JP2005291962A - 超音波遠隔探傷装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】超音波センサと被検査面との間に接触媒質を長期間安定的に保持し、構造物の酸化劣化による厚みの減少および損傷の有無、程度を遠隔地から正確に精度よく超音波計測すること。
【解決手段】本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、被検査体12に取り付けられた容器15と、この容器15内に接触媒質14を供給する接触媒質供給手段16と、前記容器15内に収納され、被検査体12の表面に接触可能な超音波センサ11と、前記容器15に設けられ、超音波センサ11を被検査体12の表面に進退可能に押圧接触するシリンダ装置17と、このシリンダ装置17から延びる作動ロッド28に設けられた撹拌手段30とを有し、撹拌手段30により容器15内に収容された接触媒質14を対流移動させたものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属・非金属・セラミックス等の構造体を遠隔地から超音波探傷する超音波非破壊探傷技術に係り、特に、鉄塔、鉄橋、石油タンク等の構造物の損傷の有無や程度を遠隔地から判断可能な超音波遠隔探傷装置に関する。
鉄塔、鉄橋、石油タンク等からなる構造物(構造体)は、5年、10年と時間が経過するに伴ない酸化作用が進展し、鉄構造材の厚みが薄く弱くなったり、損傷の程度が進展し、倒壊の危険性が生じてくる虞がある。構造物の余寿命を正確に診断することは、社会の安全を担う上で重要な課題となっている。
構造物の劣化の程度を認識し、損傷の有無および程度を判断するには、構造物を構成している部材材料の厚みを計測したり、損傷の有無および程度を診断し、構造物の機械的・物理的強度がどの程度低下しているか否かを正確に診断することが必要である。
この種の超音波探傷装置として、特開平9−292373号公報に記載された超音波探傷技術および特開平2−2933号公報に記載された超音波探傷装置がある。
前者の超音波探傷技術は、原子炉圧力容器内の制御棒駆動機構(CRD)ハウジングとCRDスタブチューブ間の隙間のように、人のアクセスが困難な狭隘部へ、超音波探傷試験のためのカプラント液を加圧供給し、封入するものである。この超音波探傷試験のためのカプラント液封入技術は、狭隘部である狭い隙間にカプラント液を封入することができるために、最終的にはCRDスタブチューブと原子炉圧力容器下鏡の溶接部を超音波探傷試験することができることが記載されている。しかし、狭隘部の超音波探傷試験をどのように行なうかの具体的な開示は一切ない。
また、後者の超音波探傷装置は、カプラント液の貯蔵タンクを備え、この貯蔵タンクに貯えられたカプラント液を、貯蔵タンクの姿勢如何に関わりなく、探触子と構造物の被探傷面との間に供給し、構造物の溶接線に沿って移動しながら、応力腐食割れ等の有無を検査するものである。
特開平9−292373号公報 特開平2−2933号公報
前者の超音波探傷技術は、人のアクセス困難な狭隘部へカプラント液を加圧供給し、封入する技術の開示があるが、カプラント液を封入した狭隘部を超音波探傷する具体的な超音波探傷技術の開示はない。
一方、後者の超音波探傷装置は、構造物の被検査面(被探傷面)側に探触子を昇降機構により押圧移動させ、圧縮空気供給装置からの圧縮空気の押圧作用により、探触子を被検査面に押圧接触させているが、探触子の押圧力が圧縮空気の空気圧に依存するため、押圧力が均一ではなく、バラツキが生じる。
探触子を被検査面に押圧する押圧接触力にバラツキが生じると、探触子と被検査面との間からカプラント液が漏出したり、探触子と被検査面の間に空気が流入し、流入された空気がカプラント液と混入し、被検査面を正確で精度のよい超音波探傷が困難となる虞がある。
また、鉄塔、鉄橋、石油タンク等からなる構造物は、大型のものが多く、構造物の頂上や高所な側壁の部材の板厚を計測したり、損傷の有無や程度を診断し、超音波探傷することは、足場が悪く困難である。
後者の超音波探傷装置は、被検査面に吸着可能な外側脚と内側脚とを複数対ずつ設け、各脚と移動機構の協働作用により、内側脚と外側脚を交互に作動させ、脚歩行により移動させるようになっているが、脚歩行に複雑な機構やシーケンス制御が必要となったり、また、足場の悪い箇所で超音波探傷装置の移動や保持に困難性を伴ない、超音波探傷装置を安定的に保持することが困難であった。
さらに、超音波探傷装置を長期間所定の箇所に据え付け、構造物の板厚計測や損傷の有無、程度の計測を定期的に行ない、構造物全体の寿命を予測する場合、探触子に着けたカプラント液の粘度が高く、粘性が大きくても、時間が経つに連れてカプラント液が流れ落ちたり、また、大気中の酸素で酸化劣化するため、超音波波形感度が大きく低下し、板厚計測や損傷の有無、程度の計測が不正確になる虞があった。カプラント液が探触子と被検査面との間隙から下方に流れ落ちて枯渇すると、超音波エコー信号が得にくくなる虞があった。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、超音波センサと被検査面との間に接触媒質を長期間に亘り安定的に保持でき、構造物の酸化劣化による厚さの減少および損傷の有無や程度を遠隔地から非破壊にて超音波計測することができる超音波遠隔損傷装置を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、超音波センサを被検査面に所定の押圧力で安定的にかつ精度よく押圧接触させ、被検査面の超音波探傷を容易にかつ精度よく定期的に行なうことができる超音波遠隔探傷装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、超音波センサと被検査面の間から接触媒質が漏出したり、接触媒質の空気が混入するのを未然にかつ正確に防止し、被検査面を正確で精度のよい超音波探傷を容易に行なうことができる超音波遠隔探傷装置を提供することにある。
本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、被検査体に取り付けられた容器と、この容器内に接触媒質を供給する接触媒質供給手段と、前記容器内に収納され、前記被検査体の表面に接触可能な超音波センサと、前記容器に設けられ、上記超音波センサを被検査体の表面に進退可能に押圧接触するシリンダ装置と、このシリンダ装置から延びる作動ロッドに設けられた撹拌手段とを有し、上記撹拌手段により容器内に収容された接触媒質を対流移動させたものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、前記容器は、被検査体に着脱可能にかつ液密に取り付けられて、密閉状態を構成する密閉容器である。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項3に記載したように、前記シリンダ装置は、ピストンを収容したエアーシリンダと、上記ピストンを超音波センサ側にばね付勢するばね押圧手段と、上記ピストンをばね押圧手段の押圧力に抗して後退させる空気圧力を作用させるエアー供給手段とを有し、上記ばね押圧手段により超音波センサを被検査体の表面に押圧接触させたものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項4に記載したように、前記接触媒質供給手段は、接触媒質を貯溜する貯溜タンクを備え、この貯溜タンクに貯溜された接触媒質を、不活性ガスあるいは窒素ガスのガス圧力を利用して前記容器内に注入させるように構成したものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項5に記載したように、前記接触媒質供給手段は、容器内に接触媒質として水を供給する水媒質供給手段を備え、この水媒質供給手段により水を接触媒質として供給するように構成したものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項6に記載したように、前記水媒質供給手段は、海水から塩分および不純物を除去する濾過装置と、この濾過装置で濾過された水を容器内に導く水供給ラインと、この水供給ラインに設けられた逆止弁とを有するものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項7に記載したように、前記容器に接触媒質の供給を補助する負圧手段を設け、この負圧手段は容器からのディスチャージラインに負圧ポンプを備えたものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項8に記載したように、前記超音波センサは、発振された超音波エコー波形を受信する一方、受信された超音波エコー信号を信号処理する信号処理装置を設け、この信号処理装置で受信される超音波エコー信号の信号レベルが所定値以下のとき、接触媒質供給手段を作動させるコントローラを備えたものである。
また、本発明に係る超音波遠隔探傷装置は、上述した課題を解決するために、請求項9に記載したように、前記容器内に収納される超音波センサは、センサ先端に流動性の接触媒質の流失を防止する弾力性フィルムを装着したものである。
本発明に係る超音波遠隔探傷装置においては、被検査体に取り付けられた容器内の接触媒質(カプラント液)をシリンダ装置駆動の撹拌手段により対流移動させ、長期間に亘り接触媒質の安定供給と保持を可能としたので、海中や鉄塔等、作業員が普段の検査で近付けない構造物の酸化劣化による厚さ減少や損傷の有無、程度を遠隔地から非破壊にて正確に超音波探傷することができる。
また、被検査体の表面に超音波センサを所定の押圧力で押圧接触させ、被検査面の超音波探傷を定期的に、かつ容易に精度よく行なうことができる。
さらに、超音波センサと被検査面の間に接触媒質を安定的に保持でき、接触媒質の漏出や酸化を防止できるので、被検査面の検出精度よく正確に超音波探傷することができる。
本発明に係る超音波遠隔探傷装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る超音波遠隔探傷装置の一実施形態を示す概略図である。この超音波遠隔探傷装置10は、鉄塔、鉄橋、石油タンク等の普段検査で作業員が近付き難い構造物(構造体)の酸化劣化による厚み減少、損傷の有無および程度を超音波センサ11により遠隔地から所定期間、例えば1ヶ月毎に非破壊で計測することができる装置である。超音波遠隔探傷装置10は、構造物の被検査体12に対をなす取付ベルト13を介して着脱可能に締め付けられ、取り付けられる。
超音波遠隔探傷装置10は、接触媒質としてのカプラント液14を収容する透明な筒状の容器15と、この容器15に収納された超音波センサ11と、容器15内にカプラント液11を供給する接触媒質供給手段16と、超音波センサ11を構造物の被検査体12に押圧接触させるシリンダ装置17と、容器15内のガスを放出するガス排気手段18と、シリンダ装置17等の作動を制御するコントローラ19とを有する。
筒状の容器15は透明な樹脂材料、例えばアクリル樹脂材料で形成される。この容器15は正面側に直径方向外方に突出する取手21を有し、この取手21を取付ベルト22で締め付けることにより、密閉容器15は被検査体12に液密に装着され、密閉された密閉容器となる。この密閉容器15は密閉性を向上させるために、弾力性に富むシール材を介して装着してもよい。
容器15を密閉構造とすることにより、密閉容器15内に収容されたカプラント液14の酸化劣化を防止できる。この酸化劣化を防ぐことにより、超音波センサ11による超音波エコー波形の検出感度低下を防ぐことができる。
密閉容器15の背面側にシリンダ装置17が一体あるいは一体的に外付けで設けられる。シリンダ装置17は円筒状のエアーシリンダ24と、このシリンダ24内に収容されるピストン25と、このピストン25を密閉容器15側に押圧するばね押圧手段としてのコイルスプリング26と、このスプリング26のばね力に抗する方向にピストン25を後退させるエアー供給手段27と、ピストン25から密閉容器15内に突出して延びる作動ロッド28とを有する。作動ロッド28の先端に超音波センサ11が装着され、固定される。ばね押圧手段26はコイルスプリングに代えて流体供給手段を設けてもよい。また、シリンダ装置17は密閉容器15内に設けてもよい。
作動ロッド25は途中の密閉容器15内に撹拌手段としての撹拌フィン30が設けられ、ピストン25の往復動により、撹拌フィン30が往復動し、密閉容器15に貯溜されたカプラント液14を撹拌させ、密閉容器15内で対流移動(対流循環)を生じさせるようになっている。
エアー供給手段27は、エアーを圧縮するコンプレッサ33と、このコンプレッサ33から吐出される高圧エアーをエアーシリンダ24のシリンダ室34に供給するエアー供給ライン35と、このエアー供給ライン35に設けられた電磁弁36とを有し、この電磁弁36はコントローラ19により開閉制御される。電磁弁36の開作動により、コンプレッサ33から吐出される高圧エアーがシリンダ室34に供給されるようになっている。この高圧エアーの供給により、ピストン25をコイルスプリング26のばね力に抗して後退させることができ、超音波センサ11を被検査体12から後退させ、離すようになっている。
なお、符号37は弾性シール機能を有するピストンリングであり、符号38は液密あるいは気密なシールリングである。
また、超音波センサ11はセンサ先端を覆うように、弾力性フィルムとしてのゴム質フイルム39が装着される。ゴム質フィルム39は、超音波センサ11と被検査体12間に介装される流動性の接触媒質であるカプラント液14の流失を防止するために設けられる。被検査体12の表面に付着したカプラント液14は、ゴムのシール性により流動を防止でき、長期間安定的に保持させることができる。
カプラント液14には、超音波センサ11からの超音波を被検査体12に通り易いグリセリン系の音響整合材料が用いられる。
超音波センサ11は、電源周波数の高い電圧の印加により超音波を発振させる探触子を備える。この探触子から被検査体12の被検査面に向けて発振された超音波は、その表面や内部欠陥による密度差により反射してエコー波となっても戻り、この反射エコー波形が超音波センサ11で検出される。
超音波センサ11で検出された超音波エコー波は、エコー信号となって信号線40を通り、パーソナルコンピュータ等の信号処理装置41に送られて信号処理される。この信号処理結果はディスプレイ装置42に表示される。
このディスプレイ装置42により信号処理画像を確認したり、また、信号処理装置41による自動的な信号処理により、被検査体12の材料の酸化劣化による厚み減少や被検査体12の損傷劣化の程度を遠隔地から所定期間、例えば1ヶ月あるいは1年毎に計測することができる。
一方、密閉容器15内にカプラント液14を媒質供給ライン43を介して供給する接触媒質供給手段16は、接触媒質のカプラント液14を貯溜する貯溜タンク44と、この貯溜タンク44にヘリウム・アルゴン等の不活性ガスあるいは窒素ガスをガス注入ライン45を介して供給するガス供給源としての加圧ガスタンク46とを有する。ガス注入ライン45やカプラント液供給ライン43にはコントローラ19にて開閉制御される電磁弁47,48が設けられる。加圧ガスタンク46内の圧力は密閉容器15内の圧力より高圧に維持される。
また、海水や水中に存在する鉄構造物12を遠隔地から超音波探傷する場合を考慮し、接触媒質供給手段16には、海水等を接触媒質とする水媒質供給手段50が必要に応じて備えられる。
水媒質供給手段50は、海水中に浸漬され、塩分や不純物を除去する濾過装置51と、この濾過装置51で濾過された濾過水(純水)を密閉容器15内に接触媒質として供給する水供給ライン52と、濾過水を密閉容器15にスムーズに取り込むように、密閉容器15内を負圧にする負圧手段53とを有する。濾過装置51には、例えば中空糸膜フィルタが濾過フィルタとして用いられ、密閉容器15内に海水や不純物が流入し、駆動機構に障害が起こるのを未然に防止している。
水供給ライン52には逆止弁54が設けられる一方、負圧手段53は密閉容器15のガス空間側からディスチャージライン55が延出されており、このディスチャージライン55に真空(負圧)ポンプ56が設けられる。ディスチャージライン55にも電磁弁57が設けられ、コントローラ19により開閉制御される。
また、水供給ライン52に逆止弁54を設けることにより、密閉容器15外へ接触媒質14が流出するのを防止する一方、水供給ライン52の流入口に濾過装置51を設けて密閉容器15内に流入する海水から塩分や不純物を除去し、純水化して密閉容器15内に流入させる手段となっている。
密閉容器15の負圧手段53を構成するディスチャージライン55には、電磁弁56の上流側からガス放出ライン58が分岐されており、このガス放出ライン58は大気中に開放している。このガス放出ライン58にもコントローラ19により開閉制御される電磁弁59が設けられる。
次に、超音波遠隔探傷装置10の作用について説明する。
この超音波遠隔探傷装置10は、鉄等、鉄橋、石油タンク、ガスタンク等の構造物を被検査体12と、この被検査体12の酸化劣化による構成材料の厚み減少や内部欠陥の有無、程度を遠隔地から定期的に超音波計測している
超音波遠隔探傷装置は、被検査体12に取付ベルト13により密閉容器15を液密にかつ着脱自在に取り付ける。密閉容器15内に収容される超音波センサ11は、センサ周囲に設けた磁石の磁力(吸引力)を利用して被検査面に吸着させてもよい。ここでは、シリンダ装置17に収容されたコイルスプリング26のばね力により、ピストン25を押圧移動させ、作動ロッド(ピストンロッド)28を介して超音波センサ11を被検査体12の被検査面に押圧接触させる。
その際、密閉容器15内には、接触媒質供給手段16により所定量のグリセリン系のカプラント液14が供給される。密閉容器15内に供給されたカプラント液14はシリンダ装置17の駆動により、作動ロッド28が往復動して撹拌フィン30により撹拌され、カプラント液14の対流移動による循環を可能としている。
また、シリンダ装置17の作動ロッド28の先端には、超音波センサ11が装着されており、シリンダ装置17の駆動により作動ロッド28の先端に設けられた超音波センサ11が被検査体12の被検査面に接触し、超音波による被検査体12の板厚計測、内部欠陥の有無や損傷の程度の計測を可能としている。
超音波遠隔探傷装置10による被検査体12の超音波探傷は、図1に示す状態で、超音波センサ11の探触子から被検査体12に向けて超音波を発振し、被検査体12の表面や内部欠陥から反射する超音波のエコー波を超音波センサ11で検出し、その検出エコー信号を信号処理装置41に送って信号処理することにより、被検査体12の材料の厚みや劣化の程度、内部欠陥の有無、大きさの程度を遠隔地から測定することができる。
一実施例として、内径38mmφ、外径50mmφ、高さ50mmの筒状の容器15を厚さ30mmの被検査体12に液密に接触させ、被検査体12の厚みを超音波により計測した。シリンダ装置17には、シリンダ径25mm、ピストンストローク10mmのスプリングプッシュ方式のエアーシリンダ24を用意し、超音波センサ11には、例えば直径10mmのものを使用した。
シリンダ装置17にエアー供給手段27から空気圧をかけていない状態では、スプリング26のばね作用により、超音波センサ11は、被検査体12の被検査面を、安定的に所定のばね押圧力で押圧接触している状態に保持される。
超音波センサ11を被検査体表面への押圧状態から解放するには、エアー供給手段27により、スプリング26のばね力以上の空気圧をエアーシリンダ24内に供給すれば、超音波センサ11は被検査体12から離すことができる。
シリンダ装置17のエアーシリンダ24に、空気圧を作用させたり、抜いたりすると、シリンダ装置17が駆動され、超音波センサ11が動くために、接触媒質であるカプラント液14も流動する。密閉容器15を透明なアクリル樹脂で形成して、カプラント液14に赤インクや絵の具を滴下してシリンダ装置17の駆動によるカプラント液14の動きを観察したところ、撹拌フィン30がない場合には、超音波センサ11周辺付近のみの流体移動であったが、撹拌フィン30を設けた場合には、超音波センサ11の先端から撹拌フィン30に向けて対流移動が生じていることが判明した。
この超音波遠隔探傷装置10を被検査体12に取り付けた状態で、探傷検査を長期に亘って実行すると、超音波センサ11の先端に付着させたカプラント液14が枯渇したり、センシング機能が低下してくる。
しかし、図1に示された超音波遠隔探傷装置10では、超音波センサ11にて感知される超音波のエコー波形の感度が一定レベル以下に低下した場合、その波形感度低下を信号処理装置41やディスプレイ装置42で検出し、その検出信号をコントローラ19に送って、シリンダ装置24を駆動制御する信号制御システム60を構築しているので、シリンダ装置17を駆動制御させることができ、カプラント液14の枯渇や超音波センサ11によるセンシング機能の低下を未然にかつ有効的に防止できる。
シリンダ装置17の駆動制御により、ピストン25がコイルスプリング26のばね力とエアー供給手段27からの空気圧の作用により、往復動し、密閉容器15内のカプラント液14を撹拌対流させ、比較的新しいカプラント液14を超音波センサ11と被検査体12の間に供給することができる。
シリンダ装置17のシリンダ室34内にエアー供給手段27から空気圧の供給が停止すると、超音波センサ11はコイルスプリング26のばね力により、所定の力、例えば1.2kgで押圧されるため、超音波センサ11によるエコー波形の検出感度を回復させることができる。
その際、密閉容器15内には、接触媒質であるカプラント液14が所要量充填されているので、従来の超音波探傷装置のように、常時接触媒質を供給するシステムは不要である。
実際、超音波センサ11による超音波エコー波形が検出しにくく、エコー信号検出感度が低下した時点を、信号処理装置41等が検出してコントローラ19により、シリンダ装置17の駆動制御を行なう信号制御システム60を構築したところ、密閉容器15内でカプラント液14を循環対流させ、超音波エコーの検出感度を上昇させることができた。また、密閉容器15内にカプラント液を常時供給する必要もないので、カプラント液供給の手間がかからず、作業性も簡素化され、安定した超音波遠隔探傷システムとなった。
また、図1に示された超音波遠隔探傷装置10では、密閉容器15内へ、接触媒質であるカプラント液14の供給は、貯溜タンク44を大気圧により高めの加圧状態にすることで行なうことができる。密閉容器15内を大気圧以上とすることで、水分や大気中の流入を防止することができる。このため、密閉容器15内のカプラント液14は、密閉容器15外の水分や大気中の水分による流入劣化や酸化劣化が生じないので、超音波センサ11を被検査体12に長期間安定的に据え付けることができる。
さらに、接触媒質のカプラント液14としてグリセリンを用意し、このグリセリンを密閉容器15に遠隔地から供給する場合を説明する。
この場合、コントローラ19により、密閉された貯溜タンク44へ不活性ガスあるいは窒素を流入する電磁弁45を開放し、次に真空ポンプ56への電磁弁57、続いて密閉容器15にカプラント液17を供給する電磁弁47をそれぞれ開放させる。
電磁弁45の開放により、密閉された貯溜タンク44に不活性ガスあるいは窒素ガスを所要圧力、例えば1kg/cm(ゲージ圧)を作用させ、次に密閉容器15に付属された電磁弁57を開放させ、真空ポンプ56のポンプ作動により、密閉容器15内を減圧させる。この負圧状態で電磁弁47を開放させると、貯溜タンク44内の圧力と密閉容器15内の圧力との圧力差が生じ、貯溜タンク44に貯えられたカプラント液14としてのグリセリンにスムーズな流れが生じ、密閉容器15内に流れ込む。
カプラント液14を密閉容器15内に流入させ、超音波センサ11が被検査体12の板厚を示す超音波エコーが観察された時点で、真空ポンプ56への電磁弁57を閉じる。この電磁弁57を閉じると、貯溜タンク44からの供給圧が密閉容器15内の圧力とやがて平衡状態となり、カプラント液14の供給が停止する。2週間に亘る実験では、接触媒質である海水が密閉容器15内に常時存在していた。
この時点では、密閉容器15内の圧力が密閉容器15外の大気圧等より高いため、密閉容器15外の雨水や海水が密閉容器15内に流入するのを未然にかつ正確に防止できる。
この場合には、図1に示された水媒質供給手段50を設ける必要はない。
本発明に係る超音波遠隔探傷装置10を海水中に存在する鉄構造物の被検査体12の表面に設け、鉄構造物の厚みや損傷の有無、程度を超音波センサにより計測するシステム例を説明する。接触媒質に海水を使用した例を示す。全体的な構成は図1および図2に示すものと異ならないので、図1および図2を参照して説明する。
この場合には、満潮、干潮により海水の水位が変動し、干潮の場合には、超音波センサ11に接触媒質であるカプラント液(海水)が供給されない場合が生じる。また、海水には塩分が存在するために、超音波センサ11の構成材料を腐食させることも考えられる。
そこで、密閉容器15内に接触媒質として海水を取り込む場合、初めに、密閉容器15を負圧にすべく、負圧手段53の真空ポンプ56を作動させ、電磁弁57をコントローラ19により開放させる。
真空ポンプ56の作動により、密閉容器15内を所要圧力、例えば150mmHgに減圧し、密閉容器15外の海水を密閉容器15内に流入し易いように圧力差を作る。
一方、濾過装置51では、海水中の塩分や不純物を濾過フィルタで除去する。濾過フィルタには、例えば中空糸膜フィルタが用いられる。密閉容器15内を例えば150mmHg〜100mmHgに減圧させてから、逆止弁54を介して濾過装置51が密閉容器15方向へ流入する、濾過された海水(純水)を水媒質供給手段50により流入させると、所要時間、例えば約30秒で水媒質を密閉容器15に充填させることができた。
密閉容器15に取り込んだ水媒質のカプラント液が、密閉容器15外に流出しないように、逆止弁54を水媒質供給手段50に設けた。また、密閉容器15内の真空ポンプ56のポンプ作動により減圧(負圧)状態に維持し、常時濾過装置51で濾過された海水(純水)が流入可能となるように設定した。
超音波遠隔探傷装置10を上述した設定としておくことにより、満潮時には海水が密閉容器15内に流入する機会が増加し、干潮時で密閉容器15外に海水が存在しない場合でも、密閉容器15内のカプラント液(水)が外部に流出するのを防止できる。
この超音波遠隔探傷装置10においても、真空ポンプ56を常時ポンプ作動させる必要がない。密閉容器15内に取り込んだカプラント液(水)がなくなり、所定信号レベルの超音波エコー信号を得にくくなった時点で、コントローラ19により真空ポンプ56をポンプ作動させればよい。この場合には、真空ポンプ56のポンプ作動を必要時のみ自動的に作動させればよいので、超音波遠隔探傷装置10を効率よく運転させることができた。
また、負圧手段53に真空ポンプ56を設ける代わりに、大気開放ライン58を設けてもよい。
密閉容器15を海水中数m、例えば1m以下に設置した場合、水媒質供給手段50の濾過装置51の流入口に作用する水圧と、大気開放ライン58により大気開放している密閉容器15内の圧力との間に圧力差が生じ、海水は濾過装置51から逆止弁54を通り密閉容器15内に流入させることができる。
この例では、大気開放チューブ57の電磁弁59を開放させることにより、密閉容器15内が大気圧となり、濾過装置51の流入口に作用する水圧より小さいため、密閉容器15外に海水が存在する限り、濾過装置51で濾過された海水が、接触媒質として密閉容器15内に導入される。
次に、超音波センサ11のセンサ先端を、弾力性フィムルであるゴム質フィルム39で覆った場合を説明する。
超音波センサ11のセンサ先端をゴム質フィルム39で覆わない場合の被検査体12からの超音波エコー信号を測定し、その経時変化を図3の実線aで示す。
また、超音波センサ11のセンサ先端をゴム質フィルム39で覆った場合の被検査体12からの超音波エコー信号を測定し、その経時変化を破線bで示す。
図3は、図1および図2に示された超音波遠隔探傷装置10を用いて4ヶ月に亘り、遠隔地から超音波測定したものであるが、図3から分かるように、超音波センサ11のセンサ先端にゴム質フィルム39を装着すると、被検査体12からの超音波エコー信号は、検出感度低下が殆ど長期間に亘って生じないことが判明した。また、ゴム質フィルム39を装着しない場合には、被検査体12からの超音波エコー信号は、約34日間大きな感度低下が生じず、持続したものの、その後は大きな感度低下が生じた。
シリンダ装置17のコイルスプリング26のばね力で超音波センサ11を被検査体12の表面に押圧する際、超音波センサ11のセンサ先端にゴム質フィルム39を介装させて覆うと、このゴム質フィルム39で接触媒質を被検査体表面に保持し得ることが判明した。ゴム質フィルム39を装着すると、接触媒質の流出をゴムの弾力性に富むシール性に未然にかつ有効的に防止でき、接触媒質を長期間保持可能であることがわかった。
なお、本発明に係る超音波遠隔探傷装置の実施形態においては、コントローラと信号処理装置が離隔している例が示されたが、実際には、両者は近接配置されたり、一体的な構成としてもよい。
本発明に係る超音波遠隔探傷装置の一実施形態を示す概略図。 上記超音波遠隔探傷装置のシリンダ装置を駆動させて超音波センサを被検査体の表面から離した状態を示す概略図。 本発明に係る超音波遠隔探傷装置に備えられる超音波センサの先端にゴム質フィルムを装着した場合と、取り外した場合の超音波エコー波形感度の経時変化をグラフ化した図。
符号の説明
10 超音波遠隔探傷装置
11 超音波センサ
12 被検査体
13 取付ベルト
14 カプラント液(接触媒質)
15 密閉容器
16 接触媒質供給手段
17 シリンダ装置
18 ガス排気手段
19 コントローラ
21 取手
24 エアーシリンダ
25 ピストン
26 コイルスプリング(ばね押圧手段)
27 エアー供給手段
28 作動ロッド
30 撹拌フィン(撹拌手段)
33 コンプレッサ
34 シリンダ室
35 供給ライン
36 電磁弁
39 ゴム室フィルム(弾力性フィルム)
40 信号線
41 信号処理装置
42 ディスプレイ装置
43 媒質供給ライン
44 貯溜タンク
45 ガス注入ライン
46 加圧ガスタンク(加圧ガス供給源)
47 電磁弁
50 水媒質供給手段
51 濾過装置
52 水供給ライン
53 負圧手段
54 逆止弁
55 ディスチャージライン
56 真空ポンプ
57,59 電磁弁
58 大気開放ライン
60 信号制御システム

Claims (9)

  1. 被検査体に取り付けられた容器と、
    この容器内に接触媒質を供給する接触媒質供給手段と、
    前記容器内に収納され、前記被検査体の表面に接触可能な超音波センサと、
    前記容器に設けられ、上記超音波センサを被検査体の表面に進退可能に押圧接触するシリンダ装置と、
    このシリンダ装置から延びる作動ロッドに設けられた撹拌手段とを有し、
    上記撹拌手段により容器内に収容された接触媒質を対流移動させたことを特徴とする超音波遠隔探傷装置。
  2. 前記容器は、被検査体に着脱可能にかつ液密に取り付けられて、密閉状態を構成する密閉容器である請求項1記載の超音波遠隔探傷装置。
  3. 前記シリンダ装置は、ピストンを収容したエアーシリンダと、上記ピストンを超音波センサ側にばね付勢するばね押圧手段と、上記ピストンをばね押圧手段の押圧力に抗して後退させる空気圧力を作用させるエアー供給手段とを有し、上記ばね押圧手段により超音波センサを被検査体の表面に押圧接触させた請求項1記載の超音波遠隔探傷装置。
  4. 前記接触媒質供給手段は、接触媒質を貯溜する貯溜タンクを備え、この貯溜タンクに貯溜された接触媒質を、不活性ガスあるいは窒素ガスのガス圧力を利用して前記容器内に注入させるように構成した請求項1記載の超音波遠隔探傷装置。
  5. 前記接触媒質供給手段は、容器内に接触媒質として水を供給する水媒質供給手段を備え、この水媒質供給手段により水を接触媒質として供給するように構成した請求項1記載の超音波遠隔探傷装置。
  6. 前記水媒質供給手段は、海水から塩分および不純物を除去する濾過装置と、この濾過装置で濾過された水を容器内に導く水供給ラインと、この水供給ラインに設けられた逆止弁とを有する請求項5記載の超音波遠隔探傷装置。
  7. 前記容器に接触媒質の供給を補助する負圧手段を設け、この負圧手段は容器からのディスチャージラインに負圧ポンプを備えた請求項1,4または5記載の超音波遠隔探傷装置。
  8. 前記超音波センサは、発振された超音波エコー波形を受信する一方、受信された超音波エコー信号を信号処理する信号処理装置を設け、この信号処理装置で受信される超音波エコー信号の信号レベルが所定値以下のとき、接触媒質供給手段を作動させるコントローラを備えた請求項1記載の超音波遠隔探傷装置。
  9. 前記容器内に収納される超音波センサは、センサ先端に流動性の接触媒質の流失を防止する弾力性フィルムを装着した請求項1記載の超音波遠隔探傷装置。
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