JP2005291956A - 糖の除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 試料中の低分子量糖類を除去して糖鎖を有する高分子量物質を高精度で分析すること。
【解決手段】 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料中の該高分子量物質を分析する方法が提供される。この方法においては、試料から低分子量糖類を除去した後、糖鎖解析用装置に試料を供する。好ましくは、低分子量糖類除去工程において、試料を限外ろ過するか、試料に低分子量糖類分解酵素を作用させて前記低分子量糖類を分解するか、または、試料に低分子量糖類捕捉試薬を作用させて前記低分子量糖類を除去する。低分子量糖類が除去された試料を用いて質量分析などの分析を行うことにより、高分子量物質の糖鎖を高精度で分析することが可能になる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料中の高分子量物質を分析する方法に関する。特に、本発明は、低分子量糖類による悪影響を排除して高分子量物質のみの糖鎖の構造を高精度で測定する方法に関する。本発明は、1つの実施態様において、血清中・血漿中に含まれる糖鎖を有する化合物中の糖鎖を分析する方法に関する。
従来から各種糖鎖の構造についての研究が行われていたが、血清をサンプルとして糖鎖捕捉分子により糖鎖を捕捉しようとしたことがなかったため、グルコースなど遊離低分子量糖がどのような影響を与えるかは不明であった。また、ゲル濾過やイオン交換など従来法で糖鎖を精製し、標識してHPLCで解析する場合には、グルコースの影響はなかった。
例えば、非特許文献1には、HPLCで糖鎖を分析する方法が記載されているが、このような方法においては、グルコースを除去する必要がなかった。
Nakagawa,H., Kawamura,Y.,Kato,K.,Shimada,I.and Takahashi,N.:Identification of Neutral and Sialyl N−Linked Oligosaccharide Structures from Human Serum Glycoproteins Using Three Kinds of High− Performance Liquid Chromatography.Analytical Biochem.,226,130−138(1995)
以下、本発明を説明する。
本発明は、試料中(例えば、血液中、血清中、血漿など)の低分子量糖類(例えば、グルコース、ガラクトースなど)を除去する方法を提供することを課題とする。特に、試料中の糖鎖パターンを損なわずに血中のグルコースを除去する方法を提供することを本発明は課題とする。
本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
本発明によれば、以下の方法が提供され、そのことにより上記の課題が解決される。
(1) 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から低分子量糖類を除去する方法。
(2) 以下の工程:
1)糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から低分子量糖類を除去する工程、および
2)低分子量糖類が除去された試料を用いて糖鎖解析を行う工程
を包含する、糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から該糖鎖を解析する方法。
(3) 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料を限外ろ過することにより低分子量糖類を除去する上記(1)または(2)記載の方法。
(4) 試料が血清であり、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクであり、および限外ろ過に使用されるフィルターを通過できる分子量の上限が3000〜30000の間である上記(3)記載の方法。
(5) 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料を低分子量糖類分解酵素で処理することにより低分子量糖類を除去する上記(1)または(2)記載の方法。
(6) 試料が血清であり、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクであり、低分子量糖類がグルコースであり、および低分子量糖類分解酵素がグルコースオキシダーゼである上記上記(5)記載の方法。
(7) 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料を糖類捕捉試薬で処理することにより低分子量糖類を除去する上記(1)または(2)記載の方法。
(8) 試料が血清であり、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクであり、および糖類捕捉試薬がL−システインエチルエステル塩酸塩またはオキシアミノ基を有する糖鎖捕捉樹脂である上記(7)記載の方法。
本発明によれば、血中の糖タンパク質から切り出された糖鎖を捕捉し、糖鎖分析をする際に分析の精度に悪影響を与える血中低分子量糖類(例えば、グルコース)を除去する方法が提供される。
本発明の方法によれば、試料中の低分子量糖類を除去した後においても、糖鎖パターンが損なわれず、高精度で糖鎖の分析を行うことができる。
本発明の方法は、糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から低分子量糖類を除去する方法である。
(糖鎖を有する高分子量物質)
本発明の方法は、糖鎖を有する高分子量物質の糖鎖解析に応用される。
糖鎖とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸、これらの誘導体である単糖がグリコシド結合で繋がった分子などを含む総称である。糖鎖は、非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。
本明細書において「糖鎖」とは、単位糖(単糖および/またはその誘導体)が2つ以上連なってできた化合物をいう。各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸ならびにそれらの複合体および誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。したがって、本明細書では、糖鎖は、「多糖(ポリサッカリド)」、「糖質」、「炭水化物」と互換可能に使用され得る。また、特に言及しない場合、本明細書において「糖鎖」は、糖鎖および糖鎖含有物質の両方を包含することがある。
本明細書において「糖鎖を有する高分子量物質」とは、糖鎖および糖鎖以外の物質を含む物質をいう。このような「糖鎖を有する高分子量物質」は、生体内に多く見出され、例えば、生体中に含有される多糖類の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「糖タンパク質」としては、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、抗体、ワクチン、レセプター、血清タンパク質などが挙げられるがそれらに限定されない。
(低分子量糖類)
本明細書において、低分子量糖類とは、単糖類もしくはオリゴ糖類であって、分子量が上述した高分子量物質の分子量よりも小さいものをいう。分子量の上限は、分析対象とする高分子量物質よりも小さい限り特に限定されないが、好ましくは、例えば、数平均分子量約3000程度である。
1つの実施態様において、本発明の方法により除去されるべき低分子量糖類は、グルコースおよびガラクトースである。特にグルコースは血液中に大量に存在し、血液中の高分子量物質の糖鎖を遊離した後に糖鎖捕捉分子にて捕捉精製する際にノイズとなり、高分子量物質の分析精度を著しく低下させるが、本発明によれば、グルコースを除去して分析精度を著しく向上させることができる。
本明細書において「単糖」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式C2nで表される化合物をいう。ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9および10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース,後者をケトースという。上記一般式C2nにおいてnが10以下のものは、低分子量糖類の代表的な例である。なお、本明細書において、「アルデヒド」とは、特性基である−CHOを含むものを総称したものをいう。
本明細書において「単糖の誘導体」とは、単糖上の一つ以上の水酸基が別の置換基に置換され、結果生じる物質が単糖の範囲内にないものをいう。そのような単糖の誘導体としては、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グルクロン酸)、アミノ基またはアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンなど)、アミノ基およびカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などがあるがそれらに限定されない。あるいは、ヘミアセタール構造を形成した糖において、アルコールと反応してアセタール構造のグリコシドもまた、単糖の誘導体の範囲内にある。
本発明においては、このような単糖の誘導体も、低分子量糖類に含まれる。
(試料)
本明細書において「試料」とは、糖鎖が還元末端にて結合した高分子量物質と、アルデヒド基を提示しうる低分子量糖類とを含むものであれば、どのような起源のものをも使用することができる。したがって、試料は、生物の全部または一部から取り出された生物学的材料であり得るが、それに限定されない。別の実施形態において、試料は、合成技術によって合成されたものであり得る。
好ましい試料の例としては、血清、血液、血漿、唾液、尿、関節液が挙げられる。より具体的には例えば、ヒトの血清、ヒトの血漿である。
(アルデヒド基と反応し得る官能基)
本明細書において「アルデヒド基と反応し得る官能基」とは、糖鎖のアルデヒド基と反応して特異的かつ安定な結合をつくることができる性質を有する官能基をいう。このような官能基としては、オキシアミノ基、N−アルキルオキシアミノ基、ヒドラジド基およびチオセミカルバジド基およびそれらの誘導体、ならびにシステイン誘導体が挙げられるがそれらに限定されない。より好ましくは、そのような官能基は、オキシアミノ基およびシステイン誘導体である。オキシアミノ基と糖との連結様式(オキシム結合)は特に酸性に弱く、糖鎖捕捉担体から糖鎖を切り出す工程が容易に行えるという利点があるからである。
(糖鎖解析)
本明細書において、糖鎖解析とは、糖鎖を有する高分子量物質の糖鎖の構造を解析することをいう。例えば、分光分析装置、好ましくは、赤外分光光度計、紫外分光光度計、可視分光光度計、質量分析計、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、X線解析、元素分析などの物理的分析、化学的特異的反応を観察することなどによる化学的分析、酵素の基質特異性などを判定することによる生化学的分析、あるいは、生物(例えば、細菌などの微生物)の反応を判定することなどによる生物学的分析などが挙げられるがそれらに限定されない。例えば、赤外線スペクトル分析、紫外線スペクトル分析、可視光線スペクトル分析、質量分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、X線解析、元素分析などの物理的分析、化学的特異的反応を観察することなどによる化学的分析、酵素の基質特異性などを判定することによる生化学的分析、あるいは、生物(例えば、細菌などの微生物)の反応を判定することなどによる生物学的分析などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは物理的分析方法であり、より好ましくは分析用機器を用いた物理的分析方法である。さらに好ましくはクロマトグラフィー、分光分析または質量分析であり、いっそう好ましくは質量分析または液体クロマトグラフィーである。特に好ましくは質量分析またはHPLCである。
本発明の方法における質量分析には、任意のイオン化手法(例えば、エレクトロスプレー(ESI)法、超音波スプレー(SSI)法、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法)を使用する当該分野一般的に利用される任意の質量分析方法が利用できる。本発明の方法における質量分析には、任意の質量分離方式(例えば、飛行時間型(TOF)、四重極型、磁場型)が使用され得る。好ましい実施形態において、質量分析は、ESI−磁場型MSまたはMALDI−TOF MSにより行われる。
本明細書において「MALDI−TOF(MS)」とは、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization − Time−of−Flight(Mass Spectrometer)の略語である。MALDIとは、田中らによって見いだされ、Hillenkampらによって開発された技法である(Karas M.,Hillenkamp,F.,Anal.Chem.1988,60,2299−2301)。この方法では、試料とマトリクス溶液をモル比で(10−2〜5×10−4):1に混合した後、混合溶液を標的上で乾固し、結晶状態にする。パルスレーザー照射により、大きなエネルギーがマトリクス上に与えられ、(M+H)、(M+Na)などの試料由来イオンとマトリクス由来イオンとが脱離する。微量のリン酸緩衝液、Tris緩衝液、グアニジンなどで汚染されていても分析可能である。MALDI−TOF(MS)は、MALDIを利用して飛行時間を元に質量を測定するものである。イオンが一定の加速電圧Vで加速される場合、イオンの質量をm、イオンの速度をv、イオンの電荷数をz、電気素量をe、イオンの飛行時間をtとしたとき、イオンのm/zは、
m/z=2eVt/L
で表すことができる。このようなMALDI−TOF測定には、島津/KratosのKOMPACT MALDI II/IIIなどを使用することができる。その測定の際には、製造業者が作成したパンフレットを参照することができる。
上述した各種分析方法には、その分析方法に応じた従来公知の各種分析装置を用いることができる。
(低分子量糖類除去工程)
低分子量糖類を除去する工程においては、高分子量物質の糖鎖部分の構造に影響を与えずに低分子量糖類を除去し得る限り、任意の方法が使用可能である。
(限外ろ過方法)
本発明の1つの実施態様においては、試料(例えば、血清)を限外ろ過することにより、試料中の低分子量糖類(例えば、グルコース)がろ過される。また、限外ろ過により一部の糖タンパク質も除去されて、糖鎖パターンが変化する恐れがあるが、本条件では糖鎖パターンも変化しないことを確認した。
限外ろ過方法としては、従来公知の限外ろ過方法が使用可能である。
好ましくは、分子量3000以下の糖類を除去するように限外ろ過の条件が設定される。
限外ろ過に用いる装置としては、従来公知の任意の限外ろ過装置が使用可能である。
フィルターとしては、限外ろ過に使用可能な任意のろ過膜が使用可能である。したがって、限外ろ過膜が使用可能であり、透析膜も使用可能である。
限外ろ過に用いるフィルターの材料としては、従来公知の任意の材料が使用可能である。例えば、再生セルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルなどが使用可能である。再生セルロースの限外ろ過膜が最も好ましい。
フィルターを通過し得る分子量の上限は、分析の対象となる高分子量物質の分子量と、除去されるべき低分子量糖類の分子量とを勘案して適宜選択することができる。例えば、分析の対象となる高分子量物質の分子量の下限を、フィルターを通過し得る分子量の上限とすることができる。一般的には、通過し得る分子量の上限が1000〜30000となるようなフィルターを選択することが好ましく、より好ましくは通過し得る分子量の上限が3000〜10000となるようなフィルターである。
(低分子量糖類分解酵素)
低分子量糖類分解酵素としては、低分子量糖類を分解できる任意の酵素が使用できる。好ましくはグルコースオキシダーゼである。グルコースオキシダーゼを用いれば、グルコースを酸化してラクトンにすることが可能である。
また、グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼを合わせて用いてもよい。カタラーゼを併用すれば、グルコースオキシダーゼの反応により生成する過酸化水素を分解することができ、いっそう、グルコースオキシダーゼの反応を促進することができる。
(グルコースオキシダーゼ)
グルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)は、以下の反応:
β−D−グルコース+O → D−グルコノ−δ−ラクトン+H
を触媒する酵素である。
グルコースオキシダーゼとしてはデオキシン(Penicillium amagasakiense)〔長瀬産業〕及びハイデラーゼ15(Asp.nigar)〔天野製薬〕;等の市販の酵素製剤を使用することができる。
(カタラーゼ)
カタラーゼ(EC1.11.1.6)は、過酸化水素の分解反応:
+ H → O + 2H
を触媒する酵素である。カタラーゼとしては、任意の市販の酵素製剤を使用することができる。
(酵素の使用条件)
試料に酵素を作用させる条件としては、その酵素に応じた任意の公知の条件が使用可能である。温度については、1つの実施態様では、35℃〜40℃であり、好ましい実施態様では、37℃である。反応時間は特に限定されないが、好ましくは、30秒以上であり、より好ましくは1分以上であり、さらに好ましくは、2分以上である。また、反応時間は、好ましくは、3日間以下である。1つの実施態様では、1時間〜3日間であり、好ましい実施態様では、12時間〜2日間である。反応時間が長すぎると、全体の作業時間が長くなる。逆に反応時間が短すぎると、低分子量糖類を充分に分解できない場合がある。
(低分子量糖類捕捉試薬)
低分子量糖類捕捉試薬としては、低分子量糖類を捕捉し得る任意の試薬が使用可能である。このような試薬としては、例えば、糖のアルデヒド基と反応し得る基(例えば、オキシアミノ基、N−アルキルオキシアミノ基、ヒドラジド基およびチオセミカルバジド基)を有する試薬が挙げられる。例えば、L−システインエチルエステル塩酸塩または糖鎖捕捉樹脂が使用可能である。好ましくは、末端にオキシアミノ基を有する樹脂である。
糖鎖捕捉樹脂は、従来公知の樹脂に、アルデヒド基と反応し得る基を導入することにより製造することができる。使用され得る樹脂としては例えば、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等を用いることができる。これらの樹脂は、必要に応じて、架橋されていてもよい。
アルデヒド基と反応し得る基を導入する方法としては、樹脂に置換基を導入する方法として公知の任意の方法を使用することができる。例えば、アルデヒド基と反応し得る基を有するエチレン性不飽和モノマーを上記各種樹脂の不飽和モノマーと共重合させる方法などの方法が可能である。
得られた糖鎖捕捉樹脂は、任意の形態で使用することができる。1つの実施態様では、粒子の形態とすることができる。糖鎖捕捉樹脂の粒子は、好ましくは、水または有機溶媒中に分散される。糖鎖捕捉樹脂の平均粒径は特に限定されないが、好ましくは0.001ミクロン以上1mm以下であり、より好ましくは0.1ミクロン以上500ミクロン以下である。
(低分子量糖類捕捉試薬の使用条件)
試料に低分子量糖類捕捉試薬を作用させる条件としては、その試薬に応じた任意の公知の条件が使用可能である。温度については、1つの実施態様では、35℃〜40℃であり、好ましい実施態様では、37℃である。反応時間は特に限定されないが、好ましくは、30秒以上であり、より好ましくは1分以上であり、さらに好ましくは、2分以上である。また、反応時間は、好ましくは、3日間以下である。1つの実施態様では、1時間〜3日間であり、好ましい実施態様では、12時間〜2日間である。
低分子量糖類捕捉試薬の使用量は、化学量論的に計算され得る。例えば、その試薬が有するアルデヒド基と反応し得る基(例えばオキシアミノ基)1モルに対して、試料中の低分子量糖類が、0.1〜1モルになるように配合することが好ましい。より好ましくは0.2〜0.8モルになるように配合する。
なお、使用済みの糖類捕捉試薬は、必要に応じて再利用することができる。例えば、糖類捕捉試薬としてオキシアミノ基を有するものを用いた場合には、オキシアミノ基と糖との連結様式(オキシム結合)が酸性に弱い性質を利用して、酸で処理するなどの方法により、糖類捕捉試薬から糖類を切り出して、糖類捕捉試薬を容易に再利用することができる。
(低分子量糖類を除去した後の測定)
低分子量糖類が除去された試料に対しては、各種の方法を用いて糖鎖解析を行うことができる。糖鎖解析の方法としては、用語「糖鎖解析」について上述したいずれの方法を用いてもよい。
糖鎖を有する高分子量物質が、糖鎖部分と糖鎖以外の部分とが結合した化合物である場合には、糖鎖以外の部分を分解して、糖鎖のみを遊離させた後に糖鎖解析を行うことが好ましい。
例えば、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクである場合には、低分子量糖類を除去した後に、糖タンパクのタンパク部分を分解し、そして糖鎖を切り出して遊離させた後に、糖鎖捕捉樹脂により遊離した糖鎖を捕捉して解析することが好ましい。
糖タンパクのタンパク部分を分解する方法としては、任意の方法が可能であり、例えば、タンパク質を分解する酵素を用いることができる。タンパク質を分解する酵素としては、任意のペプチダーゼが使用可能であり、具体例としては、トリプシンおよびキモトリプシンなどが挙げられる。酵素反応の手順としては、例えば、試料を適切な溶媒(例えば、pH8.0のTris緩衝液または重炭酸アンモニウム溶液)に酵素を添加して、その酵素の反応に適切な温度(例えば、37℃)で、その酵素が充分に反応し得る適切な時間(例えば、好ましくは1分間〜3日間、反応速度があまり速くない反応系の場合には例えば1時間〜3日間)反応させることによりタンパク質を分解することができる。
糖鎖を切り出して遊離させる方法としては、試料中の糖鎖のアルデヒド基を遊離させる任意の方法が可能である。
本明細書において「糖鎖のアルデヒド基を遊離させる」とは、糖鎖または糖鎖含有物質中のアルデヒド基をむき出しにさせることをいう。また、ガラクトースオキシダーゼによるガラクトース残基および6位アルデヒド基の生成、ならびにジオール基の過ヨウ素酸分解によるアルデヒド基の生成も包含する。試料中のアルデヒド基を遊離させることにより、その後、本発明の糖鎖と特異的に相互作用する物質と、その糖鎖または糖鎖含有物質との間の相互作用反応の進行がより容易になる。あるいは、試料中のアルデヒド基を遊離させる条件に試料を曝すことにより、糖鎖含有物質中の糖鎖のみを分離して濃縮、精製または分析などを行うことができ、そのような状態が所望される場合、有利であり得る。
そのような試料中のアルデヒド基を遊離させるための条件としては、例えば、酵素処理および/または化学法による供プロトン反応が挙げられるがそれらに限定されない。そのような酵素処理としては、例えば、N−グリコシダーゼ(例えば、Flavobacterium meningosepticum由来の酵素をE.coli中で発現させたもの)、グリコペプチダーゼA(アーモンド)などの糖鎖遊離酵素により処理が挙げられるがそれに限定されない。本発明において用いられるこのような酵素には、植物、酵母、かび由来のグルコシダーゼ、好ましくはフラボバクテリウム由来のN−グルコシダーゼが包含されるがそれらに限定されない。化学法としては、例えば、ヒドラジン分解(液相または気相)が挙げられるがそれに限定されない。ヒドラジン分解では、例えば、試料(例えば、200〜1000μgの糖タンパク質含有試料)を凍結乾燥し(ネジ口バイアルまたはネジ口試験管を使用)、無水ヒドラジン(例えば、100〜200μlを加えて100℃で数時間ないし十数時間加熱する(例えば、ドライブロックヒーターまたはオーブンを使用)。その後、トルエンを数滴加え、デシケーターに試料バイアルを入れ、冷却トラップを付けた真空ポンプで数時間以上減圧しヒドラジンを共沸留去する。この共沸留去を数回繰り返し、ヒドラジンを完全に留去することによって、ヒドラジン分解が達成され、所望の糖鎖が分離される。
具体的な手順としては例えば、試料に適切な酵素(例えば、N−グリコシダーゼ)を添加し、適切な温度(例えば、37度)で適切な時間(例えば、30秒間〜1日間)反応させることにより糖鎖が切り出される。
このようにして切り出されて遊離した糖鎖は、そのまま解析装置(例えば、液体クロマトグラフィーおよび質量分析)により解析してもよいが、例えば、糖鎖捕捉樹脂により捕捉した後に解析することが好ましい。糖鎖捕捉樹脂としては、上記低分子量糖類捕捉試薬に関して説明した任意の糖鎖捕捉樹脂が使用可能である。
(本明細書において用いられる一般技術)
なお、本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に記載しない限り、当該分野の技術範囲内にある、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用し得る。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al.eds,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997;畑中、西村ら、糖質の科学と工学、講談社サイエンティフィク、1997;糖鎖分子の設計と生理機能 日本化学会編、学会出版センター、2001などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
<実施例1>
ヒト血清を100mM NHHCOで10倍希釈し、遠心式フィルターユニット(Microcon YM−10 Centrifugal Filter Device、分画分子量10,000)を用いて限外ろ過を行った。ろ過されずに残った未透過物の画分(Retentate)を回収し、グルコース測定キットを用いてグルコース量を測定したところ、ろ過前の3.4%であり、限外ろ過によりグルコースが除去されたことが確認された。
Retentate画分につき、酵素処理により糖タンパク質から糖鎖を切り出し、糖鎖捕捉粒子を用いて糖鎖捕捉実験を行った。
糖鎖捕捉粒子は、以下のとおりに調製した。すなわち、糖鎖捕捉分子15mgとPCPDA 45.0mgをクロロホルム10mLに溶かして混合し、濃縮後、水40mLを加え、85℃で10分加熱、その後40分間超音波照射することにより、ベクシル化した。氷上で10分間冷却後、孔径0.45μmのフィルターでろ過し、アルゴンガスを流しながら氷上でUV(254nm)を2時間照射することにより、重合させた。これを、孔径0.45μmのフィルターでろ過したもの36mLを、55℃で3時間遠心濃縮し、400μLとした。
対照として、限外ろ過未処理の血清についても、同様に行った。捕捉した糖鎖を遊離させ、MSを測定したところ、限外ろ過未処理のサンプルについては、MSのピークは全く観測されなかったが、限外ろ過後のサンプルでは、図1に示すように、糖鎖由来のMSピークが観測された。従って、血清中の糖タンパク質糖鎖の捕捉において、グルコースの除去が有効であることが確認された。
また、同様に限外ろ過によってグルコースを除去した血清につき、糖タンパク質の糖鎖パターンを分析した。まず、限外ろ過により、タンパク質の漏れや吸着がないことを確認するため、Retentate画分及びろ過されたFiltrate画分につき、SDS−PAGEを行った。結果を図2に示す。Retentate画分は、限外ろ過前の血清と同様の泳動パターンを示し、Filtrate画分には、タンパク質は認められなかった。次に、各画分につき、酵素処理により糖タンパク質から糖鎖を切り出し、その糖鎖をゲルろ過により精製、2−アミノピリジンで蛍光標識し、ODSカラムを用いてHPLC分析を行った。得られたクロマトグラムを図3A〜3Cに示す。また、限外ろ過未処理の血清と限外ろ過後のRetentate画分について、糖鎖パターンの比較(全ピークに対する各ピークの面積比)を図4に示す。Filtrate画分には糖鎖は検出されず、また、限外ろ過による糖鎖パターンの変化も認められなかった。
以上のことから、限外ろ過による血清中グルコース除去は、糖タンパク質由来の糖鎖パターンに影響を与えずに、糖鎖捕捉の効率を上げた。
<実施例2>
ヒト血清にグルコースオキシダーゼ及びカタラーゼを添加したサンプル、及びヒト血清にグルコースオキシダーゼのみを添加したサンプルを調製し、37℃でインキュベートした。0〜30分後の反応液につき、オルシノール−硫酸法を用いて糖を定量し、グルコースの残存率を求めた。結果を図5に示す。血清中グルコースが、グルコースオキシダーゼにより減少したことが確認された。
<実施例3>
ヒト血清1mL当たり、L−システインエチルエステル塩酸塩 3mgを加え、37℃で一晩振とうさせた。反応前後のグルコース量につき、グルコース測定キットを用いて測定し、残存率を求めた。結果を表1に示す。
血清中グルコースが、L−システインエチルエステルと反応して減少したことが確認された。
<実施例4>
10mg/mLグルコース溶液1mLに、糖鎖捕捉樹脂 1gを加え、37℃で一晩振とうさせた。反応前後のグルコース量につき、グルコース測定キットを用いて測定し、残存率を求めた。用いた樹脂の構造及び結果を表2に示す。
なお、実施例4Aの糖鎖捕捉樹脂のベース樹脂部分すなわちRの部分は、スチレンと1%ジビニルベンゼンの共重合体であり、樹脂1gあたり、0.50〜1.30mmolの官能基がついている。実施例4BのRの部分は、架橋度の低いポリスチレンとポリエチレングリコールとの共重合体であり、樹脂1gあたり、0.20〜0.30mmolの官能基がついている。
グルコースが糖鎖捕捉樹脂と反応し、減少したことが確認された。
本発明は、上述した構成であるので、血清のような試料中の糖鎖を有する高分子量物質の分析に非常に有効である。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
限外ろ過サンプルの糖鎖捕捉後のMSスペクトル 限外ろ過前後の血清SDS−PAGE 限外ろ過未処理血清のクロマトグラム 限外ろ過後Retentate画分のクロマトグラム 限外ろ過後Filtrate画分のクロマトグラム 限外ろ過未処理血清と限外ろ過後Filtrate画分の糖鎖パターンの比較 グルコースオキシダーゼによる血清中グルコース量の変化

Claims (8)

  1. 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から低分子量糖類を除去する方法。
  2. 以下の工程:
    1)糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から低分子量糖類を除去する工程、および
    2)低分子量糖類が除去された試料を用いて糖鎖解析を行う工程
    を包含する、糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料から該糖鎖を解析する方法。
  3. 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料を限外ろ過することにより低分子量糖類を除去する請求項1または2記載の方法。
  4. 試料が血清であり、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクであり、および限外ろ過に使用されるフィルターを通過できる分子量の上限が3000〜30000の間である請求項3記載の方法。
  5. 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料を低分子量糖類分解酵素で処理することにより低分子量糖類を除去する請求項1または2記載の方法。
  6. 試料が血清であり、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクであり、低分子量糖類がグルコースであり、および低分子量糖類分解酵素がグルコースオキシダーゼである請求項5記載の方法。
  7. 糖鎖を有する高分子量物質と低分子量糖類とを含有する試料を糖類捕捉試薬で処理することにより低分子量糖類を除去する請求項1または2記載の方法。
  8. 試料が血清であり、糖鎖を有する高分子量物質が糖タンパクであり、および糖類捕捉試薬がL−システインエチルエステルまたはオキシアミノ基を有する糖鎖捕捉樹脂である請求項7記載の方法。
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