JP2004363384A - 高周波用磁心 - Google Patents

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Takanobu Saitou
貴伸 斉藤
Satoshi Takemoto
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Abstract

【課題】高周波域でもコアロスが小さく、形状の小型化・複雑化も実現できる高周波用磁心を提供する。
【解決手段】次式:D50/ρ≦22(ただし、D50は用いる粉末の粒度分布における重量での累積値50%時の粒径(単位:μm)を表し、ρは前記用いる粉末の電気抵抗率(単位:μΩ・m)を表す)を満たす軟磁性粉末を用いた磁心であって、電気抵抗率が0.05Ω・m以上であり、かつ、周波数500kHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下で測定した渦電流損、ヒステリシス損、およびコアロスが、それぞれ、3×10kW/m以下、1×10kW/m以下、4×10kW/m以下である高周波用磁心。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波磁心に関し、更に詳しくは、数100kHz以上の高周波域での使用時にあっても低コアロスであり、そして形状小型化が可能である磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種電気・電子機器の多機能化と小型化・軽量化が進められているが、とくに例えばノート型パソコンの場合は小型化・軽量化に重点が置かれ、そのことに伴って、スイッチング電源用部品として組み込まれる磁心に対しても形状小型化が強く求められている。
【0003】
従来、このようなスイッチング電源用の磁心としてはフェライト磁心が広く用いられているが、このフェライト磁心には次のような問題がある。
最近のパソコン機器においては、そのCPUの高速動作化のために電源における高電流化が進められているが、その場合、磁束密度が高いとはいえないフェライト磁心は飽和して機能停止することが多い。これを防ぐためには、フェライト磁心の形状を大型にすればよいのであるが、これは、パソコン機器の小型化・軽量化の要求に反することになる。
【0004】
このようなことから、最近では、フェライトよりも飽和磁化が大きい軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁心が使用されるようになってきている。
この圧粉磁心は、対象とする部品が小型で複雑な形状であっても高い歩留まりで製造することができる。
この圧粉磁心は、概ね次のようにして製造されている(特許文献1を参照)。
【0005】
まず、所定組成の軟磁性合金に機械粉砕法やアトマイズ法などを適用して、所定の粒度分布を有する軟磁性粉末を製造する。
次に、この軟磁性粉末に、所定量の絶縁材料と、必要に応じてはバインダ成分とを均一に混合して軟磁性粉末の表面を上記材料で被覆する。
なお、以降の説明においては、上記絶縁材料とバインダ成分を一括して「絶縁バインダ」と呼ぶ。
【0006】
ついで、得られた混合物を金型に充填したのち所定の圧力でプレス成形して、圧粉磁心のグリーン体を製造する。このとき、成形性を高めたり、成形密度を高めるために、通常は上記した混合物にステアリン酸亜鉛のような潤滑剤の所定量が混合される。
そして最後に、上記グリーン体に熱処理を施して、成形時に蓄積された歪みを解放し、目的とする圧粉磁心を得る。
【0007】
このようにして製造された圧粉磁心は、軟磁性粉末が相互に絶縁バインダによって電気的に絶縁されているので、全体として電気抵抗率は高い。
ところで、各種の電気・電子機器では、電源の小型化のため、スイッチング周波数の高周波化が進んでいる。従来の使用周波数は100kHz程度であったものが、数100kHzへ移行し始め、将来は1MHzの仕様も計画されている。
【0008】
したがって、このようなスイッチング電源に組み込まれる磁心は、高周波域でもコアロスの小さいことが要求される。コアロスが大きいと、磁心の発熱が進み、また電源効率が低下するからである。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−64011号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、形状の小型化または複雑化の要求に応えることもでき、同時に高周波域での使用時にも低コアロスである新規な磁心の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成するために鋭意研究を重ねる過程で、形状小型化の要求に対しては前記した圧粉磁心で対応することとした。また高周波域での低コアロス化に関しては以下の点に着目した。
すなわち、コアロスは、周波数の関数である渦電流損と、磁心の構成材料で左右されるヒステリシス損との算術和であること、また渦電流損は磁心それ自体の電気抵抗率の関数であり、その電気抵抗率は使用粉末それ自体の電気抵抗率と粒径、更には磁心の製造過程における条件によっても影響を受けることなどである。
【0012】
そこで、組成、粒径、電気抵抗率が異なる各種の軟磁性粉末を用い、また製造条件も変えて様々な磁心を製造し、それら磁心の電気抵抗率とコアロスを測定したところ、後述する関係を満足する軟磁性粉末を用い、かつ磁心の電気抵抗率を後述する値に制御することにより、高周波域での使用時に低コアロスの磁心の製造が可能であるとの事実を見出し、本発明の磁心を開発するに至った。
【0013】
すなわち、本発明においては、まず第1に、次式:D50/ρ≦22 …(1)
(ただし、D50は用いる粉末の粒度分布における重量での累積値50%時の粒径(単位:μm)を表し、ρは前記用いる粉末の電気抵抗率(単位:μΩ・m)を表す)
を満たす軟磁性粉末を用いた磁心であって、
電気抵抗率が0.05Ω・m以上であり、かつ、周波数500kHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下で測定した渦電流損、ヒステリシス損、およびコアロスが、それぞれ、3×10kW/m以下、1×10kW/m以下、4×10kW/m以下であることを特徴とする高周波用磁心(以下、第1の磁心という)が提供される。
【0014】
また、本発明においては、第2に、次式:D50/ρ≦22 …(1)
(ただし、D50は用いる粉末の粒度分布における重量での累積値50%時の粒径(単位:μm)を表し、ρは前記用いる粉末の電気抵抗率(単位:μΩ・m)を表す)
を満たす軟磁性粉末を用いた磁心であって、
電気抵抗率が0.05Ω・m以上であり、かつ、周波数1MHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下で測定した渦電流損、ヒステリシス損、およびコアロスが、それぞれ、10×10kW/m以下、2×10kW/m以下、12×10kW/m以下であることを特徴とする高周波用磁心(以下、第2の磁心という)が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1の磁心、第2の磁心は、いずれも、D50値とρ値が(1)式の関係を満たしている軟磁性粉末を用いて製造される。そして製造された磁心の電気抵抗率はいずれも0.05Ω・m以上の値に制御される。
そして、本発明の磁心は、周波数500kHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下で渦電流損(Peとする)、ヒステリシス損(Phとする)、コアロス(Pcとする)を測定すると、Pe≦3×10kW/m、Ph≦1×10kW/m、Pc≦4×10kW/mの値を示す。これを、本発明が提供する第1の磁心とする。
【0016】
また、本発明の磁心は、周波数1MHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下でPe,Ph,Pcを測定すると、Pe≦10×10kW/m、Ph≦2×10kW/m、Pc≦12×10kW/mの値を示す。これを、本発明が提供する第2の磁心とする。
(1)式のD50/ρにおいて、D50は、次のような値として定義される。
【0017】
すなわち、用いる粉末はある粒度分布を有しているが、その粒度分布において粒径の小さい粉末から順に累積していき、その累積値が用いる粉末の全体重量の50%に達した時点における粒径(単位はμm)として定義される。
換言すれば、D50以下の粉末の重量が、粉末全体の重量の50%を占めている粉末のことをいう。このD50値が大きい粉末は全体として粒径が小さい粉末の割合が多く、逆にD50値が小さい粉末は粒径が大きい粉末の割合が多い。
【0018】
また、ρは、次のような値として定義される。
すなわち、用いる粉末と同じ成分の合金を融解したのち冷却し、得られたブロックから所定形状の試験片を作製し、その試験片に対して直流4端子法で測定したときの電気抵抗率(単位はμΩ・m)である。
したがって、このρ値は、粉末の形状ファクタが消去されていて、当該粉末の材質のみで規定される値である。この値が大きい材料の粉末は渦電流が流れにくいため、渦電流損は小さくなり、逆にこの値が小さい材料の粉末は渦電流が流れやすいため、渦電流損は大きい。
【0019】
ここで、(1)式を満たさない粉末を用いると、製造された磁心のPcは、周波数500kHzでの使用時に4×10kw/mより大きくなり、また周波数1MHzでの使用時に12×10kw/mより大きくなってしまう。
また、製造後の磁心の電気抵抗率が0.05Ω・mより小さくなると、Phの変動は少ないが、Peが大きく変動して、結局Pcは、周波数500KHzでの使用時に4×10kw/mより大きくなり、また周波数1MHzでの使用時に12×10kw/mより大きくなってしまう。
【0020】
用いる軟磁性粉末としては、(1)式を満たしていれば、その組成などは格別限定されるものではなく、従来から磁心用の粉末として使用されているものであれば何であってもよい。そして製造された磁心のPe,Ph,Pcは、各周波数での使用時に前記した値を満たす。
ただし、粉末の合金組成によってはρ値が変動する。したがって、粉末の使用に際しては、ρ値に対応してD50値を選択し、(1)式を満足する状態にして使用することが必要である。
【0021】
例えば、ρ値が小さい合金組成の粉末を用いる場合は、D50/ρ値が(1)式を満たすようなD50値になる粒度分布を有する粉末を用いることになる。
本発明の磁心は、プレス成形法または射出成形法を適用して製造することができる。
プレス成形法を適用する場合には、まず(1)式を満たす粉末を用意し、これと絶縁バインダを混合して粉末の表面を絶縁バインダで被覆する。そのとき、絶縁バインダの添加量が多くなれば、製造された磁心の電気抵抗率も大きくなってコアロスは減少し、逆に少なくなれば電気抵抗率は小さくなってコアロスが増大する。
【0022】
したがって、この過程では、磁心の電気抵抗率が0.05Ω・m以上になるように、絶縁バインダの添加量は適切に調整される。概ね、粉末100質量部に対し、絶縁バインダを0.1質量部以上添加すれば充分である。
なお、絶縁バインダとしては、例えば、水ガラス、低融点ガラス、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂などを使用することができる。
【0023】
グリーン体の成形に関しては、通常の一軸冷間プレス成形を適用すればよい。そのときの成形圧は、室温下で500〜2000MPa程度であればよい。
そして最後に、得られたグリーン体に熱処理を施して成形歪みを解放する。このときに、高温で長時間の熱処理を行うと、磁心の電気抵抗率は低下してコアロスの増大が引き起こされるので、磁心の電気抵抗率が0.05Ω・mより低くならないような熱処理条件が設定されるべきである。具体的には、例えばAr雰囲気下において、温度600〜800℃の範囲内で0.1〜2時間程度の熱処理であれば、電気抵抗率の低下を招くことなく、充分に成形歪みを除去することができる。
【0024】
射出成形法を適用する場合には、(1)式を満たす粉末と絶縁バインダでもある成形用樹脂をホッパに投入し、加熱状態下でスクリューで混練して樹脂を溶融状態にし、その溶融混練物を金型に射出したのち冷却する。
このときの粉末に対する樹脂の混練割合は、成形性に影響を与えると同時に成形品の電気抵抗率も規定するので、樹脂の混練割合は、成形品の電気抵抗率が0.05Ω・m以上になり、かつ、射出成形が可能である量に調整される。具体的には、樹脂は30〜70体積%程度混練すればよい。
【0025】
用いる樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイド、ナイロンなどをあげることができる。
【0026】
【実施例】
組成とρ値が異なる表1で示した各種の軟磁性粉末を用意した。これらの粉末は、いずれも、水アトマイズ法で製造されたものであり、そのときの水圧、水量などの噴霧条件を変化させることにより、表示した粒径になっている。
これらの粉末を用い、下記するプレス成形法と射出成形法で磁心を製造した。
【0027】
(i)プレス成形法の場合
まず、各粉末をH雰囲気下において、温度950℃で3時間の熱処理を行い冷却した。
ついで、粉末100質量部に対し、シリコーン樹脂1質量部を混合し、更にステアリン酸亜鉛0.5質量部を潤滑剤として混合した。
【0028】
この混合物を、室温下において金型に充填し、成形圧1500〜2000MPaでプレス成形して、外径10mm、内径6mm、高さ2mmのトロイダル状グリーン体を成形した。
最後に、このグリーン体を、Ar雰囲気中において、温度700℃で1時間の熱処理を行って圧粉磁心を製造した。
【0029】
(ii)射出成形法の場合
まず、各粉末をH雰囲気下において、温度950℃で3時間の熱処理を行い冷却した。
ついで、粉末とポリフェニレンサルファイドを60%:40%の体積割合で射出成形機のホッパに投入し、温度230℃で射出成形を行い、縦20mm、幅20mm、厚み2mmの板材を成形した。
【0030】
そして、この板材から、外径10mm、内径6mm、高さ2mmのトロイダル状の試験片を加工した。
以上の各試験片につき直流4端子法で電気抵抗率を測定した。また、各試験片には巻線を施し、周波数500KHz、励磁磁束密度0.1Tの場合、周波数1MHz、励磁磁束密度0.1Tの場合のそれぞれにつき、Pe,Ph,Pcを測定した。
【0031】
以上の結果を一括して表1に示した。
【0032】
【表1】
Figure 2004363384
【0033】
表1から次のことが明らかである。
(1)実施例1と比較例1を対比すると、両者とも用いた粉末の組成は同じである。しかし、D50値は異なっているので、実施例1の場合は、D50/ρ≦22を満たしているが、比較例1の場合は、D50/ρ値が53.2と非常に大きくなっている。そして、実施例1の場合のコアロスは、周波数500KHz、励磁磁束密度0.1Tにおいて、Pe≦3×10kW/m、Ph≦1×10kW/m、Pc≦4×10kW/m、周波数1MHz、励磁磁束密度0.1Tにおいて、Pe≦10×10kW/m、Ph≦2×10kW/m、Pc≦12×10kW/mをクリアしているが、比較例1の場合は、Peが極度に大きくなってしまう。
【0034】
このようなことから、用いる粉末としては、D50/ρ≦22を満たすものを使用すべきである。
(2)実施例3と比較例2,3を対比すると、これらはその粉末組成、D50値、ρ値、D50/ρは同じである。しかし、比較例2の場合は、実施例3の場合に比べて熱処理温度が高いため、得られた磁心の電気抵抗率は0.02Ω・mと低い値になっており、比較例3の場合は絶縁バインダの添加量が少ないので、得られた磁心の電気抵抗率は0.04Ω・mになっている。
【0035】
そして、比較例2,3は、いずれも、Peが極度に大きくなっていて、周波数500KHz、1MHzのいずれにおいても低コアロスを実現していない。
このようなことから、製造された磁心の電気抵抗率は0.05Ω・m以上となるように、製造条件は設計されるべきである。
(3)いずれにしても、D50/ρ値が22以下の粉末を用い、かつ電気抵抗率が0.05Ω・m以上となるように製造された磁心は、用いる粉末の種類とは無関係に、周波数500KHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下では、Pe≦3×10kW/m、Ph≦1×10kW/m、Pc≦4×10kW/mのコアロスとなり、また周波数1MHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下では、Pe≦10×10kW/m、Ph≦2×10kW/m、Pc≦12×10kW/mのコアロスになる。
【0036】
(4)その場合、実施例8と実施例13を対比して明らかなように、両者は同じ粉末を用いているが、成形法が異なっている。そして、実施例13の場合は、射出成形法で成形されているので、実施例8の場合に比べて絶縁バインダ(ポリフェニレンサルファイド)の添加量は多くなっていて、その結果、磁心の電気抵抗率は非常に高くなっている。しかし、両者ともコアロスは略同じ値になっている。
【0037】
このようなことから、本発明の高周波用磁心は、プレス成形法に限らず射出成形法で製造してもよいことが判明した。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明は、用いる軟磁性粉末の種類とは無関係に、周波数500KHzでの使用時において、渦電流損が3×10kW/m以下、ヒステリシス損が1×10kW/m以下、コアロスが4×10kW/m以下であり、また周波数1MHzでの使用時において、渦電流損が10×10kW/m以下、ヒステリシス損が2×10kW/m以下、コアロスが12×10kW/m以下となる。
【0039】
これは、本発明の磁心が、D50/ρ≦22を満たす粉末を用い、かつ電気抵抗率が0.05Ω・mとなるように製造されているからである。
また、本発明の磁心は、プレス成形法や射出成形法によって製造することができるので、形状が小形で、また複雑化している例えばトロイダル状、EE型、EI型、表面実装型である磁心としても製造することができる。

Claims (2)

  1. 次式:D50/ρ≦22
    (ただし、D50は用いる粉末の粒度分布における重量での累積値50%時の粒径(単位:μm)を表し、ρは前記用いる粉末の電気抵抗率(単位:μΩ・m)を表す)
    を満たす軟磁性粉末を用いた磁心であって、
    電気抵抗率が0.05Ω・m以上であり、かつ、周波数500kHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下で測定した渦電流損、ヒステリシス損、およびコアロスが、それぞれ、3×10kW/m以下、1×10kW/m以下、4×10kW/m以下であることを特徴とする高周波用磁心。
  2. 次式:D50/ρ≦22
    (ただし、D50は用いる粉末の粒度分布における重量での累積値50%時の粒径(単位:μm)を表し、ρは前記用いる粉末の電気抵抗率(単位:μΩ・m)を表す)
    を満たす軟磁性粉末を用いた磁心であって、
    電気抵抗率が0.05Ω・m以上であり、かつ、周波数1MHz、励磁磁束密度0.1Tの条件下で測定した渦電流損、ヒステリシス損、およびコアロスが、それぞれ、10×10kW/m以下、2×10kW/m以下、12×10kW/m以下であることを特徴とする高周波用磁心。
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