高分子電解質型燃料電池は、高分子電解質膜の片側の面に燃料ガスを、他方に空気等の酸化剤ガスを暴露し、イオン交換膜を介した化学反応によって水を合成し、これによって生じる反応エネルギーを電気的に取り出すことを基本原理としている。
この燃料電池の基本発電素子は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜、および高分子電解質膜の両面に形成された、白金族金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする一対の触媒層(アノード触媒層およびカソード触媒層)を備えている。又、この一対の触媒層を挟んで位置する通気性と電子伝導性を併せ持つ、主に炭素繊維から成るガス拡散電極を備えている。これら高分子電解質膜、一対の触媒層、及びガス拡散電極を合わせて電解質膜―電極接合体と呼ぶ。以下、電解質膜−電極接合体をMEA(menblene−electrode−assembly)と呼ぶ。
また、この燃料電池は、MEAの電極周囲部に、高分子電解質膜を挟む形で配設されたシール用ガスケットを備えている。これらMEA−ガスケットの組み立て体は、燃料ガス流路の形成されたアノードセパレータ(導電性バイポーラプレート)と酸化剤ガス流路の形成されたカソードセパレータによって挟まれ締結されている。またアノードセパレータは外部回路を通じてカソードセパレータと電気的に接続されている。
この系において、アノードセパレータに燃料ガス(通常水素ガス)を、カソードセパレータに酸化剤ガス(通常空気)を供給すると以下に述べるような化学反応を起こす。
すなわち、燃料ガスは、アノードガス拡散電極を通過してアノード触媒層に達し、アノード触媒層でプロトンと電子に解離する。このとき、解離した電子はアノードガス拡散電極を介してアノードセパレータに回収される。一方のプロトンはイオン交換膜によってプロトン輸送されカソード触媒層に移動する。
カソード触媒層においては、このプロトンと、カソードガス拡散電極を通過してカソード触媒層に達した酸化剤ガスと、外部接続回路を通じてカソードセパレータに移動したのちカソードガス拡散電極を介して触媒層に供給される電子とによって触媒反応をおこし、水が生成される。
上記一連の反応によって、水素が酸素と化合して水になるときのエネルギー差分を電気的に取り出すのが、高分子電解質型燃料電池の動作原理である。
ここで、イオン交換膜は充分に湿潤した状態で安定したプロトン輸送能を有するものであるため、この電池の動作には水を必要とする。この水は通常、セルに供給される水素および空気を加湿することにより、反応ガスと同時に供給される。また、上記反応を良好に行うためには、少なくとも60℃以上の温度が必要であり、実際には燃料電池は、60℃から80℃で運転されることが多い。
上記MEAとセパレータからなる単電池の起電力は、出力電流密度に依存するが、常用域で0.6から0.8V程度であるため、電力用途には通常数十〜数百段積層して用いられ、この積層電池をスタックと呼ぶ。
また、燃料電池は、発電と同時に発熱するが、スタックにおいてはその発熱密度が単電池に比して大きいため、通常1〜3セル毎に冷却水流路を設けて、強制的に水冷(エチレングリコール等の冷媒を用いる場合もある)して、電池を良好な温度状態に維持する。従って、スタックでは、燃料ガス、酸化剤ガス、水の三種の流体が給排されており、セパレータには、この3種の流体につき各一対(場合により複数対)のマニホールド(共通貫通孔)が設けられている。これら各々の流体はこのマニホールドから、それぞれのセパレータの溝に接続されて、各セルおよび水冷部に分岐される構造となっている。
例えば、燃料ガスであれば、燃料ガス供給マニホールドからアノードセパレータの燃料ガス流路に分岐され、流路を流れる過程でMEAにおいて電池反応に伴い消費され、余剰の燃料ガスは燃料ガス排気マニホールドに廃棄される。これらの各セル(電池部)と冷却部を交互に重ねて積層し、その積層体を集電板と絶縁板を介して端板で挟み、締結ボルトで両端から固定するのが一般的な積層燃料電池の構造である。
燃料電池システムとは、スタックを運転して電力を取り出すための装置全体を示し、本システムにおいて直接的にスタックを駆動するのは、LPG,LNGガソリン等の入手可能な燃料を水蒸気改質によって水素に転換してスタックに供給する燃料ガス供給系統、ブロワーから送られる空気を加湿してスタックに供給する酸化ガス供給系統、スタックに循環冷却水を供給する冷却水系統、及び電力を負荷する電気負荷系統である。
なお、燃料ガスに必要な加湿は、水蒸気改質法で燃料に添加する水によってまかなわれるのが通常である。また、空気の加湿は、スタックから排出される生成水の有効利用のために、カソード排気ガス(湿潤空気)をブロワから送られる供給空気と全熱交換して所望の加湿量を得るのが通常である。ただし、改質反応で添加された水が電池運転条件に対して不足する場合、および全熱交換によって得られる水が電池運転条件に対して不足する場合には、これらの後段にスタック冷却排水を水源および熱源とする膜加湿器が設けられる。膜加湿および全熱交換は、水は容易に透過するが、ガスの透過がない加湿膜を介して行われるのが通常であり、スタックに用いられるイオン交換膜(パーフルオロスルホン酸膜)はこの用途にも好適であって、常用されている。
この高分子電解質型燃料電池の望ましい運転条件と、これを具現する手段について、最も代表的な先行例に、特許文献1がある。この論旨を第1の従来技術として以下に列記する。
燃料電池は水素と酸素を電気化学的に反応させて水を生成し、そのポテンシャル差分を電力として取り出す装置である。ここに生成する水は触媒層のフラッディング(触媒層が水で閉塞し、ガス透過が妨げられることにより発電を停止する現象)を惹起するので、この排除は電池の安定運転上極めて重要である。
カソードで生成する水を排除する方法でもっとも有効なのは、燃料ガスもしくは酸化剤ガスを常に飽和露点以下の水蒸気量に保つ方法である。すなわち酸化剤ガスを飽和露点以下の水蒸気量に保つことによって、生成した水が酸化剤ガス中に蒸散して、余剰の酸化剤ガスと同時にセルから排出する余地が生まれる。また、イオン交換膜は容易に水を透過するため、燃料ガスを飽和露点以下の水蒸気圧に保つことによって、カソードで生成した水がイオン交換膜を逆拡散したのち、燃料ガス中に蒸散して、余剰の燃料ガスと同時に排出されることが可能となる。
上記の運転条件を実現する具体的手段は、ガスの吸入部と排出部との間に圧力損失(圧力降下)を与えることである。すなわち、ガスの水吸収能力は圧力の低下とともに高まるため、排出部に行くに従ってガス圧が低くなるようにすることで、はじめて反応に伴い逐次セル内で生成される水を効果的に排除することが可能になる。かかる圧力降下は(a)吸入部に設けられたオリフィス、(b)流路長の延長、(c)流路断面積の変更、(d)流路内面の少なくとも一部の摩擦係数の増加、(e)流路内の水素ガスの流量を、水素ガスがアノードで陽イオンに変換される量より実質的に高く設定することにより具現化する。以上特許文献1の論旨を説明した。
ところが本発明者は、特にスタックの発電効率を重視するために低電流密度で定格運転される用途(特に、低地用コージェネレーションシステム)においては、上述の運転条件には致命的な欠陥があることを発見した。すなわち、燃料ガス、酸化剤ガスの両方が、セル内の全ての部位について飽和水蒸気量を保っていなければ、イオン交換膜が飽和水蒸気量を保っていない部分で経時的に損傷し、燃料電池の寿命が保てなくなるということである。
上記の第1の従来技術の致命的な欠陥を取り除き、燃料電池の寿命を保つことが出来る燃料電池システムの一例について以下に第2の従来の技術として説明する。
第2の従来技術の燃料電池発電システムは、単電池が積層されたスタックを有する高分子電解質型燃料電池と、高分子電解質型燃料電池に燃料ガスを供給するアノードガス供給部と、酸化剤ガスを供給するカソードガス供給部とを備えている。なお、アノードガス供給部は、燃料ガス前躯体を水素リッチな燃料ガスに改質するための改質機を有している。
第2の従来技術の高分子電解質型燃料電池とアノードガス供給部の間に、アノードガスを加湿するためのアノードガス加湿部が設置されている。また、高分子電解質型燃料電池とカソードガス供給部の間に、カソードガスを加湿するためのカソードガス加湿部が設置されている。これら、アノードガス加湿部及びカソードガス加湿部は、高分子電解質型燃料電池から排出されたアノードおよびカソード排ガスの排熱及び水分をアノードガス及びカソードガスに与えるための全熱交換器を基本構成として、必要に応じてスタック冷却排水を熱源および水源とする膜加湿器が付設される。
上記構成の第2の従来技術の燃料電池発電システムにおいて、スタックの動作温度を基準にして加湿部の温度を所定温度に維持し、アノードガス及びカソードガスの露点を調整していた。その結果、スタックの内部では結露が発生する。これによってMEAにおける固体高分子電解質膜は必要十分な水分を含有することになる。すなわち、第2の従来技術の燃料電池発電システムによれば、触媒層のフラッディングを回避するとともに、固体高分子電解質膜に十分な水分を含有させることが出来る。
このように、第2の従来技術の燃料電池発電システムを用いることにより、固体高分子電解質膜に必要十分な水分を含有させることが出来るので、特にスタックの発電効率を重視するために低電流密度で定格運転される用途(特に、低地用コージェネレーションシステム)において燃料電池の寿命が保てなくなるという問題を解決することが出来る。
特表平6−504403号公報
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における、本発明の燃料電池システムの基本構成の概念図である。本実施の形態1の高分子電解質型燃料電池システムは、単電池が積層されたスタック1と、スタック1に燃料ガスを供給するアノードガス供給部2と、酸化ガスを供給するカソードガス供給部3とを備えている。このスタック1とアノードガス供給部2の間に、アノードガスを加湿するためのアノードガス加湿部4が設置されている。また、スタック1とカソードガス供給部3の間に、カソードガスを加湿するためのカソードガス加湿部5が設置されている。
まず、図1に示されたスタック1について説明する。
図2にスタック1の側面図を示す。図2において、スタック1は、複数個が積層された単電池43を有している。単電池43は、背景技術で説明したものと同様のものである。この単電池43は、一対のガス拡散層と電解質膜を有するMEA42とガスケットと燃料ガスをMEA42に供給するためにアノードガス流路がMEA42と接する面に形成されたセパレータと、MEA42に酸化剤ガスを供給するためにカソードガス流路がMEA42と接する面に形成されたセパレータを有している。
なお、MEA42を構成するアノード及びカソードはいずれもガス拡散性を有するガス拡散電極を示す。より具体的には、アノード及びカソードは何れもガス拡散性を有する触媒層からなるものであってもよく、ガス拡散層上に上記の触媒層を形成した積層体であってもよい。更に、アノード及びカソードはガス拡散層と触媒層との間に他の層(例えば、ガス拡散性、電子伝導性及び撥水性を有する多孔体からなる層)を1以上配置した構成を有する積層体であってもよい。
このセパレータとして、本実施の形態1では、本発明のセパレータの一例である2種類のセパレータを用いており、一つは燃料ガス流路13と冷却水流路18を有しているセパレータ40であり、他方は酸化剤ガス流路19と冷却水流路18を有しているセパレータ41である。
これらの2種類のセパレータは、セパレータ40の燃料ガス流路13形成面とセパレータ41の酸化剤ガス流路19形成面がMEA42を挟んで対向するように並べられている。このように並べることにより、単電池43は、その両端に冷却水流路18によって形成される冷却部44を有する。なお、説明を省略したがMEA42とを各セパレータ40、41間及び隣り合う単電池43の間にはガスケットが配設されている。
図3(a)は図2に示したセパレータ40の平面図である。また、図3(b)は、図2に示したセパレータ40の図3(a)の反対側の面の平面図である。また、図3(c)は、図2に示したセパレータ40の側面図である。なお、図2に示したセパレータ41は、セパレータ40と同様の構成を有しているので詳細な説明を省略する。
図3(a)に示す様に、セパレータ40の平面40aから見て、端周辺にはアノードガス入口マニホールド11、アノードガス出口マニホールド12、カソードガス入口マニホールド14、及びカソードガス出口マニホールド15が形成されている。また、冷却水入口マニホールド16及び冷却水出口マニホールド17も形成されている。なお、これら各出口と入口マニホールドは、実質上正方形状のセパレータ40の平面の中心に対して点対称の位置に設けられている。又、アノードガス入口マニホールド11とカソードガス入口マニホールド14は、セパレータ40の平面40aの一辺近傍に隣り合う様に設けられている。又、アノードガス出口マニホールド12とカソードガス出口マニホールド15は、前記一辺の対辺近傍に隣り合う様に設けられている。又、冷却水入口マニホールド16と冷却水出口マニホールド17は残りの二辺にそれぞれ設けられている。尚、冷却水入口マニホールド16はアノードガス入口マニホールド11近傍に設けられている。
このアノードガス入口マニホールド11からアノードガス出口マニホールド12まで、ジグザグに燃料ガス流路13を構成する複数の平行な溝が形成されている。また、燃料ガス流路13が形成されている反対面には、冷却水流路18を構成する複数の平行な冷却水流路溝がジグザグに、冷却水入口マニホールド16から冷却水出口マニホールド17まで形成されている。
以上図1に示されたスタック1について説明した。
次に、図1のうちスタック1以外の部分について説明する。
すなわち、図3(a)及び図3(b)に示したアノードガス入口マニホールド11と図1に示したアノードガス加湿部4の間には、図1に示すように、必要に応じて燃料ガスに水を付加するための本発明のバッファ機構部の一例であるアノードバッファ機構部20が設置されている。このアノードバッファ機構部20は、図1に示すように、燃料ガスに付加する水分を備蓄するための、アノードガス入口マニホールド11に直結されている本発明の備蓄部の一例であるアノードバッファ機構備蓄部29を有している。
尚、上記アノード側と同様に、カソード側のカソードガス入口マニホールド14とカソードガス加湿部5の間にも、図1に示すように、本発明のバッファ機構部の一例であるカソードバッファ機構部30が設置されており、このカソードバッファ機構部30は、図1に示すように、本発明の備蓄部の一例であるカソードバッファ機構備蓄部39を有している。
スタック1とアノードバッファ機構備蓄部29とカソードバッファ機構備蓄部39は、一体化した構成であり、図1に示すように、断熱材10によって覆われている。
図1において、上述したアノードバッファ機構備蓄部29内には、備蓄水を加熱するための本発明の加熱部の一例であるアノードバッファ機構熱交換部21と、備蓄水の水位を検知するアノードバッファ機構水位検知部22とが設置されている。また、アノードバッファ機構備蓄部29内に備蓄された水を排出するためのアノードバッファ機構ドレンポート24が設置されている。さらに、アノードバッファ機構内には、、バッファ機構内の水蒸気量を検知するためのアノードバッファ機構湿度検知部23が設置されている。
又、図1において、カソードバッファ機構備蓄部39内にも、アノードバッファ機構備蓄部29と同様に、本発明の加熱部の一例であるカソードバッファ機構熱交換部31と、カソードバッファ機構水位検知部32と、ドレンポート34、カソードバッファ機構湿度検知部33が設置されている。
図1において、断熱材10の外部に設置されているアノードバッファ機構加熱媒体供給部25からアノードバッファ機構熱交換部21へとアノード加熱媒体流路6が形成されており、このアノード加熱媒体流路6に加熱媒体の流量を調節するためのアノードバッファ機構加熱調整弁26が設置されている。又、アノードバッファ機構ドレンポート24は、断熱材10の外部へ通じており、備蓄水の排出を調節するためのアノードバッファ機構ドレンバルブ27が設置されている。また、アノードバッファ機構水位検出部22により検出された備蓄水の水位によってアノードバッファ機構ドレンバルブ27の開閉の制御を行い、アノードバッファ機構湿度部23によって検出された湿度によってアノードバッファ機構加熱調整弁26の開閉を制御するアノードバッファ機構制御部28が設置されている。
すなわち、アノードバッファ機構部20は、アノードバッファ機構備蓄部29、アノードバッファ機構熱交換部21、アノードバッファ機構水位検知部22、アノードバッファ機構湿度検知部23、アノードバッファ機構ドレンポート24、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25、アノード加熱媒体流路6、アノードバッファ機構加熱調整弁26、アノードバッファ機構ドレンバルブ27及びアノードバッファ機構制御部28を有している。
また、アノード側と同様にカソード側にも、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35と、カソード加熱媒体流路8と、カソードバッファ機構加熱調整弁36と、カソードバッファ機構ドレンバルブ37とカソードバッファ機構制御部38が設置されている。
ここにアノードバッファ機構加熱媒体供給部25からアノードバッファ機構熱交換部21に供給される加熱媒体は、スタックの発熱を除去したスタック冷却水を、少なくとも以下の(1)〜(4)のいずれかの熱源と熱交換して昇温したものであるか、または(1)〜(4)のいずれかの熱源からの燃焼排ガスその他であって、その交換熱量コントロールは同じくアノードバッファ機構制御部28からの信号により、ここでは図示されない改質機あるいは専用バーナーの燃焼量制御等によって行われる。また、システム運転挙動(起動停止、負荷変動)に対する、時定数その制御定数はここでは図示されない制御用の記憶媒体に各々の運転モードに対応してプリセットされ、実運転時には学習制御プログラムにより、制御定数を微調整して設定される。カソード側についても同様である。
(1)前記改質機の廃熱
(2)前記改質機から前記スタックへ供給される前記水素リッチな燃料ガスの熱
(3)燃料を燃焼させることによって得られる熱
(4)前記スタックから排出される残存燃料ガスを燃焼させることにより得られる熱
なお、上記1(1)〜(4)については、後述する実施の形態3において詳細に説明する。
図1に示したアノードバッファ機構部20とカソードバッファ機構部30の構成について以下に具体的に述べる。
図4は、図1に示した、スタック1とアノードバッファ機構部20及びカソードバッファ機構部30との構成斜視図である。図1におけるアノードバッファ機構備蓄部29及びカソードバッファ機構備蓄部39は、図4に示すように、複数のバッファ機構部セパレータ50、60を積層することにより形成されている。複数のバッファ機構部セパレータ50、60はスタック1に積層され、スタック1の反対側には、エンドプレート51が配設されている。
次に、バッファ機構部セパレータ50について詳しく述べる。
図5(a)はバッファ機構部セパレータ50のバッファ機構備蓄部用溝形成面である。又、図5(b)はバッファ機構部セパレータ50の加熱媒体流路用溝形成面である。又、図5(c)は図5(a)のAA´断面図である。
図5(a)に示す様に、バッファ機構部セパレータ50の一面50aには、積層方向から見て上辺近傍に2つのアノードガス出口マニホールド52、カソードガス出口マニホールド53とが並んで形成されている。また、それぞれのガス出口マニホールドの下部であり、バッファ機構部セパレータ50の下辺近傍にはアノードガス入口マニホールド54、カソードガス入口マニホールド55が並んで形成されている。
又、ガス出口マニホールド52、53及びガス入口マニホールド54、55が形成されている以外の二辺(図5(a)では左右の辺)近傍には加熱媒体入口マニホールド58及び加熱媒体出口マニホールド59が、それぞれ一辺ずつに形成されている。尚、実質上正方形状のバッファ機構部セパレータ50の中心に対して実質上点対称となる位置に加熱媒体入口マニホールド58と加熱媒体出口マニホールド59は形成されている。さらに、セパレータ40に形成されている冷却水入口マニホールド16と冷却水出口マニホールド17が、バッファ機構部セパレータ50にも形成されている。
又、冷却水入口マニホールド16と加熱媒体出口マニホールド59の間であって、バッファ機構部セパレータ50の辺近傍にアノード備蓄水排出マニホールド70が設置されている。又、冷却水出口マニホールド17と加熱媒体入口マニホールド58の間であって、バッファ機構部セパレータ50の辺近傍にカソード備蓄水排出マニホールド80が設置されている。
又、アノードガス出口マニホールド52とアノードガス入口マニホールド54の間にアノードバッファ機構備蓄部用溝56が、カソードガス出口マニホールド53とカソードガス入口マニホールド55の間にカソードバッファ機構備蓄部用溝57が、バッファ機構部セパレータ50の表面50aに形成されている。
このアノードバッファ機構備蓄部用溝56は、下部が閉じている水備蓄部用溝56aを有している。又、アノードバッファ機構備蓄部用溝56は、アノードガス出口マニホールド52から水備蓄部用溝56aの上部に向かって形成されているガス出口用溝56bと、水備蓄部用溝56aの上部から上方向に向かい折り返して下方のアノードガス入口マニホールド54へと形成されているガス入口用溝56cを有している。又、アノード備蓄水排出マニホールド70へ水備蓄部用溝56aから水排出用溝56dが形成されている。尚、カソードガス出口マニホールド53とカソードガス入口マニホールド55の間にも、アノードバッファ機構備蓄部用溝56と同様の形状のカソードバッファ機構備蓄部用溝57が形成されている。
又、上記バッファ機構備蓄用溝56の形成面の反対面50bには、加熱媒体流路用溝46が形成されている。この加熱媒体流路用溝46は上記加熱媒体入口マニホールド58から加熱媒体出口マニホールド59へとジグザグ形状に形成されている。
尚、バッファ機構部セパレータ60は、上記バッファ機構部セパレータ50と左右対称になる様に各出口入口マニホールド、アノード及びカソードバッファ機構備蓄部用溝56、57、及び加熱媒体流路用溝46が形成されている。それ以外は、バッファ機構部セパレータ60は、バッファ機構部セパレータ50と同様の構成であるので、バッファ機構部セパレータ60については詳細な説明を省略する。
図4に示す様にバッファ機構部セパレータ50、60を積層した際に、バッファ機構部セパレータ50、60と図2に示したセパレータ40、41の各マニホールドの位置は、以下に示す様に対応する。
すなわち、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)に示したバッファ機構部セパレータ50、60のアノードガス出口マニホールド52と図3(a)及び図3(b)に示したセパレータ40、41のアノードガス入口マニホールド11とが積層時に位置が一致する。
また、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)に示したバッファ機構部セパレータ50、60のカソードガス出口マニホールド53と図3(a)及び図3(b)に示したセパレータ40、41のカソードガス入口マニホールド14とが積層時に位置が一致する。
また、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)に示したバッファ機構部セパレータ50、60のアノードガス入口マニホールド54と図3(a)及び図3(b)に示したセパレータ40、41のカソードガス出口マニホールド15とが積層時に位置が一致する。
また、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)に示したバッファ機構部セパレータ50、60のカソードガス入口マニホールド55と図3(a)及び図3(b)に示したセパレータ40、41のアノードガス出口マニホールド12とが、積層時に位置が一致することになる。
図6は、図1に示したバッファ機構部と、図1に示したスタック1との側断面図である。すなわち、ここでは、例として、アノード側を挙げて説明する。図6に示す様に、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)で示したバッファ機構部セパレータ50と60が各々のバッファ機構備蓄部溝56が形成されている面を合わせることによりバッファ機構備蓄構成部29aが形成される。このバッファ機構部セパレータ50、60を交互に積層することにより複数のバッファ機構備蓄構成部29aが形成され、図1の概念図において説明したバッファ機構備蓄部29が構成される。
又、各バッファ機構備蓄構成部29aの間には、セパレータ50とセパレータ60の加熱媒体流路用溝46(図5(b)参照)の形成面が合わさることにより、加熱媒体流路47が形成される。この複数の加熱媒体流路47によって本発明の加熱部の一例である熱交換部48が構成される。尚、図1の概念図において、別々に設けられているアノード加熱媒体流路6とカソード加熱媒体流路8は、具体例である図6においては、図1に示したアノードバッファ機構備蓄部29とカソードバッファ機構備蓄部39を共に熱する加熱媒体流路47に相当する。又、図1のアノードバッファ機構熱交換部21とカソードバッファ機構熱交換部31も図6では、熱交換部48に相当する。
又、スタック1と接するバッファ機構部セパレータは、図6に示すように、アノードガス入口マニホールド54が形成されていないバッファ機構部端セパレータ61となっている。又、図3(a)及び図3(b)に示すセパレータ40、41の冷却水入口出口マニホールド16、17は、バッファ機構部セパレータ50、60、61に設けられているが、流路が形成されていないため、バッファ機構部セパレータ50、60、61をスルーしてスタック1に供給される。又、図5(a)及び図5(b)に示したバッファ機構部セパレータ50と60の加熱媒体入口及び出口マニホールド58、59は、スタック1の図3(a)及び図3(b)に示すセパレータ40、41には設けられていない。もっとも、レイアウト上スタック1をスルーして加熱媒体を通したい場合には設けても良い。
又、図6において、積層されたバッファ機構部セパレータ50、60のスタック1の反対側にはエンドプレート51が設置されている。
このエンドプレート51には、図4に示すように、図1に示したアノードバッファ機構備蓄部29及びカソードバッファ機構備蓄部39に対応する位置に覗き窓62を介して、光学低的なレベルセンサー63(図1において示したアノードバッファ機構水位検知部22に相当する。)が備蓄水の水位を検知するために設けられている。また、図1に示したアノードバッファ機構備蓄部29に備蓄されている水を系外に排出するための、図1において説明したアノードバッファ機構ドレンポート24及びアノードバッファ機構ドレンバルブ27が、図4に示すようにエンドプレート51、バッファ機構部セパレータ50、60に設置されている。また、図4において、エンドプレート51には積層時にバッファ機構のアノードガス出口マニホールド52、カソードガス出口マニホールド53内に相当する位置にアノードガス湿度センサ220、カソードガス湿度センサ221が埋設され、ここでは図示されない制御部と電気的に接続されている。
尚、図示していないが、カソード側にも、レベルセンサー63、カソードバッファ機構ドレンポート34、及びカソードバッファ機構ドレンバルブ27が設けられている。
又、図1の概念図において、水位を検知するアノードバッファ機構水位検知部22は、図4の具体例では、エンドプレート51に覗き窓62を介したレベルセンサー63に相当するが、これに限定するものではない。要するに、アノードバッファ機構水位検知部22は、バッファ機構備蓄部に備蓄されている水の水位を検知出来さえすればよい。また、図4に示したようなオートドレン様式においては省略することも可能である。
又、図4において、エンドプレート51は、バッファ機構部セパレータ50、60のアノードガス入口マニホールド54、カソードガス入口マニホールド55に対応する位置にアノードガス供給配管64、カソードガス供給配管65を有している。同様に、エンドプレート51は、バッファ機構部セパレータ50、60の各出入口マニホールドに対応する位置に、冷却水供給配管66、冷却水排出配管67、加熱媒体供給配管68、及び加熱媒体排出配管69が設置されている。
上記構成の本実施の形態1における燃料電池システムの動作について以下に述べる。尚、アノードガス側を例に挙げて説明を行うが、カソードガス側も同様である。
尚、アノードガス加湿部4において燃料ガスに与えられる露点をT1とする。又、アノードバッファ機構備蓄部29内の温度は、アノードバッファ機構制御部28がアノードバッファ機構加熱調整弁26を調整することにより加熱媒体の流量を調整し、T2に保っている。
又、MEA42の燃料ガス流路13の入口部における温度をT3とする。
アノードガス供給部2から発生し、アノードガス加湿部4でT1の露点を与えられた燃料ガスは、図6の矢印で示す様に、エンドプレート51のアノードガス供給配管64を通って、バッファ機構部セパレータ50、60のアノードガス入口マニホールド54内に流入する。
次に、各バッファ機構部セパレータ50、60に設けられた、図5(a)に示すバッファ機構備蓄部溝56のガス入口用溝56cを通って、図6に示す複数のバッファ機構備蓄構成部29aに流入する。スタック1と接触するバッファ機構部セパレータ61にはアノードガス入口マニホールド54が設けられていないため、燃料ガスは全てバッファ機構備蓄構成部29aに流入する。ここで、この燃料ガスに含まれている水蒸気のうち、アノードバッファ機構備蓄構成部29aの内部温度(T2)における露点相当の水蒸気は、アノードバッファ機構備蓄構成部29a内で液化することなく、図5(a)及び図5(b)に示すアノードガス出口マニホールド52から、図4に示すスタック1のアノードガス入口マニホールド11に供給される。
次に、MEA42の燃料ガス流路13の入口でT3に冷却される。ここで、アノードバッファ機構備蓄部29に備蓄水が存在し、常時T2>T3の関係が成り立てばMEA42のガス流入部で、T3に対して水蒸気は飽和となる。T3に対して水蒸気を過飽和とするために、例えばT3に対してT2が一定値高くなるよう、熱媒体からの供給熱量を調節する制御が、アノードバッファ機構制御部28により行われる。このとき、アノードバッファ機構制御部28が、T3とT2の関係を、T3+10>T2を満たすようにして、T3に対してT2が一定値高くなるよう制御すれば、フラッディングを回避することが出来る。
又、この系において、常時T1>T2の関係が成り立てば、備蓄水は増加する一方となるので、過剰な備蓄水をアノードバッファ機構備蓄部29から、図4に示すアノード備蓄水排出マニホールド70とアノードバッファ機構ドレンポート24を通って排出し、他の補機に供給することが可能である。例えば、加湿部4、5に戻して再利用したり、改質機の動作水として利用する。
また、この系でシステムの動作上、一時的にT1<T2となる場合には、不足分は備蓄水から、自然蒸発により供給されることとなり、電池に対して供給水蒸気量の不足は起こらず、システム動作が安定しT1>T2となった時点からまた備蓄水が増加に転じる。
上記例としては、補助熱源を用いて全熱交換器(図示せず)の温度を78℃に維持することにより供給ガスの露点(T1)74℃に維持し、これを72℃(T2)に維持されたアノードバッファ機構備蓄部29に導入し、電池温度70℃(T3=71℃程度)のMEA42のガス入口部に供給を行う。表1に各温度における水の飽和水蒸気量を示す。
この様に、水蒸気供給系統からの水蒸気の供給量を、基本的には電池動作に必要な量に対して過剰になるように制御し、この過剰分、および供給されたうち配管内で液化し、MEAの乾燥防止に即効性のない部分をストックする。このストックされた水を電池温度以上の熱源をもって再気化し、電池温度における飽和水蒸気量以上の水蒸気量を与える。この後、スタックマニホールド内でMEA42のガス流入部の温度にて冷却し飽和とする制御(この部分の検知可能な電池温度に対しては過飽和となっている。)、すなわち調整制御(バッファリング)を行う。
上述した様に、MEAのガス流入部の温度における飽和水蒸気量よりも高い水蒸気を含むガスを供給することにより、より確実にMEAの全ての部位において供給ガスは飽和水蒸気量を保つことが出来る。
又、バッファ機構部を設けることにより、ガス加湿部4、5の供給能力が電池の要求量に対して一時的に低下する等の制御上の要因、また電力負荷増大等にともない、電池の要求水蒸気量に対してガス加湿部の水蒸気供給能力が応答速度的に追いつかない(タイムラグ)状況において、内部に備蓄された水を気化してこの不足分を補填し、緩衝ないしは調整を行うことが出来る。
又、バッファ機構備蓄部をガス入口マニホールドに直結して設け、一括断熱することにより、ガス温度の低下を防ぐことが出来る。すなわち、ガス加湿部4、5からスタック1への配管中で結露し、実質的な水蒸気量が低下した反応ガスを、再度電池温度以上の露点に戻し、かつこれが再度結露せずに電池で消費されるレイアウトを取りうる。
このため、低電流密度で定格運転される用途(特に、定置用コージェネレーションシステム)においても、より長寿命に安定運転を行うことが出来る燃料電池システムまたはその運転方法を提供することが出来る。
(実施の形態2)
図7は、本実施の形態2における燃料電池システムの概念図である。図7に示す様に、本実施の形態2における燃料電池システムは、実施の形態1と基本的構成は同じであるがアノードバッファ機構部及びカソードバッファ機構部をアノード及びカソードガス入口マニホールド内に設けた点が異なる。そのため本実施の形態2の実施の形態1に対する相違点を中心に説明する。尚、実施の形態1と同一の構成要素には同一番号を付している。
図8(a)は、本実施の形態2における燃料電池システムのスタック1(図7)の構成斜視図である。図8(a)に示す様に、本実施の形態2における燃料電池システムは、実施の形態1のアノード及びカソードガス入口マニホールド11、14と形状が異なるアノード及びカソードガス入口マニホールド71、81を備えている。又、実施の形態1と異なり、バッファ機構部セパレータを備えず、スタック1に直接エンドプレート90が積層されている。
図8(b)は、カソードガス入口マニホールド81の拡大斜視図である。又、図8(c)は、エンドプレート90からスタック1方向を見たカソードガス入口マニホールド81の拡大平面図である。図8(c)に示す様に、このカソードガス入口マニホールド81の底部の右側81aがカソードガス入口マニホールド81内に突き出しており、左側81bが水を備蓄することが出来る本発明の備蓄部の一例であるカソードバッファ機構備蓄部82となる。このカソードバッファ機構備蓄部82の底部に、カソードバッファ機構加熱媒体流路84を有する本発明の加熱部の一例であるカソードバッファ機構熱交換部83が設置されている。このカソードガス入口マニホールド81の右側81aから、酸化剤ガス流路19用の溝である酸化剤ガス流路用溝86が形成されている。又、エンドプレート51に設けられているカソードガス入口マニホールド81は、エンドプレート90を貫通しておらず、図8(b)に示す様に、エンドプレート90は、カソードガス入口マニホールド81の上部に接合されているカソードガス供給配管91を備えている。また、図8(a)に示すように、、エンドプレート90は、アノードガス入口マニホールド71、カソードガス入口マニホールド81内の湿度をそれぞれ検知するアノードガス湿度センサ220、カソードガス湿度センサ221を有している。
この様に実施の形態1におけるにおけるカソードバッファ機構部30は、本実施の形態2では、カソードガス入口マニホールド81内に設けられている、カソードバッファ機構備蓄部82及びカソードバッファ機構熱交換部83を有するカソードバッファ機構部85に相当する。
又、カソード側と同様に、アノードガス入口マニホールド71では、底部右側に本発明の備蓄部の一例であるアノードバッファ機構備蓄部72を備え、底部左側から燃料ガス流路13の溝が形成されている。上述したカソード側と同様にアノードバッファ機構備蓄部72の底部に、アノードバッファ機構加熱媒体流路74を有する本発明の加熱部の一例であるアノードバッファ機構熱交換部73が設置されている。
又、この様に実施の形態1におけるアノードバッファ機構部20は、本実施の形態2ではアノードガス入口マニホールド71内に設けられている、アノードバッファ機構備蓄部72及びアノードバッファ機構熱交換部73を有するアノードバッファ機構部75に相当する。又、エンドプレート90には、アノードガス入口マニホールド71の上部に接合されているアノードガス供給配管92が設置されている。
又、エンドプレート90は、実施の形態1と同様にアノード及びカソードバッファ機構備蓄部72、82に備蓄されている水位を検知するためのアノード覗き窓93、カソード覗き窓94を有している。図示していないが、覗き窓93、94には、それぞれに光学的なレベルセンサーが設置されている。又、エンドプレート90は、スタック1の冷却水入口マニホールド16に対応する位置に冷却水供給配管95と、冷却水出口マニホールド17に対応する位置に冷却水排出配管96を有している。
尚、アノードガス入口マニホールド71、カソードガス入口マニホールド81、冷却水入口マニホールド16は全てスタック1の上部に位置しているが、このスタックでは全ての流体を鉛直下向きに流すことによって、上部ほど温度が低くなるように設計されている(下に流れるにしたがってスタック1の発熱によって、各流体は加熱されるため上部より下部の方が温度が高くなるためである。)。
又、本実施の形態2における燃料電池システムは、冷却水排出配管96には分岐弁97が設けられており、分岐弁97によって分岐された冷却水は、アノードバッファ機構加熱媒体流路74及びカソードバッファ機構加熱媒体流路84に流入するように構成されている。
この分岐弁97とアノードバッファ機構加熱媒体流路74、84の間には冷却水温度が足りない場合にスタック1以外の熱源から引いた熱を補充できるための外部熱交換器98が設置されている。
尚、図7の概念図において、水位を検知するアノードバッファ機構水位検知部22は、図8の具体例では、エンドプレート90に覗き窓93、94を介したレベルセンサーに相当するが、これに限定されるものではない。要するにアノードバッファ機構水位検知部22は、バッファ機構備蓄部に備蓄されている水の水位を検知出来さえすればよい。
又、加熱媒体流路74、84への加熱媒体を供給する加熱媒体供給部は、図7ではアノードバッファ機構加熱媒体供給部25及びカソードバッファ機構加熱媒体供給部35と別々に記載しているが、図8(a)においては、加熱媒体供給部84、94へ加熱媒体を供給する流路は1つであるため、加熱媒体供給部も別々に設置する必要はない。
上記構成の本実施の形態2における燃料電池システムの動作について以下に説明する。尚、カソード側について説明するがアノード側についても同様である。
カソードガス供給部3から供給され、カソードガス加湿部5にて加湿された酸化剤ガスは、カソードガス供給配管91からカソードガス入口マニホールド81内に流入する。
次に、カソードガス入口マニホールド81内の露点より低い部分は、酸化剤ガス流路用溝86に流入する。
カソードガス入口マニホールド81内の水蒸気量はカソードガス湿度センサ221により常時モニターされ、この水蒸気量が常時T3(MEA42の酸化剤ガス流路入口部の温度)における飽和水蒸気量より多くなるように、カソードバッファ機構熱交換部83に熱供給が行われて、備蓄水を気化するために、ここから単電池43に分岐する時点では常に単電池43の温度より高い露点を持っている。
本実施の形態2は、実施の形態1と比べて、特に高電圧を得るために積層段数が上がり、スタック長が長くなった場合においても、水蒸気の分配が各セルにより均等に行われるという有利な点を有している。
又、本実施の形態2は、実施の形態1と比べて、各単電池へ水蒸気をより均等に分配する点でもより優れている。すなわち、実施の形態1に示した形態では、バッファ機構部20、30から各単電池43までの距離(事実上の配管長)は不均等であり、特に多段積層時に、マニホールド内での結露によってバッファ機構から遠くなる部分で水蒸気量が不足する。本実施の形態2では、ガスマニホールド内に水を備蓄するために配管長は均一であり最短となる。
又、実施の形態1ではスタック1の積層段数が上がる場合にバッファ機構部セパレータ50、60の積層段数もこれに応じて増やさなければならないというパッケージング上の問題があるが、本実施の形態2ではガスマニホールドの一定面積を備蓄スペースとすることから、備蓄水量は積層段数に自動的に比例するので、この問題がない。
又、本発明の制御部は、実施の形態1、2ではアノードバッファ機構制御部28及びカソードバッファ機構制御部38に相当し、備蓄部に備蓄されている水分の再気化量を制御している。この再気化量を制御する手段についても、上述のように湿度センサを用いてフィードバック制御を行ってもよく、また気化した水の絶対量を水位で検知して同様の制御を行う方法でもよい。要するに、備蓄部に備されている水分の温度をガス流路溝の入口部の電解質膜の温度よりも高い温度に保つように加熱部の制御を行い、水分を再気化して積層された複数の単電池に供給する制御部でありさえすればよい。
又、本発明のバッファ機構部は、本実施の形態1では、アノードバッファ機構部20及びカソードバッファ機構部30に相当し、本実施の形態2では、アノードバッファ機構部75及びカソードバッファ機構部85に相当し、アノード側とカソード側の両側に備えているが、どちらか片方のみを設置してもよい。この場合従来の燃料電池システムと比較すると、より長寿命に安定運転を行うことが出来るが、MEAの乾燥を防止するためには、アノード及びカソード側の双方にバッファ機構部を設けた方がより好ましい。
又、本実施の形態1、2において説明したバッファ機構部の構成に限らなくても良い。いずれにしても、このバッファ機構部は、複数の単電池へ供給する反応ガスの水蒸気量の調整を行い、電池温度における飽和水蒸気量以上の水蒸気量を常時供給する機能(バッファリング)でありさえすればよい。また、加熱媒体は上述のように、電池冷却排水を電池以外の熱源と一旦熱交換してから用いてもよく、電池以外の熱源からの燃焼排ガスを直接アノードバッファ機構加熱媒体流路74及びカソードバッファ機構加熱媒体流路84に引き込んで、マニフォルド内で直接備蓄水を加熱しても良い。
(実施の形態3)
実施の形態3では、上記実施の形態1及び2に共通して用いられる、バッファ機構備蓄部へ熱を供給する熱供給手段について説明する。
上記実施の形態1及び2のいずれにも共通して用いられる、バッファ機構備蓄部への熱供給手段としては、T3(MEAのガス入口部における温度)より高温の流体を加熱媒体流路を通してバッファ機構に導入し、バッファ機構内で備蓄水と熱交換を行う方式が簡便かつ確実である。実際の燃料電池システムにおいては、電池排熱以外の熱源として以下の選択肢がある。
(1)アノードガス供給部2が有する燃料改質機の廃熱。
(2)燃料改質機から供給される加湿水素ガス(温度150度程度)を導入する方法。
(3)本目的のために燃料自体を燃焼させる方法。
(4)本目的のためにオフガス(アノードで剰余となった排水素ガス)を燃焼させる方法
以下に上記選択肢について説明をする。尚、実施の形態1を例に挙げて説明を行うが、実施の形態2においても同様である。
(1)は、アノードガス供給部2において燃料ガスから水素リッチガスへの改質を行う際に加熱する必要があるため、この廃熱を熱源として利用して、加熱媒体の加熱を行う方法である。図9は、本実施の形態3の(1)における燃料電池システムの概略図である。尚、図1に示す実施の形態1と同一の構成については、同じ番号を付している。
図9に示す様に、アノード加熱媒体流路6及びカソード加熱媒体流路8は、アノードガス供給部2の改質機へと流路が構成されている。又、アノード加熱媒体流路6及びカソード加熱媒体流路8は、改質機の前で流路が合流し、改質機の廃熱によって加熱媒体が加熱される。そして加熱された加熱媒体は、アノード加熱媒体流路6及びカソード加熱媒体流路8へと分岐し、アノードバッファ機構備蓄部29及びカソードバッファ機構備蓄部39へと供給される。
(2)は、アノードガス供給部2の燃料改質機からスタック1へ供給する加湿水素ガスの熱を熱源として利用して、アノード加熱媒体流路6及びカソード加熱媒体流路8に導入する方法である。図10は、本実施の形態3の(2)における燃料電池システムの概略図である。図10に示す様に、加湿された燃料ガス流路中に熱交換器138が設置されている。この熱交換器138へとアノード加熱媒体流路6及びカソード加熱媒体流路8が設置されている。又、アノード加熱媒体流路6及びカソード加熱媒体流路8は、熱交換器138の前で流路が合流し、熱交換器138で、加湿燃料ガスからの伝熱によって加熱媒体が加熱される。そして、加熱された加熱媒体は、アノード加熱媒体流路6とカソード加熱媒体流路8へと分岐し、アノードバッファ機構備蓄部29とカソードバッファ機構備蓄部39へと供給される。
(3)は、加熱媒体流路に導入する加熱媒体を加熱するために、他の燃料を燃焼させる方法である。図11は、本実施の形態3の(3)における燃料電池システムの概略図である。図11に示す様に、(3)の燃料電池システムの上記(2)の場合と異なる点は、熱交換器138が設置されておらず、他の燃料を燃焼することにより、加熱媒体を加熱する加熱部139が設置されている点である。この加熱部139により加熱された加熱媒体が上記(2)と同様に、アノードバッファ機構備蓄部29及びカソードバッファ機構備蓄部39へと供給される。
(4)は、加熱媒体流路に導入する加熱媒体を加熱するために、アノード側における剰余燃料ガスを燃焼させる方法である。図12は、本実施の形態3の(4)における燃料電池システムの概略図である。図12に示す様に、(4)の燃料電池システムの上記(3)と異なる点は、加熱部139が設置されておらず、余剰燃料ガスを燃焼することにより加熱媒体を加熱する燃料ガス燃焼加熱部140が設置されている点である。この燃料電池システムには、スタック1において未使用の余剰燃料ガスを燃料ガス燃焼加熱部140へ供給するための流路が設置されており、余剰燃料ガスを燃料ガス燃焼加熱部140で燃焼させることにより加熱媒体が加熱される。
なお、上記(3)、(4)を行うために、これら原燃料あるいはオフガスを燃焼する専用のバーナーを設けても良く、あるいは原燃料あるいはオフガスで駆動される改質機バーナーにこの役割を賦課させることも可能である。すなわち、例えば改質機燃焼排ガスが常時バッファ機構に導入される形態としておき、露点不足時には通常改質反応に必要な燃焼量に加えて、追加加湿に必要な燃焼量を改質機バーナーに与えるような制御を行うことによってこの目的を達することができる。
これらの熱源からの熱は、スタック1から排出される冷却水と一端熱交換されてバッファ機構に導入されるか、あるいは直接にバッファ機構に導入される。以下に、上記の熱源からの熱がスタック1から排出される冷却水と一旦熱交換されてバッファ機構に導入される場合の具体例と、上記の熱源からの熱が直接にバッファ機構に導入される具体例について説明する。
図13は、実施の形態3の燃料電池システムの概略図であり、実施の形態1の燃料電池システムのうち、図1のアノードバッファ機構加熱媒体供給部25及びカソードバッファ機構加熱媒体供給部35の部分をさらに詳細に示した図である。図13は、上記の熱源からの熱が直接にバッファ機構に導入される場合の具体例である。なお、図13において図1と同一部分については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図13において、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25には、上記(1)〜(4)の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管205を経由して導入される。そして、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25は、導入された熱媒体をアノード加熱媒体流路6を経由して、直接にアノードバッファ機構熱交換部21に供給する。そして、アノードバッファ機構熱交換部21においてアノード備蓄水と熱交換した熱媒体は、アノード加熱媒体流路6を経由して、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25に戻り、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25から熱媒体排出配管206を経由して排出される。
同様に、図13において、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35には、上記(1)〜(4)の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管210を経由して導入される。そして、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35は、導入された熱媒体をカソード加熱媒体流路8を経由して、直接にカソードバッファ機構熱交換部31に供給する。そして、カソードバッファ機構熱交換部31においてカソード備蓄水と熱交換した熱媒体は、カソード加熱媒体流路8を経由して、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35に戻り、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35から熱媒体排出配管211を経由して排出される。
このように、図13の燃料電池システムでは、上記(1)〜(4)の熱源からの熱を担持した熱媒体がカソードバッファ機構熱交換部31及びアノードバッファ機構熱交換部21に直接的に導通することにより行われる。
図14は、実施の形態3の燃料電池システムの概略図であり、実施の形態1の燃料電池システムのうち、図1のアノードバッファ機構加熱媒体供給部25及びカソードバッファ機構加熱媒体供給部35の部分をさらに詳細に示した図である。図14は、上記の熱源からの熱が、スタック1から排出される冷却水と一旦熱交換されてバッファ機構に導入される場合の具体例である。なお、図14において、図1と同一部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図14において、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25には、冷却水導入配管201を経由してスタック1からの冷却水が導入されとともに、上記の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管205を経由して導入される。そして、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25の熱交換器204において、導入されたスタック1からの冷却水と導入された熱媒体との熱交換が行われ、スタック1からの冷却水は昇温される。アノードバッファ機構加熱媒体供給部25は、熱交換器204において昇温された冷却水を、アノード加熱媒体流路6を経由してアノードバッファ機構熱交換部21に供給する。アノードバッファ機構熱交換部21でアノードバッファ備蓄水と熱交換したスタック1の冷却水は、アノード加熱媒体流路6を経由してアノードバッファ機構加熱媒体供給部25に戻り、さらに、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25から冷却水排出配管206を経由して排出される。一方、熱交換器204において熱交換が行われた熱媒体は、熱媒体量調節バルブ203を経由して熱媒体排出配管202から排出される。
同様に、 図14において、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35には、冷却水導入配管207を経由してスタック1からの冷却水が導入されとともに、上記の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管211を経由して導入される。そして、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35の熱交換器210において、導入されたスタック1からの冷却水と導入された熱媒体との熱交換が行われ、スタック1からの冷却水は昇温される。カソードバッファ機構加熱媒体供給部35は、熱交換器204において昇温された冷却水を、カソード加熱媒体流路8を経由してカソードバッファ機構熱交換部31に供給する。カソードバッファ機構熱交換部31でカソードバッファ備蓄水と熱交換したスタック1の冷却水は、カソード加熱媒体流路8を経由してカソードバッファ機構加熱媒体供給部35に戻り、さらに、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35から冷却水排出配管212を経由して排出される。一方、熱交換器210において熱交換が行われた熱媒体は、熱媒体量調節バルブ209を経由して熱媒体排出配管208から排出される。
このように、図14の燃料電池システムでは、アノードバッファ機構熱交換部21及びカソードバッファ機構熱交換部31への上記(1)〜(4)の熱源からの熱の供給は、その熱を担持した熱媒体とスタック1の冷却水とで熱交換を行ってから行う間接的な導通によって行われる。
図15は、実施の形態3の燃料電池システムの概略図であり、実施の形態2の燃料電池システムに対応しており、図7のアノードバッファ機構加熱媒体供給部25及びカソードバッファ機構加熱媒体供給部35の部分をさらに詳細に示した図である。図15は、上記の熱源からの熱が直接にバッファ機構に導入される場合の具体例である。なお、図15において図7と同一部分については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図16に、図15の燃料電池システムのスタック1の構成斜視図を示す。実施の形態2の燃料電池システムは、図8(a)に示すように外部熱交換器98、分岐弁97が設けられていた。図15の燃料電池システムは、図16に示すように、外部熱交換器98や分岐弁97等の代わりに、熱媒体導入配管205、及び熱媒体導入配管210が設けられている。それ以外の点については図16は図8(a)と同様である。
図15において、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25には、上記(1)〜(4)の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管205を経由して導入される。そして、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25は、導入された熱媒体をアノード加熱媒体流路6を経由して、直接にアノードバッファ機構熱交換部21に供給する。そして、アノードバッファ機構熱交換部21においてアノード備蓄水と熱交換した熱媒体は、アノード加熱媒体流路6を経由して、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25に戻り、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25から熱媒体排出配管206を経由して排出される。
同様に、図15において、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35には、上記(1)〜(4)の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管210を経由して導入される。そして、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35は、導入された熱媒体をカソード加熱媒体流路8を経由して、直接にカソードバッファ機構熱交換部に供給する。そして、カソードバッファ機構熱交換部においてカソード備蓄水と熱交換した熱媒体は、カソード加熱媒体流路8を経由して、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35に戻り、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35から熱媒体排出配管211を経由して排出される。
このように、図15の燃料電池システムでは、上記(1)〜(4)の熱源からの熱を担持した熱媒体がカソードバッファ機構熱交換部及びアノードバッファ機構熱交換部21に直接的に導通することにより行われる。
図17は、実施の形態2の燃料電池システムであり、図7のアノードバッファ機構加熱媒体供給部25及びカソードバッファ機構加熱媒体供給部35の部分をさらに詳細に示した図である。図17は、上記の熱源からの熱が、スタック1から排出される冷却水と一端熱交換されてバッファ機構に導入される場合の具体例である。なお、図17において、図7と同一部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図17において、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25の熱交換器204及びカソードバッファ機構加熱媒体供給部35の熱交換器210は、図8(a)に示す外部熱交換器98に相当している。
図17において、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25には、冷却水導入配管201を経由してスタック1からの冷却水が導入されとともに、上記の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管205を経由して導入される。そして、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25の熱交換器204において、導入されたスタック1からの冷却水と導入された熱媒体との熱交換が行われ、スタック1からの冷却水は昇温される。アノードバッファ機構加熱媒体供給部25は、熱交換器204において昇温された冷却水を、アノード加熱媒体流路6を経由してアノードバッファ機構熱交換部21に供給する。アノードバッファ機構熱交換部21でアノードバッファ備蓄水と熱交換したスタック1の冷却水は、アノード加熱媒体流路6を経由してアノードバッファ機構加熱媒体供給部25に戻り、さらに、アノードバッファ機構加熱媒体供給部25から冷却水排出配管206を経由して排出される。一方、熱交換器204において熱交換が行われた熱媒体は、熱媒体量調節バルブ203を経由して熱媒体排出配管202から排出される。
同様に、 図17において、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35には、冷却水導入配管207を経由してスタック1からの冷却水が導入されとともに、上記の熱源からの熱を担持した熱媒体が熱媒体導入配管211を経由して導入される。そして、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35の熱交換器210において、導入されたスタック1からの冷却水と導入された熱媒体との熱交換が行われ、スタック1からの冷却水は昇温される。カソードバッファ機構加熱媒体供給部35は、熱交換器210において昇温された冷却水を、カソード加熱媒体流路8を経由してカソードバッファ機構熱交換部に供給する。カソードバッファ機構熱交換部でカソードバッファ備蓄水と熱交換したスタック1の冷却水は、カソード加熱媒体流路8を経由してカソードバッファ機構加熱媒体供給部35に戻り、さらに、カソードバッファ機構加熱媒体供給部35から冷却水排出配管212を経由して排出される。一方、熱交換器210において熱交換が行われた熱媒体は、熱媒体量調節バルブ209を経由して熱媒体排出配管208から排出される。
このように、図17の燃料電池システムでは、アノードバッファ機構熱交換部21及びカソードバッファ機構熱交換部への上記(1)〜(4)の熱源からの熱の供給は、その熱を担持した熱媒体とスタック1の冷却水とで熱交換を行ってから行う間接的な導通によって行われる。
以上、上記の熱源からの熱がスタック1から排出される冷却水と一旦熱交換されてバッファ機構に導入される場合の具体例と、上記の熱源からの熱が直接にバッファ機構に導入される具体例について説明した。
尚、実施の形態1〜3における各手段は、その機能を同じにする限り、限定はない。
以下、実施の形態1〜3における燃料電池システムを実施例にてより具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例1では、実施の形態1で説明した燃料電池システムを用いている。尚、本実施例1における燃料電池システムの図4において示したバッファ機構部セパレータ50、60は、スタックの要求水量に応じて適当な段数積層して用いた。その適当な段数とは、本願出願人の燃料電池システムの運転状況の実証実験より、備蓄水水位が規定値の状態から、ガス加湿系からの供給水蒸気量が定格の70%にダウンした場合に、その不足分を15分間連続して備蓄水から供給できるだけの水容量を基準にしているが、必ずしもこれを遵守する必要はなく、限定するものでもない。
又、備蓄水水位はエンドプレート51に設けられた覗き窓62を介し、光学的なレベルセンサー63でモニターし、規定水位に達した都度、エンドプレート51のレベルゲージと接続したアノードバッファ機構ドレンポート24を介し、アノードバッファ機構ドレンバルブ27を一定時間開放して排出し、燃料ガス供給部2の改質機の動作水とした。尚、カソード側も同様に改質機の動作水とした。
尚、バッファ機構セパレータ50、61の材質は、スタックセパレータ40、41と同一のグラッシーカーボン(東海カーボン社製)とし、図中では割愛しているがエンドプレートと絶縁板を介して絶縁されている集電板にスタック起電力が導通する形態をとった。スタック1の基本仕様は電極面積200平方センチ、電流密度0.2A/平方センチ、積層段数45段であって、燃料利用率(Uf)は75%、空気利用率(Uo)は50%の条件で動作され、動作初期電圧は約0.74V、定格出力1.32KWであった。定格運転条件では、動作に乾燥基準で約20LMのSRG(CO2濃度23%)と53LMの空気が必要であった。本スタックの流路仕様は完全並行流であり、冷却水流路は反応ガス流路におおよそ沿う形で設けられ、定格冷却水量は1.8L/分であり、これがスタックに投入される時点での冷却水温度60℃としたときに、約69度の排水温度が得られた。
改質機動作条件は改質部温度630度、S/C(スチーム/カーボン比)3.0として駆動されガス露点の実測値は定格運転時に63度±2度であったが、起動および負荷変動時には内部保留水の過剰蒸発により70度を超える場合があった。したがって、この燃料供給系統ではアノードガスの追加加湿は不要であり、アノードガス加湿器は特段設けられなかった。カソードガスとしてはブロワから供給される空気を用いた。これは総膜面積5000cm2の全熱交換器(使用加湿膜 ナフィオン112 DuPont社)を用いてオフエアとの全熱交換により露点57度まで加湿されたのち、スタック冷却排水を水源および熱源とする膜総面積1000cm2の膜加湿器により、露点63度まで加湿されて用いた。また、これらアノードガスおよびカソードガスの露点は、アノードガス露点計、カソードガス露点計によりモニターされるが、この制御定点は62度に設定した。
バッファ機構部はスタックに直列に積層されたのち、一括断熱されており、追加熱供給がない場合にはスタック放熱によってほぼスタックと同じ温度に保たれていた。追加加湿時に必要な熱媒体としては、改質機バーナー廃ガスを直接用いた。改質機バーナーは、基本的に除湿されたオフガスを燃料とするが、原料である都市ガス(13A)を補助燃料とするアシスト燃焼形態とした。定格駆動時における原燃料(13A)消費量は約4LMであり、このときにほぼ過不足なくオフガス(水素量約3LM)で自立運転が可能であった。異質改質機バーナーの燃焼制御は、バッファ機構内のアノードガス露点計、およびカソードガス露点系からの信号をフィードバックして燃焼量をコントロールできるサブプログラムを、改質反応自体の最適燃焼制御プログラムに組み込んだ改造プログラムによって行われた。その結果、反応ガスの露点が制御定点に対して低下した場合に、補助燃料である13A投入量が増大し、バーナー廃熱を直接に増大可能とした。
上述の定格運転条件では、供給露点が定点である62度から一度低下するごとに、アノードで0.25g/min、カソードで0.65g/minの追加加湿が必要であり、その気化潜熱(当該温度域でおおよそ0.55Kcal/g)を乗じて、それぞれ0.14kcal/min、0.35Kcal/minと計算された。13Aの燃焼熱量は11000Kcal/m3であるので、供給ガス露点を一度上昇させるのに必要な原燃料流量はアノードで(0.14/11000)*1000=0.0127LM=13ccm、カソードで(0.35/11000)*1000=0.0318LM=32ccmであり、合計して定格原燃料消費量の1%程度と計算された。
上述の系統を有する燃料電池加湿システムでは、スタック冷却水量を増加することにより、スタック排水温を低下させ、任意にカソード温水加湿器からの水蒸気供給量を減じることが可能である。この方法でカソード温水加湿器からの供給露点を60℃まで絞った場合、(このときの冷却水量2.6LMはスタック排出水温66.5度であった。)、上述の制御様式では、定点から2度の露点不足を生じるが、このときの原燃料増加量の実測値は130ccmであり、上記計算値(32*2=64CCM)の約2倍であった。すなわち、原燃料流量増大分は、一義的に改質反応に用いられて供給水素量を増やし、この増加分は定電流制御がなされたスタックでは消費されずオフガスとなり、最終的にバーナーで燃焼されて、この燃焼排ガスが上述のバッファ機構部に導入され追加熱源となるわけであるが、その改質効率(約80%)のロスのほか、配管放熱、バッファ機構由来の熱伝達ロス等全てを含めて、追加加湿に係る熱効率は約50%と計算された。このように、定格原燃料消費量の数%から1割のアシスト燃焼によって、数度の供給ガス露点低下を補償することが可能であった。
また、上述の系統においては原燃料追い炊きから、供給ガスの露点が増加するまでの時定数は、特段の制御を行わない場合にはおよそ2.5分必要であった。上述のサブプログラムに、PID設定およびPID自動決定サブルーチンを追記して書き換えた場合は、この時間は約1分に短縮され、より機敏な露点補償が可能であった。
図6に示した系統図の従来燃料電池システムと、図1に示した系統を持ち、図3に示した形態のバッファ機構を持つ本実施例1の燃料電池システムとを比較運転した。
このときの定格運転におけるスタックの寿命特性比較図(セル平均電圧の推移)を図18に示す。この試験結果によれば、本実施例1におけるシステムは、本願出願人の従来品に比べ、なおよい寿命特性を持っていた。この理由としては、前述したように、配管中で結露し、実質的な水蒸気量が低下した反応ガスを、スタック1に対して結露する配管長を与えない距離において再度電池温度以上の露点に戻し、実質的にMEA42の乾燥を防止できる形態にする効果、および主に周囲環境の要因により、全熱交換器能力が減少するような局面(全熱交換器の加湿能力は周囲温度依存性があり、システム内部温度が高まることにより減少する。すなわち外気温依存性がある)においてのスタック1に対する緩衝効果が推察された。
さらに、図19には両方の燃料電池システムを電流密度0.2A/平方センチでの定格運転4時間と0.1A/平方センチでの微弱運転4時間(TDR=ターンダウンレシオ 50%)を繰り返して行う、1サイクル8時間の負荷変動耐久試験にかけたときの寿命特性を示す。これより明らかなように定格寿命試験よりも両者の耐久性に大きな開きが出た。
この現象について解析するために、アノードガス加湿部4から供給された水蒸気の総量(露点計測による実測値)とアノードバッファ機構備蓄部29の備蓄水レベルを実測し、スタックの要求する水の総量(電池反応式からの計算値)とあわせてプロットした。図20は、その結果を示す。
このプロットより、負荷増大局面で、電池が負荷に応じて即座に水を要求するのに対して、改質機が熱的に平衡に達するのは時間がかかる結果、供給水量が要求レベルについていっていないことが明らかである。このため従来例ではバッファがない場合にはこの間スタックが乾燥状態で運転されていることが明らかである。一方、バッファを設けた場合には、この間も備蓄水から必要な量がスタックに補充されていることが、水位レベルの挙動から明らかである。負荷変動寿命特性における両者の差異は、この負荷増大時の乾燥運転による寿命劣化が集積したものであると解された。
(実施例2)
本実施例2では、実施の形態2で説明した燃料電池システムを用いている。本実施例2の燃料電池システムの動作条件について以下に示す。
定格運転条件は電流密度0.2A/平方センチMEA、燃料利用率(Uf)75%、空気利用率(Uo)40%で、スタック1に流入する冷却水温度を70度とし、冷却水がスタック1から排出される部位に位置する分岐弁97内における温度をモニターし、これが75度となるように流量制御を行ったが、このときの流量はスタック出力1KWにつき約3.5リットル/分であった。
この分岐弁97は、備蓄水が一定温度になるように、アノード及びカソード側加熱媒体流路74、84に流れる冷却水の量を、制御する役割をもっており、本実施例2の実験では備蓄水水温が72度を保つようにアノード及びカソードバッファ機構制御部28、38により制御された。また、加熱媒体流路74、84には外部熱交換器97が設けられ、冷却水温度が足りない場合にスタック以外の熱源から引いた熱を補充できるようにしたが、定格運転条件ではこれを用いずとも備蓄水を72度に保つことが可能であった。
又、アノード及びカソード側加熱媒体流路74、84は、SUS316Lパイプ(外径6.35mm 肉厚1mm)にPFAチューブを被覆して熱収縮させ、これを折り曲げて構成した。この部位の材質は、燃料電池が特に重金属汚染を嫌うこと、特にアノードにおいては還元性の雰囲気で用いられることから、金属配管の場合には上記にような特段の注意が必要であった。
実施例1と、本実施例2の燃料電池システムを、以下の三つの積層段数において組み立て、定格耐久試験を行った。
50段積層(スタック長300mm、定格1.3KW)
100段積層(同600mm 同 2.6KW)
200段積層(同1200mm 同5.2KW)
実施例1における結果を図21に、本実施例2における結果を図22に示す。これより明らかなように本実施例2では実施例1に比して、特にスタック長が長くなる場合において良好な結果が得られた。
その理由について検証するために、200段積層、1500時間動作後のスタックを分解して、バッファ機構部20、30側から数えて(本実施例2においては、エンドプレート90側から数えて)1段目、50段目、100段目、150段目、200段目のユニットセル(本願出願人のスタックは、一段一段のセル(単電池)をサブアッセンブリーとし、これを積層して構成されており、任意に交換、差し替え、また使用後の再動作が可能である)の、上記定格運転条件における電圧をチェックした。この結果を表2に示す。
この結果から判明したことは、実施例1においては後段となるほどセルの劣化が進んでいるが、本実施例2においては明確な傾向を示さず、おしなべて実施例1に比べ劣化がすすんでいない。これは前述したように、水蒸気供給部からの距離の問題と解され、本実施例2ではこの点で実施例1に対して改善が見られていた。
実施例2の燃料電池システムを比較対照として、0.05A→0.2A→0.4A(定格)→0.8A→0.4A→0.2A→0.05Aの順序で、各負荷を一時間ずつかける負荷変動耐久試験を行った。図23のグラフは、負荷変動を繰り返し行った場合の各実施例1、2の電池平均電圧を示しており、太線は時間的な平均値を示している。この時間的な平均値を用いて、実施例1と実施例2の耐久性を比較した。本実施例2は実施例1に比してもなお改善がみられており、スタック全域にわたって負荷に対する供給水量追従性が向上している本実施例の優位性が確認できた。
尚、本発明のプログラムは、上述した本発明の燃料電池システムの制御部の機能をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
又、本発明の記録媒体は、上述した本発明の燃料電池システムの制御部の全部又は一部の機能をコンピュータにより実行させるためのプログラムを担持した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能且つ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協動して前記機能を実行する記録媒体である。
又、本発明の上記制御部の機能とは、全部又は一部の機能を意味する。
又、本発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
又、本発明のプログラムの一利用形態は、伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
又、記録媒体としては、ROM等が含まれ、伝送媒体としては、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波等が含まれる。
又、上述した本発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
尚、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。