JP2004362905A - 直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】携帯電話機等の電源として、耐メタノール透過性に優れた直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法を提供する。
【解決手段】メタノールの供給を受け電気化学反応により発電する直接メタノール型燃料電池であって、電解質膜の片面に燃料極、異なる片面に空気極を設けた燃料電池用電解質膜の製造方法において、高分子薄膜1の上部に微細な複数の円形もしくは多角形状のエックス線透過パターンを有するマスク3を設ける工程と、マスク3の上部からエックス線2の照射により高分子薄膜1中に複数の微細空孔1aを形成する工程と、微細空孔1a中に電解質成分4を充填する工程とを、少なくとも含む直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とする。
【選択図】図1
【解決手段】メタノールの供給を受け電気化学反応により発電する直接メタノール型燃料電池であって、電解質膜の片面に燃料極、異なる片面に空気極を設けた燃料電池用電解質膜の製造方法において、高分子薄膜1の上部に微細な複数の円形もしくは多角形状のエックス線透過パターンを有するマスク3を設ける工程と、マスク3の上部からエックス線2の照射により高分子薄膜1中に複数の微細空孔1aを形成する工程と、微細空孔1a中に電解質成分4を充填する工程とを、少なくとも含む直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等のモバイル機器用電源として、耐メタノール透過性に優れ、高出力化が可能な直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】
「引田 覚、山根 公高、中島 泰夫:直接メタノール型燃料電池のメタノールクロスオーバー量に及ぼす運転条件とMEA性状の影響,自動車技術会 学術講演会 前刷集,No.81−00,pp.1−6,(2000)」
直接メタノール型燃料電池は、燃料の利便性、安全性、改質器が不要であるなどの観点から、その特徴を生かし小型、携帯用電源としての研究、開発が進められている。これまで、直接メタノール発電用の電解質膜には、専らパーフルオロ(アルキル)スルホン酸膜(商品名:Nafion)が用いられていたが、発電の際、燃料であるメタノールが電解質膜を透過し(クロスオーバー)、電池性能を低下させてしまうという欠点を有していた。(非特許文献1)
この原因は、メタノールと前記電解質膜との親和性が極めてよく、メタノール水溶液に対し電解質膜が膨潤し、メタノールが容易に電解質膜中に入り込めるためである。この欠点を克服するため、メタノール水溶液に対する膨潤を抑え、サイズの小さい水素イオンは透過するがサイズの大きいメタノールは透過しない新たな電解質膜の設計が必要とされている。例えば、これまでメタノールに対して化学的に安定な延伸多孔質高分子膜中に電解質成分を充填することにより、メタノールの透過を抑え、水素イオンのみを透過させる電解質膜の製造方法が検討されてきたが、充分な性能を得るには至らなかった。このような方法により作製された従来の電解質の構造を模式的に第2図に示す。一般に、延伸多孔質高分子薄膜5は、高分子フィルムを延伸して、各微小部分を引き裂くことにより無数の微細空孔6を形成される。このような方法で作製された高分子フィルムは、細孔自体が不均一で、孔径がある分布幅を持つことから、電解質成分7を充填しても、孔径の大きな部分に充填された電解質部がメタノール水溶液に対して膨潤し、そこがメタノール伝導路となってしまい、メタノール透過量を低減できないという課題を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、従来の直接メタノール型燃料電池用の電解質膜では、水素イオン伝導性、耐メタノール透過性の両方の特性を同時に満足できないという課題を有していた。これらの特性を満足させるには、均一な空孔径を有する微細空孔を作製し、この微細孔中に電解質成分を充填する方法が望まれていた。
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術における問題点を解消するものであって、携帯電話機等の電源として、耐メタノール透過性に優れた直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構成とするものである。すなわち、
請求項1に記載のように、メタノールを燃料とし、該メタノールの供給を受け電気化学反応により発電する直接メタノール型燃料電池であって、陽イオン導電性を有する電解質膜を有し、該電解質膜の片面に燃料極、異なる片面に空気極を設けた直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法において、
高分子薄膜の上部に微細な複数の円形もしくは多角形状のエックス線透過パターンを有するマスクを設ける工程と、
前記マスクの上部からエックス線の照射により前記高分子薄膜中に複数の微細な空孔を形成する工程と、
前記微細な空孔中に電解質成分を充填する工程とを、少なくとも含む直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0006】
また、請求項2に記載のように、請求項1において、前記マスクは、所望の部分が取り除かれたシリコンウエハ上に、エックス線透過率が高い無機化合物の膜が配置され、さらにその上に微細な複数の円形もしくは多角形状の空孔パターンを持つエックス線吸収体層が形成された積層構造を有する直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0007】
また、請求項3に記載のように、請求項2において、前記エックス線透過率の高い無機化合物の膜はシリコンカーバイトであり、その膜厚が0.1〜10μmの範囲にあり、前記エックス線吸収体層が厚さ0.1〜2μmのタンタルであり、前記エックス線吸収体層に形成される空孔パターンが内径0.01〜5μmの円形もしくは多角形状である直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0008】
また、請求項4に記載のように、請求項1において、前記高分子薄膜に、厚さ0.5〜100μmのフッ素樹脂もしくはケイ素樹脂を用いる直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0009】
また、請求項5に記載のように、請求項1において、前記電解質成分として、イオン伝導性の固体高分子を形成するモノマー溶液、高分子溶液、高分子前駆体溶液、または無機系電解質ゾルを用い、前記エックス線照射による空孔作製処理後、前記高分子薄膜中の微細空孔内に、不活性ガス雰囲気中で充填した後、重合もしくは乾燥させる直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0010】
また、請求項6に記載のように、請求項5において、前記高分子薄膜の一方の面を吸引もしくは減圧しながら、もう一方の面からイオン伝導性の固体高分子を形成するモノマー溶液、高分子溶液、高分子前駆体溶液または無機系電解質ゾルを塗布もしくは滴下し、空孔内へ電解質成分を充填する直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
〈実施の形態1〉
本発明の直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法の製造工程の一例をを図1(a)〜(e)に示す。
図1(a)に示す高分子薄膜配置工程おいて、まず、高分子薄膜1を準備する。エックス線が高分子薄膜1の膜面に対して直角に照射され、エックス線照射工程で微動しないように高分子薄膜1をステージ(図示せず)等に固定する。
高分子薄膜材料には、薄膜状態においても機械的強度に優れていること、メタノール、水等に対して、膨潤、吸収等が発生せず、化学的に安定であること、また電解質膜の製造工程中の加熱や、高温での使用等を考慮し、耐熱性に優れた特性が要求される。本発明に用いる高分子薄膜材料としては、上記特性に優れたフッ素樹脂あるいはケイ素樹脂を用いる。両材料とも、機械的強度に優れた薄膜が作製可能であり、撥水性に優れメタノールにも比較的安定な化合物である。
【0012】
本発明に用いるフッ素樹脂には、デュポン社製テフロン(登録商標)フィルムに代表される4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシ共重合体が専ら用いられるが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン架橋体、ポリエチレンを構成する水素の一部をフッ素置換したポリフッ化ビニリデン、ポリ3フッ化エチレン等のフッ素化ポリエチレン等、フッ素基の導入により撥水性を有し、メタノールに対して化学的に安定であり、製膜性に優れているものであればよい。また、本発明にケイ素樹脂には専らポリシロキサンを用いることができ、ポリシロキサン中の有機基が、メチル基であるポリジメチルシロキサンが好適に用いられるが、フェニル基、水素基、水酸基等であってもよい。
【0013】
ポリシロキサン薄膜は、低粘性の液状シロキサンオリゴマーを、所定の割合で硬化剤と混合し型枠等に流し込むことにより、溶剤で溶解することなく得ることができる。硬化に要する時問は、室温で約2時間、温度を上げることによりさらに短くできる。フッ素樹脂、ケイ素樹脂ともにフィルムの厚さは、0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmであり、0.5μm以下であると機械的強度が低下し、後述する電解質層充填工程で膜が破れ易くなり、また空気中の酸素が空気極から燃料極へ透過し電池性能を低下させる。また、100μmより厚くなると該フィルムを貫通する空孔作製が困難となると共に、微細孔中に充填する電解質層の厚さも必然的に厚くなることから、イオン伝導性が低下し、電池の性能を低下させる。
【0014】
次に、高分子薄膜1上部へのマスク3の配置工程を図1(b)に示す。本発明に用いるマスク3は、所望の部分が取り除かれたシリコンウェハ3a上に、エックス線透過率が高い無機化合物膜3bが配置され、さらにその上に、微細な複数の円形または多角形状の空孔パターン3dを有するエックス線吸収体層3cが形成された構造である。前記エックス線透過率の高い無機化合物の膜3bは、膜厚が0.1〜10μmのシリコンカーバイトが好適に用いられるが、窒化シリコン、ダイヤモンド、あるいはこれらの複合膜等、エックス線透過率の高い膜であればよい。エックス線吸収体層3cには、膜厚が0.1〜2μmのタンタルが好適に用いられるが、微細なパターンを作製できるものであればよい。前記エックス線吸収体層3cに形成される空孔パターン3dは、電子ビーム描画装置でレジストパターンを形成した後、エックス線吸収体層をエッチングすることにより得られる。空孔パターン3dは、内径0.01〜5μmの円形または多角形状であることが望ましい。空孔パターン0.01μm未満では、空孔の作製が困難となり、5μmを超えると電解質膜の耐クロスオーバー特性が低下してしまう。空孔パターンの形状は、4角形以上の多角形であることが望ましい。これは、空孔パターンに鋭角な部分があると電解質充填が困難となるためである。また、空孔パターンにおける空孔と空孔との問隔は、小さい方が電解質膜に占める電解質部の割合が多くなり、好ましいが、小さすぎると空孔パターンの作製が困難となること、またエックス線照射時、熱分解等によりに隣り合う空孔同士が連結されてしまうことから、0.01μm以上を必要とする。前記の性能を有するマスク3を高分子薄膜上に位置合わせして配置する。位置合わせに際しては、高分子薄膜1とシリコンウエハ3aとの問に適宜スペーサ等を配置してもよい。
【0015】
次に、高分子薄膜1にエックス線照射により複数の均一な微細空孔を設ける、エックス線照射−微細空孔作製工程を、図1(c)に示す。高分子薄膜1への均一な微細空孔1a〔図1(d)参照〕は、高分子薄膜1にマスク3を介してエックス線2を照射することにより得られる。使用するエックス線2は、約1keVにピークを持った0.4〜5keV領域のエヅクス線2を選択する。該マスク3を透過したエックス線2のみが高分子薄膜1のエックス線照射部分2aに照射されエッチングされることにより、図1(d)「エックス線照射後の高分子薄膜の状態」に示されるように、微細空孔1aを有する高分子薄膜1を作製することが可能となる。エックス線照射時間は、できるだけ短い方が、高分子薄膜が熱による損傷を受けにくく、鋭利な空孔を作製できることから、0.1〜10ekV領域のエックス線で数分〜数十分以内であることが好ましい。照射時間の短縮や加工精度を向上させるため、照射時高分子薄膜1を加熱することが可能である。空孔率ば、20〜90%であり、50〜80%が好ましく、90%以上の空孔率では膜の強度が著しく低下し、20%以下ではイオン伝導性が低くなり、著しく電池性能を低下させる。このエックス線照射工程は、10−5Torr(≒1.33×10−3Pa)以下の高真空槽内で行うのが好ましい。
【0016】
次に、微細な空孔を複数設けたフッ素樹脂、ケイ素樹脂薄膜中に、電解質成分を充填する工程を図1(d)および図1(e)「電解質充填工程」を用いて説明する。この工程は、前記図1(c)エックス線照射−微細空孔作製工程の後、乾燥窒素などの不活性ガス雰囲気中等で直ちに行うことが好ましい。これは、前記図1(c)工程で作製した微細空孔1a内部のエッチング面がエックス線照射により分子結合性の高い活性点1bを有しており、空孔内部の面と電解質成分4との結合性が増すためである。
【0017】
この図1(e)「電解質充填工程」に用いられる第一の電解質成分充填方法としては、電解質成分4の原料であるイオン伝導基を有するモノマーおよび若干量の重合開始剤を、微細空孔1aを複数設けた高分子薄膜1の上部より滴下して空孔内を充填し、硬化させることにより薄膜中にイオン伝導部を形成することが可能となる。硬化反応は、加熱、紫外線照射などによって促進し、また適宜架橋剤を用いることにより架橋結合を導入しても良い。イオン伝導基を有するモノマーには、構造中にスルホン酸等の強酸基を有する化合物、例えばビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。また、この「電解質充填工程」は、高分子薄膜1の一方の面を吸引もしくば減圧しながら、もう一方の面から、微細空孔1a内へ電解質成分4を充填することが、電解質成分が上記微細空孔1a内へ浸入しやすくなり、好ましい。
【0018】
あるいは、この図1(e)「電解質充填工程」に用いられる第二の電解質成分充填方法としては、イオン伝導性高分子の溶液あるいは反応性オリゴマー等の高分子前駆体を溶解した溶液を調整し、その中に微細な空孔を複数設けたフッ素樹脂またはケイ素樹脂薄膜を浸漬した後、この膜を乾燥して、溶媒を除去する。高分子前駆体を用いた場合には、その後、加熱等による高分子化または架橋反応による高分子化を行い空孔内への充填を完了する。この高分子溶液または高分子前駆体溶液として、ポリサルホン、ポリベンズイミダゾールあるいはポリエーテルエーテルケトンなどのスルホン化ポリマー、パーフルオロアルキルスルホン酸の溶液を用いることができるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。本発明では、上記第一および第二の電解質成分の充填方法を適宜組み合わせることによって、空孔壁面の疎水的性質が親水性へと変化してくるため、電解質成分の充填が一層容易となり、より緻密で均一な電解質層の形成が可能となる。
【0019】
あるいは、この図1(e)「電解質充填工程」に用いられる第三の電解質成分充填方法としては、イオン伝導性ガラスとなり得るゾルを作製し、その中に微細な空孔を複数設けたフッ素樹脂またはケイ素樹脂薄膜基板を浸漬あるいは前記ゾルを塗布した後、乾燥、加熱することにより得られる。本法では、テトラメトキシシラン、テトラメトキシリン酸をアルコールに溶解したゾルが好適に用いられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
また、本発明においては、上記の高分子薄膜中の空孔内に電解質を充填する工程の前に、電解質が空孔内に速やかに浸入させると共に、電解質と高分子薄膜との結着性を向上させるため、シランカップリング剤等による空孔内の親水化処理、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基をもつモノマーを空孔内へ放射線グラフ重合させた後、エポキシ基をスルホン基置換する等の親水化処理を行ってもよい。あるいは、アルゴンプラズマ処理して空孔表面を再活性化処理しても良い。
以上の方法で作製した電解質部の両面に、触媒層、ガス拡散層を兼ねた集電板を配置し、ホットプレス法等により接合して、燃料極および空気極を作成する。燃料極用の触媒層は、Pt−Ruを主成分としたメタノール酸化触媒が、空気極用触媒層には、Ptを主成分とした酸素還元触媒が専ら用いられ、Decal法やスプレー法等で作製することにより得られるが、本発明ではこれらの作製法に限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
さらに、本発明の実施例を挙げ、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
表面研磨した厚さ12.5μmのデュポン社製ポリテトラフルオロエチレン膜を有機溶剤で洗浄し、超高真空槽内に放射光に対面するよう配置した。シリコンウエハ上に厚さ2μmのエックス線透過率の高いシリコンカーバイト層、その上に孔径0.05μm、空孔率50%の空孔パターンを有する厚さ0.8μmのタンタル層を有するエックス線マスクを前記ポリテトラフルオロエチレン膜前面に平行になるよう配置した。真空槽内の真空度は、5×10−8Torr(≒6.65×10−6Pa)に達した後、エックス線照射を行った。放射光には、約1keVにピークを持った0.4〜5keV領域のエックス線を用い、照射時間は5分であった。照射後、薄膜を取り出しSEM観察したところ、前記薄膜には孔径0.05μm、空孔率50%の空孔パターンを有することを確認した。その空孔内に、窒素雰囲気中でビニルスルホン酸系高分子電解質を充填することにより電解質部を形成し、その電解質部の一方の面にカーボン担持されたPt−Ru触煤層、集電板をホットプレスし圧着することにより燃料極を形成し、もう一方の面にカーボン担持されたPt触媒層を形成しプラスチック基板を作製した。得られた電解質膜について、プロトンイオン伝導性をインピーダンス測定装置により測定した。 その結果、プロトン伝導率は、室温25℃において、0.15S/cmとNafion膜(0.08S/cm)に比べ高いプロトン伝導率を示すことが分かった。また、膜電極複合体のI−V特性を測定した結果、温度約40℃、大気圧中で、最大出力は50mW/cm2であり、Nafion膜を電解質膜に用いたときの最大出力20mW/cm2に比べ、高い出力が得られた。また、メタノールの透過性試験を行った結果、Nafion膜の1/10以下の透過量であった。
【0021】
〈実施例2〉
ポリジメチルシロキサンの高分子前駆体の主剤および硬化剤(Sylgard 184:Dow Corning Co.)を10:1の割合で混合し、充分に撹拌した後に15分間真空脱ガスしてプレポリマー混合液を作製した。このプレポリマー混合液をマスター上に注ぎ、65℃で1時間、95℃で15分間キュアリングを行った。こうして得られた厚さ50μmポリジメチルシロキサン膜中央部に、実施例1と同じ放射線加工を行い、SEM観察したところ前記薄膜には孔径0.04μm、空孔率45%の空孔パターンを有することを確認した。その空孔内にビニルスルホン酸系高分子電解質を充填することにより電解質部を形成し、その電解質部の一方の面にカーボン担持されたPt−Ru触媒層、集電板をホットプレスし圧着することにより燃料極を形成し、もう一方の面にカーボン担特されたPt触媒層を形成しプラスチヅク基板を作製した。
その結果、プロトン伝導率は、室温25℃において、0.10S/cmと高いプロトン伝導率を示すことが分かった。また、膜電極複合体のI−V特性を測定した結果、温度約40℃、大気圧中で、最大出力は45mW/cm2であり、高い出力が得られた。また、メタノールの透過性試験を行い、Nafion膜の1/10以下の透過量であった。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、メタノールの透過(クロスオーバー)を抑制し、イオン伝導性に優れた新規な直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態で例示した直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法の各工程における高分子薄膜の状態を示す工程図。
【図2】従来技術による電解質膜の状態を示す模式図。
【符号の説明】
1…高分子薄膜
1a…微細空孔
1b…活性点
2…エックス線
2a…エックス線照射部分
3…マスク
3a…シリコンウエハ
3b…無機化合物膜
3c…エックス線吸収体層
3d…空孔パターン
4…電解質成分
5…延伸多孔質高分子薄膜
6…微細空孔
7…電解質成分
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等のモバイル機器用電源として、耐メタノール透過性に優れ、高出力化が可能な直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】
「引田 覚、山根 公高、中島 泰夫:直接メタノール型燃料電池のメタノールクロスオーバー量に及ぼす運転条件とMEA性状の影響,自動車技術会 学術講演会 前刷集,No.81−00,pp.1−6,(2000)」
直接メタノール型燃料電池は、燃料の利便性、安全性、改質器が不要であるなどの観点から、その特徴を生かし小型、携帯用電源としての研究、開発が進められている。これまで、直接メタノール発電用の電解質膜には、専らパーフルオロ(アルキル)スルホン酸膜(商品名:Nafion)が用いられていたが、発電の際、燃料であるメタノールが電解質膜を透過し(クロスオーバー)、電池性能を低下させてしまうという欠点を有していた。(非特許文献1)
この原因は、メタノールと前記電解質膜との親和性が極めてよく、メタノール水溶液に対し電解質膜が膨潤し、メタノールが容易に電解質膜中に入り込めるためである。この欠点を克服するため、メタノール水溶液に対する膨潤を抑え、サイズの小さい水素イオンは透過するがサイズの大きいメタノールは透過しない新たな電解質膜の設計が必要とされている。例えば、これまでメタノールに対して化学的に安定な延伸多孔質高分子膜中に電解質成分を充填することにより、メタノールの透過を抑え、水素イオンのみを透過させる電解質膜の製造方法が検討されてきたが、充分な性能を得るには至らなかった。このような方法により作製された従来の電解質の構造を模式的に第2図に示す。一般に、延伸多孔質高分子薄膜5は、高分子フィルムを延伸して、各微小部分を引き裂くことにより無数の微細空孔6を形成される。このような方法で作製された高分子フィルムは、細孔自体が不均一で、孔径がある分布幅を持つことから、電解質成分7を充填しても、孔径の大きな部分に充填された電解質部がメタノール水溶液に対して膨潤し、そこがメタノール伝導路となってしまい、メタノール透過量を低減できないという課題を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、従来の直接メタノール型燃料電池用の電解質膜では、水素イオン伝導性、耐メタノール透過性の両方の特性を同時に満足できないという課題を有していた。これらの特性を満足させるには、均一な空孔径を有する微細空孔を作製し、この微細孔中に電解質成分を充填する方法が望まれていた。
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術における問題点を解消するものであって、携帯電話機等の電源として、耐メタノール透過性に優れた直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構成とするものである。すなわち、
請求項1に記載のように、メタノールを燃料とし、該メタノールの供給を受け電気化学反応により発電する直接メタノール型燃料電池であって、陽イオン導電性を有する電解質膜を有し、該電解質膜の片面に燃料極、異なる片面に空気極を設けた直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法において、
高分子薄膜の上部に微細な複数の円形もしくは多角形状のエックス線透過パターンを有するマスクを設ける工程と、
前記マスクの上部からエックス線の照射により前記高分子薄膜中に複数の微細な空孔を形成する工程と、
前記微細な空孔中に電解質成分を充填する工程とを、少なくとも含む直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0006】
また、請求項2に記載のように、請求項1において、前記マスクは、所望の部分が取り除かれたシリコンウエハ上に、エックス線透過率が高い無機化合物の膜が配置され、さらにその上に微細な複数の円形もしくは多角形状の空孔パターンを持つエックス線吸収体層が形成された積層構造を有する直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0007】
また、請求項3に記載のように、請求項2において、前記エックス線透過率の高い無機化合物の膜はシリコンカーバイトであり、その膜厚が0.1〜10μmの範囲にあり、前記エックス線吸収体層が厚さ0.1〜2μmのタンタルであり、前記エックス線吸収体層に形成される空孔パターンが内径0.01〜5μmの円形もしくは多角形状である直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0008】
また、請求項4に記載のように、請求項1において、前記高分子薄膜に、厚さ0.5〜100μmのフッ素樹脂もしくはケイ素樹脂を用いる直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0009】
また、請求項5に記載のように、請求項1において、前記電解質成分として、イオン伝導性の固体高分子を形成するモノマー溶液、高分子溶液、高分子前駆体溶液、または無機系電解質ゾルを用い、前記エックス線照射による空孔作製処理後、前記高分子薄膜中の微細空孔内に、不活性ガス雰囲気中で充填した後、重合もしくは乾燥させる直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0010】
また、請求項6に記載のように、請求項5において、前記高分子薄膜の一方の面を吸引もしくは減圧しながら、もう一方の面からイオン伝導性の固体高分子を形成するモノマー溶液、高分子溶液、高分子前駆体溶液または無機系電解質ゾルを塗布もしくは滴下し、空孔内へ電解質成分を充填する直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
〈実施の形態1〉
本発明の直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法の製造工程の一例をを図1(a)〜(e)に示す。
図1(a)に示す高分子薄膜配置工程おいて、まず、高分子薄膜1を準備する。エックス線が高分子薄膜1の膜面に対して直角に照射され、エックス線照射工程で微動しないように高分子薄膜1をステージ(図示せず)等に固定する。
高分子薄膜材料には、薄膜状態においても機械的強度に優れていること、メタノール、水等に対して、膨潤、吸収等が発生せず、化学的に安定であること、また電解質膜の製造工程中の加熱や、高温での使用等を考慮し、耐熱性に優れた特性が要求される。本発明に用いる高分子薄膜材料としては、上記特性に優れたフッ素樹脂あるいはケイ素樹脂を用いる。両材料とも、機械的強度に優れた薄膜が作製可能であり、撥水性に優れメタノールにも比較的安定な化合物である。
【0012】
本発明に用いるフッ素樹脂には、デュポン社製テフロン(登録商標)フィルムに代表される4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシ共重合体が専ら用いられるが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン架橋体、ポリエチレンを構成する水素の一部をフッ素置換したポリフッ化ビニリデン、ポリ3フッ化エチレン等のフッ素化ポリエチレン等、フッ素基の導入により撥水性を有し、メタノールに対して化学的に安定であり、製膜性に優れているものであればよい。また、本発明にケイ素樹脂には専らポリシロキサンを用いることができ、ポリシロキサン中の有機基が、メチル基であるポリジメチルシロキサンが好適に用いられるが、フェニル基、水素基、水酸基等であってもよい。
【0013】
ポリシロキサン薄膜は、低粘性の液状シロキサンオリゴマーを、所定の割合で硬化剤と混合し型枠等に流し込むことにより、溶剤で溶解することなく得ることができる。硬化に要する時問は、室温で約2時間、温度を上げることによりさらに短くできる。フッ素樹脂、ケイ素樹脂ともにフィルムの厚さは、0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmであり、0.5μm以下であると機械的強度が低下し、後述する電解質層充填工程で膜が破れ易くなり、また空気中の酸素が空気極から燃料極へ透過し電池性能を低下させる。また、100μmより厚くなると該フィルムを貫通する空孔作製が困難となると共に、微細孔中に充填する電解質層の厚さも必然的に厚くなることから、イオン伝導性が低下し、電池の性能を低下させる。
【0014】
次に、高分子薄膜1上部へのマスク3の配置工程を図1(b)に示す。本発明に用いるマスク3は、所望の部分が取り除かれたシリコンウェハ3a上に、エックス線透過率が高い無機化合物膜3bが配置され、さらにその上に、微細な複数の円形または多角形状の空孔パターン3dを有するエックス線吸収体層3cが形成された構造である。前記エックス線透過率の高い無機化合物の膜3bは、膜厚が0.1〜10μmのシリコンカーバイトが好適に用いられるが、窒化シリコン、ダイヤモンド、あるいはこれらの複合膜等、エックス線透過率の高い膜であればよい。エックス線吸収体層3cには、膜厚が0.1〜2μmのタンタルが好適に用いられるが、微細なパターンを作製できるものであればよい。前記エックス線吸収体層3cに形成される空孔パターン3dは、電子ビーム描画装置でレジストパターンを形成した後、エックス線吸収体層をエッチングすることにより得られる。空孔パターン3dは、内径0.01〜5μmの円形または多角形状であることが望ましい。空孔パターン0.01μm未満では、空孔の作製が困難となり、5μmを超えると電解質膜の耐クロスオーバー特性が低下してしまう。空孔パターンの形状は、4角形以上の多角形であることが望ましい。これは、空孔パターンに鋭角な部分があると電解質充填が困難となるためである。また、空孔パターンにおける空孔と空孔との問隔は、小さい方が電解質膜に占める電解質部の割合が多くなり、好ましいが、小さすぎると空孔パターンの作製が困難となること、またエックス線照射時、熱分解等によりに隣り合う空孔同士が連結されてしまうことから、0.01μm以上を必要とする。前記の性能を有するマスク3を高分子薄膜上に位置合わせして配置する。位置合わせに際しては、高分子薄膜1とシリコンウエハ3aとの問に適宜スペーサ等を配置してもよい。
【0015】
次に、高分子薄膜1にエックス線照射により複数の均一な微細空孔を設ける、エックス線照射−微細空孔作製工程を、図1(c)に示す。高分子薄膜1への均一な微細空孔1a〔図1(d)参照〕は、高分子薄膜1にマスク3を介してエックス線2を照射することにより得られる。使用するエックス線2は、約1keVにピークを持った0.4〜5keV領域のエヅクス線2を選択する。該マスク3を透過したエックス線2のみが高分子薄膜1のエックス線照射部分2aに照射されエッチングされることにより、図1(d)「エックス線照射後の高分子薄膜の状態」に示されるように、微細空孔1aを有する高分子薄膜1を作製することが可能となる。エックス線照射時間は、できるだけ短い方が、高分子薄膜が熱による損傷を受けにくく、鋭利な空孔を作製できることから、0.1〜10ekV領域のエックス線で数分〜数十分以内であることが好ましい。照射時間の短縮や加工精度を向上させるため、照射時高分子薄膜1を加熱することが可能である。空孔率ば、20〜90%であり、50〜80%が好ましく、90%以上の空孔率では膜の強度が著しく低下し、20%以下ではイオン伝導性が低くなり、著しく電池性能を低下させる。このエックス線照射工程は、10−5Torr(≒1.33×10−3Pa)以下の高真空槽内で行うのが好ましい。
【0016】
次に、微細な空孔を複数設けたフッ素樹脂、ケイ素樹脂薄膜中に、電解質成分を充填する工程を図1(d)および図1(e)「電解質充填工程」を用いて説明する。この工程は、前記図1(c)エックス線照射−微細空孔作製工程の後、乾燥窒素などの不活性ガス雰囲気中等で直ちに行うことが好ましい。これは、前記図1(c)工程で作製した微細空孔1a内部のエッチング面がエックス線照射により分子結合性の高い活性点1bを有しており、空孔内部の面と電解質成分4との結合性が増すためである。
【0017】
この図1(e)「電解質充填工程」に用いられる第一の電解質成分充填方法としては、電解質成分4の原料であるイオン伝導基を有するモノマーおよび若干量の重合開始剤を、微細空孔1aを複数設けた高分子薄膜1の上部より滴下して空孔内を充填し、硬化させることにより薄膜中にイオン伝導部を形成することが可能となる。硬化反応は、加熱、紫外線照射などによって促進し、また適宜架橋剤を用いることにより架橋結合を導入しても良い。イオン伝導基を有するモノマーには、構造中にスルホン酸等の強酸基を有する化合物、例えばビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。また、この「電解質充填工程」は、高分子薄膜1の一方の面を吸引もしくば減圧しながら、もう一方の面から、微細空孔1a内へ電解質成分4を充填することが、電解質成分が上記微細空孔1a内へ浸入しやすくなり、好ましい。
【0018】
あるいは、この図1(e)「電解質充填工程」に用いられる第二の電解質成分充填方法としては、イオン伝導性高分子の溶液あるいは反応性オリゴマー等の高分子前駆体を溶解した溶液を調整し、その中に微細な空孔を複数設けたフッ素樹脂またはケイ素樹脂薄膜を浸漬した後、この膜を乾燥して、溶媒を除去する。高分子前駆体を用いた場合には、その後、加熱等による高分子化または架橋反応による高分子化を行い空孔内への充填を完了する。この高分子溶液または高分子前駆体溶液として、ポリサルホン、ポリベンズイミダゾールあるいはポリエーテルエーテルケトンなどのスルホン化ポリマー、パーフルオロアルキルスルホン酸の溶液を用いることができるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。本発明では、上記第一および第二の電解質成分の充填方法を適宜組み合わせることによって、空孔壁面の疎水的性質が親水性へと変化してくるため、電解質成分の充填が一層容易となり、より緻密で均一な電解質層の形成が可能となる。
【0019】
あるいは、この図1(e)「電解質充填工程」に用いられる第三の電解質成分充填方法としては、イオン伝導性ガラスとなり得るゾルを作製し、その中に微細な空孔を複数設けたフッ素樹脂またはケイ素樹脂薄膜基板を浸漬あるいは前記ゾルを塗布した後、乾燥、加熱することにより得られる。本法では、テトラメトキシシラン、テトラメトキシリン酸をアルコールに溶解したゾルが好適に用いられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
また、本発明においては、上記の高分子薄膜中の空孔内に電解質を充填する工程の前に、電解質が空孔内に速やかに浸入させると共に、電解質と高分子薄膜との結着性を向上させるため、シランカップリング剤等による空孔内の親水化処理、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基をもつモノマーを空孔内へ放射線グラフ重合させた後、エポキシ基をスルホン基置換する等の親水化処理を行ってもよい。あるいは、アルゴンプラズマ処理して空孔表面を再活性化処理しても良い。
以上の方法で作製した電解質部の両面に、触媒層、ガス拡散層を兼ねた集電板を配置し、ホットプレス法等により接合して、燃料極および空気極を作成する。燃料極用の触媒層は、Pt−Ruを主成分としたメタノール酸化触媒が、空気極用触媒層には、Ptを主成分とした酸素還元触媒が専ら用いられ、Decal法やスプレー法等で作製することにより得られるが、本発明ではこれらの作製法に限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
さらに、本発明の実施例を挙げ、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
表面研磨した厚さ12.5μmのデュポン社製ポリテトラフルオロエチレン膜を有機溶剤で洗浄し、超高真空槽内に放射光に対面するよう配置した。シリコンウエハ上に厚さ2μmのエックス線透過率の高いシリコンカーバイト層、その上に孔径0.05μm、空孔率50%の空孔パターンを有する厚さ0.8μmのタンタル層を有するエックス線マスクを前記ポリテトラフルオロエチレン膜前面に平行になるよう配置した。真空槽内の真空度は、5×10−8Torr(≒6.65×10−6Pa)に達した後、エックス線照射を行った。放射光には、約1keVにピークを持った0.4〜5keV領域のエックス線を用い、照射時間は5分であった。照射後、薄膜を取り出しSEM観察したところ、前記薄膜には孔径0.05μm、空孔率50%の空孔パターンを有することを確認した。その空孔内に、窒素雰囲気中でビニルスルホン酸系高分子電解質を充填することにより電解質部を形成し、その電解質部の一方の面にカーボン担持されたPt−Ru触煤層、集電板をホットプレスし圧着することにより燃料極を形成し、もう一方の面にカーボン担持されたPt触媒層を形成しプラスチック基板を作製した。得られた電解質膜について、プロトンイオン伝導性をインピーダンス測定装置により測定した。 その結果、プロトン伝導率は、室温25℃において、0.15S/cmとNafion膜(0.08S/cm)に比べ高いプロトン伝導率を示すことが分かった。また、膜電極複合体のI−V特性を測定した結果、温度約40℃、大気圧中で、最大出力は50mW/cm2であり、Nafion膜を電解質膜に用いたときの最大出力20mW/cm2に比べ、高い出力が得られた。また、メタノールの透過性試験を行った結果、Nafion膜の1/10以下の透過量であった。
【0021】
〈実施例2〉
ポリジメチルシロキサンの高分子前駆体の主剤および硬化剤(Sylgard 184:Dow Corning Co.)を10:1の割合で混合し、充分に撹拌した後に15分間真空脱ガスしてプレポリマー混合液を作製した。このプレポリマー混合液をマスター上に注ぎ、65℃で1時間、95℃で15分間キュアリングを行った。こうして得られた厚さ50μmポリジメチルシロキサン膜中央部に、実施例1と同じ放射線加工を行い、SEM観察したところ前記薄膜には孔径0.04μm、空孔率45%の空孔パターンを有することを確認した。その空孔内にビニルスルホン酸系高分子電解質を充填することにより電解質部を形成し、その電解質部の一方の面にカーボン担持されたPt−Ru触媒層、集電板をホットプレスし圧着することにより燃料極を形成し、もう一方の面にカーボン担特されたPt触媒層を形成しプラスチヅク基板を作製した。
その結果、プロトン伝導率は、室温25℃において、0.10S/cmと高いプロトン伝導率を示すことが分かった。また、膜電極複合体のI−V特性を測定した結果、温度約40℃、大気圧中で、最大出力は45mW/cm2であり、高い出力が得られた。また、メタノールの透過性試験を行い、Nafion膜の1/10以下の透過量であった。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、メタノールの透過(クロスオーバー)を抑制し、イオン伝導性に優れた新規な直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態で例示した直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法の各工程における高分子薄膜の状態を示す工程図。
【図2】従来技術による電解質膜の状態を示す模式図。
【符号の説明】
1…高分子薄膜
1a…微細空孔
1b…活性点
2…エックス線
2a…エックス線照射部分
3…マスク
3a…シリコンウエハ
3b…無機化合物膜
3c…エックス線吸収体層
3d…空孔パターン
4…電解質成分
5…延伸多孔質高分子薄膜
6…微細空孔
7…電解質成分
Claims (6)
- メタノールを燃料とし、該メタノールの供給を受け電気化学反応により発電する直接メタノール型燃料電池であって、陽イオン導電性を有する電解質膜を有し、該電解質膜の片面に燃料極、異なる片面に空気極を設けた直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法において、
高分子薄膜の上部に微細な複数の円形もしくは多角形状のエックス線透過パターンを有するマスクを設ける工程と、
前記マスクの上部からエックス線の照射により前記高分子薄膜中に複数の微細な空孔を形成する工程と、
前記微細な空孔中に電解質成分を充填する工程とを、少なくとも含むことを特徴とする直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法。 - 請求項1において、前記マスクは、所望の部分が取り除かれたシリコンウエハ上に、エックス線透過率の高い無機化合物の膜が配置され、さらにその上に微細な複数の円形もしくは多角形状の空孔パターンを持つエックス線吸収体層が形成された積層構造を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法。
- 請求項2において、前記エックス線透過率の高い無機化合物の膜はシリコンカーバイトであり、その膜厚が0.1〜10μmの範囲にあり、前記エックス線吸収体層が厚さ0.1〜2μmのタンタルであり、前記エックス線吸収体層に形成される空孔パターンが内径0.01〜5μmの円形もしくは多角形状であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法。
- 請求項1において、前記高分子薄膜に、厚さ0.5〜100μmのフッ素樹脂もしくはケイ素樹脂を用いることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法。
- 請求項1において、前記電解質成分として、イオン伝導性の固体高分子を形成するモノマー溶液、高分子溶液、高分子前駆体溶液、または無機系電解質ゾルを用い、前記エックス線照射による空孔作製処理後、前記高分子薄膜中の微細空孔内に、不活性ガス雰囲気中で充填した後、重合もしくは乾燥させることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法。
- 請求項5において、前記高分子薄膜の一方の面を吸引もしくは減圧しながら、もう一方の面からイオン伝導性の固体高分子を形成するモノマー溶液、高分子溶液、高分子前駆体溶液または無機系電解質ゾルを塗布もしくは滴下し、空孔内へ電解質成分を充填することを特徴とする直接メタノール型燃料電池用電解質膜の製造方法。
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