値をLp’と書き直すと、(数15)にて決定できる。
【0019】
【数15】
(数15)を計算すれば、係数u0〜u6は(数16)に示す正規方程式の解として与えられる。
【0020】
【数16】
但し、tは転置行列を表すものとする。行列X、Y、Uはそれぞれ(数17)、(数18)、(数19)で与えられる。
【0021】
【数17】
【数18】
【数19】
同様に(数18)、(数19)において、Lp[i]をLc[i] (i=0〜I−1)、ujをvj(j=0〜6)と置き換えることで、係数v0〜v6が求まる。このようにして最小2乗法を使用することで(数12)及び(数13)で示される近似関数に多数のキャリブレーションファントムの情報を反映できるため、近似精度を向上できる。
【0022】
(数12)、(数13)による近似精度を更に向上するためには、変数JHo、JLoによって規定される2次元空間を小区間k(k=1〜K)に分割して、区間毎に近似係数u0(k)〜u6(k)、v0(k)〜v6(k)を導出しても良い。この場合、原子番号の近いキャリブレーションファントムに対するJHo[i]、JLo[i]の測定値が同一区間に包含されるように、2次元空間(JHo、JLo)を分割することが望ましい。このような分割により、分割区間内におけるLp、Lcの変化量を抑えることができるため、近似精度を向上できる。
【0023】
図4は、本発明の実施例において、キャリブレーションファントムとして、ポリエチレン、アクリル、アルミニウム、銅、銀を使用した場合のJHo[i]、 JLo[i]の測定結果を示した図である。但し、JHo[i]、JLo[i]測定時のX線管の管電圧をそれぞれ160、80[kV]とした。図4によれば、同一組成のキャリブレーションファントムに対する測定値は、2次元座標(JHo、JLo)の原点をするほぼ直線上に位置することがわかる。但し、上記測定値の原点からの距離は、キャリブレーションファントムの厚さに比例して増大する性質がある。またキャリブレーションファントムの原子番号が増大するに従い、上記直線の傾きが小さくなる性質がある。従って、傾きα=JHo/JLoに応じて上記区間分割を行えば、原子番号の近いキャリブレーションファントム同士を同一区間内に収められる。具体的には、α=0〜1をK分割するαk=k/K(k=1〜K)に対して、αk−1≦α<αkで示される空間をk番目の小区間とすればよい。このように2次元空間(JHo、JLo)を小区間に分割することで、各区間におけるLp、Lcの近似精度を向上できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のX線撮影装置は、異なる2種類のエネルギースペクトルを有するX線を放射するX線発生手段と、被写体透過後の2種類のX線を検出するX線検出手段とを有し、X線検出手段で検出された2種類の検出信号に基づいて、被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像を生成する。
【0025】
本発明のX線撮影装置は、更に、異なる組成及び/又は厚さを有する複数のX線吸収体に対して取得した上記2種類の検出信号を変数としてX線吸収体の光電効果によるX線減衰量を近似する第1の近似関数及び2種類の検出信号を変数としてX線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量を近似する第2の近似関数を生成する近似関数生成手段と、近似関数生成手段によって生成された第1の近似関数及び第2の近似関数に基づいて、被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像をそれぞれ生成するX線透過像近似手段を具備する。
【0026】
本発明のX線撮影装置では、2種類の検出信号の組み合わせで規定される2次元空間を2種類の検出信号同士の比率に応じて複数の小区間に分割し、複数のX線吸収体に対して取得された2種類の検出信号のうち上記小区間付近に属するもののみを変数として、近似関数生成手段は小区間毎に第1の近似関数及び第2の近似関数を生成する。
【0027】
本発明のX線撮影装置のX線透過像近似手段は、被写体に対して取得された2種類の検出信号が属する小区間を複数の小区間の中から選択する属性区間選択機能と、属性区間選択機能によって検出された小区間に対応する第1の近似関数及び第2の近似関数を用いて被写体の光電効果によるX線減衰量及びX線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量をそれぞれ近似する機能を有する。
【0028】
本発明のX線撮影装置は、2次元空間上の複数位置において予め第1の近似関数を用いて計算したX線吸収体の光電効果によるX線減衰量の値を記録する第1のテーブルと2次元空間上の複数位置において予め第2の近似関数を用いて計算したX線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量の値を記録する第2のテーブルを有し、X線透過像近似手段は、被写体に対して取得された2種類の検出信号に対して参照される第1及び第2のテーブル値に基づいて被写体の光電効果によるX線減衰量及びX線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量を近似する機能を有する。
【0029】
本発明のX線撮影装置は、第1の近似関数及び第2の近似関数がそれぞれN個(但し、Nは2以上の自然数とする)のパラメータを有し、近似関数生成手段は、異なる組成及び/又は厚さを有するN個のX線吸収体に対して取得した2種類の検出信号とX線吸収体の光電効果によるX線減衰量との関係を表すN個の連立方程式を用いて第1の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能と、2種類の検出信号とX線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量との関係を表すN個の連立方程式を用いて第2の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能とを有する。
【0030】
本発明のX線撮影装置は、第1の近似関数及び第2の近似関数がそれぞれN個(但し、Nは2以上の自然数とする)のパラメータを有し、近似関数生成手段は、異なる組成及び/又は厚さを有するM個(但し、N<Mとする)のX線吸収体に対して取得した2種類の検出信号とX線吸収体の光電効果によるX線減衰量との関係を最小2乗近似することで第1の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能と、2種類の検出信号とX線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量との関係を最小2乗近似することで第2の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能とを有する。
【0031】
本発明のX線撮影装置は、被写体の全周方向から2種類の検出信号を取得するためのスキャン手段と、全周方向から取得した2種類の検出信号よりX線透過像近似手段を用いて生成した被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像に基づいて被写体の光電効果によるX線減衰分布の断層像及び被写体のコンプトン散乱によるX線減衰分布の断層像を生成するX線断層像生成手段を有する。また、このX線断層像生成手段は、X線断層像生成手段により生成された被写体の光電効果によるX線減衰分布の断層像及び被写体のコンプトン散乱によるX線減衰分布の断層像に基づいて、被写体の原子番号分布の断層像及び密度分布の断層像を生成する機能を有する。
【0032】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施例のX線撮影装置の正面から見た模式図と装置の各部を説明する図である。本実施例のX線撮影装置は、X線管1、X線検出器2、回転板3、ベルトコンベアー4、駆動モーター5、駆動ベルト6、ガントリー7、撮影制御手段100、操作卓101、エアキャリブレーション手段110、フレームメモリ111、信号変換手段112、画像再構成手段113、危険物判別手段114、画像表示手段115、メモリ120、変換テーブル作成手段121、変換テーブル用メモリ122、ファントム特性値演算手段123等から構成される。
【0034】
以下では、X線管1及びX線検出器2を合わせて撮影系と呼ぶ。撮影系は回転板3に固定されている。駆動モーター5は駆動ベルト6を介して回転板3及び撮影系全体を回転する。撮影系は上記回転中に被写体10に対して全周方向からX線を照射し、そのX線透過像を撮影する。
【0035】
図1において、X線管1のX線発生点とX線検出器2のX線入力面との距離の代表例は1600[mm]である。ガントリー7の中央には被写体10及びベルトコンベアー4を配置するための円形の開口部8が設けられている。開口部8の直径の代表例は900[mm]である。回転板3の1回転の所要時間の代表例は1.0[s]である。X線検出器2にはシンチレータ及びフォトダイオード等から構成される公知のX線検出器が使用される。X線検出器2は、X線管1から略等距離である円弧上に図示しない多数の検出素子を有しており、その素子数(以下、チャネル数とする)の代表例は950個である。各検出素子のチャネル方向のサイズの代表例は2[mm]である。撮影系の1回転における撮影回数の代表例は900回であり、回転板3が0.4度回転する毎に1回の撮影が行われる。
【0036】
次に、本実施例のX線撮影装置の動作を説明する。本X線撮影装置には、本撮影モード及びキャリブレーション撮影モードの2種類の撮影モードが用意されている。本撮影モード及びキャリブレーション撮影モードの選択は、検者が操作卓110を通して指示する。なお、図1では、本撮影モード時におけるデータの流れを実線で、キャリブレーション撮影時におけるデータの流れを破線で示してある。以下、両撮影モードにおける動作を説明する。
【0037】
まず、本撮影モードにおける本X線撮影装置の動作を説明する。検者は操作卓101を通して被写体10の撮影位置を指定した後に撮影開始を指示する。撮影開始が指示されると、ベルトコンベアー4は被写体10を回転板3に対して略垂直な方向に移動する。そして被写体10の撮影位置が上記指定値と一致した時点で移動を停止し、被写体10の配置を終了する。一方、撮影制御手段100は撮影開始が指示されると同時に駆動モーター5を介して回転板3の回転を開始する。回転板3の回転が定速状態に入り、かつ被写体10の上記配置が終了した時点で撮影制御手段100はX線管1のX線照射タイミング及びX線検出器2の撮影タイミングを指示し、撮影を開始する。
【0038】
撮影は回転板3が2回転する期間中行われ、前半の回転ではX線管1の管電圧が高管電圧に、また後半の回転ではX線管1の管電圧が低管電圧に設定される。撮影制御手段100は上記前半の回転が終了すると同時にX線管1の管電圧を高管電圧から低管電圧に切り替える。なお、上記電圧は撮影に先立って検者により指定される。指定される管電圧値の代表例は160[kV](高管電圧)及び80[kV](低管電圧)である。
【0039】
次に、エアキャリブレーション手段110は、取得された撮影データに対して公知のエアキャリブレーション処理を行い、結果をフレームメモリ111に記録する。
【0040】
次に、信号変換手段112は、フレームメモリ111より高管電圧撮影時の撮影データ及び低管電圧撮影時の撮影データを読み出し、後述する方法を用いてこれらを光電効果及びコンプトン散乱によるX線減衰量の値に変換する。
【0041】
次に、画像再構成手段113は上記変換後の撮影データに基づき、公知のCT画像再構成アルゴリズムを用いて被写体10の光電効果によるX線減衰係数の断層像、及び、コンプトン散乱によるX線減衰係数の断層像を生成する。また画像再構成手段113は、上記断層像を(数5)及び(数6)を用いて被写体10の原子番号の断層像及び密度の断層像に変換する。
【0042】
次に、危険物判別手段114は上記原子番号及び密度の断層像に基づき、公知の技術を用いて被写体10中に爆発物等の危険物が含まれるかどうかを判断する。
【0043】
最後に、画像表示手段115は、上記断層像を表示すると同時に断層像中の危険物部分に対して着色等の強調表示を行い、検者に危険物の有無に関する情報を提供する。
【0044】
次に、キャリブレーション撮影モードにおける本X線撮影装置の動作について説明する。キャリブレーション撮影時には、ベルトコンベアー4及び被写体10が取り除かれ、代わりに開口部8の中央部に図示しないキャリブレーションファントムが配置される。キャリブレーションファントムは、略均一な材質及び厚さで形成された板状の物質であり、その材質、密度、厚さが既知である材料が使用される。キャリブレーションファントムの材質の代表例は、ポリエチレン、アクリル、アルミニウム、銅、銀等である。各材質のキャリブレーションファントムに対して様々な厚さを有するファントムが用意される。以下では、このようなキャリブレーションファントムが全部でI個存在するものとする。
【0045】
各キャリブレーションファントムの材質、密度、厚さの情報は検者によって操作卓101を通して入力される。ファントム特性値演算手段123は上記入力値に基づいて、i番目(i=0〜I−1)に測定されたファントムの、光電効果によるX線減衰量Lp[i]及びコンプトン散乱によるX線減衰量Lc[i]をそれぞれ(数10)及び(数11)を用いて計算し、メモリ120に記録する。一方検者は、各キャリブレーションファントムを開口部8の中央部に配置した後に、操作卓101を通して撮影開始の指示を行う。
【0046】
撮影開始が指示されると、撮影制御手段100はX線管1のX線照射タイミングを指示し、撮影を開始する。但し、このとき回転板3は回転されず、X線管1は上方に固定されているものとする。撮影は2回行われ、1回目の撮影ではX線管1の管電圧が高管電圧に、2回目の撮影ではX線管1の管電圧が低管電圧に設定される。
【0047】
但し、これら管電圧の設定値は本撮影モードにおいて使用される管電圧と同一とする。上記2回の撮影においては、X線検出器2の中央のチャネルにおける撮影データのみが読み出される。但し、上記中央チャネルでは各キャリブレーションファントムの厚み方向を透過した後のX線が検出されるものとする。
【0048】
読み出された撮影データは、エアキャリブレーション手段110によって公知のエアキャリブレーション処理が行われた後にメモリ120に記録される。以上の処理はI種類の全てのキャリブレーションファントムに対して行われる。このときメモリ120には、各キャリブレーションファントムに対して計算された光電効果によるX線減衰量Lp[i]及びコンプトン散乱によるX線減衰量Lc[i]と、高管電圧撮影時の撮影データJHo[i]及び低管電圧撮影時の撮影データJLo[i]が全て記録されている。
【0049】
次に、上記全データの記録が終了すると、変換テーブル作成手段121は後述する方法を用いて(数12)及び(数13)に示される変換関数の係数u0〜u6、v0〜v6を導出し、結果を変換テーブル用メモリ122に記録する。
【0050】
図2は、本発明の実施例のX線撮影装置の信号変換手段112における処理手順を説明するための図である。但し、信号変換処理手段112は、専用演算器や汎用演算器を用いたソフトウェア処理等で実現される。既に説明したように、本撮影モードでは被写体10の高管電圧撮影データ及び低管電圧撮影データが取得される。
【0051】
これらの撮影データはそれぞれエアキャリブレーション手段110によって公知のエアキャリブレーション処理が施された後に、それぞれフレームメモリ111a、111bに記録される。以下では、フレームメモリ111a、111bに記録されたデータをそれぞれJHo (m、θn)、JLo(m、θn)と表す。但し、mはX線検出器2のチャネル番号を表し、θnはCT計測時のn回目の撮影におけるX線管1の回転角度を表すものとする。
【0052】
信号変換処理手段112では、まず、同一チャネルn及び同一の撮影角度θnにおいて取得された2つの撮影データJHo(m、θn)、JLo(m、θn)がそれぞれフレームメモリ111a及び111bより読み出され、両者の比率α=JHo(m、θn)/JLo(m、θn)が計算される(ステップ200)。
【0053】
次に、αk−1≦α<αkを満たすkが導出される(ステップ201)。但し、αk (k=0〜K)は、図4に示したK個の小区間を規定するパラメータであり、予め設定された値が使用される。ステップ201で導出されたkは、上記2つの撮影データが属する小区間の番号に相当する。
【0054】
次に、上記小区間kにおける変換関数の係数u0[k]〜u6[k]、 v0[k]〜v6[k]がそれぞれメモリ112a及び112bより読み出される(ステップ202)。
【0055】
最後に、上記係数及び(数12)、(数13)に示される変換関数を用いて、光電効果減衰量Lp(m、θn)及びコンプトン散乱減衰量Lc(m、θn)が計算される(ステップ203)。
【0056】
信号変換処理手段112におけるステップ200〜203の処理は、全てのm(m=1〜M)とθn(n=1〜N)の組み合わせに対して行われ、処理結果は画像再構成手段113に入力される。
【0057】
図3は、本発明の実施例のX線撮影装置の変換テーブル作成手段121における処理手順を説明するための図である。但し、変換テーブル作成手段121は、専用演算器や汎用演算器を用いたソフトウェア処理等で実現される。既に説明したように、キャリブレーション撮影モードではI種類のキャリブレーションファントムに対して、高管電圧撮影データ及び低管電圧撮影データが取得される。
【0058】
これらの撮影データはそれぞれエアキャリブレーション手段110によって公知のエアキャリブレーション処理が施された後に、メモリ120aに記録される。以下では、メモリ120aに記録された高管電圧撮影データ及び低管電圧撮影データをそれぞれJHo[i]、JLo[i]と表す。但し、iはキャリブレーションファントムの番号(i=0〜I−1)とする。
【0059】
一方、ファントム特性値演算手段123は、各ファントムの光電効果によるX線減衰量Lp[i]及びコンプトン散乱によるX線減衰量Lc[i]をそれぞれ(数10)及び(数11)を用いて計算し、メモリ120bに記録する。変換テーブル作成手段121では、まず、同一キャリブレーションファントムに対して取得された2つの撮影データJHo[i]、JLo[i]がメモリ120aより読み出され、両者の比率α[i]= JHo[i]/JLo[i]が計算される(ステップ300)。
【0060】
次に、各α[i]に対してαk−1≦α[i]<αkを満たすkが導出される。このときキャリブレーションファントムiは集合Ckに属する要素として登録される。但し、Ckは小区間kに属するキャリブレーションファントムで構成される集合とする(ステップ301)。なお、ステップ300及び301は全てのキャリブレーションファントムi(i=0〜I−1)に対して繰り返し実行される。
【0061】
次に、i∈Ckを満たすJHo[i]、JLo[i]がメモリ120aより読み出され、(数17)に示される行列Xが作成される(ステップ302)。
【0062】
一方、i∈Ckを満たすLp[i]、Lc[i]がメモリ120bより読み出され、(数17)で示される行列Yが作成される(ステップ303)。
【0063】
最後に、作成された行列X、Yを用いて、(数16)より小区間kにおける変換関数の係数u0[k]〜u6[k]及びv0[k]〜v6[k]が計算され、計算結果がそれぞれメモリ112a及び112bに書き込まれる(ステップ304)。なお、ステップ302〜304は全ての小区間k(i=1〜K)に対して繰り返し実行される。
【0064】
以上説明した本実施例のX線撮影装置を用いれば、被写体10に対して高管電圧及び低管電圧で撮影した2種類の撮影データを、非線形連立方程式を介すことなく、光電効果によるX線減衰量及びコンプトン散乱によるX線減衰量のデータに容易に変換できる。従って、上記変換に伴う演算量を減少し、演算速度を向上できる。また多重解が発生する等、非線形連立方程式を用いる従来法に特有の問題が回避されるため、計算精度を向上できる。更に変換関数に多数のキャリブレーションファントムの情報を反映できること、小区間毎に変換関数を作成できること等により、変換関数の近似精度を高め、変換時の計算精度を向上できる。その結果、本X線撮影装置による爆発物判別能を向上できる。
【0065】
なお、本実施例では、撮影データ取得時に信号変換手段112において数12、13に示される変換関数を演算しているが、予め様々な撮影データの組み合わせに対して上記変換関数を用いて計算した結果を変換テーブル用メモリ122に記録しておいても良い。このとき信号変換手段112では、高管電圧及び低管電圧で撮影した2種類の撮影データに応じて、該当する撮影データに対して予め計算された信号変換後の値、すなわち、光電効果によるX線減衰量及びコンプトン散乱によるX線減衰量を変換テーブル用メモリ122より読み出して信号変換を行う。このため、変換テーブル用メモリ122の参照のみで上記信号変換を行えるので、高速に変換できる利点がある。
【0066】
また本実施例では、本発明によるX線撮影装置の一例としてX線CT装置の例を示したが、デュアルエネルギー法に基づいて被写体の光電効果によるX線吸収量及びコンプトン散乱によるX線吸収量の2次元イメージを作成する一般のX線撮影装置等に本発明を適用しても良いことは言うまでもない。
【0067】
本発明では、デュアルエネルギーX線撮影で取得した被写体の2種類の撮影データを変数とし、2変数より光電効果像及びコンプトン散乱像を直接導出する近似関数を使用し、光電効果像及びコンプトン散乱像を作成する際に必要な非線形連立方程式演算を省略し、演算速度の高速化でき演算精度を向上できる。この結果、被写体の光電効果像及びコンプトン散乱像を高速かつ精度良く生成でき、被写体判別能を向上できる。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、デュアルエネルギー撮影機能を有するX線撮影装置において、被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像を高速かつ精度良く生成でき、X線透過像に基づく被写体判別能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のX線撮影装置の正面から見た模式図と装置の各部を説明する図。
【図2】本発明の実施例のX線撮影装置の信号変換手段における処理手順を説明するための図。
【図3】本発明の実施例のX線撮影装置の変換テーブル作成手段における処理手順を説明するための図。
【図4】本発明の実施例において、ポリエチレン、アクリル、アルミニウム、銅、銀に対して取得した、高管電圧撮影時のX線透過データ及び低管電圧撮影時のX線透過データの測定結果を2次元プロットした図。
【符号の説明】
1…X線管、2…X線検出器、3…回転板、4…ベルトコンベアー、5…駆動モーター、6…駆動ベルト、7…ガントリー、8…円形の開口部、10…被写体、100…撮影制御手段、101…操作卓、110…エアキャリブレーション手段、111…フレームメモリ、112…信号変換手段、113…画像再構成手段、114…危険物判別手段、115…画像表示手段、120…メモリ、121…変換テーブル作成手段、122…変換テーブル用メモリ、123…ファントム特性値演算手段。
Claims (8)
- 異なる2種類のエネルギースペクトルを有するX線を放射するX線発生手段と、被写体透過後の前記2種類のX線を検出するX線検出手段とを有し、前記X線検出手段で検出された2種類の検出信号に基づいて、前記被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像を生成するX線撮影装置において、異なる組成及び/又は厚さを有する複数のX線吸収体に対して取得した前記2種類の検出信号を変数として前記X線吸収体の光電効果によるX線減衰量を近似する第1の近似関数及び前記2種類の検出信号を変数として前記X線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量を近似する第2の近似関数を生成する近似関数生成手段と、前記近似関数生成手段によって生成された前記第1の近似関数及び前記第2の近似関数に基づいて、前記被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像をそれぞれ生成するX線透過像近似手段を有することを特徴とするX線撮影装置。
- 請求項1に記載のX線撮影装置において、前記2種類の検出信号の組み合わせで規定される2次元空間を前記2種類の検出信号同士の比率に応じて複数の小区間に分割し、前記複数のX線吸収体に対して取得された前記2種類の検出信号のうち前記小区間付近に属するもののみを変数として、前記近似関数生成手段は前記小区間毎に前記第1の近似関数及び前記第2の近似関数を生成することを特徴とするX線撮影装置。
- 請求項2に記載のX線撮影装置において、前記X線透過像近似手段は、前記被写体に対して取得された前記2種類の検出信号が属する小区間を前記複数の小区間の中から選択する属性区間選択機能と、前記属性区間選択機能によって検出された小区間に対応する前記第1の近似関数及び第2の近似関数を用いて前記被写体の光電効果によるX線減衰量及び前記X線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量をそれぞれ近似する機能を有することを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。
- 請求項1に記載のX線撮影装置において、前記2種類の検出信号の組み合わせで規定される2次元空間上の複数位置において、予め前記第1の近似関数を用いて計算した前記X線吸収体の光電効果によるX線減衰量の値を記録する第1のテーブルと、前記2次元空間上の複数位置において予め前記第2の近似関数を用いて計算した前記X線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量の値を記録する第2のテーブルとを有し、前記X線透過像近似手段は、前記被写体に対して取得された前記2種類の検出信号に対して参照される前記第1及び第2のテーブル値に基づいて前記被写体の光電効果によるX線減衰量及び前記X線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量を近似する機能を有することを特徴とするX線撮影装置。
- 請求項1に記載のX線撮影装置において、前記第1の近似関数及び第2の近似関数がそれぞれN個(但し、Nは2以上の自然数とする)のパラメータを有し、前記近似関数生成手段は、異なる組成及び/又は厚さを有するN個のX線吸収体に対して取得した前記2種類の検出信号と前記X線吸収体の光電効果によるX線減衰量との関係を表すN個の連立方程式を用いて前記第1の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能と、前記2種類の検出信号と前記X線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量との関係を表すN個の連立方程式を用いて前記第2の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能とを有することを特徴とするX線撮影装置。
- 請求項1に記載のX線撮影装置において、前記第1の近似関数及び第2の近似関数はそれぞれN個(但し、Nは2以上の自然数とする)のパラメータを有し、近似関数生成手段は、異なる組成及び/又は厚さを有するM個(但し、N<Mとする)のX線吸収体に対して取得した前記2種類の検出信号と前記X線吸収体の光電効果によるX線減衰量との関係を最小2乗近似することで前記第1の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能と、前記2種類の検出信号と前記X線吸収体のコンプトン散乱によるX線減衰量との関係を最小2乗近似することで前記第2の近似関数が有するN個のパラメータ値を決定する機能とを有することを特徴とするX線撮影装置。
- 請求項1に記載のX線撮影装置において、前記被写体の全周方向から前記2種類の検出信号を取得するためのスキャン手段と、前記全周方向から取得した2種類の検出信号より前記X線透過像近似手段を用いて生成した前記被写体の光電効果によるX線透過像及びコンプトン散乱によるX線透過像に基づいて前記被写体の光電効果によるX線減衰分布の断層像及び前記被写体のコンプトン散乱によるX線減衰分布の断層像を生成するX線断層像生成手段とを有することを特徴とするX線撮影装置。
- 請求項7に記載のX線撮影装置において、前記X線断層像生成手段は、前記X線断層像生成手段により生成された前記被写体の光電効果によるX線減衰分布の断層像及び前記被写体のコンプトン散乱によるX線減衰分布の断層像に基づいて、前記被写体の原子番号分布の断層像及び密度分布の断層像を生成する機能を有することと特徴とするX線撮影装置。
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