JP2005299920A - クラッチ装置 - Google Patents

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Takashi Kuwabara
貴史 桑原
Takatsugu Ibaraki
隆次 茨木
Toshiya Yamashita
俊哉 山下
Michio Yoshida
倫生 吉田
朋亮 ▲柳▼田
Tomoaki Yanagida
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Abstract

【課題】 クラッチ係合を速やかに応答性よく実行可能なクラッチ装置の提供。
【解決手段】 クラッチ装置50は、クラッチドラム51と、クラッチドラム51内に移動自在に配置されるピストン52とを備え、クラッチ係合の際にクラッチドラム51とピストン52との間の油室53に作動油を供給してピストン52を移動させるものである。そして、ピストン52を挟んで油室53の反対側には、作動油で満たされる遠心油圧キャンセル室55を画成するキャンセルプレート54が配置されており、クラッチ係合の際に、遠心油圧キャンセル室55内の作動油は、当該遠心油圧キャンセル室55の外周側から外部に排出される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、クラッチドラムとピストンとを備えたクラッチ装置に関し、特に、クラッチドラムとピストンとの間の油室内に生じる遠心油圧を相殺することができるクラッチ装置に関する。
従来から、クラッチドラムとピストンとの間の油室内に生じる遠心油圧を相殺するための遠心油圧キャンセル室を備えたクラッチ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このクラッチ装置では、ピストンを挟んで上記油室の反対側にキャンセルプレートが配置され、このキャンセルプレートとピストンとの間に作動油で満たされる遠心油圧キャンセル室が画成される。そして、クラッチ係合の際には、ピストンがキャンセルプレートに向けて移動するように上記油室内に作動油が供給される。この場合、ピストンがキャンセルプレートに接近することにより遠心油圧キャンセル室の容積が減少するので、遠心油圧キャンセル室内の作動油を外部に排出する必要が生じる。このため、特許文献1に記載のクラッチ装置では、クラッチ係合の際、キャンセルプレートの内周部とキャンセルプレートが固定される回転部材とに形成された切欠きから、遠心油圧キャンセル室内の作動油が外部に排出される。
特開2001−41261号公報
しかしながら、上述のように構成される従来のクラッチ装置では、クラッチ係合のためにピストンをキャンセルプレートに向けて移動させ始めてからクラッチ係合が完了するまでのタイムラグが大きく、特に、作動油の流動性が悪化する周囲温度が低い場合、このようなタイムラグが顕著となるおそれがあった。
そこで、本発明は、クラッチ係合を速やかに応答性よく実行することができるクラッチ装置の提供を目的とする。
本発明によるクラッチ装置は、クラッチドラムと、クラッチドラム内に移動自在に配置されるピストンとを備え、クラッチ係合の際にクラッチドラムとピストンとの間の油室に作動油を供給してピストンを移動させるクラッチ装置において、ピストンを挟んで油室の反対側に、作動油で満たされる遠心油圧キャンセル室を画成するキャンセルプレートを備え、クラッチ係合の際に、遠心油圧キャンセル室内の作動油が該遠心油圧キャンセル室の外周側から外部に排出されることを特徴とする。
一般に、遠心油圧キャンセル室内においても、クラッチドラムとピストンとの間の油室と同様に遠心油圧が発生することから、遠心油圧キャンセル室内の作動油の圧力は、キャンセル室内の外周側ほど高まることになる。従って、このクラッチ装置のように、クラッチ係合の際に遠心油圧キャンセル室内の作動油がキャンセル室の外周側から外部に排出されるようにしておけば、ピストンをキャンセルプレートに向けて移動させ始めると、ピストンの移動量に応じた量の作動油が遠心油圧キャンセル室から外部へと速やかに流出することになる。この結果、このクラッチ装置では、周囲温度が低く作動油の粘性が高いような場合であっても、クラッチ係合を開始してから完了するまでのタイムラグを良好に低減可能となり、クラッチ係合を速やかに応答性よく実行することができる。
この場合、本発明によるクラッチ装置では、クラッチ係合のためにピストンをキャンセルプレートに向けて移動させると、ピストンの外周部とキャンセルプレートの外周部との間に流路が形成されると好ましい。
また、ピストンは、キャンセルプレートの外周部と当接可能な段部を有し、当該段部は、クラッチ解除の際にキャンセルプレートと協働して遠心油圧キャンセル室からの作動油の流出を規制すると好ましい。このような構成によれば、クラッチ解除の際には、遠心油圧キャンセル室からの作動油の流出を確実に阻止可能となり、クラッチ係合の際には、遠心油圧キャンセル室内の作動油をキャンセル室の外周側から外部へと速やかに流出させることができる。そして、かかる構成は、低コストかつ容易に実現することができる。
更に、ピストンの外周部およびキャンセルプレートの外周部のそれぞれには孔部が形成され、クラッチ係合のためにピストンを移動させると、ピストンの孔部とキャンセルプレートの孔部とが互いに連通してもよい。このような構成によっても、クラッチ解除の際には、遠心油圧キャンセル室からの作動油の流出を確実に阻止可能となり、クラッチ係合の際には、遠心油圧キャンセル室内の作動油をキャンセル室の外周側から外部へと速やかに流出させることができる。そして、かかる構成も、低コストかつ容易に実現することができる。
また、本発明によるクラッチ装置は、クラッチ係合が完了する際に遠心油圧キャンセル室からの作動油の排出が規制されると好ましい。このような構成のもとでは、クラッチ係合が完了した際(実質的に完了した際)に、遠心油圧キャンセル室内に作動流体を残留させることが可能となる。これにより、クラッチ解除に際して、遠心油圧キャンセル室内に残留した作動流体からピストンに対して遠心油圧による反力を作用させることができるので、クラッチ解除を速やかに応答性よく良好に実行可能となる。
この場合、クラッチ係合のためにピストンをキャンセルプレートに向けて移動させると、ピストンの外周部とキャンセルプレートの外周部との間に流路が形成され、ピストンをキャンセルプレートに向けて更に移動させると、クラッチ係合の完了前に流路が閉鎖されると好ましい。また、ピストンは、キャンセルプレートの外周部と当接可能な第1の段部と、この第1の段部よりも内側に形成されており、キャンセルプレートの外周部と当接可能な第2の段部とを含み、第1の段部と第2の段部との間では、キャンセルプレートの外周部とピストンとの間に隙間が形成されると好ましい。
本発明によれば、クラッチ係合を速やかに応答性よく実行することができるクラッチ装置の実現が可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明によるクラッチ装置を含む車両用トランスアクスルの一部を示す拡大断面図である。同図に示されるトランスアクスル1は、図示されないエンジンの側方に配置され、当該エンジンのクランクシャフトと連結される。トランスアクスル1は、トランスアクスルハウジング2やトランスアクスルケース3を含む。トランスアクスルハウジング2の内部には、トルクコンバータ10が配置されており、トランスアクスルケースの内部には、本発明によるクラッチ装置50を含む前後進切り換え機構(動力伝達装置)30やベルト式無段変速機(CVT)5、更には、図示されない最終減速機(差動装置)等が配置される。
トルクコンバータ10は、図示されないドライブプレートを介してエンジンのクランクシャフトに固定されるフロントカバー11を有する。フロントカバー11には、図1に示されるように、ポンプインペラ12が取り付けられている。また、トルクコンバータ10は、ポンプインペラ12と対向する状態で回転可能なタービンランナ13を含む。タービンランナ13は、タービンハブ14を介してクランクシャフトと概ね同軸に延びる入力シャフトSに固定されている。更に、ポンプインペラ12およびタービンランナ13の内側にはステータ15が配置されている。ステータ15には、その回転方向を一方向のみに設定するワンウェイクラッチ16を介して中空軸17が固定されており、上述の入力シャフトSは、この中空軸17の内部に挿通されている。このように構成されるトルクコンバータ10は、ポンプインペラ12とタービンランナ13との回転速度差が大きい時には、トルク増幅機として作動し、両者の回転速度差が小さくなると、流体継手として作動する。
そして、入力シャフトSのフロントカバー11側の端部には、タービンハブ14に連結されたダンパユニット18と、ロックアップピストン190や摩擦板191を含み、フロントカバー11とダンパユニット18(タービンハブ14)とを連結するロックアップクラッチ機構19が配置されている。ロックアップクラッチ機構19は、車両の発進後、車速が所定速度に達すると作動され、それにより、エンジンからフロントカバー11に伝えられた動力が入力シャフトSに機械的かつ直接に伝達されるようになる。また、フロントカバー11から入力シャフトSに伝達されるトルクの変動は、ダンパユニット18によって吸収される。
図1に示されるように、本実施形態のロックアップクラッチ機構19では、入力シャフトSのフロントカバー11側の先端部が縮径されており、入力シャフトSの縮径部Sdによってロックアップピストン190の内周側端部190aが支持される。そして、ロックアップピストン190の内周側端部190aは、タービンハブ14に向けて延在しており、入力シャフトSの大径部の端面Seによって位置決めされる。これにより、ロックアップクラッチ機構19では、ロックアップ時にタービンハブ14の前後の差圧を無くすことができるので、フロントカバー11とロックアップピストン190との間にスラスト軸受を配置する必要がない。また、本実施形態では、図1からわかるように、入力シャフトSを縮径させた分だけ、ロックアップピストンの受圧面積が大きくなるので、その分だけトルク容量を増大化させることができる。なお、図1の例では、ロックアップクラッチ機構19は、単板式のクラッチ機構として構成されているが、これに限られるものではなく、ロックアップクラッチ機構19は、多板クラッチ機構として構成されてもよい。
また、図2に示されるように、入力シャフトSのフロントカバー11側の先端部は、縮径されなくてもよい。図2に示されるトルクコンバータ10Aのロックアップクラッチ機構19Aでは、ロックアップピストン190の内周側端部190aが入力シャフトSの縮径されていない先端部によって支持され、ロックアップピストン190は、タービンハブ14のフロントカバー11側に形成された凹部14aによって位置決めされる。かかる構成を採用しても、ロックアップ時に、タービンハブ14の前後の差圧を無くすことが可能となるので、フロントカバー11とロックアップピストン190との間にスラスト軸受を配置する必要がなくなる。
図1に示されるように、トルクコンバータ10と前後進切り換え機構30との間には、オイルポンプ20が配置されている。オイルポンプ20は、ポンプボディー21、ポンプカバー22、ドライブギヤ23およびドリブンギヤ24等を含む。ドライブギヤ23は、ハブ25を介してポンプインペラ12と接続されると共に、中空軸17に対してスプライン嵌合されている。また、ポンプボディー21とポンプカバー22とは、互いにボルト結合された上でトランスアクスルケース3側に固定されている。従って、エンジンの動力は、ポンプインペラ12を介してドライブギヤ23に伝達されることになり、これにより、オイルポンプ20が駆動される。
一方、前後進切り換え機構30は、入力シャフトSと変速機5との間の動力伝達経路上に設けられており、遊星歯車機構40と、いわゆるフォワードクラッチとして用いられる本発明によるクラッチ装置50と、リバースブレーキ70とを含む。遊星歯車機構40は、リングギヤ41、入力シャフトSに取り付けられたサンギヤ42、リングギヤ41またはサンギヤ42と噛合う複数のピニオンギヤ44、並びにピニオンギヤ44をサンギヤ42の周囲で一体的に公転可能な状態に保持するキャリヤ45を含む。リングギヤ41、サンギヤ42、およびピニオンギヤ44としては、ギヤノイズを低減するためにヘリカルギヤが採用される。
クラッチ装置50は、遊星歯車機構40を介した入力シャフトSと変速機5のプライマリシャフト6との動力伝達経路を接続・遮断するものである。図1および図3に示されるように、クラッチ装置50は、ポンプカバー22等を介して入力シャフトSに連結されたクラッチドラム51を含む。クラッチドラム51は、ポンプカバー22に対して入力シャフトSの軸方向に嵌め込まれる基部51aと、基部51aから入力シャフトSの径方向に延出された径方向端部51bと、径方向端部51bの外周部から変速機5に向けて入力シャフトSと概ね平行に延出された外側筒状部51cとを有する。
クラッチドラム51の内部には、ピストン52が摺動自在に配置されている。ピストン52は、クラッチドラム51の基部51aに対して入力シャフトSの軸方向に摺動自在となるように嵌め込まれる基部52aと、基部52aから入力シャフトSの径方向に延出された径方向端部52bと、径方向端部52bの外周部から変速機5に向けて入力シャフトSと概ね平行に延出された外側筒状部(ピストンの外周部)52cとを有する。クラッチドラム51の基部51aとピストン52の基部52aとの間およびクラッチドラム51の外側筒状部51cとピストン52の外側筒状部52cとの間は、油密状態に保たれる。そして、クラッチドラム51とピストン52との間には油室53が画成され、クラッチドラム51の基部51aには、油室53に作動油を供給するための孔部51dが形成されている。
更に、クラッチドラム51の基部51aには、ピストン52を挟んで油室53の反対側に位置するようにキャンセルプレート54が固定されている。キャンセルプレート54の外周端部は、クラッチドラム51の外側筒状部51cの内面付近に達しており、キャンセルプレート54は、ピストン52の背面と協働して遠心油圧キャンセル室55を画成する。クラッチドラム51の基部51aには、遠心油圧キャンセル室55に作動油を供給するための孔部51eが形成されており、遠心油圧キャンセル室55は基本的に作動油で満たされる。また、ピストン52(径方向端部52b)の背面とキャンセルプレート54との間には、リターンスプリング56が配置されている。リターンスプリング56は、ピストン52をクラッチドラム51の径方向端部51bに向けて付勢する。
そして、クラッチドラム51の外側筒状部51cの内面には、入力シャフトSと平行に延びる複数のスプライン51sが所定間隔をおいて配設されており、これらのスプライン51sには、受圧板57と複数の摩擦板58とが摺動自在に嵌め込まれている。受圧板57と各摩擦板58とは、クラッチドラム51に対して入力シャフトSの軸方向に摺動自在である一方、入力シャフトSの周方向においてクラッチドラム51と一体化されている。受圧板57は、ピストン52の外側筒状部52cの遊端部と接触できるように、最もピストン52に近接して配置されている。また、最も変速機5側の摩擦板58は、スナップリング59によって軸方向に位置決めされている。
図3に示されるように、複数のピニオンギヤ44を一体的に保持するキャリヤ45は、クラッチドラム51に向けて延びる筒状部45aを有しており、この筒状部45aの外周面にも入力シャフトSと平行に延びる複数のスプライン45sが所定間隔をおいて配設されている。これらのスプライン45sには、複数の摩擦板46が摺動自在に嵌め込まれている。各摩擦板46は、クラッチドラム51の互いに隣り合う摩擦板58同士の間に配置されており、筒状部45aに対して入力シャフトSの軸方向に摺動自在である一方、入力シャフトSの周方向において筒状部45aと一体化されている。また、キャリヤ45は、変速機5に向けて延びる連結部45bを有しており、この連結部45bは、プライマシャフト6に連結(スプライン嵌合)されている。
リバースブレーキ70は、リングギヤ41の回転を許容または規制することにより、プライマリシャフト6の回転方向を制御するものである。すなわち、リバースブレーキ70は、入力シャフトSと平行に延びる複数のスプライン70sを有する。これら複数のスプライン70sは、リングギヤ41を囲むようにトランスアクスルケース3の内面に所定間隔をおいて配設されており、これらのスプライン70sには、複数の摩擦板71が摺動自在に嵌め込まれている。各摩擦板71は、トランスアクスルケース3に対して入力シャフトSの軸方向に摺動自在である一方、入力シャフトSの周方向においてトランスアクスルケース3と一体化されている。また、最もクラッチドラム51側の摩擦板71は、スナップリング72によって軸方向に位置決めされる。
そして、リングギヤ41の外周面にも、入力シャフトSと平行に延びる複数のスプライン41sが所定間隔をおいて配設されている。これらのスプライン41sには、複数の摩擦板73が摺動自在に嵌め込まれている。各摩擦板73は、トランスアクスルケース3側の摩擦板71同士の間に配置されており、リングギヤ41に対して入力シャフトSの軸方向に摺動自在である一方、入力シャフトSの周方向においてリングギヤ41と一体化されている。
更に、トランスアクスルケース3の内部には、ブレーキピストン74が摺動自在に配置されており、ブレーキピストン74の背後には、油室75が形成されている(図1参照)。ブレーキピストン74には、リターンスプリング76を介してリテーナ77が接続されている。リテーナ77は、トランスアクスルケース3の各スプライン70sに嵌め込まれており、最も変速機5側の摩擦板71と当接可能である。これらのブレーキピストン74、油室75、リターンスプリング76およびリテーナ77は、リバースブレーキ70の油圧アクチュエータを構成する。
さて、上述のように構成されるトランスアクスル1では、ユーザによって変速機5がパーキングあるいはニュートラルレンジからドライブレンジに設定されると、孔部51dを介してクラッチドラム51とピストン52との間の油室53に作動油が供給され、リターンスプリング56の付勢力に抗してピストン52がキャンセルプレート54(変速機5)に向けて移動し、ピストン52の外側筒状部52cの遊端部が受圧板57を押圧するようになる。これにより、クラッチドラム51側の摩擦板58と、キャリヤ45(筒状部45a)側の摩擦板46とが摩擦接触(クラッチ係合)し、クラッチドラム51と、プライマリシャフト6と結合したキャリヤ45とが連結されることになる。この結果、クラッチ装置50によりクラッチ係合が実行されると、エンジンからの駆動力が同じ回転方向でキャリヤ45を介して変速機5(プライマリシャフト6)へと伝達される。
なお、油室53から作動油を排出させ、クラッチドラム51側の摩擦板58と、キャリヤ45(筒状部45a)側の摩擦板46との摩擦接触を解除(クラッチ解除)した状態で、リバースブレーキ70によってリングギヤ41がロックされると、エンジンからの駆動力は、逆回転でキャリヤ45を介して変速機5へと伝達されることになる。
ここで、クラッチ装置50では、クラッチドラム51が入力シャフトSと共に回転することから、油室53内の作動油には遠心力が作用し、油室53内で遠心油圧が発生する。このため、クラッチ装置50では、ピストン52の背後に作動油で満たされる遠心油圧キャンセル室55が画成されており、遠心油圧キャンセル室55内で発生する遠心油圧によって油室53内で発生した遠心油圧が相殺される。このように構成されるクラッチ装置50では、クラッチ係合のために、ピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させる必要があり、ピストン52がキャンセルプレート54に接近することにより遠心油圧キャンセル室55の容積が減少する。従って、クラッチ係合の際には、遠心油圧キャンセル室55内の作動油を外部に排出する必要があるが、遠心油圧キャンセル室55からの作動油排出がスムースに行われないと、ピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させ始めてからクラッチ係合が完了するまでのタイムラグが大きくなってしまう。
このような点を考慮して、本発明によるクラッチ装置50では、クラッチ係合の際に遠心油圧キャンセル室55内の作動油がキャンセル室55の外周側から外部に排出される。すなわち、入力シャフトSの回転中、遠心油圧キャンセル室55内においても、クラッチドラム51とピストン52との間の油室53と同様に遠心油圧が発生することから、遠心油圧キャンセル室55内の作動油の圧力は、キャンセル室55内の外周側ほど高まることになる。従って、クラッチ係合の際に遠心油圧キャンセル室55内の作動油がキャンセル室55の外周側から外部に排出されるようにしておけば、ピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させ始めると、ピストン52の移動量に応じた量の作動油が遠心油圧キャンセル室55から外部へと速やかに流出することになる。
本実施形態では、クラッチ係合時のキャンセル室55からの作動油の速やかな排出と、クラッチ解除時のキャンセル室55からの作動油の流出阻止とを低コストかつ容易に達成するために、図3および図4に示されるような構成が採用されている。すなわち、ピストン52の外側筒状部52cの遊端部には、入力シャフトSに向けて突出する段部52dが全周にわたって形成されており、キャンセルプレート54の外周端部には、シール材60が全周にわたって固定されている。段部52dの最内周部は、キャンセルプレート54のシール材60の最外周部よりも入力シャフトSに近づいており、キャンセルプレート54は、シール材60(キャンセルプレート54の外周端部)がピストン52の外側筒状部52cの端面よりも径方向端部52b側に位置するようにクラッチドラム51に固定されている。
これにより、ピストン52による受圧板57の押圧が解除された状態(クラッチ解除状態)では、ピストン52の段部52dと、キャンセルプレート54のシール材60(キャンセルプレート54の外周端部)とが図3に示されるように互いに当接し合う。従って、ピストン52の段部52dは、クラッチ解除の際にキャンセルプレート54(シール材60)と協働して遠心油圧キャンセル室55からの作動油の流出を確実に阻止する。
これに対して、クラッチ係合のためにピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させると、図4に示されるように、ピストン52の段部52dとキャンセルプレート54のシール材60との間には流路(隙間)が形成されることになる。従って、クラッチ装置50では、クラッチ係合に際して、遠心油圧キャンセル室55内の作動油をキャンセル室55の外周側から外部へと速やかに排出させることができる。この結果、クラッチ装置50では、周囲温度が低く作動油の粘性が高いような場合であっても、クラッチ係合の開始から完了までのタイムラグを良好に低減可能となり、クラッチ係合を速やかに応答性よく実行することができる。なお、遠心油圧キャンセル室55の外周側から外部に流出した作動油は、クラッチドラム51の基部51aに形成された孔部51fを介して油圧系統へと戻される。
図5は、本発明によるクラッチ装置の変形例を示す断面図である。図5の例では、ピストン52の外側筒状部52cに段部を形成する代わりに、外側筒状部52cの遊端部に段部61dを有する段付シール材61が全周にわたって固定されている。また、キャンセルプレート54の外周端部には、シール材は取り付けられていない。かかる構成のもとでは、クラッチ解除状態では、ピストン52に取り付けられた段付シール材61の段部61dと、キャンセルプレート54の外周端部とが図5に示されるように互いに当接し合う。従って、ピストン52側の段部61dは、クラッチ解除の際にキャンセルプレート54と協働して遠心油圧キャンセル室55からの作動油の流出を確実に阻止する。
一方、クラッチ係合のためにピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させると、ピストン52に取り付けられた段付シール材61の段部61dとキャンセルプレート54の外周端部との間には流路(隙間)が形成され、遠心油圧キャンセル室55内の作動油は、キャンセル室55の外周側から外部へと速やかに流出する。このように、図5の構成を採用しても、クラッチ係合時のキャンセル室55からの作動油の速やかな排出と、クラッチ解除時のキャンセル室55からの作動油の流出阻止とを低コストかつ容易に達成することができる。
図6および図7は、本発明によるクラッチ装置の他の変形例を示す断面図である。図6および図7の例では、ピストン52に対して段部を設ける代わりに、ピストン52の外側筒状部52cに孔部52hが形成されている。また、キャンセルプレート54は、クラッチドラム51の基部51aに向けて入力シャフトSと概ね平行に延出された外側筒状部54cを有しており、外側筒状部54cには、孔部54hが形成されている。
図6に示されるように、ピストン52が図中最も右側に位置するクラッチ解除状態では、ピストン52の孔部52hとキャンセルプレート54の孔部54hとが重なり合うことはない。そして、ピストン52の外側筒状部52cとキャンセルプレート54の外側筒状部54cとの間には、クラッチ解除状態にある際に孔部52hと孔部54hとの間に位置するようにシール材62が全周にわたって介設されている。また、キャンセルプレート54の外側筒状部54cの両端部に対しても、シール材63および64が備えられている。これらのシール材62,63および64により、クラッチ解除状態では、遠心油圧キャンセル室55からの作動油の流出が確実に阻止される。
これに対して、クラッチ係合のためにピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させると、図7に示されるように、ピストン52の外側筒状部52cに形成された孔部52hと、キャンセルプレート54の外側筒状部54cに形成された孔部54hとが互いに連通するようになる。これにより、ピストン52の外周部とキャンセルプレート54の外周部との間に、孔部52hおよび54hを含む流路が形成されることになるので、遠心油圧キャンセル室55内の作動油をキャンセル室55の外周側から外部へと速やかに流出させることができる。このように、図6および図7に示される構成を採用しても、クラッチ係合時のキャンセル室55からの作動油の速やかな排出と、クラッチ解除時のキャンセル室55からの作動油の流出阻止とを低コストかつ容易に達成することができる。
以下、図8から図11を参照しながら、本発明によるクラッチ装置の第2実施形態について説明する。なお、上述の実施形態に関連して説明されたものと同一の要素には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略される。
図8に示されるクラッチ装置50Aにおいても、ピストン52の外側筒状部52cの遊端部に、入力シャフトSに向けて突出する段部52dが全周にわたって形成されており、キャンセルプレート54の外周端部には、シール材60が全周にわたって固定されている。段部52dの最内周部は、キャンセルプレート54のシール材60の最外周部よりも入力シャフトSに近づいており、キャンセルプレート54は、シール材60(キャンセルプレート54の外周端部)がピストン52の外側筒状部52cの端面よりも径方向端部52b側に位置するようにクラッチドラム51に固定されている。そして、このクラッチ装置50Aでは、ピストン52の外側筒状部52cに、段部52dの軸方向内側に位置するように第2の段部52eが全周にわたって形成されている。第2の段部52eの最内周部は、キャンセルプレート54のシール材60の最外周部よりも僅かに入力シャフトSに近づいている。そして、段部52dと第2の段部52eとの間隔x(図9参照)は、シール材60が装着されたキャンセルプレート54の外周端部の軸方向長さよりも長く設定されている。
このように構成されるクラッチ装置50Aでは、クラッチ係合のためにピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させると、図9に示されるように、ピストン52の段部52d(図中右端)とキャンセルプレート54のシール材60との間およびピストン52の段部52e(図中左端)とキャンセルプレート54のシール材60との間には流路(隙間)が形成されることになる。すなわち、段部52dと段部52eとの間では、キャンセルプレート54の外周部とピストン52との間に隙間が形成される。従って、クラッチ装置50Aにおいても、クラッチ係合に際して遠心油圧キャンセル室55内の作動油をキャンセル室55の外周側から外部へと速やかに排出させることができる。
そして、図9の状態からピストン52がキャンセルプレート54に対して更に接近し、クラッチ係合が概ね完了した時点では、図10に示されるように、ピストン52の第2の段部52eとキャンセルプレート54のシール材60とが当接するようになり、クラッチ係合の完了前にはピストン52の段部52e(図中左端)とキャンセルプレート54のシール材60との間の流路が閉鎖される。これにより、クラッチ装置50では、クラッチ係合が完了した際(実質的に完了した際)に、遠心油圧キャンセル室55内に作動流体を残留させることが可能となる。
この結果、クラッチ装置50Aでは、周囲温度が低く作動油の粘性が高いような場合であっても、クラッチ係合の開始から完了までのタイムラグを良好に低減可能となり、クラッチ係合を速やかに応答性よく実行することができる。また、クラッチ装置50Aでは、変速機5がドライブレンジからニュートラルあるいはパーキングレンジに設定されてクラッチ解除が実行される際、遠心油圧キャンセル室55内に残留した作動油からピストン52に対して遠心油圧による反力を作用させることができるので、クラッチ解除を速やかに応答性よく実行可能となる。
なお、図11に示されるように、ピストン52の外側筒状部52cに段部52dおよび52eを形成する代わりに、外側筒状部52cの内周面に、段部61dと、この段部61dから所定間隔をおいて形成された第2の段部61eとを有する段付シール材61Aが全周にわたって固定されてもよい。これにより、ピストン52や段部61dおよび61eの耐久性を向上させることが可能となる。また、段付シール材61Aをピストン52に対して固定するだけで2つの段部61dおよび61eを形成することができるので、生産性を向上させることができる。更に、この場合、キャンセルプレート54の外周端部のシール材は省略され得ることから、その分だけキャンセルプレート54に要するコストを低減させることが可能となる。なお、段部61dと第2の段部61eとを有する段付シール材61Aの代わりに、ピストン52に第1および第2の段部が形成されるように、2つのシール材が外側筒状部52cの内周面に固定されてもよい。
図11の構成のもとでは、クラッチ係合のためにピストン52をキャンセルプレート54に向けて移動させると、ピストン52に固定された段付シール材61の段部61dとキャンセルプレート54の外周部との間および段付シール材61の段部61eとキャンセルプレート54の外周部との間には流路(隙間)が形成されることになる。そして、ピストン52にキャンセルプレートに対して更に接近し、クラッチ係合がほぼ完了した時点で、段付シール材61の段部61eとキャンセルプレート54とが当接するようになり、クラッチ係合の完了前には、段付シール材61の段部61eとキャンセルプレート54との間の流路が閉鎖される。
これにより、図11の構成を採用しても、クラッチ係合に際して、遠心油圧キャンセル室55内の作動油をキャンセル室55の外周側から外部へと速やかに排出させることができる。従って、周囲温度が低く作動油の粘性が高いような場合であっても、クラッチ係合の開始から完了までのタイムラグを良好に低減可能となり、クラッチ係合を速やかに応答性よく実行することができる。また、図11の構成においても、クラッチ係合が完了した際に遠心油圧キャンセル室55内に作動流体を残留させることが可能となるので、クラッチ係合を解除する際に、遠心油圧キャンセル室55内に残留した作動油からピストン52に対して遠心油圧による反力を作用させることができる。従って、図11の構成を採用しても、クラッチ解除を速やかに応答性よく実行可能となる。
本発明によるクラッチ装置を含む車両用トランスアクスルの一部を示す断面図である。 図1のトランスアクスルに適用可能な他のトルクコンバータを示す断面図である。 本発明によるクラッチ装置を示す断面図である。 本発明によるクラッチ装置を示す断面図である。 本発明によるクラッチ装置の変形例を示す断面図である。 本発明によるクラッチ装置の他の変形例を示す断面図である。 本発明によるクラッチ装置の他の変形例を示す断面図である。 本発明によるクラッチ装置の第2実施形態を示す断面図である。 図8のクラッチ装置の動作を説明するための拡大断面図である。 図8のクラッチ装置の動作を説明するための拡大断面図である。 本発明の第2実施形態における変形例を示す断面図である。
符号の説明
1 トランスアクスル
5 ベルト式無段変速機
10,10A トルクコンバータ
19,19A ロックアップクラッチ機構
190 ロックアップピストン
190a 内周側端部
20 オイルポンプ
30 前後進切り換え機構
40 遊星歯車機構
50 クラッチ装置
51 クラッチドラム
51a 基部
51b 径方向端部
51c 外側筒状部
51s スプライン
52 ピストン
52a 基部
52b 径方向端部
52c 外側筒状部
52d,52e 段部
52h 孔部
53 油室
54 キャンセルプレート
54c 外側筒状部
54h 孔部
55 遠心油圧キャンセル室
60,62,63,64 シール材
61,61A 段付シール材
61d,61e 段部
70 リバースブレーキ
S 入力シャフト

Claims (7)

  1. クラッチドラムと、前記クラッチドラム内に移動自在に配置されるピストンとを備え、クラッチ係合の際に前記クラッチドラムと前記ピストンとの間の油室に作動油を供給して前記ピストンを移動させるクラッチ装置において、
    前記ピストンを挟んで前記油室の反対側に、作動油で満たされる遠心油圧キャンセル室を画成するキャンセルプレートを備え、前記クラッチ係合の際に、前記遠心油圧キャンセル室内の作動油が該遠心油圧キャンセル室の外周側から外部に排出されることを特徴とするクラッチ装置。
  2. 前記クラッチ係合のために前記ピストンを前記キャンセルプレートに向けて移動させると、前記ピストンの外周部と前記キャンセルプレートの外周部との間に流路が形成されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置。
  3. 前記ピストンは、前記キャンセルプレートの外周部と当接可能な段部を有し、当該段部は、クラッチ解除の際に前記キャンセルプレートと協働して前記遠心油圧キャンセル室からの作動油の流出を規制することを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチ装置。
  4. 前記ピストンの外周部および前記キャンセルプレートの外周部のそれぞれには孔部が形成されており、前記クラッチ係合のために前記ピストンを移動させると、前記ピストンの前記孔部と前記キャンセルプレートの前記孔部とが互いに連通することを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチ装置。
  5. 前記クラッチ係合が完了する際に遠心油圧キャンセル室からの作動油の排出が規制されることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のクラッチ装置。
  6. 前記クラッチ係合のために前記ピストンを前記キャンセルプレートに向けて移動させると、前記ピストンの外周部と前記キャンセルプレートの外周部との間に流路が形成され、前記ピストンを前記キャンセルプレートに向けて更に移動させると、前記クラッチ係合の完了前に前記流路が閉鎖されることを特徴とする請求項5に記載のクラッチ装置。
  7. 前記ピストンは、前記キャンセルプレートの外周部と当接可能な第1の段部と、この第1の段部よりも内側に形成されており、前記キャンセルプレートの外周部と当接可能な第2の段部とを含み、前記第1の段部と前記第2の段部との間では、前記キャンセルプレートの外周部と前記ピストンとの間に隙間が形成されることを特徴とする請求項6に記載のクラッチ装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020173017A (ja) * 2019-04-15 2020-10-22 トヨタ自動車株式会社 油圧クラッチ
JP2021181804A (ja) * 2020-05-19 2021-11-25 Nok株式会社 密封装置

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