JP2005229802A - ヒト血液を含有するキメラ動物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ヒト血液を含有するキメラ動物の提供。
【解決手段】 造血幹肝細胞を動物の胎児に移植することを特徴とするキメラ動物の製造方法、及びヒト血液を含有するキメラ家畜動物。
【選択図】 なし
【解決手段】 造血幹肝細胞を動物の胎児に移植することを特徴とするキメラ動物の製造方法、及びヒト血液を含有するキメラ家畜動物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒト血液を含有するキメラ動物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マウスにおいて造血幹細胞活性はin vivoの実験系、Long term marrow repopulation法によって測定される。この方法を用いることで、マウス造血幹細胞はほぼ純化されたと考えられ、これを材料として更なる研究が行えるようになっている1)。ヒト造血幹細胞のアッセイとしては最近まで適当な動物モデルが存在せず、in vitroの骨髄培養によりコロニー形成能を測定する方法2-4)が一般的であった。しかしcolony-forming cells(CFCs)やlong-term culture-initiating cells (LTC-IC)で観察されるコロニー形成能を持つ細胞のin vivo repopurating capasityにについては不明確である。1983年のscidマウスの発見5)により、ヒトの造血系をin vivoで再構築できることが示され、以後その研究法は急速に普及した。造血幹細胞の検出にはlong term multilineage engraftmentを測定する必要がある。最近ではより効率よくヒト造血系を再構築させうるNOD/SCIDマウスが開発6)されアッセイに頻用されるようになった7-10)。このマウスを用いたシステムはヒト血液細胞が容易に生着する点で優れた系といえるが、放射線照射により移植を成立させることによるstromaなど周辺組織への影響、小動物の限界としてヒト血液をアッセイするには寿命が短いこと、ヒト造血幹細胞(hematopoietic stem cell, 以下HSC)の増殖能をみるのにもscaleが小さいこと、一般にT細胞系への分化は観察できない11-13)ことが問題点としてあげられる。
【0003】
ヒト造血幹細胞をアッセイするために大動物を用いることができれば、さらにヒト造血系を正確にアッセイすることが可能となると考えられるが、これまでヒト血液系を導入できるような免疫不全を持つ大動物は知られていない。Zanjaniらはこの問題をin utero transplantationにより解決した14)。免疫系が成熟する以前の時期の胎仔期であればzenograftを拒絶できない可能性があり、大動物に異種移植を行える可能性がある。彼らはヒト造血細胞をヒツジ胎仔に移植することによりzeno-transplantationにもかかわらずキメラを作出し、ヒト造血幹細胞に関する優れた研究をおこなっている15-18)。最近ではnod/scidマウス13)やイヌ胎仔19)に同様の手法でin uteroヒト造血幹細胞移植を行いキメラを作出しえたとする報告もなされている。
【0004】
この手法は造血幹細胞のアッセイにとどまらず、さまざまな応用が可能である。近年の産科学領域における急速な出生前診断技術の向上により、現在では1st trimesterに胎児異常を同定することも可能となりつつある20-23)。遺伝的背景を持つある種の疾患については出生直後の骨髄移植が治療に有効であるが、これにはmyeloabrationの必要や、intensiveな免疫抑制、適合ドナーの問題など、解決されていないさまざまな問題がある。一方子宮内移植により骨髄移植を行う方法が完成すれば、このような問題が解決される可能性がある。alloの子宮内造血幹細胞移植の実験はげっ歯動物24),ヤギ25-28), 非ヒト霊長類29-32)で検討され、ヒトでも臨床で数例行われるようになった33-34)。さらに移植造血幹細胞に治療遺伝子を導入しておくことにより子宮内胎児遺伝子治療の可能性も期待できる35)。
【0005】
また動物実験や様々な臨床報告によると、血液キメリズムの達成は移植免疫の寛容をもたらすことが知られている36-39)。この手法により大動物にマイクロキメリズムが達成されると、その動物はヒト臓器に関して免疫寛容がもたらされている可能性があり、ヒト臓器のincubatorのように用いることもできるかもしれない40)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ヒトの血液を含有するキメラ動物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、動物の胎児にヒトの血液幹細胞を移植することにより、ヒトの血液が循環する動物を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ヒト血液を含有するキメラ動物である。該動物としては、例えばブタなどの家畜動物が挙げられる。
さらに、本発明は、造血幹細胞を動物の胎児に移植することを特徴とするキメラ動物の製造方法である。ここで、胎児としては妊娠30日から60日のものが挙げられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者は、ヒト造血幹細胞をブタ胎仔に移植する異種移植の実験系でヒト血液キメラを作出できるかを調べる実験を行い、造血幹細胞がmultilineageに分化し、microchimeraを長期にわたって維持できることを明らかにした。
【0010】
本発明は、ヒト型の血液を体内で循環し得るキメラ動物に関するものであり、特に家畜又は非ヒト霊長類を対象とするものである。
本発明において移植する造血幹細胞としては、ヒト臍帯血および骨髄由来のものが挙げられる。臍帯血及び骨髄からの造血幹細胞は、比重遠心法(例えばFicoll 、Lymphoprepなどを用いた方法)、パニング法などの一般に行われている手法により採取することができる。
【0011】
上記の通り採取されたヒト造血幹細胞のうち、本発明ではCD34陽性かつCD3陰性の有核細胞を使用することが好ましい。
CD34陽性有核細胞は、採取された細胞を抗ヒトCD34モノクローナル抗体で標識し、MACSまたはFACS装置を用いて選別することができる。一方、CD3陰性有核細胞は、採取された細胞に、ビオチンを結合した抗-CD3 モノクローナル抗体を反応させて結合し、得られる複合体にストレプトアビジンを結合させて標識する。そして磁気ビーズで上記複合体を除去することにより、CD3陰性有核細胞を得ることができる。
【0012】
移植するための造血幹細胞は、適当な緩衝液(例えばPBS)に希釈して使用する。細胞濃度は3.9x105〜1.5x106個、好ましくは一匹あたり1x106個以上である。
上記の通り得られた造血幹細胞を動物(ヒトを除く実験動物)の胎児に移植する。動物としては、ウマ、ブタ、イノシシ、ロバ、ヤギなどの比較的大型の家畜動物と、サルのような非ヒト霊長類を使用することができるが、ブタが好ましい。ブタの品種は特に限定されるものではなく、メイシャン、モンカイ、ユカタンマイクロブタなどの黒色品種、六白と呼ばれるバークシャー種、デュロックなどの茶色品種、 大ヨークシャー、ランドレースなどの白色品種が挙げられる。
【0013】
移植は以下の通り行う。
まず、家畜動物を人工授精により妊娠させ、妊娠の診断は人工授精後超音波により行った。移植日は、妊娠後30日〜81日、好ましくは30〜60日、さらに好ましくは35日〜52日である。
【0014】
移植当日、妊娠動物に麻酔導入後、腹部を剃毛し充分に石鹸水等で腹部を洗浄及び消毒する。
細胞は、超音波断層装置を用いて、モニター上に写し出される映像を観察しながら胎仔に移植する。細胞の移植は注射針又は穿刺針により行い、その注入は、胎仔一匹あたり0.2mlの生理食塩水に懸濁した造血幹細胞を穿刺針を通じて注入する。移植に使用される穿刺針の太さは、22〜23ゲージ、好ましくは22ゲージである。細胞は胎仔腹腔内に注入されるが、これと同時に被移植胎仔を生下時に同定する目的で、レントゲンで同定されるマーカーを挿入することが好ましい。その後、必要により抗生物質を注入し、細胞の移植が完了する。
【0015】
術後は、感染症を予防する目的で抗生物質の投与することが好ましい。
移植後の胎児を母体内で生育させ、通常分娩又は帝王切開によりキメラ動物を得ることができる。得られた動物にはヒトの血液が循環しているため、ヒト疾患の治療用医薬を開発するための実験動物等として有用である。
【0016】
また、本発明は、ヒトの血液細胞(あるいは造血幹細胞)の増殖系として利用できるため、輸血用血液、骨髄移植用骨髄を生産するために有用である。例えば、白血病患者に対し、ブタの骨髄から当該患者のの造血幹細胞を回収して自家移植を行うことが可能である。
さらに、本発明のキメラ動物には、ヒトに対して免疫寛容が誘導されるため、ヒトの臓器移植を行うにあたり、臓器の維持・再生の場所としてキメラブタを使えることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕 ヒト血液キメラブタの作製
(1) 造血幹細胞の調製
造血幹細胞の供給源としてはヒト臍帯血および骨髄を用いた。これら血液細胞を比重遠心法により分離し、有核細胞を得た。この有核細胞はphosphate-buffered saline(PBS)にて洗浄した。造血幹細胞移植のための分画としては、有核細胞全て、CD34陽性細胞、CD3陰性有核細胞をそれぞれ用いた。
【0018】
▲1▼ CD34陽性細胞の純化
有核細胞を抗ヒトCD34モノクローナル抗体で標識した。標識には蛍光、もしくは磁気ビーズをもちいた。有核細胞からヒトCD34陽性細胞を純化するために、MACS(Direct CD34 isolation kit Miltenyi Biotec Bergisch Gladbach, Germany)またはFACS Vantage(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いた。
【0019】
▲2▼ CD3陰性有核細胞の純化
有核細胞をbiotin - conjugated anti-CD3 mAbs (PharMingen, San Diego, CA)により標識し、洗浄後BigMag streptavidin ultra-load particles (PerSeptive Biosystems, Inc. Framingham, MA) でさらにこれを標識、 Magnetic Particle Concentrator (Dynal MPC-1 Oslo, Norway)によりCD3陽性細胞を除去した。
【0020】
(2) ブタ胎仔へのヒト造血幹細胞移植
▲1▼ 麻酔
移植当日、妊娠ブタはケタラールの筋注により前麻酔をおこない、その後マスクによる吸入麻酔をおこなった。吸入麻酔には笑気、酸素、イソフルレンを用いた。
【0021】
▲2▼ 消毒
妊娠ブタに麻酔導入後、腹部を剃毛し充分に石鹸水で腹部を洗浄した後、イソジンにて充分に消毒した。
【0022】
▲3▼ 超音波によるブタ胎仔の描出
ブタ胎仔への細胞移植には超音波断層装置Aloka ultrasound diagnostic equipment SSD-1000(ALOKA CO.,LTD Tokyo, Japan)をもちいた。超音波プローブには滅菌カバーを装着した7.5MHz electronic convex sector probe(Aloka; UST-987-7-5)を使用した。プローブに穿刺用ガイド(puncture adapter; Aloka MP-2458)を装着し、胎仔をモニター上に描出した。
【0023】
▲4▼ 穿刺針
胎仔へのヒト造血幹細胞導入のためにもちいた穿刺針は22-gauge, 150mm P.T.C.D. needle(Top Tokyo, Japan)である。細胞は胎仔腹腔内に注入されるが(後述)、このさい同時に被移植胎仔を生下時に同定する目的に、レントゲンで同定されるマーカーを挿入した。マーカーはP.T.C.D. needleのスタイレットを3mmの長さに細切し、オートクレーブにて滅菌することにより作成した。胎仔穿刺時にはP.T.C.D. needleのスタイレットを抜去し、この無菌マーカーを外筒内に挿入後胎仔腹腔を穿刺した。その後スタイレットを挿入圧出することでマーカーを胎仔腹腔内に挿入した。
【0024】
▲5▼ 細胞の注入
再度スタイレットを抜去し、胎仔一匹あたり0.2mlの生理食塩水に懸濁した造血幹細胞をP.T.C.D. needleを通じて注入した。その後抗生物質を胎仔腹腔内に0.2ml、羊水腔に0.3ml注入後、穿刺針を抜去した。この手技により最大4胎仔に細胞の移植が可能であった。
なお、移植は多くは超音波ガイド下におこなったが、一部では全身麻酔下に開腹し、子宮を直視下に胎仔を同定し、胎仔腹部に細胞移植をおこなった。
【0025】
▲6▼ 術後の抗生物質の投与
妊娠ブタにはその後2日間にわたり抗生物質を筋注により投与した。
▲7▼ 分娩
分娩は自然経腟分娩、もしくは帝王切開分娩によりおこなった。ブタ妊娠期間は通常114日である。生下時、出生児および死産児を軟X線撮影し、マーカーを同定することにより被移植仔を同定した。
【0026】
〔実施例2〕 出生仔の解析
(1) ヒト造血幹細胞移植を受けた新生仔の末梢血、骨髄、臓器の採取
ケタラールによる麻酔科に経静脈より末梢血を、骨盤蝶形骨より骨髄細胞採取した。また麻酔科に安楽死させた後ブタ各種臓器を採取した。
(2) 有核血球細胞の分離
得られた血液はin 0.83% ammonium chloride with 0.1% sodium bicarbonate(pH7.0)を用いて赤血球を溶血、PBSにて洗浄し有核細胞とした。
【0027】
(3) 有核細胞中のヒト血液細胞の同定
ヒト血液細胞の同定にはフローサイトメトリーおよびPCR法を用いた。
▲1▼ フローサイトメトリー
得られた有核細胞を、抗ヒトCD45抗体、抗ブタpan-tissue抗体で標識した。抗ヒトCD45抗体陽性かつ抗ブタpan-tissue抗体陰性細胞がヒト血液細胞と判定される。ここにさらにヒト血球分化抗原抗体、CD3,CD19, CD13,CD14, CD33,CD34,CD56,CD41 and CD61を加え、血球細胞の分化についても観察した。
【0028】
▲2▼ PCR
得られた有核細胞よりゲノムDNAをSepaGene (Sanko-jyunyaku Tokyo, Japan)により回収した。ヒトゲノムの同定にはAlu配列に特異的なプライマーを設計し、PCRにより増幅することでおこなった。
プライマーは以下の2種である。
5'-CTGGGCGCAAGAACGAGATTCTAT-3' (配列番号1)
5'-CTCACTACTTTGTGACAGGTTCA-3' (配列番号2)
PCRは94℃60秒の反応後、94℃20秒+58℃20秒+72℃30秒の反応を43サイクルおこない、最後に72℃7分の反応後終了した。得られたPCR産物はアガロースゲル上で臭化ブロマイドにたいする紫外線照射で観察した。
【0029】
(4) ブタ胎仔中に存在するヒト造血幹細胞のコロニー形成能の測定
ブタ骨髄有核細胞を分離後、抗ヒトCD34抗体、抗ヒトCD45抗体で標識し、そのダブルポジティブ細胞をFACSにより分離回収した。同細胞をヒト血液増殖因子を含む軟寒天培地cells (Methocult GF H4434; StemCell Technologies Inc. Vancouver, B.C.)上で培養し、2週間後のコロニー形成能を観察した。
【0030】
(5) 結果
最初に本発明者は、ヒツジやイヌで報告されている方法を踏襲し、開腹後子宮外より胎児腹部を穿刺することにより子宮内造血幹細胞移植を行った。このメリットは全妊娠胎仔に細胞移植を行いうることである。しかし、その結果移植した6例中4匹が術後5日以内に感染によると思われる流産に至った。
【0031】
そこで本発明者は、開腹術を施行せず、超音波ガイド下に母体の体外から胎仔に移植を行う方法を開発した。この方法では母体の腸管ガスのために全ての胎仔を超音波下に同定することは困難であり、実際には妊娠胎仔の平均4匹に移植が可能であった。しかしブタ腹壁は非常に細菌が多いと考えられ、この方法を用いても、徹底的な感染コントロールが流産防止に必要であった。具体的には腹壁の消毒を十分に行った後に移植を行い、更に胎児、羊水腔、母体に抗生物質を投与することで流産は顕著に減少した。
【0032】
ブタ胎仔は妊娠30日でCRLが約20mmとなる。本発明の方法で技術的に移植が可能となるのはこの時期からで、妊娠40日以降は腹部前後径、左右径が約20mmとなるため容易に超音波ガイド下の穿刺腹腔穿刺を施行することが可能である(図1)。但し、この時期でも心腔内や臍帯血管等、血中に移植を行うことは困難であった。
【0033】
ブタは多胎妊娠動物であり、平均12匹が出産する。本発明者が移植を行いうるブタはそのうちの一部であり、死産が生じた場合に被移植仔の同定が困難となる。そこで被移植仔に細胞とともにマーカーを移植することで、被移植仔を軟X線撮影によって他から区別することを試みた。その結果、新生児にマーカーが同定され(図2)、このマーカーがあっても胎児発育に影響のないことも確認された。
【0034】
少ない頻度のヒト細胞を効率よくflow cytmetryで同定するために、anti-pig pan tissue 抗体を使用した。この抗体はブタ血球のほぼ全てのlineageと反応するため、これに標識されるブタ細胞をgate outすることで、ヒト血液との分離が良好となり、0.01%の頻度であっても正確にヒト細胞を同定できた。さらに低いキメリズムの場合のヒト細胞の同定法としてPCRも併用した。この検出感度は0.0001%以上で可能であった。
In utero 移植の結果のまとめを示す(表1)。
【0035】
【表1】
妊娠ブタ35匹の91胎仔にヒト臍帯血由来造血幹細胞移植を行った。その結果10例35移植胎仔が流産、分娩した移植胎仔52例中15例(%)にヒト細胞が同定可能であった。移植時の妊娠時期とキメラ成立の関係を表2に示した。
【0036】
【表2】
移植が成立した胎児は60日で移植後5日で解析しキメラであった1例と、妊娠52日で移植しPCRレベルでキメラであった1例を除き、すべて妊娠50日以前に移植を行ったものであった。これよりzanotransplantationが可能となるのはブタ胎児の場合妊娠50日以前が好ましいと考えられる。
生着例を表3にまとめた。
【0037】
【表3】
移植細胞はMNCs, T deplete, CD34すべてにおいて生着が認められ、最長では移植後110日でもヒト細胞が同定された。しかしほぼすべてのブタでそのキメリズムは低く、最高でも0.6%の頻度であった。D3585、D3564はCD3 depleteの細胞を移植したが、血中にはT細胞のdominat expansionが認められ(図3)、GvHの存在を疑わせた。また1例は大量の無菌性腹水の貯留が認められ、分娩中死亡した胎児があり、また移植後20日ごろに子宮内胎児死亡となった児も認めたことから、T細胞の混入はGvHDを引き起こしている可能性があった。
【0038】
生着したヒト細胞は末梢血、骨髄、胸腺、肝臓、脾臓の全ての解析臓器に認められた(図4〜7)。骨髄と肝臓ではB cell, Myeloid, NK cell, MegakaryocyteとT細胞を除く全てのlineageが同定された。一方、胸腺ではCD3陽性のヒトT細胞のみが同定され、他のlineageを発現している細胞は認めなかった。この胸腺中に存在するT細胞はCD3陽性、CD4陽性で、αβTCRをもつT細胞であった。またこの骨髄中にはヒトCD34陽性細胞が存在し、これをsortingにより回収しコロニーアッセイを施行したところその0.8%がコロニーを形成能を持っていた。形成されたコロニーは赤血球系とマクロファージ系コロニーであった。
【0039】
(6) 考察
ブタ胎児へ開腹することなく非侵襲的に超音波ガイド下に造血幹細胞移植を行い、異種移植であってもキメラが成立する方法を開発した。ヒトCD34陽性細胞はmultilineageにengraftし、またコロニー形成能を持つ細胞もブタ骨髄中に維持されていた。ブタ胸腺ではCD34陽性細胞から分化したヒトT細胞が集積していた。
【0040】
ブタ胎仔へのin uteroヒト造血幹細胞移植により、免疫抑制やmyeloabrationなしにヒト血液キメラを作成できることが明らかとなった。キメラ状態は最長で移植後110日まで持続しており、long term engraftment が確認された。一方で、そのヒト血液キメラのキメリズムは低く、多くはPCR levelのマイクロキメリズムであった。
【0041】
ヒト細胞が長期に生着した例の移植時期は妊娠50日以前であった。このことは免疫系が発育する前に移植をすることが重要であることを示している。ブタ免疫系について検討した報告では41)、lymphocytesはd28に出現するが、T cellとして認められるのは脾臓や末梢血ではd50までに出現するとされている。sIgM 陽性細胞は44日に最初に肝臓に同定される42)。この報告は本実験の移植成立時期に矛盾しない。
【0042】
移植したヒトCD34陽性細胞はブタ胎仔の中でT細胞を含むmultilineageに分化することが示された。scidマウスを用いた系では一般的にはT細胞への分化は認められない。このことは、ブタという大動物の系は、ヒトT細胞をin vivoでアッセイする上で有用である可能性があることを示している。胸腺に移動したヒト血液細胞はブタ胸腺で教育されている可能性がある43-45)。
【0043】
一方、ヒト血液細胞を行うことで、GvHDが疑われる胎仔も存在した。出産時すでに死後長期経過している胎仔にマーカーが確認される例があり、また一例では出産時に大量の腹水が存在し死亡した例があった。妊娠中の解析ではMNCsを移植したブタではT細胞がdominantに増殖しており、これらのことから移植細胞からT細胞を除くことが望ましいかもしれない。またはこれを逆に利用することにより、GvHDモデルとして利用できる可能性もある。
【0044】
ヒツジの系ではT細胞の存在はヒト細胞の生着を促進する作用と、GVHDをもたらす作用の両者があるとされている46)。本発明の方法においては、ヒツジやイヌを用いた系と異なり、開腹しないことにより非侵襲的である点が特徴的である。また、in utero 移植は、myeloabrationなしに安全に新生仔キメラを作出する事ができる。この点も臨床応用を考える上で重要と考えられる。キメラの作成は生後のintensiveな管理を必要とする新生児期骨髄移植と比較し簡便である。移植実験系に於いてはPCRレベルでのマイクロキメリズムでも免疫寛容に有効とされている。そのためキメラになったrecipientはヒト移植臓器にも寛容となっている可能性があり、将来的な応用も可能である。ブタは多胎動物なので、様々な細胞をマーカーを変えて移植することで同時に様々なアッセイを行い得るメリットがある。
【0045】
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【0046】
【発明の効果】
本発明により、ヒト血液を含有するキメラ家畜動物及びその製造方法が提供される。本発明の動物は、ヒトの疾患に対する医薬等を開発するための実験動物等として有用である。
【0047】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> Japan Science and Technology Corporation
<120> Chimeric animal having human blood
<130> P00-0112
<140>
<141>
<160> 2
<170> PatentIn Ver. 2.0
<210> 1
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic DNA
<400> 1
ctgggcgcaa gaacgagatt ctat 24<210> 2
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic DNA
<400> 2
ctcactactt tgtgacaggt tca 23
【0048】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:合成DNA
配列番号2:合成DNA
【図面の簡単な説明】
【図1】実際の造血幹細胞移植操作を示す図である。
【図2】被移植仔中のマーカーを示す図である。
【図3】 CD3ヒトT細胞を部分的に除いたCD3 deplete細胞を移植したブタ胎仔の肝臓の解析結果を示す図である。妊娠45日にヒトCD3 depleted CB 3x107個を移植、移植後38日に早産したため解析。骨髄、肝臓、脾臓にヒト細胞は同定され、その大半はCD3陽性T細胞であった。このことは、CD3を部分的に除去しても、残存T細胞によりGVHDが生じ得ることを示している。
【図4】キメラブタの胸腺中ヒトT細胞の表面抗原の解析結果を示す図である。妊娠37日にヒトCD34陽性細胞を1.1x106個移植し、移植後47日に胎仔胸腺をFACSで解析した。胸腺中にはヒトCD3陽性T細胞が同定された。その表面抗原はCD4又はCD8のシングルポジティブであり、αβTCRをもっていた。このことは、ヒトCD34陽性細胞がブタ胸腺に移動し、ヒトT細胞に分化し得ることを示している。
【図5】ヒトCD34陽性細胞がブタの体内で多様な系列の血球細胞に分化することを示す図である。 CD34陽性細胞を1.1x106個移植し、46日後にFACSで分析した。ヒトCD34陽性細胞は骨髄球系(CD13、CD14、CD33)、Bリンパ球系(CD19)、NK細胞系(CD56)、血小板系(CD41、CD61)とmultilineageに分化し生着した。また骨髄前駆細胞(CD34)も認め、このことはCD34陽性細胞がブタ血中で自己複製又は維持されていることを示す。胸腺にはCD3陽性細胞を認め、ブタ体内でCD34陽性細胞がヒトT細胞に分化し得ることを示している。
【図6】ヒト血球の組織での分布を示す図である。 CD34陽性細胞を1.1x106個移植し、46日後に解析した。ヒト血球はブタ骨髄、肝臓、胸腺に主に分布していた。末梢血、脾臓にも存在していたが、その頻度は他に比べて低かった。
【図7】ヒトCD34陽性細胞移植後出生した仔の骨髄の解析結果を示す図である。妊娠35日にヒトCD34陽性細胞を移植したところ、キメラブタが出生した。キメリズムは骨髄で0.6%(移植後88日目)であった。このブタはその後正常に発育した。ヒト細胞は骨髄系、B細胞系の両者とともに、CD34陽性の骨髄前駆細胞にも分化していた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒト血液を含有するキメラ動物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マウスにおいて造血幹細胞活性はin vivoの実験系、Long term marrow repopulation法によって測定される。この方法を用いることで、マウス造血幹細胞はほぼ純化されたと考えられ、これを材料として更なる研究が行えるようになっている1)。ヒト造血幹細胞のアッセイとしては最近まで適当な動物モデルが存在せず、in vitroの骨髄培養によりコロニー形成能を測定する方法2-4)が一般的であった。しかしcolony-forming cells(CFCs)やlong-term culture-initiating cells (LTC-IC)で観察されるコロニー形成能を持つ細胞のin vivo repopurating capasityにについては不明確である。1983年のscidマウスの発見5)により、ヒトの造血系をin vivoで再構築できることが示され、以後その研究法は急速に普及した。造血幹細胞の検出にはlong term multilineage engraftmentを測定する必要がある。最近ではより効率よくヒト造血系を再構築させうるNOD/SCIDマウスが開発6)されアッセイに頻用されるようになった7-10)。このマウスを用いたシステムはヒト血液細胞が容易に生着する点で優れた系といえるが、放射線照射により移植を成立させることによるstromaなど周辺組織への影響、小動物の限界としてヒト血液をアッセイするには寿命が短いこと、ヒト造血幹細胞(hematopoietic stem cell, 以下HSC)の増殖能をみるのにもscaleが小さいこと、一般にT細胞系への分化は観察できない11-13)ことが問題点としてあげられる。
【0003】
ヒト造血幹細胞をアッセイするために大動物を用いることができれば、さらにヒト造血系を正確にアッセイすることが可能となると考えられるが、これまでヒト血液系を導入できるような免疫不全を持つ大動物は知られていない。Zanjaniらはこの問題をin utero transplantationにより解決した14)。免疫系が成熟する以前の時期の胎仔期であればzenograftを拒絶できない可能性があり、大動物に異種移植を行える可能性がある。彼らはヒト造血細胞をヒツジ胎仔に移植することによりzeno-transplantationにもかかわらずキメラを作出し、ヒト造血幹細胞に関する優れた研究をおこなっている15-18)。最近ではnod/scidマウス13)やイヌ胎仔19)に同様の手法でin uteroヒト造血幹細胞移植を行いキメラを作出しえたとする報告もなされている。
【0004】
この手法は造血幹細胞のアッセイにとどまらず、さまざまな応用が可能である。近年の産科学領域における急速な出生前診断技術の向上により、現在では1st trimesterに胎児異常を同定することも可能となりつつある20-23)。遺伝的背景を持つある種の疾患については出生直後の骨髄移植が治療に有効であるが、これにはmyeloabrationの必要や、intensiveな免疫抑制、適合ドナーの問題など、解決されていないさまざまな問題がある。一方子宮内移植により骨髄移植を行う方法が完成すれば、このような問題が解決される可能性がある。alloの子宮内造血幹細胞移植の実験はげっ歯動物24),ヤギ25-28), 非ヒト霊長類29-32)で検討され、ヒトでも臨床で数例行われるようになった33-34)。さらに移植造血幹細胞に治療遺伝子を導入しておくことにより子宮内胎児遺伝子治療の可能性も期待できる35)。
【0005】
また動物実験や様々な臨床報告によると、血液キメリズムの達成は移植免疫の寛容をもたらすことが知られている36-39)。この手法により大動物にマイクロキメリズムが達成されると、その動物はヒト臓器に関して免疫寛容がもたらされている可能性があり、ヒト臓器のincubatorのように用いることもできるかもしれない40)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ヒトの血液を含有するキメラ動物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、動物の胎児にヒトの血液幹細胞を移植することにより、ヒトの血液が循環する動物を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ヒト血液を含有するキメラ動物である。該動物としては、例えばブタなどの家畜動物が挙げられる。
さらに、本発明は、造血幹細胞を動物の胎児に移植することを特徴とするキメラ動物の製造方法である。ここで、胎児としては妊娠30日から60日のものが挙げられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者は、ヒト造血幹細胞をブタ胎仔に移植する異種移植の実験系でヒト血液キメラを作出できるかを調べる実験を行い、造血幹細胞がmultilineageに分化し、microchimeraを長期にわたって維持できることを明らかにした。
【0010】
本発明は、ヒト型の血液を体内で循環し得るキメラ動物に関するものであり、特に家畜又は非ヒト霊長類を対象とするものである。
本発明において移植する造血幹細胞としては、ヒト臍帯血および骨髄由来のものが挙げられる。臍帯血及び骨髄からの造血幹細胞は、比重遠心法(例えばFicoll 、Lymphoprepなどを用いた方法)、パニング法などの一般に行われている手法により採取することができる。
【0011】
上記の通り採取されたヒト造血幹細胞のうち、本発明ではCD34陽性かつCD3陰性の有核細胞を使用することが好ましい。
CD34陽性有核細胞は、採取された細胞を抗ヒトCD34モノクローナル抗体で標識し、MACSまたはFACS装置を用いて選別することができる。一方、CD3陰性有核細胞は、採取された細胞に、ビオチンを結合した抗-CD3 モノクローナル抗体を反応させて結合し、得られる複合体にストレプトアビジンを結合させて標識する。そして磁気ビーズで上記複合体を除去することにより、CD3陰性有核細胞を得ることができる。
【0012】
移植するための造血幹細胞は、適当な緩衝液(例えばPBS)に希釈して使用する。細胞濃度は3.9x105〜1.5x106個、好ましくは一匹あたり1x106個以上である。
上記の通り得られた造血幹細胞を動物(ヒトを除く実験動物)の胎児に移植する。動物としては、ウマ、ブタ、イノシシ、ロバ、ヤギなどの比較的大型の家畜動物と、サルのような非ヒト霊長類を使用することができるが、ブタが好ましい。ブタの品種は特に限定されるものではなく、メイシャン、モンカイ、ユカタンマイクロブタなどの黒色品種、六白と呼ばれるバークシャー種、デュロックなどの茶色品種、 大ヨークシャー、ランドレースなどの白色品種が挙げられる。
【0013】
移植は以下の通り行う。
まず、家畜動物を人工授精により妊娠させ、妊娠の診断は人工授精後超音波により行った。移植日は、妊娠後30日〜81日、好ましくは30〜60日、さらに好ましくは35日〜52日である。
【0014】
移植当日、妊娠動物に麻酔導入後、腹部を剃毛し充分に石鹸水等で腹部を洗浄及び消毒する。
細胞は、超音波断層装置を用いて、モニター上に写し出される映像を観察しながら胎仔に移植する。細胞の移植は注射針又は穿刺針により行い、その注入は、胎仔一匹あたり0.2mlの生理食塩水に懸濁した造血幹細胞を穿刺針を通じて注入する。移植に使用される穿刺針の太さは、22〜23ゲージ、好ましくは22ゲージである。細胞は胎仔腹腔内に注入されるが、これと同時に被移植胎仔を生下時に同定する目的で、レントゲンで同定されるマーカーを挿入することが好ましい。その後、必要により抗生物質を注入し、細胞の移植が完了する。
【0015】
術後は、感染症を予防する目的で抗生物質の投与することが好ましい。
移植後の胎児を母体内で生育させ、通常分娩又は帝王切開によりキメラ動物を得ることができる。得られた動物にはヒトの血液が循環しているため、ヒト疾患の治療用医薬を開発するための実験動物等として有用である。
【0016】
また、本発明は、ヒトの血液細胞(あるいは造血幹細胞)の増殖系として利用できるため、輸血用血液、骨髄移植用骨髄を生産するために有用である。例えば、白血病患者に対し、ブタの骨髄から当該患者のの造血幹細胞を回収して自家移植を行うことが可能である。
さらに、本発明のキメラ動物には、ヒトに対して免疫寛容が誘導されるため、ヒトの臓器移植を行うにあたり、臓器の維持・再生の場所としてキメラブタを使えることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕 ヒト血液キメラブタの作製
(1) 造血幹細胞の調製
造血幹細胞の供給源としてはヒト臍帯血および骨髄を用いた。これら血液細胞を比重遠心法により分離し、有核細胞を得た。この有核細胞はphosphate-buffered saline(PBS)にて洗浄した。造血幹細胞移植のための分画としては、有核細胞全て、CD34陽性細胞、CD3陰性有核細胞をそれぞれ用いた。
【0018】
▲1▼ CD34陽性細胞の純化
有核細胞を抗ヒトCD34モノクローナル抗体で標識した。標識には蛍光、もしくは磁気ビーズをもちいた。有核細胞からヒトCD34陽性細胞を純化するために、MACS(Direct CD34 isolation kit Miltenyi Biotec Bergisch Gladbach, Germany)またはFACS Vantage(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いた。
【0019】
▲2▼ CD3陰性有核細胞の純化
有核細胞をbiotin - conjugated anti-CD3 mAbs (PharMingen, San Diego, CA)により標識し、洗浄後BigMag streptavidin ultra-load particles (PerSeptive Biosystems, Inc. Framingham, MA) でさらにこれを標識、 Magnetic Particle Concentrator (Dynal MPC-1 Oslo, Norway)によりCD3陽性細胞を除去した。
【0020】
(2) ブタ胎仔へのヒト造血幹細胞移植
▲1▼ 麻酔
移植当日、妊娠ブタはケタラールの筋注により前麻酔をおこない、その後マスクによる吸入麻酔をおこなった。吸入麻酔には笑気、酸素、イソフルレンを用いた。
【0021】
▲2▼ 消毒
妊娠ブタに麻酔導入後、腹部を剃毛し充分に石鹸水で腹部を洗浄した後、イソジンにて充分に消毒した。
【0022】
▲3▼ 超音波によるブタ胎仔の描出
ブタ胎仔への細胞移植には超音波断層装置Aloka ultrasound diagnostic equipment SSD-1000(ALOKA CO.,LTD Tokyo, Japan)をもちいた。超音波プローブには滅菌カバーを装着した7.5MHz electronic convex sector probe(Aloka; UST-987-7-5)を使用した。プローブに穿刺用ガイド(puncture adapter; Aloka MP-2458)を装着し、胎仔をモニター上に描出した。
【0023】
▲4▼ 穿刺針
胎仔へのヒト造血幹細胞導入のためにもちいた穿刺針は22-gauge, 150mm P.T.C.D. needle(Top Tokyo, Japan)である。細胞は胎仔腹腔内に注入されるが(後述)、このさい同時に被移植胎仔を生下時に同定する目的に、レントゲンで同定されるマーカーを挿入した。マーカーはP.T.C.D. needleのスタイレットを3mmの長さに細切し、オートクレーブにて滅菌することにより作成した。胎仔穿刺時にはP.T.C.D. needleのスタイレットを抜去し、この無菌マーカーを外筒内に挿入後胎仔腹腔を穿刺した。その後スタイレットを挿入圧出することでマーカーを胎仔腹腔内に挿入した。
【0024】
▲5▼ 細胞の注入
再度スタイレットを抜去し、胎仔一匹あたり0.2mlの生理食塩水に懸濁した造血幹細胞をP.T.C.D. needleを通じて注入した。その後抗生物質を胎仔腹腔内に0.2ml、羊水腔に0.3ml注入後、穿刺針を抜去した。この手技により最大4胎仔に細胞の移植が可能であった。
なお、移植は多くは超音波ガイド下におこなったが、一部では全身麻酔下に開腹し、子宮を直視下に胎仔を同定し、胎仔腹部に細胞移植をおこなった。
【0025】
▲6▼ 術後の抗生物質の投与
妊娠ブタにはその後2日間にわたり抗生物質を筋注により投与した。
▲7▼ 分娩
分娩は自然経腟分娩、もしくは帝王切開分娩によりおこなった。ブタ妊娠期間は通常114日である。生下時、出生児および死産児を軟X線撮影し、マーカーを同定することにより被移植仔を同定した。
【0026】
〔実施例2〕 出生仔の解析
(1) ヒト造血幹細胞移植を受けた新生仔の末梢血、骨髄、臓器の採取
ケタラールによる麻酔科に経静脈より末梢血を、骨盤蝶形骨より骨髄細胞採取した。また麻酔科に安楽死させた後ブタ各種臓器を採取した。
(2) 有核血球細胞の分離
得られた血液はin 0.83% ammonium chloride with 0.1% sodium bicarbonate(pH7.0)を用いて赤血球を溶血、PBSにて洗浄し有核細胞とした。
【0027】
(3) 有核細胞中のヒト血液細胞の同定
ヒト血液細胞の同定にはフローサイトメトリーおよびPCR法を用いた。
▲1▼ フローサイトメトリー
得られた有核細胞を、抗ヒトCD45抗体、抗ブタpan-tissue抗体で標識した。抗ヒトCD45抗体陽性かつ抗ブタpan-tissue抗体陰性細胞がヒト血液細胞と判定される。ここにさらにヒト血球分化抗原抗体、CD3,CD19, CD13,CD14, CD33,CD34,CD56,CD41 and CD61を加え、血球細胞の分化についても観察した。
【0028】
▲2▼ PCR
得られた有核細胞よりゲノムDNAをSepaGene (Sanko-jyunyaku Tokyo, Japan)により回収した。ヒトゲノムの同定にはAlu配列に特異的なプライマーを設計し、PCRにより増幅することでおこなった。
プライマーは以下の2種である。
5'-CTGGGCGCAAGAACGAGATTCTAT-3' (配列番号1)
5'-CTCACTACTTTGTGACAGGTTCA-3' (配列番号2)
PCRは94℃60秒の反応後、94℃20秒+58℃20秒+72℃30秒の反応を43サイクルおこない、最後に72℃7分の反応後終了した。得られたPCR産物はアガロースゲル上で臭化ブロマイドにたいする紫外線照射で観察した。
【0029】
(4) ブタ胎仔中に存在するヒト造血幹細胞のコロニー形成能の測定
ブタ骨髄有核細胞を分離後、抗ヒトCD34抗体、抗ヒトCD45抗体で標識し、そのダブルポジティブ細胞をFACSにより分離回収した。同細胞をヒト血液増殖因子を含む軟寒天培地cells (Methocult GF H4434; StemCell Technologies Inc. Vancouver, B.C.)上で培養し、2週間後のコロニー形成能を観察した。
【0030】
(5) 結果
最初に本発明者は、ヒツジやイヌで報告されている方法を踏襲し、開腹後子宮外より胎児腹部を穿刺することにより子宮内造血幹細胞移植を行った。このメリットは全妊娠胎仔に細胞移植を行いうることである。しかし、その結果移植した6例中4匹が術後5日以内に感染によると思われる流産に至った。
【0031】
そこで本発明者は、開腹術を施行せず、超音波ガイド下に母体の体外から胎仔に移植を行う方法を開発した。この方法では母体の腸管ガスのために全ての胎仔を超音波下に同定することは困難であり、実際には妊娠胎仔の平均4匹に移植が可能であった。しかしブタ腹壁は非常に細菌が多いと考えられ、この方法を用いても、徹底的な感染コントロールが流産防止に必要であった。具体的には腹壁の消毒を十分に行った後に移植を行い、更に胎児、羊水腔、母体に抗生物質を投与することで流産は顕著に減少した。
【0032】
ブタ胎仔は妊娠30日でCRLが約20mmとなる。本発明の方法で技術的に移植が可能となるのはこの時期からで、妊娠40日以降は腹部前後径、左右径が約20mmとなるため容易に超音波ガイド下の穿刺腹腔穿刺を施行することが可能である(図1)。但し、この時期でも心腔内や臍帯血管等、血中に移植を行うことは困難であった。
【0033】
ブタは多胎妊娠動物であり、平均12匹が出産する。本発明者が移植を行いうるブタはそのうちの一部であり、死産が生じた場合に被移植仔の同定が困難となる。そこで被移植仔に細胞とともにマーカーを移植することで、被移植仔を軟X線撮影によって他から区別することを試みた。その結果、新生児にマーカーが同定され(図2)、このマーカーがあっても胎児発育に影響のないことも確認された。
【0034】
少ない頻度のヒト細胞を効率よくflow cytmetryで同定するために、anti-pig pan tissue 抗体を使用した。この抗体はブタ血球のほぼ全てのlineageと反応するため、これに標識されるブタ細胞をgate outすることで、ヒト血液との分離が良好となり、0.01%の頻度であっても正確にヒト細胞を同定できた。さらに低いキメリズムの場合のヒト細胞の同定法としてPCRも併用した。この検出感度は0.0001%以上で可能であった。
In utero 移植の結果のまとめを示す(表1)。
【0035】
【表1】
妊娠ブタ35匹の91胎仔にヒト臍帯血由来造血幹細胞移植を行った。その結果10例35移植胎仔が流産、分娩した移植胎仔52例中15例(%)にヒト細胞が同定可能であった。移植時の妊娠時期とキメラ成立の関係を表2に示した。
【0036】
【表2】
移植が成立した胎児は60日で移植後5日で解析しキメラであった1例と、妊娠52日で移植しPCRレベルでキメラであった1例を除き、すべて妊娠50日以前に移植を行ったものであった。これよりzanotransplantationが可能となるのはブタ胎児の場合妊娠50日以前が好ましいと考えられる。
生着例を表3にまとめた。
【0037】
【表3】
移植細胞はMNCs, T deplete, CD34すべてにおいて生着が認められ、最長では移植後110日でもヒト細胞が同定された。しかしほぼすべてのブタでそのキメリズムは低く、最高でも0.6%の頻度であった。D3585、D3564はCD3 depleteの細胞を移植したが、血中にはT細胞のdominat expansionが認められ(図3)、GvHの存在を疑わせた。また1例は大量の無菌性腹水の貯留が認められ、分娩中死亡した胎児があり、また移植後20日ごろに子宮内胎児死亡となった児も認めたことから、T細胞の混入はGvHDを引き起こしている可能性があった。
【0038】
生着したヒト細胞は末梢血、骨髄、胸腺、肝臓、脾臓の全ての解析臓器に認められた(図4〜7)。骨髄と肝臓ではB cell, Myeloid, NK cell, MegakaryocyteとT細胞を除く全てのlineageが同定された。一方、胸腺ではCD3陽性のヒトT細胞のみが同定され、他のlineageを発現している細胞は認めなかった。この胸腺中に存在するT細胞はCD3陽性、CD4陽性で、αβTCRをもつT細胞であった。またこの骨髄中にはヒトCD34陽性細胞が存在し、これをsortingにより回収しコロニーアッセイを施行したところその0.8%がコロニーを形成能を持っていた。形成されたコロニーは赤血球系とマクロファージ系コロニーであった。
【0039】
(6) 考察
ブタ胎児へ開腹することなく非侵襲的に超音波ガイド下に造血幹細胞移植を行い、異種移植であってもキメラが成立する方法を開発した。ヒトCD34陽性細胞はmultilineageにengraftし、またコロニー形成能を持つ細胞もブタ骨髄中に維持されていた。ブタ胸腺ではCD34陽性細胞から分化したヒトT細胞が集積していた。
【0040】
ブタ胎仔へのin uteroヒト造血幹細胞移植により、免疫抑制やmyeloabrationなしにヒト血液キメラを作成できることが明らかとなった。キメラ状態は最長で移植後110日まで持続しており、long term engraftment が確認された。一方で、そのヒト血液キメラのキメリズムは低く、多くはPCR levelのマイクロキメリズムであった。
【0041】
ヒト細胞が長期に生着した例の移植時期は妊娠50日以前であった。このことは免疫系が発育する前に移植をすることが重要であることを示している。ブタ免疫系について検討した報告では41)、lymphocytesはd28に出現するが、T cellとして認められるのは脾臓や末梢血ではd50までに出現するとされている。sIgM 陽性細胞は44日に最初に肝臓に同定される42)。この報告は本実験の移植成立時期に矛盾しない。
【0042】
移植したヒトCD34陽性細胞はブタ胎仔の中でT細胞を含むmultilineageに分化することが示された。scidマウスを用いた系では一般的にはT細胞への分化は認められない。このことは、ブタという大動物の系は、ヒトT細胞をin vivoでアッセイする上で有用である可能性があることを示している。胸腺に移動したヒト血液細胞はブタ胸腺で教育されている可能性がある43-45)。
【0043】
一方、ヒト血液細胞を行うことで、GvHDが疑われる胎仔も存在した。出産時すでに死後長期経過している胎仔にマーカーが確認される例があり、また一例では出産時に大量の腹水が存在し死亡した例があった。妊娠中の解析ではMNCsを移植したブタではT細胞がdominantに増殖しており、これらのことから移植細胞からT細胞を除くことが望ましいかもしれない。またはこれを逆に利用することにより、GvHDモデルとして利用できる可能性もある。
【0044】
ヒツジの系ではT細胞の存在はヒト細胞の生着を促進する作用と、GVHDをもたらす作用の両者があるとされている46)。本発明の方法においては、ヒツジやイヌを用いた系と異なり、開腹しないことにより非侵襲的である点が特徴的である。また、in utero 移植は、myeloabrationなしに安全に新生仔キメラを作出する事ができる。この点も臨床応用を考える上で重要と考えられる。キメラの作成は生後のintensiveな管理を必要とする新生児期骨髄移植と比較し簡便である。移植実験系に於いてはPCRレベルでのマイクロキメリズムでも免疫寛容に有効とされている。そのためキメラになったrecipientはヒト移植臓器にも寛容となっている可能性があり、将来的な応用も可能である。ブタは多胎動物なので、様々な細胞をマーカーを変えて移植することで同時に様々なアッセイを行い得るメリットがある。
【0045】
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【0046】
【発明の効果】
本発明により、ヒト血液を含有するキメラ家畜動物及びその製造方法が提供される。本発明の動物は、ヒトの疾患に対する医薬等を開発するための実験動物等として有用である。
【0047】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> Japan Science and Technology Corporation
<120> Chimeric animal having human blood
<130> P00-0112
<140>
<141>
<160> 2
<170> PatentIn Ver. 2.0
<210> 1
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic DNA
<400> 1
ctgggcgcaa gaacgagatt ctat 24<210> 2
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic DNA
<400> 2
ctcactactt tgtgacaggt tca 23
【0048】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:合成DNA
配列番号2:合成DNA
【図面の簡単な説明】
【図1】実際の造血幹細胞移植操作を示す図である。
【図2】被移植仔中のマーカーを示す図である。
【図3】 CD3ヒトT細胞を部分的に除いたCD3 deplete細胞を移植したブタ胎仔の肝臓の解析結果を示す図である。妊娠45日にヒトCD3 depleted CB 3x107個を移植、移植後38日に早産したため解析。骨髄、肝臓、脾臓にヒト細胞は同定され、その大半はCD3陽性T細胞であった。このことは、CD3を部分的に除去しても、残存T細胞によりGVHDが生じ得ることを示している。
【図4】キメラブタの胸腺中ヒトT細胞の表面抗原の解析結果を示す図である。妊娠37日にヒトCD34陽性細胞を1.1x106個移植し、移植後47日に胎仔胸腺をFACSで解析した。胸腺中にはヒトCD3陽性T細胞が同定された。その表面抗原はCD4又はCD8のシングルポジティブであり、αβTCRをもっていた。このことは、ヒトCD34陽性細胞がブタ胸腺に移動し、ヒトT細胞に分化し得ることを示している。
【図5】ヒトCD34陽性細胞がブタの体内で多様な系列の血球細胞に分化することを示す図である。 CD34陽性細胞を1.1x106個移植し、46日後にFACSで分析した。ヒトCD34陽性細胞は骨髄球系(CD13、CD14、CD33)、Bリンパ球系(CD19)、NK細胞系(CD56)、血小板系(CD41、CD61)とmultilineageに分化し生着した。また骨髄前駆細胞(CD34)も認め、このことはCD34陽性細胞がブタ血中で自己複製又は維持されていることを示す。胸腺にはCD3陽性細胞を認め、ブタ体内でCD34陽性細胞がヒトT細胞に分化し得ることを示している。
【図6】ヒト血球の組織での分布を示す図である。 CD34陽性細胞を1.1x106個移植し、46日後に解析した。ヒト血球はブタ骨髄、肝臓、胸腺に主に分布していた。末梢血、脾臓にも存在していたが、その頻度は他に比べて低かった。
【図7】ヒトCD34陽性細胞移植後出生した仔の骨髄の解析結果を示す図である。妊娠35日にヒトCD34陽性細胞を移植したところ、キメラブタが出生した。キメリズムは骨髄で0.6%(移植後88日目)であった。このブタはその後正常に発育した。ヒト細胞は骨髄系、B細胞系の両者とともに、CD34陽性の骨髄前駆細胞にも分化していた。
Claims (4)
- ヒト血液を含有するキメラ動物。
- 動物がブタである請求項1記載のキメラ動物。
- 造血幹細胞を動物の胎児に移植することを特徴とするキメラ動物の製造方法。
- 胎児が妊娠30日〜60日のものである請求項3記載の製造方法。
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