JP2004359635A - 血液製剤および血液細胞の培養方法 - Google Patents

血液製剤および血液細胞の培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】末梢血を培養することによって得られた血小板、赤血球、白血球などの血液細胞から製造され、安価かつ大量に製造することができる血液製剤、および血液製剤の製造に使用される血液細胞の培養方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の細胞を含む細胞群を培養液に浸漬して培養し、増殖した細胞から製造される製剤であって、前記細胞群が、末梢血に含まれる血液成分から構成されており、前記細胞群における各血液成分の成分濃度が、末梢血中における各血液成分の成分濃度と同等である。細胞群に含まれる各血液成分の成分濃度が末梢血における各血液成分の成分濃度と同等であるから、使用する細胞の量を少なくすることができ、少量の血液細胞から、大量の血液製剤を効率よく製造することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液製剤および血液細胞の培養方法に関する。生体内において、造血機能は多分化能と自己複製能、旺盛な増殖能を併せ持つ造血幹細胞とそれを支える膨大な数の造血因子(サイトカイン)、微小環境などの微妙な調節によって営まれており、妊娠初期には卵黄嚢で始まった造血機能は、胎児の成長とともに、大動脈、中腎、肝臓へと移動し、妊娠後期には骨髄へと移動し、これ以後は、一生涯骨髄において造血が営まれる。骨髄に存在する造血幹細胞は、骨髄において20回以上の分裂を繰り返し、赤血球や白血球をはじめとする種々の細胞に分化し、赤血球や白血球等まで分化が進行すると、赤血球は約120 日、血小板は7日、好中球は血中に8時間留まった後、死滅する。これらの血液細胞の喪失を補うために、成人の体内では造血幹細胞から約2000億個の赤血球、700 億個の白血球、1000億個の血小板が毎日産生されており、体内の血液や血液細胞の量は一定に保たれている。
ところで、出血を伴う手術を受けた人や、血小板減少症の患者、重度の貧血の人などは、上述したような造血機能だけでは、不足した血液や血小板、赤血球等を補うことができない。このため、不足した血液や血液細胞を補うために、血液製剤が使用されており、この血液製剤は、医療現場では重要な医薬品となっている。
本発明は、かかる医療現場において重要な血液製剤、この血液製剤の原材料となる血液細胞の培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、血液製剤は献血された血液から、密度勾配遠心分離法等によって製造されてきたが、献血によって得られる血液は慢性的に不足しており、献血された血液の不足は、同時に、血液製剤の慢性的な不足や血液製剤の高額化という問題を招いている。この問題を解決する方法として、血液を人工的に製造すること、言い換えれば、造血幹細胞を生体外で培養して、血液細胞を製造することが試みられている。
【0003】
生体の骨髄において、造血幹細胞が種々の血球系の終末細胞に分化していく過程は種々のサイトカインや骨髄微小環境に依存しているため、生体外で造血幹細胞を培養し、種々の血液細胞を培養するための培養条件を規定するのは困難である。このため、従来は、造血幹細胞が増殖・分化しやすい培養条件、つまり骨髄の環境に近い条件を設定し、その培養条件下において、造血幹細胞から血液細胞を製造することが試みられている。
【0004】
上述したように、生体内では骨髄が造血機能を有しているため、従来から、骨髄細胞から採取された造血幹細胞等を培養することが行なわれている。
骨髄細胞から採取された造血幹細胞を培養して、血液細胞の芽球のコロニーを形成させることを試みた実験例がある(例えば非特許文献1)。この培養実験では、培養液に、インターリューキンー3(IL−3)、インターリューキンー6(IL−6)、インターリューキンー11(IL−11)、G−CSF,SCF等のサイトカインを投与して造血幹細胞を刺激し、その増殖を促している。しかも、正常な動物からは少量ずつしか骨髄細胞を摂取することができないため、培養に使用できる造血幹細胞の量が少ない。このため、あらかじめ5−fluorouracil(5FU) などの抗がん剤を投与して、造血幹細胞を誘導してから培養を行なっている。
骨髄細胞を培養して、赤芽球を培養した実験例もある。この培養実験では、正常人から摂取した骨髄細胞から、有核細胞だけを濃縮し、30%FBSを含むIscove’s modified Dulbecco’s medium(IMDM) と培養することにより赤芽球を集めている。また、培養された赤芽球から赤血球を培養した例もある。この培養実験では、赤芽球をインターリューキン3,SCF,10%FBSを含むIMDMで5日目まで培養し、その後貪食細胞をTebbiらの方法で除去して、再びカルボニルイオンで処理して、30%FBS、1%BSA,メルカプトエタノール、エリスロポエチン、SCF,トランスフェリンを含むIscove’s modified Dulbecco’s medium(IMDM) で培養されている(例えば非特許文献2〜4)。
【0005】
近年、骨髄血だけでなく、末梢血や臍帯血中に幹細胞が存在し、5−fluorouracil(5FU) などの作用によりこの多分化能を持つ幹細胞が増加することが知られている。
しかし、臍帯血に関する研究から、臍帯血に含まれる幹細胞から造血幹細胞や前駆細胞を産生するには、特別な条件や因子、例えばインターリューキンー6(IL−6)、インターリューキンー6レセプター(IL−6R)、SCFなどが必要であり、正常な状態、言い換えれば臍帯血中の幹細胞をそのまま培養しても、造血幹細胞や前駆細胞を産生せず、造血機能を発揮しないとされている(例えば非特許文献1)。
また、末梢血中に存在する幹細胞は、骨髄中の1/10〜1/100 程度であり、末梢血の血液成分のうち約0.01〜0.1 %程度である。このため、末梢血中の幹細胞をそのまま培養しても、造血機能は有していないと考えられている(例えば非特許文献5)。
したがって、末梢血や臍帯血に含まれる幹細胞から多分化能を有する造血幹細胞や前駆細胞を産生させるためには、骨髄の環境に近い条件で培養を行なうことが必要であると考えられており、様々な培養条件で末梢血や臍帯血に含まれる造血幹細胞や前駆細胞を培養する研究が行なわれている。
【0006】
臍帯血や末梢血に含まれる造血幹細胞や前駆細胞から赤芽球を培養した例として、以下に示すものがある。この実験例では、正常な出産後の母親の臍帯血と悪性リンパ腫および多発性骨髄腫の患者のG−CSFで幹細胞を誘導した末梢血の幹細胞をフィコールの密度勾配遠心分離法にて濃縮し、抗CD34+抗体にてCD34陽性細胞を集め、0.5〜1×105/mlの濃度で15%(牛胎仔血清+牛膵臓インシュリン+ヒトトランスフェリン)を含んだ培養液で培養している。この研究では、培養液に対してグルタミン、ヒトIL−3、IL−6,SCFが添加されており、赤芽球を培養する場合には、エリスロポエチンが培養液に添加されている(例えば非特許文献6〜11)。
また、別の研究では、正常な出産後の母親の臍帯血と安定時の末梢血からフィコール密度勾配遠心分離法にて単核細胞を集め、抗AC133+抗体を用いた磁場ビーズによるキットを用いてAC133陽性細胞と陰性細胞に分け、更にその細胞群の中から抗CD34+抗体を用いてCD34+陽性細胞を濃縮して培養しており、AC133陽性細胞はグラニュロサイト−マクロファージ・コロニーを形成し、陰性細胞は赤芽球コロニーを形成することが確認されている。この研究では、コロニーフォーミングセル・アッセイには、2%FBS を含むIscove’s modified Dulbecco’s medium(IMDM) と10倍量の30%FBSと1%BSA,グルタミン酸、エリスロポエチン,SCF,GM−CSF,インターリューキン3、G−CSFを含むメチルセルロース基礎半固形培養液が使用されており、実際の細胞の培養は、グルタミン酸、抗生物質、Flt3・リガンド、トロンボポエチンを含むステムプロ−34無血清培地で行われている(例えば非特許文献12)。
さらに、肺がんの治療の一環として末梢血中の末梢血幹細胞(PBPCs)を培養して、移植する治療も行なわれているが、この場合、移植治療を受ける患者に対して、まず、メチオニル・グラニュロサイトコロニー刺激因子(G−CSF)単独か、あるいはメチオニル・ステムセル因子(SCF)を注射して、造血幹細胞を誘導しておいて末梢血を採取し、この末梢血をGCSF,SCF,Pegylated megakaryocyte growth and development factor(PMGDF)を加えた無血清培地をガス透過バッグに入れて培養している。そして、培養された細胞群を移植すると、好中球や血小板が回復してくる(例えば非特許文献13)。
【0007】
【非特許文献1】
辻浩一郎、中畑龍俊.造血幹細胞移植−血液・腫瘍科−31:6−12、1995
【非特許文献2】
Wada H., Suda T., Miura Y., Kaiji E., Ikemoto S., Yawata Y. (1990) Expression of major blood group antigens on human erythroid cells in a two−phase liquid culture system. Blood 75: 505.
【非特許文献3】
Tebbi K., Rubin S., Cowan D.H., MacCulloch E.A. (1976) A comparison of granurlopoesis in culture from blood and marrow cells of nonleukemic individuals and patients with acute leukemia. Blood48: 235.
【非特許文献4】
Wada H., Kanzaki A., Yawata A., Inoue T., Kaku M., Takezono M., Sugishita T., Yamada O., Yawata Y. (1999) Erythropoesis−Late expression of red cell membrane protein 4.2 in normal human erythroid maturation with seven isoforms of the protein 4.2 gene. Experimental Hematology 27: 54−62.
【非特許文献5】
Tsuji,K., Lymphoma, S.D. Sudo, T., et al.: Enhancement of murine hematopoiesis by synergistic interactions between steel factor (ligand for c−Kit), interleukin−11, and other early acting factors in culture. Blood, 79:2855, 1992.
【非特許文献6】
J. M. Freyssinier, C. Lecoq−Lafon, S. Amsellem, F. Picard, R. Ducrocq, P. Mayeux, C. Lacombe and S. Fichelson (1999) Purification, amplification and characterization of a population of human erythroid progenitors. British Journal of Haematalogy, 106, 912−922.
【非特許文献7】
De Wolf, J.T.M., Muller, E.W., Hendriks, D.H., Halie, R.M.& Vellenga, E. (1994) Mast cell growth factor modulates CD38 antigen expression on erythroid progenitors from human bone marrow and peripheral blood associated with ongoing differentiation. Blood, 82, 59−64.
【非特許文献8】
Mrug, M., Stopka, T., Julian, B.A., Prchal, J.F. & Prchal J.T. (1997) Angiotensin II stimulates proliferation of normal early erythroid progenitors. Journal of Clinical Investigation, 100, 2310−2314.
【非特許文献9】
Cippolleschi, MG., D’Ipolito, G., Bernabei, P.A., Caporale, R., Nannini, R., Mariani, M., Fabbiani, M., Rossi−Ferrini, P., Olivotto, M.& Sbarba, P.D. (1997) Severe hypoxia enhances the formation of erythroid bursts from human cord blood cells and the maintenance of BFU−E in vitro. Experimental Hematology, 25, 1187−1194.
【非特許文献10】
Malik, P., Fisher,T.C., Barsky, L.L.W., Zeng., L., Izadi, P., Hiti, A.L., Weingerg, K.I., Coates, T.D., Meiselman, H.L. & Kohn, D.B. (1998) An in vitro model of human red blood cell production from hemotopoietic progenitor cells. Blood, 91, 2664−2671.
【非特許文献11】
Oda, A., Sawada, K., Druker, B.J., Ozaki, K., Takano, H., Koizumi, K., Fukuda, Y., Honda, M., Koike, T.,& Ikeda, Y.(1998) Erythropoietin induces tyrosine phosphorylation of Jak2, STAT5A, and STAT5B in primary cultured human erythroid precursors. Blood, 92, 443−451.
【非特許文献12】
Matsumoto K., Yasui K., Yamashita N., Horie Y., Yamada T., Tani Y., Shibata H., Nakano T. (2000) In vitro proliferation potential of AC133 psitive cells in peripheral blood. Stem Cells, 18: 196−203.
【非特許文献13】
Paquette R.L., Dergham S. T., Karpf E., Wang He−Jing, Slamon D. J., Souza L., Glaspy J. A. (2002) Culture conditions affect the ability of ex vivo expanded peripheral blood progenitor cells to accelerate hematopoietic recovery. Experimental Hematology, 30:374−380.
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、骨髄細胞や、末梢血や臍帯血に含まれる幹細胞を培養する実験が数多く行なわれており、成功を収めているが、これらの培養実験は、いずれも、骨髄や末梢血、臍帯血を濃縮し、造血幹細胞や前駆細胞の濃度を高め、しかも、骨髄中に存在する種々のサイトカインを培養液に添加した状態で培養されている。これは、造血幹細胞は、生体内における骨髄に近似した条件でなければ増殖・分化させることができないというのが血液細胞の培養や血液製剤を研究開発するものにとって一般的常識となっているからであり、また、骨髄に近似した条件以外で造血幹細胞や前駆細胞を培養して、各種の血液細胞を増殖させた実験例は見あたらない。
【0009】
確かに、造血幹細胞や前駆細胞を生体内における骨髄に近似した条件で培養すれば、各血液細胞を培養することができるが、血液製剤を製造するためには、106個/ml程度の血液細胞が必要である。この場合、原材料となる骨髄、臍帯血、末梢血等の新鮮な血液が数十リットルから数百リットル程度必要となるが、このような大量の新鮮血を確保することは困難である。しかも、濃縮した造血幹細胞等を培養するために、高価なサイトカインを大量に培養液に添加しなければならないので、安価で大量の血液製剤を製造することは到底不可能である。
【0010】
また、上記のごとく、血液製剤の製造には大量の新鮮血が必要であるため、自家血のみからなる血液製剤を製造することは困難であり、他家血のみからなる血液製剤を使用するのが一般的である。すると、血液型の違いによって生じる血液凝固等の副作用の可能性がある。
さらに、血小板製剤などは有効期限が短いため、大量の血液製剤を常備しておくことは困難であり、必要なときに必要な量を供給することが困難である。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑み、末梢血を培養することによって得られた血液細胞から製造され、安価かつ大量に製造することができる血液製剤、および血液製剤の製造に使用される血液細胞の培養方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の血液製剤は、複数の細胞を含む細胞群を培養液に浸漬して培養し、増殖した細胞から製造される製剤であって、前記細胞群が、末梢血に含まれる血液成分から構成されており、前記細胞群における各血液成分の成分濃度が、末梢血中における各血液成分の成分濃度と同等であることを特徴とする。
請求項2の血液製剤は、請求項1記載の発明において、前記血液成分が、末梢血に含まれる血液細胞であることを特徴とする。
請求項3の血液製剤は、請求項1記載の発明において、前記細胞群が、末梢血であることを特徴とする。
請求項4の血液製剤は、請求項1記載の発明において、前記血液製剤が、前記培養液から単離した血小板からなることを特徴とする。
請求項5の血液製剤は、請求項1記載の発明において、前記血液製剤が、前記培養液から単離した赤血球からなることを特徴とする。
請求項6の血液製剤は、請求項1記載の発明において、前記血液製剤が、前記培養液から単離した白血球からなることを特徴とする。
請求項7の血液細胞の培養方法は、血液細胞を培養する方法であって、末梢血に含まれる血液成分からなり、各血液成分の成分濃度が末梢血中の各血液成分の成分濃度と同等である細胞群を、培養液に浸漬し、該培養液の温度を所定の温度に保つことを特徴とする。
請求項8の血液細胞の培養方法は、請求項7記載の発明において、前記血液成分が、末梢血に含まれる血液細胞であることを特徴とする。
請求項9の血液細胞の培養方法は、請求項7記載の発明において、前記細胞群が、末梢血であることを特徴とする。
請求項10の血液細胞の培養方法は、請求項7記載の発明において、前記培養液に対して遠赤外線を照射して、該培養液を加温することを特徴とする。
請求項11の血液細胞の培養方法は、請求項7記載の発明において、前記培養液を、該培養液が収容される培養容器と、該培養容器外に設けられ、前記培養液の状態を調整する培養液調整手段との間を循環させることを特徴とする。
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の血液製剤は、末梢血中に存在する複数の血液細胞を含む細胞群を、生体外において培養することによって産生された、血小板、赤血球、白血球等の血液細胞を原材料として製造された血液製剤であって、培養開始時において、細胞群に含まれる各成分の成分濃度が、末梢血中における各成分の成分濃度と同等であること、および培養液に造血因子(サイトカイン)をほとんど添加しないことを特徴とするものである。
【0013】
まず、本願発明の内容を説明する前に、本願発明に到達した過程、および本願発明の基礎となる技術思想について説明する。
【0014】
前述したように、末梢血中の造血幹細胞や前駆細胞を培養するには、造血幹細胞や前駆細胞の濃縮と種々のサイトカインが必要であること、言い換えれば、生体外において造血幹細胞等に造血機能を発揮させるには、造血幹細胞等を生体内の骨髄と同等の環境にしなければならないということが、血液細胞の培養等の開発研究を行なう研究者の常識であった。そして、上記のごとき理由から、末梢血中の造血幹細胞や前駆細胞を培養することは非常に困難であり、本出願人も、骨髄由来の造血幹細胞や前駆細胞を培養することにより、血小板、赤血球、白血球を産生する方針で研究を進めてきた。
【0015】
しかるに、その研究の過程において、本出願人は、培養する細胞に遠赤外線を照射すれば細胞の増殖・分化が促進されることを発見したため(特願2003−104877参考)、種々のサイトカインを供給することなく、遠赤外線を照射することによって骨髄由来の造血幹細胞や前駆細胞を培養し、血小板、赤血球、白血球などの血液細胞を生産することを目指した。そして、この研究において、培養液に末梢血を添加し、末梢血が造血幹細胞や前駆細胞の培養に与える効果、および最適な添加割合も同時に確認した。
【0016】
すると、遠赤外線を照射して造血幹細胞や前駆細胞を培養したところ、種々のサイトカインを供給しなくても血小板、赤血球、白血球を産生することを確認したが、同時に、骨髄細胞由来の造血幹細胞や前駆細胞だけを培養した場合には、血液細胞がまったく産生されないことが発見された(実施例4参照)。具体的には、骨髄細胞由来の造血幹細胞や前駆細胞を、末梢血を添加した培養液で培養した場合には、末梢血の添加割合によって血液細胞の増加量は変化するものの、血小板、赤血球、白血球等が増加することが確認されたのに対し、末梢血を添加しない条件、つまり、骨髄細胞由来の造血幹細胞や前駆細胞だけを培養した場合には、これらの細胞は全く造血機能を発揮できないことを発見した。このことは、生体外においてサイトカインが少量しか存在しないような非常に過酷な条件下では、末梢血由来の造血幹細胞や前駆細胞が骨髄に代わって造血機能を発揮することが可能となったことを示している。
【0017】
この原因として、上記の培養では、本来骨髄腔にて静置された状態で造血機能を営んでいる骨髄細胞がばらばらにされ、しかも培養液中に流動するような状態で培養されているからかもしれない。しかし、末梢血由来の造血幹細胞や前駆細胞が骨髄に代わって造血機能を発揮することは、胎生期の造血の場所が卵黄嚢に始まり、大動脈、中腎、肝臓へと移動し、妊娠後期には骨髄へと移動していくことを可能にしていることからも推測できる。つまり、血管を流れる造血幹細胞や前駆細胞は特殊環境下では骨髄以外の種々の組織に到達して、その場所で造血機能を発揮する能力を保持しているものと考えられる。
【0018】
この発見は、従来からの末梢血由来の造血幹細胞や前駆細胞の能力に関する考え方を大きく変更しなければならないことを示している。つまり、造血機能は骨髄のみに局在し末梢血では決して造血機能は営まれないと信じられてきた。しかし、今回の発見は環境が変化すると骨髄での造血が一切行われないようになり、一方本来生体では決して造血機能を持たないと考えられて来た末梢血が環境の変化で血小板を始めその他の血液細胞を産生するようになることを示している。このような、造血機能の開始、停止を含めた調節機能が生体の中で、すでに備わっていて、外部の環境の変化に従って造血機能を調節している可能性がある。将来のこの造血機能の調節システムが明らかにされれば、現在治療方法が確定しない難病についても、有効な治療技術を提供することが可能となるかも知れない。また同時に、この発見を考慮することにより、末梢血から血小板、赤血球、白血球などの血液細胞を他家血、自家血を問わず、自由に産生することが可能となり、医療技術が大きく進歩し、低価格の安全な血液製剤が国内で産生でき、医療や産業の分野に大きく貢献するものと予想される。
【0019】
さて、以下では、本出願人が鋭意研究を重ねて発見した上記の技術思想に基づいて製造される本発明の血液製剤について説明する。
本発明の血液製剤は、末梢血中に存在する複数の血液細胞を含む細胞群を、生体外において培養することによって産生された、血小板、赤血球、白血球等の血液細胞を原材料として製造された血液製剤である。
【0020】
末梢血とは、血液細胞として、造血幹細胞に加えて、血小板や赤血球と好中球、好酸球、好塩基球などの顆粒白血球やリンパ球、単球などの無顆粒白血球等を含み、その他の成分として、アルブミンやグロブリン、フィブリノーゲン等の蛋白質や塩類、グルコース等を含むものである。そして、成人であれば、末梢血の45%を占める有形成分のうち、血小板2億個/ml、赤血球50億個/ml、白血球6百万個/ml、造血幹細胞200 から2000個/mlを含み、その他の成分として、末梢血の55%を占める血漿中にアルブミンやグロブリン、フィブリノーゲンなどの蛋白質7%、塩化ナトリウム0.6%、グルコース1mg/ml等を含んでいる。そして、培養液に浸漬される細胞群は、造血幹細胞だけでなく、末梢血に含まれる上記各成分を含み、かつ、細胞群中における各成分の成分濃度が、末梢血中の各成分の成分濃度と同じになるように調整されている。
つまり、本発明では、細胞群として、培養液に浸漬されていない状態、言い換えれば細胞群単独の状態では、細胞群における各成分の成分濃度は末梢血中の各成分の成分濃度と同じである。そして、細胞群を培養液に浸漬すると細胞群は希釈され、培養液全体に対する各血液細胞等の各種成分の濃度は末梢血と同等以下の量となる。したがって、従来のごとく細胞を濃縮して使用する場合のように大量の血液細胞等を使用しないから、細胞群を形成するときに必要とされる各種血液細胞やその他の成分を少なくすることができ、細胞群を製造するときに必要とされる新鮮血の量も少なくすることができる。
しかも、培養液に浸漬されていない状態では、細胞群中における各成分の成分濃度が、末梢血中の各成分の成分濃度と同等であるから、末梢血における各成分間の相互作用は維持されるから、血液細胞の増殖を活性化させることができる。
【0021】
とくに、細胞群として、生体から採取された末梢血をそのまま使用すれば、各成分の成分濃度を確実に末梢血中の成分濃度と同じにすることができ、しかも、人工的な成分分析では検出することができない微量な成分までもほぼ一致させることができるから、より確実に血液細胞を増殖させることができる。
なお、細胞群として、栄養素の添加や微量サイトカインの添加等の必要最低限の処理を行なった末梢血を使用してもよい。この場合でも、従来の培養条件に比べて、使用する栄養素やサイトカインの量を、極微量に抑えることができるし、その種類も少なくすることができる。
【0022】
なお、細胞群として、血液細胞のみを含むものや、血液細胞と一部の成分を含むものを使用してもよい。この場合にでも、細胞群中における各血液細胞の相対的な割合や、細胞群中における血液細胞と一部の成分の相対的な割合を、末梢血中における血液細胞等の相対的な割合と同等にしておけば、確実に血液細胞を増殖させることができる。
【0023】
また、培養に使用される培養液は、その主成分がリン酸緩衝液であって、糖やアミノ酸を含むもの、例えば、MINIMUM ESSENTIALMEDIUM EAGLE(SIGMA)(1%Antibiotic−Antimycotic(GIBCO,N.Y.,USA)入)や、DULBECCO’S MODIFIED NUTRIENT MIXTURE F−12 HAM(SIGMA,Irvine KA12,UK) (1%Antibiotic−Antimycotic(GIBCO,N.Y.,USA)入)等であるが、特に限定はない。
【0024】
つぎに、本発明の血液製剤の製造方法を説明するが、まず、細胞群の培養に使用される培養装置を簡単に説明する。
図1は細胞群を培養するための培養装置1の概略説明図である。図1の培養装置1は、特願2002−148152に記載された培養装置と同様の基本構成を有するものであり、培養液を溜めるための培養槽2と、この培養槽2内の培養液を外部循環させる循環手段10と、培養液が外部循環している間に培養液調整手段20を備えているものである。そして、この培養装置1の培養液調整手段20は、培養液に含まれる老廃物等を除去する透析部21と、培養液のガス濃度を調整するガス濃度調整手段22と、培養液に細胞の培養に必要な栄養分を供給する栄養分補給部23を備えているから、培養槽2内において細胞を培養しながら循環手段10によって培養液を外部循環させることによって、培養槽2内の培養液を、細胞の培養に適した状態に保持しておくことができる。
また、前記培養槽2には、培養液の温度を調整する温度制御手段71が設けられており、この温度制御手段71によって培養液の温度、言い換えれば、培養される細胞の温度を一定に保つことができる。とくに、温度制御手段71として、遠赤外線を培養液および細胞群に照射することができる遠赤外線ヒータ等を使用すれば、細胞の温度調整を容易かつ確実に行なうことができるし、遠赤外線による細胞の増殖や分化を促進させることができるから、細胞の培養効率を向上させることができる。
【0025】
さて、上記の培養装置1を使用して細胞群を培養する方法を説明する。
まず、末梢血に含まれる成分を末梢血と同等の成分濃度に調整したもの、培養または生体から採取された末梢血を細胞群として準備し、この細胞群を、滅菌した培養装置1の培養槽2の中にピペット等を用いて供給する。
その後、培養槽2が満杯になるまで培養液を供給すると、細胞群と培養液の割合が、例えば1:5〜1:50となる。このとき供給される培養液は、上述したような市販の培養液などであり、特別な物質、例えばサイトカイン等は全く添加しないか、従来に比べて微量含まれているのみである。
【0026】
ついで、循環手段10を作動させれば、培養液が外部循環され、培養液調整手段20によって培養液の状態が細胞群の培養に適した状態に保たれ、温度制御手段71によって培養液の温度も37度に保たれる。すると、細胞群に含まれる造血幹細胞の増殖・分化が促進され、培養液中に存在する血小板、赤血球、白血球、造血幹細胞等の血液細胞や、血液凝固因子や抗体等の成分を増加させることができる。
そして、培養液調整手段20によって培養液の状態が細胞群の培養に適した状態に保たれ、かつ、遠赤外線を照射することによって造血幹細胞の分化・増殖を促進させることができる。つまり、細胞群の培養時間を短縮することができ、しかも、培養期間を長くすることも可能になる。すると、血液成分を短期間で所望の量まで増加させることも、血液成分を大量に製造することも可能になる。
【0027】
培養液中の血液成分を所望の量まで培養させたのち、培養液から、密度勾配遠心分離法等によって分離すれば、所望の血液細胞や各種成分から血液製剤を製造することができる。例えば、分離した血液細胞のうち、赤血球を使用すれば赤血球製剤を製造することができるし、血小板を使用すれば血小板製剤を製造することができる。その他にも、白血球を使用すれば白血球製剤(リンパ球製剤、好中球製剤、好酸球製剤、好塩基球製剤、単球製剤なども含む)、また赤血球や白血球、血小板等の芽球製剤や造血幹細胞製剤も製造することができる。さらに、血液凝固因子や抗体製剤も製造することができる。
そして、上述したようなすべての血液成分を使用すれば、全血製剤も製造することができる。
【0028】
また、少量の血液細胞や、濃縮等の処理を行なっていない末梢血からなる細胞群を培養しても、血液成分を短期間で所望の量まで増加させることができるから、少量の他家血あるいは自家血の血液細胞を培養して、必要なときに、必要な量だけ血液製剤を製造し供給することも可能になる。とくに、有効期限が短い血小板製剤であっても、必要なときに必要な量だけ製造することができるから、確実に血小板減少症の患者等に投与することができ、好適である。
そして、少量の自家血から血液製剤を製造することができるから、自家血から製造された血液製剤を投与すれば、血液型の違いによって生じる血液凝固等の副作用を確実に防ぐことができる。
【0029】
なお、培養する装置は上記の培養装置に限られず、培養液を収容したビーカーやローラーボトル等を、インキュベータに設置して培養させてもよい。
とくに、特願2003−104877記載のインキュベータのごとく、培養空間内の温度を調整する手段として、培養液に遠赤外線を照射することができる、例えば遠赤外線ヒータ等を備えたものを使用すれば、細胞の温度調整を容易かつ確実に行なうことができるし、遠赤外線による細胞の増殖や分化を促進させることができるから、細胞の培養効率を向上させることができる。
【0030】
【実施例】
以下に、本発明の血液細胞の培養方法によって末梢血を培養した実施例を説明する。
【0031】
(実施例1)
以下に、培養装置(特願2002−148152参照)を使用して末梢血を培養し、血小板産生を確認した例を示す。
なお、培養装置は、培養槽2(1L)、循環手段10、培養液調整手段20、温度制御手段71、細胞の培養槽2からの漏出防止する電磁石43、培養装置内の培養液を交換するための培養液供給手段30,40等を備えており、全ての手段を連結した状態で、オートクレーブ内に収容できるように構成した(図1参照)。また、温度制御手段には、遠赤外線ヒータまたはニクロム線ヒータを使用している。
培養条件は、培養液の温度が37℃であり、培養液調整手段において培養液に各気体成分の分圧が空気が95%、二酸化炭素が5%の気体を供給した。
【0032】
(1)まず、培養装置から、その上部構造であるpHメーターや溶存酸素計の電気系統部分を取り外し、培養液供給手段等における培養液やガスを注入排出するチューブをアルミ箔で覆い、オートクレーブ(株式会社トミー精工,東京)に収容して、121 度、20分間滅菌する。
(2)ついで、心臓から摘出されたウサギ末梢血(約73ml)を、滅菌した培養槽の中にピペットを用いてゆっくりと加る。
(3)滅菌された培養装置に上部構造等を取り付け、培養液{MEM(SIGMA,Irvine KA12,UK)1%Antibiotic−Antimycotic(GIBCO,N.Y.,USA) 含む}が満杯になるまで自動で注入し、環流しながら培養を行い、培養0、2、3、4、5、6、7、8、9日後にサンプリングを行う。
(4)そして、培養された試料に含まれる血小板の数を、血球数自動計測装置(Sysmex K−4500,神戸)を用いて、3回ずつ測定した。
【0033】
図2に示すように、培養液中に含まれる血小板数は、培養開始から2日間で約10倍まで増加し、7日目には、約30倍まで増加していることが確認できる。つまり、末梢血を市販されている培養液で培養しても、非常に短時間で大量の血小板を産生することができるのである。そして、この産生された血小板を密度勾配遠心分離法などで、分離回収し、製剤化すれば血小板製剤となり、外科手術の輸血剤や血小板減少症などの治療薬を製造することができる。
しかも、少量の末梢血から、短時間で大量の血小板を産生させることができるから、他家血からだけでなく、患者自身の自家血を培養して血小板を産生させることができ、自家移植治療することも可能となる。
【0034】
(実施例2)
以下に、温度制御手段として遠赤外線ヒータを有するインキュベータ(特願2003−104877参照)を使用して末梢血を培養し、血球の産生を確認した例を示す。
なお、比較例として、温度制御手段としてニクロム線ヒータを有するインキュベータを使用して、末梢血を培養している。
なお、培養条件は、いずれのインキュベータにおいても同じ条件とし、培養空間の気体が、その温度が37℃、湿度が100%、気体成分の体積割合が、空気が95%、二酸化炭素が5%とした。
【0035】
(1)まず、ラット(クローズドコロニー、SDラット、10週齢)の血液8mLに培養液(MINIMUM ESSENTIALMEDIUM EAGLE(SIGMA),1%Antibiotic−Antimycotic(GIBCO,N.Y.,USA) 入)32mLを加えて、よくサスペンジョンする。
(2)ついで、24穴プレート(Nunk,Denmark)を2枚用意し、血液が混合された培養液を1mLずつ3箇所にまき、0日目、4日目、7日目、10日目、14日目、計5日分のサンプリング溶液とする。
(3)ニクロム線CO2 インキュベーター(NAPCO,IL,USAの製品を改良)に1枚、遠赤外線CO2 インキュベーターに1枚入れて放置した。
(4)0,4,7,10,14日後に各試料をピペットでよく混ぜ、エッペンドルフチューブ(eppendorf,UK)に移した。
(5)そして、培養された試料に含まれる血球の数を、各試料を血球数自動計数装置(Sysmex K−4500,神戸)を用いて、各試料を3回ずつ測定した。
【0036】
図3および図4に示すように、ラット抹消血をCO2 インキュベータで培養すれば、温度制御手段に係わらず、赤血球(RGB)以外の各血球が増加していることが確認できる。このことから、末梢血を市販されている培養液で培養することによって、赤血球以外の各血球を産生することができると考えられる。
とくに、遠赤外線を照射して培養した場合、14日間の培養で、ヘモグロビン(HGB)であれば約1.7倍になり、白血球(WBC)であれば約7.5倍、血小板であれば約8倍に増加している。とくに、白血球は、遠赤外線を照射した場合における白血球の産生の促進率は大きく、ニクロム線を使用した場合の約3倍半に増加している。したがって、遠赤外線を照射しながら末梢血を培養すれば、各血球の産生を促進することができることが確認できる。
そして、赤血球は、温度制御手段としてニクロム線を使用した場合にはその数が減少傾向にあるのに対し、温度制御手段としてを遠赤外線ヒータを使用した場合、培養期間が長くなるにつれ、赤血球の数が増加する傾向にあることが確認できる。したがって、遠赤外線を照射しながら末梢血を培養すれば、末梢血から赤血球を産生させることができると考えられる。
そして、この産生された各血球を密度勾配遠心分離法などで、分離回収し、製剤化すれば、外科手術などに使用される治療薬を製造することができる。
しかも、少量の末梢血から、短時間で大量の赤血球や白血球、血小板等を産生させることができるから、他家血からだけでなく、患者自身の自家血を培養して赤血球や白血球、血小板等を産生させることができ、自家移植治療することも可能となる。
なお、上記の結果から、赤血球については、遠赤外線を照射しても、培養液だけでは所望の量を産生するのに長期間を要する可能性があるため、赤血球を短期間で大量に産生させなければならない場合には、極少量のエリスロポエチン等のサイトカインを添加して、赤血球の産生効率を高めることが有効かつ実用的であると考える。なお、この場合であっても、添加するサイトカインの量は、従来の培養実験に比べて非常に微量でよく、また、従来の培養実験が複数のサイトカインを使用するのに対し、1または2種類程度であればよいと考える。
【0037】
(実施例3)
以下に、培養装置(特願2002−148152参照)を使用して末梢血と造血幹細胞を混合培養し、血小板産生を確認した例を示す。
なお、培養装置は、培養槽2(1L)、循環手段10、培養液調整手段20、温度制御手段71、細胞の培養槽2からの漏出防止する電磁石43、培養装置内の培養液を交換するための培養液供給手段30,40等を備えており、全ての手段を連結した状態で、オートクレーブ内に収容できるように構成した(図1参照)。また、温度制御手段には、遠赤外線ヒータまたはニクロム線ヒータを使用している。
培養条件は、培養液の温度が37℃であり、培養液調整手段において培養液に各気体成分の分圧が空気が95%、二酸化炭素が5%の気体を供給した。
また、比較例として、ディッシュ内で造血幹細胞と末梢血を混合培養し血小板を製造した場合と比較した。
なお、血小板の製造量の比較は、培養液の総量に対する血小板の数を比較した。
【0038】
(1)まず、培養装置から、その上部構造であるpHメーターや溶存酸素計の電気系統部分を取り外し、培養液供給手段等における培養液やガスを注入排出するチューブをアルミ箔で覆い、オートクレーブ(株式会社トミー精工,東京)に収容して、121 度、20分間滅菌する。
(2)ついで、ウサギ大腿骨(2本)と末梢血(約65ml)を摘出し、大腿骨は70%エタノールで3回、10%Antibiotic−Antimycotic(GIBCO,N.Y.,USA) で3回ずつ消毒した。
(4)100mm ディッシュに25mlの培養液(1%Antibiotic−Antimycotic 含むMEM)を入れた。
(5)大腿骨の両端を骨鉗子で切断し、切断面に培養液(1%Antibiotic−Antimycotic 含むMEM)の入った注射針を刺し、骨髄を100mm ディッシュに押し出した。
(6)注射針で骨髄をよく懸濁したら、20mlの骨髄懸濁液を5倍量のコラーゲンゲルとよく混合し滅菌した培養槽の中央のチタンメッシュにのせた。
(7)心臓採血した血液を培養槽にゆっくりと流し入れた。
(8)培養槽内に、満タンになるまで培養液を自動で注入し、循環装置によって環流しながら培養を行い、1週間後に細胞を含んだ培養液を回収し、フィコールを用いた密度勾配遠心法にて血小板分画を得た。
(9)試料を血球数自動計測装置(Sysmex K−4500,神戸)を用いて、3回ずつ血球数を測定した。
(10)対照培養を行うため、5mlの骨髄懸濁液と血液6mlと培養液19mlをよく混合し24穴プレート(Nunk,Denmark)に1mlずつ加え、CO2インキュベーターで培養し培養装置と同様に血球数の測定を行った。
【0039】
図5に示すように、培養装置では、ディシュいずれにおいても、血小板の産生が見られたが、培養装置で培養した場合、ディシュで培養する場合に比べて、遙かに大量の血小板を生成することができることが確認できる。
そして、産生された血小板を密度勾配遠心分離法などで、分離回収し、製剤化すれば血小板製剤となり、外科手術の輸血剤や血小板減少症などの治療薬を製造することができる。
とくに、培養装置で培養すれば、少量の末梢血から、短時間で大量の血小板を産生させることができるから、他家血からだけでなく、患者自身の自家血を培養して血小板を産生させることができ、自家移植治療することも可能となる。
【0040】
(実施例4)
骨髄細胞を末梢血を含む培養液中で培養し、末梢血の混合割合が、各血液細胞の増殖状態に与える影響を確認した。培養は、遠赤外線ヒータを備えたインキュベータ(以下では赤外線CO2インキュベータという)を使用した。
また、培養液に添加する末梢血の量は、全培養液に対する末梢血の質量割合を、0〜30%の間で変化させた。
なお、培養条件は、いずれのインキュベータにおいても同じ条件とし、培養空間の気体が、その温度が37℃、湿度が100%、気体成分の体積割合が、空気が95%、二酸化炭素が5%とした。また、培養液には、体積割合で1%の抗生物質(GIBCO,N.Y.,USA)と50%の血清(FETAL BOVINE SERUM(SGMA,Irvine KA12,UK ))を含有するMEM(SIGMA,Irvine KA12,UK)を使用した。
【0041】
(1)ウサギ(Japan White,6〜7週齢,北山ラベス株式会社,伊那JAPAN)の骨髄を培養液(DULBECCO’S MODIFIED NUTRIENT MIXTURE F−12 HAM(SIGMA,Irvine KA12,UK) 、1%Antibiotic−Antimycotic(GIBCO,N.Y.,USA)入)20mlの中で懸濁した。
(2)懸濁液を、50mlチューブ(Falcon,NJ,USA) 、12本へ均等に分けた。
(3)遠心分離機(SAKUMA R300S−11,東京)(1000rpm,5min)にかけ、骨髄細胞を沈降させ、上清のみを吸い取った。
(4)以下に示すような血液濃度となるように、血液と培養液を混ぜて60mlの溶液を調整し、遠心操作で沈降させた骨髄細胞に加えた。
【表1】
Figure 2004359635
(5)24穴プレート(Nunk,Denmark)を2枚ずつ(計14枚)用意し、1mlずつ3ヶ所にまき、0日目、1日目、3日目、5日目、7日目、10日目、14日目、計7日分の試料とした。(※誤差をなくすため1日に3ヶ所を測定し平均をとった。)
(6)赤外線CO2インキュベータ(NAPCO,IL,USAの製品を改良)に1枚、ニクロム線CO2インキュベータ(NAPCO,IL,USA)に1枚入れて放置し、0、1、3、5、7、10、14日後に各試料をピペットでよく混ぜ、エッペンドルフチューブ(eppendorf,UK)に移した。
(7)各試料を血球数自動計測装置(Sysmex K−4500,神戸)を用いて、3回ずつ白血球と骨髄細胞数、および血小板数を測定した。
【0042】
図6(A)に示すように、ウサギ骨髄と末梢血の両方を含む培養液をCO2インキュベーターで培養した場合には、7日以降に白血球の産生が見られたのに対し、骨髄を含まない抹消血のみの対照群では、白血球がほとんど見られていない。このことから、白血球の産生はほとんど末梢血から起こることと考えられる。
そして、この産生された白血球を密度勾配遠心分離法などで、分離回収し、製剤化すれば、外科手術の輸血剤や免疫機能低下症などに使用される治療薬を製造することができる。
しかも、少量の末梢血から、短時間で大量の白血球を産生させることができるから、他家血からだけでなく、患者自身の自家血を培養して白血球を産生させることができ、自家移植治療することも可能となる。
【0043】
また、図6(B)に示すように、ウサギ骨髄と末梢血の両方を含む培養液をCO2インキュベーターで培養した場合には、7日以降に血小板の産生が見られたのに対し、末梢血を含まない骨髄のみの対照群では、血小板がほとんど見られていない。このことから、血小板の産生はほとんど末梢血から起こることと考えられる。
そして、この産生された血小板を密度勾配遠心分離法などで、分離回収し、製剤化すれば、外科手術などに使用される治療薬を製造することができる。
しかも、少量の末梢血から、短時間で大量の血小板を産生させることができるから、他家血からだけでなく、患者自身の自家血を培養して血小板を産生させることができ、自家移植治療することも可能となる。
【0044】
請求項1の発明によれば、細胞群に含まれる各血液成分の成分濃度が末梢血における各血液成分の成分濃度と同等であるから、使用する細胞の量を少なくすることができ、しかも、血液細胞の増殖を活性化させることができる。そして、増殖した血液細胞を、密度勾配遠心分離法等によって分離すれば、所望の血液細胞を含む血液製剤を製造することができる。つまり、少量の血液細胞から、大量の血液製剤を効率よく製造することができる。また、少量の血液細胞からでも大量の血液製剤を製造することができるから、少量の他家血あるいは自家血の血液細胞を培養して、必要なときに、必要な量だけ血液製剤を製造し供給することができる。
請求項2の発明によれば、細胞群が末梢血に含まれる血液細胞から構成されており、しかも、各血液細胞の成分濃度が末梢血における各血液細胞の成分濃度と同等であるから、血液細胞の増殖を活性化させることができる。そして、増殖した血液細胞を、密度勾配遠心分離法等によって分離すれば、所望の血液細胞を含む血液製剤を製造することができる。
請求項3の発明によれば、細胞群として、末梢血そのものを使用するから、より確実に血液細胞を増殖させることができる。そして、少量の末梢血から血液製剤を製造し供給することができるから、輸血用の血液や血液製剤を自家血のみから製造することができる。よって、輸血した際に副作用が無く、常に活発な状態の血液細胞から構成された血液製剤を供給することができる。
請求項4の発明によれば、輸血した際に副作用が無く、常に活発な状態の血小板から構成された血小板製剤を供給することができる。
請求項5の発明によれば、輸血した際に副作用が無く、常に活発な状態の赤血球から構成された赤血球製剤を供給することができる。
請求項6の発明によれば、輸血した際に副作用が無く、常に活発な状態の白血球から構成された白血球製剤を供給することができる。
請求項7の発明によれば、培養液が所定の温度に保たれているから、細胞の培養を安定して行なうことができる。また、細胞群に含まれる各血液成分の成分濃度が末梢血における各血液成分の成分濃度と同等であるから、使用する細胞の量を少なくすることができ、しかも、血液細胞の増殖を活性化させることができる。よって、少量の血液細胞から、大量の血液製剤を効率よく製造することができる。
請求項8の発明によれば、細胞群として、末梢血に含まれる各血液成分を使用するから、より確実に血液細胞を増殖させることができる。
請求項9の発明によれば、細胞群として、末梢血そのものを使用するから、より確実に血液細胞を増殖させることができる。
請求項10の発明によれば、培養液だけでなく、培養液中の細胞も遠赤外線によって加温することができるから、細胞の温度調整を容易かつ確実に行なうことができる。しかも、遠赤外線による細胞の増殖や分化を促進させることができるから、細胞の培養効率を向上させることができる。
請求項11の発明によれば、培養容器外を循環している間に、培養液の状態を調整することができるから、培養容器内の培養液の状態を、培養容器内の細胞に最適な条件に保つことができ、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の培養方法によって末梢血を培養する培養装置1の概略説明図である。
【図2】末梢血を培養した場合における、血小板の増減を示した図である。
【図3】末梢血を培養した場合における、赤血球およびヘモグロビンの細胞数の増減を示した図である。
【図4】(A)末梢血を培養した場合における、白血球の細胞数の増減を示した図であり、(B)末梢血を培養した場合における、血小板の細胞数の増減を示した図である。
【図5】本発明の培養装置およびディッシュを使用して造血幹細胞と末梢血を混合培養したときにおいて、(A)培養液トータル量あたりの血小板数を比較した図であり、(B)造血幹細胞数あたりの血小板数を比較した図である。
【図6】(A)造血幹細胞と末梢血を培養した場合における、白血球の細胞数の増減を示した図であり、(B)造血幹細胞と末梢血を培養した場合における、血小板の細胞数の増減を示した図である。
【符号の説明】
1 培養装置
2 培養槽
20 培養液調整調整手段
21 透析部
22 ガス濃度調整手段
23 栄養剤補給部
30 培養液供給手段
40 培養液排出手段

Claims (11)

  1. 複数の細胞を含む細胞群を培養液に浸漬して培養し、増殖した細胞から製造される製剤であって、
    前記細胞群が、末梢血に含まれる血液成分から構成されており、
    前記細胞群における各血液成分の成分濃度が、末梢血中における各血液成分の成分濃度と同等である
    ことを特徴とする血液製剤。
  2. 前記血液成分が、末梢血に含まれる血液細胞である
    ことを特徴とする請求項1記載の血液製剤。
  3. 前記細胞群が、末梢血である
    ことを特徴とする請求項1記載の血液製剤。
  4. 前記血液製剤が、前記培養液から単離した血小板からなる
    ことを特徴とする請求項1記載の血液製剤。
  5. 前記血液製剤が、前記培養液から単離した赤血球からなる
    ことを特徴とする請求項1記載の血液製剤。
  6. 前記血液製剤が、前記培養液から単離した白血球からなる
    ことを特徴とする請求項1記載の血液製剤。
  7. 血液細胞を培養する方法であって、
    末梢血に含まれる血液成分からなり、各血液成分の成分濃度が末梢血中の各血液成分の成分濃度と同等である細胞群を、培養液に浸漬し、
    該培養液の温度を所定の温度に保つ
    ことを特徴とする血液細胞の培養方法。
  8. 前記血液成分が、末梢血に含まれる血液細胞である
    ことを特徴とする請求項7記載の血液細胞の培養方法。
  9. 前記細胞群が、末梢血である
    ことを特徴とする請求項7記載の血液細胞の培養方法。
  10. 前記培養液に対して遠赤外線を照射して、該培養液を加温する
    ことを特徴とする請求項7記載の血液細胞の培養方法。
  11. 前記培養液を、該培養液が収容される培養容器と、該培養容器外に設けられ、前記培養液の状態を調整する培養液調整手段との間を循環させる
    ことを特徴とする請求項7記載の血液細胞の培養方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2011142457A1 (ja) 2010-05-14 2011-11-17 国立大学法人熊本大学 血球成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法

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