以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。本実施の形態は、自動車に設けられた、衝突等の車両の緊急状態を予測してエアバッグ装置や乗員を保持するウェビングを巻き取る巻取装置等を早期に作動するプリクラッシュセーフシステムである乗員保護システムに本発明を適用したものである。
本実施の形態では、乗員保護システムが対象とする装置として、エアバッグ装置、所謂シートベルトを巻き取るためのウェビング巻取装置、及びブレーキアシスト装置が自動車に設けられており、乗員保護システムはこれらの各装置を制御するものとして説明する。
図1に示すように、乗員保護システムは、車両状態予測装置10が設けられており、主要な構成要素として、車両状態予測装置10に、エアバッグ装置の構成要素であるエアバッグECU24、ウェビング巻取装置の構成要素であるウェビング巻取ECU20、及びブレーキアシスト装置の構成要素であるブレーキアシストECU16が設けられている。また、ブレーキアシストECU16近傍にはブレーキアシストアクチュエータ18が設けられている。また、運転席及び助手席の各々の下部には、各乗員に巻き掛るウェビングを巻き取るウェビング巻取アクチュエータ22が設けられている。また、自動車の前方部には、車両前方の構造物を検知するレーダセンサ40が設けられている。
なお、エアバッグ装置は、Gセンサ(図2)によって検出した衝撃に応じてエアバッグECU24から出力される展開信号でエアバッグ装置に装備した化学物質の点火による発生ガスが袋体内に充填されることによって、該袋体が展開されて衝突時の荷重が緩和されるようになっている。なお、エアバッグ装置は、少なくともステアリングの中央部分に設けられた運転席用に設置され、さらに助手席、後部座席、運転席側及び助手席側の各側面側の何れかにも設置が可能である。
また、ウェビング巻取装置は、後述するように車両状態予測装置10により予測した自動車の緊急状態を示す指示信号によりウェビング巻取アクチュエータ22が作動されてウェビングを巻き取るようになっている。また、ブレーキアシスト装置も同様に、後述する車両状態予測装置10により予測した自動車の緊急状態を示す指示信号によりブレーキアシストアクチュエータ18が作動されて自動車の制動力を事前に制御ようになっている。
〔第1実施形態〕
次に、本実施の形態に係る乗員保護システムについて、図2を参照してさらに説明する。
図2に示すように、本実施の形態に係る乗員保護システムは、CPU,ROM,RAMを有して入出力ポート(I/O)にコマンドやデータ授受可能に接続したコンピュータ構成とされた、自動車の衝突などの緊急状態を予測する車両状態予測装置10と、乗員保護補助装置12とを備えている。車両状態予測装置10と外部装置やセンサとの接続は、入出力ポート(I/O)を介してなされる。また、車両状態予測装置10には、自動車の運転状態(例えば、スリップ角やドリフトアウト等)を解析して運転状態をアシストする運転状態アシスト装置27が接続される。図2の例では、運転状態アシスト装置27として、VSC(Vehicle Stability Control)に装備されるVSC・ECU、及びABS(Anti-lock Brake System)に装備されるABS・ECUを含んで構成されている。また、図2の例では、乗員保護装置として機能するエアバック装置を構成する加速度センサ46が接続されたエアバッグECU24が接続されている。
運転状態アシスト装置27には、操舵角を検出するステアリングセンサ30、及びヨーレートセンサ32が接続されている。ヨーレートセンサ32は、自動車に発生するヨーレートを検出するためのものであり、ステアリングセンサ30は、ステアリングに設けられてステアリングの舵角を検出するものである。また、運転状態アシスト装置27には、スロットルセンサ34,車速センサ36,ブレーキ操作センサ38が接続されている。スロットルセンサ34は、エンジンのスロットルボディに設けられ、スロットル開度を検出するためのものである。車速センサ36は、自動車の各車輪に設けられたセンサから求まる車輪速度から得られる自動車の速度を求めたり速度計に設けられたセンサにより自動車の速度を検出するものである。ブレーキ操作センサ38は、ブレーキペダルに設けられ、制動力指示量を検出するためのものである。さらに、運転状態アシスト装置27には、自動車の進行方向や進行方向と直交する方向の加速度を検出するために、左右加速度センサ31、及び前後加速度センサ33が設けられている。
また、車両状態予測装置10には、加速度センサ46が接続されたエアバッグECU24が接続されている。加速度センサ46は、自動車の走行によって生じる加速度や衝突等によって生じる加速度を検出するためのものである。また、加速度センサ46は、上記左右加速度センサ31及び前後加速度センサ33のように自動車の進行方向や進行方向と直交する方向の加速度を検出するために複数設けることができる。エアバッグECU24は、加速度センサ46によって自動車に加わる所定値以上の加速度が検出されると、エアバッグ装置の展開を指示するように構成されている。すなわち、エアバッグECU24は、加速度センサ46の出力信号(衝突と共に加速度が最小は緩やかに立ち上がり途中から急速に立ち上がる)が入力されると、加速度センサ46の出力信号が予め定められた閾値を越えた場合に、エアバッグ装置の展開を指示する。これによって、エアバッグ装置が展開される。
図2の例では、上記の自動車の走行状態を検出するための各種のセンサは、エアバッグECU24や運転状態アシスト装置27を介して接続しているが、各センサを直接車両状態予測装置10に接続してもよい。また、上述の各センサから得られる情報に基づいて、自動車の運動状態を解析する運動状態解析装置を設けても良い。例えば、運動状態解析装置は、ヨーレートセンサ32により検出されたヨーレート、ステアリングセンサ30により検出された操舵角、車速センサ36により検出された各車輪速度や車速、スロットルセンサ34により検出されたスロットル開度及び加速度センサ46により検出された自動車に加わる各方向の加速度に基づいて、スピン状態、ブレーキロック状態、ドリフトアウト状態、通常走行状態等の自動車の運動状態を判断したり特定したりする。
また、車両状態予測装置10には、レーダセンサ40、画像センサ42、ポジショニングセンサ44が接続されている。レーダセンサ40は、自動車の前方の構造物を検出するためのものであり、画像センサ42は、自動車の周辺環境を撮像するためのものである。また、ポジショニングセンサ44は、自動車の位置を高精度に検出するためのものである。ポジショニングセンサ44は、例えば、公知のナビゲーションシステムにより実現可能であり、衛星からの信号により測位した自己位置を、DVD等の記録媒体に記憶された地図情報などと照合することによって道路案内や、自己位置周辺の情報(構造物の存在やその種類(電柱、ビルディング、木造家屋、ガードレールなどの構造物の種類や、コンクリート等の材質)等)を検出することができる。
なお、車両状態予測装置10に接続されるセンサ類は、上記に限るものではなく、例えば、トランスミッション等に設けられ、自動車の速度を検出する車速センサやトランスミッションのシフト位置を検出するセンサ等を設けてもよい。
ここで、車両状態予測装置10には、乗員保護補助装置12が接続されている。乗員保護補助装置12は、ウェビング巻取装置を構成するウェビング巻取ECU20及びウェビング巻取アクチュエータ22、ブレーキアシスト装置を構成するブレーキアシストECU16及びブレーキアシストアクチュエータ18、エアバッグ装置を展開するための閾値を変更するエアバッグ点火設定値変更部14から構成されている。ウェビング巻取装置は、車両状態予測装置10からの信号によりウェビングを巻き取る機能を有するもので、ブレーキアシスト装置は、車両状態予測装置10からの信号により制動力を調整する機能を有するものである。また、エアバッグ点火設定値変更部14は、エアバッグ装置の展開を指示するための加速度センサ46の出力信号の閾値を、車両状態予測装置10からの信号により変更する機能を有するものである。なお、乗員保護補助装置12には、車両状態予測装置10からの信号によりショックアブゾーバの減衰力を調整するサスペンションアシスト装置を追加してもよい。
なお、車両状態予測装置10に接続される上述のセンサ及び装置の全てが本発明の乗員保護装置の要素を構成するものではない。詳細は後述するが、センサとして少なくともスリップ角などを得られればよく、乗員保護補助装置12としては、何れかの装置または自動車の状態を補助する他の装置でもよい。
次に、乗員保護システムの作動について、車両状態予測装置10の動作を中心に説明する。まず、図3には、車両状態予測装置10の基本動作の流れを示した。
車両状態予測装置10では、図3に示す基本ルーチンが所定時間毎に実行される。まず、ステップ100において各センサの出力信号を読み取ることにより、センサ値の入力処理がなされる。ここでは、ステアリングセンサ30,ヨーレートセンサ32,スロットルセンサ34,車速センサ36,ブレーキ操作センサ38,レーダセンサ40,画像センサ42,ポジショニングセンサ44,加速度センサ46からの信号をそのまま入力してもよいし、各信号をエアバッグECU24,運転状態アシスト装置27を介して入力してもよい。また、エアバッグECU24,運転状態アシスト装置27において生成される信号を入力しても良い。
次のステップ102では、上記センサ値から自動車の走行状態を予測することにより車両状態を特定する。このステップ102は、車両状態として予測値を求めることであり、その予測値は、ステップ100で検出した各種センサの出力信号から求めた自動車の走行状態を表す演算値である。例えば、各センサから得られる、ヨーレート、操舵角、車速、スロットル開度及び加速度等の表す値を、演算値として求める。この演算値は、スピン状態、ブレーキロック状態、ドリフトアウト状態等の緊急状態に至る走行状態を表す場合を含んでいる。すなわち、演算値が予め定めた閾値(設定値)以内のときには、緊急状態に至る可能性が低い。また、レーダセンサ40、画像センサ42、ポジショニングセンサ44により自動車の周囲の構造物までの到達距離や到達時間を求めて、衝突などの緊急状態に至る可能性を求めることもできる。
そこで、次のステップ104では、車両状態が緊急状態か否かを判断する。この判断は、ステップ102において求めた予測値が予め定めた設定値を超えたか否かを判断することによりなされる。設定値は、上述のように、各センサの値や演算値が実験的又は経験的に定められる。
次のステップ106では、乗員保護補助装置12を作動させるために、指示信号を出力する。乗員保護補助装置12では、指示信号を受け取って、エアバッグ点火設定値変更部14によるエアバッグ装置,ブレーキアシストECU16によるブレーキアシスト装置,ウェビング巻取ECU20によるウェビング巻取装置の少なくとも1つにおいて乗員保護補助処理が行われる。エアバッグ点火設定値変更部14では、エアバッグECU24によるエアバッグ装置の展開を規定している閾値を、小さくすることによって、エアバッグ装置の展開時期を短縮する。ブレーキアシスト装置は、ブレーキアシストECU16によりブレーキアシストアクチュエータ18を制御して補助的に制動力を増加する。ウェビング巻取装置は、ウェビング巻取ECU20によりウェビング巻取アクチュエータ22を制御してウェビングを巻き取ることで乗員保護力を強化する。
これにより、車両の状態が衝突などの緊急状態に至ることが予測されるときに、迅速に乗員保護補助装置12を作動させることができるので、乗員の保護を行うことができる。
ところで、緊急状態に至るか否かの判断を単一の設定値を基準として行うと、通常走行時の乗員操作による自動車の挙動であっても緊急状態に至ることを予測する頻度が増加する。これは乗員操作による自動車の挙動が様々であるためである。従って、乗員の保護を確実に行うため、緊急状態に至るか否かの判断基準となる設定値を、走行状態に応じて変更することが好ましい。そこで、本実施の形態では、上記基本ルーチンを基にして、走行状態に応じて設定値を変更する補助条件を定め、補助条件に応じて緊急状態に至るか否かの判断基準を変更している。
・第1の補助条件
本補助条件は、運転状態アシスト装置27すなわちVSC及びABSの何れかのシステムが自動車に搭載されているか否か、またはシステムが作動中か非作動かを、緊急状態に至るか否かの判断基準に考慮している。
図4には、本補助条件を実現するための車両状態予測装置10の動作の流れを示した。まずステップ110では、図3のステップ100と同様に、各センサ値が入力される。ここでは、所定値Doが閾値Dthに設定される。次のステップ112では、上記ステップ102と同様に車両状態を特定し、次のステップ114で自動車にVSC及びABSの何れかが装備されているか否かを判断する。ステップ114で否定されると、ステップ122へ進み、上記ステップ104と同様に、現在の車両状態Dが緊急状態か否か(D≧Dth)を判断する。ステップ122で肯定されると、乗員保護補助装置12を作動させるためにステップ124において上記ステップ106と同様に指示信号を出力して乗員保護補助装置12を作動させる。
一方、ステップ114で肯定されたときは、ステップ116へ進み、VSC及びABSの何れかが作動中であるか否かを判断する。作動中である場合(ステップ116で肯定)、ステップ118に進み、所定値Doより小さい規定値Da(Da<Do)が閾値Dthに設定される。これは、VSC及びABSの何れかの作動中の場合、非作動のときより緊急状態に至る可能性が高いためである。一方、ステップ116で否定されると、ステップ120において所定値Doより小さい規定値Db(Db<Do)が閾値Dthに設定される。なお、このステップ116では、VSC及びABSの何れかが故障時により非作動の場合にステップ120へ進み、それ以外の場合はそのままステップ122へ進むことが好ましい。これは、VSC及びABSの何れかが非作動の場合は、故障時と通常走行による非作動時とがあり、故障時には本来作動すべきVSCやABSを補助するためである。このため、規定値は中間値に規定することが好ましい(Da<Db<Do)。
これにより、VSC及びABSの何れかの作動状態により閾値を変更することができるので、迅速に乗員保護補助装置12を作動させることができ、乗員の保護を確実行うことができる。
・第2の補助条件
本補助条件は、自動車の挙動(走行状態)としてアンダーステア状態またはオーバーステア状態のときに設定値(閾値)を変更するものである。すなわち、本補助条件は、アンダーステア状態またはオーバーステア状態を、緊急状態に至るか否かの判断基準に考慮している。
図5には、本補助条件を実現するための車両状態予測装置10の動作の流れを示した。まずステップ130では、図3のステップ100と同様に、各センサ値が入力される。ここでは、車両状態としてスリップ角βを採用する。このステップ130では、設定値βthとして予め定めた基準値βstを設定する。次のステップ132では、上記ステップ102と同様に車両状態を特定するが、ここではスリップ角βを演算することを想定する。次のステップ134では、自動車の走行状態がアンダーステア状態であるか否かを判断する。アンダーステア状態は、ステアリングの入力(操舵角)に対してヨーが不足し前進するものであり、スリップ角が大きくなる。本実施の形態におけるステップ134の判断は、スリップ角によりなされる。スリップ角は、自動車の進行方向とタイヤの向き(操舵角)とのなす角度であり、タイヤの向きに対して操舵角の指示方向(回転方向)と逆回転方向で自動車が進行方向となる場合がアンダーステア状態である。一方、オーバーステア状態は、ヨーが大きく出て、操舵角の指示を上回る旋回が生じる場合であり、ステアリングの指示によりタイヤの向きより内側に自動車の進行方向となる場合である。
車両状態がアンダーステア状態の場合(ステップ134で肯定)、ステップ140において、アンダーステア状態の走行状態用として基準値βstより小さい予め求めた値βusを所定値βthに定める(βus<βst)。一方、ステップ134で否定され、オーバーステア状態の場合、ステップ146へ進み、オーバーステア状態の走行状態用として基準値βstより小さい予め求めた値βosを所定値βthに定める(βus<βst)。なお、アンダーステア状態用の値βusとオーバーステア状態用の値βosとは同一の値であってもよく、異なる値であってもよい。
次のステップ148では、図3のステップ104と同様に、現在の車両状態が緊急状態か否かを、アンダーステア状態またはオーバーステア状態が閾値以上であるか(|β|≧βth)を判別することにより判断する。ステップ148で肯定されると、上記ステップ106と同様に乗員保護補助装置12を作動させるためにステップ150において指示信号を出力して乗員保護補助装置12を作動させる。
これにより、自動車がアンダーステア状態及びオーバーステア状態の何れかの状態により閾値を変更することができるので、迅速に乗員保護補助装置12を作動させることができ、乗員の保護を確実行うことができる。
なお、本補助条件における、ステップ130の処理が本発明の検出手段の処理に相当し、ステップ134の判断が本発明の予測手段の処理に相当し、ステップ150の処理が本発明の制御手段の処理に相当する。また、ステップ140及び146の処理が本発明の設定手段の処理に相当する。
・第3の補助条件
本補助条件は、自動車の挙動(走行状態)としてアンダーステア状態またはオーバーステア状態のときに、車速に応じて設定値(閾値)を変更するものである。すなわち、本補助条件は、車速と、アンダーステア状態またはオーバーステア状態とを、緊急状態に至るか否かの判断基準に考慮している。
図6には、本補助条件を実現するための車両状態予測装置10の動作の流れを示した。図5の処理ルーチンとの違いは、ステップ130において入力対象とするセンサ値に、車速Vを考慮することと、ステップ136及びステップ142を追加したことである。まずステップ130では、各センサ値が入力される。ここでは、車両状態としてスリップ角βを採用すると共に、車速Vを入力する。次に、スリップ角βを演算し(ステップ132)、自動車の走行状態がアンダーステア状態であるか否かを判断する(ステップ134)。
車両状態がアンダーステア状態の場合(ステップ134で肯定)、ステップ136へ進み、車速Vを反映した値βusを設定する。アンダーステア状態の閾値となるβusは、予め実験的や経験的に車速Vとの対応関係を求めておく。この対応関係となる係数を関数f(V)で表す。これにより、値βusに係数として関数f(V)を乗算することで、車速Vを反映した値βusを求めることができる(βus=βus・f(V))。次に、車速Vを反映した値βusを所定値βthに定める(ステップ140)。
一方、ステップ134で否定され、オーバーステア状態の場合、ステップ142へ進み、車速Vを反映した値βosを設定する。オーバーステア状態の閾値となるβosは、予め実験的や経験的に車速Vとの対応関係を求めておく。この対応関係となる係数を関数g(V)で表す。これにより、値βosに係数として関数g(V)を乗算することで、車速Vを反映した値βosを求めることができる(βos=βos・g(V))。次に、車速Vを反映した値βosを所定値βthに定める(ステップ146)。なお、関数f、gは同一関数でもよく、異なる関数でもよい。
なお、上記関数f、gは、連続特性の関数に限定されない。例えば、多項式による不連続特性であってもよく、また、上記係数と車速Vとの対応関係を表すテーブルでもよい。
これにより、自動車がアンダーステア状態及びオーバーステア状態の何れかの状態のとき、自動車の車速に応じて閾値を変更することができるので、迅速かつ細やかに乗員保護補助装置12を作動させることができ、乗員の保護を確実行うことができる。
なお、本補助条件における、ステップ130の処理が本発明の自車両の速度を検出する処理を含むことに相当し、ステップ136及び142の処理が本発明の設定手段において車速に対応した設定値を設定する処理に相当する。
・第4の補助条件
本補助条件は、自動車の挙動(走行状態)としてアンダーステア状態またはオーバーステア状態のときに、自動車周辺環境に応じて設定値(閾値)を変更するものである。すなわち、本補助条件は、自動車周辺環境と、アンダーステア状態またはオーバーステア状態とを、緊急状態に至るか否かの判断基準に考慮している。
図7には、本補助条件を実現するための車両状態予測装置10の動作の流れを示した。図5の処理ルーチンとの違いは、ステップ130において入力対象とするセンサ値に、画像情報や地図情報などから自車両認識によるセンサ値を入力することと、ステップ138及びステップ144を追加したことである。まずステップ130では、各センサ値が入力される。ここでは、車両状態としてスリップ角βを採用すると共に、画像や地図などの画像情報から自車両認識によるセンサ値Nを入力する。
本補助条件におけるセンサ値Nとしては、レーダセンサ40,画像センサ42,ポジショニングセンサ44のセンサ値を用いることができる。レーダセンサ40を用いる場合、自動車前方の構造物までの距離をセンサ値として入力する。また、画像センサ42を用いる場合、自動車周辺を撮像した画像を入力として自車線を認識すると共に、対向車線やガードレールまでの距離をセンサ値として入力する。この場合、方向を属性として付与することが好ましい。ポジショニングセンサ44を用いる場合も同様に、自動車が走行する自車線を認識すると共に、対向車線やガードレールまでの距離をセンサ値として入力する。なお、これらのセンサ値を組み合わせても良い。
次に、スリップ角βを演算し(ステップ132)、自動車の走行状態がアンダーステア状態であるか否かを判断する(ステップ134)。車両状態がアンダーステア状態の場合(ステップ134で肯定)、ステップ138へ進み、画像情報による周辺環境によるセンサ値Nを反映した値βusを設定する。アンダーステア状態の閾値となるβusは、予め実験的や経験的に周辺環境によるセンサ値Nとの対応関係を求めておく。この対応関係となる係数を関数h(N)で表す。これにより、値βusに係数として関数h(N)を乗算することで、周辺環境によるセンサ値Nを反映した値βusを求めることができる(βus=βus・h(N))。次に、周辺環境によるセンサ値Nを反映した値βusを所定値βthに定める(ステップ140)。
一方、ステップ134で否定され、オーバーステア状態の場合、ステップ144へ進み、周辺環境によるセンサ値Nを反映した値βosを設定する。オーバーステア状態の閾値となるβosは、予め実験的や経験的に周辺環境によるセンサ値Nとの対応関係を求めておく。この対応関係となる係数を関数j(N)で表す。これにより、値βosに係数として関数j(N)を乗算することで、周辺環境によるセンサ値Nを反映した値βosを求めることができる(βos=βos・j(N))。次に、周辺環境によるセンサ値Nを反映した値βosを所定値βthに定める(ステップ146)。なお、関数h、jは同一関数でもよく、異なる関数でもよい。
なお、上記関数h、jは、連続特性の関数に限定されない。例えば、多項式による不連続特性であってもよく、また、上記係数と車速Vとの対応関係を表すテーブルでもよい。
なお、本補助条件における、ステップ130の処理が本発明の画像検出手段の画像情報を検出する処理を含むことに相当し、ステップ138及び144の処理が本発明の設定手段において画像検出手段の検出結果により設定値を変更する処理に相当する。
これによって、画像情報により自車線認識をして、スリップ側が対向車線である場合やガードレールである場合に、閾値を調整することができる。従って、自動車がアンダーステア状態及びオーバーステア状態の何れかの状態のとき、自動車の周辺環境に応じて閾値を変更することができるので、迅速かつ細やかに乗員保護補助装置12を作動させることができ、乗員の保護を確実行うことができる。
このように、本実施の形態に係るシステムは、予め定めた補助条件により、例えば自動車がアンダーステア状態及びオーバーステア状態の何れかの状態のときに応じて閾値を変更することができるので、迅速かつ細やかに乗員保護補助装置12を作動させることができ、乗員の保護を確実行うことができる。
〔第2実施形態〕
上記実施の形態では、補助条件により設定値(閾値)を変更したが、本実施の形態では、複数の補助条件に合致するときに設定値(閾値)を変更するものである。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と同様の構成であるため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
自動車の操作にあたって、アンダーステア状態やオーバーステア状態が発生したとき、乗員はこれを回避するための操舵などの自動車に対する指示を行う場合がある。ところが、操舵などによる乗員の指示が自動車の挙動に反映されるまでに時間差があるとき、その指示が大きめであったり、反映された自動車の挙動が大きめであったりする。例えば、オーバーステア状態が発生して自動車が不安点状態になった場合、それを解消するために操舵したとき、すなわち逆方向の旋回指示を行ったとき、その時点でオーバーステア状態が発生したときにはさらに逆の旋回指示をしたり、アンダーステア状態が発生したときにはさらに旋回指示を増加したりすることによって、自動車の不安定状態が継続的になる場合がある。 そこで、本実施の形態では、時系列的にオーバーステア状態及びアンダーステア状態の間で補助条件を定めておき、一定時間内にオーバーステア状態及びアンダーステア状態が発生した複数の補助条件に合致するときに、設定値(閾値)を変更するものである。すなわち、本実施の形態では、一定時間内に発生する、アンダーステア状態及びオーバーステア状態を、緊急状態に至るか否かの判断基準に考慮している。
図9には、自動車の操作と、挙動との関係を、特性図として示したものである。図9(A)は、操舵角θと、ヨーレイトYrとの関係を示したものである。図では、乗員が、右旋回ののちに左旋回を指示した場合を想定している。乗員の操舵量は左右の旋回についてほぼ同様であるが、自動車の挙動として現れる車両状態の1つとして、ヨーレイトYrは、左旋回後に大きく増大し、最終的には自動車のスピン状態を招く場合がある。これはオーバーステア状態(アンダーステア状態)が発生した後にこれを回避する自動車の操作(上記の場合は操舵)をすると、その操作量を超えた反動が自動車に現れる、すなわちオーバーステア状態からアンダーステア状態の反動がアンダーステア状態に重畳されるものと考えられる。
そこで、本実施の形態では、車両状態量として、自動車の不安定状態を監視するための第1条件値(図9(A)では値±Yr1)を、実験的または経験的に求めた値を定め、この第1条件値以上のときに自動車が不安定状態にあるとして監視を開始する。この監視中に、自動車の緊急状態に至ることが予想される車両状態(図9(A)では値±Yr2)を、実験的または経験的に求めた値を定め、この第2条件値以上になると乗員保護補助装置12の作動を開始する。また、第1条件値以上の車両状態であっても、実験的または経験的に求めた一定期間を超えた期間では緊急状態に移行する確度が低いという知見も得ている。このため、上記の判断基準に期間制限を考慮する。図9(A)では、第1条件値以上の車両状態となる時点を「△」で示し、第2条件値以上の車両状態となる時点を「□」で示した。
同様に、図9(B)には、図9(A)と同様の状態に、自動車の操作(操舵角θ)と、挙動としてスリップ角βの関係を、特性図として示した。図からも理解されるように、操舵に対して遅れてスリップ角βの結果が現れている。このスリップ角βを採用した場合も同様に、車両状態量として、自動車の不安定状態を監視するための第1条件値(図9(B)では値±β1)を、実験的または経験的に求めた値を定め、この第1条件値以上のときに自動車が不安定状態にあるとして監視を開始する。この監視中に、自動車の緊急状態に至ることが予想される車両状態(図9(B)では値±β2)を、実験的または経験的に求めた値を定め、この第2条件値以上になると乗員保護補助装置12の作動を開始する。また、上記の判断基準に期間制限を考慮することも同様である。図9(B)でも第1条件値以上の車両状態となる時点を「△」で示し、第2条件値以上の車両状態となる時点を「□」で示した。
図9(C)には、図9(B)で採用したスリップ角βに代えて、スリップ角速度dβの特性を示したものである。図からも理解されるように、上記スリップ角βと同様に操舵に対して遅れてスリップ角速度dβの結果が現れている。このスリップ角速度dβを採用した場合も同様に、第1条件値(図9(C)では値±dβ1)を定め、この第1条件値以上のときに自動車が不安定状態にあるとして監視を開始する。この監視中に、自動車の緊急状態に至ることが予想される車両状態(図9(C)では値±dβ2)を定め、この第2条件値以上になると乗員保護補助装置12の作動を開始する。また、上記の判断基準に期間制限を考慮することも同様である。図9(C)でも第1条件値以上の車両状態となる時点を「△」で示し、第2条件値以上の車両状態となる時点を「□」で示した。
以下、車両状態量として、スリップ角βを採用した場合における車両状態予測装置10の具体例を説明する。
図8には、本実施の形態における車両状態予測装置10の動作の流れを示した。本実施の形態では、車両状態としてスリップ角βを採用し、緊急状態に至る可能性が高く監視すべき車両状態を第1条件としてその境界値を第1条件値βst1、緊急状態に至る可能性が高い車両状態を第2条件としてその境界値を第2条件値βst2(βst2≧βst1)として、実験や経験的に求めた値を予め定めている。すなわち、本実施の形態では、基準値βstとして、第1条件値βst1と第2条件値βst2、を有している。また、上記第1条件と第2条件との双方が成立する期間について、実験や経験的に求めた一定期間T1を予め定めている。
すなわち、本実施の形態における補助条件である、第1条件は、車両状態であるスリップ角βが第1条件値βst1以上であることである。また、第2条件は、第1条件が成立してから一定期間T1内に、第1条件が成立したときの車両状態(アンダーステア状態またはオーバーステア状態)と逆の車両状態(オーバーステア状態またはアンダーステア状態)になると共に、そのときの車両状態であるスリップ角βが第2条件値βst2以上であることである。
まずステップ200では、各センサ値が入力される。ここでは、車両状態としてスリップ角βを採用する。また、ステップ200では、第1条件が成立(値「1」)か非成立(値「0」)を表すフラグF1を読み取る。このフラグF1は、乗員保護補助装置12の起動時には非成立とであるため初期値として値「0」がセットされる。また、設定値βthの初期値として予め定めた基準値βstを設定する。なお、この設定値βthは、補述する処理の過程で再設定されるため、このステップで設定しなくてもよい。次のステップ202では、スリップ角βを演算して値を求めることにより車両状態を特定する。次のステップ204では、フラグF1の値を参照することによって、第1条件が成立しているか否かを判断する。
ステップ204で否定されると、ステップ206へ進み、設定値βthとして予め定めた第1条件値βst1を設定する。次のステップ208では、上記ステップ202で得られるスリップ角βが第1条件値βst1以上であるか否かを判断する。この判断は、予め定めた第1条件値βst1以上のスリップ角が、緊急状態に至る可能性が高く監視すべき車両状態の第1条件を成立させる値であるか否かを判断するものである。言い換えれば、アンダーステア状態またはオーバーステア状態が閾値以上であるか(|β|≧βth)を判別することにより、現在の車両状態が緊急状態に至る可能性が高く監視すべき状態か否かを、判断するものである。ステップ208で否定されたときには、第1条件が非成立で監視が不要であるため、ステップ214へ進みタイマーをリセットして終了する。一方、ステップ208で肯定されたときには、ステップ210において、現在のスリップ角βが第1条件を成立させる値であるため、フラグF1を第1条件が成立したことを表す値(「1」)にセットする。次のステップ212では、現在のスリップ角βすなわち第1条件が成立したときのスリップ角βを、暫定スリップ角βtとして記憶する。次のステップ214では、第1条件が成立してからの時間計測を可能とするためにタイマーをリセットする。
一方、ステップ204で肯定された場合、既に第1条件が成立中であるので、ステップ216へ進み、タイマーをアップカウント(T=T+1)し、次のステップ218において、タイマーカウント値Tが一定期間T1内(T≦T1)であるか否かを判断する。ステップ218で否定された場合には、第1条件が成立したが監視すべき一定期間T1を経過したときであるので、通常走行状態または初期状態へ移行するために、ステップ228へ進みフラグF1をリセット(F1=0)し、ステップ230で暫定スリップ角βtをリセット(βt=0)して、本ルーチンを終了する。
タイマーカウント値Tが一定期間T1内(T≦T1)である場合、ステップ218で肯定され。ステップ220へ進む。ステップ220では、一定期間T1内にアンダーステア状態及びオーバーステア状態の双方の状態が発生したか否かを判断する。この判断は、現在のスリップ角βと、暫定スリップ角βtの乗算結果の符号を参照することで行われる。同一状態であるときは、正符号であり、双方の状態が発生したときは負符号である。ステップ220で否定されたときは、そのまま本ルーチンを終了し、肯定されたときは、ステップ222へ進む。ステップ222では、設定値βthとして予め定めた第2条件値βst2を設定する。
次のステップ224では、上記ステップ202で得られるスリップ角βが第2条件値βst2以上であるか否かを判断する。この判断は、第2条件値βst2以上のスリップ角が、緊急状態に至る可能性が高い車両状態の第2条件が成立されたか否かを判断するものである。言い換えれば、第1条件が成立した車両状態と逆のアンダーステア状態またはオーバーステア状態が閾値以上であるか(|β|≧βth)を判別することにより、第1条件成立中に車両状態が緊急状態に至る可能性が高い状態になったかか否かを、判断するものである。ステップ224で否定されたときには、車両状態が緊急状態に至る可能性は低いが監視について継続するために、そのまま本ルーチンを終了する。
一方、ステップ224で肯定されたときには、乗員保護補助装置12を作動させるためにステップ226において指示信号を出力して乗員保護補助装置12を作動させる。この後は、通常走行状態または初期状態へ移行するために、ステップ228においてフラグF1をリセット(F1=0)し、次のステップ230において暫定スリップ角βtをクリア(βt=0)して本ルーチンを終了する。
これにより、自動車が不安定な状態を継続しているときに緊急状態へ移行するような場合、例えばアンダーステア状態及びオーバーステア状態の何れかの状態に移行して一定時間内に逆の車両状態に移行する場合であっても、車両状態を関しする閾値を設定すると共に、一定時間を計測すると共に、第2の設定値(第2条件値βst2)に変更することができるので、自動車の不安定な状態を監視しつつ緊急状態に至ることが予測されるときに迅速に乗員保護補助装置12を作動させることができ、乗員の保護を確実行うことができる。
上述のように、本実施の形態における、ステップ204乃至230の処理が本発明の変更手段の処理を含むことに相当する。
なお、上記車両状態予測装置10の動作(図8)では、スリップ角βを採用したが、本発明は、これに限定されるものではなく、スリップ角速度dβでもよく、ヨーレイトYrを採用しても良い。
また、上記では、車両状態量であるスリップ角βとして、センサ値から求まるものを採用しているが、車速及び操舵角等から求めた目標スリップ角βxを採用してもよい。この場合、検出したセンサ値によるスリップ角βと目標スリップ角βxとの差異が、実際のずれとなり自動車の挙動に現れることになる。そこで、計算による目標スリップ角βxに対するセンサ値によるスリップ角βの差を実スリップ角βr(=βx−β)として車両状態量に採用する。これによって、乗員の操作による目標値と実測値との双方を考慮することが可能となる。
この目標値を採用する場合、ヨーレートを車両状態量とするときにさらに効果がある。すなわち、ヨーレートは操舵角と車速などにより目標ヨーレートYrxが容易に計算できる。そこで、車両状態量として計算による目標ヨーレートYrxに対するセンサ値によるヨーレイトYrの差を実スリップ角Y(=Yrx−Tr)を採用する。これによって、乗員の指示に対応する自動車の挙動に即した判定を容易に行うことができ、迅速かつ確実に乗員保護補助装置12を作動させて乗員の保護を確実行うことができる。