JP2004356894A - 音質調整装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ケプストラムのケフレンシー長を固定したまま、リプルを抑制する手段を備えた音質調整装置を得る。
【解決手段】音質調整装置は所望のフィルタ応答を音質調整装置に入力する所望フィルタ応答入力部11と、所望フィルタ応答入力部11で入力され、設定されたフィルタ応答に対してそのフーリエスペクトルを算出するスペクトル算出部12と、スペクトル算出部12で算出したフーリエスペクトルに対し平滑化処理を施すスペクトル平滑化処理部13と、スペクトル平滑化処理部13で平滑化されたフーリエスペクトルをケプストラムに変換するケプストラム算出部14と、ケプストラム算出部14で算出したケプストラムをフィルタ係数とするLMAフィルタ15で構成される。また、LMAフィルタ15に音声信号を入力する入力端子16と、音声信号を出力する出力端子17とを備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、デジタルフィルタによって構成した音質調整装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
音声信号の音質を調整する方法として、デジタルフィルタを用いる方法がある。このような音質調整フィルタを構成するデジタルフィルタには、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ、IIR(Ininite Impulse Response)フィルタがある。
【0003】
音質調整フィルタを設計する場合、所望するフィルタ応答を何らかの方法によって設計する必要があるが、例えば所望のフィルタ応答をフーリエスペクトルとして表し、それに基づいてフィルタ係数を算出する方法がある。その一例はフーリエスペクトルを逆フーリエ変換することによってインパルス応答を求め、そのインパルス応答をフィルタ係数とする方法である。この方法によるとフィルタ係数を容易に算出することができ、このようにして求められたフィルタ係数を備えるフィルタとして、例えばFIRフィルタがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし一般的に、FIRフィルタはIIRフィルタに比べて演算量、遅延時間が大きい。一方、IIRフィルタは比較的装置規模の小さいフィルタとして構成することが可能であるが、一般的なIIRフィルタは自由度が低く、必ずしも所望するフィルタ特性が実現できるものではない課題がある。ところで、フーリエスペクトルからIIRフィルタを設計する場合、フーリエスペクトルをケプストラムに変換し、そのケプストラムからフィルタ係数を求める方法があり、これには以下の二種類が存在する。
【0005】
その一つは、フーリエスペクトルを変換して求めたケプストラムを、さらに線形予測(以下、「LPC」と記す)係数に変換し、その係数をIIRフィルタのフィルタ係数として使用する方法である(例えば、特許文献2参照)。他の一つは、フーリエスペクトルから求めたケプストラムを、そのまま係数として用いるフィルタであり、これは対数振幅近似(以下、「LMA」と記す)フィルタとして知られている(例えば、今井 聖著「対数振幅近似(LMA)フィルタ」電子通信学会論文誌、vol.J63−A,No12,1980年,pp886−893参照)。
【0006】
前記論文に記載されているLMAフィルタは、フィルタの設計自由度が高く、実現可能なフィルタ応答の幅が広い。また、フィルタ係数の算出、およびフィルタリング処理に要する演算量は比較的小規模なものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−205106号公報(第1図)
【特許文献2】
特開平7−36484号公報(第58−65項、第3図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したケプストラムから変換したLPC係数をフィルタ係数としたIIRフィルタやLMAフィルタでは、実際に構成したフィルタの応答特性に所望のフィルタ応答に反するリプルが生じる場合がある。特に所望のフィルタ応答において鋭いピークやディップのような急峻な特性の変化点が存在する場合、このようなリプルは顕著にあらわれ、音質調整装置の精度を落とす要因となるものである。
【0009】
また、ケプストラムのケフレンシー長を十分大きくとればこのようなリプルを抑制することができるが、音質調整フィルタの装置規模が大きくなる。これはフィルタの装置規模や演算量に制限がある場合、ケプストラムのケフレンシー長を大きくとることは困難である。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ケプストラムのケフレンシー長を固定したまま、リプルを抑制する手段を備えた音質調整装置を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る音質調整装置は、音質調整フィルタにフィルタ係数を入力して所望の特性のフィルタを構成し、音質調整フィルタに音声信号を通すことによって音声信号を調整する音質調整装置において、所望するフィルタ応答のフーリエスペクトルを平滑化する平滑化手段と、平滑化手段により平滑化されたフーリエスペクトルからケプストラムを算出するケプストラム算出手段と、ケプストラム算出手段によって算出されたケプストラムに基づいて、フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出手段とを備えるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明に係る音質調整装置の実施の一形態について説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る音質調整装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、図1は実施の形態1に係る音質調整装置の構成を示すブロック図であり、図2はこの音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するための図であり、図3は音質調整装置におけるフーリエスペクトルの平滑化方法の効果の一例を説明するための図である。
【0013】
この実施の形態1は、予め音質調整装置に対する所望のフィルタ応答が明らかであり、その音質調整フィルタのフィルタ係数を算出する場合の例である。ここで音質調整フィルタにはLMAフィルタを用いることとする。
【0014】
実施の形態1の音質調整装置は図1に示すように、所望のフィルタ応答を音質調整装置に入力する所望フィルタ応答入力部11と、所望フィルタ応答入力部11で入力され、設定されたフィルタ応答に対してそのフーリエスペクトルを算出するスペクトル算出部12と、スペクトル算出部12で算出したフーリエスペクトルに対し平滑化処理を施すスペクトル平滑化処理部13と、スペクトル平滑化処理部13で平滑化されたフーリエスペクトルをケプストラムに変換するケプストラム算出部14と、ケプストラム算出部14で算出したケプストラムをフィルタ係数とするLMAフィルタ15で構成される。また、LMAフィルタ15に音声信号を入力する入力端子16と、音声信号を出力する出力端子17とを備える。
【0015】
つぎに、音質調整装置の動作について説明する。
所望のフィルタ応答は、所望フィルタ応答入力部11に入力される。所望フィルタ応答入力部11に入力されるフィルタ応答は、例えばフィルタのインパルス応答や伝達関数、あるいは周波数を横軸としたゲイン関数のような形で与えられる。所望フィルタ応答入力部11に入力されたフィルタ応答はスペクトル算出部12で式(1)に示すフーリエスペクトルに変換される。
【数1】
Figure 2004356894
このときのフーリエスペクトルの長さNは、後段で説明するケプストラムのケフレンシー長に等しい。
【0016】
ここで算出されたフーリエスペクトルはスペクトル平滑化処理部13において平滑化される。フーリエスペクトルの平滑化はフーリエスペクトルのサンプル値系列に対し、低域通過特性を持ったメジアンフィルタによる濾波により行う。この方法による平滑化を式(2)に示す。
【数2】
Figure 2004356894
【0017】
上述の式(2)において、S(k)は平滑化前のフーリエスペクトル〔式(1)〕のサンプル値系列であり、また、W(n)は平滑化に用いるメジアンフィルタの係数列である。また、S(n)は平滑化後のフーリエスペクトルのサンプル値系列である。図2はこの平滑化方法をあらわしていて、図2(a)は平滑化前の対数振幅値を示し、図2(b)は平滑化後の対数振幅値を示す。
【0018】
音質調整フィルタのフィルタ応答にリプルが生じる原因は、所望のフィルタ応答のフーリエスペクトルの急峻な変化がケプストラムの打ち切りによって追従できなくなることによるものであり、スペクトルのサンプル値系列を低域通過フィルタによって濾波することでその影響を押さえている。なお、この平滑化は単なるフーリエスペクトルに限らず、パワースペクトルや対数2乗振幅スペクトルに対して行うものであってもよい。
【0019】
図3(a)は所望のフィルタ応答が、ある周波数で急激に利得が増大するシェルビング特性であった場合に、フーリエスペクトルの平滑化を行わずにLMAフィルタを構成した場合の、音質調整フィルタの応答の対数2乗振幅スペクトルを示している。また、図3(b)はフーリエスペクトルを式(2)の平滑化方法によって平滑化した場合の音質調整フィルタの応答の対数2乗振幅スペクトルを示している。
【0020】
平滑化されたフーリエスペクトルは、ケプストラム算出部14において、次の式(3)によってケプストラムに変換される。
【数3】
Figure 2004356894
上述の式(3)において、c(m)はケプストラムであり、mはケフレンシーである。
【0021】
ケプストラム算出部14において算出されたケプストラムはLMAフィルタ15においてフィルタ係数として使用される。LMAフィルタの伝達関数は、次の式(4)によって定義される。
【数4】
Figure 2004356894
【0022】
式(3)に示すような指数関数型の伝達関数はそのままフィルタ回路として実現することは不可能であるが、所定の方法に基づき修正Pade近似による有理多項式近似によって、実現可能な形に展開し、フィルタ回路を構成する。所定の方法とは、例えば今井 聖著「音声信号処理」 森北出版、 1996年、pp144−148に記述されているものがある。
【0023】
以上の処理は音声信号が入力端子16に入力される以前の段階で予め行われているものとする。なお、上記ケプストラムは複数の所望フィルタ応答に対してそれぞれ算出され、音質調整装置の使用時に任意に選択するようにしてもよい。
【0024】
ケプストラム算出部14で算出されたケプストラムをフィルタ係数とするLMAフィルタ15に対し、音声信号は入力端子16で入力され、LMAフィルタ15で濾波した音声信号は出力端子17から出力される。
【0025】
この実施の形態1の音質調整装置によれば、所望のフィルタ応答のフーリエスペクトルに対して平滑化処理を施すことによって、音質調整フィルタのリプルを抑制して所望のフィルタ応答に忠実な音質調整フィルタを構成することができ、高精度の音質調整が可能となる。
また、この時の平滑化処理に低域通過特性をもったメジアンフィルタを用いていることにより、小さい演算量で平滑化処理を行うことが可能となる。
【0026】
また、音声信号が入力される前の段階において予めフィルタ係数を算出する形態をとることにより、フィルタ係数を算出する手段と音質調整フィルタをそれぞれ独立して構成することができるので、音質調整装置の装置規模を小さくすることが可能となる。
さらに、音質調整フィルタとしてLMAフィルタを用いることにより、演算量が小規模で、かつ設計自由度の高い音質調整装置を構成することが可能となる。
【0027】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る音質調整装置について、図4を参照して説明する。なお、図4は実施の形態2に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するための図である。
【0028】
この実施の形態2は、上述した実施の形態1におけるスペクトルの平滑化方法として低域通過特性をもったメジアンフィルタに換わり、図4に示すスペクトルデータの奇数番目または偶数番目のサンプルの値を隣接するサンプルの平均値で置き換える方法を用いるものである。その他の構成要素と働きは実施の形態1で説明したことと同様であり、省略する。
【0029】
この実施の形態2の音質調整装置に用いられる平滑化方法を式(5)に示す。
【数5】
Figure 2004356894
式(5)において、S(k)は平滑化する前のフーリエスペクトルの振幅成分であり、S(k)は平滑化後のフーリエスペクトルの振幅成分である。ただし、S(k)はパワースペクトルや対数2乗振幅スペクトルであってもよい。平滑化されたフーリエスペクトルは図1のケプストラム算出部14に入力されることになる。尚、図4(a)は平滑化前の対数振幅値を示し、図4(b)は奇数番目または偶数番目のサンプルの値を隣接するサンプルの平均値で置き換えた平滑化後の対数振幅値を示している。
【0030】
この実施の形態2の音質調整装置によれば、所望のフィルタ応答のピークやディップにおける利得を保ったまま平滑化を行うことができるため、所望のフィルタ応答のピークやディップを損なうことなく、リプルを抑制させたフィルタ応答を実現することが可能となり、音質調整装置の効果を高めることが可能となる。
【0031】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る音質調整装置について、図5および図6を参照して説明する。なお、図5はこの発明の実施の形態3に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するための図であり、図6は実施の形態3に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するためのフローチャートである。
【0032】
上述の実施の形態1および実施の形態2によれば、所望のフィルタ応答のフーリエスペクトルに対し、全帯域で平滑化処理を施しているが、音質調整フィルタに生じるリプルはフーリエスペクトルにおけるピークやディップなどの急峻な特性の変化によるところが大きい。従ってこの実施の形態3では、音質調整フィルタがサポートする全ての帯域において対フーリエスペクトルの平滑化を行うのではなく、リプルを生む原因となるフーリエスペクトルが急峻に変化している帯域に対して平滑化を行うものである。その他の構成要素と働きは実施の形態1で説明したことと同様であり、省略する。
【0033】
スペクトルの平滑化方法で実施するために図5に示すように、スペクトル入力端子21から入力されたフーリエスペクトルに対して特性が急峻に変化する変化点を検出する特性変化点検出部22と、特性変化点検出部22で検出された変化点に基づいてスペクトル入力端子21で入力されたフーリエスペクトルを平滑化するスペクトル平滑化処理部23があり、平滑化したフーリエスペクトルはスペクトル出力端子24から出力される。平滑化したフーリエスペクトルは図1に示すケプストラム算出部14に入力されることになる。
【0034】
つぎに与えられたフーリエスペクトルに対し急峻に特性が変化する点を検出する方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、入力されたフーリエスペクトルS(n),n=0,・・・,Nにおいて、k=1とした後(ステップST101)、n=kであるS(k)に対して、隣接するS(k+1)との差分D(k)を、式(6)に基づいて計算する(ステップST102)。ただし、S(n)はパワースペクトルや対数2乗振幅スペクトルであってもよい。
【数6】
Figure 2004356894
【0035】
つぎに予め与えられた閾値εに対して、D(k)>εであるか否かを判別する(ステップST103)。ステップST103においてD(k)が閾値を超えていた場合(YES)、S(n),n=0,・・・,Nの平均値をE〔S(n)〕として、式(7)の条件に合致しているか否かを判別する(ステップST104)。
【数7】
Figure 2004356894
【0036】
式(7)が成り立っていれば(YES)、現在の周波数点kを特性変化点として出力する(ステップST105)。一方、式(7)が成り立っていなければ(NO)、周波数点k+1を特性変化点として検出し(ステップST106)、kに1を加算して(ステップST107)、kがNになったか否かを判別する(ステップST108)。ステップST108においてk=Nであれば(YES)、フーリエスペクトルに対し急峻に特性が変化する点の検出を終了する。一方、ステップST108においてk=Nでなければ(NO)、ステップST102に戻って、動作を繰り返すことになる。
【0037】
また、ステップST103において、D(k)が閾値を超えていない場合(NO)、ステップST108へ進んでkがNになったか否かを判別する。ステップST108においてk=Nであれば(YES)、フーリエスペクトルに対し急峻に特性が変化する点の検出を終了する。一方、k=Nでなければ(NO)、ステップST102に戻って、動作を繰り返すことになる。
【0038】
以上説明したようにして検出した変化点に対し、スペクトル平滑化処理部23は変化点を中心とする一定の帯域に限定して、実施の形態1または実施の形態2で説明した平滑化処理を行うことになる。
【0039】
この実施の形態3の音質調整装置によれば、リプルの生じる原因となるスペクトルの急峻な変化点を検出し、その変化点を中心とする所定の帯域幅をもった帯域に限定して平滑化を行うことで、平滑化によるフーリエスペクトルの変化を最小限に抑え、所望のフィルタ応答に対して忠実な音質調整フィルタを構成することができ、従って高精度の音質調整装置を実現することが可能となる。
【0040】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る音質調整装置について、図7を参照して説明する。なお、図7は実施の形態4に係る音質調整装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
上述した実施の形態1によれば、音声信号が音質調整装置に入力される以前の段階でフィルタ係数を算出し、音質調整フィルタにおいてこれを固定的に使用しているが、この実施の形態4では音声信号が入力されている状態においても所望のフィルタ応答の入力を可能とし、所望のフィルタ応答の変更に応じて逐次的にフィルタ係数を更新するようにしたものである。その他の構成要素と働きは実施の形態1で説明したことと同様であり、省略する。
【0042】
実施の形態4の音質調整装置は図7に示すように、所望のフィルタ応答を音質調整装置に入力する所望フィルタ応答入力部31と、所望フィルタ応答入力部31で入力された所望のフィルタ応答に対してそのフーリエスペクトルを算出するスペクトル算出部32と、スペクトル算出部32で算出したフーリエスペクトルに対し平滑化処理を施すスペクトル平滑化処理部33と、スペクトル平滑化処理部33で平滑化されたフーリエスペクトルをケプストラムに変換するケプストラム算出部34と、ケプストラム算出部34で算出したケプストラムに基づき、音質調整フィルタに与えるべき別のケプストラムを漸近的に更新するケプストラム平滑化処理部35と、ケプストラム平滑化処理部35で更新されたケプストラムをフィルタ係数とするLMAフィルタ36で構成される。また、LMAフィルタ36に音声信号を入力する入力端子37と、音声信号を出力する出力端子38とを備える。
【0043】
つぎに、動作を説明する。
所望の音質調整フィルタのフィルタ応答は所望フィルタ応答入力部31で入力される。スペクトル算出部32は所望フィルタ応答入力部31で入力された応答のスペクトルを算出する。ここで算出されるスペクトルはフーリエスペクトルの他、パワースペクトル、対数2乗振幅スペクトルであってもよい。スペクトル平滑化処理部33はスペクトル算出部32で算出されたフーリエスペクトルを、実施の形態1〜実施の形態3において説明したいずれかの平滑化方法により平滑化する。平滑化されたスペクトルはケプストラム算出部34においてケプストラムに変換される。ケプストラム算出部34で算出したケプストラムはケプストラム平滑化処理部35に入力され、ケプストラム平滑化処理部35はLMAフィルタ36のフィルタ係数を、つぎの式(8)に基づいて漸近的に更新する。
【0044】
【数8】
Figure 2004356894
式(8)において、mはケフレンシー、tは時刻、c(m,t)はケプストラム算出部34が算出したケプストラム、C(m,t)はLMAフィルタ36に与えるフィルタ係数である。
【0045】
この実施の形態4の音質調整装置によれば、音質調整装置に音声が入力されている状態でも所望のフィルタ応答の入力を可能としていることで、ユーザーが音声を視聴しながら任意に音質を変化、調整することが可能になる。
また、所望のフィルタ応答のスペクトルを平滑化する手段を備えていることにより、所望のフィルタ応答が時々刻々変化しても、常に音質調整フィルタのリプルを抑制することが可能であり、安定した音質調整効果が得られる。
さらに、漸近的にフィルタ係数を更新する手段を有することにより、音質調整装置に対して所望のフィルタ応答を任意に変更しても出力音声に違和感を生じさせること無く、音質をスムーズに変化させることができる。
【0046】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る音質調整装置について、図8および図9を参照して説明する。なお、図8は実施の形態5に係る音質調整装置の構成を示すブロック図であり、図9は音質調整装置のスペクトル包絡の分析方法を説明するためのブロック図である。
【0047】
上述した実施の形態4の音質調整装置は、所望のフィルタ応答を音質調整装置の外部から入力することになっているが、この実施の形態5の音質調整装置は、音質調整装置に入力された音声信号を分析し、その結果に基づいて音質調整装置の内部で所望のフィルタ応答を目的に応じて決定するものである。例えば、入力されている音声信号のスペクトルを算出し、そのスペクトルから音声信号のスペクトル包絡を分析し、これを強調するようにフィルタ応答を決定するという音質調整装置が考えられる。
【0048】
実施の形態5の音質調整装置は音声信号のスペクトル包絡を強調する場合の例であって、図8に示すように、所望のフィルタ応答を音質調整装置に入力する所望フィルタ応答入力部41と、入力された音声信号のスペクトル包絡を分析するスペクトル包絡分析部42と、所望フィルタ応答入力部41に入力された所望フィルタ応答とスペクトル包絡分析部42で分析した結果とに基づいて音質調整フィルタのフィルタ応答のフーリエスペクトルを算出するスペクトル算出部43と、スペクトル算出部43で算出したフーリエスペクトルに対し平滑化処理を施すスペクトル平滑化処理部44と、スペクトル平滑化処理部44で平滑化されたフーリエスペクトルをケプストラムに変換するケプストラム算出部45と、ケプストラム算出部45で算出したケプストラムに基づき、音質調整フィルタに与えるケプストラムを漸近的に更新するケプストラム平滑化処理部46と、ケプストラム平滑化処理部46で更新されたケプストラムをフィルタ係数とするLMAフィルタ47で構成される。また、LMAフィルタ47に音声信号を入力する入力端子48と、音声信号を出力する出力端子49とを備える。
【0049】
つぎに動作を説明する。
所望の音質調整フィルタのフィルタ応答は所望フィルタ応答入力部41に入力される。また、スペクトル包絡分析部42は入力端子48に入力された音声のスペクトル包絡を分析する。所望フィルタ応答入力部41で入力された所望のフィルタ応答と、スペクトル包絡分析部42で求められたスペクトル包絡に基づいて、スペクトル算出部43において音質調整フィルタのフィルタ応答が算出される。
【0050】
音質調整フィルタのフィルタ応答は式(9)に基づいて計算される。なお、式(9)における式(10)は所望フィルタ応答入力部41に入力された所望フィルタ応答のフーリエスペクトルであり、式(11)はスペクトル包絡分析部42で求められたスペクトル包絡であり、式(12)はスペクトル算出部43より出力されるフーリエスペクトルである。また、αは定数であり、スペクトル包絡の強調度を制御するためのパラメータである。なお、ここで算出されるスペクトルはフーリエスペクトルの他、パワースペクトル、対数2乗振幅スペクトルであってもよい。
【0051】
【数9】
Figure 2004356894
【0052】
スペクトル平滑化処理部44はスペクトル算出部43で算出されたフーリエスペクトルを、上述した実施の形態1〜実施の形態3において説明したいずれかの平滑化方法により平滑化する。平滑化されたスペクトルはケプストラム算出部45においてケプストラムに変換される。ケプストラム算出部45で算出したケプストラムはケプストラム平滑化処理部46に入力され、ケプストラム平滑化処理部46はLMAフィルタ47のフィルタ係数を、上述した実施の形態4において説明した方法により漸近的に更新する。
【0053】
つぎに、スペクトル包絡分析部42による分析処理について説明する。図8のスペクトル包絡分析部42にフレーム単位で入力端子48から入力された音声信号は、FFTケプストラム算出手段52においてFFTケプストラムに変換される。FFTケプストラムは式(13)に基づいて計算される。なお、入力端子48は図9の入力端子51に相当する。
【数10】
Figure 2004356894
式(13)において、Cfft(n)は入力信号のFFTケプストラムであり、X(k)は入力信号のフーリエスペクトルである。
【0054】
FFTケプストラムはリフタリング手段53においてリフタリングされ、高ケフレンシー側のケプストラムが打ち消され、低ケフレンシー側のケプストラムが残される。リフタリングされたFFTケプストラムをスペクトル包絡算出手段54において再度FFTすることによりスペクトル包絡が求められる。以上のようにして求められたスペクトル包絡は出力端子55から出力され、図8のスペクトル算出部43に入力される。
【0055】
この実施の形態5の音質調整装置によれば、音声信号のスペクトル包絡をフレーム単位で分析し、これを強調する手段を備えていることにより音声信号を明瞭にすることができる。
また、フィルタ応答のスペクトルを平滑化する手段を備えていることにより、音声信号の時間的な変化に従って目標とするフィルタ応答が時々刻々と変化した場合でも、音質調整フィルタのリプルは常に抑制することができるため、安定した音質調整効果が得られる。
【0056】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係る音質調整装置について説明する。上述した実施の形態1および実施の形態4の音質調整装置は、音質調整フィルタにLMAフィルタを用いているが、この実施の形態6はこの音質調整フィルタにケプストラムから算出したLPC係数をフィルタ係数としたIIRフィルタを用いたものである。その他の構成要素と働きは実施の形態1で説明したことと同様であり、省略する。
【0057】
この場合、フィルタ係数はつぎの式(14)によって求められる。
【数11】
Figure 2004356894
上述の式(14)において、a(n)はLPC係数であり、pはIIRフィルタの次数である。
【0058】
音質調整フィルタであるIIRフィルタの伝達関数F(z)はつぎの式(15)であらわされる。
【数12】
Figure 2004356894
【0059】
この実施の形態6の音質調整装置によれば、音質調整フィルタを一般的なIIRフィルタとすることで、演算量の小規模な音質調整装置を実現することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、音質調整装置において所望のフィルタ応答のスペクトルを平滑化する手段を備えることによって音質調整フィルタのリプルを抑制し、精度の高い音質調整を可能にする音質調整装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る音質調整装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するための図である。
【図3】この発明の音質調整装置におけるフーリエスペクトルの平滑化方法の効果の一例を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る音質調整装置のスペクトルの平滑化方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態4に係る音質調整装置の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係る音質調整装置の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態5に係る音質調整装置のスペクトル包絡の分析方法を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
11,31,41 所望フィルタ応答入力部、12,32,43 スペクトル算出部、13,23,33,44 スペクトル平滑化処理部(平滑化手段)、14,34,45 ケプストラム算出部(ケプストラム算出手段)、15,36,47 LMAフィルタ、16,37,48,51 入力端子、17,38,49出力端子、21 スペクトル入力端子、22 特性変化点検出部、24 スペクトル出力端子、35,46 ケプストラム平滑化処理部、42 スペクトル包絡分析部、52 FFTケプストラム算出手段、53 リフタリング手段、54スペクトル包絡算出手段、55 スペクトル包絡出力端子。

Claims (9)

  1. 音質調整フィルタにフィルタ係数を入力して所望の特性のフィルタを構成し、当該音質調整フィルタに音声信号を通すことによって当該音声信号を調整する音質調整装置において、
    所望するフィルタ応答のフーリエスペクトルを平滑化する平滑化手段と、
    前記平滑化手段により平滑化されたフーリエスペクトルからケプストラムを算出するケプストラム算出手段と、
    前記ケプストラム算出手段によって算出されたケプストラムに基づいて、前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出手段と
    を備えたことを特徴とする音質調整装置。
  2. 音質調整フィルタのフィルタ係数は、予め算出されたフィルタ係数を用い、固定していることを特徴とする請求項1記載の音質調整装置。
  3. 音声信号が入力されている状態において、所望するフィルタ応答の変更を可能とし、且つ前記フィルタ応答の変更に応じて、前記フィルタ係数を逐次、更新する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の音質調整装置。
  4. 音声信号が入力されている状態において、当該音声信号を分析した結果に基き、所望のフィルタ応答を決定する手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項3記載の音質調整装置。
  5. フーリエスペクトルのサンプル値系列を低域通過フィルタで濾波することによって平滑化を行う手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の音質調整装置。
  6. フーリエスペクトルの奇数または偶数番目のサンプルの値を隣接するサンプルの平均値で置き換えることにより平滑化を行う手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の音質調整装置。
  7. 所望のフィルタ応答のフーリエスペクトルが急峻に変化する変化点を検出し、当該変化点を中心とした所定範囲の帯域において平滑化を行う手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の音質調整装置。
  8. 音質調整フィルタは対数振幅近似フィルタであり、ケプストラムをフィルタ係数とすることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の音質調整装置。
  9. 音質調整フィルタはIIRフィルタであり、ケプストラムを変換して求めた線形予測係数をフィルタ係数とすることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の音質調整装置。
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