JP2004507253A - 患者の腫瘍治療に対する応答能の決定方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング方法に関し、該方法を実施するための診断試験にも関する。
Description
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング方法に関する。本発明は、該方法を実施するための診断試験にも関する。
【0002】
発明の背景
治療研究において、腫瘍の発達に対抗することができる治療には、大きな関心が寄せられている。腫瘍は必ずしも同一ではないため、一部の患者のみが、特定の腫瘍治療に応答する。
【0003】
さらに、ある患者亜群においては、例えば胃腸障害、低血圧、高血圧、頻脈、疲労/無力症、又は頭痛を含む、健康にとって有害な効果が、腫瘍治療の特異的な活性に伴う。明白な有益な効果が観察されない患者亜群も存在する。
【0004】
最後に、腫瘍細胞は経時的に変化しており、最終的に、特定の腫瘍治療に対して抵抗性となる場合がある。
【0005】
発癌、腫瘍進展、及び転移は、バランスの崩れた転写プログラム、不適切な翻訳後修飾、及び脱制御されたエピジェネティック修飾に起因する(Schwirzke, M.ら、Anticancer Res 19 (1999)1801−1814;Pardee, A.B., Advances in Cancer Res 65(1994)213−227;Ponta, H., Biochim Biophys Acta 1198(1994)1−10)。転写プログラムの変化は、癌遺伝子及び癌抑制遺伝子、細胞遺伝学的改変によって作出された融合タンパク質、DNAメチルトランスフェラーゼによる予定外のメチル化により改変された遺伝子の発現、並びにヒストンアセチルトランスフェラーゼ及びヒストンデアセチラーゼのようなクロマチン修飾酵素による(Lin, R.J.ら、Trends Genet 15 (1999)179−184;Stunnenberg, H.G.ら、Biochem Biophys Acta 1423(1999)F15−F33)。
【0006】
一つの主要な問題は、現在のところ、特定の患者の腫瘍が特定の腫瘍治療に応答するか否かを予測することが極稀にしか可能でないということである。腫瘍細胞がいかにして経時変化するか、及びそれらが特定の腫瘍治療に対して抵抗性となるか否か、を予測することも困難である。
【0007】
腫瘍関連候補遺伝子を同定するためには、転移性細胞株対非転移性細胞株のような細胞株、及び異なる進展段階に相当する腫瘍標本の転写プロファイルの決定が、この目標を達成するための第一工程である(Schiemann, S.ら、Anticancer Research 17(1997)13−20;Schwirzke, M.ら、Anticancer Research 18(1998)1409−1422;Schiemann, S.ら、Clin Exp Metastasis 16(1998)129−139)。さらなる工程は、異なる腫瘍において同定された改変の有病率の解析、安定的な形質転換体におけるアンチセンスRNA又はリボザイムを使用した過剰発現及びダウンレギュレーションによる考慮中の遺伝子のインビトロ調節、並びに妥当なインビトロ系における結果の評価を含む。調査中の腫瘍の天然の転移親和性が維持されている、皮下異種移植片系及び同所移植を含むヌード・マウス系の出現により、インビボの候補遺伝子の機能的役割を評価するための道が開かれた(Fidler, I.J., Cancer Metastasis Rev 50(1986)29−49)。
【0008】
腫瘍治療から利益を得る可能性が高い患者の標的化された選択を可能にする臨床的、免疫学的、又は分子的な特徴は、これまで同定されていなかった。
【0009】
明らかに、腫瘍治療の潜在的有効性を予測するための基準を開発することが可能となれば、非応答者へ不要な毒性を与えずに済み、特定の応答患者亜群を同定しやすくなると考えられるため、臨床上、極めて有意義であると思われる。
【0010】
発明の概要
本発明は、腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング方法を提供する。該方法は、該患者の該治療に応答性の一つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定する段階、及び測定の結果を参照試料と比較する段階を含む。本発明は、該方法を実施するための診断試験にも関する。
【0011】
発明の詳細な説明
「腫瘍治療」という表現には、本明細書において使用されるように、生物学的又は化学的な抗腫瘍薬全てが含まれる。
【0012】
「参照試料」という表現は、本明細書において使用されるように、正常細胞又は正常組織抽出物に特徴的な遺伝子発現レベルの参照に関する。
【0013】
「IFN−α」という用語は、本明細書において使用されるように、任意の天然の物質(例えば、白血球、繊維芽細胞、リンパ球)、もしくはそれらに由来する物質(例えば、細胞株)に由来するIFN−α、又は組換えDNA技術により調製されたものを含む。IFN−αのクローニング及びその直接発現、特に大腸菌における発現の詳細は、多くの出版物の主題となっている。組換えIFN−αの調製は、例えば、Goeddelら(1980)Nature 284, 316−320及び(1981), Nature 290, 20−26、並びに欧州特許第32134号、同第43980号、及び同第211148号より既知である。IFN−αには、IFN−αI、IFN−α2のような多くの型が存在し、さらに、これらに限定はされないがIFN−α2A、IFN−α2B、IFN−α2C、及びIFN−αII(IFN−αII又はw−IFNとも呼ばれる)を含むサブタイプが存在する。本発明においては、IFN−α2Aの使用が好ましい。IFN−α2Aの製造は、欧州特許第43980号及び同第211148号に記載されている。
【0014】
本発明の腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング法は、患者試料中の該治療の予測となる遺伝子のうちの少なくとも一つの発現レベルを測定する段階、及び測定の結果を参照試料で得られた結果と比較する段階を含む。
【0015】
本発明は、腫瘍に罹患した患者のスクリーニングに有用である。例示的な腫瘍には、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、大腸癌、肝癌、胃癌、又は肺癌が含まれる。特に重要であるのは、黒色腫癌である。
【0016】
本発明において、腫瘍治療には、例えばサイトカインのような腫瘍薬が含まれうる。
【0017】
それには、ウイルス感染の重度を減少させるための、治療的に有効な量の活性成分IFN−α又はPEG化IFN−αコンジュゲートが含まれうる。
【0018】
本発明において使用されるIFN−αは、ポリアルキレングリコール(置換型又は非置換型)、例えばポリエチレングリコールのようなポリマーと結合し、PEG−IFN−αを形成していてもよい。結合は、当技術分野において既知の様々なリンカーによって、特に公開番号0510356及び593868の欧州特許出願、及び欧州特許出願第97108261.5号に開示されたようなリンカーによって達成されてもよい。好ましくはポリエチレングリコールであるポリマーの分子量は、300〜30,000ダルトンの範囲であり、一つ以上、好ましくは1〜3個のポリマーがIFN−αと結合されうる。
【0019】
最も好ましくは、試薬は、例えばリシンの第一アミノ基、又はIFN−αのN末端に付加される。試薬は、例えばセリンのヒドロキシルに付加されてもよい。一つ以上、好ましくは1〜3個のPEGが、IFN−αと結合されうる。
【0020】
最も好ましい試薬は下記式のものである:
【化1】
式中、カルバメート(ウレタン)結合を介してリシンのαアミノ基及びεアミノ基にて全部で2個のモノメトキシPEG(m−PEG)鎖が連結されており、リシン・カルボキシル基がサクシンイミジル・エステルへと活性化されている。この試薬は、Rが低級アルキルであり、所望のnを有している試薬に適用可能な、既知の手法に従い、従来の手段によって入手されうる(Monfardiniら、「タンパク質修飾用の分岐型モノメトキシポリ(エチレングリコール)(A branched monomethoxypoly(ethylene glycol) for protein modification)」 Bioconjugate Chem.6:62, 1995)。この試薬は、Shearwater Polymers, Inc.(Huntsville, Alabama)より入手されうる。PEGの好ましい平均分子量は、約20,000ダルトンであり、その場合PEG2−NHS中の総PEG質量は約40,000ダルトンとなる(他の分子量は、従来の手段によって、前記式の試薬のためのPEG−アルコール出発材料のnを変動させることにより入手され得る)。
【0021】
好ましいPEG化IFN−αコンジュゲートは、下記式を有する:
【化2】
式中、R及びR’は独立に低級アルキルであり;XはNH又はOであり;n及びn’は合計600〜1500の整数であり;かつ該コンジュゲート中のポリエチレングリコールの平均分子量は約26,000〜約66,000ダルトンである。
【0022】
最も好ましいPEG化インターフェロン−αは、下記式のものである:
【化3】
式中、n及びn’は独立に420又は520である。このPEG化IFN−αコンジュゲートは、例えば、参照として本明細書に組み込まれる欧州特許出願EP809996号において既知である。
【0023】
本発明において使用されるIFN−αは、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate moftil)、リバビリン、又はアマンタジンのような、他の活性薬学的化合物と組み合わされてもよい。
【0024】
本発明における遺伝子の発現レベルの測定は、多様な方法で実施されうる。
− 固定化完全細胞、固定化組織試料を用いたインサイチュー・ハイブリダイゼーション
− サザン・ハイブリダイゼーション(DNA検出)(Sambrook ら、Molecular Cloning, vol.2, 9.31−9.57)
− ノーザン・ハイブリダイゼーション(RNA検出)(Sambrook ら、Molecular Cloning, vol.1, 7.37&7.39)
− 血清解析(例えば、スロットブロット解析による血清中の細胞の細胞型解析)
− 増幅後(例えば、PCR技術)(Sambrook ら、Molecular Cloning, vol.2, 14.2−14.4)
【0025】
遺伝子発現は、ノーザン・ブロット又はドット・ブロット技術のようなRNA解析によって直接的に測定されうる。そのようなブロッティング技術は、該治療の予測となる遺伝子のうちの少なくとも一つに特異的な、通常は放射性標識されている核酸プローブの使用を必要とする。プローブは、参照試料の予測遺伝子の既知のヌクレオチド配列に基づき合成により調製されうる。ノーザン・ブロッティングの場合には、従来の方法によって組織抽出物からRNAを得る。次いで、RNAを変性させ、電気泳動によりアガロース・ゲル上で分離した後、ブロッティングによりナイロン又は硝酸セルロース・フィルターへ転写し、焼成により固定化する。次いで、フィルターを単一の標識された相補プローブへと曝し、通常オートラジオグラフィーにより、目的のmRNAを検出する。ドット・ブロッティングは、mRNAを固定化前に電気泳動を行わない点を除き、同様である。インサイチュー・ハイブリダイゼーションも、mRNAのレベルにより遺伝子発現を測定するために使用されうる。
【0026】
又は、遺伝子発現は、例えば、ウェスタン・ブロッティング及び免疫組織化学的染色により、遺伝子産物のレベルによって、測定されうる。ウェスタン・ブロッティング測定の場合には、参照試料及び被検試料の予測タンパク質、又は該タンパク質のペプチドを、SDSポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜へと転写する。次いで、洗浄後、ニトロセルロース膜を、放射性標識又は蛍光標識で標識された抗体と共にインキュベートする。免疫組織化学的染色の場合、抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれであってもよく、参照試料の少なくとも一つの予測遺伝子の報告されたDNAに基づく合成ペプチドに対して調製されうる。それらの合成ペプチドは、次いで、周知の技術によって抗体の調製における免疫原として使用されうる。免疫原は、腫瘍治療の予測遺伝子及び/又はそれらの一部のうちの少なくとも一つの天然産物から直接調製されてもよい。
【0027】
本発明において、患者の腫瘍治療に対する応答能を決定するため、患者試料が癌の性質に応じて調製される。例えば、血液、尿、血清、リンパ節、骨髄、細胞抽出物、又は組織抽出物を含む患者試料が、使用されうる。
【0028】
リンパ節は、新鮮試料であってもよいし又は凍結されたものでもよく、好ましくは液体窒素中で急速凍結され約−80℃で保存されたものである。血液及び骨髄の試料が収集される場合には、それらは保存され、それらの細胞が、好ましくは界面活性剤を含むグアニジン塩酸塩系溶液を使用して溶解される。フィコール(Ficoll)勾配分離のような血中の特定の細胞画分を濃縮する付加的な工程を、細胞溶解の前に使用してもよい。
【0029】
血液又は骨髄のような試料が使用される場合には、mRNA抽出の前に、上皮細胞又はリンパ球の濃縮を実施することが好ましい。そのような濃縮は、イムノビーズ又は高勾配磁気細胞分離(MACS)のような上皮特異的結合の使用により、実施されうる(Hardingham, I.E.ら、Int.J.Cancer 20(2000)8−13;Martin, V.M.ら、Exp.Hematology 26(1998)252−264)。
【0030】
本発明における診断試験は、核酸プローブ又はタンパク質プローブのようなプローブを含むマトリックスを、抗体又は核酸プローブを含有している液相と接触させる段階、及び腫瘍治療の予測となる遺伝子のうちの一つの遺伝子転写又は産物を検出する段階を含む。
【0031】
該腫瘍治療の予測となる一つの遺伝子の産物の存在を検出するため、液相中の抗体にマーカーを結合させることができる。特に、酵素アルカリホスファターゼが、マーカーとして使用される。
【0032】
本発明は、プローブを含有するマトリックスを有する容器を含む、患者の腫瘍治療応答能を決定するためのキットにも関する。好ましくは、マトリックス上のプローブは核酸である。
【0033】
腫瘍治療の治療効果は、細胞に対する直接的な影響に関係しうる。
【0034】
該治療に特異的な遺伝子発現プロファイルの同定を含む、腫瘍治療に対して感受性又は抵抗性である細胞の利用能をスクリーニングするための方法を有することは有用であると考えられる。細胞は、一つまたは複数の細胞株、特に腫瘍細胞株、より具体的には原発黒色腫細胞株でありうる。
【0035】
本発明のもう一つの目的は、腫瘍治療に応答性の細胞の選択を可能にする免疫学的マーカーに関する。この免疫学的マーカーは、該腫瘍治療の予測となる遺伝子の一つまたは複数の産物に特異的な抗体である。
【0036】
最後に、本発明は、ヒト細胞に由来する、又はヒト細胞を含有している癌細胞含有被検試料が、特定の腫瘍治療による腫瘍発達、腫瘍進展、又は転移の可能性を有しているか否かを決定するための診断試験に関する。ここで、被検試料及び非腫瘍細胞に由来する第二の試料は、同一個体又は同一種の異なる個体から得られる。該試験は以下の段階を含む:
(a)各試料を、
(i)該治療の予測となる遺伝子のうちの少なくとも一つの核酸配列;
(ii)(i)の任意の核酸配列に相補的な核酸配列;
(iii)(i)の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列;及び
(iv)(ii)の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列
からなる群より選択される核酸プローブと共に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でインキュベートする段階;
(b)各試料の該プローブとのハイブリダイゼーションのおよその量を決定する段階;並びに
(c)被検試料が、該第二の試料より多い量の特異的な核酸又は核酸混合物を含有しているか否かを同定するため、被検試料のハイブリダイゼーションのおよその量を、第二の試料のハイブリダイゼーションのおよその量と比較する段階。
【0037】
典型的には、ハイブリダイゼーションのおよその量は、例えばハイブリダイゼーション検出時の目測的検査によって定性的に決定される。例えば、試料中の標的核酸とハイブリダイズする、標識された核酸を分離するためにゲルが使用される場合には、得られたバンドが視覚的に検査されうる。被検試料におけるハイブリダイゼーションのおよその量を、非腫瘍細胞におけるハイブリダイゼーションのおよその量と比較することができる。そのような非腫瘍細胞は、例えば、上皮細胞又は末梢血細胞である。
【0038】
本発明は、制限ではなく例示のために提示される以下の実施例に基づき、さらによく理解されると思われる。
【0039】
本発明において使用される細胞株は、任意のヒト細胞株であり得る。特に、ヒト原発黒色腫より単離された応答性細胞株CNCM I−2544、CNCM I−2546、CNCM I−2547、及びCNCM I−2548、並びに非応答性細胞株CNCM I−2545及びCNCM I−2549が好ましい。これらの細胞株の培養物は、2000年8月17日に、寄託当局(Culture Collection)「Collection Nationale de Cultures de Microorganismes」に、ブダペスト条約(規則6.1)に基づき寄託され登録された。
【0040】
実施例
以下の実施例は、以下の図面と関連している。
【0041】
黒色腫細胞株におけるIFN−α誘導可能遺伝子の同定
細胞株及び培養条件
増殖阻害及びHLAクラスI誘導に対する感受性に関して、黒色腫細胞株をスクリーニングした。研究は、6個の細胞株(CNCM I−2544、CNCM I−2545、CNCM I−2546、CNCM I−2547、CNCM I−2548、及びCNCM I−2549)で実施した。
【0042】
これらの細胞株は全て、10%FCS、グルタミン(2mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、非必須アミノ酸、及びHEPES緩衝液(10mM)が補足されたRPMI培地(全て、GIBCO Life Sciences, Paisley, UK)において培養した。コンフルエントになった時点で、トリプシン処理によって細胞を継代した。
【0043】
オリゴヌクレオチド・アレイ解析
剥離により培養された黒色腫細胞を採集し、全細胞RNAを抽出した。各試料のうち10μgを、市販のキット(Roche Molecular Biochemicals, Rotkreuz, Switzerland)を使用したcDNA合成のための鋳型として直接使用した。cDNA合成プライマーに組み込まれたT7プロモーター配列は、鋳型増幅、及び市販のキット(Affymetrix, Santa Clara, CA)を使用したインビトロ転写によるビオチン標識を可能にした。アルカリ熱断片化の後、cDNAをアレイ(Affymetrix, Santa Clara, CA)にハイブリダイズさせ、その後の全工程はアレイと共に供給された標準的な手法に従い実施した。生データは、GeneChipソフトウェアv3.1(Affymetrix, Santa Clara, CA)を使用して、共焦点レーザー・スキャナー(Hewlett Packard, Palo Alto, CA)を用いて収集した。
【0044】
データ解析
生データを、ME15細胞株cDNAのハイブリダイゼーションで得られた全チップ・シグナルに基づき基準化した。このアレイは、i) 対照遺伝子の5’/3’強度比が3未満であったこと;ii)Genechipにより遺伝子の>25%が「存在している(present)」とされたこと;iii)画像の様相が均質であり、バックグラウンドが低く、機械的なチップ損傷の徴候がなかったこと、より選択された。
【0045】
各遺伝子のパーフェクトのシグナルと、ミスマッチ・プローブセットのシグナルとの差の平均を正規化したもの(normalized average difference)(nAD)を、特定の遺伝子の発現レベルとして使用した。含められるためには、データの対比較における少なくとも一つのnAD値が50を超えていなければならない。nADに基づき、IFN−α曝露と関係する変化係数も計算した。人為的に高い修飾の計算を回避するため、負のnAD値は20に設定した。アーチファクトを排除するため、2倍超の大きい変化係数を有する遺伝子のみを解析に含めた。これらの基準を適用することによって、約60〜80個の遺伝子が、解析された細胞株によって示差的に発現されていることが見出された。アレイ間のばらつきは、試験的研究における、同じバッチからの5個のアレイへの一つの試料のハイブリダイゼーションに基づき、2%を超えていなかった。制御様式によって、遺伝子をクラスタリングした。
【0046】
IFN− α感受性黒色腫細胞株及び抵抗性黒色腫細胞株の同定
多数の樹立黒色腫細胞株を、IFN−αがそれらの増殖を阻害し、HLAクラスI決定基の表面発現を増加させる能力を試験することにより、IFN−αに対する感受性に関してアッセイした。
【0047】
2つの細胞株(CNCM I−2545及びCNCM I−2549)が、IFN−αの抗増殖効果に対して抵抗性であることが見出された。
【0048】
CNCM I−2547及びCNCM I−2548の増殖は、わずか10U/mlというIFN−α濃度によって、少なくとも50%阻害されうるが、CNCM I−2544及びCNCM I−2546は、同様の効果を誘発するのに10倍高い用量を必要とした(表1)。
【0049】
IFN−αによるHLAクラスI発現のアップレギュレーションは、その抗増殖効果と密接に相関していた。2つの活性の解離が観察されることはなかった(表1)。
【0050】
【表1】IFN−αにより誘導される増殖阻害及びHLAクラスI過剰発現に対して感受性又は抵抗性の黒色腫細胞株の同定
(a)黒色腫細胞株を、1〜1000U/mlの範囲のIFN−α濃度の存在下で培養した。3H−チミジン取り込みを、18時間のパルス処理期間の後、5日間の培養期間中、毎日測定した。IC50とは、個々の実験において検出可能な最大増殖活性の少なくとも50%の阻害を誘導するIFN−α濃度である。
(b)黒色腫細胞を、IFN−α(100U/ml)の存在下(左側の数字)又は非存在下(右側の数字)で2日間培養した後、HLAクラスI特異的単形性mAbで染色し、フローサイトメトリーにより試験した。データは、標識された細胞株の平均蛍光強度として表されている。
【0051】
黒色腫細胞株における腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の検出
上記のように同定された感受性及び抵抗性の黒色腫細胞株から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、7000個の全長ヒト遺伝子に由来するプローブセットを含有しているオリゴヌクレオチド・アレイ(Hu6800FL, PN900183)へのハイブリダイゼーションのため処理した。各遺伝子の発現レベルを、正規化平均差(nAD、材料及び方法を参照のこと)として計算した。
【0052】
まず、腫瘍関連抗原(TAA)であるMART−1/Melan−A、pmel−17(gp1OO)、TRP−2、及びチロシナーゼをコードする遺伝子に関するデータセットを解析した。これらの4個の遺伝子は、CNCM I−2546及びCNCM I−2545細胞株において発現していることが見出されたが、CNCM I−2544、CNCM I−2546、CNCM I−2547、及びCNCN I−2548細胞株においては発現が事実上検出不能であった(図1)。機能試験によって、これらの所見が確認された。実際、HLA−A2.1陽性CNCM I−2545黒色腫細胞は、MART−1/Melan−A、pmel−17/gp1OO、チロシナーゼ、又はTRP−2タンパク質に由来するエピトープを認識するHLA−A2.1拘束性CTL株によって効率的に死滅させられた。対照的に、調査中の遺伝子を発現していないHLA−A2.1陽性CNCM I−2548細胞は、特異的CTLによって死滅させられなかった(図1)。注目すべきことに、IFN−α処理は、これらTAAをコードする遺伝子の発現に影響を及ぼさないようである。
【0053】
従って、調査中の細胞系へのマイクロアレイ技術の適用は、機能レベル及び遺伝子発現レベルで同時に得られた結果によって認められる。
【0054】
黒色腫細胞株における IFN− α受容体遺伝子発現
IFN−αの効果に対する示差的な感受性は、特異的受容体の示差的な発現と関係している。実際、IFN−α受容体遺伝子(IFNAR2)からの転写物は、調査中の細胞株由来のcDNAのマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションで、低レベル(nAD≦60)で検出された(表2、遺伝子クラスタ5)。
【0055】
より高感度なRT−PCRアッセイ法を使用することにより、IFN−α受容体遺伝子発現を評価した(図2B)。
【0056】
程度は異なるが、IFN−αへの応答性のレベルとは無関係に、特異的転写物が全ての株において検出可能であった。
【0057】
可能性のある IFN− α応答性マーカー遺伝子の検出
黒色腫細胞株の遺伝子プロファイルを、IFN−αの重要な直接効果、即ち増殖阻害及びHLAクラスI発現のアップレギュレーションに対する感受性又は抵抗性に従い分類した。
【0058】
IFN−α応答性に関して充分に言及された6個のヒト黒色腫細胞株からの大きなmRNA発現データセットの利用能のため、サイトカイン処理の非存在下で感受性又は抵抗性の株において優先的に発現されている遺伝子を同定することが可能となった。応答性細胞株(CNCM I−2544、CNCM I−2546、CNCM I−2547、及びCNCN I−2548)及び非応答性細胞株(CNCM I−2545及びCNCM I−2549)に由来する全遺伝子のマイクロアレイ・データを合わせ、二つの平均データセットを得た。次いで、これらのデータを、一方のグループにおいて3倍超アップレギュレートされている遺伝子に関してスクリーニングした。次いで、各細胞株における個々の発現レベルを得るため、平均データを分解した。平均からの偏差がnADの平均値の30%未満である場合、その遺伝子を陽性又は予測性とみなした。
【0059】
この解析によって、IFN−α感受性細胞株において優先的に発現されている4個の遺伝子の群が同定された(図2、パネルA)。それらのうちの2個、IFI16及びRCC1は、それぞれ有系分裂制御能及び転写活性化能を有する核タンパク質をコードしている。第3は、hox2ホメオボックス遺伝子であり、第4のh19遺伝子は、DNAメチル化及び遺伝子インプリンティングの過程に関与している非翻訳RNAをコードしている。しかしながら、注目すべきことに、IFN−α感受性細胞株のうちの一つ、ME51は、RCC1を発現していない。
【0060】
他方、おそらくシグナル伝達経路の成分をコードしている2個の遺伝子、SHB及びPKC−ζは、IFN−α抵抗性のD10及びME67細胞株において優先的に発現されているようであった(図2、パネルB)。
【0061】
感受性細胞及び抵抗性細胞において典型的なプロファイルに従い優先的に発現されている遺伝子のパターンが、明白に出現した。IFI16、hl9、及びRCC1のような細胞増殖の制御に関与している遺伝子のみならず、hox2も、感受性細胞株において優先的に発現されていることが見出された。興味深いことに、規定のシグナル伝達経路の既知の成分であるSHB及びPKC−ζタンパク質をコードする遺伝子は、IFN−α抵抗性細胞において優先的に発現されているようであった。これらの複雑なデータは、IFN−α抵抗性が、単なる活性化の欠損ではなく、一連の活性イベントに起因するのかもしれないことを示唆している。
【0062】
感受性細胞株及び抵抗性細胞株における IFN− αによる遺伝子発現の誘導
IFN−αの存在下で48時間培養した場合の、IFN−α感受性黒色腫細胞株及びIFN−α抵抗性黒色腫細胞株において発現された遺伝子のパターンを調査した。CNCM I−2546及びCNCM I−2545を、詳細に研究した。解析は、未処理の細胞と比較して少なくとも3倍アップレギュレート又はダウンレギュレートされており、四つの実験のうちの一つにおいて少なくとも50というnAD値を示した遺伝子に焦点を当てた。
【0063】
クラスタ1(表2)には、感受性CNCM I−2546細胞株においてのみ誘導可能な遺伝子が含まれる。予想通り、これらの遺伝子の発現は、IFN−α抵抗性CNCM I−2545細胞においては、処理によって有意な影響を受けなった。この遺伝子セットには、HLAクラスI遺伝子、2−5Aシンセターゼ、TAP−1、多数のインターフェロン誘導可能タンパク質をコードする遺伝子のみならず、p27サイクリン依存性キナーゼ阻害剤及びROXタンパク質も含まれる。アンプラキシン(amplaxin)又はems−1をコードする、腫瘍細胞において高頻度に増幅される遺伝子座11q13に由来する単一の遺伝子は、両方の株においてIFN−αにより誘導されるようであった(クラスタ2)。
【0064】
既知のIFN−α誘導可能遺伝子であるip−30、及びdss1を含むクラスタ3遺伝子は、CNCM I−2545抵抗性細胞株において誘導されたが、それらの発現はCNCM I−2546感受性細胞においては有意に改変されなかった。クラスタ4には、クラスタ1とは対照的に、IFN−α抵抗性CNCM I−2545においてダウンレギュレートされる、CNCM I−2546においてIFN−αにより誘導可能な付加的な遺伝子が含まれる。興味深いことに、IFN−αシグナル伝達に関与している転写因子ISGF−3が、他のIFN関連遺伝子を含んでいるこのクラスタに属する。クラスタ5は、抵抗性CNCM I−2545細胞においてはIFN−α処理によりダウンレギュレートされるが、感受性CNCM I−2546細胞においては事実上影響を受けない遺伝子を含む。興味深いことに、このクラスタは、IFN−α受容体をコードする遺伝子を含む。クラスタ6は、CNCM I−2545抵抗性細胞株においては基本的に発現が検出不可であり、CNCM I−2546 IFN−α感受性細胞においてはダウンレギュレートされる、2つの遺伝子(irf−2、及びインターフェロンにより誘導される細胞抵抗性メディエーター)を含んでいる。興味深いことに、IRF−2遺伝子産物は、I型IFN誘導可能遺伝子のプロモーター領域と結合し、転写を防止することが既知である。従って、ダウンレギュレーションは、IFN誘導可能遺伝子の活性化を促進することができる。
【0065】
下記の表2においては、100U/ml IFN−αの非存在下又は存在下で48時間培養されたCNCM I−2546及びCNCM I−2545を、繊維肉腫細胞において得られたデータと一致するよう、サイトカインによりモジュレートされる遺伝子発現をアッセイするために使用した。この解析により、6個の遺伝子クラスタが得られた。クラスタ1は、IFN−α感受性CNCM I−2546においてのみ誘導される遺伝子を含有している。クラスタ2は、両方の株においてアップレギュレートされるアンプラキシン(amplaxin)を含んでおり、クラスタ3は、CNCM I−2545抵抗性株においてのみ誘導される遺伝子を含んでいる。クラスタ4は、CNCM I−2545においてダウンレギュレートされ、CNCM I−2546において誘導される遺伝子を指す。クラスタ5は、CNCM I−2545においてダウンレギュレートされる遺伝子を含み、クラスタ6は、CNCM I−2546においてダウンレギュレートされる遺伝子を指す。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
【0066】
【表2】IFN−αにより調節される遺伝子
カラム1=GenBank ID;カラム2=遺伝子名;カラム3=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム4=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム5=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2546におけるnAD;カラム6=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2546;カラム7=CNCM I−2545における変化係数(CF);カラム8=CNCM I−2546における変化係数;カラム9=クラスタの特徴(〜=変化なし;d=ダウンレギュレート;u=アップレギュレート)。
【0067】
新規な IFN− α誘導可能遺伝子の検出
表3に報告されるクラスタ1及び2は、黒色腫細胞処理により発現がアップレギュレートされうる、IFN−α誘導可能であることがこれまで知られていなかった遺伝子を含んでいる。クラスタ1は、感受性細胞においてのみ誘導される遺伝子を含み、クラスタ2は、「表現型上の」感受性に関わらず、黒色腫細胞のIFN−α処理によってアップレギュレートされる遺伝子を指す。これらの遺伝子のうちのいくつかは、明らかに、メラニン細胞(黒色腫分化抗原(melanoma differentiation antigen)、mda−6)又は神経外胚葉(例えば、ニューロロイキン(neuroleukin)又はカテコールo−メチルトランスフェラーゼ)の細胞株列に属し、例えば、血漿ゲルゾリン又はスペルミジンシンターゼをコードするもののような他の明白に誘導可能な遺伝子は、明確な類似の組織特異的分類に当てはまらなかった。表3中のクラスタ2は、解析された両方の株におけるIFN−α応答性に関わらず、誘導可能な新規遺伝子を含んでいる。多数のこれらの遺伝子(rheb、PP1、ATPase、セラミダーゼ、eif3)が、機能的には細胞内シグナル伝達経路に関係している。
【0068】
下記の表3においては、100U/mlIFN−αの非存在下又は存在下で48時間培養されたCNCM I−2546及びCNCM I−2545細胞株を、繊維肉腫細胞においては発現が調節されないことが見出された、新規なサイトカインにより誘導される遺伝子を同定するために使用した。クラスタ1は、CNCM I−2546感受性細胞株において誘導可能であるが、CNCM I−2545抵抗性細胞株においては誘導可能でない遺伝子を含んでいる。クラスタ2は、両方の株において誘導可能な遺伝子を含んでいる。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
【0069】
【表3】新規なIFN−α誘導可能遺伝子
カラム1=GenBank ID;カラム2=遺伝子名;カラム3=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム4=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム5=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2546におけるnAD;カラム6=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2546;カラム7=CNCM I−2545における変化係数(CF);カラム8=CNCM I−2546における変化係数;カラム9=クラスタの特徴(〜=変化なし;d=ダウンレギュレート;u=アップレギュレート)。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】黒色腫細胞株における腫瘍関連抗原及びIFN−α受容体をコードする遺伝子の発現を示す図である。
パネルA:腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の発現。
細胞株CNCM I−2544(375)、CNCM I−2545(D10)、CNCM I−2546(15)、CNCM I−2547(51)、CNCM I−2548(59)、及びCNCM I−2549(67)を、100U/ml IFN−αの存在下(+)又は非存在下(−)で48時間培養した。HLA拘束性腫瘍関連抗原であるチロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−2、pmel−17、及びmart−1をコードする遺伝子の発現パターンが報告されている。灰色のバーはIFN−α感受性細胞株を指し、黒色バーはIFN−α抵抗性株を指す(表1参照)。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
パネルB: IFN−α受容体遺伝子発現が、25サイクルRT−PCRにより、IFN−α感受性黒色腫細胞株及びIFN−α抵抗性黒色腫細胞株において検出される。
【図2】IFN−α感受性黒色腫細胞株又はIFN−α抵抗性黒色腫細胞株において優先的に発現されている遺伝子を示す図である。
オリゴヌクレオチド・アレイ発現データを、未処理細胞より収集した。感受性細胞株(CNCM I−2544(A375)、CNCM I−2546(ME15)、CNCM I−2547(ME51)、及びCNCN I−2548(ME59))、又は抵抗性細胞株(CNCM I−2545(D10)及びCNCM I−2549(ME67))からのデータを、2つのデータ・セット(パネルA及びパネルB)へと合わせた。次いで、一方の群において少なくとも3倍アップレギュレートされている遺伝子を同定するため、個々の遺伝子についての平均値をフィルターした。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
発明の分野
本発明は、腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング方法に関する。本発明は、該方法を実施するための診断試験にも関する。
【0002】
発明の背景
治療研究において、腫瘍の発達に対抗することができる治療には、大きな関心が寄せられている。腫瘍は必ずしも同一ではないため、一部の患者のみが、特定の腫瘍治療に応答する。
【0003】
さらに、ある患者亜群においては、例えば胃腸障害、低血圧、高血圧、頻脈、疲労/無力症、又は頭痛を含む、健康にとって有害な効果が、腫瘍治療の特異的な活性に伴う。明白な有益な効果が観察されない患者亜群も存在する。
【0004】
最後に、腫瘍細胞は経時的に変化しており、最終的に、特定の腫瘍治療に対して抵抗性となる場合がある。
【0005】
発癌、腫瘍進展、及び転移は、バランスの崩れた転写プログラム、不適切な翻訳後修飾、及び脱制御されたエピジェネティック修飾に起因する(Schwirzke, M.ら、Anticancer Res 19 (1999)1801−1814;Pardee, A.B., Advances in Cancer Res 65(1994)213−227;Ponta, H., Biochim Biophys Acta 1198(1994)1−10)。転写プログラムの変化は、癌遺伝子及び癌抑制遺伝子、細胞遺伝学的改変によって作出された融合タンパク質、DNAメチルトランスフェラーゼによる予定外のメチル化により改変された遺伝子の発現、並びにヒストンアセチルトランスフェラーゼ及びヒストンデアセチラーゼのようなクロマチン修飾酵素による(Lin, R.J.ら、Trends Genet 15 (1999)179−184;Stunnenberg, H.G.ら、Biochem Biophys Acta 1423(1999)F15−F33)。
【0006】
一つの主要な問題は、現在のところ、特定の患者の腫瘍が特定の腫瘍治療に応答するか否かを予測することが極稀にしか可能でないということである。腫瘍細胞がいかにして経時変化するか、及びそれらが特定の腫瘍治療に対して抵抗性となるか否か、を予測することも困難である。
【0007】
腫瘍関連候補遺伝子を同定するためには、転移性細胞株対非転移性細胞株のような細胞株、及び異なる進展段階に相当する腫瘍標本の転写プロファイルの決定が、この目標を達成するための第一工程である(Schiemann, S.ら、Anticancer Research 17(1997)13−20;Schwirzke, M.ら、Anticancer Research 18(1998)1409−1422;Schiemann, S.ら、Clin Exp Metastasis 16(1998)129−139)。さらなる工程は、異なる腫瘍において同定された改変の有病率の解析、安定的な形質転換体におけるアンチセンスRNA又はリボザイムを使用した過剰発現及びダウンレギュレーションによる考慮中の遺伝子のインビトロ調節、並びに妥当なインビトロ系における結果の評価を含む。調査中の腫瘍の天然の転移親和性が維持されている、皮下異種移植片系及び同所移植を含むヌード・マウス系の出現により、インビボの候補遺伝子の機能的役割を評価するための道が開かれた(Fidler, I.J., Cancer Metastasis Rev 50(1986)29−49)。
【0008】
腫瘍治療から利益を得る可能性が高い患者の標的化された選択を可能にする臨床的、免疫学的、又は分子的な特徴は、これまで同定されていなかった。
【0009】
明らかに、腫瘍治療の潜在的有効性を予測するための基準を開発することが可能となれば、非応答者へ不要な毒性を与えずに済み、特定の応答患者亜群を同定しやすくなると考えられるため、臨床上、極めて有意義であると思われる。
【0010】
発明の概要
本発明は、腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング方法を提供する。該方法は、該患者の該治療に応答性の一つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定する段階、及び測定の結果を参照試料と比較する段階を含む。本発明は、該方法を実施するための診断試験にも関する。
【0011】
発明の詳細な説明
「腫瘍治療」という表現には、本明細書において使用されるように、生物学的又は化学的な抗腫瘍薬全てが含まれる。
【0012】
「参照試料」という表現は、本明細書において使用されるように、正常細胞又は正常組織抽出物に特徴的な遺伝子発現レベルの参照に関する。
【0013】
「IFN−α」という用語は、本明細書において使用されるように、任意の天然の物質(例えば、白血球、繊維芽細胞、リンパ球)、もしくはそれらに由来する物質(例えば、細胞株)に由来するIFN−α、又は組換えDNA技術により調製されたものを含む。IFN−αのクローニング及びその直接発現、特に大腸菌における発現の詳細は、多くの出版物の主題となっている。組換えIFN−αの調製は、例えば、Goeddelら(1980)Nature 284, 316−320及び(1981), Nature 290, 20−26、並びに欧州特許第32134号、同第43980号、及び同第211148号より既知である。IFN−αには、IFN−αI、IFN−α2のような多くの型が存在し、さらに、これらに限定はされないがIFN−α2A、IFN−α2B、IFN−α2C、及びIFN−αII(IFN−αII又はw−IFNとも呼ばれる)を含むサブタイプが存在する。本発明においては、IFN−α2Aの使用が好ましい。IFN−α2Aの製造は、欧州特許第43980号及び同第211148号に記載されている。
【0014】
本発明の腫瘍治療に対する応答能を決定するための患者のスクリーニング法は、患者試料中の該治療の予測となる遺伝子のうちの少なくとも一つの発現レベルを測定する段階、及び測定の結果を参照試料で得られた結果と比較する段階を含む。
【0015】
本発明は、腫瘍に罹患した患者のスクリーニングに有用である。例示的な腫瘍には、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、大腸癌、肝癌、胃癌、又は肺癌が含まれる。特に重要であるのは、黒色腫癌である。
【0016】
本発明において、腫瘍治療には、例えばサイトカインのような腫瘍薬が含まれうる。
【0017】
それには、ウイルス感染の重度を減少させるための、治療的に有効な量の活性成分IFN−α又はPEG化IFN−αコンジュゲートが含まれうる。
【0018】
本発明において使用されるIFN−αは、ポリアルキレングリコール(置換型又は非置換型)、例えばポリエチレングリコールのようなポリマーと結合し、PEG−IFN−αを形成していてもよい。結合は、当技術分野において既知の様々なリンカーによって、特に公開番号0510356及び593868の欧州特許出願、及び欧州特許出願第97108261.5号に開示されたようなリンカーによって達成されてもよい。好ましくはポリエチレングリコールであるポリマーの分子量は、300〜30,000ダルトンの範囲であり、一つ以上、好ましくは1〜3個のポリマーがIFN−αと結合されうる。
【0019】
最も好ましくは、試薬は、例えばリシンの第一アミノ基、又はIFN−αのN末端に付加される。試薬は、例えばセリンのヒドロキシルに付加されてもよい。一つ以上、好ましくは1〜3個のPEGが、IFN−αと結合されうる。
【0020】
最も好ましい試薬は下記式のものである:
【化1】
式中、カルバメート(ウレタン)結合を介してリシンのαアミノ基及びεアミノ基にて全部で2個のモノメトキシPEG(m−PEG)鎖が連結されており、リシン・カルボキシル基がサクシンイミジル・エステルへと活性化されている。この試薬は、Rが低級アルキルであり、所望のnを有している試薬に適用可能な、既知の手法に従い、従来の手段によって入手されうる(Monfardiniら、「タンパク質修飾用の分岐型モノメトキシポリ(エチレングリコール)(A branched monomethoxypoly(ethylene glycol) for protein modification)」 Bioconjugate Chem.6:62, 1995)。この試薬は、Shearwater Polymers, Inc.(Huntsville, Alabama)より入手されうる。PEGの好ましい平均分子量は、約20,000ダルトンであり、その場合PEG2−NHS中の総PEG質量は約40,000ダルトンとなる(他の分子量は、従来の手段によって、前記式の試薬のためのPEG−アルコール出発材料のnを変動させることにより入手され得る)。
【0021】
好ましいPEG化IFN−αコンジュゲートは、下記式を有する:
【化2】
式中、R及びR’は独立に低級アルキルであり;XはNH又はOであり;n及びn’は合計600〜1500の整数であり;かつ該コンジュゲート中のポリエチレングリコールの平均分子量は約26,000〜約66,000ダルトンである。
【0022】
最も好ましいPEG化インターフェロン−αは、下記式のものである:
【化3】
式中、n及びn’は独立に420又は520である。このPEG化IFN−αコンジュゲートは、例えば、参照として本明細書に組み込まれる欧州特許出願EP809996号において既知である。
【0023】
本発明において使用されるIFN−αは、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate moftil)、リバビリン、又はアマンタジンのような、他の活性薬学的化合物と組み合わされてもよい。
【0024】
本発明における遺伝子の発現レベルの測定は、多様な方法で実施されうる。
− 固定化完全細胞、固定化組織試料を用いたインサイチュー・ハイブリダイゼーション
− サザン・ハイブリダイゼーション(DNA検出)(Sambrook ら、Molecular Cloning, vol.2, 9.31−9.57)
− ノーザン・ハイブリダイゼーション(RNA検出)(Sambrook ら、Molecular Cloning, vol.1, 7.37&7.39)
− 血清解析(例えば、スロットブロット解析による血清中の細胞の細胞型解析)
− 増幅後(例えば、PCR技術)(Sambrook ら、Molecular Cloning, vol.2, 14.2−14.4)
【0025】
遺伝子発現は、ノーザン・ブロット又はドット・ブロット技術のようなRNA解析によって直接的に測定されうる。そのようなブロッティング技術は、該治療の予測となる遺伝子のうちの少なくとも一つに特異的な、通常は放射性標識されている核酸プローブの使用を必要とする。プローブは、参照試料の予測遺伝子の既知のヌクレオチド配列に基づき合成により調製されうる。ノーザン・ブロッティングの場合には、従来の方法によって組織抽出物からRNAを得る。次いで、RNAを変性させ、電気泳動によりアガロース・ゲル上で分離した後、ブロッティングによりナイロン又は硝酸セルロース・フィルターへ転写し、焼成により固定化する。次いで、フィルターを単一の標識された相補プローブへと曝し、通常オートラジオグラフィーにより、目的のmRNAを検出する。ドット・ブロッティングは、mRNAを固定化前に電気泳動を行わない点を除き、同様である。インサイチュー・ハイブリダイゼーションも、mRNAのレベルにより遺伝子発現を測定するために使用されうる。
【0026】
又は、遺伝子発現は、例えば、ウェスタン・ブロッティング及び免疫組織化学的染色により、遺伝子産物のレベルによって、測定されうる。ウェスタン・ブロッティング測定の場合には、参照試料及び被検試料の予測タンパク質、又は該タンパク質のペプチドを、SDSポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜へと転写する。次いで、洗浄後、ニトロセルロース膜を、放射性標識又は蛍光標識で標識された抗体と共にインキュベートする。免疫組織化学的染色の場合、抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれであってもよく、参照試料の少なくとも一つの予測遺伝子の報告されたDNAに基づく合成ペプチドに対して調製されうる。それらの合成ペプチドは、次いで、周知の技術によって抗体の調製における免疫原として使用されうる。免疫原は、腫瘍治療の予測遺伝子及び/又はそれらの一部のうちの少なくとも一つの天然産物から直接調製されてもよい。
【0027】
本発明において、患者の腫瘍治療に対する応答能を決定するため、患者試料が癌の性質に応じて調製される。例えば、血液、尿、血清、リンパ節、骨髄、細胞抽出物、又は組織抽出物を含む患者試料が、使用されうる。
【0028】
リンパ節は、新鮮試料であってもよいし又は凍結されたものでもよく、好ましくは液体窒素中で急速凍結され約−80℃で保存されたものである。血液及び骨髄の試料が収集される場合には、それらは保存され、それらの細胞が、好ましくは界面活性剤を含むグアニジン塩酸塩系溶液を使用して溶解される。フィコール(Ficoll)勾配分離のような血中の特定の細胞画分を濃縮する付加的な工程を、細胞溶解の前に使用してもよい。
【0029】
血液又は骨髄のような試料が使用される場合には、mRNA抽出の前に、上皮細胞又はリンパ球の濃縮を実施することが好ましい。そのような濃縮は、イムノビーズ又は高勾配磁気細胞分離(MACS)のような上皮特異的結合の使用により、実施されうる(Hardingham, I.E.ら、Int.J.Cancer 20(2000)8−13;Martin, V.M.ら、Exp.Hematology 26(1998)252−264)。
【0030】
本発明における診断試験は、核酸プローブ又はタンパク質プローブのようなプローブを含むマトリックスを、抗体又は核酸プローブを含有している液相と接触させる段階、及び腫瘍治療の予測となる遺伝子のうちの一つの遺伝子転写又は産物を検出する段階を含む。
【0031】
該腫瘍治療の予測となる一つの遺伝子の産物の存在を検出するため、液相中の抗体にマーカーを結合させることができる。特に、酵素アルカリホスファターゼが、マーカーとして使用される。
【0032】
本発明は、プローブを含有するマトリックスを有する容器を含む、患者の腫瘍治療応答能を決定するためのキットにも関する。好ましくは、マトリックス上のプローブは核酸である。
【0033】
腫瘍治療の治療効果は、細胞に対する直接的な影響に関係しうる。
【0034】
該治療に特異的な遺伝子発現プロファイルの同定を含む、腫瘍治療に対して感受性又は抵抗性である細胞の利用能をスクリーニングするための方法を有することは有用であると考えられる。細胞は、一つまたは複数の細胞株、特に腫瘍細胞株、より具体的には原発黒色腫細胞株でありうる。
【0035】
本発明のもう一つの目的は、腫瘍治療に応答性の細胞の選択を可能にする免疫学的マーカーに関する。この免疫学的マーカーは、該腫瘍治療の予測となる遺伝子の一つまたは複数の産物に特異的な抗体である。
【0036】
最後に、本発明は、ヒト細胞に由来する、又はヒト細胞を含有している癌細胞含有被検試料が、特定の腫瘍治療による腫瘍発達、腫瘍進展、又は転移の可能性を有しているか否かを決定するための診断試験に関する。ここで、被検試料及び非腫瘍細胞に由来する第二の試料は、同一個体又は同一種の異なる個体から得られる。該試験は以下の段階を含む:
(a)各試料を、
(i)該治療の予測となる遺伝子のうちの少なくとも一つの核酸配列;
(ii)(i)の任意の核酸配列に相補的な核酸配列;
(iii)(i)の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列;及び
(iv)(ii)の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列
からなる群より選択される核酸プローブと共に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でインキュベートする段階;
(b)各試料の該プローブとのハイブリダイゼーションのおよその量を決定する段階;並びに
(c)被検試料が、該第二の試料より多い量の特異的な核酸又は核酸混合物を含有しているか否かを同定するため、被検試料のハイブリダイゼーションのおよその量を、第二の試料のハイブリダイゼーションのおよその量と比較する段階。
【0037】
典型的には、ハイブリダイゼーションのおよその量は、例えばハイブリダイゼーション検出時の目測的検査によって定性的に決定される。例えば、試料中の標的核酸とハイブリダイズする、標識された核酸を分離するためにゲルが使用される場合には、得られたバンドが視覚的に検査されうる。被検試料におけるハイブリダイゼーションのおよその量を、非腫瘍細胞におけるハイブリダイゼーションのおよその量と比較することができる。そのような非腫瘍細胞は、例えば、上皮細胞又は末梢血細胞である。
【0038】
本発明は、制限ではなく例示のために提示される以下の実施例に基づき、さらによく理解されると思われる。
【0039】
本発明において使用される細胞株は、任意のヒト細胞株であり得る。特に、ヒト原発黒色腫より単離された応答性細胞株CNCM I−2544、CNCM I−2546、CNCM I−2547、及びCNCM I−2548、並びに非応答性細胞株CNCM I−2545及びCNCM I−2549が好ましい。これらの細胞株の培養物は、2000年8月17日に、寄託当局(Culture Collection)「Collection Nationale de Cultures de Microorganismes」に、ブダペスト条約(規則6.1)に基づき寄託され登録された。
【0040】
実施例
以下の実施例は、以下の図面と関連している。
【0041】
黒色腫細胞株におけるIFN−α誘導可能遺伝子の同定
細胞株及び培養条件
増殖阻害及びHLAクラスI誘導に対する感受性に関して、黒色腫細胞株をスクリーニングした。研究は、6個の細胞株(CNCM I−2544、CNCM I−2545、CNCM I−2546、CNCM I−2547、CNCM I−2548、及びCNCM I−2549)で実施した。
【0042】
これらの細胞株は全て、10%FCS、グルタミン(2mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、非必須アミノ酸、及びHEPES緩衝液(10mM)が補足されたRPMI培地(全て、GIBCO Life Sciences, Paisley, UK)において培養した。コンフルエントになった時点で、トリプシン処理によって細胞を継代した。
【0043】
オリゴヌクレオチド・アレイ解析
剥離により培養された黒色腫細胞を採集し、全細胞RNAを抽出した。各試料のうち10μgを、市販のキット(Roche Molecular Biochemicals, Rotkreuz, Switzerland)を使用したcDNA合成のための鋳型として直接使用した。cDNA合成プライマーに組み込まれたT7プロモーター配列は、鋳型増幅、及び市販のキット(Affymetrix, Santa Clara, CA)を使用したインビトロ転写によるビオチン標識を可能にした。アルカリ熱断片化の後、cDNAをアレイ(Affymetrix, Santa Clara, CA)にハイブリダイズさせ、その後の全工程はアレイと共に供給された標準的な手法に従い実施した。生データは、GeneChipソフトウェアv3.1(Affymetrix, Santa Clara, CA)を使用して、共焦点レーザー・スキャナー(Hewlett Packard, Palo Alto, CA)を用いて収集した。
【0044】
データ解析
生データを、ME15細胞株cDNAのハイブリダイゼーションで得られた全チップ・シグナルに基づき基準化した。このアレイは、i) 対照遺伝子の5’/3’強度比が3未満であったこと;ii)Genechipにより遺伝子の>25%が「存在している(present)」とされたこと;iii)画像の様相が均質であり、バックグラウンドが低く、機械的なチップ損傷の徴候がなかったこと、より選択された。
【0045】
各遺伝子のパーフェクトのシグナルと、ミスマッチ・プローブセットのシグナルとの差の平均を正規化したもの(normalized average difference)(nAD)を、特定の遺伝子の発現レベルとして使用した。含められるためには、データの対比較における少なくとも一つのnAD値が50を超えていなければならない。nADに基づき、IFN−α曝露と関係する変化係数も計算した。人為的に高い修飾の計算を回避するため、負のnAD値は20に設定した。アーチファクトを排除するため、2倍超の大きい変化係数を有する遺伝子のみを解析に含めた。これらの基準を適用することによって、約60〜80個の遺伝子が、解析された細胞株によって示差的に発現されていることが見出された。アレイ間のばらつきは、試験的研究における、同じバッチからの5個のアレイへの一つの試料のハイブリダイゼーションに基づき、2%を超えていなかった。制御様式によって、遺伝子をクラスタリングした。
【0046】
IFN− α感受性黒色腫細胞株及び抵抗性黒色腫細胞株の同定
多数の樹立黒色腫細胞株を、IFN−αがそれらの増殖を阻害し、HLAクラスI決定基の表面発現を増加させる能力を試験することにより、IFN−αに対する感受性に関してアッセイした。
【0047】
2つの細胞株(CNCM I−2545及びCNCM I−2549)が、IFN−αの抗増殖効果に対して抵抗性であることが見出された。
【0048】
CNCM I−2547及びCNCM I−2548の増殖は、わずか10U/mlというIFN−α濃度によって、少なくとも50%阻害されうるが、CNCM I−2544及びCNCM I−2546は、同様の効果を誘発するのに10倍高い用量を必要とした(表1)。
【0049】
IFN−αによるHLAクラスI発現のアップレギュレーションは、その抗増殖効果と密接に相関していた。2つの活性の解離が観察されることはなかった(表1)。
【0050】
【表1】IFN−αにより誘導される増殖阻害及びHLAクラスI過剰発現に対して感受性又は抵抗性の黒色腫細胞株の同定
(a)黒色腫細胞株を、1〜1000U/mlの範囲のIFN−α濃度の存在下で培養した。3H−チミジン取り込みを、18時間のパルス処理期間の後、5日間の培養期間中、毎日測定した。IC50とは、個々の実験において検出可能な最大増殖活性の少なくとも50%の阻害を誘導するIFN−α濃度である。
(b)黒色腫細胞を、IFN−α(100U/ml)の存在下(左側の数字)又は非存在下(右側の数字)で2日間培養した後、HLAクラスI特異的単形性mAbで染色し、フローサイトメトリーにより試験した。データは、標識された細胞株の平均蛍光強度として表されている。
【0051】
黒色腫細胞株における腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の検出
上記のように同定された感受性及び抵抗性の黒色腫細胞株から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、7000個の全長ヒト遺伝子に由来するプローブセットを含有しているオリゴヌクレオチド・アレイ(Hu6800FL, PN900183)へのハイブリダイゼーションのため処理した。各遺伝子の発現レベルを、正規化平均差(nAD、材料及び方法を参照のこと)として計算した。
【0052】
まず、腫瘍関連抗原(TAA)であるMART−1/Melan−A、pmel−17(gp1OO)、TRP−2、及びチロシナーゼをコードする遺伝子に関するデータセットを解析した。これらの4個の遺伝子は、CNCM I−2546及びCNCM I−2545細胞株において発現していることが見出されたが、CNCM I−2544、CNCM I−2546、CNCM I−2547、及びCNCN I−2548細胞株においては発現が事実上検出不能であった(図1)。機能試験によって、これらの所見が確認された。実際、HLA−A2.1陽性CNCM I−2545黒色腫細胞は、MART−1/Melan−A、pmel−17/gp1OO、チロシナーゼ、又はTRP−2タンパク質に由来するエピトープを認識するHLA−A2.1拘束性CTL株によって効率的に死滅させられた。対照的に、調査中の遺伝子を発現していないHLA−A2.1陽性CNCM I−2548細胞は、特異的CTLによって死滅させられなかった(図1)。注目すべきことに、IFN−α処理は、これらTAAをコードする遺伝子の発現に影響を及ぼさないようである。
【0053】
従って、調査中の細胞系へのマイクロアレイ技術の適用は、機能レベル及び遺伝子発現レベルで同時に得られた結果によって認められる。
【0054】
黒色腫細胞株における IFN− α受容体遺伝子発現
IFN−αの効果に対する示差的な感受性は、特異的受容体の示差的な発現と関係している。実際、IFN−α受容体遺伝子(IFNAR2)からの転写物は、調査中の細胞株由来のcDNAのマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションで、低レベル(nAD≦60)で検出された(表2、遺伝子クラスタ5)。
【0055】
より高感度なRT−PCRアッセイ法を使用することにより、IFN−α受容体遺伝子発現を評価した(図2B)。
【0056】
程度は異なるが、IFN−αへの応答性のレベルとは無関係に、特異的転写物が全ての株において検出可能であった。
【0057】
可能性のある IFN− α応答性マーカー遺伝子の検出
黒色腫細胞株の遺伝子プロファイルを、IFN−αの重要な直接効果、即ち増殖阻害及びHLAクラスI発現のアップレギュレーションに対する感受性又は抵抗性に従い分類した。
【0058】
IFN−α応答性に関して充分に言及された6個のヒト黒色腫細胞株からの大きなmRNA発現データセットの利用能のため、サイトカイン処理の非存在下で感受性又は抵抗性の株において優先的に発現されている遺伝子を同定することが可能となった。応答性細胞株(CNCM I−2544、CNCM I−2546、CNCM I−2547、及びCNCN I−2548)及び非応答性細胞株(CNCM I−2545及びCNCM I−2549)に由来する全遺伝子のマイクロアレイ・データを合わせ、二つの平均データセットを得た。次いで、これらのデータを、一方のグループにおいて3倍超アップレギュレートされている遺伝子に関してスクリーニングした。次いで、各細胞株における個々の発現レベルを得るため、平均データを分解した。平均からの偏差がnADの平均値の30%未満である場合、その遺伝子を陽性又は予測性とみなした。
【0059】
この解析によって、IFN−α感受性細胞株において優先的に発現されている4個の遺伝子の群が同定された(図2、パネルA)。それらのうちの2個、IFI16及びRCC1は、それぞれ有系分裂制御能及び転写活性化能を有する核タンパク質をコードしている。第3は、hox2ホメオボックス遺伝子であり、第4のh19遺伝子は、DNAメチル化及び遺伝子インプリンティングの過程に関与している非翻訳RNAをコードしている。しかしながら、注目すべきことに、IFN−α感受性細胞株のうちの一つ、ME51は、RCC1を発現していない。
【0060】
他方、おそらくシグナル伝達経路の成分をコードしている2個の遺伝子、SHB及びPKC−ζは、IFN−α抵抗性のD10及びME67細胞株において優先的に発現されているようであった(図2、パネルB)。
【0061】
感受性細胞及び抵抗性細胞において典型的なプロファイルに従い優先的に発現されている遺伝子のパターンが、明白に出現した。IFI16、hl9、及びRCC1のような細胞増殖の制御に関与している遺伝子のみならず、hox2も、感受性細胞株において優先的に発現されていることが見出された。興味深いことに、規定のシグナル伝達経路の既知の成分であるSHB及びPKC−ζタンパク質をコードする遺伝子は、IFN−α抵抗性細胞において優先的に発現されているようであった。これらの複雑なデータは、IFN−α抵抗性が、単なる活性化の欠損ではなく、一連の活性イベントに起因するのかもしれないことを示唆している。
【0062】
感受性細胞株及び抵抗性細胞株における IFN− αによる遺伝子発現の誘導
IFN−αの存在下で48時間培養した場合の、IFN−α感受性黒色腫細胞株及びIFN−α抵抗性黒色腫細胞株において発現された遺伝子のパターンを調査した。CNCM I−2546及びCNCM I−2545を、詳細に研究した。解析は、未処理の細胞と比較して少なくとも3倍アップレギュレート又はダウンレギュレートされており、四つの実験のうちの一つにおいて少なくとも50というnAD値を示した遺伝子に焦点を当てた。
【0063】
クラスタ1(表2)には、感受性CNCM I−2546細胞株においてのみ誘導可能な遺伝子が含まれる。予想通り、これらの遺伝子の発現は、IFN−α抵抗性CNCM I−2545細胞においては、処理によって有意な影響を受けなった。この遺伝子セットには、HLAクラスI遺伝子、2−5Aシンセターゼ、TAP−1、多数のインターフェロン誘導可能タンパク質をコードする遺伝子のみならず、p27サイクリン依存性キナーゼ阻害剤及びROXタンパク質も含まれる。アンプラキシン(amplaxin)又はems−1をコードする、腫瘍細胞において高頻度に増幅される遺伝子座11q13に由来する単一の遺伝子は、両方の株においてIFN−αにより誘導されるようであった(クラスタ2)。
【0064】
既知のIFN−α誘導可能遺伝子であるip−30、及びdss1を含むクラスタ3遺伝子は、CNCM I−2545抵抗性細胞株において誘導されたが、それらの発現はCNCM I−2546感受性細胞においては有意に改変されなかった。クラスタ4には、クラスタ1とは対照的に、IFN−α抵抗性CNCM I−2545においてダウンレギュレートされる、CNCM I−2546においてIFN−αにより誘導可能な付加的な遺伝子が含まれる。興味深いことに、IFN−αシグナル伝達に関与している転写因子ISGF−3が、他のIFN関連遺伝子を含んでいるこのクラスタに属する。クラスタ5は、抵抗性CNCM I−2545細胞においてはIFN−α処理によりダウンレギュレートされるが、感受性CNCM I−2546細胞においては事実上影響を受けない遺伝子を含む。興味深いことに、このクラスタは、IFN−α受容体をコードする遺伝子を含む。クラスタ6は、CNCM I−2545抵抗性細胞株においては基本的に発現が検出不可であり、CNCM I−2546 IFN−α感受性細胞においてはダウンレギュレートされる、2つの遺伝子(irf−2、及びインターフェロンにより誘導される細胞抵抗性メディエーター)を含んでいる。興味深いことに、IRF−2遺伝子産物は、I型IFN誘導可能遺伝子のプロモーター領域と結合し、転写を防止することが既知である。従って、ダウンレギュレーションは、IFN誘導可能遺伝子の活性化を促進することができる。
【0065】
下記の表2においては、100U/ml IFN−αの非存在下又は存在下で48時間培養されたCNCM I−2546及びCNCM I−2545を、繊維肉腫細胞において得られたデータと一致するよう、サイトカインによりモジュレートされる遺伝子発現をアッセイするために使用した。この解析により、6個の遺伝子クラスタが得られた。クラスタ1は、IFN−α感受性CNCM I−2546においてのみ誘導される遺伝子を含有している。クラスタ2は、両方の株においてアップレギュレートされるアンプラキシン(amplaxin)を含んでおり、クラスタ3は、CNCM I−2545抵抗性株においてのみ誘導される遺伝子を含んでいる。クラスタ4は、CNCM I−2545においてダウンレギュレートされ、CNCM I−2546において誘導される遺伝子を指す。クラスタ5は、CNCM I−2545においてダウンレギュレートされる遺伝子を含み、クラスタ6は、CNCM I−2546においてダウンレギュレートされる遺伝子を指す。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
【0066】
【表2】IFN−αにより調節される遺伝子
カラム1=GenBank ID;カラム2=遺伝子名;カラム3=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム4=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム5=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2546におけるnAD;カラム6=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2546;カラム7=CNCM I−2545における変化係数(CF);カラム8=CNCM I−2546における変化係数;カラム9=クラスタの特徴(〜=変化なし;d=ダウンレギュレート;u=アップレギュレート)。
【0067】
新規な IFN− α誘導可能遺伝子の検出
表3に報告されるクラスタ1及び2は、黒色腫細胞処理により発現がアップレギュレートされうる、IFN−α誘導可能であることがこれまで知られていなかった遺伝子を含んでいる。クラスタ1は、感受性細胞においてのみ誘導される遺伝子を含み、クラスタ2は、「表現型上の」感受性に関わらず、黒色腫細胞のIFN−α処理によってアップレギュレートされる遺伝子を指す。これらの遺伝子のうちのいくつかは、明らかに、メラニン細胞(黒色腫分化抗原(melanoma differentiation antigen)、mda−6)又は神経外胚葉(例えば、ニューロロイキン(neuroleukin)又はカテコールo−メチルトランスフェラーゼ)の細胞株列に属し、例えば、血漿ゲルゾリン又はスペルミジンシンターゼをコードするもののような他の明白に誘導可能な遺伝子は、明確な類似の組織特異的分類に当てはまらなかった。表3中のクラスタ2は、解析された両方の株におけるIFN−α応答性に関わらず、誘導可能な新規遺伝子を含んでいる。多数のこれらの遺伝子(rheb、PP1、ATPase、セラミダーゼ、eif3)が、機能的には細胞内シグナル伝達経路に関係している。
【0068】
下記の表3においては、100U/mlIFN−αの非存在下又は存在下で48時間培養されたCNCM I−2546及びCNCM I−2545細胞株を、繊維肉腫細胞においては発現が調節されないことが見出された、新規なサイトカインにより誘導される遺伝子を同定するために使用した。クラスタ1は、CNCM I−2546感受性細胞株において誘導可能であるが、CNCM I−2545抵抗性細胞株においては誘導可能でない遺伝子を含んでいる。クラスタ2は、両方の株において誘導可能な遺伝子を含んでいる。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
【0069】
【表3】新規なIFN−α誘導可能遺伝子
カラム1=GenBank ID;カラム2=遺伝子名;カラム3=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム4=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2545におけるnAD;カラム5=IFN−αの非存在下で培養されたCNCM I−2546におけるnAD;カラム6=IFN−αの存在下で培養されたCNCM I−2546;カラム7=CNCM I−2545における変化係数(CF);カラム8=CNCM I−2546における変化係数;カラム9=クラスタの特徴(〜=変化なし;d=ダウンレギュレート;u=アップレギュレート)。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】黒色腫細胞株における腫瘍関連抗原及びIFN−α受容体をコードする遺伝子の発現を示す図である。
パネルA:腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の発現。
細胞株CNCM I−2544(375)、CNCM I−2545(D10)、CNCM I−2546(15)、CNCM I−2547(51)、CNCM I−2548(59)、及びCNCM I−2549(67)を、100U/ml IFN−αの存在下(+)又は非存在下(−)で48時間培養した。HLA拘束性腫瘍関連抗原であるチロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−2、pmel−17、及びmart−1をコードする遺伝子の発現パターンが報告されている。灰色のバーはIFN−α感受性細胞株を指し、黒色バーはIFN−α抵抗性株を指す(表1参照)。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
パネルB: IFN−α受容体遺伝子発現が、25サイクルRT−PCRにより、IFN−α感受性黒色腫細胞株及びIFN−α抵抗性黒色腫細胞株において検出される。
【図2】IFN−α感受性黒色腫細胞株又はIFN−α抵抗性黒色腫細胞株において優先的に発現されている遺伝子を示す図である。
オリゴヌクレオチド・アレイ発現データを、未処理細胞より収集した。感受性細胞株(CNCM I−2544(A375)、CNCM I−2546(ME15)、CNCM I−2547(ME51)、及びCNCN I−2548(ME59))、又は抵抗性細胞株(CNCM I−2545(D10)及びCNCM I−2549(ME67))からのデータを、2つのデータ・セット(パネルA及びパネルB)へと合わせた。次いで、一方の群において少なくとも3倍アップレギュレートされている遺伝子を同定するため、個々の遺伝子についての平均値をフィルターした。データは、マッチ・プローブセットとミスマッチ・プローブセットとのシグナル強度の差の平均として提示されている。
Claims (14)
- 腫瘍治療に対する応答能を決定するため患者をスクリーニングする方法であって、
− 患者試料中の該治療の予測となる遺伝子の少なくとも一つの発現レベルを測定する段階;及び
− 測定の結果を参照試料で得られた結果と比較する段階を含む、方法。 - 患者が腫瘍に罹患した患者である、 請求項1記載の方法。
- 患者が黒色腫癌に罹患した患者である、 請求項1記載の方法。
- 腫瘍治療が、IFN−α、又はその誘導体の一つを含む、 請求項1記載の方法。
- 遺伝子発現が、治療の予測となる遺伝子の少なくとも一つに特異的なDNAプローブを用いたDNA解析により、mRNA転写レベルの決定により、又は遺伝子産物のレベルの決定により、直接的に測定される、請求項1記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項記載の方法を実施するための診断試験であって、
− 抗体又は核酸プローブを含有している液相を用いて、マトリックスをプローブと接触させる段階、
− 腫瘍治療の予測となる遺伝子の一つの遺伝子転写又は産物を検出する段階、を含む試験。 - マトリックスが核酸を含み、液相が標的核酸プローブを含有する、請求項6記載の診断試験。
- マトリックスが標的タンパク質プローブを含み、液相が抗体を含有する、請求項6記載の診断試験。
- プローブを含有するマトリックスを有する容器を含む、請求項1記載の方法のための診断キット。
- 核酸プローブを含むマトリックスを含む容器を含む、請求項9記載の診断キット。
- 腫瘍治療に対して感受性又は抵抗性である細胞又は組織の利用能をスクリーニングするための方法であって、該治療に特徴的な遺伝子発現プロファイルの同定を含む方法。
- 細胞が細胞株由来である、請求項11記載の方法。
- 細胞が腫瘍細胞株由来である、請求項11記載の方法。
- 腫瘍治療応答性の細胞の選択を可能にする免疫学的マーカーであって、該治療の予測となる遺伝子の一つまたは複数の産物に特異的な抗体であるマーカー。
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|---|---|---|---|
| A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050713 |
|
| A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20060104 |
