JP2005306873A - ヌクレオシド誘導体、並びにその製造方法および使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】 新規な感光性保護基を有するヌクレオシド誘導体であって、当該保護基が特に迅速に、かつ副反応を生じることなく開裂しうるヌクレオシド誘導体及びその製造法を提供する。
【解決手段】 下記化学式:
(式中、R1〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、NO2、CN、OCH3、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または、炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、Xは、C=OまたはC=Sであり、Yは、S、O、NR’、C(R’)2であり、R’は、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Zは、SO2、OCO、OCS、SCS、COまたはCSであり、nは0、1、2または3であり、ただしnが0の場合、ZはCO、CS、およびSO2から選択され、Nはヌクレオチドである)で表される、感光性保護基を有するヌクレオシド誘導体及びその製造法。
【選択図】なし
【解決手段】 下記化学式:
(式中、R1〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、NO2、CN、OCH3、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または、炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、Xは、C=OまたはC=Sであり、Yは、S、O、NR’、C(R’)2であり、R’は、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Zは、SO2、OCO、OCS、SCS、COまたはCSであり、nは0、1、2または3であり、ただしnが0の場合、ZはCO、CS、およびSO2から選択され、Nはヌクレオチドである)で表される、感光性保護基を有するヌクレオシド誘導体及びその製造法。
【選択図】なし
Description
本発明は、感光性保護基を有するヌクレオシド誘導体、並びに、その製造方法および、例えば空間アドレスされた光制御合成による固体基板上へのDNAチップの製造のための前記誘導体の使用に関する。
分子から官能基を選択的かつ容易に開裂させることは、化学および生物学の多くの分野、特に、ポリマーや天然物質等のような主要な化学種の合成において、重要な役割を果たしている。
これに関連して、例えば、好ましくない副反応によって、意図する2つの分子の連結に影響を与えうる、またはこの連結を阻害しうる特定の反応性基を、これらが所望の連結反応に関与しないように、化学的または物理的に再開裂可能な保護官能基によって選択的に「マスク」または保護することが時として行われている。
溶液中で基材上に結合相手である生体分子が固定化された広範なコンビナトリアルライブラリを用いることは、同一のまたは異なる構造クラスの生体分子どうしの分子の探索の比較研究に特に有利である。「生体分子」という語は、当業者によれば、核酸およびその誘導体、タンパク質、ペプチド、並びに炭化水素のクラスに属する特定の化合物を意味するものと理解される。
共通の分子探索の原理を用いる広範なコンビナトリアルライブラリは、特に核酸の分析に非常に有用である。例えば医学や薬剤の研究において、ガラスまたはポリマー基板上に固定化された、DNAまたは任意の所望のオリゴヌクレオチドのDNAチップ、すなわち、いわゆるマイクロアレイ(S.P.A. Fodor, Science 277 (1997) 393, DNA Sequencing Massively Parallel Genomics)が時に用いられている。
ここで、DNAチップはさらに、遺伝子分析および遺伝子診断にも重要な役割を果たしている。かようなDNAチップを製造するために最も広く用いられている技術は、感光性保護基、すなわち、特定の波長を有する紫外光により選択的に再開裂されてさらなる反応のために保護官能性を付与しうる、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチド構成単位の反応性のための保護基、を用いた固体基板上への空間アドレスされた、平行な、オリゴヌクレオチドの光制御合成である。
これに関連して、上記のようなフォトリソグラフィ技術は、DNAチップの製造に有用である。基板上への所望のオリゴヌクレオチド鎖の合成デザインは、例えば露光(この目的にはUV/VIS領域の電磁波が用いられる)によって次のヌクレオチド用の連結部位を露出する、不安定な、好ましくは感光性の保護基によって、制御される。これらの感光性保護基により、コンビナトリアル戦略は空間選択的な露光を用いて、発展しうる。
この戦略を用いると、合成サイクル数の増加とともにその数が指数関数的に増加する、極めて高密度で空間アドレス可能なオリゴヌクレオチドのマイクロアレイの製造が可能となる。各要素について現状で到達しうるのは25μm2未満の領域であり、理論的には1cm2あたり106超のプローブ領域が収容されうる。露光は、現状ではデジタルプロジェクション技術に用いられているようなマイクロミラーアレイ(S. Singh−Gasson et al., Nature Biotechn. 17 (1999) 974, Maskless Fabrication of Light Directed Oligonucleotide Microarrays using a Digital Micromirror Array)により行われている。従って、時間がかかり高価な露光マスクの作製が省略され、これによりフォトリソグラフィ技術によるDNAチップの迅速な製造が可能となる。
よって、フォトリソグラフィ合成の主要な問題は、有機化学および生物有機化学において種々の化学的な変形に用いられているこれらの感光性保護基の種類に関連するものである(V.N.R. Pillay, Photolithic Deprotection and Activation of Functional Groups; in: Organic Photochemistry, Vol. 9, ed. A. Padwa (Marcel Dekker, New York and Basel, 1987) page 225 et seq.)。最も広く用いられているのは、2−ニトロベンジル基を基礎とする感光性保護基である(J.E.T. Correy and E.R. Trenton, Caged Nucleotides and Neurotransmitters; in: Biological Application of Photochemical Switches, in: Bioorganic Photochemistry Series, Vol. 2, ed. Harry Morrison (Wiley Interscience, 1993), page 243 et seq.)。
DNAチップの製造時に、例えば3’末端から5’末端へ、または5’末端から3’末端へとオリゴヌクレオチド合成する際に末端OH基を保護する目的で、これまでかなりの期間に亘ってDNAチップの製造時の標準的な保護基であった2−ニトロベンジル型の保護基に含まれるMeNPOC(α−メチルニトロピペロニルオキシカルボニル)が、現在では好ましく用いられている(S.P.A. Fodor et al., Science 251 (1991), 767, Light Directed, Spatially Addressable Parallel Chemical Synthesis)。
非常に反応性の高い脱離基である芳香族ニトロソケトンを光照射後に形成することは、この種の保護基については好ましくない。よって、好ましくない副反応および正常な反応が進行するが、これにより、得られるオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドのヌクレオチド合成に欠陥をもたらされることがよくある。かような正常反応および副反応は例えば、存在する感光性保護基自身が電磁波により励起され、励起状態において、分解、分子内および分子間転位などの複数の副反応を引き起こしうることにより生じる。
さらに、DNAチップの製造用には2−(2−ニトロフェニル)エトキシカルボニル化合物が知られている。この保護基は、2−ニトロスチレン誘導体として開裂する(DE−PS 44 44 996, DE−PS 196 20 170 and U.S. 5,763,599)。副反応の妨害については、一般的にはほとんど反応しない2−ニトロスチレンとして開裂する結果、これらの化合物は上記の化合物よりも妨害しやすいとはいえない。
短期間ではあるが、DMBOC基(3’,5’−ジメトキシベンゾイニルオキシカルボニル基)が、選択的ポリヌクレオチド合成における保護基として用いられていた(M.C. Pirrung et al., J. Org. Chem. 63 (1998), 241, Proofing of Photolithographic DNA Syntheses with 3’,5’−dimethoxybenzoinyloxycarbonyl−protected deoxynucleosidedeophosphoramidites)。
このように従来用いられていた他の保護基としては、例えば、NPPOC(2−(2−ニトロフェニル)プロピルオキシカルボニル)、MeNPPOC(2−(3,4−メチレンジオキシ−2−ニトロフェニル)プロピルオキシカルボニル)、MeNPOC(2−(3,4−メチレンジオキシ−2−ニトロフェニル)オキシカルボニル)、DMBOC(時メトキシベンゾイニリルオキシカルボニル)、NPES(2−(2−ニトロフェニル)エチルスルホニル)、およびNPPS((2−ニトロフェニル)プロピルスルホニル)がある。
このようにして合成されるDNAチップのエラー率については、現在用いられている感光性保護基もまだ満足のいく結果を示してはいない(D.J. Lockheart and E.A. Winseler, Nature 405 (2000) 827, Genomics, Gene Expression and DNA Arrays)。
また、かような保護基は通常、用いられるUV/VIS波長に対する吸収性が小さいため、これらの保護基の開裂は充分には行われない。加えて、このようにして好ましくない反応産物を有する副反応を妨害すると、DNAチップ上のオリゴヌクレオチドの大部分が用いられることができない。
さらに、現在知られている保護基は、定量的に反応しうる水銀灯の365nmの光線を一般的な照射強度で用いると数分間の照射時間を必要とするため、この開裂反応の反応速度は、このように知られている保護基については不充分なほど遅い。
よって、本発明の目的は、従来技術についての上記の欠点を示さず、新規な感光性保護基を有するヌクレオシド誘導体であって、当該保護基が特に迅速に、かつ副反応を生じることなく開裂しうるヌクレオシド誘導体を提供することである。
上記の目的は、感光性保護基を含有し、下記化学式1:
式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、NO2、CN、OCH3、炭素原子数1〜4のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基もしくはブチル基)、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または、置換されていてもよい炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、
R2〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、NO2、CN、OCH3、分子鎖状もしくは直鎖状の、炭素原子数1〜5のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基もしくはペンチル基)、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または置換されていてもよい炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、
Xは、C=OまたはC=Sであり、
Yは、S、O、NR’、C(R’)2であり、この際R’は、水素原子、分子鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、または置換されていてもよいアリール基であり、
Zは、SO2、OCO、OCS、SCS、COまたはCSであり、
nは0、1、2または3であり、ただしnが0の場合、ZはCO、CS、およびSO2から選択され、
Nは、下記化学式2または3:
R2〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、NO2、CN、OCH3、分子鎖状もしくは直鎖状の、炭素原子数1〜5のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基もしくはペンチル基)、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または置換されていてもよい炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、
Xは、C=OまたはC=Sであり、
Yは、S、O、NR’、C(R’)2であり、この際R’は、水素原子、分子鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、または置換されていてもよいアリール基であり、
Zは、SO2、OCO、OCS、SCS、COまたはCSであり、
nは0、1、2または3であり、ただしnが0の場合、ZはCO、CS、およびSO2から選択され、
Nは、下記化学式2または3:
式中、Pは、水素原子、またはヌクレオチド化学で一般的な保護基もしくはオリゴヌクレオチドの製造のために一般的な反応性基である、
のような3’または5’置換可能なヌクレオシドから選択され、
Bは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イル、または5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルであり、この際、Bがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合には、Bは第1級アミノ基および一時的なもしくは永久的な保護基を有し、またはBがチミンもしくはウラシルである場合には、BはO4位に永久的な保護基を有してもよい、
R8は、水素原子、OH、ハロゲン原子、OR’またはSR’であり、この際R’は上記と同様の定義であるか、または、炭素原子数2〜5の脂肪族アシル基もしくはヌクレオチド化学で一般的な保護基である、
の構造モチーフを有するヌクレオシド誘導体を提供することにより、解決される。
のような3’または5’置換可能なヌクレオシドから選択され、
Bは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イル、または5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルであり、この際、Bがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合には、Bは第1級アミノ基および一時的なもしくは永久的な保護基を有し、またはBがチミンもしくはウラシルである場合には、BはO4位に永久的な保護基を有してもよい、
R8は、水素原子、OH、ハロゲン原子、OR’またはSR’であり、この際R’は上記と同様の定義であるか、または、炭素原子数2〜5の脂肪族アシル基もしくはヌクレオチド化学で一般的な保護基である、
の構造モチーフを有するヌクレオシド誘導体を提供することにより、解決される。
R1〜R7基のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基は、直鎖状であっても分子鎖状であってもよく、置換(全体で1個または数個のハロゲン原子のみによって)されていても非置換であってもよく、そして飽和であっても不飽和であってもよい。例えばメチレン基を介して官能基間に架橋結合が存在してもよく、これにより別の環構造が生じる。同様のことは、R1〜R8基のアシル基またはアリール基についても同様にあてはまる。ここで考慮しているアルキル基は、ハロゲン原子を有するアルキル基である。好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基である。好ましいアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基である。好ましい脂肪族アシル基は、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基である。好ましい(ヘテロ)アリール基は、フェニル基、チエニル基、チオフェニル基、フリル基、フラニル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、インドリル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリニル基、チアゾリニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、および得られる融合環である。
Pについて、「オリゴヌクレオチドの製造のために一般的な反応性基」は、例えばホスファイトアミド基である。勿論、ホスファイトアミドに代えて、ホスホジエステル、ホスホトリエステルまたはH−ホスホネートもまた用いられうる。
PおよびR8について、「ヌクレオチド化学で一般的な保護基」とは、特にR8においては、一般的なO−アルキル、O−アルケニル、O−アセタールまたはO−シリルエーテル保護基のようなH(DNAの場合)またはO(RNAの場合)の保護基である。好ましい保護基は、O−メチル基またはO−エチル基、O−テトラヒドロピラニル基、O−メトキシテトラヒドロピラニル基、O−t−ブチルジメチルシリル基、ジメトキシトリチル(DMT)基またはダンシル基である。
必要に応じて塩基Bと永久的に結合していてもよいこれらの保護基は、好ましくはアシル保護基に基づくものである。なかでも、フェノキシアセチル基、tert−ブチルフェノキシアセチル基、イソブチリル基、アセチル基、ベンゾイル基、アリルオキシカルボニル基、フタロイル基、ダンシルエチルオキシカルボニル基、2−(4−ニトロフェニル)エトキシカルボニル基、またはジメチルホルムアミジノ基が好ましい。アデニン、シトシンおよびグアニンの場合には、環外アミノ基を導入する目的で、好ましくはフェノキシアセチル基、tert−ブチルフェノキシアセチル基、アセチル基、または2−(4−ニトロフェニル)エトキシカルボニル基が用いられる。また、グアニンのO6位は、必要であれば保護基である2−(4−ニトロフェニルスルホニル)エチル基または2−(4−ニトロフェニル)エチル基により保護されていてもよい。同様に、チミンまたはウラシルのO4位が、2−(4−ニトロフェニルスルホニル)エチル基または2−(4−ニトロフェニル)エチル基のような保護基を有していてもよい。
本願において「ハロゲン原子(Hal)」とはF、Cl、Br、Iを意味し、Cl、Br、Iが好ましい。本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、下記で参照される図1に示す手法により製造される。この際特定のハロゲン原子およびアルキル基に言及している場合には、同様の効果を有する均等物をも含んでいる。例えば、「クロロ」は、対応するヨウ化物や臭化物の使用を排除するものではない。このことはアルキル基にもあてはまり、例えば「メチル」は、エチル基、プロピル基またはブチル基などを含む他の低級アルキル化合物をも含む。
本発明に係る保護基は、より迅速に、かつ380nm超、好ましくは390nm超、より好ましくは400nm超の波長の可視光の照射によっても効率的に開裂しうるという点で、本発明の誘導体は既知の誘導体に対して驚くべき利点を有している。
本発明によれば、化学式1のアントラセン骨格において、−C(R1)−(CH2)n−Z−N基のオルト位にNO2基が位置すると、開裂時にβ脱離反応が進行しうるため、好ましい。
この際、アントラセン環の1〜4位における全てのオルト置換パターンが含まれる。具体的なオルト置換パターンは下記化学式7〜12:
式中、各置換基は上記と同様の定義である。
本発明の感光性の3’または5’ヌクレオシドは、フォトリソグラフィによる核酸チップの合成に用いられうる。当業者であれば、この目的のための手法は熟知している。
本発明に係る保護基または本発明のヌクレオシド誘導体を用いると、オリゴヌクレオチドチップまたは核酸チップの光制御合成において特に長い波長の光を用いることができるため、有利である。これに関し、上記の波長は好ましくは380nm超であり、より好ましくは390nm超であり、さらに好ましくは400nm超である。
「基板」とは、本発明の化合物と化学結合しうる化合物を意味し、好ましくは、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、炭化水素(糖)である。しかしながら、「基板」という語はまた、ガラス、ポリマー、金属、セラミックスなどの、表面に官能基が付与された担体材料をも含む。
本願において、「ヌクレオチド」という語は、好ましくは、リン酸エステル結合(3’−5’および5’−3’を含む)を介して互いに連結された2〜10個のヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを意味する。この際、前記結合は、しかしながら、本発明のヌクレオチドには、10個超のヌクレオシド構成単位を有するポリヌクレオチドも含まれる。
本発明のヌクレオシド誘導体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を単独であるいは組み合わせて使用できる。例えば、多段階合成または二段階合成により合成されうる。一般的には、まず、従来公知の一般的な合成方法によって、下記化学式13:
式中、R1〜R7、X、Y、およびnは、上記と同様の定義である、
で表される、対応する置換パターンを有するアルコールである環システムを合成する。
で表される、対応する置換パターンを有するアルコールである環システムを合成する。
第二段階では、このアルコールを、従来公知の手法に従って、下記化学式4:
式中の基は上記と同様の定義であり、Halはハロゲン原子である、
で表されるアシル化試薬へと変換する。例えば、ジホスゲンを用いてクロロ炭酸エステルへ、チオホスゲンを用いてクロロチオ炭酸エステルへ、または塩化スルホニルへ変換する。続いて、同様に誘導体化されたヌクレオシド(例えば、チミジン)を、このアシル化試薬を用いてアシル化し、本発明のヌクレオシド誘導体を得る。なお、前記ヌクレオシドは、例えば、下記化学式5または6:
で表されるアシル化試薬へと変換する。例えば、ジホスゲンを用いてクロロ炭酸エステルへ、チオホスゲンを用いてクロロチオ炭酸エステルへ、または塩化スルホニルへ変換する。続いて、同様に誘導体化されたヌクレオシド(例えば、チミジン)を、このアシル化試薬を用いてアシル化し、本発明のヌクレオシド誘導体を得る。なお、前記ヌクレオシドは、例えば、下記化学式5または6:
式中、R8およびBは上記と同様の定義であり、Pはヌクレオチド化学で一般的な保護基である、
で表される。本発明の製造方法の可能性は、例えば図1に示す例によって説明されうる。
で表される。本発明の製造方法の可能性は、例えば図1に示す例によって説明されうる。
本発明の製造方法に用いるための遊離ヌクレオシドは、好ましくは、当初は2つの遊離OH基(一方は3’位に位置し、他方は5’位に位置する)を有する。これらのうちの1つは、3’位または5’位への、例えばDMT基またはダンシル基などのオーソゴナル(orthogonal)保護基の導入により即座に保護され、これにより、他方の遊離OH基(5’または3’)は、前記アシル化試薬と反応しうる。必要であれば、この中間体保護基を開裂させて、遊離の3’または5’OH基をさらなる反応に使用してもよい。
本発明のさらなる利点および形態は、詳細な説明および添付の図面から得られる。
上記の特徴および下記で説明される特徴は、明示した組み合わせのみで用いられるわけではなく、本発明の範囲から逸脱しない限り他の組み合わせでも用いられうる。
添付の図面および非制限的な実施形態によって、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のヌクレオシド誘導体を製造するための合成スキームを示す図である。
図2は、従来技術のヌクレオシド誘導体と本発明のヌクレオシド誘導体とで、保護基の開裂反応(脱保護反応)の速度を比較した図である。
図3は、種々の溶媒中での本発明のヌクレオシド誘導体の保護基の開裂速度を示す図である。
図4は、390nm超の波長における脱保護反応の速度を示す図である。
図5は、410nm超の波長における脱保護反応の速度を示す図である。
ここで図2は、詳細には、従来技術のヌクレオシド誘導体であるNPPOCチミジン(NPPOC−dT)の保護基が開裂する際の反応速度を、本発明のヌクレオシド誘導体である2−NTX−3−POC−チミジン(2−NTX−3POC−dT)(5’−[2−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロピルオキサカルボニル)チオキサントン]チミジン)と比較して示す図である。
開裂反応の反応時間に対する反応物の定量的な減少を、双方の化合物について、メタノール/水の混合物中で365nm(Hgランプ)の波長にて測定した。
図2からわかるように、2−NTX−3POC−dTの反応物の濃度(グラフ1)は、NPPOC−dT(グラフ2)の濃度よりも顕著に速く減少している。このことは、グラフ3および4に対応する生成物の濃度の増加と非常によく相関している。
感光性保護基として2−NTX−3POCを用いた場合には、たった3秒間の反応時間後に90%の生成物が得られた(グラフ3)のに対し、NPPOCでは、2倍の長さの6秒間の反応時間後でもチミジンが40%しか得られなかった(グラフ4)。
図3は、365nm(Hgランプ、UG1フィルタ)で、種々の溶媒中において2−NTX−3POC−dTから感光性保護基が開裂する反応の進行を、反応物中での2−NTX−3POC−dTの減少およびチミジン生成物の増加について示す図である。
ジオキサン/水中での反応を除き、アセトニトリル/水、またはメタノール/水の混合物中での反応速度はほぼ同程度に速かった。
図4は、本発明のヌクレオシド誘導体の保護基が開裂する際の脱保護反応の速度を、従来技術の保護基と比較して、390nm超の波長で示す図である(いずれの場合もチミジンを用いた)。NPPOC、5−ベンジル(Bz)−NPPOC、および4−エチル−5−フェニル−NPPOCの保護基を比較すると、2−NTX−3−POCまたはTS7POC(5’O−[(2−ニトロフェニル)−5−(9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル)ペンチルオキシカルボニル])の保護基を用いた場合の脱保護反応が最も速かった。本発明に係る保護基である2−NTX−3POC(グラフ1)は、400nmの波長にて、約4分間の反応時間まではTS7POC(グラフ2)と比べてやや遅かったが、最終的にはTS7POCとほぼ同程度の値まで到達した。
本発明に係る保護基とは異なり、TS7POCは、通常の保護基に対して感光性単位が結合している、保護基のいわゆる「分子内活性化」の原理を利用している(例えば、PCT/EP2004/002361に記載されている)。驚くべきことに、本願では、迅速な脱保護反応には不可欠であると従来考えられていた紫外線感光剤、すなわち、開裂反応の反応速度を増加させるための、TS7POCのような分子内結合した感光剤、および、例えばWO03/74542に記載のような別途添加される感光剤、の双方が省略されうることが明らかとなった。
本発明に係る誘導体や保護基を用いると、開裂反応速度を増加させるための感光剤の存在によって達成される反応速度に匹敵する反応速度が得られる。
図5によれば、本発明に係る保護基、すなわち2−NTX−3POCを用いると、従来の保護基と比べて、420nmでの開裂速度が非常に速く、従来の保護基ではほとんど反応がみられないのに対して、約30秒間の反応時間で90%の開裂が起こる(グラフ1)ことが示される。
<5’−[2−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロピルオキシカルボニル)−チオキサントン]チミジン(化合物7)の合成>
化合物1の合成を、図1に模式的に説明する。沸騰DMF中、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)の存在下で、チオール基およびアセチル基を有する酸(化合物1)を(2−ニトロ−5−ブロモ)エチルベンゼン(化合物2)と反応させて、2−(3−エチル−4−ニトロフェニルスルフィド)安息香酸(化合物3)を合成し、70〜80%の収率で固体として単離した。濃硫酸中で当該安息香酸(化合物3)を0.5〜1時間加熱し、次いでこの反応混合物を水中に添加し、濾過により3−エチル−2−ニトロ−9−オキソチオキサントン(化合物4)を得て、さらに精製することなく次の段階に用いた。上記で得たこのチオキサントンのニトロ誘導体(化合物4)を、DMSO中、DBUの存在下で、60〜70℃にて4〜5時間パラホルムアルデヒドと反応させて、4−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロパノール)チオキサントン(化合物5)を得て、カラムクロマトグラフィにより高収率で単離した。この化合物5を、THF中、トリエチルアミンの存在下で0〜4℃にてジホスゲンで処理し、2−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロピルオキシカルボニル−クロライド)チオキサントン(化合物6)を高収率で得た。化合物6を用い、0〜4℃にてチミジンをアシル化し、5’−[2−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロピルオキサカルボニル)チオキサントン]チミジン(化合物7)を得て、カラムクロマトグラフィにより単離した。
化合物1の合成を、図1に模式的に説明する。沸騰DMF中、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)の存在下で、チオール基およびアセチル基を有する酸(化合物1)を(2−ニトロ−5−ブロモ)エチルベンゼン(化合物2)と反応させて、2−(3−エチル−4−ニトロフェニルスルフィド)安息香酸(化合物3)を合成し、70〜80%の収率で固体として単離した。濃硫酸中で当該安息香酸(化合物3)を0.5〜1時間加熱し、次いでこの反応混合物を水中に添加し、濾過により3−エチル−2−ニトロ−9−オキソチオキサントン(化合物4)を得て、さらに精製することなく次の段階に用いた。上記で得たこのチオキサントンのニトロ誘導体(化合物4)を、DMSO中、DBUの存在下で、60〜70℃にて4〜5時間パラホルムアルデヒドと反応させて、4−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロパノール)チオキサントン(化合物5)を得て、カラムクロマトグラフィにより高収率で単離した。この化合物5を、THF中、トリエチルアミンの存在下で0〜4℃にてジホスゲンで処理し、2−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロピルオキシカルボニル−クロライド)チオキサントン(化合物6)を高収率で得た。化合物6を用い、0〜4℃にてチミジンをアシル化し、5’−[2−ニトロ−9−オキソ−3−(2−プロピルオキサカルボニル)チオキサントン]チミジン(化合物7)を得て、カラムクロマトグラフィにより単離した。
化合物5のスペクトルデータ
化合物6のスペクトルデータ
Claims (9)
- 下記化学式1:
式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、NO2、CN、OCH3、炭素原子数1〜4のアルキル基、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または、置換されていてもよい炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、
R2〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、NO2、CN、OCH3、分子鎖状もしくは直鎖状の、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基もしくはアルコキシアルキル基、または置換されていてもよい炭素原子数2〜5のアリール基もしくは脂肪族アシル基であり、
Xは、C=OまたはC=Sであり、
Yは、S、O、NR’、またはC(R’)2であり、この際R’は、水素原子、分子鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、または置換されていてもよいアリール基であり、
Zは、SO2、OCO、OCS、SCS、COまたはCSであり、
nは0、1、2または3であり、ただしnが0の場合、ZはCO、CS、およびSO2から選択され、
Nは、下記化学式2または3:
式中、Pは、水素原子、またはヌクレオチド化学で一般的な保護基もしくはオリゴヌクレオチドの製造のために一般的な反応性基である、
であり、
Bは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イル、または5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルであり、この際、Bがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合には、Bは第1級アミノ基および一時的なもしくは永久的な保護基を有し、またはBがチミンもしくはウラシルである場合には、BはO4位に永久的な保護基を有してもよい、
R8は、水素原子、OH、ハロゲン原子、OR’またはSR’であり、この際R’は上記と同様の定義であるか、または、炭素原子数2〜5の脂肪族アシル基もしくはヌクレオチド化学で一般的な保護基である、
で表される、感光性保護基を有するヌクレオシド誘導体。 - 化学式1において、−C(R1)−(CH2)n−Z−N基のオルト位にNO2基が位置する、請求項1に記載のヌクレオシド誘導体。
- 化学式2において、Pであるオリゴヌクレオチドの製造のために一般的な保護基がホスファイトアミド基である、請求項1または2に記載のヌクレオシド誘導体。
- Pをさらに反応させる、請求項4に記載の製造方法。
- 得られた前記ヌクレオシド誘導体の5’位または3’位にホスファイトアミド基を導入する、請求項4または5に記載の製造方法。
- オリゴヌクレオチドチップまたは核酸チップの光制御合成に使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヌクレオシド誘導体。
- 前記光制御合成に用いられる光の波長が380nm超である、請求項7に記載のヌクレオシド誘導体。
- 前記波長が390nm超である、請求項8に記載のヌクレオシド誘導体。
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