JP2005297557A - インクジェットヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】 圧電素子に付与される駆動パルスの周波数やヘッドを使用する温度環境が様々であっても安定した吐出を実現する。
【解決手段】 インク室と圧力室との間に配置された絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比を0.48〜1.26、より好ましくは0.8〜1.0にする。
【選択図】 図9

Description

本発明は、記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドに関し、より詳細には、インク室と圧力室との間に圧力室よりも流路の狭い絞り部が形成されており、圧電方式により圧力室内のインクに圧力を付与してノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに関する。
インクジェットプリンタ等に用いられるインクジェットヘッドとしては、インクを収容するインク室、インク室からインクが供給される圧力室、圧力室に連通するノズルなどが形成されており、圧力室内のインクに圧力を付与してノズルからインクを吐出させるものがある。かかるヘッドにおいて、圧力室上に圧電素子を配置し、駆動パルスを印加することで圧電素子を変形させ、これにより圧力室の容積を変化させて、圧力室内のインクに圧力を付与するという技術が知られている。
近年、高速且つ高画質の印刷が求められており、これを実現するための様々な技術が提案されてきている。例えば上記構成のインクジェットヘッドにおいて、インク流路全体の流路抵抗とインク室―圧力室間に形成された絞り部の流路抵抗とに着目し、これら流路抵抗の比を所定範囲にすることで、高速印刷を行う場合にも吐出安定性を損なわないようにするという技術がある(特許文献1参照)。
特開2003−19796号公報
しかし今日、印刷の高速化及び高画質化がさらに進んできており、さらなる高速化及び高画質化に対応できるインクジェットヘッドの開発が望まれている。上記構成のインクジェットヘッドにでは、特に、圧電素子に付与される駆動パルスの周波数やヘッドを使用する温度環境が様々であっても、安定した吐出を実現可能であることが求められている。
本発明の目的は、圧電素子に付与される駆動パルスの周波数やヘッドを使用する温度環境が様々であっても安定した吐出を実現可能なインクジェットヘッドを提供することである。
課題を解決するための手段及び効果
本発明者は、種々の条件において実験を行った上で、絞り部及びノズルの構成が吐出安定性に大きく関わり、絞り部の流路抵抗とノズルの流路抵抗との比を所定範囲にすることで上記目的を達成できることを確認した。
本発明のインクジェットヘッドは、インクを収容するインク室と、前記インク室からインクが供給される圧力室と、前記圧力室上に配置されており、駆動パルスの印加により前記圧力室内のインクに圧力変動を与える圧力付与手段と、前記インク室と前記圧力室との間に配置されており、前記圧力室よりも流路の狭い絞り部と、前記圧力室に連通しており、前記圧力室の容積変化に伴ってインクを吐出するノズルと、を備え、前記絞り部の流路抵抗Raと前記ノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbが0.48〜1.26である。
上記構成によると、絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比が上記所定範囲にあることで、圧電素子に付与される駆動パルスの周波数やヘッドを使用する温度環境が様々であっても安定した吐出を実現することができる。
また、本発明のインクジェットヘッドでは、前記圧力付与手段が、前記駆動パルスの印加により変形して前記圧力室の容積を変化させる圧電素子であることが好ましい。
上記構成によると、圧力室の容積変化によりインクに圧力変動を与えることができるので、圧力変動を所望のタイミングで正確に付与することができる。
また、本発明のインクジェットヘッドでは、前記圧電素子が、前記駆動パルスの印加時に前記圧力室の容積を増大させるように変形し、前記駆動パルスの印加終了時に前記圧力室の容積を元に戻すように変形することが好ましい。
上記構成によると、駆動パルスの印加時間を適宜設定し、圧力室の容積の増大により発生した負の圧力波が正の圧力波に反転反射するタイミングで圧力室の容積を減少させることで、負の圧力波から反転反射した正の圧力波と圧力室の容積を減少させることで生じた正の圧力波を重畳させ圧力室内のインクに強い圧力を与えることができる。
また、本発明のインクジェットヘッドでは、前記絞り部の流路抵抗Raと前記ノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbが0.8〜1.0であることが好ましい。
上記構成によると、設計誤差が生じたり使用設定温度外になったり、その他様々な不都合が生じても、吐出安定性を良好に保持することができる。
また、本発明のインクジェットヘッドでは、前記駆動パルスの周波数が5〜96kHzであることが好ましい。
これは、特に駆動パルスの周波数が5〜96kHzの範囲において、絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比を上記所定範囲にすることで、本発明による効果を確実に得られることからである。
また、本発明のインクジェットヘッドでは、前記絞り部が、ハーフエッチングにより形成されていることが好ましい。
上記構成によると、所定の流路抵抗Raを有する絞り部を安価で効率よく形成することができる。
また、本発明のインクジェットヘッドは、複数の板状材料を積層することにより構成されており、 前記インク室、前記圧力室、前記絞り部、及び前記ノズルが前記複数の板状材料のいずれかに形成されていることが好ましい。
上記構成によると、インク室、圧力室、ノズル、絞り部を容易に形成でき、特に所定の流路抵抗Ra,Rbを有する絞り部及びノズルを安価で効率よく形成することができる。
さらに、本発明のインクジェットヘッドでは、前記絞り部が、前記圧力室が形成されたのと同じ板状材料に、ハーフエッチングにより形成されていることが好ましい。
上記構成によると、所定の流路抵抗Raを有する絞り部をより安価で効率よく形成することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの全体構成について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド101は、搬送されてきた用紙(記録媒体)にインクを吐出して記録を行うインクジェットプリンタに用いられるものであって、流路ユニット1上にアクチュエータユニット2を接着し、さらにアクチュエータユニット2上にフレキシブルプリント配線板(FPC)40を接合して構成されている。FPC40は、インクジェットヘッド101の全般的な制御を行うコントローラ(図示せず)と接続されており、コントローラから出力された駆動信号をアクチュエータユニット2に伝達する。
ここで、図2及び図3を参照しつつ、流路ユニット1について詳細に説明する。
流路ユニット1は、キャビティプレート3、ベースプレート4、マニホールドプレート6・7、及びノズルプレート9の合計5枚の板状材料を積層することにより構成されている。各プレート3、4、6、7、9は、略矩形状を有する厚さ50μm〜150μmの42%ニッケル合金鋼板からなり、プレス加工又はエッチング加工により形成された多数の開口又は凹部を有し、これら開口又は凹部が連通するよう各平面領域に塗布された接着剤により相互に接合されている。
キャビティプレート3には、その長手方向に沿った中心線を挟んで両側に2列に、多数の圧力室11が互いに離隔しつつ穿設されている。各圧力室11は、プレス加工によりキャビティプレート3の板厚方向に貫通するよう形成されており、平面視略矩形状で、その長手方向がキャビティプレート3の短手方向に平行になるよう配置されている。キャビティプレート3の長手方向に沿った中心線の両側にこれと平行な基準線3x,3y(図3参照)を設定すると、前記中心線より左側の列に含まれる圧力室11の長手方向一端は前記中心線より右側の基準線3yに沿って配置され、前記中心線より右側の列に含まれる圧力室11の長手方向一端は前記中心線より左側の基準線3xに沿って配置されており、且つ、各列に含まれる圧力室11の長手方向中心線が交互になるよう配置されている。つまり圧力室11は、千鳥状に配置されている。
図3に示すように、各圧力室11におけるキャビティプレート3中央側の一端11aは、ベースプレート4及びマニホールドプレート6・7にそれぞれ千鳥状に穿設された微小径の孔12a,12b,12cを介して、ノズルプレート9に同じく千鳥状に穿設されたノズル10に連通している。一方、各圧力室11の他端は、キャビティプレート3の下面側にのみ開口するようにハーフエッチングにより凹み形成された絞り部11b及び凹部11c、並びに、ベースプレート4に穿設された孔13を介して、マニホールドプレート6・7に形成されたマニホールド6a・7a,6b・7bに連通している。
絞り部11bは、図3に示すように、圧力室11の幅より小さい幅を有し、圧力室11よりも流路が狭くなるよう形成されている。また後に詳述するが、絞り部11bの流路抵抗Raとノズル10の流路抵抗Rbとの比Ra/Rbは0.48〜1.26、好ましくは0.63〜1.05、より好ましくは0.8〜1.0である。ここで、絞り部11bが上述のようにハーフエッチングにより形成されていることで、上記所定の流路抵抗Raを有する絞り部11bを安価で効率よく形成することができるようになっている。
図2に示すように、キャビティプレート3の長手方向一端近傍には、平面視においてキャビティプレート3の短手方向に細長い楕円形状の凹部17が形成されている。そして凹部17の底部に、キャビティプレート3の短手方向に並んだ2つのインク供給孔15a,15bが穿設されている。各インク供給孔15a,15bの上面には、インクタンク(図示せず)から供給されるインク中の塵除去のためのフィルタ(図示せず)が張設されている。
ベースプレート4には、その長手方向に沿った中心線を挟んで両側に2列に、多数の孔12aが穿設されている。孔12aは、上記圧力室11と同様に、千鳥状に配置されている。ベースプレート4の短手方向両端近傍にはそれぞれ、長手方向に沿って1列に、多数の孔13が穿設されている。ベースプレート4において、キャビティプレート3のインク供給孔15a,15bと対応する位置には、インク供給孔15a,15bより一回り大きな2つのインク供給孔16a,16bが穿設されている。
マニホールドプレート6には、その長手方向に沿った中心線を挟んで両側に2列に、上記ベースプレート4に形成された孔12aと対応する多数の孔12bが穿設されている。また、マニホールドプレート6の短手方向両側近傍にはそれぞれ、マニホールド6a,6bが長手方向に沿って延在するように穿設されている。
マニホールドプレート7は、上記マニホールドプレート6に形成された孔12bと同様の孔12c、及び、上記マニホールドプレート6に形成されたマニホールド6a,6bと同様の位置及び平面形状で且つマニホールドプレート7の上面側にのみ開口するようにハーフエッチングにより凹み形成されたマニホールド7a,7bを有する。
マニホールド6a・7aの一端は平面視でベースプレート4のインク供給孔16aに重なる位置に配置され、同様に、マニホールド6b・7bの一端は平面視でベースプレート4のインク供給孔16bに重なる位置に配置されている。また、マニホールド6a・7a,6b・7bは、ベースプレート4に形成された2列の孔13の各列に対応する領域を含むように延在している。そしてマニホールドプレート6・7が上下に重ねられて接合されることにより、2つのインク室としてのマニホールド6a・7a,6b・7bが構成されている(図4参照)。
ノズルプレート9には、図2に示すように、マニホールドプレート7に形成された各孔12cに対応する位置に、ノズル10が穿設されている。ノズル10は、例えばポリイミド等の基板にエキシマレーザー加工を施すことにより、インクが吐出される吐出方向に向かって徐々に小径となるテーパ状に形成されている(図7参照)。
インクタンク(図示せず)からキャビティプレート3のインク供給孔15a,15bに供給されたインクは、ベースプレート4に形成されたインク供給孔16a,16bを介して、左右両マニホールド6a・7a,6b・7b内に流入する。マニホールド6a・7a,6b・7b内に流入したインクは、ベースプレート4に形成された孔13、各圧力室11の他端に形成された凹部11c及び絞り部11b(共に図3及び図4参照)を介して、各圧力室11内に分配される。そして各圧力室11内のインクは、その一端11aから、ベースプレート4及びマニホールドプレート6・7にそれぞれ穿設された孔12a,12b,12cを介して、ノズルプレート10に形成されたノズル10に至る。
本実施形態では、流路ユニット1が5枚のプレート3、4、6、7、9を積層することにより構成されており、且つ、マニホールド6a・7a,6b・7bがマニホールドプレート6,7に、圧力室11及び絞り部11bがキャビティプレート3に、そしてノズル10がノズルプレート9に、それぞれ形成されている。このような構成により、マニホールド6a・7a,6b・7b、圧力室11、ノズル10、絞り部11bを容易に形成でき、特に所定の流路抵抗Ra,Rbを有する絞り部11b及びノズル10を安価で効率よく形成することができるようになっている。
特に本実施形態においては、絞り部11bが、圧力室11が形成されたのと同じプレート3に、ハーフエッチングにより形成されている。これにより、所定の流路抵抗Raを有する絞り部11bをより安価で効率よく形成することができるようになっている。
次に、図4を参照しつつ、アクチュエータユニット2について詳細に説明する。
アクチュエータユニット2は、表面に個別電極28が形成された2枚の圧電シート21,23と、表面に共通電極29が形成された2枚の圧電シート22,24とを1枚ずつ交互に積層し、さらにその上に、表面電極26,27(図1参照)が形成された圧電シート25を積層することにより、構成されている。これら計5枚の圧電シート21〜25は、圧電素子を構成するもので、共に強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり、平面視で流路ユニット1よりも一回り小さい略矩形状を有する(図1参照)。
表面電極26は、図1に示すように、圧電シート25の短手方向両端近傍に、長手方向に沿って一列に、多数形成されている。表面電極27は、表面電極26の各列のさらに長手方向両端側に、1つずつ形成されている。
個別電極28は、図4には図1の手前側の列の表面電極26に対応するもののみが描かれているが、上記表面電極26と同様に、圧電シート21,23の短手方向両端近傍に、長手方向(図4では紙面垂直方向)に沿って一列に、多数形成されている。より詳細には、個別電極28は、各圧力室11に対向するよう、圧電シート21,23の短手方向中央近傍にまで延在している(図4参照)。
共通電極29は、全ての圧力室11に対向する領域を含むように、圧電シート22,24表面のほぼ全面に形成されている。
図4に示すように、2枚の圧電シート21,23の表面において上下に対向する2つの個別電極28は、最下層以外の圧電シート22,23,24,25に形成されたスルーホール30を介して、圧電シート25上のそれぞれ対応する表面電極26と電気的に接続されている。また、2枚の圧電シート22,24の表面において上下に対向する2つの共通電極29は、上から三層の圧電シート23,24,25に形成されたスルーホール(図示せず)を介して、圧電シート25上の表面電極27(図1参照)と電気的に接続されている。
各表面電極26,27は、FPC40を介してコントローラ(図示せず)と接続され、表面電極26はそれぞれ独立して電位制御されるのに対し、表面電極27は常にグランド電位に保持される。これにより、表面電極26と接続されている個別電極28はそれぞれ独立して電位制御され、表面電極27と接続されている共通電極29は常にグランド電位に保持されるようになっている。
圧電シート21〜25は厚み方向に分極処理されており、最下層及び最上層の圧電シート21,25を除く3枚の圧電シート22,23,24における個別電極28と共通電極29とで挟まれた部分が活性部として働く。この場合、個別電極28を共通電極29と異なる電位にすることにより圧電シート22,23,24の活性部に対して分極方向に電界を印加すると、活性部は厚み方向に伸長又は収縮し、また圧電横効果により面方向に収縮又は伸長する。一方、最下層及び最上層の圧電シート21,25は、個別電極28と共通電極29とで挟まれた部分をもたない非活性層で、自発的に変形することができない。
本実施形態では、アクチュエータユニット2に対して図5(a)に示すような矩形状の波形を有する駆動パルスを印加するものとする。
図5(a)に示す駆動パルスにおいて、時間(i),(iii)の範囲では電圧0、時間(ii)の範囲では電圧E1となる。そしてこの(ii)の時間T1が、当該駆動パルスのパルス幅であり、T1=T0(T0:圧力室11の長手方向に沿って圧力波が片道伝播する時間)である。
ここで、駆動パルスの印加によるアクチュエータユニット2の状態変化について説明する。
先ず、駆動パルスを印加する前(図5(a)の時間(i))、全ての個別電極28が共通電極29と同じくグランド電位に保持されている。このとき、圧電シート21〜25は全領域において図4に示すようにほぼ平坦であって、各ノズル10先端からはインクのメニスカスが突出したりインクが吐出されたりしていない。
その後適切なタイミングで、インク吐出動作を行うべき圧力室11に対応する個別電極28に駆動パルスを印加する(図5(a)の時間(ii))。このとき当該個別電極28は電圧E1となり、これに対応する圧電シート21〜25各部分が全体として圧力室11と反対側(即ち上方に)に凸になるように変形する。これにより、その下側にある圧力室11の容積は上記時間(i)のときよりも増大し、圧力室11内にマニホールド6a・7a,6b・7b側に進行する負の圧力波が生じると共に、マニホールド6a・7a,6b・7b側から圧力室11内にインクが吸い込まれる。
駆動パルスの印加は時間T1の間維持され、その後個別電極28は再び電位0に戻る(図5(a)の時間(iii))。このとき時間(i)と同様に、全ての個別電極28が共通電極29と同じくグランド電位に保持され、圧電シート21〜25は全領域においてほぼ平坦になる。
駆動パルスの印加終了時(図5における時間(ii)から(iii)の境界の時点)には、圧力室11の容積が増大した状態から元の状態へと急変するため、圧力室11内にノズル10側に進行する正の圧力波が生じる。この正の圧力波は、先に駆動パルスの印加によって発生した負の圧力波が流路ユニット1内のインク流路端部(本実施形態では図4に示す絞り部11bの圧力室11側端部)で反転反射して正の圧力波となったものと重なる。このように圧力波が重畳されることにより圧力室11内のインクに強い圧力が与えられ、インクは圧力室11の一端11aから孔12a,12b,12cを通り、ノズル10先端から吐出される。
なお、図5(a)に示す駆動パルスは1つのインク滴に対応するものであって、インクジェットヘッド101は、当該駆動パルスの印加により1つのドットに対して1つのインク滴を吐出する他、階調印字を行うため、1つのドットに対して複数(例えば、2〜4)のインク滴を吐出することが可能である。図5(b)は1つのドットに対して4つのインク滴を吐出する場合を示し、4つの駆動パルスがアクチュエータユニット2に連続して印加される。
[実施例]
本発明に係るインクジェットヘッドの効果について検討するため、流路ユニット1内のインク流路の構成、アクチュエータユニット2に付与する駆動パルスの周波数、ヘッドを使用する温度環境など、様々なパラメータを変化させて実験を行った。
温度環境については5〜45℃とし、5℃ずつ変化させた。表1に、各温度条件におけるインクの粘度μを示す。
Figure 2005297557
圧力室11については、幅b・高さh(図6参照)をそれぞれ250μm・40μmと統一し、流路長lを1460μm、1960μm、2460μmと変化させて、それぞれをタイプ(i)(ii)(iii)とした。表2に、圧力室の各タイプ(i)(ii)(iii)における流路抵抗Rを示す。
Figure 2005297557
流路抵抗Rは、下記式(1)(2)から算出した(ここで、ΔP:圧力損失、Q:流量、r:等価半径)。式(2)はいわゆる“ポアズイユの法則”によるものである。なお、表2には一例として温度20℃のとき(即ち、インクの粘度μ=3.2cpsのとき。表1参照)の流路抵抗Rが示されており、以下に示す表3、表4、表5においてもこれと同様である。
Figure 2005297557
Figure 2005297557
圧力室11からノズル10(図4参照)に至る手前までのインク流路、即ち各プレート4,6,7の孔12a,12b,12cによって形成されるインク流路(圧力室―ノズル間連絡通路)については、プレート厚を変化させることで、流路長lを変化させた。表3に、圧力室―ノズル間連絡通路の各タイプ(i)(ii)(iii)における流路抵抗Rを示す。
Figure 2005297557
ノズル10については、図7に示すように、テーパ角度θ・流路長l(プレート9の厚み)をそれぞれ8°・75μmと統一し、吐出口の径dを変化させて、それぞれをタイプ(i)(ii)(iii)(iv)(v)とした。表4に、ノズルの各タイプ(i)〜(v)における吐出口の径dと流路抵抗Rbとを示す。
Figure 2005297557
絞り部11bについては、図8(a),(b)に示すように、流路長lを550μmと統一し、幅b・高さhを互いに一定の関係を持たせつつ変化させた。表5に、絞り部の各タイプ(i)〜(iv)における幅b・高さhと流路抵抗Raとを示す。
Figure 2005297557
アクチュエータユニット2に付与する駆動パルスの波形については、図5に示すように、パルス幅T1=T0(T0:圧力室11の長手方向に沿って圧力波が片道伝播する時間)とした。また、電圧E1については各温度にてインク吐出速度が9m/sとなる値とし、周波数については5〜96kHzの範囲で変化させた。
以上のように流路ユニット1内のインク流路の各要素をそれぞれ流路抵抗Rが異なるようにタイプ分けし、それら各タイプの組み合わせにより形成されるヘッドについてそれぞれ吐出安定性を調べた。表6に、一例として、圧力室のタイプ(i)と圧力室―ノズル間連絡通路のタイプ(i)との組み合わせに関する実験結果を示す。当該表において“不安定”とは、インクが霧状に(即ち所望の吐出方向以外の方向を含む多方向に)吐出されたり、吐出速度が著しく低い又は吐出不能であったりすることを意味する。
Figure 2005297557
表6から、〇(温度5〜45℃・駆動パルスの周波数24,12,6kHz各場合全てにおいて安定)が帯状に分布しているのがわかる。つまり、絞り部及びノズルの構成が吐出安定性に大きく関わっていることがわかる。ここで、表6に各場合に対応する、絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbを表7に示す。
Figure 2005297557
表7から、この例(圧力室のタイプ(i)と圧力室―ノズル間連絡通路のタイプ(i)との組み合わせ)では、絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbが0.48〜1.26である場合に、駆動パルスの周波数やヘッドを使用する温度環境が上記所定範囲の全てにおいて、安定した吐出を実現可能であることがわかる。
さらに表8及び図9に、5〜96kHzの範囲で任意に変化させた駆動パルスの周波数の各場合における、安定した吐出が実現可能な絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbの上限及び下限を示す。
Figure 2005297557
表8及び図9から、駆動パルスの周波数が12kHzのときに、Ra/Rbの上限及び下限がそれぞれ最低値(0.48)及び最高値(1.26)であるのがわかる。
なお、表6〜表8及び図9には、圧力室のタイプ(i)と圧力室―ノズル間連絡通路のタイプ(i)との組み合わせに係るデータを示したが、これら2つの要素の他の組み合わせにおいてもほぼ同様のデータが得られた。つまり、圧力室のタイプ(i)〜(iii)及び連絡通路のタイプ(i)〜(iii)の全ての組み合わせにおいて、安定した吐出が実現可能なRa/Rbの値はほぼ同じであった。
以上の実験結果から、絞り部11bの流路抵抗Raとノズル10の流路抵抗Rbとの比を0.48〜1.26とすることによって、アクチュエータユニット2に付与される駆動パルスの周波数やヘッドを使用する温度環境が様々であっても安定した吐出が実現可能であることがわかった。さらに、設計誤差が生じたり使用設定温度外になったり、その他様々な不都合が生じても、吐出安定性を良好に保持することができるという観点からは、Ra/Rbが0.63〜1.05であることが好ましく、0.8〜1.0であればより好ましい。
なお、Ra/Rbが上記所定範囲以外であるときに吐出安定性が損なわれるのは、絞り部11bを介した圧力室11へのインクの供給とノズル10からのインクの吐出とのバランスが崩れることが原因であると推察される。より具体的には、以下のような現象が起こると考えられる。絞り部11bを介してマニホールド6a・7a,6b・7bから圧力室11内へと供給されるインクの量は、Ra/Rbが上限値1.26を上回る場合は不足し、逆にRa/Rbが下限値0.48を下回る場合は過剰になる。圧力室11内へのインク供給が過剰な場合、ノズル10先端において形成されるメニスカスが突出しすぎて、余分なインクが霧状に吐出されるなどの不都合が生じ得る。一方、圧力室11内へのインク供給が不足する場合、メニスカスがノズル10内に引き込まれた形状となると共に圧力室11内に余分な空気が巻き込まれて、吐出に必要となる圧力が当該空気に吸収されることにより、インクの吐出速度が著しく低くなったり吐出不能となったりするなどの不都合が生じ得る。
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。つまり、本発明は、インクを収容するインク室と、インク室からインクが供給される圧力室と、圧力室上に配置されており、駆動パルスの印加により変形して前記圧力室の容積を変化させる圧電素子と、インク室と前記圧力室との間に配置されており、前記圧力室よりも流路の狭い絞り部と、前記圧力室に連通しており、前記圧力室の容積変化に伴ってインクを吐出するノズルと、を備えている限り、上述の実施形態に限定されず、その他様々な構成のインクジェットヘッドに適用可能である。例えば、以下のような変形例が考えられる。
絞り部11bは、ハーフエッチングにより形成されていなくてよい。
ヘッドの流路ユニット1は、板状材料であるプレート3,4,6,7,9を積層して構成されなくてもよく、例えば単一の固体内にインク流路を構成する空間(即ち、インク室、圧力室、絞り部、及びノズルを含む空間)を形成してもよい。
ノズル10にテーパを付けない(θ=0)など、ヘッド内に形成されるインク流路の形状・サイズなどを様々に変更可能である。
最上層の圧電シート25の材料は、表面電極26,27に電圧が印加されても不要な変位を起こさないという観点から、強誘電性を有するPZTではなく、低誘電率又は絶縁性を有する材料からなってよい。しかし一体形成を行えるという観点からは、他の圧電シート21〜24と同じPZTからなることが好ましい。
アクチュエータユニット2に付与される駆動パルスの波形は、図5(a),(b)に描かれたものと上下逆の形状であってもよい。
インク吐出に係るアクチュエータユニット2の駆動方法については、上述のように、常態において圧電シートを平坦とし、駆動パルスの印加に応じて圧電シートの活性部を圧力室と反対側に凸に変形させ、その後シートを平坦に戻すことでインクを吐出させるのに限定されない。例えば、常態において圧電シートを平坦とし、駆動パルスの印加に応じて圧電シートの活性部を圧力室側に凸に変形させることで圧力室の容積を小さくしてインクを吐出させ、その後シートを平坦に戻して圧力室内にインクを供給するという方法や、常態において圧電シートの活性部を圧力室側に凸に変形させておき、駆動パルスの印加に応じて圧電シートを平坦にして圧力室の容積を増大させ、その後再び活性部を圧力室側に凸に変形させることで圧力室の容積を元のように小さくしてインクを吐出させるという方法などを採用してもよい。
駆動パルスの周波数は、5〜96kHzであることに限定されない。
上述した実施の形態では共通電極の電位を常に0(V)としているが、これに限定されない。
また、上述した実施の形態では、圧電素子からなるアクチュエータユニット2によって圧力室11内のインクに圧力波を付与したが、これに限られることはなく、電気−熱変換素子や静電方式のアクチュエータによって圧力波を付与するようにしてもよい。
また、本発明のインクジェットヘッドは、プリンタに限定されず、インクジェット式のファクシミリやコピー機にも適用可能である。
本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。 図1に示すインクジェットヘッドに含まれる流路ユニットの分解斜視図である。 図2に示す流路ユニットの部分拡大斜視図である。 図1のIV―IV線断面図である。 アクチュエータユニットに供給される駆動パルスを示す概略図であり、(a)は1つのインク滴を吐出する場合、(b)は4つのインク滴を吐出する場合を示す。 圧力室の空間形状を示す概略図である。 ノズルプレートに形成されたノズルを示す断面図である。 (a)は、図4における絞り部近傍の部分拡大図である。(b)は、(a)のB−B線に沿った断面図である。 5〜96kHzの範囲で任意に変化させた駆動パルスの周波数の各場合における、安定した吐出が実現可能な絞り部の流路抵抗Raとノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbの上限及び下限を示すグラフである。
符号の説明
1 流路ユニット
2 アクチュエータユニット
3 キャビティプレート(板状材料)
4 ベースプレート(板状材料)
6,7 マニホールドプレート(板状材料)
6a・7a,6b・7b マニホールド(インク室)
9 ノズルプレート(板状材料)
10 ノズル
11 圧力室
11b 絞り部
21,22,23,24,25 圧電シート(圧電素子)
28 個別電極
29 共通電極
40 フレキシブルプリント配線板
101 インクジェットヘッド

Claims (8)

  1. インクを収容するインク室と、
    前記インク室からインクが供給される圧力室と、
    前記圧力室上に配置されており、駆動パルスの印加により前記圧力室内のインクに圧力変動を与える圧力付与手段と、
    前記インク室と前記圧力室との間に配置されており、前記圧力室よりも流路の狭い絞り部と、
    前記圧力室に連通しており、前記圧力室の容積変化に伴ってインクを吐出するノズルと、を備え、
    前記絞り部の流路抵抗Raと前記ノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbが0.48〜1.26であることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記圧力付与手段が、前記駆動パルスの印加により変形して前記圧力室の容積を変化させる圧電素子であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記圧電素子が、前記駆動パルスの印加時に前記圧力室の容積を増大させるように変形し、前記駆動パルスの印加終了時に前記圧力室の容積を元に戻すように変形することを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記絞り部の流路抵抗Raと前記ノズルの流路抵抗Rbとの比Ra/Rbが0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記駆動パルスの周波数が5〜96kHzであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記絞り部が、ハーフエッチングにより形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  7. 複数の板状材料を積層することにより構成されており、
    前記インク室、前記圧力室、前記絞り部、及び前記ノズルが前記複数の板状材料のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  8. 前記絞り部が、前記圧力室が形成されたのと同じ板状材料に、ハーフエッチングにより形成されていることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド。
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