JP2004357709A - ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子、タンパク質、およびそれらの使用方法 - Google Patents

ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子、タンパク質、およびそれらの使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼの遺伝子およびタンパク質、ならびにそれらの使用方法に関する。
【解決手段】具体的には、本発明は、長鎖アシルトランスフェラーゼ活性およびアセチルトランスフェラーゼ活性の両方を示す遺伝子およびタンパク質を記載する。本発明には、天然の野生型および組換えの野生型の両方のトランスフェラーゼ、ならびに変異体および変種(そのうちいくつかは、野生型トランスフェラーゼと比較して変化した特性を有する)を包含する。本発明はまた、トランスジェニック生物での発現において、および植物油(特に種子油)でのアセチルグリセリドの産生においてを含め、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼの遺伝子およびタンパク質を使用する方法に関する。
【選択図】なし

Description

本願は、全体の内容が参照として本明細書に組み入れられる2003年3月6日出願の米国仮特許出願第60/475,371号の優先権を主張するものである。
本願は、一部、USDA-CSREESの助成金番号98-35503-6362に基づいた政府支援による資金援助を受けた。政府は本発明に対して一定の権利を有しうる。
本発明は、単離されたジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)遺伝子およびポリペプチドに関し、特に酵素がアセチル-CoAに高い特異性を示すニシキギ(Euonymus)およびニシキギ(Euonymus)様のAcDAGAT遺伝子およびポリペプチドに関する。本発明はまた、AcDAGAT酵素によって合成された特有のトリアシルグリセロールを含む組成物も提供する。本発明はまた、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子およびポリペプチドを使用するための方法も提供する。
植物油は食物産業において使用されるだけでなく、化学産業においても使用が増加している。いずれの特定の油の利用性も、構成成分である脂肪酸の組成によって決定される油の化学的特性および物理的特性によって決まる。植物油は、業界の仕様に合うように改良されていることが多い。植物油のこのような改良は、典型的には、化学的手段(分別蒸留、エステル交換、水素添加または他の化学的誘導体化)によって実施されているが、遺伝的手段(植物育種、突然変異および遺伝子操作)が新規の油原料を提供するために使用が増加している。
特に関心対象となる1つのクラスは、sn-3-アセチルグリセリド(1,2-ジアシル-3-アセチン)を含有するトリアシルグリセロールのクラスである。これらの通常では見られないトリアシルグリセロールは、sn-3位にアセチル基を有する。種子油にsn-3-アセチルグリセリドが存在することおよびその構造的特徴は、最初は、Kleimanら(1967)(Lipids 2: 473-478)によって報告された。多くのトリアシルグリセロールと異なり、sn-3-アセチルグリセリドは強力な光学活性を示す。それらはニシキギ種で高レベルで見られ、種子油中の総トリアシルグリセロールの最高98%に相当し、いくつかの他の植物種でも種々の量で見られる。ニシキギsn-3-アセチルグリセリドでは、sn-1位およびsn-2位は、共通の長鎖脂肪酸、主にパルミチン酸エステル、オレイン酸エステルおよびリノール酸エステルでエステル化されている。
現在では、sn-3-アセチルグリセリドが豊富な市販の油原料は存在しない。さらに、sn-3-アセチルグリセリドが高レベルの植物は市販用に栽培されていない。実際、これらの新規グリセリドの生合成はごく最近検討されているだけである。
2つのクラスのDAGAT遺伝子およびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼを含む、sn-3アシル化またはトランスアシル化反応を受けるトリアシルグリセロール生成反応が数種存在する。哺乳類DAGAT遺伝子、さらに広義にはアシル-CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)様遺伝子に基づき、突然変異に対応する遺伝子のマッピングによって、1クラスのDAGAT遺伝子が単離され、シロイヌナズナで発現されている。第2のクラスのDAGAT遺伝子は、真菌モルティエラ-ラマニアーナ(Mortierella ramanniana)から最初に精製されたDAGATとの相同性に基づいて同定することができる。しかし、ニシキギ属の種子油に見出されるような特有のトリアシルグリセロールを示す生物からは遺伝子の同定はされておらず、単離も発現もされていない。
さらに、アセチル-CoA:sn-1,2-ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ活性を有するDAGATを入手できると新規トリアシルグリセロール構造物を製造することが可能になると思われ、このような新規トリアシルグリセロール分子はインビトロまたはインビボにおいて合成できると思われる。グリセロール骨格の1つまたは複数であるが、全てではない位置がエステル化された長鎖脂肪酸ではないアセチル基が存在すると油のカロリー値を低下するが、食物の機能を妨害しない。また、オリーブ油もしくは高オレイン酸油またはヒマシ油は全てトリオレインまたはトリリシノレインなどの三官能性トリアシルグリセロールを大量に含有するが、アセチル基がsn-3位の脂肪酸と置換すると、二官能性油に容易に変換されると思われる。このような油は、三官能性体とは異なる産業用用途を有すると思われる。例えば、二官能性トリアシルグリセロールは直鎖状(熱可塑性)ポリマーを産生すると思われるが、三官能性トリアシルグリセロールは架橋(熱硬化性)ポリマーを産生すると思われる。
従って、アセチルグリセリド、特にsn-3-アセチルグリセリドを大量に含有する植物油を作製できることが望ましいと思われる。一経路は、アセチルグリセリドを合成することができる植物遺伝子を同定および単離することによる。次いで、このような遺伝子を使用して、油料作物を形質転換することができると思われる。このような遺伝子の同定を使用して、天然に存在しない新規アセチルグリセリドを合成することもできると思われる。
従って、いくつかの態様において、本発明は、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする単離された核酸配列を提供する。さらに別のいくつかの態様において、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼはニシキギ属植物由来である。よりさらに別の態様において、植物はコマユミ(Euonymus alata)植物である。よりさらに別の態様において、核酸配列は配列番号:2をコードする。そしてよりさらに別の態様において、核酸配列は配列番号:1を含む。
他の態様において、本発明は、配列番号:2を含むポリペプチドをコードする単離された核酸配列を提供する。さらに他の態様において、本発明は、配列番号:1を含む核酸配列に高ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする単離された核酸配列であって、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする配列を提供する。
他の態様において、本発明は、上記の核酸配列のいずれかに対応する単離されたアンチセンス配列を提供する。いくつかの態様において、本発明は、上記核酸配列のいずれかから転写されたmRNAの配列を標的とする干渉性RNAを提供する。さらに別のいくつかの態様において、本発明は、上記干渉性RNAのいずれかをコードする核酸配列を提供する。
他の態様において、本発明は、異種プロモーターに機能的に結合する上記核酸配列のいずれかを提供する。よりさらに別の態様において、異種プロモーターに機能的に結合する上記核酸配列はベクター内に存在する。他の態様において、本発明は、上記核酸配列のいずれかを含むベクターを提供する。
いくつかの態様において、本発明は、上記核酸配列のいずれかによってコードされる精製ポリペプチドであって、核酸配列がジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする精製ポリペプチドを提供する。他の態様において、本発明は精製ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼを提供する。さらに別のいくつかの態様において、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼはニシキギ属の植物由来である。よりさらに別の態様において、植物はコマユミである。よりさらに別の態様において、精製ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼは配列番号:2を含む。他の態様において、本発明は、配列番号:2を含む精製ポリペプチドを提供する。
他の態様において、本発明は、上記核酸配列のいずれかで形質転換した宿主細胞を提供し、特定の態様において、核酸配列は、植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子を含む。さらに別のいくつかの態様において、宿主細胞は植物細胞または微生物である。さらに別のいくつかの態様において、宿主細胞は、細菌および酵母からなる群より選択される微生物である。他の態様において、本発明は、上記遺伝子トランスジェニック微生物由来の油を提供する。
さらに他の態様において、本発明の態様は、上記核酸配列のいずれかで形質転換された植物または植物部分であって、植物、植物器官、植物組織および植物細胞からなる群より選択される植物または植物部分を提供し、特定の態様において、核酸配列は植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子を含む。いくつかの態様において、本発明は、上記核酸配列のいずれかで形質転換された植物の種子を提供し、特定の態様において、核酸配列は、植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子を含む。他の態様において、本発明は、上記遺伝子トランスジェニック植物由来の油を提供する。
いくつかの態様において、本発明は、縮重プライマーを用いるRT-PCRを使用することによってDAGATの非cDNAライブラリーを入手して部分的な鎖長のクローンを得る段階と、3'および5'RACEを使用して3'および5'cDNA末端を規定する段階と、3'および5'RACE産物の配列に基づいたプライマーを使用するRT-PCRにより全長のcDNAクローンを入手する段階と、全長のcDNAクローンを使用して、コードされたポリペプチドの正体をジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)と確認する段階とを含む、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼコード配列を同定する方法を提供する。さらに別のいくつかの態様において、コードされたポリペプチドの正体をAcDAGATと確認する段階が、全長のcDNAのコードされたポリペプチドを発現する段階と、発現されたポリペプチドを特徴づける段階とを含む。よりさらに別の態様において、発現されたポリペプチドを特徴づける段階が、発現されたポリペプチドの存在を抗体結合によって検出することにより、さらに別のいくつかの態様において、抗体はAcDAGATに特異的である。よりさらに別の他の態様において、発現されたポリペプチドを特徴づける段階が、AcDAGAT活性アッセイ法において発現されたポリペプチドの反応産物を検出することによる。さらに他のいくつかの態様において、アセチルグリセリド(AcTAG)は、非cDNAライブラリーを作製した組織に存在する。
いくつかの態様において、本発明は、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)をコードする異種遺伝子で形質転換した宿主細胞を提供する段階と、アセチルグリセリドを産生するのに十分な条件下において宿主細胞を増殖させる段階とを含む、1つのアセチル基と2つの長鎖アシル基を含むアセチルグリセリドを作製する方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明は、アセチルグリセリドを産生するのに十分な条件下において、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)をコードする単離された核酸配列をインビトロ発現系でインキュベーションする段階を含む、1つのアセチル基と2つの長鎖アシル基を含むアセチルグリセリドを作製する方法を提供する。他の態様において、本発明は、アセチルグリセリドを産生するのに十分な条件下において、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)をインビトロ反応混合物中でインキュベーションする段階を含む、1つのアセチル基と2つの長鎖アシル基を含むアセチルグリセリドを作製する方法を提供する。さらに別の態様において、上記インビトロ方法の発現系または反応混合物は、AcDAGATの基質をさらに含む。さらに別の他の態様において、インビトロ方法の発現系または反応混合物は、AcDAGATの少なくとも1つの基質を製造するための手段をさらに含む。さらに別の他の態様において、上記の1つのアセチル基と2つの長鎖アシル基を含むアセチルグリセリドを産生する方法は、産生されるアセチルグリセリドを回収する段階をさらに含む。
他の態様において、本発明は、提供された基質から産生されたトリグリセリドを産生するのに十分な条件下で、ジグリセリドアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)にジアシルグリセロール基質を提供する段階であって、ジアシルグリセロール基質の脂肪酸アシル鎖の少なくとも1つが、パルミトオレイン酸、リシノレイン酸、ジベルノリック・アシッド(divernolic acid)およびカプリン酸からなる群より選択される段階を含む、新規トリグリセリド(TAG)を製造する方法を提供する。
さらに他の態様において、本発明は、提供されたアセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイルまたはシンナモイル基を含むトリグリセリドを産生するのに十分な条件下で、ジグリセリドアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)にアセチル-CoA、プロピオニル-CoA、ブチリル-CoA、ベンゾイル-CoAまたはシンナモイル-CoA基質の少なくとも1つを提供する段階を含む、新規トリグリセリド(TAG)を提供する方法を提供する。
さらに他の態様において、本発明は、上記方法のいずれかによって産生される新規トリグリセリドを提供する。さらに他の態様において、本発明は、アセチルジパルミトレイン、プロピオニルジパルミトレイン、ブチリルジパルミトレイン、ベンゾイルジパルミトレイン、シンナモイルジパルミトレイン、アセチルジリシノレイン、アセチルジベルノリン(acetyldivernolin)、またはアセチルジカプリンである新規トリグリセリドを提供する。
本発明は、単離されたジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)遺伝子およびポリペプチドに関し、特に酵素がアセチル-CoAに高い特異性を示すニシキギ(Euonymus)およびニシキギ(Euonymus)様のAcDAGAT遺伝子およびポリペプチドに関する。本発明はまた、AcDAGAT酵素によって合成された特有のトリアシルグリセロールを含む組成物も提供する。本発明はまた、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子およびポリペプチドを使用するための方法も提供する。
発明の概要
本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DAGAT)遺伝子およびポリペプチドを含む組成物に関し、特に酵素がアセチル-CoAまたはアセテートに関連する基のCoAエステルに高い特異性を示す、ニシキギおよびニシキギ様DAGATの遺伝子およびポリペプチドに関する(以下に詳細に記載する)。これらのポリペプチドは、アセチル基または関連する基の転移に高い特異的活性を示す「AcDAGAT」および/またはコマユミから得られる酵素を示す「EaDAGAT」と示されるジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをいう。本発明は、天然型および組換え型の酵素並びに突然変異型および変種型を含む組成物を含み、それらのうちには野生型と比較して特徴が変更されているものもある。本発明はまた、AcDAGATによって合成される新規トリアシルグリセロールも含む。本発明はまた、AcDAGAT遺伝子およびポリペプチドを使用する方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明は、AcDAGATをコードする新規単離された核酸配列を提供する。他の態様において、本発明は、AcDAGATの突然変異体、変種、相同体、キメラおよび融合物をコードする単離された核酸配列を提供する。他の態様において、本発明は、このような配列を作製する方法を提供する。他の態様において、本発明は、このような配列をクローニングおよび発現する方法と、このような配列の発現産物を精製およびアッセイする方法とを提供する。
追加の態様において、本発明は、精製AcDAGATポリペプチドを提供する。他の態様において、本発明は、AcDAGATの突然変異体、変種、相同体、キメラおよび融合物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AcDAGATの野生型並びに突然変異体、変種、相同体、キメラおよび融合物を精製し、それらの生化学的作用をアッセイする方法と、このようなタンパク質に対する抗体を形成する方法とを提供する。
他の態様において、本発明は、本発明のAcDAGATによって合成される新規トリアシルグリセロールを含む組成物を提供する。このような合成は、以下に記載する方法のいずれかによって実施することができる。
いくつかの態様において、本発明は、AcDAGATをコードする新規単離された核酸配列を使用して、アセチルトランスフェラーゼ活性を有する産物を作製する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、アセチルトランスフェラーゼの産物を回収できるように、AcDAGATの基質を含むインビトロ転写系および翻訳系に配列を添加する段階に関係する。他の態様において、本発明の方法は、配列が発現され、AcDAGATの産物が産生されるように、生物を配列で形質転換する段階に関係する。特定の態様において、産物が回収される。他の態様において、産物はインサイチューに残る。
いくつかの態様において、本発明は、組換えAcDAGATポリペプチドを使用して、アセチルトランスフェラーゼ活性の産物を作製する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、AcDAGATの産物を回収できるように、AcDAGATの基質を含むインビトロ系にポリペプチドを添加する段階に関する。
他の態様において、本発明の方法は、AcDAGATの産物が産生されるように、AcDAGATをコードする新規単離された核酸配列で植物を形質転換する段階に関する。
いくつかの態様において、本発明は、AcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換した生物を提供する。いくつかの態様において、生物は微生物である。他の態様において、生物は植物である。
いくつかの態様において、本発明はまた、AcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換した細胞を提供する。いくつかの態様において、細胞は微生物である。他の態様において、細胞は植物細胞である。
他の態様において、本発明は、AcDAGATをコードする核酸配列で形質転換した植物種子を提供する。
さらに他の態様において、本発明は、AcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換した植物、植物種子または微生物由来の油を提供する。
定義
本発明の理解を容易にするために、本明細書において使用する数多くの用語および句を以下のように定義する。
「植物」という用語は、最も広義的な意味で使用される。それは、木本、観葉または観賞植物、作物または穀物用植物、果実または野菜植物および光合成緑藻類(例えば、クラミドモナス-レインハーディティ(Chlamydomonas reinhardtii))の任意の種を含むが、これらに限定されない。それはまた、主に植物の任意の発生段階で存在する構造に大きく分化する複数の植物細胞をいう。このような構造には、果実、苗条、幹、葉、花びら等を含むが、これらに限定されない。「植物組織」という用語は、根茎、苗条、葉、花粉、種子および腫瘍並びに培養細胞(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚、カルス等)に存在するものを含む植物の分化および未分化組織を含む。植物組織は、インプランタ(in planta)、器官培養物、組織培養物または細胞培養物であってもよい。本明細書において使用する「植物の部分」という用語は、植物構造または植物組織をいう。
「作物」または「作物用植物」という用語は、最も広義的な意味で使用される。この用語は、ヒトの食用となるまたはヒトが使用もしくは消費する動物の飼料として使用される任意の種類の植物もしくは藻類、または産業もしくは商業に使用する任意の植物もしくは藻類を含むが、これらに限定されない。
「油を産生する種」という用語は、トリアシルグリセロールを産生して特定の器官、主に種子に貯蔵する植物種をいう。このような種には、ダイズ(グリシン-マックス(Glycine max))、ナタネおよびカノーラ(ブラシカ-ナプス(Brassica napus)およびB.カンペストリス(B. campestris)を含む)、ヒマワリ(ヘリアンサス-アンヌス(Helianthus annus))、綿花(ゴシッピウム-ヒルスーツム(Gossypium hirsutum))、トウモロコシ(ジー-メイズ(Zea mays))、ココア(テオブロマ-カカオ(Theobroma cacao))、ベニバナ(カルタムス-ティンクトリウス(Carthamus tinctorius))、アブラヤシ(エラエイス-グイネーシス(Elaeis guineensis))、ココヤシ(ココス-ヌシフェラ(Cocos nucifera))、亜麻(リヌム-ウシタティスシウム(Linum usitatissimum))、トウゴマ(リシヌス-コンヌイス(Ricinus communis))および落花生(アラキス ヒポガエア(Arachis hypogaea))が挙げられるが、これらに限定されない。この群には、タバコ、短いサイクルのアブラナ(rapid cycling Brassica)種およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)および特有の脂肪酸源となりうる野生種も含まれる。
「ニシキギ(Euonymus)」という用語は、ニシキギ(Euonymus)属の植物をいう。ニシキギの非制限的な例としては、コマユミ(Euonymus alata)種の植物が挙げられる。この用語はまた、配列番号:1に記載の核酸配列が単離されたコマユミ(Euonymus alata)植物もいう。
植物細胞「コンパートメントまたは細胞内小器官」という用語は、最も広義的な意味で使用される。この用語には、小胞体、ゴルジ装置、トランスゴルジネットワーク、色素体、筋小胞体、グリオキシソーム、ミトコンドリア、葉緑体および核膜等が挙げられるが、これらに限定されない。
「宿主細胞」という用語は、異種遺伝子を複製および/または転写および/または翻訳することができる任意の細胞をいう。
「ジアシルグリセロール」および「ジグリセリド」という用語は、2つのアシル基がエステル結合しているグリセロール骨格を含む分子をいう。典型的には、アシル基はsn-1およびsn-2位にエステル結合しているが、アシル基はsn-1およびsn-3位またはsn-2およびsn-3位にエステル結合している場合もあり、残りの位置はエステル結合されておらず、ヒドロキシル基を含有する。この用語は、略語DAGで示されることもある。
「トリアシルグリセロール」および「トリグリセリド」という用語は、3つのアシル基がエステル結合しているグリセロール骨格を含む分子をいう。この用語は、略語TAGで示されることもある。
「長鎖トリアシルグリセロール」という用語は、3つのアシル基全てが長鎖である、言い換えると各鎖が、炭素原子数6個以上の鎖長の脂肪族直鎖であるトリアシルグリセロールをいう(例えば、C6は炭素原子数6個の鎖長のアシル基をいうように、アシル基は、文字Cの次に脂肪族直鎖中の炭素原子数を伴っていうことができる)。この用語は、略語LcTAGで示されることもある。
「アセチルグリセリド」および「アセチルトリアシルグリセロール」等という用語は、少なくとも1つのアセチル基または関連の基がグリセロール骨格にエステル結合しているトリグリセリドをいう。特定のアセチルグリセリドは、アセチル基または関連の基がエステル結合している位置によって示され、従って、「sn-3-アセチルグリセリド」または「1,2-ジアシル-3-アセチン」は、sn-3位にアセチル基を有するトリアシルグリセロールをいう。これらの用語は、略語AcTAGで示されることもある。
「アセチル」または「関連の基」は、AcTAGに言及して使用される場合には、TAGにエステル結合している長鎖アシル基以外のアシル部分をいう。アシル部分は、炭素原子数6個の鎖長の任意の脂肪族直鎖であり、側鎖基または置換基を有してもよい。アシル基部分は芳香族であってもよい。関連の基のメンバーには、プロピオニルおよびブチリル基、並びにベンゾイルおよびシンナモイルなどの芳香族基が挙げられるが、これらに限定されない。
「ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」という用語は、ジアシルグリセロール基質にアシル基を転移する能力を有するポリペプチドをいう。典型的には、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、ジアシルグリセロールのsn-3位にアシル基を転移するが、sn-1およびsn-2位への転移も可能である。トランスフェラーゼのアシル基質は、典型的には、CoAにエステル結合しており、従ってアシル基質は、典型的には、アシル-CoAである。従って、この酵素は、「ジアシルグリセロール:アシル-CoAアシルトランスフェラーゼ」ともいわれ、いくつかの特定の態様では、「アシル-CoA:1,2-ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ等といわれる。この用語は、略語DAGATで示されることもある。
「ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ」という用語は、ポリペプチドがジアシルグリセロール基質にアセチル基または関連の基を転移させることができ、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼが、アセチルTAGが存在しない、またはごく微量にしか存在しない(言い換えると、約1%未満の総TAG)植物から入手されるジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼと比較して、アセチル基または関連の基に対して増加した特異性を示すように、特有のアシル基転移特異性を有するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼをいう。特異性はインビボまたはインビトロアッセイ法のいずれかによって測定することができる。インビボアッセイ法によると、特異性は、AcATGである総TAGの割合であり、この場合AcTAGは、異種ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの存在によって合成される。インビトロアッセイ法によると、基質がCoAにエステル結合したアセチル-CoAまたは関連の基である場合には、特異性は、ジアシルグリセロールにアセチル基または関連の基を転移する活性である。AcDAGATについてアセチル基または関連の基を転移する特異性の増加は、アセチルTAGが存在しない、またはごく微量でしか存在しない植物から入手されるDAGATの特異性の少なくとも約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍もしくは約100倍、または最大約2000倍までである。アセチル基または関連の基を転移する特異性を測定するために、AcDAGATを比較する標準的なDAGATは、実施例4に記載するようなシロイヌナズナから入手されるDAGAT(AtDAGAT)である。
トランスフェラーゼのアセチル基または関連の基の基質は、典型的には、CoAにエステル結合されており、従って典型的なアセチル基質には、上記のように、アセチル-CoA、プロピオニル-CoA、ブチリル-CoA、ベンゾイル-CoAまたはシンナモイル-CoAが挙げられるが、これらに限定されない。これらのCoA基質は、典型的には、非ミセルアシル-CoAであるか、または長鎖アシル-CoAの臨界ミセル濃度(critical micelle concentration:CMC)と比較して、比較的高濃度でミセルを形成するという点において、高臨界ミセル濃度を有する。
AcDAGATのジアシルグリセロール基質は、典型的には、長鎖ジアシルグリセロールであるが、他の基も考慮される。アシル(または他の)基はsn-1およびsn-2位にエステル結合されるが、アシル基はsn-1およびsn-3位またはsn-2およびsn-3位にエステル結合されてもよい。
従って、この酵素は「ジアシルグリセロール:アセチル-CoA」アセチルトランスフェラーゼとも言われ、または特定の態様では、「アセチル-CoA:sn-1,2-ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ」等とも言われる。この用語は、アセチル基または関連の基を転移する増加した特異的活性を示す略語AcDAGATで言われることもある。
DAGATに言及して使用される場合には、「ニシキギ(Euonymus)」および「ニシキギ様(Euonymus-like)」という用語は、コマユミから入手されるDAGATまたはコマユミから入手されるDAGATと類似している基質特異性を有するDAGATをいう。この用語は、コマユミ、ニシキギ属もしくは近縁植物Celestraceae科から入手される酵素、またはコマユミから入手されるDAGATと高い程度の類似性もしくは同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素を示す略語「EaDAGAT」で言われることもある。「高い程度の類似性」は、BLASTスコアまたは他のアミノ酸配列比較/アライメントソフトウェアプログラムによるAtDAGATに比べてEaDAGATにより近い関係があることを意味する。
「基質特異性」という用語は、酵素が作用して産物を産生する基質の範囲をいう。
「結合に競合する」という用語は、酵素活性を有する第2のポリペプチドと同じ基質に結合する酵素活性を有する第1のポリペプチドに言及して使用され、この場合、第2のポリペプチドは第1のポリペプチドの変種または関連するもしくは類似性の低いポリペプチドである。第1のポリペプチドによる結合の効率(例えば、動態、熱力学)は、第2のポリペプチドによる基質結合の効率と同じまたはそれより大きいまたはそれより小さくてもよい。例えば、基質への結合の平衡結合定数(KD)は、2つのポリペプチドで異なってもよい。
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して結合されるアミノ酸を含む化合物を意味し、互換的に使用することができる。
本明細書において使用する「アミノ酸配列」は、タンパク質分子のアミノ酸配列をいう。「ポリペプチド」または「タンパク質」などの「アミノ酸配列」等という用語は、引用されているタンパク質分子に関連する完全で、非変性のアミノ酸配列にそのアミノ酸配列を限定することを意味していない。さらに、「アミノ酸配列」は、タンパク質をコードする核酸配列から推定することができる。
タンパク質(「所定のタンパク質の一部」において見られるような)に言及して使用される「一部」という用語は、そのタンパク質の断片をいう。断片は、4アミノ酸残基から全長のアミノ配列マイナス1アミノ酸までサイズの範囲であってもよい。
アミノ酸に言及して使用する場合の「相同性」という用語は、類似性または同一性の程度をいう。部分的な相同性または完全な相同性(言い換えると、同一性)がありうる。「配列の同一性」は2つまたはそれ以上のタンパク質間の関連性の測定を言い、比較鎖の全長を基準にした割合として示される。同一性の算出は、それぞれ比較的長い配列の同じ比較位置において同一であるアミノ酸残基を考慮する。同一性の算出は、コンピュータプログラムに含まれるアルゴリズムによって実施してもよい。
ポリペプチドに言及して使用される場合の「キメラ」という用語は、一体としてクローニングされており、翻訳後、1つのポリペプチド配列として作用する異なる遺伝子から入手される2つまたはそれ以上のコード配列の発現産物をいう。キメラポリペプチドはまた、「ハイブリッド」ポリペプチドとも言われる。コード配列は、同一生物種または異種生物種から入手されるものを含む。
ポリペプチドに言及して使用される場合の「融合」という用語は、外因性タンパク質断片(融合パートナー)に結合した関心対象のタンパク質を含むキメラタンパク質をいう。融合パートナーは、関心対象のポリペプチドの溶解度を増加させることおよび宿主細胞もしくは上清またはその両方からの組換え融合ポリペプチドの精製を可能にする「アフィニティータグ」を提供することを含む、種々の機能を果たすことができる。望ましい場合、融合パートナーは、精製後または精製の間に関心対象のタンパク質から除去することができる。
ポリペプチドに言及して使用される場合の「相同体」または「相同の」という用語は、2つのポリペプチド間の高い程度の配列の同一性、三次元構造の高い程度の類似性、または活性部位と作用機序の高い程度の類似性をいう。好ましい態様において、相同体は、基準配列(例えば、配列番号:2に記載のジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ)に対して60%を超える配列の同一性を有し、さらに好ましくは、75%を超える配列の同一性を有し、よりさらに好ましくは、90%を超える配列の同一性を有する。
ポリペプチドに言及して使用される場合の「変種」および「突然変異体」という用語は、別の、通常は関連するポリペプチドと1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列をいう。変種は、置換されたアミノ酸が類似した構造的または化学的特性を有する「保存的」変化を有してもよい(例えば、ロイシンからイソロイシンへの置換)。さらにまれであるが、変種は、「非保存的」変化(例えば、グリシンからトリプトファンへの置換)を有してもよい。同様のマイナーな変形はアミノ酸欠損もしくは挿入(言い換えると、追加)または両方を含んでもよい。生物学的作用をなくすことなく、どのアミノ酸残基およびいくつのアミノ酸残基を置換、挿入または欠損させることができるかを決定するガイダンスは、当業者に既知のコンピュータプログラム例えば、DNAStarソフトウェアを使用して見出すことができる。変種は機能的なアッセイ法において試験することができる。好ましい変種は、10%未満の変化を有し、好ましくは5%未満の変化を有し、より好ましくは2%未満の変化を有する(置換、欠損等にかかわらず)。
「遺伝子」という用語は、RNAまたはポリペプチドもしくはその前駆体(例えば、プロインスリン)を産生するのに必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列をいう。機能的なポリペプチドは、そのポリペプチドの望ましい活性または機能的な特性 (例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達等) が保持されている限り、全長のコード配列またはコード配列の任意の部分によってコードされうる。遺伝子に言及して使用される場合の「一部」という用語は、遺伝子の断片をいう。断片は、数ヌクレオチドから全長の遺伝子配列マイナス1ヌクレオチドまでサイズの範囲があってもよい。従って、遺伝子の少なくとも一部を含むヌクレオチド」は、遺伝子の断片または全長の遺伝子を含んでもよい。
「遺伝子」という用語はまた、構造遺伝子のコード領域も含み、その遺伝子が全長のmRNAの長さに対応するように、両端の約1 kbの距離の5'および3'末端の両方のコード領域に隣接して位置する配列を含む。コード領域の5'に位置し、mRNA上に存在する配列は5'非翻訳配列と言われる。コード領域の3'または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は3'非翻訳配列と言われる。「遺伝子」という用語は、cDNAおよびゲノム形態の遺伝子の両方を含む。ゲノム形態または遺伝子のクローンは、「イントロン」、「介在領域」、または「介在配列」と呼ばれる非コード配列が介入されたコード領域を有する。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサーなどの調節要素を有してもよい。イントロンは、核または一次転写物から除去または「スプライシング」される。従って、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物には存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドのアミノ酸の配列または順序を指定するために翻訳中に機能する。
イントロンを含有する以外に、ゲノム型の遺伝子は、RNA転写物に存在する配列の5'および3'末端に位置する配列を含んでもよい。これらの配列は「隣接」配列または領域と言われる(これらの隣接配列は、mRNA転写物に存在する非翻訳配列の5'または3'側に位置する)。5'隣接領域は、遺伝子の転写を制御または遺伝子の転写に影響を与えるプロモーターおよびエンハンサーなどの調節要素を含んでもよい。3'隣接領域は、転写の停止、転写後切断、およびポリアデニル化を誘導する配列を含有してもよい。
「異種遺伝子」という用語は、天然の環境で存在しない(言い換えると、人為的に変更された)因子をコードする遺伝子をいう。例えば、異種遺伝子は、別の種に導入された1つの種の遺伝子を含む。異種遺伝子はまた、いくつかの方法で変更された(例えば、突然変異された、多数のコピーに追加された、非天然型プロモーターまたはエンハンサーに結合された等)生物由来の遺伝子を含む。異種遺伝子は、cDNA形態の植物遺伝子を含む植物遺伝子配列を含んでもよく、cDNA配列はセンス方向(mRNAを作製する)またはアンチ-センス方向(mRNA転写物に相補的なアンチ-センスRNA転写物を作製する)に発現されうる。異種遺伝子配列は、典型的には、異種遺伝子によってコードされるタンパク質の遺伝子もしくは染色体中の植物遺伝子配列に関連して天然に見られないプロモーターなどの調節配列を含むヌクレオチド配列、または天然に見られない染色体部分に関連しているプロモーターなどの調節要素を含むヌクレオチド配列に結合されるという点において、異種遺伝子は内因性植物遺伝子と識別される(例えば、遺伝子は、遺伝子が天然に発現されない遺伝子座において発現される)。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む分子を言い、好ましくは3つより多く、通常10個より多いデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む分子をいう。正確なサイズは、最終的なオリゴヌクレオチドの機能または用途に依存する、多数の因子に依存すると考えられる。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、またはそれらの組み合わせを含む任意の方法で作製することができる。
「ある遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」または特定のポリペプチドを「コードする核酸配列」という用語は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、または言い換えると、遺伝子産物をコードする核酸配列をいう。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA形態で存在してもよい。DNA形態で存在する場合には、オリゴヌクレオチドは1本鎖(言い換えると、センス鎖)または2本鎖であってもよい。適切な転写開始および/または一次RNA転写物の適正な処理を可能にすることが必要とされる場合には、エンハンサー/プロモーター、スプライスジャンクション、ポリアデニル化シグナル等などの適切な制御要素を遺伝子のコード領域の近位に配置することができる。または、本発明の発現ベクターに使用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライスジャンクション、介在配列、ポリアデニル化シグナル等または内因性制御要素と外因性制御要素の組み合わせを含有してもよい。
「相補的な」および「相補性」という用語は、塩基対形成規則に関連するポリヌクレオチド(言い換えると、ヌクレオチドの配列)を言う。例えば、配列「A-G-T」は配列「T-C-A」と相補的である。相補性は、核酸の塩基のいくつかだけが塩基対形成規則により一致している「部分的」であってもよい。または、核酸間で「完全」または「全く」相同性であってもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーション効率および強度に大きな影響を与える。これは、増幅反応および核酸間の結合に依存する検出方法においては特に重要である。
核酸に関連して使用される場合の「相同性」という用語は、相補性の程度をいう。部分的な相同性または完全に相同性(言い換えると、同一性)が存在してもよい。「配列の同一性」は、2つまたはそれ以上の核酸間の関連性の測定値を意味し、比較配列の鎖長全体を基準にした割合として示される。同一性の算出は、それぞれ比較的長い配列の同じ比較位置において同一でありおよび同一関連部位内であるヌクレオチド残基を考慮する。同一性の算出は、「GAP」(Genetics Computor Group、ウィスコンシン州マディソン)および「ALIGN」(DNA Star、ウィスコンシン州マディソン)などのコンピュータプログラムに含まれるアルゴリズムによって実施してもよい。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列が、機能的な用語を使用して「実質的に相同である」と言われる標的核酸にハイブリダイゼーションすることを少なくとも部分的に阻害する(または競合する)ものである。完全に相補的な配列が標的配列にハイブリダイゼーションすることを阻害することは、低ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションアッセイ法(サザンブロットまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション等)を使用して調査することができる。実質的に相同な配列またはプローブは、低ストリンジェントな条件下で標的と完全に相同である配列の結合(言い換えると、ハイブリダイゼーション)に競合し、阻害すると考えられる。これは、低ストリンジェントな条件が、非特異的結合が許されるようであると言っているのではなく、低ストリンジェントな条件が、2つの配列の互いへの結合が特異的な(言い換えると、選択的な)相互作用であることを要求する。非特異的な結合が存在しないことは、部分的な程度の相補性さえもない(例えば、約30%未満の同一性)第2の標的を使用することによって試験することができ、非特異的な結合が存在しない場合には、プローブは第2の非相補的な標的にハイブリダイゼーションしないと考えられる。
cDNAまたはゲノムクローンなどの2本鎖核酸配列に言及して使用される場合には、「実質的に相同な」という用語は、以下に記載するように低ストリンジェントな条件下において2本鎖核酸配列のどちらか一方または両方の鎖にハイブリダイゼーションすることができる任意のプローブをいう。
核酸ハイブリダイゼーションに言及して使用される場合の低ストリンジェントな条件は、鎖長約500ヌクレオチドのプローブを使用する場合には、5X SSPE(43.8g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4 H2O;および1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.1% SDS、5×デンハルト試薬[50×デンハルトは500 mlあたり、5 gフィコール(タイプ400、Pharmacia)、5g BSA(画分V、Sigma)を含有する]および100μg/l 変性サケ精子DNAからなる溶液中で42℃において結合またはハイブリダイゼーションさせ、次に5X SSPE、0.1% SDSを含む溶液中で42℃において洗浄することと同等な条件を含む。
核酸ハイブリダイゼーションに言及して使用される場合の高ストリンジェントな条件は、鎖長約500ヌクレオチドのプローブを使用する場合には、5X SSPE(43.8g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4 H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5% SDS、5X デンハルト試薬および100μg/l 変性サケ精子DNAからなる溶液中で42℃において結合またはハイブリダイゼーションさせ、次に0.1X SSPE、1.0% SDSを含む溶液中で42℃において洗浄することと同等な条件を含む。
低ストリンジェントな条件を含むように数多くの同等な条件を使用することができることは既知であり、プローブの鎖長および性質(DNA、RNA、塩基の組成)並びに標的の性質(DNA、RNA、塩基の組成、溶液で存在するかまたは固定されているか等)並びに塩および他の成分(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールの有無)などの因子が考慮され、上記した条件と異なるが、同等の低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を作成するためにハイブリダイゼーション溶液を変更することができる。また、高ストリンジェントな条件下においてハイブリダイゼーションを促進する条件が当業者に知られている(例えば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄段階の温度を上昇させる、ハイブリダイゼーション溶液にホルムアミドを使用する等)。
cDNAまたはゲノムクローンなどの2本鎖核酸配列に言及して使用される場合には、「実質的に相同な」という用語は、上記のように低度から高度のストリンジェントな条件下で、2本鎖核酸配列のいずれか一方または両方の鎖にハイブリダイゼーションすることができる任意のプローブをいう。
1本鎖核酸配列に言及して使用される場合には、「実質的に相同な」という用語は、上記のように低度から高度のストリンジェントな条件下で1本鎖核酸配列にハイブリダイゼーションすることができる(言い換えると、相補的である)任意のプローブをいう。
「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的な核酸の対形成をいう。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(言い換えると、核酸間の結合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比のような因子により影響を受ける。構造内に相補的な核酸の対形成を含有する1つの分子は、「セルフ-ハイブリダイゼーションしている」といわれる。
「Tm」という用語は、核酸の「融解温度」を示す。融解温度は、2本鎖核酸分子が1本鎖に半分の割合で解離する温度である。核酸のTmを算出する等式は当技術分野において既知である。標準的な文献によって示されるように、Tm値の単純な推定値は、核酸が1 M NaClの水溶液で存在する場合には、等式:Tm = 81.5 + 0.41 (% G + C)によって算出することができる(例えば、AndersonおよびYoung、「Nucleic Acid Hybridization」における「定量的フィルターハイブリダイゼーション(Quantitative Filter Hybridization)」(1985)を参照されたい)。他の参考文献には、構造および配列の特徴をTmの算出に考慮する最新のコンピュータによる計算が挙げられる。
本明細書において使用する「ストリンジェンシー」という用語は、核酸のハイブリダイゼーションを実施する温度条件、イオン強度条件、および有機溶媒のような他の化合物の存在条件をいう。「高ストリンジェントな」条件では、核酸の塩基対形成は、相補的な塩基配列の頻度が高い核酸断片間にのみ生じる。従って、「低」ストリンジェントな条件は、相補的な配列の頻度が通常低いとき、遺伝子的に種々の生物に由来する核酸の場合に必要とされることが多い。
「増幅」は、鋳型特異性に関係する核酸複製の特殊な場合である。非特異的な鋳型複製(言い換えると、鋳型依存的であるが、特異的な鋳型に依存しない複製)と対比するべきである。鋳型特異性は、本明細書において、複製の忠実度(言い換えると、適切なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ-またはデオキシリボ-)特異性とは識別される。鋳型特異性は、「標的」特異性に関して記載されることが多い。標的配列は、それらが探索されて他の核酸から選別されるという意味において「標的」である。増幅技法は、主にこの選別のために設計されている。
鋳型特異性は、ほとんどの増幅技法において、酵素の選択によって達成される。増幅酵素は、使用される条件下において、核酸の異種混合物中で特定の核酸配列だけを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合には、MDV-1 RNAがレプリカーゼの特異的な鋳型である(Kacianら、(1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69: 3038)。他の核酸は、この増幅酵素では複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合には、この増幅酵素は、自身のプロモーターに対してストリンジェントな特異性を有する(Chamberlinら、(1970) Nature, 228: 227)。T4 DNAリガーゼの場合には、酵素は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質とライゲーション接続部位の鋳型との間にミスマッチが存在する場合には、2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをライゲーションしないと考えられる(WuおよびWallace (1989) Genomics, 4: 560)。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温において機能する能力に関しては、結合対象の配列に対する高い特異性を示すことが見出されており、従ってプライマーによって規定され、高温により、熱力学条件は標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションを実施させ、非標的配列とのハイブリダイゼーションを実施させない(H. A. Erlich(編)(1989) PCR Technology, Stockton Press)。
「増幅可能な核酸」という用語は、任意の増幅方法によって増幅することができる核酸をいう。「増幅可能な核酸」は、通常、「試料鋳型」を含むことが考慮される。
「試料鋳型」という用語は、「標的」(以下に規定する)の存在について分析される試料に由来する核酸をいう。一方、「バックグラウンド鋳型」は、試料中に存在してもまたはしなくてもよい、試料鋳型以外の核酸に言及して使用される。バックグラウンド鋳型は不注意であることが多い。キャリーオーバーの結果である場合もあり、試料から精製により除去されることが求められる核酸不純物が存在することによる場合もある。例えば、検出対象以外の生物の核酸は、試験試料中にバックグラウンドとして存在することがある。
「プライマー」という用語は、精製された制限酵素消化物中のように天然に存在しようが、または合成により作製されようが、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に(言い換えると、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの誘導剤の存在下で、好適な温度およびpHにおいて)置かれるとき、合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは、最大の増幅効率のためには好ましくは1本鎖であるが、別の方法では2本鎖であってもよい。2本鎖の場合には、プライマーは、まず、伸長産物を作製するために使用される前にその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下において伸長産物の合成を刺激するのに十分長くなければならない。プライマーの正確な鎖長は、温度、プライマー源および使用する方法を含む、多数の因子に依存すると考えられる。
「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、クローニングまたは精製しないでゲノムDNA混合物中の標的配列セグメント濃度を増加する方法を記載しているK. B. Mullisの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号および同第4,965,188号の方法をいう。標的配列を増幅するこの過程は、望ましい標的配列を含有するDNA混合物に大過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入する段階と、次にDNAポリメラーゼの存在下において正確な順序の熱サイクルを実施する段階からなる。2つのプライマーは、2本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を実施するためには、混合物を変性させ、次いでプライマーを、標的分子内の相補的な配列にアニーリングする。アニーリング後、新たな相補鎖対を形成するように、ポリメラーゼを用いてプライマーを伸長する。変性段階、プライマーアニーリング段階およびポリメラーゼ伸長段階を多数回反復して(言い換えると、変性、アニーリングおよび伸長が1「サイクル」を構成し、数多くの「サイクル」が実施されてもよい)、望ましい標的配列の高濃度の増幅されたセグメントを得ることができる。望ましい標的配列の増幅されたセグメントの鎖長は、互いに対するプライマーの相対的な位置によって決定され、従ってこの鎖長は制御可能なパラメーターである。この方法の反復する局面に基づいて、この方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以降「PCR」)といわれる。標的配列の望ましい増幅セグメントが混合物中の優先的な配列になるので(濃度に関して)、それらは「PCR増幅される」と言われる。
PCRでは、ゲノムDNA中の特定の標的配列の単一コピーをいくつかの異なる方法(例えば、標識プローブを用いたハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの導入、次いで実施するアビジン-酵素結合の検出;dCTPまたはdATPなどの32P-標識デオキシヌクレオチド三リン酸の増幅セグメントへの組み込み)によって検出可能なレベルにまで増幅することができる。ゲノムDNA以外に、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、適当なプライマー分子セットを用いて増幅することができる。特に、PCR方法それ自体で作製された増幅セグメントは、それら自身が、以降のPCR増幅の効率的な鋳型である。
「PCR産物」、「PCR断片」および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリングおよび伸長のPCR段階を2サイクルまたはそれ以上完了した後に得られる化合物の混合物をいう。これらの用語は、1つまたは複数の標的配列の1つまたは複数のセグメントの増幅であった場合も含む。
「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型および増幅酵素を除いて増幅に必要とされる試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液等)をいう。典型的には、増幅試薬および他の反応成分は反応容器(試験管、マイクロウェル等)に入れられ、その中に含まれる。
「逆転写酵素」または「RT-PCR」という用語は、出発物質がmRNAである種類のPCRをいう。出発mRNAは、逆転写酵素を使用して相補的なDNAすなわち「cDNA」に酵素的に変換される。次いで、cDNAは「PCR」反応の「鋳型」として使用される。
「RACE」という用語は、cDNA末端の急速増幅(Rapid Amplification of cDNA Ends)をいう。
「遺伝子発現」という用語は、遺伝子の「転写」(言い換えると、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)遺伝子にコードされる遺伝情報をRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNA)に変換し、mRNAの「翻訳」を介してタンパク質に変換する過程をいう。遺伝子発現は、この過程の多数の段階において調節することができる。「アップレギュレーション」または「活性化」は、遺伝子発現産物(言い換えると、RNAまたはタンパク質)の産生を増加させる調節をいうが、「ダウン-レギュレーション」または「抑制」は、産生を低下させる調節をいう。アップレギュレーションまたはダウン-レギュレーションに関与する分子(例えば、転写因子)は、それぞれ、「活性化因子」および「抑制因子」と呼ばれることが多い。
「機能的に組み合わせる」、「機能的な順序で」および「機能的に結合する」という用語は、所与の遺伝子の転写および/または望ましいタンパク質分子の合成を誘導することができる核酸分子が作製されるような方法の核酸配列の結合をいう。この用語はまた、機能的なタンパク質を作製するような方法におけるアミノ酸配列の結合もいう。
「調節要素」という用語は、核酸配列発現のいくつかの局面を制御する遺伝子要素をいう。例えば、プロモーターは、機能的に結合したコード領域の転写開始を促進する調節要素である。他の調節要素はスプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、停止シグナル等である。
真核生物における転写制御シグナルは「プロモーター」および「エンハンサー」要素を含む。プロモーターおよびエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短いアレイのDNA配列からなる(Maniatisら、Science 236: 1237, 1987)。プロモーターおよびエンハンサー要素は、酵母、昆虫、哺乳類および植物細胞の遺伝子を含む種々の真核生物源から単離されている。プロモーターおよびエンハンサー要素はまた、ウィルスおよび類似の制御要素、例えば原核生物にも見られるプロモーターなどからも単離されている。特定のプロモーターおよびエンハンサーの選択は、関心対象のタンパク質を発現するために使用する細胞の種類に依存する。広域的な宿主範囲を有する真核生物プロモーターおよびエンハンサーもあるが、限られたサブセットの細胞種においてしか機能しないものもある(総説として、Vossら、Trends Biochem. Sci., 11: 287, 1986;およびManiatisら、上記、1987を参照されたい)。
本明細書において使用する「プロモーター要素」、「プロモーター」または「プロモーター配列」という用語は、DNAポリマーのタンパク質コード領域の5'末端に位置する(言い換えると、前にくる)DNA配列をいう。天然に知られている多くのプロモーターの位置は転写される領域の前にある。プロモーターはスイッチとして機能し、遺伝子の発現を活性化する。遺伝子が活性化されると、転写されるまたは転写に関与すると言われる。転写は、遺伝子からのmRNAの合成に関与する。従って、プロモーターは転写調節要素として働き、遺伝子のmRNAへの転写開始部位も提供する。
プロモーターは組織特異的であっても、細胞特異的であってもよい。「組織特異的」という用語は、プロモーターに適用される場合、異なる種類の組織(例えば、葉)に対象となる同じヌクレオチド配列の発現が存在しない場合と比較して、特定の種類の組織(例えば、種子)における対象となるヌクレオチド配列の選択的な発現を誘導することができるプロモーターをいう。プロモーターの組織特異性は、例えば、プロモーター配列にレポーター構築物を機能的に結合してレポーター構築物を作製し、レポーター構築物が結果として生じるトランスジェニック植物の全ての組織に組み入れられるように、植物のゲノムにレポーター構築物を導入し、およびトランスジェニック植物の異なる組織におけるレポーター遺伝子の発現を検出する(例えば、mRNA、タンパク質またはレポーター遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を検出する)ことによって評価することができる。他の組織のレポーター遺伝子の発現レベルと比較して1つまたは複数の組織においてより高いレベルのレポーター遺伝子の発現が検出されると、そのプロモーターは、より高い発現レベルが検出される組織に特異的であることが示される。プロモーターに適用される、「細胞種特異的」という用語は、同一組織内の異なる種類の細胞において対象となる同一ヌクレオチド配列の発現が存在しない場合と比較して、特定の種類の細胞において対象となるヌクレオチド配列の選択的な発現を誘導することができるプロモーターをいう。「細胞種特異的」という用語は、プロモーターに適用される場合には、単一の組織内の領域において関心対象のヌクレオチド配列の選択的な発現を促進することができるプロモーターを意味する。プロモーターの細胞種特異性は、当技術分野において既知の方法、例えば、免疫組織化学的染色を使用して評価することができる。簡単に説明すると、組織切片をパラフィンに包埋し、その発現がプロモーターによって制御される関心対象のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド産物に特異的である一次抗体をパラフィン切片に反応させる。一次抗体に特異的である標識した(例えば、ペルオキシダーゼ結合)二次抗体を切片化した組織に結合させ、特異的な結合を顕微鏡で検出する(例えば、アビジン/ビオチンを用いて)。
プロモーターは構成的であってもまたは調節可能であってもよい。「構成的」という用語は、プロモーターに言及される場合には、プロモーターは、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光等)が存在しない場合に機能的に結合した核酸配列の転写を誘導することができることを意味する。典型的には、構成的プロモーターは、実質的に任意の細胞および任意の組織におけるトランスジーンの発現を誘導することができる。例示的な植物の構成的プロモーターには、SDカリフラワーモザイクウィルスプロモーター(CaMV SD、例えば、参照として本明細書に組み入れられている米国特許第5,352,605号を参照されたい)、マンノピン(mannopine)合成酵素プロモーター、オクトピン(octopine)合成酵素(oct)プロモーター、スーパープロモーター(例えば、国際公開公報第95/14098号を参照されたい)、およびubi3プロモーター(例えば、GarbarinoおよびBelknap(1994) Plant Mol. Bio. 24: 119-127を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。このようなプロモーターは、形質転換した植物組織において異種核酸配列の発現を誘導するために成功して使用されている。
一方、「調節可能な」プロモーターは、刺激が存在しない場合における機能的に結合された核酸配列の転写レベルと異なる、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光等)の存在下における機能的に結合した核酸配列の転写レベルを誘導することができるものである。
エンハンサーおよび/またはプロモーターは、「内因性」、「外因性」、または「異種」であってもよい。「内因性」エンハンサーまたはプロモーターは、ゲノム内の所定の遺伝子に天然に結合しているものである。「外因性」または「異種」エンハンサーまたはプロモーターは、遺伝子の転写が結合したエンハンサーまたはプロモーターによって誘導されるように、遺伝的な操作 (言い換えると、分子生物学的技法) によって遺伝子に隣接して配置されるものである。例えば、第1の遺伝子と機能的に組み合わせた内因性プロモーターを単離し、除去し、第2の遺伝子と機能的に組み合わせて配置し、それによって第2の遺伝子と機能的に組み合わせた「異種プロモーター」とする。種々のこのような組み合わせが考慮される(例えば、第1および第2の遺伝子は同一種由来であっても、または異なる種由来であってもよい)。
発現ベクター上に「スプライシングシグナル」が存在すると、真核生物宿主細胞における組換え転写物の発現レベルが高くなる。スプライシングシグナルは一次RNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライスドナーおよびアクセプター部位からなる(Sambrookら(1989) 「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク、pp16.7〜16.8)。通常使用されるスプライスドナーおよびアクセプター部位は、SV40の16S RNAのスプライスジャンクションである。
真核細胞における組換えDNA配列の効率的な発現には、得られる転写物の効率的な停止およびポリアデニル化を誘導するシグナルの発現を必要とする。転写停止シグナルは、一般に、ポリアデニル化シグナルの下流に見られ、鎖長が数百ヌクレオチドである。本明細書において使用する「ポリ(A)部位」または「ポリ(A)配列」は、新生RNA転写物の停止およびポリアデニル化を誘導するDNA配列を示す。ポリ(A)テールがない転写物は不安定で、迅速に分解されるので、組換え転写物の効率的なポリアデニル化が望ましい。発現ベクターに使用されるポリ(A)シグナルは「異種」または「内因性」であってもよい。内因性ポリ(A)シグナルは、ゲノムの所定の遺伝子のコード領域の3'末端に天然に見られるものである。異種ポリ(A)シグナルは、1つの遺伝子から単離され、別の遺伝子の3'に位置づけられているものである。通常使用される異種ポリ(A)シグナルはSV40ポリ(A)シグナルである。SV40ポリ(A)シグナルは、237 bp BamHI/BclI制限酵素断片に含有され、停止およびポリアデニル化の両方を誘導する(Sambrook、上記、16.6-16.7)。
「選択マーカー」という用語は、選択マーカーが発現される細胞に抗生物質もしくは薬剤耐性を与える、または検出することができる追跡物(例えば、発光または蛍光)の発現を与える活性を有する酵素をコードする遺伝子をいう。選択マーカーは「陽性」または「陰性」であってもよい。陽性選択マーカーの例には、G418およびカナマイシン耐性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子並びに抗生物質ハイグロマイシン耐性を与える細菌ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hyg)が挙げられる。陰性選択マーカーは、適当な選択培地において増殖させるとき、その発現が細胞に細胞障害性である酵素活性をコードする。例えば、HSV-tk遺伝子は、通常、陰性選択マーカーとして使用される。ガンシクロビルまたはアシクロビルの存在下において増殖される細胞におけるHSV-tk遺伝子の発現は細胞障害性であり、従って、ガンシクロビルまたはアシクロビルを含有する選択培地における細胞の増殖は、機能的なHSV TK酵素を発現することができる細胞を含まないように選択する。
「ベクター」という用語は、DNAセグメントを1つの細胞から別の細胞に移動する核酸分子をいう。「ビヒクル(vehicle)」という用語は、「ベクター」と互換的に使用されることがある。
「発現ベクター」または「発現カセット」という用語は、望ましいコード配列および特定の宿主生物における機能的に結合したコード配列の発現に必要な適当な核酸配列を含有する組換えDNA分子をいう。原核生物における発現に必要な核酸配列は、通常、プロモーター、オペレーター(選択的)およびリボソーム結合部位を含み、しばしば他の配列を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー並びに停止およびポリアデニル化シグナルを使用することが知られている。
「トランスフェクション」という用語は、外来性DNAを細胞に導入することをいう。転写は、リン酸カルシウム-DNA共沈殿、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、ポリブレン媒介性トランスフェクション、ガラスビーズ、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、ウィルス感染、遺伝子銃(言い換えると、微粒子銃)等を含む当技術分野において既知の種々の方法によって実施することができる。
「感染させる」および「感染」という用語は、細菌に使用する場合には、細菌内に含有される核酸配列が標的生物試料の1つまたは複数の細胞に導入されるような条件下において、標的生物試料(例えば、細胞、組織等)を細菌と同時インキュベーションすることをいう。
「アグロバクテリウム(Agrobacterium)」という用語は、クラウンゴールを生じるグラム陰性土壌桿菌である植物病原性細菌をいう。「アグロバクテリウム」という用語は、アグロバクテリウム-ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(典型的には、感染した植物においてクラウンゴールを生じる)およびアグロバクテリウム-リゾゲネス(Agrobacterium rhizogens)(感染した宿主植物において毛根病を生じる)を含むが、これらに限定されない。アグロバクテリウムによる植物細胞の感染により、一般に、感染した細胞によってオパイン(例えば、ノパリン、アクロピン、オクトピン等)が産生される。従って、ノパリンの産生を生じるアグロバクテリウム株(例えば、LBA4301株、C58株、A208株、GV3101株)は、「ノパリン型」アグロバクテリアと言われ;オクトピンの産生を生じるアグロバクテリウム株(例えば、LBA4404株、Ach5株、B6株)は「オクトピン型」アグロバクテリアと言われ;アグロピンの産生を生じるアグロバクテリウム株(例えば、EHA105株、EHA101株、A281株)は「アグロピン型」アグロバクテリアと言われる。
「衝突させる(bombarding)」、「衝突(bombardment)」および「遺伝子銃」という用語は、標的生物試料中の細胞の細胞膜に傷をつけるおよび/または標的生物試料内に粒子を流入させるために、標的生物試料(例えば、細胞、組織等)に向けて粒子を加速させる方法をいう。遺伝子銃の方法は当技術分野において既知であり(例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,584,807号)、市販されている(例えば、ヘリウムガス誘導性微粒子加速装置(PDS-1000/He、BioRad)。
「微細な傷をつける(microwouding)」という用語は、植物組織に言及する場合には、その組織に微細な傷をつけることをいう。微細な傷をつけることは、例えば、本明細書に記載されている微粒子銃によって実施することができる。
「トランスジェニック」という用語は、植物、果実、または種子に言及して使用される場合には(言い換えると、「トランスジェニック植物」、「トランスジェニック果実」、または「トランスジェニック種子」)、1つまたは複数の細胞に少なくとも1つの異種遺伝子を含有する植物、果実、または種子をいう。「トランスジェニック植物材料」という用語は、広義的に、1つまたは複数の細胞に少なくとも1つの異種細胞を含有する植物、植物構造、植物組織、植物種子または植物細胞をいう。
「形質転換体」または「形質転換細胞」という用語は、転移物の数にかかわらず、その細胞から誘導される一次形質転換細胞および培養物を含む。子孫は、計画的または不注意な突然変異により、DNA含量が正確に同一でないことがある。元の形質転換細胞においてスクリーニングしたものと同じ機能を有する突然変異子孫は、形質転換体の定義に含まれる。
「野生型」という用語は、遺伝子に言及される場合には、天然型起源から単離された遺伝子の特徴を有する遺伝子をいう。「野生型」という用語は、遺伝子産物に言及される場合には、天然型起源から単離された遺伝子産物の特徴を有する遺伝子産物をいう。野生型遺伝子は、割合は最も頻度高く観察され、任意に「通常の」または「野生型」の遺伝子と名づけられるものである。一方、「改変された」または「突然変異」という用語は、遺伝子または遺伝子産物に言及される場合には、それぞれ、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較するとき、配列および/または機能的特性の改変(言い換えると、特徴の変更)を示す遺伝子または遺伝子産物をいう。天然に存在する突然変異体を単離することができることが注目され、これらは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合、変更された特徴を有するという事実によって同定される。
「アンチセンス」という用語は、DNA2本鎖のセンス鎖のデオキシリボヌクレオチド残基の配列と比較したとき、デオキシリボヌクレオチド残基の配列が5'から3'の逆方向であるデオキシリボヌクレオチド配列をいう。DNA2本鎖の「センス鎖」は、天然の状態において細胞によって「センスmRNA」に転写されるDNA2本鎖の鎖を言う。従って、「アンチセンス」配列は、DNA2本鎖の非コード鎖と同じ配列を有する配列である。「アンチセンスRNA」という用語は、標的一次転写物またはmRNAの全てまたは一部に相補的であり且つ一次転写物またはmRNAのプロセッシング、輸送および/または翻訳を妨害することによって標的遺伝子の発現を遮断するRNA転写物をいう。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物の任意の一部とであっても、言い換えると5'非コード配列、3'非コード配列、イントロンまたはコード配列においてでもよい。また、本明細書において使用するアンチセンスRNAは、アンチセンスRNAの効率を増加して遺伝子発現を遮断するリボザイム配列領域を含有してもよい。「リボザイム」は触媒作用のあるRNAを言い、配列特異的エンドリボヌクレアーゼを含む。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を妨害することができるアンチセンスRNA転写物の産生をいう。
「siRNA」という用語は、低分子干渉(short interfering) RNAをいう。いくつかの態様において、siRNAは、鎖長約18〜25ヌクレオチドの2本鎖または2本鎖領域を含み、しばしばsiRNAは、各末端の3'末端に約2〜4個の不対ヌクレオチドを含有する。siRNAの2本鎖または2本鎖領域の少なくとも1本の鎖は、標的RNA分子に実質的に相同または実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的な鎖は「アンチセンス鎖」であり、標的RNA分子に相同な鎖は「センス鎖」であり、siRNAアンチセンス鎖に相補的でもある。siRNAは追加の配列を含有してもよく、このような配列の非制限的な例として、結合配列またはループ並びにステムおよび他の折りたたみ構造が挙げられる。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物においてRNA干渉を誘発する際、並びに植物における転写後遺伝子サイレンシング中の配列特異的RNA分解を誘発する際、主要な中間体として機能すると考えられる。
「標的RNA分子」という用語は、siRNAの短鎖2本鎖領域の少なくとも1本の鎖が相同または相補的であるRNA分子をいう。典型的には、このような相同性または相補性が約100%である場合には、siRNAは、標的RNA分子の発現をサイレンシングまたは阻害させることができる。プロセッシング後のmRNAがsiRNAの標的であると考えられているが、本発明は任意の特定の仮説に限定されず、このような仮説は本発明を実施するのに必要ではない。従って、他のRNA分子もsiRNAの標的となりうることが考慮される。このような標的には、プロセッシング前のmRNA、リボソームRNAおよびウィルスRNAゲノムが挙げられる。
「RNA干渉」または「RNAi」という用語は、siRNAによる遺伝子発現のサイレンシングまたは低下をいう。それは、2本鎖領域のサイレンシング対象の遺伝子の配列に相同であるsiRNAによって開始される、動物および植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシング過程である。遺伝子は、生物にとって内因性であっても、もしくは外因性であってもよく、染色体に組み込まれて存在してもまたはゲノムに組み込まれないトランスフェクションベクター内に存在してもよい。遺伝子の発現は完全にまたは部分的に阻害される。RNAiはまた、標的RNAの機能を阻害すると考えることもでき、標的RNAの機能は完全であってもまたは部分的であってもよい。
「転写後遺伝子サイレンシング(posttranscriptional gene silencing)」または「PTGS」という用語は、転写後の植物の遺伝子発現のサイレンシングを言い、遺伝子反復から合成されるmRNAの特異的な分解に関係すると思われる。
「過剰発現」という用語は、通常または形質転換していない生物における産生レベルを超えるトランスジェニック生物における遺伝子産物の産生をいう。「共抑制」という用語は、外来および内因性遺伝子の両方の発現の抑制を生じる、内因性遺伝子と実質的な相同性を有する外来遺伝子の発現をいう。「変更されたレベル」という用語は、通常または形質転換していない生物におけるものと異なる量または割合の遺伝子産物をトランスジェニック生物において産生することをいう。
「組換え」という用語は、核酸分子に言及される場合には、分子生物学的技法によって共に結合された核酸セグメントを含む核酸分子をいう。「組換え」という用語は、タンパク質またはポリペプチドに言及される場合には、組換え核酸分子を使用して発現されるタンパク質分子をいう。
「サザンブロット分析」、「サザンブロット」、および「サザン」という用語は、サイズによってDNAが分離または断片化されるアガロースまたはアクリルアミドゲル上においてDNAを分析し、次にニトロセルロースまたはナイロン膜などの固相支持体にゲルからDNAを転写することをいう。次いで、使用したプローブに相補的なDNA種を検出するために、固定したDNAを標識プローブに暴露する。DNAは、電気泳動の前に制限酵素で切断することができる。電気泳動後、固相支持体に移す前または移動中にDNAを部分的に脱プリン化および変性させることができる。サザンブロットは、分子生物学者の標準的なツールである(J. Sambrookら(1989)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク、pp9.31-9.58)。
本明細書において使用する「ノーザンブロット分析」、「ノーザンブロット」、および「ノーザン」は、サイズによりRNAを分画化するためにアガロースゲル上でのRNAの電気泳動によりRNAを分析し、次にニトロセルロースまたはナイロン膜などの固相支持体にRNAをゲルから転写することを言う。次いで、使用したプローブに相補的なRNA種を検出するために、固定したRNAを標識プローブに暴露する。ノーザンブロットは、分子生物学者の標準的なツールである(J. Sambrookら(1989)、上記、Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク、pp7.39-7.52)。
「ウェスタンブロット分析」、「ウェスタンブロット」、および「ウェスタン」は、ニトロセルロースまたは膜などの支持体に固定したタンパク質(またはポリペプチド)の分析をいう。先ず、少なくとも1種のタンパク質を含む混合物をアクリルアミドゲルで分離し、次いで分離したタンパク質を、ニトロセルロースまたはナイロン膜などの固相支持体にゲルから転写する。関心対象の少なくとも1つの抗原に対する反応性を有する少なくとも1つの抗体に固定したタンパク質を暴露する。結合した抗体は、放射性標識した抗体の使用を含む、種々の方法によって検出することができる。
「単離される」という用語は、「単離されたオリゴヌクレオチド」に見られるように、核酸に関連して使用される場合には、天然源において本来結合している少なくとも1つの核酸不純物から同定され、分離される核酸配列をいう。単離された核酸は、天然に見られるもとの異なる形態または状況で存在する。一方、DNAおよびRNAなどの単離されていない核酸は、天然に存在する状態で見出される。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、宿主細胞染色体上の隣接する遺伝子に近接して見られ、特定のタンパク質をコードする特定のmRNAなどのRNA配列は、多数のタンパク質をコードする多くの他のmRNAとの混合物として細胞内で見られる。しかし、植物DAGATをコードする単離された核酸には、例として、通常DAGATを発現する細胞のこのような核酸が含まれ、この場合、核酸は、天然細胞とは異なる染色体位置に存在するか、または天然に見出されるものとは異なる核酸配列に隣接している。単離された核酸またはオリゴヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖の形態で存在してもよい。単離された核酸またはオリゴヌクレオチドが、タンパク質を発現するために使用される場合には、オリゴヌクレオチドは必要最小限のセンスまたはコード鎖を含有するが(言い換えると、オリゴヌクレオチドは1本鎖であってもよい)、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有してもよい(言い換えると、オリゴヌクレオチドは2本鎖であってもよい)。
「精製された」という用語は、天然の環境から取り出され、単離または分離された分子、核酸配列またはアミノ酸配列をいう。従って、「単離された核酸配列」は精製された核酸配列である。「実質的に精製された」分子は、それらが天然の状態で結合していた他の成分を少なくとも60%含有せず、好ましくは少なくとも75%含有せず、さらに好ましくは少なくとも90%含有しない。「精製された」または「精製すること」という用語は、試料から不純物を除去することをいう。混入しているタンパク質を除去すると、試料中の関心対象のポリペプチドの割合が増加する。別の例では、組換えポリペプチドは、植物、細菌、酵母または哺乳類宿主細胞中で発現され、ポリペプチドは、宿主細胞のタンパク質を除去することによって精製され、それによって試料中の組換えポリペプチドの割合は増加する。
「試料」という用語は、最も広義的な意味で使用される。1つの意味において、試料は、植物細胞または組織を言うことができる。別の意味において、試料は、任意の起源の標本または培養物、並びに生物および環境試料を含むことを意味する。生物試料は、植物または動物(ヒトを含む)から入手されてもよく、流体、固体、組織および気体を含む。環境試料は、地表物質、土壌、水および工業試料などの環境材料を含む。これらの例は、本発明に適用可能な試料の種類を限定すると考慮されるべきではない。
発明の詳細な説明
本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DAGAT)の単離された遺伝子およびタンパク質を含む組成物、特に、ニシキギ属およびニシキギ属様の単離されたDAGAT遺伝子およびDAGATポリペプチドを含む組成物を提供し、この場合、本酵素は、アセチル-CoAに対する増加した特異性を示す。これらのポリペプチドは、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼとして示され、これは、アセチル基または関連する基の転移に対する特異性が増加した活性を示す「AcDAGAT」と表され、ならびに/またはコマユミから得られる酵素を示す「EaDAGAT」と表される。本発明はまた、この酵素の天然の形態および組換え形態の両方、ならびに変異体および変種の形態(そのいくつかは、野生型と比較して変化した特性を有する)を含む組成物を提供する。本発明はまた、アセチルジパルミトレイン、アセチルジオレイン、アセチルジリシノレインおよびアセチルジベルノリンなどの、AcDAGATによって合成可能な新規なトリアシルグリセロールを含む組成物を提供する。本発明はまた、AcDAGAT遺伝子およびAcDAGATポリペプチドを使用するための方法を提供する。
下記の説明では、本発明の態様の、具体的ではあるが限定的でない例示的な例が示される。この説明には、ニシキギ属由来のAcDAGATの発見、本発明のAcDAGATポリペプチド、本発明のAcDAGATコード配列、AcDAGATタンパク質およびAcDAGATコード配列を同定する方法、AcDAGATコード配列を発現させる方法、アセチルグリセリドを製造する方法、ならびに植物におけるジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を操作する方法が含まれる。
I.ニシキギ属におけるジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子およびポリペプチドの発見
種子油における通常ではないsn-3-アセチルトリアシルグリセロールの存在および構造的特徴づけが30年以上も前から知られている(Kleimanら(1967)、Lipids、2:473〜478)が、これらの新規のグリセリドの生合成は最近になって調べられているにすぎない。これらの通常ではないトリアシルグリセロールは、少数の植物種において様々な量で見出されているが、ニシキギ属の種では、種子油において総トリアシルグリセロールの98%までを表している。従って、ニシキギ属が、アシル-CoA:sn-1,2-ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子を同定および単離することができる潜在的な供給源として選択された。
ニシキギ属のsn-3-アセチルグリセリドでは、sn-1位およびsn-2位が、共通する長鎖脂肪酸(主に、パルミチン酸、オレイン酸およびリノレイン酸)でエステル化される。ニシキギ属におけるsn-3-アセチルグリセリドの生合成の研究により、sn-3-アセチルグリセリドがDAGAT活性によって合成されることが解明されていた。これらの研究には、アセチルグリセリドの組織分布の研究、[14C]アセテートを用いた発生中の種子のインビボ標識の研究、およびコマユミ(これは中西部に一般的な装飾用低木である)における無細胞抽出物でのアセチルトランスフェラーゼのアッセイ研究が含まれていた。この植物に対する一般名はバーニング-ブッシュ(Burning Bush)であり、その特有の赤色の秋の葉に由来する。
1,2-ジアシル-3-アセチンおよび長鎖トリアシルグリセロールの組織分布
種子油の蓄積が種子の発生とともに調べられた。その結果が図1および図2に示される。結果は、成熟期中期における約0.5mmol/時間/グラム(新鮮種子重量)の1,2-ジアシル-3-アセチン(AcTAG)の蓄積の内因性速度を示していた。また、様々な組織が、総脂質、1,2-ジアシル-3-アセチン(AcTAG)、および正常なトリアシルグリセロール(TAG)の存在および量について分析された。その結果が図3に示される。これらのグリセリドは、奇数鎖の内部標準を用いた高温ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して分析された。予想されるように、非常に多量の脂質が胚および胚乳組織において見出された。TAGは、根を除くすべての組織で見出された。AcTAGは、胚組織に特異的であることが見出され、胚乳組織において最も多かった。このように、AcTAGは、葉、茎、根または発達中の花芽では観測されなかった。
14C]アセテートを用いた発生中のコマユミ種子のインビボ標識
主要なアシル脂質クラス(すなわち、長鎖トリアシルグリセロール(TAG)、1,2-ジアシル-3-アセチン(Ac-TAG)、1,2-ジアシルグリセロール(DAG)およびホスファチジルコリン(PC))への[14C]アセテートの取り込みを、種子発生の関数として、半分に割った種子で調べた。その結果が図4に示される。内因性脂質蓄積の主要期間は20日目〜60日目であり、これは、AcTAGの標識が最大であることと一致している。
AcTAGは、アセチル基および脂肪酸の両方が標識されるが、この場合、脂肪酸はsn-1位およびsn-2位がほぼ等しく標識される。C2ユニットあたりの比活性は、脂肪酸の標識と比較した場合に(17または18のC2ユニット/分子)、sn-3アセチルの標識の場合には一層より大きい(1ユニット/分子)。
14C]アセテートを用いたコマユミ種子の標識に対する経時変化
2つに分けられた種子による主要なアシル脂質クラスへの[14C]アセテートの取り込みをインキュベーション時間の関数として調べた。総脂質および総脂肪酸への酢酸の取り込みは時間に関して直線的である。より重要なことではあるが、1,2-ジアシル-3-アセチンのsn-3アセチル基への取り込みもまた直線的である。アセチル基をトランスアシラーゼ機構によってグリセリドのsn-3位に供給する中間のアセチルプールが存在することを示す明らかな誘導期が認められない。このことは、ジアシルグリセロール(DAG)のアシル化のためにアセチル-CoAが直接利用されることと一致する。
14C]アセチル基を含有するホスファチジルコリン(PC)またはジアシルグリセロール(DAG)はいずれも、反応産物の中に存在しなかった。さらに、アセテートが、デノボ脂肪酸合成と比較した場合に、DAGのsn-3アセチル化のために優先的に使用される。このことは、細胞質ゾルでのアセチルトランスフェラーゼ反応と一致する。
インビトロアッセイ法によるアシルトランスフェラーゼ活性の特徴づけ
アシルトランスフェラーゼ活性を、[14C]アセチル-CoAを発生中のコマユミ種子由来の無細胞抽出物および内因性の1,2-ジアシルグリセロール(DAG)とインキュベーションすることによってアッセイした。総脂質を抽出し、放射能をアッセイし、その後、1,2-ジアシル-3-アセチン画分における標識の量をTLCによって測定した。基質についてトランスフェラーゼと競合した、非常に大きい(約20倍を超える)、大部分が可溶性のアセチル-CoAヒドロラーゼ活性が存在した。他の活性化されたアセチル供与体(すなわち、1-O-アセチルグルコースをもたらすUDP-グルコース)を生じさせる補因子の添加、またはアセチルカルニチンを生じさせるカルニチンとカルニチンアセチルトランスフェラーゼは、活性を増強させなかった。
アセチルトランスフェラーゼは内因性または外因性のいずれかの1,2-ジアシルグリセロールをアセチル受容体として使用できることが明らかにされた。内因性DAGはC18C18またはC16C18の化学種(C18/C16)である。外因性DAGの場合、1,2-ジオレイン(C18/C18)および1,2-ジヘキサノイン(C6/C6)の両方が使用された。ジヘキサノインは、アセチル受容体として内因性DAGと競合することが観測された。アセチル-CoAの濃度曲線から、120nmol/時間/グラム(新鮮種子組織重量)のVmaxの概算値が計算された。これは、約500nmol/時間/グラム(新鮮種子組織重量)の内因性速度と比較することができる。
順相シリカTLCが生成物分析のために定法に従って使用された。[14C]アセチルグリセリドのバンドを回収し、逆相TLCによってさらに分析した。その結果は、標識されたAcTAG生成物がクロマトグラムでは質量標準物(C18/C16については内因性Ac-TAG、C6/C6については合成された3-アセチル-1,2-ジヘキサノイン標準物)と同時に移動することを示していた。
14C]アセチル-グリセリドへの[14C]アセチル基の取り込みは、誘導期を伴わない直線的な初速度を示した。このことは、[14C]アセチルの生合成中間体が検出できないことを示している。このことはまた、DAGのアセチル化のためにアセチル-CoAが直接利用されることと一致している。
AcDATコード配列を同定するための方法
上記に記載されたニシキギ属におけるsn-3-アセチルグリセリドの生合成の研究から得られた証拠に基づいて、AcDATコード配列を同定するための方法が開発された。この方法は、sn-3-アセチルグリセリドが植物組織に存在するという観測により始まる。次の工程は無傷組織および組織ホモジネートの標識研究であり、これは、sn-3-アセチルグリセリドを合成する能力が実際に組織に存在することを確認するため、ならびに反応基質および特にアセチル供与体の正確な構造を決定するためである。次の工程は、sn-3-アセチルグリセリドを好ましくは比較的高いレベルで合成する組織(これはニシキギ属では発生中の種子である)から調製された総RNAから正しいcDNAを得ることである。ニシキギ属の場合、発生中の種子の脂質プロフィルが、sn-3-アセチルグリセリドが最も大きい速度で蓄積する発生段階を決定するために分析された。その後、この発生段階で得られた種子を使用して、cDNAライブラリーが調製される。
AcDAGATに対するcDNAを、データベースにおいて見出されるDAGAT遺伝子配列から同定される高度に保存された配列に対する縮重プライマーを使用するRT-PCRによって、ならびに続いて3'および5'のcDNA末端を明らかにするための3'RACEおよび5'RACEを使用して得る(より詳しくは実施例3に記載される)。全長のcDNAクローンを、3'RACE産物および5'RACE産物の配列に基づくプライマーを使用するRT-PCRによって得る。このクローンは、コードされる配列のAcDAGATとしての同一性を確認するために使用される。
クローン化配列がAcDAGATをコードすることを確認することは、sn-3-アセチルグリセリドがクローンの発現時にだけ産生されるように、または増加した量のsn-3-アセチルグリセリドがクローンの発現時にだけ産生されるように、そのクローンをインビトロ系またはインビボ系のいずれかで発現させることによって得られる。3-アセチルグリセリドは生物の細胞において産生されてもよく、または生物から得られた抽出物を用いて行われる酵素アッセイ法において産生されてもよい。好ましくは、そのような系はインビボであり、クローンが宿主生物にトランスフェクションされ、宿主生物において発現される。より好ましくは、そのような系は、sn-3-アセチルグリセリドが通常の場合には産生されない系であり、非限定的な例として、宿主生物が酵母細胞である系がある。さらにより好ましくは、そのような系は、ジオレオイルグリセロール(ジ-18:1-DAG)などの好適な基質を有するか、または合成することができ、且つトリグリセリドにおける新規のアシル基の存在に耐えることができる。非限定的な例として、宿主生物が培養タバコ細胞である系がある。
AcDAGATコード配列の同定
この方法は、上記および実施例に記載されるように、発生中のコマユミ種子のために利用され、図5に示されるように、DAGATに対する全長のcDNAコード配列の同定および単離をもたらした。推定されるアミノ酸配列が図6に示される。ニシキギAcDAGATの推定アミノ酸配列は、図7に示されるように、他の植物源から得られるDAGATに対して大きな類似性を有している。推定アミノ酸配列は、植物についてこれまでに記載されたすべてのDAGATタンパク質と非常に類似している(50.7%の同一性;91%の類似性)。他のDAGATタンパク質とは最も異なるニシキギAcDAGATタンパク質の領域は、N末端(アミノ酸1〜93位)である。差異が存在する他の領域には、アミノ酸158〜200位およびアミノ酸243〜268位が含まれる。10個の予測された疎水性領域が、Hobbsら(1999)、FEBS Lett. 452:145-149;Bouvier-Naveら(2000)、Eur. J. Biochem. 267:85-96;Routaboulら(1999)、Plant physiol. Biochem. 37:831-840;ならびにZouら(1999)、Plant J. 19:645-653により記載されるように、Kyte-Doolittleハイドロパシープロットによって植物DAGATについて記載される。これらの領域はEaDAGATに存在する。7個の膜貫通ドメインが、エピトープ標識法を使用して、DAGAT遺伝子ファミリーの別のメンバーで、すなわち、ヒトのアシル-CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ-1タンパク質(Linら(1999)、J. Biol. Chem. 274:23276-23285)で同定されている。1対の膜貫通ドメインがこの方法により失われた可能性がある。様々なDAGATとの類似性を考えると、DAGATは7個または9個の実際の膜貫通ドメインを有すると考えられる。予測されるアシル結合部位および活性部位が、Jakoら(2001)、Plant Phys. 126:861-874によって、および上記の他の文献に記載されている。予測されるアシル結合部位および想定される活性部位が図7に下線によって示される。
コマユミAcDAGAT(EaDAGAT)の同一性、およびsn-3-アセチルグリセリド(AcTAG)を合成するEaDAGATの能力の確認が、EaDAGATを酵母細胞で発現させ、ならびに無傷の酵母細胞のインビボおよびトランスジェニック酵母の膜画分を用いたインビトロの両方で合成されたTAGを観測することによって得られた。酵母細胞におけるニシキギDAGAT(EaDAGAT)の発現は、対照(空のベクターで形質転換された酵母)と比較した場合、(実施例4に記載されるように)長鎖トリアシルグリセリド(LcTAG)の約5倍の増加した合成をもたらした。さらに、酵母細胞におけるEaDAGATの発現はまた、合成されたLcTAGの量の約0.26%に達するsn-3-アセチルグリセリド(AcTAG)の合成をもたらした。AcTAGの3つの分子種が、TLCにより単離された水素化AcTAG濃縮画分のGC分析によって同定された;これらの3つの化学種は、C16C16、C16C18およびC18C18である(分子種はsn-1位およびsn-2位における2つの脂肪アシル残基の長さによって同定される)。C16C18のAcTAG種は、水素化前のアセチル-パルミトレオイルオレオイルグリセロールに対応するアセチル-パルミトイルステロイルグリセロールとして質量分析法によって同定された。
酵母細胞におけるアラビドプシスDAGAT(AtDAGAT)の発現もまた、LcTAGの増加した合成(対照レベルの約20倍を超える)、ならびにAcTAGの合成(LcTAG量の約0.09%)をもたらした。従って、EaDAGATは、酵母細胞におけるインビボでAtDAGATと比較した場合、AcTAGを合成する増加した傾向を示す(合成された総TAGの割合として測定された場合に約3倍)。インビボでAcTAGを合成する増強された傾向は、インビボにおけるアセチル-CoAに対するEaDAGATの増加した基質特異性を明らかにしている。
インビトロアッセイ法から、オレオイル-CoAなどのアシル供与体の存在下でアッセイされた場合、AtDAGATおよびEaDAGATはほぼ等しい活性であるようであった。しかしながら、アセチル-CoAの存在下でアッセイされた場合には、AtDAGATは、EaDAGATよりもはるかに小さい活性であり、ほんの微量のAcTAGの合成をもたらし、これに対して、EaDAGATは多量のAcTAGの合成をもたらした。従って、EaDAGATは、AtDAGATが示すよりも少なくとも約20倍またはそれ以上のアセチルトランスフェラーゼ活性を示した。これらの結果から、EaDAGATでは、アセチル供与体と共に供給された場合に、AcTAGを合成するより大きい能力が明らかにされる。要約すると、これらのデータから、ニシキギ属の同定された遺伝子は、sn-3-アセチルグリセリドを合成する能力が高まったジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DAGAT)として機能するタンパク質をコードすることが明らかに確認される。
配列類似性だけでは、異なるDAGATアミノ酸配列の類似性ならびにインビボおよびインビトロにおけるそれらの異なる活性により測定されるように、タンパク質の機能および同一性を明らかにするためには不十分である。EaDAGATの同一性および活性の確認は、単離されたコード配列の発現およびコードされたタンパク質の活性の測定によって得られる。しかしながら、EaDAGATのアミノ酸配列は、以下にさらに記載されるように、他のAcDAGATを発見するために使用することができる。
II.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチド
本発明は、精製されたジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)ポリペプチドを含む組成物、ならびに(以下にさらに記載されるように)その相同体、変異体、断片、および融合タンパク質を含むAcDAGATの変種を含む組成物を提供する。
本発明のいくつかの態様において、ポリペプチドは、細胞における天然の遺伝子の発現から得られる精製産物であり、一方、他の態様では、化学合成法の産物であってもよく、そしてさらに別の態様では、原核生物宿主または真核生物宿主を使用する組換え技術によって、(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞によって培養で)産生させてもよい。いくつかの態様では、組換え産生法において用いられる宿主に依存して、本発明のポリペプチドはグリコシル化されてもよく、またはグリコシル化されなくてもよい。他の態様では、本発明のポリペプチドはまた、最初のメチオニンアミノ酸残基を含むことができる。
A.触媒された反応
AcDAGATは、特有のアシル基転移特異性を有するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼポリペプチドであって、その結果、このポリペプチドは、アセチル基または関連の基をジアシルグリセロール基質に転移することが可能であり、それによってこのジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼは、アセチルTAGが存在しないかまたはごく微量(言い換えれば、総TAGの約1%未満)しか存在しない植物から得られたジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼと比べて、アセチル基または関連の基に対する特異性の増加を示す。
従って、AcDAGATポリペプチドは、以下の反応によって例示されるように、アセチル基または関連の基のジアシルグリセロール(DAG)への転移を触媒する。
DAG+アセチル基→AcTAG
ここで、このアセチル基はアセチル基または関連の基であり、アセチルはジアシルグリセロール(DAG)に転移されてアセチルトリグリセロール(AcTAG)を形成する。典型的には、アセチル基または関連の基は、DAGのsn-3位置に転移されるが、DAGのsn-1およびsn-2位置のような他の位置もまた考えられる。この酵素はインサイチューでアセチルCoAのアセチル基上で働く可能性が最も高く、およびアセチル基をDAGのsn-3位置に転移する可能性が最も高い。しかし、この酵素は、種々の基質を種々の条件下で種々の程度の活性まで利用することが可能で、他の産物を同様に生成し得る。従って、他の基質としては、アセチル基を受容するためにsn-1またはsn-2位置が利用可能であるDAGを挙げることができる。転移される他の基としては、アセチルに関連する基、例えば、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイルおよびシンナモイルが挙げられる;典型的にはこれらの基は、このトランスフェラーゼの基質がプロピオニル-CoA、ブチリル-CoA、ベンゾイル-CoAまたはシンナモイル-CoAであるようにCo-Aにエステル化される。
AcDAGATの特異性は、インビボアッセイ法またはインビトロアッセイ法のいずれかで決定することができる。インビボアッセイ法では、この特異性は、AcTAGである総TAGの割合であり、ここでAcTAGは、異種ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの存在によって合成される。インビボアッセイ法では、この特異性は、この基質がアセチルCoAまたはCoAにエステル化された関連の基である場合、アセチル基または関連の基のジアシルグリセロールへの転移の活性である。AcDAGATについてのアセチル基または関連の基の転移の特異性の増加は、アセチルTAGが存在しないかまたはごく微量しか存在しない植物から得られたDAGATの特異性の少なくとも約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍もしくは約100倍、または最大約2000倍までに及ぶ。アセチル基または関連の基の転移の特異性を決定するために、AcDAGATを比較する1つの標準的なDAGATは、実施例4に記載されるように、シロイヌナズナ(AtDAGAT)から得られたDAGATである。
B.ニシキギ属ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチド
いくつかの態様において、ポリペプチドは、ニシキギ属のDAGATを含む;他の態様において、ポリペプチドは、コマユミのDAGATを含む。1つの態様において、このポリペプチドは、図5(配列番号:1)に示される配列によってコードされる;他の態様において、このポリペプチドは、図6に示されるアミノ酸配列を含む(配列番号:2)。
上記のように、AcDAGATによって触媒される反応下で、ニシキギ属由来のAcDAGATの特有の特徴は、それが長鎖アシル-CoAの代わりにアセチル-CoA(または関連基-CoA)を使用する能力である。これらの後者の基質はおそらく、アシルCoA結合タンパク質および膜に結合して、それ自体でミセルを形成するが、一方でアセチル-CoAは本当に水溶性である。従って、AcDAGATが水溶性アシルCoA(または関連基-CoA)基質を利用する能力は、重要な特徴である。
C.変種ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチド
他の態様において、本発明は、開示されたAcDAGATポリペプチドの単離された変種を提供する。これらの変種としては、AcDAGATの変異体、断片、融合タンパク質または機能的な等価物が含まれる。例示的な変種は以下にさらに記載される。
D.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチドのアッセイ法
ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)の活性は、多数の方法でアッセイすることができる。これらには、以下にさらに記載するようなインビボアッセイ法およびインビトロアッセイ法が含まれるがこれらに限定されない。
いくつかの態様において、トランスジェニック生物においてアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を発現すること、次いでこのトランスジェニック生物に存在するTAG画分の含量および組成物を解析することによってインビボで酵素活性を決定する。このようにこの活性を、本発明のコード配列を有する外因性の核酸配列(例えば配列番号:2のようにAcDAGATをコードする、または例えば配列番号:1のようにAcDAGATコード配列を含む)を含むトランスジェニック生物における内因性のTAGおよびアセチル化されたTAG(AcTAG)の存在または量の増加として測定する。このようなトランスジェニック生物は、以下に記載のように得られる。トランスジェニック生物におけるTAGおよびAcTAGの量は、非トランスジェニック生物に存在する量に匹敵する。TAGは典型的には、トランスジェニック生物試料から抽出される脂質から解析される。この試料をメタノール/クロロホルム(2:1、v/v)中でホモジナイズして、BlighおよびDyer(1959)Can. J. Biochem. Physiol. 37:911-917に記載のように、またはHaraおよびRadin(1978)Anal. Biochem. 90:420-426に記載のようにヘキサン:イソプロパノール中で、この脂質を抽出する。
他の態様では、トランスジェニックであってもよくトランスジェニックでなくてもよい生物(トランスジェニック生物は以下に記載される)から得られた組織試料に外因性基質を添加することによって、インビボで酵素活性を決定する。例えば、植物において、組織試料には、葉の試料(例えばディスク)、茎および根の試料、ならびに発生中および成熟した種子胚または胚乳組織が含まれるがこれらに限定されない。典型的には、組織試料は[14C]アセテート基質とともにインキュベートされて、これが組織脂質中に摂取されて取り込まれ得る。インキュベーションは一般に、0.1MカリウムMESのような緩衝液(pH5.5〜6.5)中で室温で、適切な時間行われる。次いで、試料を緩衝液中で洗浄し、この組織試料をメタノール/クロロホルム(2:1、v/v)中でホモジナイズして、BlighおよびDyer(1959)に記載されるように、またはHaraおよびRadin(1978)に記載のようにヘキサン:イソプロパノール中で、この脂質を抽出する。
さらに他の態様において、トランスジェニックであってもよくトランスジェニックでなくてもよい生物(トランスジェニック生物は以下に記載される)から得られた無細胞ホモジネートまたは細胞下画分中で、インビトロで酵素活性を決定する。ここで、この組織は、破壊および濾過するかまたは遠心分離して無細胞画分を得たものである。例えば、植物において、細胞下画分は、上記の組織の任意のタイプから得ることが可能であり、これには細胞全体およびミクロソーム膜、色素体、および色素体膜の画分、または他の単離されかつ精製されたオルガネラおよび膜、例えば、ミトコンドリアおよびペルオキシソームおよび原形質膜を含む。このような画分の調製は当技術分野において周知である。次いで、細胞下画分を、アセチル-CoAまたは関連基-CoA基質、例えば14C-アセチル-CoAとインキュベートして、これを組織脂質中に摂取させて取り込ませることができる。脂質合成のためのさらなる補因子が、必要に応じて、インキュベーションの間に存在してもよい。このような補因子としてはDAGが含まれるがこれらに限定されない。脂質合成を増強することのできる他の試薬をまた添加してもよい。このような試薬としては、リン脂質リポソーム(例えば、DAG含有)および脂質転移タンパク質が含まれる。この試料をインキュベートして上記のように脂質を抽出する。
さらに他の態様において、本発明のコード配列を有する核酸配列(例えば配列番号:2のようにAcDAGATをコードする、または例えば配列番号:1のようにAcDAGATコード配列を含む)が追加され、且つこのコードされた酵素が発現され、発現された酵素の活性が決定されるインビトロ核酸発現系から、酵素活性を決定する。このような発現系は当技術分野において周知であり、例えば、網状赤血球溶解物または小麦胚が含まれる。この酵素は、TAGおよび/または他のグリセロ脂質の存在によって、膜構造を生成するホスホグリセロ脂質によって、またはミセル構造を生じる脂質および界面活性剤の混合物によって安定化され得る。これらの構造は、混合物中に含まれてもよいし、酵素が作用し得る基質を含んでもよいし、この酵素によって生成された産物を含んでもよい。このようなミセル構造は、植物組織に由来するような供給源から得られることが好ましく、この植物は内因性ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を含まないが、DAGもしくはDAGを生成するために使用可能な他の脂質(グリセロ脂質など)を保有するか、またはDAGを取り込み得る。直接または定量的な測定には、ミセルまたは膜構造への標識脂質の取り込み、およびDAG基質の利用が制限されないことの保証が必要である。次いで、細胞下画分について上記されたように、新しく発現された酵素の活性を解析する。
AcDAGATの抽出された脂質産物を、当技術分野において周知の方法で解析する。例えば、抽出されたTAG産物を、順相のシリカTLC、逆相または硝酸銀TLC(例えば、順相のシリカTLCによって最初に分離された産物の解析のために用いられる)によって、高温GC(ある場合には、奇数鎖内部標準を用いる)、GC/MSによって、およびHPLCによって解析することができる。
E.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチドの精製
本発明のいくつかの態様において、生物から精製されたジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)ポリペプチドが提供される。このような生物としては、異種AcDAGAT遺伝子を含むトランスジェニック生物、およびAcDAGATが天然に存在する生物が含まれる。他の態様において、AcDAGATポリペプチドは、本発明のコード配列を有する核酸配列(例えば配列番号:2のようにAcDAGATをコードする、または例えば配列番号:1のようにAcDAGATコード配列を含む)を含むインビトロ核酸発現系から精製され、発現されたAcDAGATを精製することができる。本発明は、精製されたAcDAGATポリペプチドおよび変種を提供する。この変種にはそれらの相同体、変異体、断片および融合タンパク質(以下にさらに記載されるような)が含まれる。
本発明はまた、生物からまたはインビトロの核酸発現系から、植物のAcDAGATを回収および精製するための方法を提供する。例示的な生物としては、単細胞生物および多細胞生物が含まれる。生物から単離される場合、この細胞は典型的には、最初に破壊されて、次いで酵素精製の前に分画される。破壊方法および分画方法は周知である。
精製方法もまた周知であり、そしてこれには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:硫酸アンモニウム沈殿、エタノール沈殿、酸抽出、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー、ならびに等電点電気泳動。活性型または不活性型で精製されたAcDAGATは、分画の間に水性媒体中でその可溶性を維持するために界面活性剤の存在を必要とすると考えられる。この酵素活性のアッセイ法には、完全な活性を回復するために界面活性剤の除去およびリポソームとしての再構成が必要であるとさらに考えられる。このような方法は周知であり、例えば、HjelmelandおよびChrambach、Furthら、ならびにvan RenswoudeおよびKempf(1984)Methods in Enzymology 104, p.305、p.318およびp.329をそれぞれ参照のこと。
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドの発現のみまたは発現および精製の両方に対処するマーカー配列にフレーム内で融合した本発明のコード配列(例えば、配列番号:1)を有する核酸配列を提供する。マーカー配列の非制限的な例は、ベクター、例えば、細菌性宿主の場合にはAcDAGATのN末端にヘキサヒスチジン・タグを付加し、ポリペプチドの発現を生じるpQE-30ベクターによって、ならびに他の態様では、細菌性宿主の場合にはAcDAGATのC末端にヘキサヒスチジン・タグを付加し、マーカーに融合したポリペプチドの精製の簡便さが改善されるベクターPT-23Bによって供給されうるヘキサヒスチジン・タグであるか、または、例えば、そのマーカー配列は、哺乳類宿主を使用する場合に血球凝集素(HA)タグでありうる。HAタグは、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する(Wilsonら、(1984)Cell 37:767)。
F.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチドの化学合成
本発明のいくつかの態様では、AcDAGATタンパク質は、全AcDAGATアミノ酸配列またはその一部のいずれかを合成する化学的方法を使用して産生される。例えば、ペプチドは、固相技術によって合成され、樹脂から切り取られ、そして分取用高速液体クロマトグラフィーによって精製される(例えば、Creighton(1983)「Proteins Structures And Molecular Principles」、W H Freeman and Co, New York、NY参照)。本発明の他の態様では、合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定によって確認される(例えば、Creighton、上記を参照)。
直接ペプチド合成を、種々の固相技術(Robergeら(1995)Science 269:202-204)を使用して行うことができ、および自動合成を、例えば、製造業者によって提供される指示に従って、ABI431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を使用して達成してもよい。さらに、AcDAGATのアミノ酸配列またはその任意の部分を、直接合成の間に改変してもよく、および/または化学的方法を使用して他の配列と組合わて変種ポリペプチドを産生してもよい。
G.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ抗体の発生
本発明のいくつかの態様では、AcDAGATタンパク質の検出および特徴付けに対処する抗体を作製する。抗体は種々の免疫原を使用して作製されうる。1つの態様では、免疫原は、ニシキギ属AcDAGATを認識する抗体を生成するニシキギ属AcDAGATペプチド(例えば、配列番号:2に示されるようなアミノ酸配列またはその断片)である。このような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリーが含まれるが、それらに限定されることはない。
当技術分野において知られる種々の手段を、AcDAGATに対して誘導されたポリクローナル抗体の産生のために使用することができる。抗体の産生のために、種々の宿主動物(ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどが含まれるが、それらに限定されない)に、AcDAGATエピトープに対応するペプチドを注射することによって免疫化することができる。好ましい態様では、ペプチドを、免疫原性担体(例えば、ジフテリア・トキソイド、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホール・リンペット・ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin:KLH))と結合させる。種々のアジュバントを、宿主種に応じて免疫学的応答を増加させるために使用することができ、これには、フロイント(完全および不完全)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油状エマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum))のような潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれるが、それらに限定されることはない。
AcDAGATに対するモノクローナル抗体の作製のために、培養中の連続細胞系統による抗体分子の作製のために提供されるあらゆる技術は、本発明で利用法を見出すと考えられる(例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照)。これらは、当初、KohelerおよびMilstein(KohelerおよびMilstein(1975)Nature 256:495-497)によって開発されたハイブリドーマ技術、並びにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozborら(1983)Immunol. Tod. 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら(1985)、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss, Inc. 77-96)が含まれるが、それらに限定されることはない。
さらに、単鎖抗体の産生について記述された技術(米国特許第4,946,778号)により、AcDAGAT特異的単鎖抗体を産生する上での使用が見出されることが考えられる。本発明の別の態様は、AcDAGATについて所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ容易な識別を可能にするFab発現ライブラリーの構築について記述された技術(Huseら(1989)Science 246:1275-1281)を利用する。
抗体断片を産生するために適切なあらゆる技術により、抗体分子のイデオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片を生成する上での使用が見出されることが考えられる。例えば、このような断片には、抗体分子のペプシン消化により産生されうるF(ab')2断片;F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによて産生されるうるFab'断片;および抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって生成されうるFab断片が含まれるが、それらに限定されることはない。
抗体の産生では、所望の抗体をスクリーニングすることは、当技術分野において周知の技術、例えば、放射性免疫アッセイ法、ELISA(酸素結合免疫吸着アッセイ法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ法、免疫放射線検出法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、インサイチュー免疫アッセイ法(例えば、コロイド金、酵素またはラジオアイソトープ標識を使用して)、ウエスタン・ブロット、沈降反応、凝集アッセイ法(例えば、ゲル凝集アッセイ法、血球凝集アッセイ法など)、完全固定アッセイ法、免疫蛍光アッセイ法、プロテインAアッセイ法、および免疫電気泳動アッセイ法など)によって達成されると考えられる。
1つの態様では、抗体結合は、一次抗体上で標識を検出することによって検出される。別の態様では、一次抗体は、一次抗体に対する二次抗体または試薬の結合を検出することによって検出される。別の態様では、二次抗体を標識する。免疫アッセイ法における結合を検出する多くの方法が知られており、これらは本発明の範囲内にある。当技術分野において周知であるように、任意の免疫化プロトコールで使用される担体分子を含まない免疫原性ペプチドが提供されるべきである。例えば、ペプチドをKLHに結合させた場合、それは、スクリーニングアッセイ法においてBSAに結合されるかまたは直接使用されうる。
本発明のいくつかの態様では、前記の抗体は、AcDAGAT(例えば、ウエスタン・ブロッティングについて)の発現に関する当技術分野で知られる方法で使用され、そのレベルは、適切な生物学的試料などにおいて測定される。抗体は、植物から得られる生物学的試料でAcDAGATを検出するために使用されうる。生物学的試料は、組織の抽出物、または顕微鏡試験で固定された試料でありうる。
その後、適切な方法(例えば、ELISAまたは放射性免疫アッセイ法)および様式(例えば、マイクロウエル、ディップスティック(例えば、国際公開公報第93/03367号に記述されるとおり)などを使用して、生物学的試料をAcDAGATの存在について直接試験する。あるいは、試料中のタンパク質を、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下または非存在下で、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によってサイズ分離することができ、且つAcDAGATの存在は、免疫ブロッティング(ウエスタンブロッティング)によって検出することができる。免疫ブロッティング技術は、一般に、タンパク質のエピトープに対応するペプチドに対して生成される抗体でより効果的であり、したがって、特に本発明に適している。
III.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼコード配列
本発明は、上記または下記のジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼのいずれかをコードする精製核酸配列を含む組成物を提供する。コード配列としては、遺伝子、cDNA、およびRNAが含まれるが、これらに限定されることはない。
したがって、本発明は、AcDAGATをコードする精製核酸配列、並びに上記および下記のように、相同体、突然変異体もしくは断片、またはそれらの融合タンパク質を含む、AcDAGATの変種をコードする核酸配列を含む組成物を提供する。さらに別の態様では、核酸配列は、DAGATのある種の機能的特徴を保持するAcDAGATの一部をコードする。機能的特徴の例としては、DAGATを識別する抗体を産生する免疫原として作用する能力が含まれる。
AcDAGATのためのコード配列としては、天然にコード配列を含むか、またはトランスジェニックであるかのいずれかであり、これには異種AcDAGATコード配列、化学的に合成される配列、並びに(例えば、単離配列が突然変異誘発されるか、または配列が様々な源から単離されおよび/もしくは様々の源から合成される配列の部分を含むように)単離および合成の組合せを表す配列を含む生物から単離される配列が含まれる。
したがって、本発明のいくつかの態様では、当技術分野において周知の化学的方法(例えば、Caruthersら(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 7:215-233;CreaおよびHorn(1980)Nucl. Acids Res. 9:2331;MatteucciおよびCaruthers(1980)Tetrahedron Lett. 21:719;およびChowおよびKempe(1981)Nucl. Acids Res. 9:2807-2817を参照)を使用して、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)のコード配列を全体的にまたは部分的に合成する。
A.ニシキギ属のジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼのコード配列
いくつかの態様では、配列は、ニシシギ属のジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)をコードし;他の態様では、配列は、コマユミAcDAGATをコードする。いくつかの態様では、配列は、図5で示される配列(配列番号:1)を含む;他の態様では、配列は、図6に示されるアミノ酸配列(配列番号:2)をコードする。
B.変種ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼのコード配列
他の態様では、配列は、開示されたジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)ポリペプチドの変種をコードする;これらの変種には、AcDAGATの突然変異体、断片、融合タンパク質または機能的な等価物が含まれる。変種をコードする例示的な配列は、さらに以下に記述される。
C.別のジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼのコード配列および遺伝子
本発明は、上記のものに加えて、AcDAGATをコードする単離核酸配列を提供する。例えば、本発明のいくつかの態様は、ハイブリダイズする能力のあるポリヌクレオチド配列が、上記のようにAcDAGATの所望の生物活性を維持するタンパク質をコードする限り、低度から高度のストリンジェンシー条件下で配列番号:1にハイブリダイズする能力がある単離ポリヌクレオチド配列を提供する。好ましい態様では、ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、且つ上に説明されるように定義された「ストリンジェンシー」を付与する(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Wahlら(1987)Meth. Enzymol. 152:399-407を参照のこと)。
他の態様では、ニシシギ属のDAGATと相同であるAcDAGATをコードする単離核酸配列を提供する;いくつかの態様では、配列は、ニシシギ科(Celastraceae)、アケビ科(Lardizabalaceae)、バラ科(Rosaceae)、およびキンポウゲ科(Ranunculaceae)からの植物から得られる。
本発明の他の態様では、AcDAGATの対立遺伝子を提供する。好ましい態様では、対立遺伝子は、突然変異体(即ち、核酸配列における変化)から生じ、一般に、構造または機能が改変されていてもいなくてもよい改変mRNAまたはポリペプチドを産生する。任意の所与の遺伝子は、1つまたは複数の対立遺伝子形態を有してもよく、または有さなくてもよい。対立遺伝子を引起す共通の突然変異的変化は、一般に、核酸の欠失、付加および置換によるものである。これらの型の各々の変化は、単独または他のものとの組合わせて、および所定の配列で1回またはそれ以上の比率で起こりうる。
これらの追加のAcDAGAT遺伝子は、下記のような方法によって発見される。
IV.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼコード配列および遺伝子を識別する方法
本発明の他の態様は、AcDAGATをコードする核酸配列を単離する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、AcTAGが存在する植物組織を提供する段階を含む。この段階は、植物組織、好ましくは種子組織でのAcTAGの存在が、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を有するDAGAT、またはAcDAGATの存在を示すという仮説に基づいている。AcTAGが組織中に全TAGの約1%より多く存在する場合に、AcTAGは組織中に存在する;好ましい態様では、AcTAGは、組織中で全TAGの約5%より多く存在するか、または組織中で全TAGの約10%より多く存在する。
いくつかの態様では、方法は、縮重プライマー(例示的なプライマーは実施例で列挙される;または、縮重プライマーを決定する方法も実施例で提供される)を用いたRT-PCRを使用することによってDAGATのcDNAを得て、部分的長さのクローンを得る工程、および続いて、3'および5'cDNA末端を定義するために3'および5'RACEを使用する工程を含む。その後、全長cDNAクローンを、3'および5'RACE産物の配列に基づいたプライマーを使用するRT-PCRを介して得る;このクローンを、AcDAGATとしてコードされたポリペプチドの同定を確認するために使用する。コードされたポリペプチドの同定の確認には、推定AcDAGAT(例えば、全長cDNAクローン)をコードする配列のポリペプチドを発現する工程を含み、および推定AcDAGATコード配列のポリペプチドを特徴づける工程を含む。特徴付けには、抗体結合(例えば、抗体は、ニシシギ属のAcDAGATに結合することによるように、AcDAGATに特異的である)によって、または上記の任意のAcDAGATアッセイ法でのように、発現ポリペプチドの反応産物を検出することによって、発現ポリペプチドの存在を検出することが含まれるが、これらに限定されることはない。別の態様では、AcTAGはcDNAが作製される組織中に存在する。このRT-PCR法を使用することで、上記および例示的な実施例で記述されるように、ニシキギ属AcDAGATが発見された。単離された新規のコード配列は、例示的な実施例で記述されるように、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードすることが見出された。したがって、ニシキギ属AcDAGATをコードするヌクレオチド配列、およびニシキギ属の推定アミノ酸配列は、図5および図6に示される(それぞれ、配列番号:1および2)。
いくつかの他の態様では、方法は、組織由来のcDNAライブラリーの作製を含む;別の態様では、AcTAGはcDNAライブラリーが作製される組織に存在する。いくつかの好ましい態様では、AcTAGは、比較的高いレベルで、組織中の全TAGの約25%より多く、または組織中の全TAGの約50%より多く存在する。cDNAライブラリーは、DAGATプローブまたはAcDAGATプローブ(例えば、配列番号:1から得られる)とハイブリダイゼーションすることによってスクリーニングされうる。DAGATまたはAcDAGATをコードするように思われるcDNAクローンを同定する;他の態様では、DAGATまたはAcDAGATの一部をコードするように思われ且つ完全コード配列を作製するために組立て可能または利用可能なcDNAクローンを同定する。さらなる態様としては、上記のようにAcDAGATとしてコード配列の確認を含む。
さらに別の態様では、方法は、新規の強力なDAGATコード配列を発見するために、第一に、植物発現配列タグ(EST)データベースの試験を含む。好ましくは、ESTデータベースの植物源は、種子組織のような、AcTAGが存在する組織を含む。いくつかの態様では、植物ESTデータベースの試験は、ニシキギ属AcDAGATタンパク質と相同なアミノ酸配列をコードするESTを発見するために、ニシキギ属AcDAGAT(例えば、配列番号:2)のアミノ酸配列でデータベースをブラスティングすることを含む。いくつかの別の態様では、方法は、次に完全推定AcDAGATをコードするクローンを組み立てる工程、および上記のように発見されたような配列の発現産物を特徴づける工程を含む。いくつかの態様では、これらの方法は、次に、候補配列のように配列決定し、そして上記のように発見されたような配列の発現産物を特徴づけることを含む。いくつかの態様では、本発明の方法によって発見されたAcDAGATコード配列は、他の植物遺伝子を同定および単離するためにも使用されうる。遺伝子を単離するために、32P-放射性標識AcDAGATコード配列(またはcDNA)は、DNAとDNAのハイブリダイゼーションによって、植物ゲノムDNAから構築されたゲノムライブラリーをスクリーニングにするために使用される。別の態様では、AcTAGはcDNAが作製される組織中に存在する。ハイブリダイゼーションについて陽性を試験する単一の単離クローンは、AcDAGAT遺伝子の一部または全部を含むことが提案され、配列決定される。陽性クローン化植物ゲノムDNAの配列は、AcDAGATとして遺伝子の同定を確認するために使用される。特定のクローンは、遺伝子の一部のみをコードする場合、AcDAGATコード配列(またはcDNA)に対するハイブリダイゼーションについて陽性を試験する別のクローンを単離し、配列決定する。cDNAに対する推定AcDAGAT遺伝子の全長配列の比較は、イントロンが存在する場合には、イントロンの位置を決定するために使用される。本発明の他の態様では、AcDAGATをコードする遺伝子のプロモーターおよび調節要素などの上流配列は、当技術分野において周知の種々の方法でAcDAGAT(例えば、配列番号:1)をコードするヌクレオチド配列を利用することによって遺伝子を拡張することにより検出される。いくつかの態様では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、本発明での使用が見出されることが考えられる。これは、公知の遺伝子座に隣接する未知の配列を回収するために、普遍のプライマーを使用する直接法である(Gobindaら(1993)PCR Methods Applic. 2:318-322)。第一に、ゲノムDNAを、リンカー配列に対するプライマーおよび公知の領域に特異的なプライマーの存在下で増幅させる。その後、増幅配列を、同じリンカープライマーおよび第一のものに内在の別の特異的プライマーを用いた第二回のPCRにかける。各回のPCRの産物を、適切なRNAポリメラーゼで転写し、逆転写酵素を使用して配列決定する。
別の態様では、逆PCRは、公知の領域に基づいた分岐プライマーを使用して、配列を増幅または拡張するために使用される(Trigliaら(1988)Nucleic Acids Res. 16:8186)。プライマーは、オリゴ4.0(Oligo 4.0)(ナショナル・バイオサイエンシス・インク.(National Biosciences Inc.)、ミネソタ州プリマウス(Plymouth Minn.))または別の適切なプログラムを使用して、例えば、50%またはそれ以上のGC含量を有する長さ22個〜30個のヌクレオチドであり、温度約68℃〜約72℃で標的配列をアニーリングするように設計されうる。方法は、遺伝子の公知領域中の適切な断片を生成する数種の制限酵素を使用する。その後、その断片は、分子内ライゲーションにより環化され、PCR鋳型として使用される。本発明のさらに別の態様では、捕捉PCR(Lagerstromら(1991)PCR Methods Applic. 1:111-119)を使用する。これは、ヒトおよび酵母人工染色体(YAC)DNA中の公知配列に隣接するDNA断片のPCR増幅のための方法である。捕捉PCRは、PCR前に、遺伝子操作された二本鎖配列を、DNA分子の未知部分に入れるために多重制限酵素消化およびライゲーションも要求する。さらに他の態様では、ウォーキングPCRを利用する。ウォーキングPCRは、未知配列の回収を可能にする標的遺伝子ウォーキングのための方法である(Parkerら(1991)Nucleic Acids Res. 19:3055-60)。プロモーターファインダー(PROMOTERFINDER)キット(クローンテック(Clontech)は、PCR、ネスティドプライマーおよび「ウォーク・イン(walk in)」ゲノムDNAに対する特定のライブラリーを使用する。この方法は、ライブラリーをスクリーニングする必要を避け、そしてイントロン/エキソン接点を見出すのに有用である。本発明のさらに別の態様では、add TAIL PCRは、調節領域を含む隣接ゲノム領域を得る好ましい方法として使用する(LuiおよびWhittier(1995);Luiら(1995))。
全長cDNAをスクリーニングするための好ましいライブラリーには、大型cDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリーが含まれる。さらに、ランダムプライムライブラリーは、5'および上流遺伝子領域を含む、より多くの配列を含むために好ましい。ランダムプライムライブラリーは、オリゴd(T)ライブラリーが全長cDNAを生じない場合に特に有用でありうる。ゲノムライブラリーは、イントロンを得ること、および5'配列を伸長するために有用である。
上記の方法が、他のAcDAGATコード配列、およびAcTAGを保有することが知られている植物から得られる遺伝子を見出すために使用されることが予想される。例示的な植物としては、ニシシギ科(Celastraceae)、アケビ科(Lardizabalaceae)、バラ科(Rosaceae)、およびキンポウゲ科(Ranunculaceae)から得られる植物が含まれる。
V.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの変種
いくつかの態様では、本発明は、AcDAGATをコードする開示された核酸配列の単離された変種、およびそれによりコードされるポリペプチドを提供する;これらの変種としては、AcDAGATの突然変異体、断片、融合タンパク質、または機能的な等価物が含まれる。したがって、様々な理由で、AcDAGATコード配列を改変するために、本発明のヌクレオチド配列を遺伝子操作される。理由としては、遺伝子産物のクローニング、プロセシングおよび/または発現を修飾する改変(このような改変には、新たな制限酵素部位を挿入すること、グリコシル化パターンを変えること、およびコドン優位性を変えることが含まれる)、並びに酵素的活性(このような変化には、それに限定されないが、基質親和性を区別すること、基質優位性および利用を区別すること、阻害剤親和性または効力を区別すること、反応速度論を区別すること、細胞下局在を変動させること、ならびにタンパク質プロセシングおよび/または安定性を変動させることが含まれる)を変動させることが含まれるが、これらに限定されることはない。例えば、好ましい基質を変化させるように基質特異性を改変する変異を導入する。
他の態様では、本発明は、コードされたアセチルトランスフェラーゼが、配列番号:2のアミノ酸配列を含むタンパク質と、不飽和脂肪酸基質に結合することについて競合する、AcDAGATをコードする単離核酸配列を提供する。
A.植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの変異体と相同体
本発明のいくつかの態様は、AcDAGAT(即ち、ムテイン)の突然変異形態を提供する。好ましい態様では、変種は、突然変異体(即ち、核酸配列での変化)から生じ、一般に構造または機能が改変されていてもいなくてもよい改変mRNAまたはポリペプチドを産生する。任意の所与の遺伝子は、1つまたは複数の突然変異形態を有しても、有していなくてもよい。変種を引起す共通の変異的変化は、一般に核酸の欠失、付加または置換によるものである。これらの型の各々の変化は、単独または他のものと組合わせて、および1つまたはそれ以上の回数の比率で、所定の配列に生じうる。
本発明のさらに他の態様は、AcDAGAT相同体をコードする単離核酸配列、およびそれによりコードされるポリペプチドを提供する。
合成活性を増加させるかもしくは基質に対するAcDAGATの親和性を変化させるような目的のため、またはポリペプチドの代謝回転または細胞下の配置の安定性を増加させる目的のために、活性(例えば、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性)を有するペプチドの構造を修飾することが可能であることが予想される。このような修飾ペプチドは、本明細書に定義されるようにAcDAGATの活性を有するペプチドの機能的等価物と見なされる。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、置換、欠失または付加によるように改変された修飾ペプチドを産生しうる。
本発明のいくつかの好ましい態様では、改変は、合成活性を増加させるか、または、特定のアセチル-もしくは関連基-CoAまたはアセチルもしくは関連基アクセプター基質についてのAcDAGATの親和性を改変する。特に好ましい態様では、これらの修飾は、修飾酵素の合成活性を著しく減少することはない。言い換えれば、構築物「X」を、それが構造的にというよりむしろ、機能的に定義されたとおり、本発明の修飾または変種AcDAGATの属のメンバーであるかどうかを決定するために評価することができる。好ましい態様では、変種AcDAGATの活性は、実施例で記述される方法によって評価される。したがって、いくつかの態様では、本発明は、配列番号:1のコード領域と相補的であるAcDAGATをコードする核酸を提供する。他の態様では、本発明は、配列番号:1によってコードされたタンパク質と、ジアシルグリセロールまたはアセチル基質の結合について競合するAcDAGATをコードする核酸を提供する。
改変の他の好ましい態様では、改変は、対応の野生型タンパク質のものと劇的に異なる細胞内半減期を生じる。例えば、改変タンパク質を、タンパク質分解、またはAcDAGATの破壊を生じるか、もしくはそうでなければ不活性化する他の細胞のプロセスに対して、より安定であるかまたはより安定性が低いかのいずれかにさせる。このような相同体およびそれらをコードする遺伝子は、タンパク質の半減期を調節することによって、AcDAGATの活性を改変するために利用されうる。例えば、短い半減期は、より一過性のAcDAGAT生物学的効果を引起しうる。他の変種は、野生型AcDAGATに類似であるか、または野生型AcDAGATと1つもしくは複数の箇所で異なるかのいずれかである特徴を有する。
上記のように、AcDAGATの突然変異形態が、本明細書により詳細に規定されるペプチドおよびDNA分子のものに等価であることも予想される。例えば、ロイシンをイソロイシンもしくはバリンに、アスパラギン酸塩をグルタミン酸塩に、トレオニンをセリンに単離置換すること、またはアミノ酸を構造的に関連したアミノ酸に類似置換すること(言い換えると、保存的突然変異)は、生じる分子の生物活性に主要な影響を示さないことが予想される。したがって、いくつかの本発明の態様は、保存的置換を含む本明細書に開示されるAcDAGATの変種を提供する。保存的置換は、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、4つのファミリーに分割されうる:(1)酸性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩);(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);および(4)非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、しばしば芳香族アミノ酸として一緒に分類される。類似の形態で、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩);(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン);(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン)、そしてセリンおよびトレオニンは、場合によっては、脂肪族-ヒドロキシルとして別個にグループ分けされる;(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミド(アスパラギン、グルタミン);および(6)硫黄含有(システインおよびメチオニン)としてグループ分けされうる(例えば、Stryerら(1981)Biochemistry, p.17-21、第2版、W H Freeman and Co.)。ペプチドのアミノ酸配列における変化が、機能的相同性を生じるかどうかは、野生型タンパク質に類似の形態で機能する変種ペプチドの能力を評価することによって容易に決定されうる。1つより多くの置換を有するペプチドは、同じ方法で容易に試験されうる。
さらにまれに、変種としては、「非保存的」変化(例えば、グリシンをトリプトファンに置換すること)が含まれる。類似のわずかな変動には、アミノ酸欠失もしくは挿入、またはその両方もまた含まれうる。どのアミノ酸残基が、生物活性を損なうことなく、置換、挿入、または欠失されうるかを決定する指針は、コンピュータプログラム(例えば、LASERGENEソフトウエア、DNASTAR Inc.、ウイスコンシン州マディソン)を使用して見出すことができる。
AcDAGATの突然変異体は、当技術分野において周知の任意の適切な方法によって生成することができ、そしてそれには、部位特異的突然変異誘発、ランダム化「点」突然変異誘発、およびニシキギ属DAGATcDNAの部分が他の植物または細菌のDAGATコードcDNAの類似部分と「交換(swap)」されるドメインスワップ突然変異誘発(domain-swap-mutagenesis)(BackおよびChappell(1996)PNAS 93:6841-6845)が含まれるが、これらに限定されることはない。
変種は、方向性を持つ進化(directed evolution)または変種のコンビナトリアルライブラリーを産生する他の技術のような方法によって産生されてもよい。したがって、本発明は、さらに、本発明のAcDAGATタンパク質のコンビナトリアル突然変異体、および切断突然変異体のセットを生成する方法を意図し、ならびに本発明のAcDAGATの生物活性を有する(例えば、アセチルまたは関連基を、ジアシルグリセロールに移動させる)強力な変種配列(即ち、相同体)を同定するために特に有用である。さらに、このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることは、例えば、新規基質特異性または他の生物活性を全て一緒に有する新規AcDAGAT相同体を生成するために使用される。基質特異性の例は、上記される。
AcDAGAT核酸(例えば、配列番号:1、ならびにその断片および変種)が、方向性を持つ進化のために出発核酸として利用されうることが予想される。これらの技術は、合成活性の増加、または特定のアシル-CoAもしくはアシルアクセプター基質についての親和性の改変のような所望の特性を有するAcDAGAT変種を開発するために利用されうる。
いくつかの態様では、人工的発生は、ランダム突然変異誘発によって(例えば、誤りがちなPCR(error-prone PCR)を利用して、ランダム突然変異を所定のコード配列に導入することによって)行われる。この方法は、突然変異の頻度が細かに調節されることが要求される。原則として、有益な突然変異はまれである一方、破壊的突然変異は一般的である。これは、破壊的突然変異と有益な突然変異との組合せが、しばしば不活性の酵素を生じるためである。標的遺伝子についての塩基置換の実数は、通常、1.5〜5の間である(MooreおよびArnold(1996)Nat. Biotech. 14:458-67;Leungら(1989)Technique 1:11-15;EckertおよびKunkel(1991)PCR Methods Appl. 1:17-24;CaldwellおよびJoyce(1992)PCR Methods Appl. 2:28-33;ならびにZhaoおよびArnold(1997)Nuc. Acids. Res. 25:1307-08)。突然変異誘発の後、生じたクローンを、望ましい活性について選択する(例えば、後に記述されるように、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性についてスクリーニングする)。連続するサイクルの突然変異誘発および選択は、所望の特性を有する酵素を開発するためにしばしば必要である。有用な突然変異のみが、次回の突然変異誘発に継続されることに注意されたい。
本発明の他の態様では、本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子シャッフリングまたはセクシャルPCR手段(例えば、Smith(1994)Nature 370:324-25;米国特許第5,837,458号;第5,830,721号;第5,811,238号;第5,733,731号)で使用される。遺伝子シャッフリングは、いくつかの突然変異体DNAの無作為な断片化、続いてPCRにより全長分子に再構築することを含む。種々の遺伝子シャッフリング手段の例としては、それらに限定されないが、DNアーゼ処理に続くアセンブリ、付着伸長プロセス(staggered extension process:STEP)、およびランダムプライムインビトロ組換えが含まれる。DNアーゼを介する方法では、陽性突然変異体のプールから単離されるDNAセグメントを、DNaseIで無作為の断片に切断し、プライマーを加えることなく複数サイクルのPCRにかける。無作為な断片の長さは、PCRサイクルが進行するときに、未切断セグメントに近づき、その結果混合され、生じる配列のいくつかで蓄積する様々のクローンに存在する突然変異を生じる。複数サイクルの選択およびシャッフリングは、いくつかの酵素の機能的増強に至った(Stemmer(1994)Nature 370:398-91;Stemmer(1994)Proc. Natl. Acid. Sci. USA 91:10747-10751;Crameriら(1996)Nat. Biotech. 14:315-319;Zhangら(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4504-09;およびCrameriら(1997)Nat. Biotech. 15:436-38)。方向性を持つ進化により産生される変種を、後に記述される方法によりDAGAT活性についてスクリーニングすることができる(例えば、実施例2を参照)。
本発明のコンビナトリアル突然変異誘発方法のいくつかの態様では、AcDAGATコード配列の集団のアミノ酸配列を、好ましくは可能な最高の相同性となるように配列する。変種のこのような集団としては、例えば、1種またはそれより多くの種から得られるAcDAGAT相同体、または同じ種から得られるが突然変異により異なるAcDAGAT相同体を含むことができる。配列される配列の各位置で現れるアミノ酸は、コンビナトリアル配列の縮重セットを作製するために選択される。
本発明の好ましい態様では、コンビナトリアルAcDAGATライブラリーは、各々、候補AcDAGATタンパク質配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーを介して産生される。例えば、縮重セットの候補AcDAGAT配列が、個々のポリペプチドとしてまたは代替的に、AcDAGAT配列セットを含む一セットの大型融合タンパク質(例えば、ファージディスプレイのための)として発現可能であるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を、遺伝子配列に酵素的にライゲートさせる。
強力なAcDAGAT相同体のライブラリーが、縮重オリゴヌクレオチド配列から生成されうる多くの方法がある。いくつかの態様では、縮重遺伝子配列の化学的合成は、自動化DNA合成機で行われ、および合成遺伝子を発現のために適切な遺伝子に連結させる。縮重セットの遺伝子の目的は、1つの混合物中で、所望のセットの強力なAcDAGAT配列をコードする配列の全てを提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野において周知である(例えば、Narang(1983)Tetrahedron Lett. 39:3-9;Itakuraら(1981)Recombinant DNA、Walton(編)において、「Proceedings of the 3rd Cleveland Symposium on Macromolecules」、Elsevier、アムステルダム、p.273-289;Itakuraら(1984)Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;Ikeら(1983)Nucl. Acid Res. 11:477)。このような技術は、他のタンパク質の方向性を持つ進化で使用されてきた(例えば、Scottら(1980)Science 249:386-390;Robertsら(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:2429-2433;Devlinら(1990)Science 249:404-406;Cwirlaら(1990)Proc. Natl. Sci. USA 87:6378-6382;並びに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、および第5,096,815号を参照)。
B.植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの切断突然変異体
さらに、本発明は、AcDAGATの断片をコードする単離核酸配列(言い換えると、切断突然変異体)、およびこのような核酸配列によってコードされるポリペプチドを提供する。好ましい態様では、AcDAGAT断片は、生物学的に活性である。
本発明のいくつかの態様では、AcDAGATタンパク質の一部の発現が望ましい場合、発現されるべき所望の配列を含むオリゴヌクレオチド断片に開始コドン(ATG)を加えることが必要である可能性がある。N末端位置でのメチオニンが、酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)の使用により酵素的に切断されうることは、当技術分野において周知である。MAPは、大腸菌(E.coli)からクローニングされ(Ben-Bassatら(1987)J. Bacteriol. 169:751-757)、ならびにサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)およびそのインビトロ活性が、組換えタンパク質で証明された(Millerら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:2718-1722)。したがって、望ましい場合、N末端メチオニンの排除は、MAPを産生する宿主(例えば、大腸菌、CM89、またはS.セレビシエ(S.cerevisiae))中でこのような組換えポリペプチドを発現することによってインビボで、または精製MAPを使用することによってインビトロでのいずれかで、達成されうる。
C.植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼを含む融合タンパク質
本発明は、AcDAGATの全てまたは部分を組込む融合タンパク質をコードする核酸配列、およびこのような核酸配列によってコードされるポリペプチドも提供する。いくつかの態様では、融合タンパク質は、融合相手とのAcDAGAT機能性ドメインを有する。したがって、本発明のいくつかの態様では、ポリペプチドについてのコード配列(例えば、AcDAGAT機能性ドメイン)を、様々のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む融合遺伝子の一部として組込む。1つの態様では、単一融合産物ポリペプチドは、アセチル基をジアシルグリセロールに移動させる(1つの融合相手はAcTAGを合成する能力を保有する)。
本発明のいくつかの態様では、キメラ構築物が、AcDAGATの一部と、別の遺伝子の一部とを含む融合タンパク質をコードする。いくつかの態様では、融合タンパク質は、野生型AcDAGATに類似の生物活性を有する(例えば、AcDAGATの少なくとも1つの所望の生物活性を有する)。他の態様では、融合タンパク質は生物活性を変更された。
本発明の他の態様では、キメラ構築物が、AcDAGAT遺伝子またはその部分、および標的細胞下位置にタンパク質を方向付けるリーダー配列または他のシグナル配列を含む融合タンパク質をコードする。このような配列は、当技術分野において周知であり、葉緑体、ミトコンドリア、小胞体、液胞膜、ゴルジ網、および原形質膜のような位置にタンパク質を方向付ける。
生物活性を変更するために融合タンパク質を利用することに加えて、融合タンパク質は、本発明のAcDAGATタンパク質のようなタンパク質の発現および/または精製を促進することもできることが広く理解される。したがって、本発明のいくつかの態様では、AcDAGATは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(即ち、GST融合タンパク質)として発生される。このようなGST融合タンパク質が、グルタチオン誘導マトリックスの使用によるようなAcDAGATの容易な精製を可能にすることが予想される(例えば、Ausabelら(編)(1991)「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、NYを参照)。
本発明の別の態様では、AcDAGATの所望の部分のN末端で、ポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属レシンを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、発現AcDAGAT融合タンパク質の精製を可能にする。本発明のさらに別の態様では、その後、精製リーダー配列は、エンテロキナーゼを用いた処理によってその後除去される(例えば、Hochuliら(1987)J. Chromatogr. 411:177;およびJanknechtら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972を参照)。本発明のさらに他の態様では、N(アミノ)またはC(カルボキシ)末端のいずれかに付随した精製配列をコードする融合遺伝子は、親和性精製を可能にさせる;1つの例は、AcDAGATのカルボキシル末端に対するヘキサヒスチジン・タグの付加であり、それは、親和性精製のために有用であることが予想される。
融合遺伝子を作製する技術は、周知である。基本的には、様々のポリペプチド配列をコードする種々の核酸断片の結合は、ライゲーションのために平滑末端または粘着末端、適切な末端を供給するための制限酵素消化、適切な場合には、粘着末端の充填、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを使用して、従来の技術にしたがって行われる。本発明の別の態様では、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む従来の技術によって合成されうる。あるいは、本発明の他の態様では、遺伝子断片のPCR増幅は、その後アニーリングされて、キメラ遺伝子配列を生成可能な2つの連続する遺伝子断片の間の相補的オーバーハングを引起すアンカープライマーを使用して行われる(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」、上記を参照)。本発明のさらに他の態様では、AcDAGATのエピトープタグを作製する。エピトープタグは、そのエピトープがDAGATと同じ遺伝子ファミリーにあるヒトACATをタグ付けしたLinらによって記述されるとおりに作製される。エピトープタグは、ポリペプチドに沿った12ウェル分布部位において内部で単一HAタグであり、C末端ヒスタグであり、かつタンパク質は、これらのタグと全体または部分的活性を保有している。
D.遺伝子産物のスクリーニング
点突然変異によってなされるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、およびある特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーをスクリーニングするための広範囲の技術が、当技術分野において知られている。このような技術は、一般に、AcDAGAT相同体のコンビナトリアル突然変異誘発によって生成される遺伝子ライブラリーの高速スクリーニングに適合性がある。大型遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための最も広範に使用される技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを、複製可能な発現ベクターにクローニングすること、適切な細胞を得られたベクターライブラリーで形質転換させること、ならびに所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的に容易な単離を促進する条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させることを含む。下記の例示的なアッセイ法の各々は、コンビナトリアル突然変異誘発技術によって作製される多量の縮重配列をスクリーニングするために必要であるようなハイスループットな分析に適用可能である。
したがって、本発明の1つの態様では、候補AcDAGAT遺伝子産物は、細胞またはウイルス粒子の表面で表示され、そしてAcTAGを合成する特定の細胞またはウイルス粒子の能力を、実施例で記述される技術を使用して分析する。本発明の他の態様では、遺伝子ライブラリーは、細菌細胞の表面膜タンパク質の遺伝子にクローニングされ、得られた融合タンパク質を、パンニング(panning)によって検出する(国際公開公報第88/06630号;Fuchsら(1991)Bio Technol. 9:1370-1371;およびGowardら(1992)TIBS 18:136-140)。本発明の他の態様では、AcDAGATを結合する蛍光で標識された分子を、潜在的に機能性のAcDAGAT相同体について等級分けするために使用することができる。細胞を、目視で検査し、蛍光顕微鏡下で分離するか、または細胞の形態学が許すのであれば、蛍光活性化細胞選別機によって分離する。
本発明の代替的態様では、遺伝子ライブラリーは、ウイルス粒子の表面上で融合タンパク質として発現される。例えば、外来ペプチド配列は、フィラメント性ファージ系における感染性ファージの表面で発現され、それにより、2つの際立った恩典を供する。第一に、これらのファージは、非常に高い濃度で、アフィニティーマトリックスに適用できるので、多数のファージを一度にスクリーニングできる。第二に、各感染性ファージは、その表面にコンビナトリアル遺伝子産物を提示するので、特定のファージが、低収量でアフィニティーマトリックスから回収される場合、ファージは別の回の感染により増幅されうる。ファージgIIIまたはgVIII被覆タンパク質のいずれかが、ウイルス粒子の最終的なパッケージングを中断することなく、融合タンパク質を生成するために使用可能なように、ほどんど同一の大腸菌フィラメント性ファージM13の群、fdおよびflは、ファージ提示ライブラリーで最もしばしば使用される(例えば、国際公開公報第90/02909号;第92/09690号;Marksら(1992)J. Bio. Chem. 267:16007-16010;Griffthsら(1993)EMBO J. 12:725-734;Clacksonら(1991)Nature 352:624-628;およびBarbasら(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. 89:4457-4461を参照)。
本発明の別の態様では、組換えファージ抗体系(例えば、RPAS、ファルマシア・カタログ番号27-9400-01号)を、AcDAGATコンビナトリアルライブラリーの発現およびスクリーニングで使用するために修飾する。RPASキットのpCANTAB5ファージミドは、ファージgIII被覆タンパク質をコードする遺伝子を含む。本発明のいくつかの態様では、AcDAGATコンビナトリアル遺伝子ライブラリーは、それがgIII融合タンパク質として発現されるようにgIIIシグナル配列に隣接するファージミドにクローニングされる。本発明の他の態様では、ファージミドは、ライゲーション後に、コンピテント・大腸菌TG1細胞を形質転換させるために使用される。本発明のさらに他の態様では、形質転換細胞を、継続して、M13K07ヘルパーファージに感染させて、ファージミドとその候補AcDAGAT遺伝子挿入物を救出する。得られた組換えファージは、特異的候補AcDAGATタンパク質をコードするファージミドDNAを含み、そして対応の融合被覆タンパク質の1つまたは複数のコピーを提示する。本発明のいくつかの態様では、例えば、ヒドロペルオキシドを代謝する能力のあるファージ提示候補タンパク質を、パンニングによって選択または豊富にさせる。その後、結合ファージを単離し、組換えファージが野生型gIII被覆タンパク質の少なくとも1つのコピーを発現する場合、それらは、大腸菌を感染する能力を保持すると考えられる。したがって、継続回の大腸菌の再感染およびパンニングは、AcDAGAT相同体を著しく豊富にし、そしてその後、それは、アゴニストおよびアンタゴニストを区別するために、さらなる生物活性についてスクリーニングされうる。
本開示の点で、一般に利用可能な他の形態の突然変異誘発は、保存的残基と非保存残基に基づく前述の限定的突然変異誘発に加えて、当業者に明らかであると思われる。例えば、AcDAGAT相同体は、例えば、リンカースキャニング突然変異誘発(linker scanning mutagenesis)(Gustinら(1993)Virol. 193:653-660;Brownら(1992)Mol. Cell. Biol. 12:2644-2652;McKnightら、Science 232:316)により、または飽和突然変異誘発(saturation mutagenesis)(Meyersら(1986)Science 232:613)により、アラニン走査突然変異誘発など(Rufら(1994)Biochem. 33:1565-1572;Wangら(1994)J. Biol. Chem. 269:3095-3099;Balunt(1993)Gene 137:109-118;Grodbergら(1993)Eur. J. Biochem. 218:597-601;Nagashimaら(1993)J. Biol. Chem. 268:2888-2892;Lowmanら(1991)Biochem. 30:10832-10838;およびCunninghamら(1989)Science 244:1081-1085)を使用して、生成およびスクリーニングされうる。
VI.クローン化ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの発現
本発明の他の態様では、上記されるとおりのAcDAGAT遺伝子、相同体および突然変異体に対応する核酸配列は、適切な宿主細胞に、コード化タンパク質産物の発現を誘導する組換えDNA分子を生成するために使用されうる。
当業者に理解されるとおり、非天然に生じるコドンを有するAcDAGATコードヌクレオチド配列を生成するのは有利である可能性がある。したがって、いくつかの好ましい態様では、特定の原核生物または真核生物の宿主によって好まれるコドン(Marrayら(1989)Nucl. Acids Res. 17)は、例えば、AcDAGAT発現の速度を増加させるために、または天然に生じる配列から産生される転写物より長い半減期のような所望の特性を有する組換えRNA転写物を産生するために、選択されうる。
A.植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの産生のためのベクター
本発明の核酸配列は、組換え技術によりポリペプチドを産生するために使用されてもよい。したがって、例えば、核酸配列は、ポリペプチドを発現するための多様な発現ベクターに含まれうる。本発明のいくつかの態様では、ベクターには、それらに限定されないが、染色体、非染色体および合成DNA配列(例えば、SV40の誘導体、細菌性プラスミド、ファージDNA;バスキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組合せに由来するベクター、ならびにワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病のようなウイルスDNA)が含まれる。任意のベクターが、宿主内で複製可能であり且つ生育可能である限り、使用可能なことが予想される。
特に、本発明のいくつかの態様は、先に広範に記述されるとおり1種または複数の核酸配列(例えば、配列番号:1)を含む組換え構築物を提供する。本発明のいくつかの態様では、構築物は、順行または逆行方向で、それに本発明の核酸配列が挿入されたプラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターを含む。本発明の好ましい態様では、適切な核酸配列を、多様な手段のいずれかを使用して、ベクターに挿入する。一般に、核酸配列を、当技術分野において知られる方法により、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入する。
多量の適切なベクターは、当業者に周知であり、市販されている。このようなベクターとしては、以下のベクターが含まれるが、それらに限定されることはない:1)細菌性-pQE70、pQE60、pQE-9(キアゲン(Qiagen))、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pbluescriptSK、pBSKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(ストラタジーン(Stgratagene));ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(ファルマシア);および2)真核生物性-pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXT1、pSG(ストラタジーン)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(ファルマシア)。任意の他のプラスミドまたはベクターは、それらが複製可能であり、且つ宿主中で生育可能である限り使用されうる。本発明のいくつかの好ましい態様では、植物発現ベクターは、複製の起点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを含み、ならびに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体およびアクセプター部位、転写終結配列、および5'隣接非転写配列も包含する。他の態様では、SV40スプライスに由来するDNA配列、およびポリアデニル化部位は、要求された非転写遺伝子要素を提供するために使用されうる。
本発明のある態様において、発現ベクター内の本発明の核酸配列は、mRNA合成を誘導する適切な発現制御配列(プロモーター)に機能的に結合される。本発明に有用なプロモーターとしては、それらに限定されないが、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージλPLおよびPR、T3およびT7プロモーター、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)極初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、およびマウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ならびにそれらのウイルスの真核細胞または原核細胞での遺伝子の発現を制御することが知られる他のプロモーターが挙げられる。本発明の他の態様では、組換え発現ベクターとしては、複製の起点および宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー(例えば、真核細胞培養物についてのジヒドロ葉酸還元酵素もしくはネオマイシン耐性、または大腸菌でのアンピシリンまたはテトラサイクリン耐性)が含まれる。
本発明のいくつかの態様では、高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。エンハンサーは、その転写を増加させるためにプロモーター上で作用する通常約10bpから約300pbまでであるDNAのcis作用要素である。本発明に有用なエンハンサーとしては、それらに限定されないが、複製起点の後側100bpから270bpまでのSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側でのポリオマーエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。
他の態様では、発現ベクターは、転写開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターも含む。本発明のさらに他の態様において、ベクターは、増幅発現のための適切な配列も含んでもよい。
B.植物ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼの産生のための宿主細胞
別の態様では、本発明は、上記の構築物のいずれかを含む宿主細胞を提供する。本発明のいくつかの態様では、宿主細胞は、高等真核生物細胞(例えば、植物細胞)である。本発明の他の態様では、宿主細胞は、下等真核生物細胞(例えば、酵母細胞)である。本発明のさらに他の態様では、宿主細胞は、原核生物細胞(例えば、細菌細胞)でありうる。宿主細胞の特定の例としては、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、およびシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の種々の種、並びにサッカロミセス・セレビシエ(Saccaromycees cerivisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccaromycees pombe)、ドロソフィア(Drosophila)S2細胞、スポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓繊維症のCOS-7系統(Gluzman(1981)Cell 23:175)、293T、Cl27、3T3、HeLaおよびBHK細胞系統、NT-1(タバコ細胞培養系統)、根状分泌における根細胞および培養根(Glebaら(1999)Proc Natl Acad Sci USA 96:5973-5977)が含まれるが、それらに限定されることはない。他の例としては、小胞子由来のナタネ種子油の培養物(Weselake RJおよびTaylor DC(1999)Prog. Lipid Res. 38:401)、ならびに花粉および小胞子培養系の形質転換が含まれる。さらなる例は、実施例に記述される。
宿主細胞における構築物を、従来の手段で使用して、上記される本発明の組換え配列のいずれかによってコード化された遺伝子産物を産生することができる。いくつかの態様では、宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、または電気穿孔法によって達成することができる(例えば、Daivsら(1986)Basic Methods in Molecular Biology)。あるいは、本発明のいくつかの態様では、本発明のポリペプチドを従来のペプチド合成機によって合成的に生成することができる。
タンパク質を、適切なプロモーターの制御下で、真核細胞、酵母、細菌、または他の細胞で発現することができる。無細胞翻訳系も、本発明のDNA構築物から誘導されるRNAを使用して、このようなタンパク質を産生するために使用されうる。原核生物および真核生物の宿主で使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは、Sambrookら(1989)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor、NYによって記述される。
本発明のいくつかの態様では、適切な宿主株の形質転換、および適切な細胞密度までの宿主株の増殖に続いて、選択されたプロモーターを、適切な手段(例えば、温度移行または化学誘導)によって誘導し、細胞をさらなる期間培養する。本発明の他の態様では、典型的には細胞を遠心分離によって回収し、物理的または化学的手段によって破砕し、生じた粗抽出物をさらなる精製のために保持する。本発明のさらに他の態様では、タンパク質の発現で使用される微生物細胞は、凍結-解凍サイクル、超音波処理、機械的破砕、または細胞溶解剤の使用を含めたいずれかの従来の方法によって破砕されうる。
VII.アセチル・グリセリドの産生
本発明の1つの態様では、アセチルグリセリド(AcTAG)を産生する方法を提供する。以下の方法は、AcTAGの産生の点で記述されるが、これらの方法は、関連基を移行させるAcDAGATに使用可能でもあり、アセチルに関連した基が移行されるTAGの産生を生じることが理解される。いくつかの態様では、AcTAGは、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を示すポリペプチドをコードする異種遺伝子で形質転換され、かつAcTAGの産生を実行するのに十分な条件下で成長した生物において、インビボで産生される。他の態様では、AcTAGは、本発明のAcDAGATをコードする核酸配列、またはジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を示すポリペプチドのいずれかから、インビトロで産生される。
A.新規TAG
基質の型を制御することによって、新規TAGを産生することが可能である。例えば、酵母細胞におけるニシキギ属AcDAGAT(EaDAGAT)の発現から得られる結果(実施例4に記述されるとおり)は、トリアシルグリセロール種アセチルジパルミトレインを産生したことを示す;このトリアシルグリセロール種は、以前に報告されておらず、したがって新規のものである。EaDAGATの使用が、アセチルジリシノレイン;アセチルジベルノリン、またはアセチルジカプリンのような構造を作製するために使用可能であることが、さらに予想される;これらの構築物も以前に報告されておらず、したがって新規のものである。
いくつかの態様では、AcTAG産物が合成されるような適切な条件下で、EaDAGAT酵素を、アセチル-CoAおよび適切なDAG基質(例えば、ジリシノレインまたはジベルノリン)とインキュベートすることによって、新規化合物を産生する。他の態様では、AcTAG産物が合成されるような適切な条件下で、EaDAGAT酵素を、DAG基質と適切な関連基-CoA(例えば、シンナモイル)とインキュベートすることによって、新規化合物を産生する。シンナモイル-TAGはUVを吸着し、日焼け止めで使用可能なことが予想される。インキュベーションのための例示の適切な条件は、下記およびDAGATアッセイ法についての実施例で記述される。
EaDAGATが、適切なDAG基質が合成される時および場所で発現されるように、適切なDAG基質が、適切なプロモーター(例えば、実施例5で記述されるとおり)の制御下でEaDAGATをコードする遺伝子と共に存在する植物を形質転換することによって、このような化合物をインビボで産生することでき、その結果、AcTAGの合成を生じる。
B.トランスジェニック生物でのインビボ産生
本発明のいくつかの態様では、本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換された生物を供給すること、およびAcTAGの産生を実行するのに十分な条件下でトランスジェニック生物を成長させることによって、AcTAGをインビボで産生する。本発明の他の態様では、本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子で生物を形質転換させること、およびAcTAGの産生を実行するのに十分な条件下でトランスジェニック生物を成長させることによって、AcTAGをインビボで産生する。例示的なトランスジェニック生物は以下に記載され、実施例で提供される。
本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換される生物としては、好ましくは、ある種の手段でトリアセチルグリセール(TAG)を天然に合成および保存するものであり、市販に適しており、多量のTAG産物を回収するのに適しているものが含まれる。このような生物としては、それらに限定されないが、油性の酵母および藻類、並びに植物および動物が含まれる。酵母の例としては、油性の酵母が含まれ、そしてそれらには限定されないが、リポマイセス(Lipomyces)属、カンジダ(Candida)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ロドスポリジウム(Rodhosporidium)属およびクリプトコッカス(Cryptococcus)属が含まれ、これらは市販規模の発酵で産生されうる。植物の例としては、好ましくは、大豆、ナタネ種子およびキャノーラ、ヒマワリ、綿実、トウモロコシ、カカオ、ベニバナ、パーム油、ココナッツ油、亜麻、ヒマシ、および落花生のような油生産植物が挙げられる。多くの市販の栽培変種を、異種遺伝子で形質転換することができる。可能でない場合には、市販でない栽培変種の植物を形質転換させることができ、本発明のAcDAGATの発現についての特性を、当技術分野において周知の交配技術によって市販の栽培変種に移行させることができる。
AcDAGATの変種を含めた本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子は、上記されるとおり本発明の任意の適切な配列が含まれる。好ましくは、異種遺伝子は、ベクターを用いた形質転換が、ポリペプチドの発現を生じるように発現ベクター内で供給される;適切なベクターは先および以下に記載される。
トランスジェニック生物を、AcTAGの産生を実行するのに十分な条件下で育成する。本発明のいくつかの態様では、トランスジェニック生物に、AcDAGATの外因性基質(例えば、発酵装置内のように)を供給する。このような基質は、TAG合成についての炭素源として糖、DAGおよびTAGの産生のために直接的に使用される脂肪酸およびグリセロール、DAGそれ自身、ならびに全般的な炭素源を供しかつアセチル-CoAおよび/またはジアセチルグリセロール(DAG)の産生のために使用される酢酸を含みうる。関連基をDAGに移動させた場合、そのような基質は、その代わりにまたはそれに加えて、トランスジェニック生物に供給されうる;例示的な関連基としては、それらに限定されないが、ブチレート、プロピオネート、およびシンナメートが含まれる。基質を当技術分野において周知であるような種々の形態で供給しうる;このような形態としては、超音波処理によって作製される水性懸濁液、洗剤および他の界面活性剤で作製された水性懸濁液、溶媒への基質の溶解、ならびに基質の乾燥粉末が含まれる。このような形態を、発酵装置で成長させた生物または培養細胞もしくは組織に添加しうる。
本発明のさらに他の態様では、トランスジェニック生物は、誘導性プロモーターに機能的に結合された本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子を含み、誘導剤の存在下で成長させるか、または成長させた後に誘導剤にさらされる。本発明のさらに他の態様では、トランスジェニック生物を、組織特異的であるかまたは発生的に特異的であるかのいずれかであるプロモーターに機能的に結合された本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子を含み、組織を発生する時点まで、または発生的に特異的プロモーターが活性化される発生段階まで成長させる。このようなプロモーターとしては、種子特異的プロモーターが含まれる。
代替的態様では、上記されるようなトランスジェニック生物を、より多い量のジアシルグリセロール基質を産生するように遺伝子操作する。したがって、トランスジェニック生物が、脂肪酸合成が増加されるようなさらなる修飾を含んでもよく、そしてさらに、または代わりに、外因性アシルトランスフェラーゼおよび/またはホスファチジン酸ホスファターゼを含みうることが予想される。
本発明の他の態様では、宿主生物は、アセチル-CoAまたはDAGのような多量の所望の基質を産生する;非制限的な例としては、アセチル-CoA合成酵素および/またはATPクエン酸リアーゼをコードする遺伝子で形質転換される生物が含まれる。いくつかの態様では、特定のDAGは、所望の特性を有する新規AcTAGの合成を生じることが予想される。したがって、特定の適切な宿主は、高比率のこのようなDAGを産生するものである。
他の態様では、宿主生物は、DAGのような所望の基質を少量、産生する。このような宿主で、外因性AcDAGATから産生される新規TAGは、高い比率の総TAGであることが予想される;利益としては、新規TAGの精製が高価でないことを含む。非制限的な宿主としては、脂質合成系を通して低い流速を示すもの、または低い外因性DAGAT活性を示すもの(DAGAT1またはDAGAT2のいずれか、または両方)が挙げられる。このような宿主は、天然に生じうるか、または遺伝子操作技術を介して生じうる。非制限的な技術としては、EMSによって産生されるノックアウトおよびトランスポゾンタギングが含まれる。
本発明の他の態様では、AcTAGを産生する方法は、産生されたAcTAGを回収することをさらに含む。このような方法は、当技術分野において一般に知られており、トランスジェニック生物を収穫すること、およびAcTAGを抽出することを含む(例えば、Christie, W. W.(1982)Lipid Analysis、第2版(ペルガモン・プレス、オックスフォード);およびKates, M(1986)Techniques of Lipidology(Elsevier、アムステルダム))を参照)。抽出手段は、好ましくは、溶媒抽出を含み、典型的には、溶媒抽出の前に、叩き切り、切り刻み、破砕、および/または超音波処理することによるように、細胞を破砕することを含む。1つの態様では、脂質をBlighおよびDyer(1959)(Can J Biochem Physiol 37:911-917)の方法によって組織から抽出する。本発明のさらに他の態様では、例えば、薄相液体クロマトグラフィー、気体-液体クロマトグラフィー、対抗電流クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィーによるなとして、AcTAGをさらに精製する。
1. トランスジェニック植物、種子、および植物部分
当技術分野で周知の手順に従い、植物を少なくとも本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換する。異種遺伝子を利用し、異種遺伝子によってコードされる酵素活性のレベルを増加させることを意図する。
a. 植物
本発明の方法は、特定の植物に限定されない。実際に、トマト、ジャガイモ、タバコ、コショウ、イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、アブラナ属、シロイヌナズナ、ヒマワリ、ダイズ、ポプラ、およびマツを含むがこれらに限定されない様々な植物が意図される。好ましい植物には、特定の器官、主に種子でトリアシルグリセロールを産生し貯蔵する植物種である油産生種が含まれる。そのような種には、ダイズ(Glycine max)、アブラナおよびカノーラ(Brassica napusおよびB. campestrisを含む)、ヒマワリ(Helianthus annus)、ワタ(Gossypium hirsutum)、トウモロコシ(Zea mays)、カカオ(Theobroma cacao)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、アブラヤシ(Elaeis guineensis)、ココヤシ(Cocos nucifera)、アマ(Linum usitatissimum)、トウゴマ(Ricinus communis)、およびピーナツ(Arachis hypogaea)が含まれるが、これらに限定されない。その群には、タバコ、早周期の(rapid cycling)アブラナ属種、およびシロイヌナズナ等の適切な発現ベクターの開発に有用である非栽培種、ならびに特有の脂肪酸の供給源になり得るヴェルノニア(Vernonia)およびクフェア(Cuphea)等の栽培化段階の野生種も含まれる。また、任意ではあるが突然変異誘発(Katavicら、1995およびZouら (1999))、トランスポゾンタギング(Routaboulら、1999)、ヘアピンRNA(Stoutjesdijkら (2002) Plant Physiol. 129: 1723;Liuら (2002) Plant Physiol. 129: 1732)、およびキメラ形成法(Beethamら (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8774;Zhuら (2000) Nat. Biotechnol. 18: 555)を含む方法によって内因性のDAGAT遺伝子が不活化された植物系統が、ニシキギDAGAT遺伝子の最適発現に理想的であると考えられる。さらに、他の遺伝子ファミリー由来のDAGAT遺伝子、およびPDAT等のTAGへの他の経路が下方制御された系統も意図している。
b. ベクター
本発明の方法は、上記のように、少なくとも本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子の使用を意図する。
まず、植物内での発現を目的とした異種遺伝子を、プロモーターを含む発現カセット内にアセンブルする。当業者に周知の方法を用いて、異種遺伝子ならびに適切な転写および翻訳制御領域を含む発現ベクターを構築してよい。これらの方法には、インビトロ組換えDNA法、合成法、およびインビボ遺伝子組換え法が含まれる。そのような方法は、当技術分野において広く記載されている(例えば、Sambrookら (1989)「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」, Cold Spring Horbor Press, Plainview, N.Y.、およびAusubel, F.M.ら (1989)「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons, New York, N.Y.を参照のこと)。
一般に、これらのベクターは、植物内での発現に必要とされるプロモーターおよび他の調節配列(例えばエンハンサーおよびポリアデニル化シグナル等)に機能的に結合している本発明の(上記のような)AcDAGATをコードする本発明の核酸配列を含む。
プロモーターには、構成的プロモーター、組織、器官、および発生的特異的プロモーター、ならびに誘導性プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルスの構成的プロモーター35S;トマト、ロイシンアミノペプチダーゼ由来の傷害誘導性プロモーター(「LAP」、Chaoら (1999) Plant Physiol 120: 979-992);タバコ、感染関連1(Pathogenesis-Related 1)(PR1)由来の化学誘導性プロモーター(サリチル酸およびBTH(ベンゾチアジアゾール-7-カルボチオ酸S-メチルエステルにより誘導される);トマトプロテイナーゼ阻害剤IIプロモーター(PIN2)またはLAPプロモーター(どちらもジャスモン酸メチル誘導性);熱ショックプロモーター(米国特許第5,187,267号);テトラサイクリン誘導性プロモーター(米国特許第5,057,422号);および種子貯蔵タンパク質(例えば、ファゼオリン、ナピン、オレオシン、およびダイズβコングリシンのプロモーター(Beachyら (1985) EMBO J. 4: 3047-3053))のプロモーター等の種子特異的プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。本明細書内に引用したすべての参考文献は、全体として本明細書に組み入れられる。
発現カセットは、mRNAの発現に必要とされる任意の配列をさらに含んでもよい。そのような配列には、転写ターミネーター、イントロン等のエンハンサー、ウイルス配列、および特定の細胞小器官および細胞内区画に遺伝子産物を標的化することを目的とした配列が含まれるが、これらに限定されない。
本発明のプロモーターを用いた配列の発現には、様々な転写ターミネーターが利用できる。転写ターミネーターは、転写産物を越えて転写の終結およびその正確なポリアデニル化をつかさどる。適切な転写ターミネーターおよび植物において機能することが周知である転写ターミネーターには、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、エンドウマメrbcS E9ターミネーター、ならびにノパリンおよびオクトピンシンターゼターミネーターが含まれるが、これらに限定されない(例えば、Odellら (1985) Nature 313:810;Rosenbergら (1987) Gene, 56:125;Guerineauら (1991) Mol. Gen. Genet., 262:141;Proudfoot (1991) Cell, 64:671;Sanfaconら、Genes Dev., 5:141;Mogenら (1990) Plant Cell, 2:1261;Munroeら (1990) Gene, 91:151;Balladら (1989) Nucleic Acids Res. 17:7891;Joshiら (1987) Nucleic Acid Res., 15:9627を参照のこと)。
さらに、いくつかの態様において、関心対象の遺伝子を発現するための構築物は、転写単位内に遺伝子発現を増強することが認められている1つまたは複数の配列を含む。これらの配列は、関心対象の核酸配列と併せて使用し、植物内で発現を増加させることが可能である。様々なイントロン配列が、特に単子葉植物細胞において発現を増強することが示されている。例えば、トウモロコシAdh1遺伝子のイントロンは、トウモロコシ細胞に導入された場合に、その同属プロモーター下で野生型遺伝子の発現を有意に増強することが見出されている(Calaisら (1987) Genes Develop. 1: 1183)。イントロン配列は、通常は植物形質転換ベクター内、典型的には非翻訳リーダー内に組み入れられている。
本発明のいくつかの態様において、関心対象の核酸配列の発現のための構築物はまた、AcDAGATをコードする核酸配列に機能的に結合した、核局在化シグナル(Calderoneら (1984) Cell 39:499;Lassoerら (1991) Plant Molecular Biology 17:229)、植物翻訳コンセンサス配列(Joshi (1987) Nucleic Acids Research 15:6643)、イントロン(LuehrsenおよびWalbot (1991) Mol. Gen. Genet. 225:81)等の調節配列も含む。
本発明のAcDAGATをコードする核酸配列を含む構築物の調製においては、様々なDNA断片を操作し、所望の方向(例えば、センスおよびアンチセンス)にあり、且つ適切な所望のリーディングフレーム内にあるDNA断片を提供することができる。例えば、アダプターまたはリンカーを利用してDNA断片を結合することが可能であり、または他の操作により都合のよい制限部位、不必要なDNAの除去、制限部位の除去等を提供することができる。この目的のために、インビトロ突然変異誘発、プライマー修復、制限酵素処理、アニーリング、切除、ライゲーション等が好ましくは利用されるが、これには挿入、欠失、または置換(例えば、トランジションおよびトランスバージョン)も含まれる。
植物形質転換用の多数の形質転換ベクターが入手可能である。使用するベクターの選択は、好ましい形質転換法および形質転換の標的種に依存すると思われる。ある標的種については、異なる抗生物質または除草剤選択マーカーが好ましい。形質転換に日常的に用いられる選択マーカーには、カナマイシンおよび関連抗生物質に対する耐性を付与するnptII遺伝子(MessingおよびVierra (1982) Gene 19:259;Bevanら (1983) Nature 304:184)、除草剤フォスフィノスリシンに対する耐性を付与するbar遺伝子(Whiteら (1990) Nucl Acids Res. 18:1062;Spencerら (1990) Theor. Appl. Genet. 79:625)、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を付与するhph遺伝子(BlochlingerおよびDiggelmann (1984) Mol. Cell. Biol. 4:2929)、およびメトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouisら (1983) EMBO J., 2:1099)が含まれる。
いくつかの好ましい態様においては、ベクターはアグロバクテリウムの介するトランスフェクション過程での使用に適合化されている(例えば、米国特許第5,981,839号、第6,051,757号、第5,981,840号、第5,824,877号、および第4,940,838号を参照のこと;これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる)。組換え型TiおよびRiプラスミドの構築は、一般に、pBR322等のより一般的な細菌ベクターで典型的に用いられる方法に従う。付加的な使用は、天然プラスミドとともに見出される場合もあれば外来性の配列から構築される場合もある補助的な遺伝エレメントから作製され得る。これらには、選択遺伝子のような抗生物質耐性の構造遺伝子が含まれ得るが、これらに限定されない。
現行では、組換え型TiおよびRiプラスミドベクター系には2つの系が存在する。1つ目の系は「共挿入」系と呼ばれる。この系では、関心対象の遺伝子を含むシャトルベクターを、遺伝子組換えにより、植物形質転換に必要とされるシス作動性およびトランス作動性エレメントの両方を含む非腫瘍性Tiプラスミドに挿入するが、これは例えばpMLJ1シャトルベクターおよび非腫瘍性TiプラスミドpGV3850に見られる。2つ目の系は「バイナリー」系と呼ばれ、2つのプラスミドが用いられる。関心対象の遺伝子を、植物形質転換に必要とされるシス作動性エレメントを含むシャトルベクターに挿入する。もう一方の必要な機能は非腫瘍性Tiプラスミドによってトランスに提供され、これはpBIN19シャトルベクターおよび非腫瘍性TiプラスミドPAL4404によって例証される。これらのベクターのいくつかは市販されている。
本発明の他の態様においては、関心対照の核酸配列を植物ゲノムの特定の遺伝子座に標的化する。関心対象の核酸配列の植物細胞ゲノムへの部位特異的組込みは、例えばアグロバクテリウム由来の配列を用いた相同的組換えによって達成され得る。一般に、以前に記載されているように(米国特許第5,501,967号)、植物細胞を、標的遺伝子座の内側のDNA配列に相同的な配列にアグロバクテリウム転移DNA(T-DNA)配列が隣接しているターゲティングベクターを含むアグロバクテリウム株と共にインキュベートする。遺伝子の調節エレメントに属するか遺伝子のコード領域に属するかにかかわらず、標的化された植物遺伝子の任意の部分に相同である配列を含むターゲティングベクターを用いて相同組換えが達成され得ることは、当業者には周知である。標的する部位に隣接する領域の核酸配列が周知である限りは、植物遺伝子のいかなる領域においても相同的組換えは達成され得る。
さらに別の態様においては、本発明の核酸を利用して植物(+) RNAウイルス(例えば、ブロムモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、トマトモザイクウイルス、ならびにそれらの組み合わせおよび雑種)由来のベクターを構築する。一般に、挿入された本発明のAcDAGATポリヌクレオチドは、融合タンパク質(例えば、コートタンパク質融合タンパク質)としてこれらのベクターから、または自身のサブゲノムプロモーターもしくは他のプロモーターから発現され得る。構築の方法およびそのようなウイルスの使用は、米国特許第5,846,795号、第5,500,360号、第5,173,410号、第5,965,794号、第5,977,438号、および第5,866,785号に記載されており、これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる。
本発明のいくつかの態様においては、関心対象の核酸配列を直接植物内に導入する。除草剤バスタ(またはフォスフィノスリシン)による選択と組み合わせた直接的遺伝子移入に有用な1つのベクターは、大腸菌GUS遺伝子およびCaMV 35S転写ターミネーターに機能的に結合しているCaMV 35Sプロモーターを有するプラスミドpCIB246の改変型である(国際公開公報第93/07278号)。
c. 形質転換法
本発明のAcDAGATをコードする核酸配列が適切なプロモーターに機能的に結合され、利用する特定の形質転換法に適したベクター(例えば、上記のベクターの1つ)に挿入された場合には、多数の技術的に認められている方法により上記の組換え型DNAを植物内に導入することができる。当業者は、方法の選択が形質転換の標的にする植物の種類に依存することを理解すると考えられる。いくつかの態様において、ベクターはエピソームの形で維持される。他の態様においては、ベクターはゲノムに組み込まれる。
いくつかの態様においては、色素体ゲノムにおける直接的形質転換を使用してベクターを直物細胞内に導入する(例えば、米国特許第5,451,513号、5,545,817号、5,545,818号、国際公開公報第95/16783号を参照のこと)。葉緑体形質転換の基礎的な方法は、関心対象のRNA配列をコードする核酸と共に選択マーカーに隣接するクローン化した色素体DNAの領域を、適切な標的組織に導入する段階を含む(例えば、遺伝子銃、または塩化カルシウムもしくはPEGを用いたプロトプラスト形質転換による)。標的配列と呼ばれる1 kb〜1.5 kbの隣接領域により色素体ゲノムとの相同的組換えが促進され、それによりプラストームの特定の領域の置換または修飾が可能になる。最初に、スペクチノマイシンおよび/またはストレプトマイシンに対する耐性を付与する葉緑体16S rRNA内の点突然変異およびrps12遺伝子を、形質転換の選択マーカーとして利用する(Svabら (1990) PNAS, 87:8526;StaubおよびMaliga (1992) Plant Cell, 4:39)。これらのマーカー間におけるクローニング部位の存在により、外来DNA分子を導入した色素体ターゲティングベクターの構築が可能になる(StaubおよびMaliga (1993) EMBO J., 12:601)。形質転換頻度の実質的な増加は、劣性rRNAまたはr-タンパク質抗生物質耐性遺伝子を、優性選択マーカーであるスペクチノマイシン解毒酵素アミノグリコシド-3'-アデニルトランスフェラーゼをコードする細菌aadA遺伝子により置換することによって得られる(SvabおよびMaliga (1993) PNAS, 90:913)。色素体形質転換に有用である他の選択マーカーは当技術分野において周知であり、本発明の範囲内に包含される。本発明のプロモーターによって分離される2つの核酸配列を含む色素体ゲノムにホモプラズミックな植物が得られ、この植物はDNA分子によってコードされるRNAを選択的に高発現することができる。
他の態様においては、本発明の実施に有用であるベクターをマイクロピペットの使用により植物細胞内に直接微量注入し、組換えDNAを機械的に導入する(Crossway (1985) Mol. Gen. Genet, 202:179)。さらに別の態様においては、ポリエチレングリコール(Krensら (1982) Nature, 296:72;Crosswayら (1986) BioTechniques, 4:320);他の実体であるミニ細胞、細胞、リソソーム、または他の融合可能な脂質表面体とプロトプラストとの融合(Fraleyら (1982) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79:1859);プロトプラスト形質転換(欧州特許第0 292 435号);直接遺伝子導入(Paszkowskiら (1984) EMBO J., 3:2717;Hayashimotoら (1990) Plant Physiol. 93:857)により、ベクターを植物細胞内に導入する。
さらなる態様においては、エレクトロポレーションによりベクターを植物細胞内に導入してもよい(Fromm ら (1985) Proc. Natl Acad. Sci. USA 82:5824;Riggsら (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:5602)。この方法においては、遺伝子構築物を含むプラスミドの存在下で植物プロトプラストにエレクトロポレーションする。高い電界強度の電気的刺激により生体膜が可逆的に透過性になり、プラスミドの導入が可能になる。エレクトロポレーションされた植物プロトプラストは細胞壁を再形成し、分裂し、植物カルスを形成する。
さらに他の態様においては、装置を用いた衝撃粒子加速を介してベクターを導入する(例えば、Agracetus, Inc.、ウィスコンシン州マディソンおよびDupont, Inc.、デラウェア州ウィルミントンから入手可能である)(例えば、米国特許第4,945,050号およびMcCabeら (1988) Biotechnology 6:923を参照のこと)。また、Weissingerら (1988) Annual Rev. Genet. 22:421;Sanfordら (1987) Particulate Science and Technology, 5:27(タマネギ);Svabら (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:8526(タバコ葉緑体);Christouら (1988) Plant Physiol., 87:671(ダイズ);McCabeら (1988) Bio/Technology 6:923(ダイズ);Kleinら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4305(トウモロコシ);Kleinら (1988) Bio/Technology, 6:599(トウモロコシ);Kleinら (1988) Plant Physiol., 91:4404(トウモロコシ);Frommら (1990) Bio/Technology, 8:833;およびGordon-Kammら (1990) Plant Cell, 2:603(トウモロコシ);Kozielら (1993) Biotecnology, 11:194(トウモロコシ);Hillら (1995) Euphytica, 85:119およびKozielら (1996) Annuals of New York Academy of Science 792:164;Shimamotoら (1989) Nature 338: 274(イネ);Christouら (1991) Biotechnology, 9:957(イネ);Dattaら (1990) Bio/Technology 8:736(イネ);欧州特許出願第EP0 332 581号(カモガヤ(orchardgrass)および他のイチゴツナギ亜科(Pooideae));Vasilら (1993) Biotechnology, 11:1553(コムギ);Weeksら (1993) Plant Physiol., 102: 1077(コムギ);Wanら (1994) Plant Physiol. 104: 37(オオムギ);Jahneら (1994) Theor. Appl. Genet. 89:525(オオムギ);KnudsenおよびMuller (1991) Planta, 185:330(オオムギ);Umbeckら (1987) Bio/Technology 5: 263(ワタ);Casasら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11212(ソルガム);Somersら (1992) Bio/Technology 10:1589(カラスムギ);Torbertら (1995) Plant Cell Reports, 14:635(カラスムギ);Weeksら (1993) Plant Physiol., 102:1077(コムギ);Changら 、国際公開公報第94/13822号(コムギ);およびNehraら (1994) The Plant Journal, 5:285(コムギ)もまた参照されたい。
直接形質転換法に加えて、いくつかの態様においては、本発明のAcDAGATをコードする核酸を含むベクターをアグロバクテリウムの介する形質転換により導入する(Hincheeら (1988) Biotechnology, 6:195;Ishidaら (1996) Nature Biotechnology 14:745)。アグロバクテリウムは、グラム陰性リゾビウム(Rhizobiaceae)科の代表的な属である。その種は、クラウンゴールまたは毛状根病(hairy root disease)等の植物腫瘍の原因である。腫瘍に特有の脱分化した組織において、オパインとして知られるアミノ酸誘導体が産生され異化される。オパインの発現をつかさどる細菌遺伝子は、キメラ発現カセットの制御領域の簡便な供給源である。アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドを用いて、異種遺伝子配列(例えば、本発明のプロモーターに機能的に結合している核酸配列)を適切な植物細胞内に導入することができる。アグロバクテリウム・ツメファシエンスの感染によりTiプラスミドは植物細胞に伝達され、植物ゲノム内に安定的に組み込まれる(Schell (1987) Science, 237: 1176)。アグロバクテリウムによる感染に感受性のある種は、インビトロで形質転換され得る。または、「フローラルディップ」法において見られるような成体植物のアグロバクテリウム浸潤による全植物体の形質転換等により、植物をインビボで形質転換してもよい(Bechtold N, Ellis J, Pelletier G (1993) Cr. Acad. Sci. III-Vie 316: 1194-1199)。
d. 再生
本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子を発現し得る形質転換された植物材料を選択した後、全植物体を再生させる。培養プロトプラストからの植物再生は、Evansら (1983) Handbook of Plant Cultures, Vol.1:(MacMillan Publishing Co. New York);ならびにVasil I.R. (編), Cell Culture and Somatic Cell Genetecs of Plants, Acad. Press, Orlando, Vol.I (1984)、およびVol.III(1986)に記載されている。サトウキビ、サトウダイコン、ワタ、果樹および他の樹木、マメ科植物および野菜、ならびに単子葉植物(例えば、上記の植物)のすべての主要な種を含むがこれらに限定されない多くの植物が、培養細胞または組織から再生され得ることが知られている。再生手段は植物の種類によって異なるが、一般に、まず異種遺伝子のコピーを含む形質転換されたプロトプラストの懸濁液を提供する。カルス組織を形成し、カルスから苗条を誘導し、続いて発根させてもよい。
または、プロトプラスト懸濁液から胚形成が誘導され得る。これらの胚は発芽し、成熟植物体を形成する。培養液は一般に、様々なアミノ酸ならびにオーキシンおよびサイトカイニン等の様々なホルモンを含む。苗条および根は、通常は同時に発達する。効率的な再生は、培地、遺伝子型、および培養の経緯に依存することになる。再生の再現性は、これらの変数の制御に依存する。
e. トランスジェニック系統の作製
組織培養増殖により、トランスジェニック植物からトランスジェニック系統が確立される。本発明の異種性AcDAGATをコードする核酸配列(その変異体および変種を含む)の存在は、従来の植物育種法により類縁種に伝達され得る。
次にこれらのトランスジェニック系統を、油産生および他の農業形質の評価に利用する。
C. インビトロ系
本発明の他の態様において、AcTAGは、本発明のAcDAGATをコードする核酸またはジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を示すポリペプチドからインビトロで産生される。
1. ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸配列の使用
本発明のいくつかの態様において、AcTAGを産生する方法は、本発明のAcDAGATをコードする単離された核酸配列を、AcTAGの産生を起こすのに十分な条件下でインビトロ発現系に添加する段階を含む。植物アセチルトランスフェラーゼをコードする単離された核酸配列は上記のような本発明の任意の適切な配列であり、好ましくは、ベクターをインビトロ転写/翻訳系に加えてポリペプチドが発現されるような、発現ベクター内に提供される。さらに、意図されるこの系は真核生物の膜タンパク質の翻訳および機能に特異的であり、すなわちミクロソーム系である。この系は、前述のようにAcDAGATの基質をさらに含む。または、この系は本発明のAcDAGATの基質を作製する手段をさらに含む。そのような手段には、前述の手段が含まれるがそれらに限定されない。
本発明の他の態様において、大量のAcTAGを産生する方法は、産生されたAcTAGを収集する段階をさらに含む。そのような方法は一般に当技術分野において周知であり、先に簡潔に記載した。本発明のさらに別の態様において、AcTAGは、例えば薄層液体クロマトグラフィー、ガス液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、結晶化、および/または減圧蒸留により、さらに精製される。
2. ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼポリペプチドの使用
本発明のいくつかの態様において、大量のAcTAGを産生する方法は、AcTAGを合成するのに十分な条件下で本発明のAcDAGATをインキュベートする段階を含む。一般に、そのようなインキュベーションはAcDAGATを含む混合物中で行われる。
本発明のAcDAGATは上記のように、天然のAcDAGAT、または上記のようにAcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換した生物からの組換えAcDAGATの精製によって得られる。天然のAcDAGATの供給源は、例えばニシキギまたはニシキギ科植物の他のメンバー、さらにアケビ科(Lardizabalaceae)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)、およびバラ科(Rosaceae)を含むがこれらに限定されないと考えられる。組換えAcDAGATの供給源は、植物、細菌、または上記のように本発明のAcDAGATをコードする異種遺伝子で形質転換した他のトランスジェニック生物である。組換えAcDAGATは、例えば上記のようにタンパク質のC末端に6x-Hisタグを付加するなど、精製を改善するための手段を含んでもよい。または、AcDAGATは化学的に合成される。
インキュベーション混合液は、上記のようにAcDAGATの基質をさらに含む。または、混合液は、ATP-クエン酸溶解液を使用してクエン酸からアセチル-CoAを産生させる、またはアセチル-CoA合成酵素を使用してアセテートからアセチル-CoAを産生させる、およびホスファチジン酸ホスファターゼを使用してホスファチジン酸からジアシルグリセロールを産生させる、またはホスホリパーゼCを使用してリン脂質からジアシルグリセロールを産生させる等の、AcDAGATの基質を産生する手段をさらに含む。
本発明の他の態様において、AcTAGを産生する方法は、産生されたAcTAGを収集する段階をさらに含む。そのような方法は上記してある。
VIII. 植物におけるジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性の操作
本発明のAcDAGATをコードする核酸を用いて、トランスフェクションした細胞においてAcDAGAT mRNAおよび/またはタンパク質のレベルを、野生型細胞と比較して増加または減少させることが可能であることもさらに意図される。そのようなトランスジェニック細胞は、AcDAGATの過剰発現の影響、およびAcDAGATの低発現または欠如の影響に関するさらなる研究を含むがこれらに限定されない、優れた有用性を有する。
したがって、いくつかの態様においては、上記の方法によって本発明のAcDAGATをコードする核酸配列を植物において発現させることにより、トランスジェニック植物、植物組織、または植物細胞においてAcDAGATの過剰発現をもたらす。
本発明の他の態様においては、AcDAGATポリヌクレオチドを用いて、トランスジェニック植物、植物組織、または植物細胞においてAcDAGATタンパク質またはmRNAのレベルを、野生型植物、植物組織、または植物細胞と比較して減少させる。AcDAGAT発現を減少させる1つの方法では、アンチセンス転写産物を利用する。アンチセンスRNAは、組織特異的方法で植物標的遺伝子を阻害するために用いられてきた(例えば、van der Krolら (1988) Biotechniques 6:958-976)。アンチセンス阻害は、全体のcDNA配列および部分的なcDNA配列の使用が示されている(例えば、Sheehyら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8805-8809;Cannonら (1990) Plant Mol. Biol. 15:39-47)。1.87 kb cDNAのうちのわずか41塩基対を含む3'非コード配列断片および5'コード配列断片が、アンチセンス阻害において重要な役割を担い得るという証拠も存在する(Ch'ngら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10006-10010)。
したがって、いくつかの態様においては、本発明のAcDAGATをコードする核酸(例えば、配列番号:1ならびにその断片および変種)をベクター内で正しい方向に合わせ、アンチセンス転写産物を産生するように発現させる。これを達成させるためには、所望の遺伝子由来の核酸部分をクローニングし、RNAのアンチセンス鎖が転写されるようにプロモーターに機能的に結合させる。次に発現カセットを植物に形質転換し、RNAのアンチセンス鎖を産生させる。導入される核酸部分は、一般に、1つまたは複数の抑制すべき内因性遺伝子の少なくとも一部分と実質的に同一であると考えられる。しかし、発現を阻害するために、配列は完全に同一である必要はない。本発明のベクターは、抑制効果が、標的遺伝子との相同性または実質的相同性を示す遺伝子のファミリー内の他のタンパク質にも適用されるように設計され得る。
さらに、アンチセンス抑制に関して、導入される配列は本来の転写産物または完全にプロセシングされたmRNAに対して全長である必要はない。一般に、より高い相同性を用いるほど、より短い配列の使用で代償され得る。さらに、導入される配列は同じイントロンまたはエキソンパターンを有する必要はなく、非コード部分の相同性も同様に効果的である場合がある。通常は約30または40ヌクレオチドとおよそ全長のヌクレオチドとの間の配列を用いるべきであるが、少なくとも約100ヌクレオチドの配列が好ましく、少なくとも約200ヌクレオチドの配列がより好ましく、および少なくとも約500ヌクレオチドの配列が特に好ましい。
触媒RNA分子またはリボザイムを用いて、1つまたは複数の標的遺伝子の発現を阻害することもできる。実質的に任意の標的RNAと特異的に対を組むリボザイムを設計し、特定の位置においてホスホジエステル骨格を切断し、それにより標的RNAを機能的に不活化することが可能である。この切断の実施において、リボザイムはそれ自体変化することなく、したがって再利用および他の分子の切断が可能であり、真の酵素と見なせる。アンチセンスRNA内にリボザイム配列を含めることにより、RNA切断活性が付与され、それにより構築物の活性が増加する。
多くのクラスのリボザイムが同定されている。1つのクラスは、植物内で自己切断および複製ができる多数の小さな環状RNAに由来する。RNAは、単独で(ウイロイドRNA)またはヘルパーウイルスと共に(サテライトRNA)に複製する。例には、アボカドサンブロッチウイロイド(avocado sunblotch viroid)によるRNA、ならびにタバコ輪点ウイルス(tabacco ringspot virus)、ルツェルン一過性ストリーク(lucerne transient streak)ウイルス、ベルベットタバコ斑紋(velvet tobacco mottle)ウイルス、テリミノイヌホオズキ斑紋(Solanum nodiflorum mottle)ウイルス、およびサブタレニアン・クローバ斑紋(subterranean clover mottle)ウイルス由来のサテライトRNAが含まれる。標的RNA特異的リボザイムの設計および使用は、Haseloffら (1988) Nature 334:585-591に記載されている。脂質生合成遺伝子のmRNAに標的化されたリボザイムにより、標的酵素基質の遺伝的増加がもたらされるが、これについても記載されている(Merlo AOら (1998) Plant Cell 10:1603-1621)。
AcDAGAT発現を減少させる別の方法では、共抑制または遺伝子サイレンシングの現象を利用する(例えば、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,063,947号を参照のこと)。また共抑制の現象を用いて、組織特異的な方法で植物標的遺伝子が阻害されている。全長cDNA配列および部分的cDNA配列(1770 bp cDNAのうちの730 bp)を用いた内因性遺伝子の共抑制が知られている(例えば、Napoliら (1990) Plant Cell 2:279-289;van der Krolら (1990) Plant Cell 2:291-299;Smithら (1990) Mol. Gen. Genetics 224:477-481)。したがって、いくつかの態様においては、本発明のAcDAGATをコードする核酸配列(例えば、配列番号:1ならびにその断片および変種を含む)を別の種の植物内で発現させ、相同遺伝子の共抑制を生じる。
一般に、発現の阻害が望まれる場合、導入された配列はいくらか転写が起こる。導入された配列それ自体はコード配列を含んでいないが、内因性配列の本来の転写産物に存在する配列に相同なイントロンまたは非翻訳配列のみを含む場合に、効果が生じ得る。導入される配列は一般に、抑制が意図される内因性配列と実質的に同一である。この最低限の同一性は典型的に約65%を上回るが、同一性が高いほど内因性配列の発現の抑制により効果を及ぼす。約80%を上回る実質的により高い同一性が好ましいが、約95%から完全な同一性が最も好ましいと考えられる。アンチセンス調節と同様に、効果は、相同性または実質的な相同性を示す遺伝子の類似のファミリー内の他のタンパク質にも適用されるはずである。
共抑制に関して、発現カセット内に導入される配列は完全な同一性を必要とはせず、また本来の転写産物または完全にプロセシングされたmRNAに対して全長である必要はない。このことは、過剰発現するある植物の同時的な産生を避けるために好ましいと考えられる。全長配列よりも短い配列において、同一性が高いほど、より長くより同一性の低い配列が代償される。さらに、導入される配列は同じイントロンまたはエキソンパターンを有する必要はなく、非コード部分の同一性も同様に効果的であると考えられる。通常は、アンチセンス調節について上記した大きさの範囲の配列が用いられる。
遺伝子を下方制御する効果的な方法は、ヘアピンRNA構築物によるものである。効果的でありかつハイスループットな遺伝子サイレンシングのためのそのような構築物を設計する手引きが記載されている(Wesley SVら (2001) Plant J. 27:581-590)。遺伝子(内因性または外因性)の発現を減少させる別の方法は、siRNAを介するものである。siRNAは植物に加えられ、植物細胞によって取り込まれ得る。または、siRNAは発現カセットからインビボで発現され得る。ヘアピンRNAを用いた脂質遺伝子アンチセンスの例示的な方法には、Stoutjesdijkら(2002) Plant Physiol. 129: 1723;Liuら (2002) Plant Physiol. 129: 1732が含まれる。
siRNAの利点は、標的されるmRNAの長さが短いことである。これによって、第二の非標的配列の発現を可能にしたまま、第二の配列に非常に類似している第一の配列を選択的に標的化することできる。したがって、AcDAGATは特異的に標的化されものの、DAGATは標的化されず、これにより発現されるべきDAGATの発現が可能になることが意図される。
実験
以下の実施例は本発明の特定の好ましい態様および局面を示しさらに説明するために提供するものであり、その範囲を限定するものではない。
以下の実験の開示においては、以下の略語を使用する:N(規定濃度);M(モル濃度);mM(ミリモル濃度);μM(マイクロモル濃度);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);pmol(ピコモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);lまたはL(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);RT-PCR(逆転写酵素-PCR);TAIL-PCR(熱非対称組み合わせ(thermal asymmetric interlaced)-PCR);RACE(cDNA末端迅速増幅法);EST(発現遺伝子配列断片(expressed sequence tag));BLAST(基礎的局所的アラインメント検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool);C16、C18等(アシル鎖内の炭素原子数による脂肪酸群記号);DAG(ジアシルグリセロール);TAG(トリアシルグリセロール);AcTAG(1,2-ジアシル-3-アセチン);LcTAG(長鎖トリアシルグリセロール);PC(ホスファチジルコリン);DAGAT(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ);ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT);FAME(脂肪酸メチルエステル);GC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析);TLC(薄層クロマトグラフィー);FID(水素炎イオン化検出/検出器);SC培地(サッカロミセス・セレビシエ培地);NT培地(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabaccum)培地);MES(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸);hepes(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸);2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸); CFH(無細胞ホモジネート);MSU(ミシガン・ステイト・ユニバーシティー)。
実験植物の生化学処置
A.材料
発生中の種子
コマユミの発生中の種子はダブルジェイビールガーデン(WJ Beal Garden)およびキャンパスウッディープランツ(Campus Woody Plants)の好意によりミシガン・ステイト・ユニバーシティー構内で集めた。種子鞘は8月中旬から11月の間に採取した。種子を種子鞘および黄色がかったオレンジ色の果皮から取り出した。いくつかの新鮮な種子を半分に割り、すぐにインビボ標識実験に使用した。他のの種子は種皮を剥がしてから、酵素抽出物を調製するために、すぐに子葉および胚を使用するか、または後のRNA抽出、酵素学のための無細胞抽出物の調製もしくは脂質分析のために、液体窒素で凍結してから-80℃で保管した。
放射性化学物質
[1-14C]アセテートはアメリカンラジオラベルドケミカルス社(American Radiolabeled Chemicals, Inc)より購入し、[1-14C]アセチル-CoA、[1-14C]パルミトイル-CoA、および[1-14C]オレオイル-CoAをニューイングランドニュークリア(New England Nuclear)より購入した。比活性は50〜60Ci/モルであった。[1-14C]アセチル-CoAはまた、アセチル-CoA合成酵素を用いて[1-14C]アセテートからも調製した。
B.ニシキギ属の発生中種子の放射線標識
新鮮組織重量が200mgを超えない7〜10個の半割種子をインキュベーションした。各アッセイ法は10μCiの[1-14C]酢酸を含んだ。アッセイ法は25mMショ糖および0.4Mソルビトール浸透剤を含む。総容積1.0mlの25mM NaMES緩衝液(pH6.0)中で行った。指定された時間、28℃で、培地への酸素供給を補助するために激しく振とうしながらアッセイを行った。アッセイの停止は、脂質を抽出する前に組織を蒸留水で2回素早く洗浄して標識基質を除き、続いて直ちにイソプロパノール中、5分間90℃で加熱して酵素(および特に内因性ホスホリパーゼD活性)を不活性化して行った。不活性化し、ホモジナイズした種子組織から、HaraおよびRadin(1978)記載の方法に従いヘキサン-イソプロパノールで脂質を抽出した。ヘプタン可溶性[14C]脂質の一部を用いて液体シンチレーション測定により放射活性についてアッセイした。
C.植物酵素調製物およびDAGATアッセイ法
全ての作業は氷上または4℃で行った。凍結胚および胚乳組織を、0.3Mショ糖、10mM NaF、5mM MgCl2、2mMジチオスレイトール、1mM EDTAおよび40mM Hepes-NaOHを含む、2倍容積量の冷緩衝液(pH7.4)に加え、ホモジナイズし、2層のミラクロス(Miracloth)を通し濾過した。残留物を再度2倍量より多くの緩衝液でホモジナイズし、濾過した。濾液をまとめて無細胞ホモジネート(CFH)とした。CFHは凍結して、使用時まで-70℃に保存し、そして一般的には、12〜17mgタンパク質/mlであった。タンパク質濃度はバイオラッド(Bio-Rad)タンパク質アッセイ法を用い測定したが、このアッセイ法はBradford法(1976)に基づくものであり、ウシ血清アルブミンを標準物質として用いている。
標準的な(Ac)DAGATアッセイ法は総容積200μl中に[1-14C]アセチル-CoA(100μM、200,000d.p.m.)と140μlの均質化緩衝液を含んでいた。1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール(50μg、0.4mM)を1μlのエタノール溶液として加えた。アッセイ法は20μlのCFHを添加して開始した。反応は室温(25℃)にて15分間行い、温イソプロパノール(1ml)を添加して停止した。脂質はHaraおよびRadin(1978)記載の方法のようにヘキサンおよびイソプロパノールを用い抽出した。[14C]脂質残留物をヘキサンに溶解し、その一部を液体シンチレーション測定にかけ放射活性をアッセイした。標準的な長鎖DAGATアッセイ法は、20μMの[1-14C]パルミトイル-CoAおよび20〜40μlのCFHを含み、30分間実施した。その他の条件はアセチルDAGATアッセイ法と同様に行った。
D.脂質分析
ニシキギ属の種子発生の間に蓄積した全脂質量を決定するために、乾燥種子をHaraおよびRadin(1978)に従いヘキサン-イソプロパノールで抽出し、油の重量を測定した。個々の脂質クラスを決定するために、小分けした全ての脂質に内部標準物質、即ちトリヘプタデカノインおよびジペンタデカノイルホスファチジルコリンを添加した。脂質クラスは調製TLCによって単離した。全脂質および脂質クラスのトランスメチル化は、硫酸-メタノール-トルエン(5:95:2.5v/v/v)の中で1時間、80℃に加熱して行った。調製TLC後に回収した脂質クラスは、各分画に相対量のメチルノンアデカノエート(methyl nonadecanoate)を加えてシリカ上で直接トランスメチル化した。脂肪酸メチルエステルのGLC分析は、50m×0.25mmのCP-Sil88カラムを用い、150℃から220℃までのプログラムされた温度でFIDを使用して実施した。
ニシキギ属の各種組織におけるトリアシルグリセロールを分析するために、内部標準物質のトリヘプタデカノインおよびアセチルジペンタデカノインを組織脂質抽出物に加えた。次に調製TLCで長鎖トリアシルグリセロールおよびアセチルグリセリドを単離し、250℃から360℃にプログラムされた温度で、30m×0.25mmのDB-5htカラムで、FIDを用いて分析した。試料の一部をトランスメチル化し、全脂肪酸を定量した。
非標識脂質および標識脂質クラスのTLC分析を、K6シリカプレート(ワットマン(Whatman))を用いて行った。トリアシルグリセロール分析には80/20/1(v/v/v)ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸を使用した;ジアシルグリセロール分析には80/10/10/0.4(v/v/v/v)トルエン/エチルエーテル/酢酸エチル/酢酸を用いた;および極性脂質の分析には65/25/4(v/v/v)クロロホルム/メタノール/水、65/25/4(v/v/v)クロロホルム/メタノール/28%水酸化アンモニア水、および/または85/15/5/2(v/v/v/v)クロロホルム/メタノール/酢酸/水を用いた。トリアシルグリセロールの逆相分析は、KC18F TLCプレートを用い、3:1(v/v)アセトン:アセトニトリルまたは100%エタノールで展開して実施した。硝酸銀TLCでは15%(w/v)硝酸銀のアセトニトリル溶液に浸したシリカTLCプレートを使用し、-15℃にて3回トルエンで展開した。上記溶媒システムでTLCプレートを展開した後、バンドの放射活性をパッカードインスタントイメージャー(Pakard Instant Imager)で定量化した。
インビボ標識実験後にTLCプレートから回収された脂質クラスを分析するために、Ichiharaら(1996)のトランスメチル化法を用いた。この誘導化は水酸化ナトリウム/メタノール/ヘプタンを用いて室温で行われ、[14C]長鎖脂肪酸メチルエステルの定量的回収により行うことができ、[14C]アセチル基(主に酢酸メチルとして存在)は完全に消失する。トランスメチル化から回収された[14C]ヘプタン可溶性物質をTLCで分析すると、[14C]長鎖脂肪酸メチルエステルの寄与を測定することができ、それより元の[14C]脂質の中の[14C]長鎖脂肪酸量を決定することができる。標識酢酸メチルの完全な消失および長鎖脂肪酸メチルエステルの回収によるトランスメチル化法はさらに、単離した[14C]3-アセチル-1,2-長鎖ジアシル-sn-グリセロール中のアセチル基と長鎖アシル基の間の標識分布の定量にも利用される。
ニシキギ属の生化学
A.内因性脂質と種子の発生
コマユミの開花は5月下旬であるが、種子の成熟期の開始は8月まで遅れる。成熟する間に、種皮苞は濃いオレンジ色になる。種子の新鮮重量、乾燥重量および脂質蓄積の経時的変化を図1に示す。これらの蓄積は発生中の脂肪種子に典型的なパターンを示した。成熟時の種子の油含有量は43%であった。脂質蓄積の大部分は9月中に起こり、この期間に脂質約0.24mg/日/種子が蓄積した。この脂質は主に3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール(1,2-ジオレオイル-3-アセチル-sn-グリセロールの分子量は662)であること、そして成熟中期での種子の平均新鮮重量は約30mgであることから、3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール蓄積の平均速度は約500ナノモル/時間/gfwとなった。この蓄積速度は3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールのインビボ生合成に対する外因性アセテートの寄与度の判定に、プールサイズの推定に、およびインビトロでの酵素活性測定の基準として有用な比活性である。
種子当たりの脂肪酸量から測定した脂質クラスの蓄積の経時変化を図2に示す。主要脂質は3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールであり、成熟時の全脂質量の95%を占める。この数字はKleimanら(1967)が報告したコマユミに関するアセトグリセリドの98%に近いものである。全脂質量の1.9%に相当する少量のトリアシルグリセロールが3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールと共に蓄積した。1,2-ジアシルグリセロールは非常に小さい中性脂質プールであり、成熟時では総量の0.9%に相当する。全極性脂質および主要極性脂質であるホスファチジルコリンは成熟中期までに最高レベルに達する。TLCデータは、内因性アセチル-DAGまたはアセチル-PCを示さない。これらの脂質の存在から、3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール構築は、アセチル特異的トランスアシラーゼを介したこれら新規脂質から1,2-ジアシルグリセロールへの構築であると考えられている。
コマユミの各種組織を集め、適当な内部標準物質を用いた高温GCにより全脂肪酸含有量ならびに長鎖およびアセチルトリアシルグリセロール含有量を分析した。データを図3に示す。種子から切り取り分離した胚および胚乳中の脂質は主にAcTAGであり、胚中のTAGは少量のみであり、胚乳中のTAGは極めて少量であった。その他全ての組織において、全脂質量の中に占めるTAG(%)は少量または極少量であり、AcTAGは他の全ての組織で検出されなかった。従ってアセチルグリセリドの表現型は種子特異的であった。
B.[14C]アセテートおよびその他の基質でインビボ標識した分割種子由来の脂質生成物の特性分析
標識アセテートは発生中のコマユミ種子によるヘプタン可溶性生成物内に容易に取り込まれる。[14C]アセテートに由来する3種類の主要標識脂質は、3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール(最高36%)、ホスファチジルコリン(最高23%)および1,2-ジアシルグリセロール(最高19%)であった。トリアシルグリセロール(1〜4%)、ホスファチジルエタノールアミン(約2%)、ホスファチジルイノシトール(約2%)およびホスファチジル酸(1〜2%)も標識された。[14C]アセチル-極性脂質は検出されなかった。[14C]3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール分画を順相調製TLCで精製し、アセチル基と長鎖アシル基間での標識の分布を分析したところ、分子は脂肪アシル基に比べアセチル基で強く標識されていることが見いだされた。この標識分布は組織の年齢と用いたアセテートの濃度に依存しており、アセチル基に対する長鎖アシル基内の標識は1:10から2:1と様々であることができる。標識化3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールを膵臓リパーゼで消化し、得られた生成物を分析したところsn-1およびsn-2位置の脂肪酸はほぼ同一の放射比活性を有していた。
種子発生中の脂質の[14C]アセテート標識の変動
種子成熟期の全脂質および脂肪酸への、および各種脂質クラスへのアセテートの取り込みを図4に示す。初期成熟期に予想通りに急激な増加が見られ、続いて種子ごとの形態で活性が発現される後期成熟期で減少した。この増加および減少は、活性をグラム新鮮重量ベースで表したときにも見られるが、誘導期および減退期は顕著ではなかった。[14Cアセチル]3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールおよび[14C長鎖アシル]3-アセチル-1,2-ジアシル-2n-グリセロール内への取り込み速度は中期成熟期に最大になった。その大部分が胚乳に由来する標識DAGの蓄積も中期成熟期にピークに達し、6時間のアッセイ期間中[14C長鎖アシル]3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールと同様のレベルの標識を示す。中期成熟期の間(10〜60日)、個々の脂肪酸における標識分布は極めて一定に保たれる(13〜19% 16:0;7〜10% 18:0;62〜70% 18:1;および5〜11% 18:2)。後期成熟期の間(80〜100日)も、PCの標識化およびそれよりも弱いDAGの標識化は持続するが(図4)、内因性の極性脂質、ホスファチジルコリンおよびDAGの正味の蓄積量は、50〜60日目にピークとなった(図2)。この経時変化からmRNA調製物のための採取時期および酵素研究の期間が決定される。
脂質の[14C]アセテート標識の経時変化
全脂質および全長鎖脂肪酸への[14C]アセテートの取り込みの経時変化は、6時間直線的であり、遅滞期はなかった。3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールの[14Cアセチル]および[14C長鎖アシル]成分内の標識分布を測定したところ、両成分内の標識も経時的に直線的に増加した。これに対し[14C長鎖アシル]DAGの標識化は6時間までにプラトーとなり、[14C長鎖アシル]TAGの標識化は経時的に増加し、PC標識速度は徐々に減少した。これらの結果は、[14C長鎖アシル]3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールの直線的な標識化が[14C長鎖アシル]DAGおよびPCのプールに由来するものであるはずがないことを示す。なぜなら、これらのものが前駆体-生成物の動的関係を、そのような関係が存在するとしても、示さないからである。それらが前駆体のプールであれば、アセチルグリセリド生成物の合成速度は対数的に増加すると考えられる。最終的に[14C脂肪酸アシル]3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールのsn-1およびsn-2位置の両方に等しく標識脂肪酸が出現したことは、中間体の小さなプールが存在するモデルを支持している。
要約すると、観察されたインビボ標識の動態はアセチル-CoAを基質として利用するDAGATを介したアセチルグリセリドの合成に一致するものである。この酵素活性は以下ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)と呼ぶ。
種子発生中の脂質の[14C]プロピオネート標識:関連基質の例
14C]プロピオネートのインキュベーションよる標識生成物をTLCで分析した。全標識脂質の4.5%に相当するバンドが、主要バンドである3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールの直前に観察された。3-アセチルグリセリドに比べ3-プロピオニルグリセリドでは極性が僅かに低下することが予想される。逆相TLCは3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール分子種のバンドに比べて1個のメチレン基がオフセットされて、より親油性側でのバンド予想域内に約3.5%の標識があることを示す。このことは生成物の構造がプロピオニル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールであることと一致する。[14C]3-プロピオニル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール分画を順相調製TLCで精製し、鹸化およびフェンアシルエステル誘導化によりプロピオニルと長鎖アシル基間の標識分布を分析したところ、標準物質のフェンアシルプロピオネートに対応する標識バンドのみが観察された。最適濃度(5mM)の外因性アセテートは[14Cアセチル]3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール内への最大取り込み速度40ナノモル/時間/グラム新鮮重量を与えた。[14Cプロピオニル]3-プロピオニル-1,2-ジアシル-sn-グリセロールへのプロピオネートの最適濃度(10mM)は、最大取り込み速度約10ナノモル/時間/グラム新鮮重量に達した。従ってグリセリドのsn-3位置へのプロピオネートの取り込み最大速度はアセテートの場合の約25%であった。この差がアセテートおよびプロピオネートの取り込みおよび活性化の速度の差によるものか、またはsn-3アシルトランスフェラーゼによる利用速度の差によるものかは不明である。しかし実験は、EaDAGATによりアセテート以外の短鎖アシル基が提供されることを示す;即ちプロピオネートは「関連」基質基である。
C.ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性
トリアシルグリセロール生成物の特性分析
発生中のコマユミ胚乳と胚組織からの無細胞ホモジネート(CFH)を[14C]アセチル-CoAとインキュベーションし、標識脂質を得た。順相TLCによる分析から、内因性Ac-TAGと同時溶出する1本の主要な標識バンドが示された。この溶媒系では長鎖TAGはAc-TAGの前に溶出する。この標識バンドを回収してC18逆相TLCで分析すると、放射活性はAc-TAGの主要分子種、即ちC16/C18およびC18/C18に対応する太いバンドと一緒に移動した。特有の外因性ジアシルグリセロール、1,2-ジヘキサノイル-sn-グリセロールをアッセイに加えたところ、順相および逆相TLCシステムのいずれでも標準物質の合成3-アセチル-1,2-ジヘキサノインとコクロマトグラフィーされた新規バンドが現れた。標準物質の移動はTLCプレートから回収された分画をGC分析して確認した。アセチルジヘキサノインはシリカTLCではアセチルジオレオインに比べ僅かに極性の化合物として移動し、C18逆相TLCではより低疎水性化合物として移動すると予想される。これら生成物の分析は、アセチル-CoAおよび1,2-ジアシルグリセロールがDAGAT反応による3-アセチル-1,2-ジアシルグリセロールの合成のための基質であることを示す。
活性の最適化
アセチル-CoAを用いたDAGATアッセイ法を直線性の初期速度を得るように準備した。標識前にAcTAG生成物内に遅滞期が現れないことは、検出可能な[14C]アセチル-脂質中間体が形成されないことを示している。アッセイ法はまた、加えた酵素の量にも依存する。沸騰水で5分間加熱したCFHは活性を失う。
アセチル-CoAおよび外因性のジアシルグリセロールの濃度が活性に及ぼす影響についても検討した。アセチル-CoAは典型的な飽和動態を示し、反応速度は300μMを超えてプラトーに達した。Lineweaver-Burkeの逆数プロットよりアセチル-CoAについてKm=100μM、Vmax=2.5ナノモル/分/gfw(グラム新鮮重量)と算定された。この値は、上記3-アセチル-1,2-ジアシル-sn-グリセロール蓄積の平均速度、500ナノモル/時/gfwにほぼ匹敵するものであり、これは8ナノモル/分/gfwに相当する。この標準アッセイ法のアセチル-CoA濃度、20μMは、最大AcDAGAT活性に対し約10分の1の活性を与える。AcDAGAT活性は外因性のsn-1,2-ジオレインの添加により中程度でのみ増加する。0.1〜1.2mMの濃度範囲での平均増加率は30%であった。外因性ジアセチルグリセロールのキャリアとして使用したエタノールはアッセイ法での活性に影響はなく、せいぜい3%v/v程度である。
短鎖および中鎖ジアシルグリセロールはベニバナ抽出物を利用した(Lc)DAGATアッセイ法(IchiharaとNoda(1982)Phytochemistry 21:1895〜1901)に適したアシルアクセプターであると報告されていることから、AcDAGATにおける短鎖ジアシルグリセロール1,2-ジヘキサノインの影響について検討した。この基質はアセチル化されると、上記のようにシリカを使ったTLCで内因性のAcTAGから容易に分離される生成物を生じる。より高濃度(4〜8mM)の1,2-ジヘキサノインはアセチル受容体として内因性DAGを効率的に競合した。C16/C18およびC18/C18ジアシルグリセロール基質を用いた合成の最大速度はC6/C6の場合に近い。この事実はAcDAGATがジアシルグリセロール受容体の、極めて広範囲の鎖長のアシル鎖に対応できることを示している。
長鎖DAGAT活性を16:0-CoAを基質として用いてアッセイした。このアッセイ法を標準化したところ、100μlまでCFHに直線的に依存していること(1.5mgのタンパク質)、および少なくとも30分間は取り込み速度が直線的であることが示された。同一抽出物に同様の濃度のパルミトイル-CoAまたはアセチル-CoAを用いたDAGAT活性が比較された。アセチル-CoAを用いた時の活性はパルミトイル-CoAを用いた時の活性に比べ常に高く、約2倍であった。
DAGATクローニング
縮重プライマーを用いたRT-PCRによりDAGATに関するニシキギ属のcDNAを得て、続いて3'および5'RACEを行い3'および5'cDNA末端を確定した。完全長のcDNAクローンは3'および5'RACE生成物の配列に基づいたプライマーを利用したRT-PCRより得た。
A.一般的方法
発生中にニシキギ属の種子より総RNAをSchultzら(1994)(Plant Mol. Biol. Rep. 12:310〜316)またはChungら(1996)(Mol. Cells 6:108〜111)の方法に従い抽出した。以下記載の全てのPCR反応について、各プライマーのみを用いたPCR反応からなる適当な対照を加えた。大腸菌株HB101を構築物の選別に適当な抗生物質:アンピシリン100mg/ml(pYES2CT)、カナマイシン50mg/ml(pE1776)、リファンピシン50mg/ml(pBBPhas)が添加されたルリア(Luria)ブロス培地(Silhavyら、1984)にて37℃で増殖させた。BLASTアルゴリズムを用いデータベース検索を実施した。DNA配列および推定されたアミノ酸配列をベクター(Vector)NTIスイートのインフォマックス(InfoMax)を用い解析した。
B.縮重プライマーを用いたRT-PCR
シロイヌナズナ(Arabidopisis)ゲノムDAGAT配列(AC003058、推定DAGATまたはACAT)を用いてGenBankの非多重重複データベースを検索し、最もマッチした6配列をアラインメントした。複数の保存領域が同定され、これを基にして縮重プライマーを設計した。全てのプライマーの組合せについて、各ケースでの縮重は500未満である。2組のプライマーを設計し、まず、これを用いてDAGATについて部分長のシロイヌナズナESTを用いたパイロットPCR実験を行った。一組のプライマーが予想された250bpの断片を生じた。発生中のニシキギ属の種子より全RNAを単離、調製してオリゴdTプライマーを用いてcDNAを作製した。32P標識プライマーの組を用い、cDNAを鋳型としてPCRを行った。一組のプライマー(MP1とMP6)より予想通りの大きさのバンドを得た。この生成物をポリアクリルアミドゲルから精製し、非標識プライマー(MP1とMP3)を利用して再増幅し、ゲル精製し、PCR TopoTAクローニングベクター(インビトロゲン(Invirogen))にクローニングした。24個のクローンからプラスミド調製物を選別して挿入物のサイズを分析したところ、9個のクローンが正確な長さの挿入物を有していた。そのうちの7クローンについて両端部から配列を決定し(MSUシークエンシングファクトリーにて)、2クローン(JO752C-1および-2)は同一でありシロイヌナズナDAGATと高い配列類似性を有することが見出された。
C.3'および5'RACE
陽性クローンJO752C-1の配列を基にして、3'および5'RACE用にプライマーを設計した(ギブコ(Gibco)RACEキット)。3'RACE用キットのプロトコルに従い、修飾オリゴdTプライマーAP(キット付属品)を用いてニシキギ属の種子の全RNAからcDNAを調製した。プライマーAUAP(キット付属品)および遺伝子特異的プライマー(MP10、11)を用いてcDNAを鋳型として第一PCRを行い、続いてAUAPとネステッド遺伝子特異的プライマーMP16を用いた第二PCRを行った。5'RACEについては、ニシキギ属種子全RNAの新鮮調製物を調製し、DNAase処理し、カラム精製(キアゲン(Qiagen)を行った。ニシキギ属の種子の全RNAから遺伝子特異的プライマー(MP30)を用いてcDNAを調製した。cDNAの5'末端にCテールを付け、次にネステッド遺伝子特異的プライマー(MP15およびMP31)をAAPおよびAUAPプライマーと組合せて用いて断片を増幅した。幾つかの3'および5'RT-PCR断片を得て、クローンJO752C-1の挿入物をプローブとして用いて、サザンブロッティング分析を行い、3'および5'生成物両方についてハイブリダイゼーション陽性バンドを特定した。これら断片をゲルから精製し、PCR TopoTAクローニングベクターにクローン化した。正確な挿入物を持つベクターを有するクローンを遺伝子特異的プライマーMP10およびMP31を用いたコロニーPCRにより選別した。これら陽性クローンを配列分析したところ、DAGAT配列が単離されたことが示された。
D.ニシキギ属DAGAT全長cDNA
3'および5'RACE生成物の配列に基づいて、3'および5'cDNA末端(DAGFおよびDAGR)についてプライマーを設計した。
Figure 2004357709
まずニシキギ属の種子の全RNAから、オリゴdTプライマー(ギブコスーパースクリプトキット(Gibco Superscript Kit)を用いてcDNAを調製した。このcDNAを鋳型として用い、3'および5'プライマーおよび高信頼性ポリメラーゼ(共にロシュ(Roche)製)を用いて正確なサイズの完全長cDNAのPCR産物を得てから、直ぐに酵母ベクターpYES2CT(インビトロゲン(Invitrogen))のBamH1/XhoI部位にクローニングし、挿入物の配列を両方向から解析した。cDNAのヌクレオチド配列およびコードされているアミノ酸配列を図5および図6に示す。
ニシキギ属の種子組織内に同定されたDAGATのアミノ酸配列と他の植物由来のDAGATのアミノ酸配列との比較を図7に示す。
推定アミノ酸配列は、今までのところ植物について報告されている全てのDAGATタンパク質に高レベルの類似性を有している(同一性50.7%;類似性91%)。ニシキギ属のAcDAGATタンパク質部分が、他のDAGATタンパク質と最も異なっている領域は、N末端である(93アミノ酸)。その他の差が認められた領域としては、アミノ酸158〜200位および243〜268位が挙げられる。推定される膜貫通領域(約9箇所または10箇所あるうち)、推定されるアシル結合部位、および推定される活性部位は、Jakoら(2001)Plant Phys 126、861〜874)に記載されている。推定されるアシル結合部位および推定される活性部位は図7に下線を付して示している。
完全長ニシキギ属DAGATcDNAで形質転換した酵母の分析
ニシキギ属のDAGATcDNAを酵母ベクターpYES2CT内にクローニングし、酵母株のサッカロミセス・セレビシエ株INVSc1内で発現した。続く発現解析では2種類の対照を用いた。一つは空のベクターpYES2CTで形質転換した酵母であった。もう一つはpYES2CTにクローニングされたシロイヌナズナのDAGATcDNAで形質転換した酵母であった。3株全てを、ウラシルを含まない、ラフィノースおよびガラクトース(DAGAT発現を駆動するプロモーターの誘導のために)ならびに最終濃度5mMのアセテートが補充された最少SC培地で増殖させた。細胞の増殖を注意深くモニタリングし、定常期開始時に細胞を回収し、洗浄し、以下に記載のように使用するか、ペレットを-80℃で保存した。
A.酵母発現:脂質分析
方法
各構築物について3つの酵母コロニーを液体培地で増殖させて、脂質含有量について分析した。増殖期依存分析の場合、2%グルコースを補充したSC培地で各コロニーの3mlの少量培養を開始し、一晩増殖させた。この培養物を100倍に希釈して5mlとし、ODが1になるまで2%グルコース添加SC培地で一晩培養した。次にこの培養物を遠心分離した後、滅菌水で洗浄し、回収した細胞をガラクトースおよびラフィノースを補充した400mlのSC培地に懸濁した。開始ODは0.4であった。さらに増殖し対数期初期および中期、ならびに定常期初期、中期および後期に40mlずつ試料を経時的に採取した。これらの試料を洗浄し、沈殿させて、-4℃で保存し、前記脂質分析方法に記したように分析を行った。より大量の脂質を生成する場合、および脂質クラスを定量分析する場合には、pYES2CT、pYES2CTEaDagatまたはpYES2CTAtDagatのいずれかで形質転換したサッカロミセス・セレビシエの酵母培養物800mlを上記のように定常期開始まで増殖させて、処理した。
脂質は酵母細胞沈殿より、沈殿を温イソプロパノール中に懸濁し、次にガラスビーズで細胞を破壊して抽出した。脂質はHaraおよびRadin(1978)記載のようにしてヘキサン-イソプロパノールを用い抽出した。脂質抽出物には内部標準としてトリヘプタデカノインおよびアセチルジペンタデカノインが含まれた。脂質をアダム触媒(四酸化白金))および水素を用い、ヘキサンを溶媒にして水素化した。調製TLCを使って飽和長鎖トリアシルグリセロール(LcTAG)およびsn-3-アセチルトリアシルグリセロール(AcTAG)を分離し、続いて高温GCおよびGC-MS(DB-5htカラム)を用いて分析した。
結果
pYES2CTベクターを有する形質転換酵母株(陰性対照)の全脂質は予想通りのリン脂質、ジアシルグリセロール、ステロール、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロールおよびステロールエステルのパターンを示した。酵母細胞は大量のLcTAGを生成したが、それは定常期に最も明らかであった(Dahlqvistら、2000)。酵母ではアセチル-TAGの発生は報告されていない。TAG合成は増殖期の機能と報告されていることから、増殖させた形質転換酵母細胞の脂質分画を初期対数期から後期定常期まで経時的に試験した。実際には、内因性TAGの蓄積は定常期開始時に始まる。全脂質を空ベクター、pYES2EaDagatクローン(ニシキギ属のDAGAT)またはpYES2AtDagatクローン(シロイヌナズナのDAGAT)のいずれかを有する培養物から単離し、TLC(ヨード染色により不飽和脂質を視覚化した)および水素化および調製TLC後の高温GCにて分析した。
pYES2EaDagatクローン(ニシキギ属のDAGAT)は、酵母で発現した場合には、ベクター対照に比べLcTAG生成量が5倍増加した。この結果は、単離したEaDAGAT遺伝子が長鎖DAGATとして機能できることを示している。AcTAGはLcTAG量の0.26%存在していた。LcTAGおよびAcTAGの最大蓄積は、定常期開始時に観察された。AtDAGATクローンは、酵母で発現させた場合には、TAG生成量が20倍増加したことに加えて、少量のAcTAGも観察された。AcTAGはLcTAG量の0.09%存在した。従って酵母でシロイヌナズナのDAGATによりAcTAGがインビボ生成されることから、AcTAGの生成がニシキギ属特有のものではないことを示している。しかしEaDAGATはAtDAGATと比べた場合AcTAG合成傾向が高いことを示している;このAcTAG合成傾向の増加は、基質としてのアセチル-CoAに対する特異性が高いことを表している。酵母培養物へのアセテートの添加のTAGまたはAcTAG合成への影響は僅かのみであった。
下表のデータは上記分析データをまとめたものである。
Figure 2004357709
脂質量は、接種45時間目に800mlの培養物から集めた細胞である各試料に対して測定する。細胞密度はほぼ等しかった。
TLCで単離された水素化AcTAC濃縮分画をGCで分析した。3種類のAcTAG分子種、即ちC2C16C16(22.56分)、C2C16C18(24.41分)およびC2C18C18(26.17分)を同定した。反応時間は合成標準物質に対応した。酵母脂質は主に16:0、16:1、18:0および18:1脂肪酸を含んでいるため、これらの水素化種が期待される。GC分析のC16C18のピークを質量分析計で分析した。質量スペクトルの239、267、355および383にあった識別イオンの解釈より、構造物は明らかにアセチルパルミトイルステアロイルグリセロールであった。
B.酵母発現:インビトロ
方法
ミクロソーム分画を空ベクター、ニシキギ属DAGAT(EaDAGAT)ベクターおよびシロイヌナズナDAGAT(AtDAGAT)ベクターを発現している酵母から、Dahlqvistら(2000)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6487〜6492)の方法を改良したプロトコルを用い調製した。定常期初期まで増殖した酵母の培養液100mlを遠心分離(酵母沈殿物〜0.5g)し、酵母沈殿物を4mlの氷冷緩衝液(Tris pH7.9, 20mM、MgCl2 10mM、EDTA 1mM、グリセロール5%、DTT 1mM、硫酸アンモニウム0.3M)中に懸濁し、2mlのガラスビーズと一緒に5分間攪拌した。懸濁液を1,500gで15分間、6℃で遠心分離した。続いて上清を100,000gで1.5時間、6℃で遠心分離し、得られた沈殿物を100mMの冷リン酸カリウム液(pH7.2)に懸濁し、小分けして-80℃で保存した。14C標識アセチル-CoAまたはオレオイル-CoAを用いて(Ac)DAGATアッセイを行った。アッセイ法は100〜250nCiの標識基質とミクロソーム2〜5μl(約5〜15μgのタンパク質に相当)を50mMのリン酸カリウム緩衝液pH7.2に含み、全容積は100μlであった。反応は30℃で15分間実施した。温イソプロパノールで反応混合液を直ちに反応停止させて、実施例1に記載のようにして脂質を抽出し、TLC分析した。
結果
DAGATアッセイ法の標識生成物をTLCで分析した。基質に[14C]オレオイル-CoAを用いると、EaDAGATおよびAtDAGATの両方で対照(空のベクターpYES2)中に存在する量に比べて標識LcTAGの有意な増加が観察された。更に[14C]アセチルCoAとのインキュベーションでは、EaDAGAT遺伝子を発現する酵母由来のミクロソームの中にかなりの量の標識AcTAGが検出された。しかしAtDAGAT遺伝子を発現する酵母に由来するミクロソームでは極少量の標識AcTAGしか観察されず、対照の酵母では標識AcTAGは観察されなかった。EaDAGATを発現する酵母のミクロソームより生じた[14C]AcTAGは、非標識AcTAGを同時展開する順相TLCでまず同定した。この推定[14C]AcTAGバンドを回収してからC18逆相TLCで再分析しところ、以下のAcTAG分子種として同定できる3本のバンドが示された。最上バンド中16:1/16:1、16:0/16:1および16:1/18:1、中央のバンド中16:0/16:1および16:1/18:1、ならびに最下バンド中16:0/18:1、16:1/18:0および18:1/18:1。回収した推定[14C]AcTAGバンドを硝酸銀TLCによっても分析し、その結果、標識は予想どおりにモノエノイン酸およびジエノイン酸AcTAG標準物質と一緒に溶出したことが示された。これらTLC分析から、生成物が[14Cアセチル]AcTAGであることが確認される。
続く酵母ミクロソームを用いたアッセイ法から、50μMオレオイル-CoAまたは45μMアセチル-CoAのいずれかを基質として用いて、次の酵素活性を得た。
Figure 2004357709
活性はナノモル/分/mgミクロソームタンパクとして表している。
要約すると、酵母細胞中でのニシキギ属のDAGAT遺伝子の発現および生成脂質の分析から、遺伝子が長鎖DAGAT生成長鎖TAGとして機能できることが示された。AcTAGも生成され、対応するシロイヌナズナのDAGAT遺伝子に比べて比較的多く生成された。ミクロソーム膜分画に見いだされた酵素活性の分析から、ニシキギ属DAGATは本質的な、少なくとも長鎖DAGAT活性と同等であるアセチルトランスフェラーゼ活性を有しているが、このアセチルトランスフェラーゼ活性は酵母内に見いだされる内因性のDAGAT活性またはシロイヌナズナ遺伝子発現後に見られる活性に比べ、殆ど検出されていない(少なくとも30分の1に減少)。
シロインゲンマメ(Phaseolin)種子特異的プロモータ制御下での完全長ニシキギ属DAGATcDNAで形質転換したシロイヌナズナの分析
ニシキギ属DAGATcDNAを植物発現ベクターpBBVPha内のシロインゲンマメ種子特異的プロモータ部位にクローニングした。ニシキギ属DAGAT遺伝子をこのプロモータ制御下にシロイヌナズナ(コロンビア品種(var.Columbia))に発現させて、油含有量の変更効率および油のAcTAG含有量の増加効率を評価した。
A.ベクター構築およびシロイヌナズナ形質転換
クローンpYES2CTPCR5.1をDAGFEapBB(PstI部位を持つ)およびDAGREaYes(XhoI部位を持つ)プライマーを用いてPCRの鋳型として使用した。1.5kbpの断片をTopoPCR2.1にクローニングして(A-伸長後)、配列が正確であることを確認し、続いてベクターpBBVPhas(ダウアグロサイエンス(Dow Agro Sciences)のPstI/XhoI部位にクローニングした。このベクターはクローニングした遺伝子の発現に使用する種子特異的なシロインゲンマメプロモーターを持っている。アグロバクテリウム-ツメファシエンス株C58C1を適当な抗生物質:リファンピシン50mg/ml、ストレプトマイシン25mg/mlまたはゲンタマイシン数mg/mlを添加したYEP培地中、28℃で増殖した。構築物(pBBVPhasおよびpBBVPhas-EaDAGAT)をエレクトロポレーション法でアグロバクテリウム-ツメファシエンス株C58C1に移入し、DAGAT特異的プライマーを利用した全細胞PCRでDAGAT配列の有無を確認した。
6週齢のシロイヌナズナ(生態型コロンビア-2)を、pBBVPhasまたはpBBVPhas-EaDAGATのいずれかを有するアグロバクテリウム-ツメファシエンス株を使った真空-浸潤法で形質転換し、植物を成熟するまで生長させた。種(T1)を集め、最終濃度50mg/mlのBASTA(アグロエボ(AgrEvo))に浸した土壌中で発芽させてトランスジェニック植物(T1)を選別した。生き残った除草剤耐性植物を成熟するまで生長させ、結実させて乾燥した。複数の単一植物系統より種子(T2)を回収した。T2種子分析の対照は空ベクターpBBVPhasで形質転換したシロイヌナズナであった。
B.T2種子分析
シロイヌナズナ(生態型コロンビア-2)の成熟T2種子を、6〜8週齢の植物の長角果から集め、増殖チャンバー内(明期16時間、22℃、光度80〜100μE)で成長させた。pBBVPhas-EaDAGATで形質転換した23のT2植物系統個体より種子を集め、同時に11の対照系統(pBBVPhasで形質転換した)からも種子を集めた。油を定量的に抽出し、水素化した後に奇数鎖内部標準物を用いて高温GCでTAGおよびAcTAG分析を行った。AcTAG分画のGC分析では、TLCを使って事前濃縮し重複するピークを除く必要があった。分析変動対照として、pBBVPhas-EaDAGAT形質転換T2種子のバルク試料を8回反復して分析した。重量測定による油含有量は次の通りである。
野生型(コロンビア):35.3%
T2バルク:36.9%±0.3%
ベクター単独:幅=32.35〜39.1%、平均=35.55%
DAGAT-形質転換系統:幅 31.45〜38.15%、平均=35.45%
AcTAG含有量の測定結果(油中%)は次の通りである。
T2バルク:0.036%±0.005%
ベクター単独:幅=0.007〜0.014%、平均=0.01±0.002%
DAGAT-形質転換系統:幅0.017〜0.0072%、平均=0.036%
油含有量はDAGATの発現によって増加することはなく、これらの条件およびこの特定系統ではDAGAT遺伝子の発現が油含有量を制限しないことが示された。GCによるAcTAC分析はAcTAGが統計有意に増加し、野生型に比べ2〜7倍になることを示した。
C.形質転換植物の継代
AcTAG種子の表現型を強化するために、pBBVPhas-EaDAGAT形質転換系統をT2播種段階に於いてBASTA除草剤耐性に関してスクリーニングした。耐性:感受性比3:1と同定された系統は単一遺伝子座を含んでおり、継代に使用した。それらの種子の中で最良のAcTAG含有量を示した選別された単一遺伝子座系統を成熟するまで育て、T3成熟種子を収穫した。この系統は殺虫剤スクリーニングによりトランスジーンについてホモ接合体またはヘテロ接合体であることが特定された。ホモ接合体:ヘテロ接合体:野生型系統の比、約1:2:1が得られた。これらを上記同様にして全油含有量およびAcTAGを分析する。ホモ接合体系統はより高いアセチルグリセリド含有量を示すと考えられる。
その種子のAcTAG含有量が最も高いホモ接合体の単一遺伝子座T3系統を、トランスポゾン標識法、突然変異誘導法、siRNAまたはキメラ形成法で作製した内因性DAGAT遺伝子についてヌルであるシロイヌナズナ系統と交配する。F1種子を生育しF1植物を作製し、次にこれから自家受粉F2種子を作製する。F2系統は内因性DAGATヌル遺伝子および異種EaDAGATに関し二重ホモ接合体を含む。これらF2植物由来の系統は、上記同様にF3種子を油含有量およびAcTAG含有量についてスクリーニングして同定する。AcTAG含有量が最も高い植物はEaDAGAT遺伝子についてはホモ接合体であるが、機能的な内因性DAGAT遺伝子は持っていない。機能的内因性遺伝子またはポリペプチドが欠如することでこの遺伝子から競争相手がなくなり、その結果、DAGAT遺伝子をコードするアセチルトランスフェラーゼにより誘導されるアセチルグリセリド表現型がより強く発現できるようになる。トランスポゾンタギング法、突然変異誘導法、siRNAまたはキメラ形成法で作製した内因性DAGAT遺伝子に関するヌルを含むシロイヌナズナ系統を、更に上記実施例5のセクションAに記載のように、pBBVPhas-EaDAGAT構築物で形質転換してEaDAGAT遺伝子についてヘテロ接合体であるが、機能的な内因性DAGAT遺伝子を持たないT1植物を作製する。自家受粉によりEaDAGAT遺伝子についてホモ接合体であるが、機能的内因性DAGAT遺伝子を持たないT2植物を作製する。
新規トリグリセリドの合成
A.1,2-ジアシル-3-アセチン
実施例4に記載のニシキギ属のジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(EuDAGAT)で形質転換した酵母細胞はアセチル基を含む34個および36個の炭素原子(アシル炭素原子は全て算入するがグリセロール炭素原子は算入しない)を持つトリアシルグリセロール種が産生した。形質転換酵母のミクロソーム内のDAGATについて酵素アッセイしたところ、長鎖アシル-CoAおよびアセチル-CoAの両方の活性を示した。従って、この遺伝子の発現は、形質転換細胞内に特有のトリアシルグリセロールの生成をもたらしている。さらにDAGATはそのDAG基質という点では広い特異性を持ち、長鎖DAG(C34またはC36)およびジヘキサノイン(C12)による高い合成速度を持つことが示されており(上記)、従って広範囲の新規DAG基質に対応すると予想される。実際、実施例2のセクションCでは、アセチル-CoAと1,2-ジヘキサノインおよびニシキギ属種子の無細胞抽出物とのインキュベーションから新規の1,2-ジアシル-3-アセチンであるアセチルジヘキサノインが生成された。
B.その他の新規トリグリセリド
EaDAGAT遺伝子は新規トリアシルグリセロール構造物の生成を可能にする。例えば酵母発現実験では、トリアシルグリセロール種の一つであるアセチルジパルミトレインが生成された;このトリアシルグリセロール種はこれまで報告されたことはなく、従って新規なものである。EaDAGATを利用してアセチルジリシノレイン;アセチルジベルノリン、またはアセチルジカプリンなどの構造物を生成できると考えられる。これら構造物もこれまで報告されたことはなく、従って新規なものである。
このような化合物は、EaDAGAT酵素を、アセチル-CoAおよび適当なDAG基質(例えばジリシノレインまたはジベルノリン)と共に、AcTAG生成物の合成に好適な条件の下にインキュベーションしてインビトロで生成することができる。適当な条件例は、上記DAGATアッセイ法に記載の条件である。
このような化合物は、適当なDAG基質が存在している植物を、適当なDAG基質が合成された時および場所でEaDAGATが発現し、その結果AcTAGの合成が起こるように適当なプロモーター(例えば実施例5に記載のもの)で制御されているEaDAGATをコードする遺伝子で形質転換することよにり、インビボで生成することができる。
さらに、その生物がアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含み、アセチル-CoA関連基質が内因性に存在するかまたは外因性基質から生成することができる場合には、形質転換生物または天然生物もまた他の新規グリセリドを生成すると考えられる。例としては、実施例2のセクションBに記載のように、新規関連基質、プロピオネートを供給した時のニシキギ属の種子によるプロピオニルグリセリドの合成がある。
本明細書に記載の全ての刊行物および特許は、参照として本明細書に組み入れられる。本発明の記載の方法およびシステムの各種変更および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに当業者に対し明らかになると考えられる。本発明は特定の好ましい態様と結びつけて記載されているが、特許請求の範囲は係る特定態様に過度に限定されるものではないと解釈されるべきである。実際には、材料科学、化学および分子生物学または関連分野の当業者にとって明らかである、本発明の実施に関し記載された態様の各種変更は特許請求の範囲内であると解釈される。
発生中のコマユミ(Euonymus alata)種子における新鮮重量、乾燥重量および総脂質の蓄積を示す。 発生中のニシキギ種子(胚および胚乳)における1,2-ジアシル-3-アセチン(AcTAG)、通常のトリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)および極性脂質(PL)の蓄積を示す。他の脂質クラスと同じスケールでAcTAGを維持するために、値を10倍圧縮してある。 発生中のニシキギ種子(胚および胚乳)および他の組織における総脂質、1,2-ジアシル-3-アセチン(AcTAG)および通常のトリアシルグリセロール(TAG)の蓄積を示す。 種子発生の関数として半分にしたニシキギ種子による主なアシル脂質クラスへの[14C]アセテートの取り込みを示す。主な脂質クラスは長鎖トリアシルグリセロール(TAG)、1,2-ジアシル-3-アセチン(AcTAG)、1,2-ジアシルグリセロール(DAG)およびホスファチジル-コリン(PC)である。1,2-ジアシル-3-アセチンでは、各々を個別に測定できるように、sn-3アセチル基並びにsn-1およびsn-2標識脂肪酸への標識の取り込みを別々に示す。 コマユミ種子ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(EaDAGAT)cDNA(配列番号:1)のヌクレオチド配列を示す。 図5に示すコマユミ種子ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(EaDAGAT)cDNAのヌクレオチド配列によってコードされる推定アミノ酸配列(配列番号:2)を示す。 コマユミ(Euonymus alata)(E.a.)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(A.t.)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacuum)(N.t.)およびシソ(Perilla frutescens)(P.f.)のDAGAT遺伝子の推定アミノ酸配列のアライメントを示す。強調箇所は、4つの遺伝子のアライメントにおける少なくとも2つの遺伝子の同一のアミノ酸を示す。

Claims (13)

  1. ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする単離された核酸配列。
  2. ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼがニシキギ属(Euonymus)の植物に由来する、請求項1記載の核酸配列。
  3. 植物がコマユミ(Euonymus alata)植物である、請求項2記載の核酸配列。
  4. 配列番号:2をコードするか、または、配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有し且つジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする、請求項3記載の核酸配列。
  5. 配列番号:1を含む、請求項4記載の核酸配列。
  6. 異種プロモーターに機能的に結合されている、請求項1記載の核酸配列。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項記載の核酸配列を含むベクター。
  8. 請求項7記載のベクターを含む宿主細胞。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項記載の単離された核酸配列、ベクター、または宿主細胞を含む、植物または植物種子。
  10. 請求項9記載の植物または植物種子から得られる油。
  11. アセチルグリセリドまたはトリグリセリドを製造する際に使用される、請求項1〜10のいずれか一項記載の核酸、組成物、またはベクター。
  12. 1つのアセチル基および2つの長鎖アシル基を含むアセチルグリセリドを製造する方法であって、
    a)ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子で形質転換された宿主細胞を提供する工程、および
    b)アセチルグリセリドを産生するのに十分な条件下で該宿主細胞を増殖させる工程
    を含む方法。
  13. トリグリセリドを製造するための方法であって、
    提供された基質からトリグリセリドを産生するのに十分な条件下においてジグリセリドアセチルトランスフェラーゼ(AcDAGAT)にジアシルグリセロール基質を提供する工程を含み、ジアシルグリセロール基質の脂肪アシル鎖の少なくとも1つが、パルミトレイン酸、リシノレイン酸、ジベルノリック・アシッド(divernolic acid)およびカプリン酸からなる群より選択される方法。
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