JP2005190882A - リチウム電池用正極活物質の製造方法とリチウム電池用正極活物質及びリチウム電池用電極並びにリチウム電池 - Google Patents

リチウム電池用正極活物質の製造方法とリチウム電池用正極活物質及びリチウム電池用電極並びにリチウム電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 オリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質を合成する際に鉄(III)化合物の生成を防止することができ、したがって、充放電容量、特に放電容量に優れたリチウム電池用正極活物質を作製することができるリチウム電池用正極活物質の製造方法とリチウム電池用正極活物質及びリチウム電池用電極並びにリチウム電池を提供する。
【解決手段】 本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法は、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、さらに、有機還元剤を添加し、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウム電池用正極活物質の製造方法とリチウム電池用正極活物質及びリチウム電池用電極並びにリチウム電池に関し、更に詳しくは、LiFePOの様なオリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質を合成する際に、3価の鉄の生成による放電容量の低下を防止することにより、優れた放電容量を有するリチウム電池用正極活物質の製造方法、このリチウム電池用正極活物質の製造方法により得られたリチウム電池用正極活物質、このリチウム電池用正極活物質を含むリチウム電池用電極、及びこのリチウム電池用電極を正電極として備えたリチウム電池に関するものである。
近年、携帯用電子機器やハイブリット自動車等に用いるための電池として二次電池の開発が進められている。
代表的な二次電池としては鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウム電池等が知られているが、特に、リチウム電池は、小型化、軽量化、高容量化が可能であり、しかも、高出力、高エネルギー密度を有していることから、大いに期待されている。
このリチウム電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極と、負極と、非水系の電解質から構成されている。
この正極自体は、正極活物質、導電助剤およびバインダーを含む電極材料により構成され、この電極材料を集電体と呼ばれる金属箔の表面に塗布することにより正極とされている。
正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)等のリチウムと遷移金属の複合酸化物がよく知られている。しかしながら、これらの物質は、コバルトやニッケルの様に資源量の少ない貴重で高価な金属を含むものであったり、使用中にマンガンが溶出するために寿命が短い等の欠点がある。
そこで、最近では、このような欠点を補う目的で、資源的に豊富かつ安価な金属である鉄を用いたLiFePOのようなオリビン型金属リン酸塩の正極活物質が提案されている。
LiFePOのようなFe含有リチウム化合物は、金属Liに対して3.3V程度の電位を有することから、充放電可能な正極材料として注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
通常、このようなオリビン型金属リン酸塩の正極活物質は、原料のリチウム塩、2価の鉄塩およびリン化合物を混合したものを焼成し、これらの間に固相反応を生じさせることにより作製される(特許文献1参照)。
A.K.パディ他(A.K.Padhi et al.)、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティー(J.Electrochem.Soc.)第144巻、1609頁(1997年発行) 特開平9−171827号公報
しかしながら、従来のリチウム塩、2価の鉄(以下、鉄(II)と称する)塩およびリン化合物を混合し焼成するという方法で作製されたオリビン型リチウム鉄リン酸塩をリチウム電池の正極活物質に適用した場合、満足できる充放電容量が得られていない。
その原因としては、原料に含まれる鉄(II)が焼成時に原料に付着している空気や水分により一部が酸化され、正極活物質として機能しない3価の鉄(以下、鉄(III)と称する)に変化してしまうために、焼成後に得られた固相反応物がオリビン型鉄リン酸塩以外の鉄(III)化合物をも含むものとなり、オリビン型リチウム鉄リン酸塩の純度が低下した分、充放電容量が低下するからである。
また、鉄(II)の原料として比較的安価に入手可能でかつ工業的に利用可能なものは、しゅう酸鉄(II)2水和物(FeC・2HO、リン酸鉄(II)8水和物(Fe(PO・8HO)、塩化鉄(II)水和物(FeCl・nHO)、硫酸鉄(II)7水和物(FeSO・7HO)、酢酸鉄(II)4水和物(Fe(CHCOO)・4HO)等のように結晶水を含む状態で安定なものであるから、酸化を防ぐために原料の表面に付着している空気や水分を何らかの方法で除去したとしても、実質的に完全に水分を除去するのは不可能である。
また、これらの塩は、いずれも結晶水を含む水和物の形態で安定であるから、もし結晶水を含まない状態で使用や保管をする場合、特殊な容器あるいは環境が必要となる。さらに、安定な塩として存在する期間も比較的短いため、工業的に利用するのは難しい。
このように、鉄(II)の原料としては結晶水を含む化合物を使用する必要があるが、この化合物に含まれる鉄(II)は焼成時に鉄(III)に変化するのを防止することが難しく、したがって、オリビン型リチウム鉄リン酸塩中の鉄(II)の比率をこれ以上上げることが難しく、リチウム電池の充放電容量をさらに向上させることは難しい。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、LiFePOの様なオリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質を合成する際に、鉄(III)化合物の生成を防止することができ、したがって、鉄(III)化合物を含まないオリビン型リチウム鉄リン酸塩を容易に作製することができ、充放電容量、特に放電容量に優れたリチウム電池用正極活物質を作製することができるリチウム電池用正極活物質の製造方法とリチウム電池用正極活物質及びリチウム電池用電極並びにリチウム電池を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、LiFePOの様なオリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質を製造する際に、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを含む混合物を320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱して得られた生成物に、有機還元剤を添加し、さらに600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱すれば、鉄(III)化合物の生成を防止することができ、したがって、オリビン型リチウム鉄リン酸塩を容易に作製することができ、リチウム電池の充放電容量をさらに向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法は、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、さらに、有機還元剤を添加し、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱することを特徴とする。
本発明の他のリチウム電池用正極活物質の製造方法は、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、得られた生成物と有機還元剤を含む非水系溶液とを混合し、さらに、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱することを特徴とする。
前記リチウムを含有する塩はリチウム有機酸塩またはリチウム無機酸塩が好ましく、前記鉄を含有する塩は鉄(II)有機酸塩が好ましく、前記リン酸を含有する塩はリン酸水素アンモニウムが好ましい。
前記リチウム有機酸塩は酢酸リチウムが好ましく、前記リチウム無機酸塩は炭酸リチウムが好ましく、前記鉄(II)有機酸塩はシュウ酸鉄(II)または酢酸鉄(II)が好ましく、前記リン酸水素アンモニウムはリン酸2水素アンモニウムまたはリン酸水素2アンモニウムが好ましい。
前記有機還元剤は多価フェノール類であることが好ましい。
本発明のリチウム電池用正極活物質は、本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法により得られたことを特徴とする。
本発明のリチウム電池用電極は、本発明のリチウム電池用正極活物質を含むことを特徴とする。
本発明のリチウム電池は、本発明のリチウム電池用電極を正電極として備えてなることを特徴とする。
本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法によれば、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、さらに、有機還元剤を添加し、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱するので、鉄(III)化合物の生成を防止することができ、オリビン型リチウム鉄リン酸塩を容易に作製することができる。したがって、充放電容量、特に放電容量に優れたリチウム電池用正極活物質を作製することができる。
本発明の他のリチウム電池用正極活物質の製造方法によれば、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、得られた生成物と有機還元剤を含む非水系溶液とを混合し、さらに、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱するので、鉄(III)化合物の生成を防止することができ、オリビン型リチウム鉄リン酸塩を容易に作製することができる。したがって、充放電容量、特に放電容量に優れたリチウム電池用正極活物質を作製することができる。
本発明のリチウム電池用正極活物質によれば、本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法により得られたので、鉄(III)化合物を含まないものとなり、充放電容量、特に放電容量を大幅に向上させることができる。
本発明のリチウム電池用電極は、本発明のリチウム電池用正極活物質を含むので、充放電容量、特に放電容量を大幅に向上させることができ、リチウム電池用電極の高品質化、小型化を図ることができる。
本発明のリチウム電池は、本発明のリチウム電池用電極を正電極として備えたので、充放電容量、特に放電容量を大幅に向上させることができ、電池としての出力を高めることができる。したがって、各種電気特性に優れたリチウム電池を提供することができる。
本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法とリチウム電池用正極活物質及びリチウム電池用電極並びにリチウム電池の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法は、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し(第1の加熱工程)、さらに、有機還元剤を添加し、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱する(第2の加熱工程)方法である。
第1の加熱工程では、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合して得られた混合物を、320〜480℃で加熱する。すなわち、第1の加熱工程で上記の混合物を一旦加熱することにより、熱分解により表面に付着している水分や酸素を除去する。さらに、原料塩として、結晶水を含むものを用いる場合には、熱分解により結晶水を除去することができる。
この加熱工程により、結晶水を含まなくても安定に存在できるオリビン型の結晶構造を有する前駆体(生成物)を合成することができる。
この前駆体に有機還元剤を添加した後、600〜800℃の範囲で加熱する第2の加熱工程を施す。
このように、上記の前駆体に有機還元剤を添加し、第2の加熱工程にて更に加熱することにより、前駆体合成時(第1の加熱工程時)および再加熱時(第2の加熱工程時)に生成する鉄(III)を有機還元剤により鉄(II)に還元することができ、優れた放電容量を示すリチウム電池用正極活物質を得ることができる。
次に、本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法について、より具体的に説明する。
「混合工程」
まず、本発明で得られるリチウム電池用正極活物質の原料となる各種の塩を、所定の配合比になるように秤量し、これらを混合する。混合方法としては、ボールミルや振動ミル等を用いた湿式混合、自動乳鉢等を用いた乾式混合のいずれでもかまわない。
ここで、原料となる各種の塩としては、リチウムを含有する塩、鉄を含有する塩、リン酸を含有する塩の3種類の塩が少なくとも必要である。
リチウムを含有する塩としては、例えば、酢酸リチウム、蓚酸リチウム等のリチウム有機酸塩、炭酸リチウム、水酸化リチウム、リン酸リチウム等のリチウム無機酸塩が挙げられるが、吸水性が小さい等の取り扱いの容易さから酢酸リチウムあるいは炭酸リチウムが好ましい。
鉄を含有する塩としては、例えば、蓚酸鉄(II)2水和物、リン酸鉄(II)8水和物、塩化鉄(II)水和物、硫酸鉄(II)7水和物、酢酸鉄(II)4水和物等の鉄(II)有機酸塩が挙げられるが、比較的低温で有害ガスを出さずに熱分解することから、蓚酸鉄(II)2水和物あるいは酢酸鉄(II)4水和物が好ましい。
リン酸を含有する塩としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等のリン酸水素アンモニウム、あるいはリン酸鉄等が挙げられるが、比較的純度が高く組成制御が行い易いことから、リン酸2水素アンモニウムあるいはリン酸水素2アンモニウムが好ましい。
「第1の加熱工程」
次に、上記の混合物を320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱する。これにより、オリビン型の結晶構造を有する前駆体が形成される。
ここで、オリビン型の結晶構造を有する前駆体とは、X線回折チャートにおいてオリビン構造の最大強度の回折線である(311)面の強度が最も強く検知される状態、すなわちオリビン構造に該当しない原料塩の全ての他のピーク強度よりも生成物であるオリビン構造の最大強度の回折線における強度が強くなる状態をいう。
ここで、加熱温度を320℃以上かつ480℃以下の範囲に限定した理由は、加熱温度が320℃未満では、原料中における元素の移動が不十分で、オリビン型の結晶構造を有する前駆体の生成が不十分なものとなるからであり、また、加熱温度が480℃を超えると、オリビン型の結晶構造を有する前駆体の成長が大きくなり過ぎ、表面に付着する有機還元剤の効果が粒子の内部まで届かなくなるからである。
加熱時間は、3時間以上かつ10時間以下が好ましい。その理由は、加熱時間が3時間未満では、原料中の元素の移動が不十分で、オリビン型の結晶構造を有する前駆体の生成が不十分なものとなり易く、また、10時間を超えると、オリビン型の結晶構造を有する前駆体が成長し過ぎてしまい、良好な前駆体が得られなくなるからである。
また、加熱時の雰囲気は、窒素(N)ガス等の不活性雰囲気、あるいは5v/v%H−N等の還元性雰囲気が好ましい。
その理由は、得られた前駆体が2価の鉄を含むものであるから、酸素または大気雰囲気とすると、2価の鉄が酸化して3価の鉄を含む前駆体となってしまい、その後、この前駆体を焼成してもLiFePOの様なオリビン型リチウム鉄リン酸塩が得られないからである。
「有機還元剤添加工程」
この様にして得られたオリビン型の結晶構造を有するリチウム鉄リン酸塩の前駆体に、さらに有機還元剤を添加し、この前駆体の表面に有機還元剤を付着させる。
有機還元剤を添加する方法としては、ボールミルや振動ミル等を用いた湿式混合法、自動乳鉢等を用いた乾式混合法のどちらでも良いが、オリビン型の結晶構造を有する前駆体と有機還元剤が均一に混合されるという点では、湿式混合法の方が優れているので好ましい。
湿式混合法としては、有機還元剤を非水系溶媒中に分散または溶解させた非水系溶液中に、前駆体を混合、分散した後、非水系溶媒を除去する方法が好ましい。この混合、分散の際に、オリビン型の結晶構造を有する前駆体の表面に有機還元剤を付着させることが好ましい。
ここで、非水系溶媒が好ましい理由は、第1の加熱工程により原料塩中の結晶水や付着水を除去して水分のない前駆体を生成したため、この前駆体に水分を導入しない方がよいからである。
非水系溶媒としては、有機還元剤が溶解するものであり、かつ、加熱による除去が可能な低沸点溶媒、例えば、アセトン、無水メタノール、無水エタノール等が好ましい。非水系溶媒の量としては、オリビン型の結晶構造を有する前駆体の重量に対して3倍〜5倍の重量が好ましい。その理由は、3倍未満では、溶媒が少な過ぎるために有機還元剤が完全に溶解しきれず、あるいは十分に分散しきれないからであり、5倍を超えると、後の工程における溶媒の除去に時間と手間がかかるからである。
有機還元剤としては、非水系溶媒に溶解するものが好ましい。また、芳香族系の還元剤が好ましい。特に、多価フェノール類は、非水系溶媒に溶解し易く、有機物の中でも特に還元性が強く、さらに、加熱分解すると炭素しか残留しないことから好ましい。多価フェノール類としては、例えば、レゾルシノール、キノール、ピロガロール等が好ましい。
ここで、有機還元剤を用いる理由は、無機還元剤を用いた場合、無機還元剤は大部分がイオン性であるから、非水系溶媒に溶解しないあるいは溶解し難いものが多く、また、無機還元剤はリチウムとの反応性が高く、オリビンの結晶構造を有する前駆体を酸塩基反応で分解してしまう虞があるからである。
有機還元剤の添加量は、処理するオリビンの結晶構造を有する前駆体の重量に対して5重量%以上かつ30重量%以下が好ましい。その理由は、5重量%未満では、前駆体の表面への付着量が少なく、還元剤としての効果にばらつきが生じるからであり、また、30重量%を越えると、還元剤としての効果が飽和してしまい、それ以上添加しても効果に変わりがないからである。
この有機還元剤を含む非水系溶液と上記の前駆体とを混合し、上記の前駆体を有機還元剤を含む非水系溶液中に均一分散させる。
例えば、上記の前駆体を有機還元剤を溶解した非水系溶媒中に分散する方法としては、ボールミルやサンドミル等の媒体分散ミルで処理すればよい。特に前駆体の酸化を防ぐためには、上記の前駆体と有機還元剤を溶解した非水系溶媒とをアルミナやジルコニア等のセラミックスボールのような粉砕メディアとともにボールミル中に密封し、このボールミルを所定時間回転させることにより、上記の前駆体を有機還元剤を含む非水系溶液中に均一分散させることが好ましい。
ここで「分散する」とは、上記の前駆体粉末の表面全てが有機還元剤を溶解した非水系溶媒によって濡れることであり、ミル等により処理した後は固液分離してしまってもかまわない。
上記の前駆体を有機還元剤を含む非水系溶液中に均一分散させた後は、非水系溶媒を除去し、その後、この有機還元剤を添加した前駆体に第2の加熱工程を施すのが好ましい。
非水系溶媒の除去方法としては、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて加熱することが好ましい。加熱温度は、使用した非水系溶媒及び有機還元剤の種類にもよるが、例えば、有機還元剤としてレゾルシノールを、非水系溶媒としてアセトン(沸点(b.p.)=56.5℃)をそれぞれ用い、レゾルシノールをアセトンに溶解した場合、60℃にて2〜3時間程度加熱すればよい。
なお、ここでは、非水系溶媒の沸点以上の温度にて加熱処理することにより非水系溶媒を除去し、その後、第2の加熱工程を施すこととしたが、第2の加熱工程の加熱初期に、非水系溶媒の沸点以上の温度を一定時間保持する温度領域を設けることにより、非水系溶媒の除去と前駆体及び有機還元剤の加熱処理とを1つの温度プロファイル上で行うこととしてもよい。
「第2の加熱工程」
次に、上記の非水系溶媒が除去された有機還元剤を添加した前駆体を、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱する。
この加熱により、有機還元剤を添加した前駆体は、オリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質となる。
ここで、加熱温度を600℃以上かつ800℃以下としたのは、600℃未満では、各元素の移動速度が遅く、オリビン型結晶構造の単一相とするためには長時間を要し、工業的に非効率であるからであり、また、有機還元剤を熱分解して完全に飛散させてしまうためには、600℃以上の温度で加熱処理する必要があるからである。また、加熱温度が800℃を越えると、リチウム元素の蒸発が生じ、オリビン型の結晶構造が分解し始めるからである。
加熱時間は、7〜24時間が好ましい。7時間未満では、各元素の移動が不十分のためオリビン型結晶構造単一相の生成が不十分になり易く、また、24時間を超えると、リチウム元素の蒸発が生じ、オリビン型の結晶構造が分解し始めるからである。
また、加熱時の雰囲気は、窒素(N)ガス等の不活性雰囲気、あるいは5v/v%H−N等の還元性雰囲気が好ましい。
その理由は、得られた前駆体が鉄(II)を含むものであるから、酸素または大気雰囲気とすると、鉄(II)が酸化して鉄(III)を含む前駆体となってしまい、その後、この前駆体を焼成してもLiFePOの様なオリビン型リチウム鉄リン酸塩が得られないからである。
この有機還元剤は加熱後に一部が炭素として残留するが、リチウム電池の正極は導電助剤として炭素を含むために、有機還元剤に起因する炭素が残留していることは、正極活物質の表面に導電助剤としての炭素がよく密着した状態で存在しているという点で、むしろ好ましいことである。
さらに、そのような正極活物質の表面によく密着した炭素は、オリビン型のリチウム鉄リン酸塩の粒成長を抑制するため、微細で活性の高い粉末状の正極活物質を合成することができる。
本発明の製造方法によれば、リチウム電池用正極活物質に用いて好適なオリビン型の結晶構造を有するリチウム鉄リン酸塩を製造することができる。
また、このリチウム鉄リン酸塩は、基本的にはLiFePOなる化学式で表わされるが、オリビン型の結晶構造を維持したままでLiやFeの一部を他元素で置換したもの、あるいはオリビン型の結晶構造にて一部の元素が欠落して格子欠陥が生じ、組成がLiFePOからずれて非化学量論組成となっているものも含む。LiやFeの一部を他元素で置換した組成のものを得るには、本発明の製造方法において、原料として、リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩に加えて、他元素を含む塩等を加えればよい。
このリチウム電池用正極活物質が高い容量を示す理由は、有機還元剤添加工程において、非水系溶媒を除去することにより有機還元剤を前駆体の表面に付着させるとともに、有機還元剤の一部が溶媒除去時の加熱によって鉄(III)を鉄(II)に還元するからである。また、表面に有機還元剤が付着したオリビンの結晶構造を有する前駆体を600℃以上かつ800℃以下の温度で加熱することにより、鉄(III)が有機還元剤により還元され、高容量を示すオリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質となるからである。
以上により、本発明のリチウム電池用正極活物質の製造方法により得られたオリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質は、鉄(III)化合物を含まないものであるから、充放電容量、特に放電容量を大幅に向上させることができる。
また、このリチウム電池用正極活物質と、炭素と、適当なバインダーとを混合したものを用いて、基材上にオリビン型リチウム鉄リン酸塩と炭素とバインダーとからなる層を形成することにより、本発明のリチウム電池用正極(電極)を作製することができる。
バインダーとしては、通常用いられているものでよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフツ化ビニリデンフルオライト、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体等が用いられる。
バインダーを混合する際に、必要により溶媒を添加してもよい。溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン等が用いられる。
基材としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、金等の金属箔からなる集電体が用いられる。
形成方法としては、特に限定されず、通常用いられる方法を適用することができる。例えば、リチウム鉄リン酸塩と炭素とバインダーとを溶媒と共に混練しペースト化して集電体の表面に塗布し、正極とする。
塗布方法としては、ペーストをへらで直接塗りつける方法でもよいが、膜厚を制御するためには、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を用いるのが好ましい。
このリチウム電池用正極は、本発明のリチウム電池用正極活物質を含むものであるから、放電容量を大幅に向上させることができ、リチウム電池用電極の高品質化、小型化を図ることができる。
さらに、本発明のリチウム電池は、本発明のリチウム電池用電極を正極としたものであるから、安価なオリビン型リチウム鉄リン酸塩を用いることで、正電極の放電容量を大幅に向上させることができ、電池としての出力を高めることができる。したがって、各種電気特性に優れたリチウム電池を提供することができる。
以下、実施例1〜4及び比較例1〜3により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
酢酸リチウム2水和物、シュウ酸鉄(II)2水和物およびリン酸2水素アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、350℃にて5時間、熱処理した。
得られた生成物は、X線回折チャートで最も強度の強いピークはオリビン型結晶構造のものであり、本発明のオリビン型の結晶構造を有する前駆体であった。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gと、レゾルシノール0.35gをアセトン7gに溶解した溶液とを、ボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体及びレゾルシノールを含むアセトン溶液を、窒素気流中、60℃にて加熱してアセトンを除去した後、窒素中、640℃にて10時間熱処理し、オリビン型のリチウム鉄リン酸塩正極活物質を得た。
(実施例2)
炭酸リチウム、酢酸鉄(II)4水和物およびリン酸水素2アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、380℃にて5時間熱処理し、オリビン型の結晶構造を有する前駆体を得た。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gと、レゾルシノール0.5gをアセトン7gに溶解した溶液とを、ボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体及びレゾルシノールを含むアセトン溶液を、窒素気流中、60℃にて加熱してアセトンを除去した後、窒素中、670℃にて10時間熱処理し、オリビン型のリチウム鉄リン酸塩正極活物質を得た。
(実施例3)
酢酸リチウム2水和物、シュウ酸鉄(II)2水和物およびリン酸2水素アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、350℃にて5時間熱処理した。
得られた生成物は、X線回折チャートで最も強度の強いピークはオリビン型結晶構造のものであり、本発明のオリビン型の結晶構造を有する前駆体であった。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gと、キノール0.35gをアセトン7gに溶解した溶液とを、ボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体及びキノールを含むアセトン溶液を、窒素気流中、60℃にて加熱してアセトンを除去した後、窒素中、640℃にて10時間熱処理し、オリビン型のリチウム鉄リン酸塩正極活物質を得た。
(実施例4)
酢酸リチウム2水和物、シュウ酸鉄(II)2水和物およびリン酸2水素アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、350℃にて5時間熱処理した。
得られた生成物は、X線回折チャートで最も強度の強いピークはオリビン型結晶構造のものであり、本発明のオリビン型の結晶構造を有する前駆体であった。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gと、ピロガロール0.35gをアセトン7gに溶解した溶液とを、ボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体及びピロガロールを含むアセトン溶液を、窒素気流中、60℃にて加熱してアセトンを除去した後、窒素中、640℃にて10時間熱処理し、オリビン型のリチウム鉄リン酸塩正極活物質を得た。
(比較例1)
酢酸リチウム2水和物、シュウ酸鉄(II)2水和物およびリン酸2水素アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、350℃にて5時間、熱処理した。
得られた生成物は、X線回折チャートで最も強度の強いピークはオリビン型結晶構造のものであり、本発明のオリビン型の結晶構造を有する前駆体であった。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gとアセトン7gとをボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体を含むアセトン溶液を、窒素気流中、60℃にて加熱してアセトンを除去した後、窒素中、640℃にて10時間熱処理し、オリビン型のリチウム鉄リン酸塩正極活物質を得た。
(比較例2)
酢酸リチウム2水和物、シュウ酸鉄(II)2水和物およびリン酸2水素アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、350℃にて5時間熱処理した。
得られた生成物は、X線回折チャートで最も強度の強いピークはオリビン型結晶構造のものであり、本発明のオリビン型の結晶構造を有する前駆体であった。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gと、ポリエチレングリコール(平均分子量:200)0.35gをアセトン7gに溶解した溶液とを、ボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体及びポリエチレングリコールを含むアセトン溶液を、窒素気流中、120℃にて加熱してアセトンを除去した後、120℃にて乾燥させ、さらに、窒素中、640℃にて10時間熱処理し、正極活物質を得た。
(比較例3)
酢酸リチウム2水和物、シュウ酸鉄(II)2水和物およびリン酸2水素アンモニウムを、リチウムと鉄とリンのモル比が1:1:1となる様に秤量し、乳鉢を用いて混合した。
その後、この混合物を窒素中、350℃にて5時間熱処理した。
得られた生成物は、X線回折チャートで最も強度の強いピークはオリビン型結晶構造のものであり、本発明のオリビン型の結晶構造を有する前駆体であった。
このようにして得られたオリビン型の結晶構造を有する前駆体2gと、アスコルビン酸0.35gを純水7gに溶解した溶液とを、ボールミルにて48時間混合し、次いで、この前駆体及びアスコルビン酸を含む水溶液を、窒素気流中、120℃にて加熱して純水を除去した後、窒素中、640℃にて10時間熱処理し、正極活物質を得た。
(リチウム電池の作製)
実施例1〜4および比較例1〜3で得られたそれぞれの正極活物質粉末60mgと、導電助剤としてアセチレンブラック30mgと、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10mgを混練、圧延し、実施例1〜4および比較例1〜3それぞれの電極材料結合フィルムを得た。
次いで、これらのフィルムを網目状のアルミニウムからなる集電体上に圧着後、成型機を用いて面積が2cmの円板状に打ち抜き、実施例1〜4および比較例1〜3の正極とした。
これらの正極を真空乾燥器を用いて真空乾燥した後、乾燥したアルゴン雰囲気下にてHS標準セル(宝泉株式会社製)を用いて実施例1〜4および比較例1〜3の電池を作製した。
ここでは、負極として金属リチウムを、セパレータとして多孔質ポリプロピレン膜を、電解質溶液として1mol/LのLiPF溶液を、それぞれ用いた。
なお、このLiPF溶液に用いられる溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸メチルエチルを体積%で1:1に混合したものを用いた。
次に、上記の実施例1〜4及び比較例1〜3それぞれの電池に対して、室温(25℃)にて電池充放電試験を行った。
この電池充放電試験においては、カットオフ電圧を3〜4Vとし、電流密度を次のように設定した。
充電時の電流密度については、まず、電極中の活物質含有量を実測し、この実測値とオリビン型リチウム鉄リン酸塩の理論容量(170mAh/g)を用いて10時間で理論容量を充電できる電流量(レート:0.1C)の定電流とした。また、放電時の電流密度についても、同じ電流量(レート:0.1C)の定電流とした。
上記の実施例1〜4及び比較例1〜3それぞれの初回放電特性を図1に示す。図1中、E1〜E4は実施例1〜4を、R1〜R3は比較例1〜3を、それぞれ示している。
この図によれば、実施例1〜4の電池は、オリビン型の結晶構造を有する前駆体をレゾルシノール、キノール、ピロガロールのような有機還元剤で処理することにより、比較例1の未処理のものを用いた電池より大きな放電容量を有することが分かった。
また、比較例2の電池は、還元性がほとんどない有機物であるポリエチレングリコールを用いたために、オリビン型の結晶構造を有する前駆体の還元処理効果が認められなかった。
また、比較例3の電池は、強い還元性を有する有機物であるアスコルビン酸を純水中にて用いたために、水による酸化作用が強く、還元処理の効果が認められなかった。
本発明は、LiFePOの様なオリビン型リチウム鉄リン酸塩の正極活物質を合成する際に、鉄(III)化合物の生成を防止することができることから、リチウム電池のさらなる充放電容量、特に放電容量の向上、充放電サイクルの安定化、高出力化はもちろんのこと、さらなる小型化、軽量化、高容量化が期待される二次電池の分野に適用することが可能である。
本発明の実施例1〜4及び比較例1〜3それぞれの電池の初回放電特性を示す図である。

Claims (8)

  1. リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、さらに、有機還元剤を添加し、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱することを特徴とするリチウム電池用正極活物質の製造方法。
  2. リチウムを含有する塩と、鉄を含有する塩と、リン酸を含有する塩とを混合し、320℃以上かつ480℃以下の温度にて加熱し、得られた生成物と有機還元剤を含む非水系溶液とを混合し、さらに、600℃以上かつ800℃以下の温度にて加熱することを特徴とするリチウム電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記リチウムを含有する塩は、リチウム有機酸塩またはリチウム無機酸塩であり、前記鉄を含有する塩は、鉄(II)有機酸塩であり、前記リン酸を含有する塩は、リン酸水素アンモニウムであることを特徴とする請求項1または2記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記リチウム有機酸塩は酢酸リチウムであり、前記リチウム無機酸塩は炭酸リチウムであり、前記鉄(II)有機酸塩は、シュウ酸鉄(II)または酢酸鉄(II)であり、前記リン酸水素アンモニウムはリン酸2水素アンモニウムまたはリン酸水素2アンモニウムであることを特徴とする請求項3記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記有機還元剤は多価フェノール類であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法により得られたことを特徴とするリチウム電池用正極活物質。
  7. 請求項6記載のリチウム電池用正極活物質を含むことを特徴とするリチウム電池用電極。
  8. 請求項7記載のリチウム電池用電極を正電極として備えてなることを特徴とするリチウム電池。
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