特許文献1に記載されている、高抵抗膜で被覆したスペーサの上下にスペーサ電極を設けておき、高抵抗膜を、このスペーサ電極を介して第1の基板の配線と第2の基板の電極とに接続した画像形成装置については、スペーサ電極部近傍に電界分布を生じる。この電界分布は、スペーサの長さ方向にほぼ均一ではあるが、スペーサ電極がない場合に比して強く表れるので、スペーサを設置する際、アライメントのずれが生じた場合には、隣接する電子放出素子から放射される電子ビームの到達位置が大きく乱されやすくなる。また、スペーサ電極は、放電の原因ともなり、画像の品位を大幅に落としやすいことが分かって来た。これを防止するためには、スペーサ電極がスペーサの側面に露出しないようにするか、スペーサを精度よく設置しなければならず、いずれもコストアップの原因となる。
特許文献2に記載の画像形成装置については、中間層(スペーサ電極)をスペーサ側面に露出させることになるので、上記特許文献1のスペーサ電極がスペーサ側面に露出している場合と同様に、スペーサのアライメント精度を高度に維持しなければ意図した制御ができなくなり、やはりコストアップが避けられない問題がある。また、例えば画素ピッチを小さくした場合、電子ビームの放出位置がスペーサに近くなる結果、これに対応した形状のスペーサ電極を新たに設計する必要があり、コストアップの要因となる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、高抵抗膜で被覆された板状のペーサを用いてスペーサへの帯電防止を図るに際し、隣接する電子放出素子から放出される電子ビームの不規則なずれを防止すると共に、スペーサの設置位置の多少のずれにも拘わらず、隣接する電子放出素子から放出される電子ビームの到達位置の位置ずれを抑制できるようにすることを目的とする。また、同一構成のスペーサを様々な装置形態へ適応できるようにすることをも目的とする。
本発明は、上記目的のために、複数の電子放出素子および該複数の電子放出素子を駆動するための配線を有する第1の基板と、該第1の基板に対向配置され、前記配線よりも高電位に規定された導電性部材を有する第2の基板と、前記第1の基板と該第2の基板間に、前記配線に沿って配置され、前記配線と導電性部材とに電気的に接続された高抵抗膜で被覆された板状のスペーサとを有する画像形成装置において、前記スペーサの高抵抗膜と前記配線との電気的接続のための接触部が前記配線の長さ方向に沿って所定間隔で設けられていることを特徴とする画像形成装置を提供するものである。尚、ここで板状とは、好ましくはスペーサと配線との間で、離散的な接触をするための十分な長さを有する形状を意味し、十分な長さとは、少なくとも互いに隣接する電子放出素子の間隔(素子ピッチ)と同等もしくはそれ以上の長さを意味する。板状スペーサの一例としては、素子間ピッチよりも長い矩形形状のスペーサが該当する。
本発明は、スペーサの高抵抗膜と第1の基板の配線の接触位置と非接触位置を積極的に制御することで、スペーサ表面の不規則な電位分布の発生を防止し、隣接する電子放出素子から放出される電子ビームの到達位置を制御しやすくするものである。
これについて、本願発明の構成を有さない、つまり、スペーサの高抵抗膜と第1の基板の配線の接触位置および非接触位置が制御されていない場合を比較して、本願発明の作用を以下説明する。
高抵抗膜を第1の基板の配線と第2の基板の電極に直接圧接した画像形成装置については、スペーサの帯電が十分に解消されなかったり、スペーサ表面の電位分布が意図しない分布状態を示す場合があることを我々は新たに発見した。
上記現象が生じる原因は、表示装置の製造工程に依存する部分が多く、一概には言えないが、例えば、第1の基板の配線、第2の基板の電極に予期せぬ歪み等が生じている場合や、これらの上に異物が存在する場合、また配線や電極に意図しないバリが生じているなど、スペーサの高抵抗膜と配線や電極との当接が連続的にならず、部分的に接触しない箇所が発生し、十分な電気的接続が取れないことに起因していることが分かって来た。特に、安価な製造方法で作成された配線では、表面形状が部分的に異なることがあり、上述の電気的な接続不良が発生しやすい。
上記のような場合、スペーサの帯電が十分に解決されないだけでなく、スペーサ表面の電位分布に不規則な変化が生じ、電子ビーム軌道が設計通りにならないという不具合を生じる。また、電子ビームは第1の基板から第2の基板に向かって加速されるので、その軌道変化は、第2の基板側よりも、第1の基板側での偏向力による方が顕著に表れる。
第1の基板側でのスペーサ表面の電位分布による電子ビームの偏向について、図21を用いてさらに具体的に説明する。
図21(a)は、高抵抗膜で被覆された板状のスペーサを第1の基板の配線に沿って介在させたときに、高抵抗膜と配線とが意図しない部分接触になった場合のスペーサ表面の電位分布を示した図であり、図21(b)は図21(a)の等価回路図である。
図に示すように、C点とA点間の抵抗がR1であるとすると、非接触部であるB点では、対応するD点とB点間の抵抗がR1となって、接触部であるA点との間の抵抗(B点とA点間の抵抗)であるR2によって生じる電圧降下分だけB点の電位はA点の電位より高くなる。これによって、B点近傍の電子放出素子から放出する電子ビームの軌道は、A点近傍の電子放出素子から放出する電子の軌道とは異なる挙動を示し、その結果、C点とD点では画像が異なる(歪む)ことになる。
これに対し、本願発明は、スペーサの高抵抗膜と第1の基板の配線の接触位置と非接触位置を積極的に制御することで、スペーサ表面の不規則な電位分布の発生を防止し、隣接する電子放出素子から放出される電子ビームの到達位置を制御しやすくするものである。
なお、本願発明における、スペーサの高抵抗膜と第1の基板の配線の接触位置と非接触位置を積極的に制御することとは、具体的には、上記スペーサーと配線の接触部の形状を制御することで、接触位置と非接触位置を制御し、スペーサ表面の電位分布を積極的に制御し、所望の電子ビームの到達位置が得やすい電界分布を得ようとするものである。
上記スペーサーと配線の接触部の形状制御の具体的な態様としては、スペーサーの配線側表面に凹凸を付す方法と、配線に凹凸を付す方法とがあり、配線に凹凸を付す方法としては、配線の下に例えば絶縁材料の枕材(台座)を設け、これによって部分的に配線を突出させる方法と、配線上に導電性の凸部を形成する方法とがある。これらの方法により、製造方法に依存した形状のばらつき(表面の粗さや、部分的な突起など)以上の高さの積極的な凹凸を形成し、積極的に接触箇所と非接触箇所を位置制御することができる。つまり、本発明は、スペーサと配線との接触を全面的に行うのではなく、積極的に制御して部分接触させることで、スペーサ表面に制御された等電位面を形成するという、発想の転換に基づくものである。
制御された等電位面として好ましい形態は、等電位面が電子放出素子に対応した周期性を有することである。これを実現する一例としては、スペーサの高抵抗膜と配線の接触箇所間ピッチに周期性を持たせることを挙げることができる。この接触箇所間のピッチは、電子放出素子間のピッチの定数倍などの周期性をもつことが好ましい。但し、必ずしも個々の電子放出素子間ピッチに対する周期性を持たなくても良く、例えば、蛍光体のRGBで形成される1画素分の電子放出素子を1単位とし、この1単位間ピッチを1周期とした周期性を有するものとすることもできる。また、必ずしも個々の接触箇所間の間隔が周期性を持つ必要はなく、上述のとおり、スペーサ近傍の等電位面が制御されることが重要であり、等電位面に周期性が得られれば、十分好ましい形態である。このような形態の一例としては、接触面積の大きな箇所1つと、接触面積の小さな箇所が複数近接してまとまって形成されたものとの間に周期性があるものを挙げることができ、この場合も等電位面には周期性が得られ、好ましい形態といえる。
本発明によれば、スペーサと、リアプレート側の配線やフェースプレート側の電極との接触状態を制御することで所望の電子ビーム到達位置を得ることができる。具体的には、上記接触部の形状制御により、スペーサと配線または電極の接触側に積極的に非接触部を形成し、この非接触部の電位変化を積極的に制御することで、所望の電子ビーム到達位置に適したスペーサ近傍の電界分布を得ることができる。
さらには、所望の電子ビーム到達位置とスペーサとの距離に対応して、電子放出素子の位置を移動することで、所望の電子ビーム到達位置を得る。このような構成としては、例えばリアプレートの配線の形状を、製造方法に依存したばらつき(表面の粗さや、部分的な突起等)以上の積極的な凹凸形状に形成し、積極的に接触部を制御する構成や、スペーサと配線との間の所用の位置に導電部材を挟み込み、積極的に接触箇所を制御する構成などがある。つまり本発明は、スペーサと配線との接触を全面的に行うのではなく、積極的に部分的に接触させることで、スペーサ表面に制御された等電位面を形成するという、発想の転換に基づくものである。
また、本発明によれば、スペーサ自体の構成に拘わらず、スペーサの高抵抗膜とリアプレート側配線またはフェースプレート側電極との接触状態と、好ましくはさらに電子放出素子のオフセットを制御することで所望の電子ビーム到達位置を達成することができる。具体的には、(1)スペーサのリアプレート側の接触状態、(2)スペーサのフェースプレート側の接触状態のいずれかまたは両方と、好ましくはさらに(3)電子放出素子のオフセットの要件を制御することで、所望の電子ビーム到達位置を達成することができる。より具体的には、(1)スペーサのリアプレート側の非接触部の電位分布を制御し、(2)スペーサのフェースプレート側の非接触部の電位分布を制御し、(3)スペーサのリアプレート側の接触位置と電子放出部の位置の高さの違いと電子放出素子のオフセットによってできる非対称電場を利用して電子放出直後のビーム軌道を制御し、所望の電子ビーム軌道を得ることができる。
これらのパラメータは、例えば、パネルの形状で決まる静電界計算と、簡単な電子ビームシミュレーションにより、比較的簡単に設計できる。
さらに言えば、何らかの原因でスペーサ近傍に電子ビーム軌道にずれが生じた場合でも、電子ビーム軌道のずれを補償する機能をスペーサ自身に持たせることなく、所望の電子ビーム到達位置を達成できる。
このようにスペーサ自身とは関係ない3つの独立パラメータを制御することで電子ビーム軌道設計ができるため、本発明によれば設計の自由度が大きくなるメリットがある。
スペーサの高抵抗膜を接触させる対象としてパネル固有の部材を利用し、形状制御することもできる。具体的には、リアプレート上の行方向配線と列方向配線の交点や、フェースプレート上の黒色導電体である。この場合、コスト的に有利になる。また、接触位置を制御するために、リアプレートあるいはフェースプレート上に導電性台部を配置することもできる。この場合、電子ビーム軌道を妨げないかぎり任意の位置に配置できるので、設計の自由度がさらに大きくなるメリットがある。
本発明によれば、同一構成のスペーサで、様々な表示装置形態に対応可能であることから、例えば高精細化のために画素ピッチを変更したり、高輝度化のために加速電圧を高くしたりといった表示装置形態仕様の変さらに際しても、スペーサーを接触させる対象側の僅かな設計変更で済み、スペーサの設計変更は必要なくなる。また、同一のスペーサ部材で複数の製品に対応することができるようになる。このため、生産性を著しく向上させ、コストの大幅な削減に結びつけることができる。
以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明する。
(第1の例)
図1は、本発明に係る画像形成装置の第1の例に係る表示パネルの一部を切り欠いた斜視図、図2はスペーサの長さ方向の断面部分図、図3はスペーサの高抵抗膜と行方向配線の接触部と非接触部の説明図、図4はスペーサに直交方向の断面部分図、図5および図6はそれぞれ電子ビームの軌道の説明図、図7は電子ビーム到達位置のスペーサからの距離とスペーサに対する素子のオフセットの関係を示すグラフ、図8は電子ビーム到達位置のスペーサからの距離とスペーサと配線との接触面積の関係を示すグラフ、図9はスペーサに対する素子のオフセットとスペーサと配線との接触面積との関係を示すグラフである。
図1に示されるように、本例の表示パネルは、第1の基板であるリアプレート1と、第2の基板であるフェースプレート2を間隔をあけて対向させ、両者間に板状のスペーサ3を挟み込むと共に、周囲を側壁4で封止し、内部を真空雰囲気としたものとなっている。
リアプレート1上には、行方向配線5、列方向配線6、電極間絶縁層7(図2、図4参照)および電子放出素子8を形成した電子源基板9が固定されている。
図示される電子放出素子8は、一対の素子電極間に電子放出部を有する導電性薄膜が接続された表面伝導型電子放出素子である。本例は、この表面伝導型電子放出素子をN×M個配置し、それぞれ等間隔で形成したM本の行方向配線5とN本の列方向配線6でマトリクス配線したマルチ電子ビーム源を有するものとなっている。また、本例においては、行方向配線5が電極間絶縁層7を介して列方向配線6上に位置しており、しかも行方向配線5には引出端子Dx1〜Dxmを介して走査信号が印加され、列方向配線6には引出端子Dy1〜Dynを介して変調信号(画像信号)が印加されるものとなっている。
行方向配線5および列方向配線電極6は、銀ペーストをスクリーン印刷法により塗布することで形成することができる。また、例えばフォトリソグラフィ法を用いて形成することもできる。
行方向配線5および列方向配線電極6の構成材料としては、上記銀ペーストの他に、各種導電材料を適用することができる。例えば、スクリーン印刷法を用いて行方向配線5および列方向配線電極6を形成する場合には、金属とガラスペーストと混合させた塗布材料を用いることができ、めっき法を用いて金属を析出させることで行方向配線5および列方向配線電極6を形成する場合には、めっき浴材料を適用することができる。
フェースプレート2の下面(リアプレート1との対向面)には、蛍光膜10が形成されている。本例の表示パネルはカラ−表示であるため、蛍光膜10は赤、緑、青の3原色の蛍光体が塗り分けられている。各色の蛍光体は、例えばストライプ状に塗り分けられており、各色の蛍光体のストライプの間には黒色の導電体(ブラックストライプ)が設けられている。黒色の導電体を設ける目的は、電子ビ−ムの照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにすること、外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐこと、電子ビ−ムによる蛍光膜のチャ−ジアップを防止することなどである。黒色の導電体としては、黒鉛を主成分とした材料を用いることができるが、上記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用いることもできる。また、3原色の蛍光体の塗り分け方は、上記ストライプ状だけでなく、例えばデルタ状配列や、それ以外の配列とすることもできる。
上記蛍光膜10の表面には、フェースプレート2に設けられた導電性部材であるメタルバック(加速電極)11が設けられている。このメタルバック11は、電子放出素子8から放出される電子を加速して引き上げるためのもので、高圧端子Hvから高電圧が印加され、前記行方向配線5に比して高電位に規定されるものとなっている。本例のような表面伝導型電子放出素子を用いた表示パネルの場合、通常、行方向配線5とメタルバック11間には5〜20KV程度の電位差が形成される。
行方向配線5上には、行方向配線5と平行に、板状のスペーサ3が取り付けられている。このスペーサ3は、行方向配線5上に乗せられた状態で、両端がスペーサ固定ブロック12に取り付けられて支持されている。スペーサ固定ブロック12を用いてスペーサ3を固定することで、電子の運動エネルギーが小さく、電子軌道が電場の影響を受けやすい電子放出素子8近傍の電場の乱れを小さくすることができる。
スペーサ3は、表示パネルに耐大気圧性を持たせるために、通常、等間隔で複数設けられ、電子放出素子8、これを駆動するための行方向配線5および列方向配線6が設けられた電子源基板9を有するリアプレート1と、蛍光膜10およびメタルバック11が設けられたフェースプレート2との間に挟み込まれ、上下面がメタルバック11と行方向配線5にそれぞれ圧接されている。また、リアプレート1とフェースプレート2の周縁部には、側壁4が挟み込まれており、リアプレート1と側壁4の接合部およびフェースプレート2と側壁4の接合部は、それぞれフリットガラスなどによって封止されている。
さらにスペーサ3について説明すると、スペーサ3は、リアプレート1側の行方向配線5および列方向配線6とフェースプレート2側のメタルバック11との間に印加される高電圧に耐えるだけの絶縁性を有し、かつスペーサ3の表面への帯電を防止する程度の導電性を有する。スペーサ3は、図4に示されるように、絶縁性材料で構成された基体13と、その表面を被覆する高抵抗膜14で構成されている。
スペーサ3の基体13の構成材料としては、例えば石英ガラス、Naなどの不純物含有量を減少したガラス、ソーダライムガラス、アルミナなどのセラミックスなどが挙げられる。この基体13の構成材料は、その熱膨張率が、電子源基板9、リアプレート1、フェイスプレート2などの構成材料と同一または近いものが好ましい。
スペーサ3の表面を被覆する高抵抗膜14には、高電位側となるメタルバック11に印加される加速電圧Vaを高抵抗膜14の抵抗値で除した電流が流され、これによってスペーサ3表面への帯電が防止される。このため、高抵抗膜14の抵抗値は、帯電および消費電力からその望ましい範囲に設定される。高抵抗膜14のシート抵抗は、帯電防止の観点からすると、1014Ω/□以下が好ましく、1012Ω/□以下であることがより好ましく、1011Ω/□以下であることが最も好ましい。高抵抗膜14のシート抵抗の下限は、スペーサ3形状とスペーサ3間に印加される電圧により左右されるが、消費電力を抑制するために、105Ω/□以上であることが好ましく、107Ω/□以上であることがより好ましい。
高抵抗膜14を構成する材料の表面エネルギーおよび基体13との密着性や基体13の温度によっても異なるが、一般的に10nm以下の薄膜は島状に形成され、抵抗が不安定で再現性に乏しい。一方、膜厚が1μm以上では膜応力が大きくなって膜はがれの危険性が高まり、かつ成膜時間が長くなるため生産性が悪い。従って、基体13上に形成する高抵抗膜14の厚みは10nm〜1μmの範囲が好ましい。より好ましくは、膜厚は50〜500nmである。シート抵抗はρ/t(ρ:比抵抗、t:膜厚)であり、前記シート抵抗と膜厚の好ましい範囲から、高抵抗膜14の比抵抗ρは0.1〜108Ωcmであることが好ましい。さらにシート抵抗と膜厚のより好ましい範囲を実現するためには、比抵抗ρは102〜106Ωcmとするのが好ましい。
スペーサ3は、前記のように、その表面に形成した高抵抗膜14に電流が流れることや、表示パネル全体が動作中に発熱することにより、その温度が上昇する。高抵抗膜14の抵抗温度係数が大きな負の値であると、温度が上昇した時に抵抗値が減少し、高抵抗膜14に流れる電流が増加し、さらなる温度上昇をもたらすことになる。そして、電流は電源の限界を越えるまで増加し続ける。このような電流の暴走が発生する抵抗温度係数の値は、経験的に、負の値でしかも絶対値が1%以上である。すなわち、高抵抗膜14の抵抗温度係数は、−1%より大きい値であることが好ましい。
高抵抗膜14の構成材料としては、例えば金属酸化物を用いることができる。金属酸化物の中でも、クロム、ニッケル、銅の酸化物が好ましい。その理由は、これらの酸化物は二次電子放出効率が比較的小さく、電子放出素子8から放出された電子がスペーサ3に当たっても帯電しにくいことにある。これらの金属酸化物以外では、炭素は二次電子放出効率が小さく、好ましい材料である。特に、非晶質カーボンは高抵抗であるため、適切なスペーサ3の表面抵抗が得やすい。
高抵抗膜14の他の構成材料として、アルミニウムと遷移金属の合金の窒化物は、遷移金属の組成を調整することにより、良導電体から絶縁体まで広い範囲に抵抗値を制御できると共に、表示パネルの製造工程における抵抗値の変化が少なく、安定していることから、好適な材料である。遷移金属元素としては、Ti、Cr、Taなどを挙げることができる。
上記合金窒化物膜は、窒素ガス雰囲気を利用した、スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーテイング、イオンアシスト蒸着法などの薄膜形成手法により形成することができる。前記金属酸化物膜は、酸素ガス雰囲気を利用した薄膜形成手法で形成することができる。その他、CVD法、アルコキシド塗布法でも金属酸化膜を形成することができる。カーボン膜は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法で作製され、特に非晶質カーボン膜は、成膜中の雰囲気に水素が含まれるようにするか、成膜ガスに炭化水素ガスを使用することで得ることができる。
スペーサ3は、前記のように、リアプレート1とフェースプレート2間に挟み込まれており、その表面を被覆している高抵抗膜14は、リアプレート1側の配線(本例では行方向配線5)と、フェースプレート2側の導電性部材(本例ではメタルバック11)とに圧接され、それぞれ電気的に接続されている。特に行方向配線5との電気的接続は、図2に示されるように、行方向配線5の列方向配線6との交差部が他の箇所に比して列方向配線6の厚み分だけフェースプレート2側に突出していることから、当該部分と高抵抗膜14が接触することで行われている。すなわち、高抵抗膜14と行方向配線5の電気的接続は、図3に示されるように、行方向配線5の列方向配線6との交差部が接触部15、それ以外の箇所が非接触部16となることで、当該交差部の間隔で行われている。このときのスペーサ3表面におけるリアプレート1近傍の等電位線17を模式的に図2に太線で示す。
図2に示される等電位線17および図3から分かるように、非接触部16にも高抵抗膜14が存在するため、非接触部16近傍の電位が持ち上がる。これは、メタルバック11から接触部15へと流れる電流の経路のうち、非接触部16を介する電流経路の抵抗値の方が、非接触部16を介さない電流経路(例えば、接触部15の直上部分からの電流経路)の抵抗値より大きいため、この増加抵抗値による電圧降下分だけ電位が持ち上がるために生じる。
また、図1および図2に示されるように、列方向配線6は等間隔であることから、上記接触部15と非接触部16は等間隔で形成されており、しかも電子放出素子8は、図1から明らかなように、行方向配線5と列方向配線6の間にあることから、スペーサ3に隣接する電子放出素子8は総て非接触部16に隣接する位置にあり、この電子放出素子8から放出される電子ビームは、総て非接触部16に対応するスペーサ3の表面電位の影響を等しく受けるものとなっている。
図4に模式的に示されるように、本例における電子放出素子8は、スペーサ3に隣接するものを除いて行方向配線5間のほぼ中央に設けられているが、スペーサ3に隣接する電子放出素子8は、距離Lだけスペーサ3側に近付けて設けられている。この距離Lをオフセットという。また、図4に破線で示される電子ビーム軌道18のように、電子放出素子8から放出される電子は、(1)電子放出素子8の電子放出部近傍ではスペーサ3から遠ざかるように飛翔し、(2)スペーサ3の底面近傍に対応する位置では逆にスペーサ3に近付くように飛翔し、最終的に所望の所定照射位置19に到達している。ここで、所望照射位置とは、複数配列形成された電子放出素子の各々から放出された電子ビームの照射位置が、互いに略等間隔となる位置を意味し、上記図4の形態では、隣接する行方向配線間の略中心に対応する位置のフェースプレート部分に想到する。所定照射位置19に電子ビームが到達する理由を以下に詳しく説明する。
電子放出部近傍
行方向配線5と列方向配線6は、メタルバック11に印加される電子ビーム加速用の電圧と比較するとほぼ同電位(0V)とみることができる。高抵抗膜14と行方向配線5の接触部15(図3参照)が電子放出素子8よりも上方(フェースプレート2側)にあるため、図4に示されるように、電子放出素子8上方の等電位線20は、電子放出素子8の電子放出部近傍では下に凸の曲線となる。電子放出素子8がスペーサ3側に片寄った位置になく、行方向配線5間のほぼ中央である場合は、電位分布の対称性により電子ビームはほぼ垂直な軌道をとるが、本例のようにスペーサ3に近付いていると、電位分布が非対称となり、スペーサ3から遠ざかるような軌道をとる。
スペーサ3に隣接する電子放出素子8をオフセットLをとらずに、行方向配線5間のほぼ中央に設けた場合の電子ビーム軌道18を図5に示す。また、スペーサ3を取り除いた状態で、電子放出素子8をオフセットL(行方向配線5間の中央から電子放出素子8の電子放出部までの距離)だけ一方の行方向配線5側に近付けた場合の電子ビーム軌道18を図6に示す。
スペーサ3から遠ざかる成分はオフセットLの関数であり、本例ではオフセットLが大きくなるほど(電子放出素子8がスペーサ3に近づくほど)電子ビーム軌道18はスペーサ3から遠ざかることになる。オフセットLと、電子ビームが到達する位置のスペーサー3からの距離との関係を図7に示す。
スペーサ3の底面近傍対応位置
図2および図3で説明したように、スペーサ3の高抵抗膜14が、列方向配線6との交差部毎に行方向配線5と接触している結果、図3に示す非接触部16の電位が上昇し、図4に示すように、スペーサ3の底面近傍に対応する上に凸の等電位線20を生じ、電子ビームはスペーサ3に近付くように飛翔する。
スペーサ3に近付く成分は、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態によって決まる接触部15(図3参照)の面積(接触面積)Sの関数であり、その様子をあらわしたのが図8である。図8に示されるように、接触面積Sが大きくなるほど電子ビームはスペーサから遠ざかる。
高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態は、上記面積Sだけでなく、他にも様々なパラメータで表すことができる。例えば図3に示される接触部15の周囲長、行方向配線5の幅方向の非接触部16の長さGy、行方向配線5の長さ方向の隣接接触部15間距離Gxなどの関数としても表すことができる。接触部15の周囲長が小さくなればなるほど、Gx、Gyが大きくなればなるほど、電子ビームはスペーサ3に近付く。
以上の説明より、オフセットLや、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態(例えば接触面積S)という、スペーサ3自体とは関係しない別個の独立なパラメータによって電子ビームの到達位置を制御できることが分かる。
図9は、縦軸にオフセットL、横軸に接触面積Sをとり、電子ビームが所定照射位置19(図4参照)に到達するオフセットLと接触部面積Sの関係を示す曲線を表したものである。
図9から分かるとおり、電子ビームが所定照射位置19に到達するずれの無い条件は複数存在し、例えば図9のA点の条件でもB点の条件でも設計できる。A点の条件に比してオフセットLが大きく、接触面積Sが小さいB点の条件で設計する場合、例えば行方向配線5を蒲鉾断面形状とし、行方向配線5の上面を平面ではなく、曲面とすることで、接触面積Sを小さくすることができる。
実際の設計では、例えば静電界計算と電子ビーム軌道シミュレーションから、所定照射位置19に到達するオフセットLと接触状態(例えば接触面積S)を決定する。また、実測データに基づく条件決定も可能である。
以上説明してきた通り、本発明によれば、スペーサ3自体の構成によらず、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態やオフセットLを制御することで所望の電子ビーム到達位置を達成することができる。このため、本発明によれば、同一構成のスペーサ3で、様々な画像形成装置に対応可能である。例えば高精細化のために画素ピッチを変更したり、高輝度化のために加速電圧を高くしたりすることに基づく仕様変更の場合でも、スペーサ3自体は同一のものを用い、上記高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態やオフセットLの変更で対応することができる。従って、本発明によれば、生産性を著しく向上させ、コストの大幅な削減に結び付けることができる。
本例で説明した表示パネルにつき、スペーサ3の基材として、旭ガラス(株)製のPD200を用い、高抵抗膜14として窒化タングステン・ゲルマニム合金化合物(WGeN)を、タングステンターゲットとゲルマニウムターゲットを窒素ガス中で、同時スパッタリングして成膜した。このときスペーサ3の基体13を回転させながら成膜することで、表面全面にわたり膜厚は200Å、シート抵抗は2.5×1012Ω/□であった。
また、スペーサ3の総厚を300μm、スペーサー3の総高さを2.4mm、列方向配線6間の間隔(当接点の間隔)を300μm、行方向配線5間の間隔を920μm、行方向配線5の幅を690μm、電子放出素子8の電子放出部から行方向配線5の上面までの高さを75μmとし、メタルバック11への印加電圧を15KV、行方向配線5と列方向配線6間への印加電圧は14Vとした場合の面積SとオフセットLとの関係を表1に示す。なお、表1における条件A,Bは、図9における点A,Bに対応する。
(第2の例)
本発明の第2の例について、第1の例と違う点のみ説明する。
図10、図11、図13は第1の例の図2、図3、図4に対応する図で、本例と第1の例との違いは、列方向配線6との交差位置の行方向配線5上に導電性台部21を有する点である。このような構成にすることで接触状態を安定させ、電子ビーム到達位置を精度よく制御することができる。
導電性台部21は、行方向配線5を形成した後、行方向配線5と同様の方法で行方向配線5上に形成することができる。また、この導電性台部21は、総ての行方向配線5に一括して形成してもよいが、スペーサ3が当接される行方向配線5にのみ形成してもよい。
導電性台部21は、スペーサ3の基体13よりも堅い材料で形成することが好ましい。例えば、スペーサ3をガラスを基体13として形成し、導電性台部21をこのガラスよりもヤング率の小さい導電性セラミックスで構成することが挙げられる。この場合、導電性台部21の変形がより小さくなることで、個々の接触部15の形状や位置などのばらつきが少なくなり、電子ビーム到達位置の更なる精度向上が望める。尚、導電性台部を設けた場合に限らず、配線とスペーサが直接接する場合は、配線をスペーサのガラス基体よりも硬くすれば(ヤング率を小さくすれば)、同様の効果が得られる。
(第3の例)
本発明の第3の例について、第2の例と違う点のみ説明する。
導電性台部21の配置場所は、必ずしも第2の例のように、行方向配線5の列方向配線6と交差する部分上である必要はない。本例においては、図13に示されるように、第2の例の1/2のピッチで導電性台部21が配置されている。
第2の例と同様に、導電性台部21はスペーサ3の基体13よりも堅い部材で形成することが好ましい。また、本例のように導電性台部21を配置することで、接触面設計の自由度が大きくなるという利点がある。
列方向配線6と行方向配線5との交差部以外でスペーサ3と行方向配線5を接触させることは、列方向配線6を形成しない領域に接触点形成用の下地を設けることによっても可能である。以下にその一例を示す。
図14はこの形態の概要を示す部分拡大図であり、図15は、図14のA−A断面図である。
図14および図15に示すとおり、部分電極22を設け、これを絶縁層23に設けられたコンタクトホール24を介して行方向配線5に接続すると共に、部分電極22に、列方向配線6に接続された素子電極25と向き合うもう一つの素子電極26を接続しておくことで、部分電極22とコンタクトホール24による段差を利用して、スペーサ3(図13参照)と行方向配線5の接触部を増やすことができる(行方向配線5の凸部を増やすことができる)。
この構成の具体的製造方法を図16(a)〜(d)を用いて説明する。
まず、図16(a)に示すよう、素子電極25,26を形成した後、図16(b)に示すように、部分電極22および列方向配線6を一括形成し、図16(c)に示すように、この部分電極22と列方向配線6の一部の上に絶縁層23を形成した後、部分電極22上の絶縁層23を部分電極22より一回り小さい形で除去してコンタクトホール24を形成し、さらに図16(d)に示すように、絶縁層23上に行方向配線5を形成し、コンタクトホール24(図16(c)参照)を介して部分電極22に接続する。このようにして形成された行方向配線5上に、スペーサ3(図13参照)を配置することによって、列方向配線6と行方向配線5との交差部以外にもスペーサ3と行方向配線5の接触部が得られる構成を実現することができる。
(第4の例)
本発明の第4の例について、第1の例と違う点のみ説明する。
図17および図18は第1の例についての図4および図5に対応する図で、図示されるように、本例におけるスペーサ3と行方向配線5の接触面は低い位置にあり、実質的に電子放出素子8の電子放出部と同一平面にある。このため、図17に示される通り、等電位線20として、図4に示されるような下に凸な形状のものがないか、非常に小さいため、オフセットLと電子ビーム到達位置の関係は、第1の例と反対の傾向を示す。
すなわち、電子放出素子8がスペーサに近づくほど、電子ビームはスペーサ3に近づく。さらにスペーサ3と行方向配線5の接触面の高さよりも、電子放出素子8の電子放出部のほうが高い場合も同様の傾向で、電子放出素子8がスペーサ3に近づくほど、電子ビームはスペーサ3に近づく。
図17に示されるように、オフセットLだけスペーサ3から離れる位置に配置された電子放出素子8から放出された電子ビームは、ゆがんだ等電位線20によりスペーサ3に近づくように飛翔し、所望の電子ビーム到達位置を得る。ゆがんだ等電位線20ができるのは、第1の例で説明した通り、高抵抗膜14と行方向配線5の部分的な接触によるものである。また、スペーサ3を取り除いた状態で、電子放出素子8をオフセットLだけ一方の行方向配線5側に近付けた場合の電子ビーム軌道18を図18に示す。
以上のように、表示パネルの大きな設計変更の際にも本発明を適用することで電子ビームずれの無い画像形成装置を実現することができる。
(第5の例)
本発明の第5の例について、第1の例と違う点のみ説明する。
本例は、スペーサ3の接触制御をフェースプレート2側に適用した例である。
図19および図20は、第1の例の図2および図4に対応するもので、本例においては、フェースプレート2側に導電性台部21を設け、これによって図3で説明した接触部15と非接触部16をフェースプレート2側にも形成して電位分布を制御し、所望の電子ビーム到達位置を達成しているものである。
具体的には、図20に示されるように、(1)電子放出素子8の電子放出部近傍で電子ビームをスペーサ3から遠ざけ、(2)スペーサ3の行方向配線5との接触面近傍の高さの位置でスペーサ3に近付け、(3)スペーサ3のメタルバック11との接触面近傍で再びスペーサ3から遠ざけることで、所望の電子ビーム軌道18を得ているものである。
本例では、導電性台部21を用いる構成にしたが、例えば前述の黒色の導電体(ブラックストライプ)をフェースプレート2側で接触する導電性部材として用いるような構成にしてもよい。また、フェースプレート2側の接触制御においても、第1の例〜第3の例で述べたリアプレート1側における接触制御の考えを適用することができる。
具体的には、スペーサ3のフェースプレート2側接触面近傍で電子ビーム軌道18を遠ざける成分は、高抵抗膜14とフェースプレート2側の導電性台部21の接触状態の関数、例えば接触面積Sの関数であり、接触面積Sが小さいほど電子ビームはスペーサ3から遠ざかる。また、導電性台部21はスペーサ3の基体13より堅いと電子ビーム位置の精密制御に有利であり、さらに導電性台部21は任意の場所に配置設計することができる。
また、以上の例においては、スペーサ3の高抵抗膜14は、リアプレート1側では行方向配線5に接触させているが、列方向配線6が表面に露出するようにした場合には、列方向配線6に接触させるようにすることもできる。