JP2006105331A - 軸受スリーブおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 金属製の非多孔質材で形成される軸受スリーブの内周面に、動圧発生部を精度良く形成する。
【解決手段】 金属製の非多孔質材で円筒状に形成したスリーブ素材11を上下のパンチ14、15で軸方向に拘束した状態で、その外周面11bにダイ12を圧入して、内周面11aに、動圧溝8a1、8a2の形状に対応した形状を有する成形型13aを押し当てることにより、内周面11aを塑性変形させて動圧溝8a1、8a2を成形するに際し、スリーブ素材11の外周面11bに、動圧溝8a1、8a2を塑性加工で成形する際のスリーブ素材11の軸方向への伸びを逃がすための逃げ部11cを形成した状態で塑性加工を行う。
【選択図】図7

Description

本発明は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用により圧力を発生させて軸部材を非接触支持する動圧軸受装置の軸受スリーブおよびその製造方法に関するものである。この種の軸受スリーブを備えた軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、その他の小型モータ用として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるラジアル軸受部としては、軸受スリーブの内周面と、これに対向する軸部材の外周面との何れか一方に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、両面間にラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記軸受を構成する軸受スリーブとして、例えば金属粉末等を焼成した多孔質材を円筒状に成形したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、これとは逆に、金属材料からなる非多孔質材を円筒状に成形したものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
このうち、多孔質体で形成される軸受スリーブに、動圧発生部(例えば動圧溝)を精度良くかつ低コストに形成する方法としては、例えば、動圧溝形状に対応した形状の成形型を外周に設けた成形ロッドをスリーブ素材の内周に挿入すると共に、一対のパンチでスリーブ素材を軸方向に拘束した状態で、ダイ等の圧入部材をスリーブ素材の外周に圧入して、成形ロッドの成形型をスリーブ素材の内周面に押し付ける方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開2003−239951号公報 特開平10−196640号公報 特開2003−254331号公報 特開平11−190344号公報
しかしながら、金属製の非多孔質材で形成される軸受スリーブに上記成形方法で動圧溝を成形する場合には、以下のような問題が生じる。すなわち、上記動圧溝の成形時、スリーブ素材は内径側に圧縮され、圧縮された内径側の領域が成形ロッドの成形型に食い付く。これにより、スリーブ素材の内周面が成形型の形状に倣って塑性変形し、動圧溝が形成される。スリーブ素材が金属製の多孔質材で形成されている場合、その内部には多数の空孔が存在するため、径方向の圧縮に伴い内部空孔が潰れて径方向に収縮し、スリーブ素材の見かけの体積は減少する。これに対して、スリーブ素材が金属製の非多孔質材で形成されている場合、径方向の圧縮前後において、スリーブ素材全体の体積にほとんど変動はないため、径方向圧縮により変形した部分は軸方向へと伸長しようとする。スリーブ素材は拘束部材(パンチなど)により軸方向への変形を拘束されるが、拘束部材の構造上、スリーブ素材の軸方向変形を完全に抑えることは困難であり、結果として、スリーブ素材は軸方向に若干伸長する。そのため、成形後の軸受スリーブにおいては、その内周面の動圧溝が精度良く形成されず、あるいは必要な動圧溝深さを確保できない可能性がある。
本発明の課題は、金属製の非多孔質材で形成される軸受スリーブの内周面に、動圧発生部を精度良く形成することである。
前記課題を解決するため、本発明に係る軸受スリーブは、金属製の非多孔質材で円筒状に形成され、内周面に動圧発生部を塑性加工で成形した軸受スリーブにおいて、その内周あるいは外周に、前記動圧発生部を塑性加工で成形する際のスリーブ素材の軸方向への伸びを逃がすための逃げ部が形成されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、軸受スリーブの塑性加工時における軸方向への伸びを逃げ部によって逃がすことができるので、例えば、軸受スリーブを軸方向に拘束した状態で径方向に圧迫した状態では、軸方向に塑性流動する素材量の全部又は大部分が逃げ部によって吸収され、スリーブ素材は塑性加工時に軸方向へ全く又は殆ど伸び変形しなくなる。その結果、成形後の軸受スリーブは、動圧発生部がその内周面の所望の軸方向位置に、所望の軸方向幅で精度良く形成されたものとなる。逃げ部の容積は、動圧発生部を塑性加工で成形する際のスリーブ素材の軸方向の塑性流動量と同じか、これよりも大きくなるように設定するのが好ましい。これにより、塑性加工時におけるスリーブ素材の軸方向への伸びが完全になくなり、動圧発生部の成形精度がより一層向上する。
また、前記課題を解決するため、本発明に係る軸受スリーブの製造方法は、金属製の非多孔質体で形成したスリーブ素材を、軸方向に拘束した状態で径方向に圧迫して、その内周面に、動圧発生部の形状に対応した形状を有する成形型を押し当てることにより、内周面を塑性変形させて動圧発生部を成形するに際し、スリーブ素材の内周あるいは外周に、前記動圧発生部を塑性加工で成形する際のスリーブ素材の軸方向への伸びを逃がすための逃げ部を形成することを特徴とする。
上記の逃げ部は、例えば動圧発生部の軸方向における形成位置を避けて形成することが好ましい。逃げ部が動圧発生部の軸方向における形成位置に設けられている場合、逃げ部が設けられている領域における素材部分の内径側への塑性流動が不充分になり、その結果、動圧発生部の成形精度にばらつきが生じることがある。逃げ部の軸方向における形成位置を、動圧発生部の軸方向における形成位置からずらすことにより、こうした事態を回避することができる。
軸受スリーブ(スリーブ素材)を形成する非多孔質材は、軟質金属からなるものであることが好ましい。これによれば、より小さい成形圧(圧迫力)で動圧溝を成形できるため、成形型に損傷を与えることなく、かつ容易に動圧発生部を形成することができる。
上記軸受スリーブは、軸受スリーブと、この軸受スリーブ内周に挿入される軸部材と、軸受スリーブと軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で圧力を発生させて軸部材と軸受スリーブをラジアル方向に非接触に保持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置として提供することが可能である。
また、上記動圧軸受装置は、動圧軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを備えたモータとして提供することも可能である。
このように、本発明によれば、動圧発生部を塑性加工で成形する際のスリーブ素材の軸方向への伸びを逃げ部によって逃がすことで、金属製の非多孔質材で形成される軸受スリーブの内周面に、動圧発生部を精度良く形成することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る軸受スリーブ8を備えた動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。この情報機器用スピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に取付けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット6とを備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取付けられる。また、ブラケット6は、その内周に動圧軸受装置1を装着している。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)Dを一枚または複数枚保持している。このように構成された情報機器用スピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図3は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、一端に底部7bを備えたハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2とを主な構成部品として構成される。なお、説明の便宜上、ハウジング7の底部7bの側を下側、底部7bと反対の側を上側として以下説明を行う。
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、あるいは、金属材料と樹脂材料とのハイブリッド構造とされ、軸部2aと、軸部2aの下端に一体または別体に設けられたフランジ部2bを備えている。
ハウジング7は、図3に示すように、例えばLCPやPPS、PEEK等をベース樹脂とする樹脂組成物で円筒状に形成された側部7aと、側部7aの一端側に位置し、例えば金属材料で形成された底部7bとで構成される。底部7bの上側端面7b1の全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、スパイラル状の動圧溝が形成される。なお、底部7bは、この実施形態では側部7aとは別体に形成され、側部7aの下部内周に固定されるが、側部7aと例えば樹脂材料で一体に型成形することもできる。その際、上側端面7b1に設けられる動圧溝は、側部7aおよび底部7bからなるハウジング7の射出成形と同時に型成形することができ、これにより別途底部7bに動圧溝を成形する手間を省くことができる。
軸受スリーブ8は、例えば図3に示すように、銅や真ちゅう、アルミなどの軟質金属からなる、いわゆるソリッド型の非多孔質材で円筒状に形成され、ハウジング7の内周面7cに接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)等の固定手段により固定される。
軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受隙間に面する上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、この2つの領域には、ラジアル動圧発生部として、例えば図1(a)に示すようなへリングボーン形状の動圧溝8a1、8a2がそれぞれ形成される。上側の動圧溝8a1の形成領域では、動圧溝8a1が、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。従って、軸部材2の回転時には、非対称の動圧溝8a1によってラジアル軸受隙間の潤滑油が下方に押込まれる。
軸受スリーブ8の外周面8bには、1本又は複数本の軸方向溝8b1が軸方向全長に亘って形成される。この実施形態では、3本の軸方向溝8b1を円周方向等間隔に形成している。また、外周面8bの軸方向略中央には、逃げ部8cが設けられる。この実施形態では、逃げ部8cとして、断面V字状の環状溝8c1が全周に亘って形成される。
軸受スリーブ8の下側端面8dの全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図1(b)に示すように、スパイラル形状の動圧溝8d1が形成される。
軸受スリーブ8の上側端面8eの、径方向の略中央部には、図1(a)に示すように、断面V字状の円周溝8e1が全周に亘って形成される。円周溝8e1によって区画された上側端面8eの内径側領域には、一又は複数本の半径方向溝8e2が形成される。この半径方向溝8e2は、軸受スリーブ8をシール部9に軸方向に当接した状態では、図3に示すように、円周溝8e1と軸受スリーブ8の内周面8a上端との間を連通する。
シール手段としてのシール部9は、図3に示すように、例えば真ちゅう等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料でハウジング7とは別体かつ環状に形成され、ハウジング7の側部7aの上部内周に圧入、接着等の手段で固定される。この実施形態において、シール部9の内周面9aと、内周面9aに対向する軸部2aのテーパ面2a2との間に、上方に向けて径方向寸法が漸次拡大する環状のシール空間Sが形成される。組立て完了後の動圧軸受装置1(図3参照)においては、ハウジング7の内部空間が全て潤滑油で満たされ、その油面はシール空間Sの範囲内に保たれる。また、シール部9の下側端面9bは軸受スリーブ8の上側端面8eと当接している。
上述のように構成された動圧軸受装置1において、軸部材2を回転させると、軸受スリーブ8の内周面8aの動圧溝8a1、8a2の形成領域(上下2箇所)と、これら動圧溝8a1、8a2の形成領域にそれぞれ対向する軸部2aの外周面2a1との間のラジアル軸受隙間に、潤滑油の動圧作用による圧力が発生し、軸部材2の軸部2aがラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが形成される(図3参照)。また、軸受スリーブ8の下側端面8dに形成される動圧溝8d1の形成領域と、この動圧溝8d1の形成領域に対向するフランジ部2bの上側端面(スラスト軸受面)2b1との間のスラスト軸受隙間、および底部7bの上側端面7b1に形成される動圧溝(図示略)の形成領域と、これに対向するフランジ部2bの下側端面(スラスト軸受面)2b2との間のスラスト軸受隙間に、潤滑油の動圧作用による圧力がそれぞれ発生し、軸部材2のフランジ部2bが両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とが形成される。
また、上述のように、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称(X1>X2)に形成されているため(図1(a)参照)、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→軸方向溝8b1→円周溝8e1→半径方向溝8e2という経路を循環して、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に戻り、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、軸受内部の圧力バランスが調整される。また、軸受内部空間の潤滑油の好ましくない流れ、例えば潤滑油の圧力が局部的に負圧になる現象の発生を防止して、負圧発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る軸受スリーブ8の製造方法を説明する。
図4は、内周面8aに動圧溝8a1、8a2を成形する前の段階の軸受スリーブ8(以後、スリーブ素材11という。)の縦断面図を示している。このスリーブ素材11は、例えば上記軟質金属、あるいはこれらを任意に組合せたものを主成分とする合金で図4に示す形状に形成される。
スリーブ素材11の外周面11bの軸方向略中央には、塑性加工時の変形を逃がす逃げ部11cとして、図4に示すように、例えば断面V字状の環状溝11c1が全周に亘って形成される。この環状溝11c1の容積は、動圧発生部としての動圧溝8a1、8a2を塑性加工で成形する際のスリーブ素材11の軸方向の塑性流動量よりも大きくなるように設定されている。
上記円筒形状のスリーブ素材11に対する動圧溝8a1、8a2の成形加工は、例えば下記の工程を以って行われる。
動圧溝成形工程は、上記スリーブ素材11の内周面11aに、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成領域に対応した形状の成形型を加圧することによって、動圧溝8a1、8a2とそれ以外の領域(図1(a)中クロスハッチングで示す領域)とを同時成形する工程である。
この実施形態の動圧溝成形工程で使用する加工装置は、例えば図5に示すように、円筒形状のスリーブ素材11の外周面11bを圧入する円筒状のダイ12と、スリーブ素材11の内周面11aを成形するコアロッド13と、スリーブ素材11の両端面を上下方向(軸方向)から拘束する第一パンチ14(上パンチ)および第二パンチ15(下パンチ)を主要な要素として構成される。
コアロッド13の外周には、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成領域に対応した凸凹状の成形型13aが設けられる(例えば、図7(a)を参照)。この成形型13aの凸凹部の深さHは、成形しようとする動圧溝8a1、8a2の溝深さと同程度である。なお、通常この凸凹部の深さは数μm〜数十μm程度であり、他の構成要素の寸法に比べれば微小であるが、図6および図7では理解の容易化のため深さを誇張して描いている。
コアロッド13の外周には上パンチ14が上下方向に摺動自在に外挿されており、上パンチ14はコアロッド13と一体になって昇降運動を行う。両者は、共有の駆動源、あるいはそれぞれ独立の駆動源で昇降させることが可能である。ダイ12は、図示されていない駆動手段によって、コアロッド13および上パンチ14とは独立して昇降駆動される。下パンチ15は当該装置の静止部材(例えば台座等)に固定されている。
[初期状態]
図5に示す初期状態において、ダイ12はスリーブ素材11に対して軸方向下位置にあり、コアロッド13および上パンチ14は軸方向上位置にある。ダイ12の成形孔には下パンチ15が摺動自在に挿入され、下パンチ15の先端はダイ12の成形孔上端より突出している。被加工物であるスリーブ素材11は下パンチ15の先端面上に配置される。
[軸方向拘束工程]
上記の初期状態から、コアロッド13および上パンチ14を一体に下降させ、コアロッド13をスリーブ素材11の内周に挿入すると共に、上パンチ14をスリーブ素材11の上端面に押し当てる。これによって、スリーブ素材11が上下のパンチ14、15によって軸方向両側から支持(拘束)され、上下パンチ14、15のスリーブ素材11との当接端面間の対向間隔が所定の値に管理される。また、コアロッド13の成形型13aは,スリーブ素材11の内周面11aの、動圧溝8a1、8a2の形成予定領域と対向する位置に配される。
このとき、スリーブ素材11の内周面11aとコアロッド13の成形型13aの凸部との間には内径すき間Gが存在する。また、スリーブ素材11の外周面11bとダイ12の内周面との間には、内径すき間Gと同じか、あるいは内径すき間Gよりわずかに大きい圧入代Pが存在する(ともに図6を参照)。
[径方向圧迫工程]
次に、図7(a)に示すように、上記軸方向拘束状態を保持してダイ12を上昇させ、内周に形成される成形孔にスリーブ素材11を圧入する。これにより、スリーブ素材11はダイ12と上下のパンチ14、15とから圧迫力を受けて変形し、径方向にサイジングされる。これに伴い、スリーブ素材11の内周面11aがコアロッド13の成形型13aに押し当てられ、内周面11aから所定深さまでの表層部分が塑性変形を起こして成形型13aに食い付く。これにより、成形型13aの凸凹形状がスリーブ素材11の内周面11aに転写され、両動圧溝8a1、8a2とそれ以外の領域(図1(a)中クロスハッチング領域)が同時に成形される。
スリーブ素材11は、上下のパンチ14、15によって軸方向両側から拘束された状態でダイ12に圧入代Pで圧入されることにより、素材の大部分は内径側に塑性流動し、その一部は軸方向に塑性流動するが、この軸方向への塑性流動分は逃げ部11cによって吸収される(例えば図7(b)中破線と実線とで囲まれる領域分)ため、スリーブ素材11は塑性加工時に軸方向へ伸び変形しなくなる。その結果、成形型13aの押し付けによって内周面11aに転写された動圧溝8a1、8a2は、所望の軸方向位置に、かつ所望の軸方向幅及び深さで精度良く形成されたものとなる。
また、この実施形態では、逃げ部11cとしての環状溝11c1を、動圧溝8a1、8a2の軸方向における成形位置を避けて形成したので、動圧溝8a1、8a2の成形位置に対応する素材部分の内径側への塑性流動が均一かつ充分に得られ、動圧溝8a1、8a2の成形精度にばらつきが生じるといった事態が回避される。
[離型工程]
上記工程が完了した後、図示は省略するが、両パンチ14、15による軸方向拘束状態を保持した状態でダイ12を下降させて、スリーブ素材11をダイ12から抜き、径方向の圧迫力を解除する。このとき、径方向にスリーブ素材のスプリングバックが発生し、スリーブ素材11からコアロッド13を抜き取り可能な状態となる。次に、上パンチ14およびコアロッド13を一体に上昇させ、スリーブ素材11の軸方向拘束状態を解除する。上パンチ14およびコアロッド13が初期位置(図5の位置)に達した段階で、上パンチ14を停止させる一方で、コアロッド13を引き続いて上昇させることで、スリーブ素材11からコアロッド13が引き抜かれ、スリーブ素材11が離型される。
この後、必要に応じて、上下端面や外周面に溝加工を施すことにより、例えば図1(a)に示す形状の軸受スリーブ8が完成する。
完成品としての軸受スリーブ8の外周面8bには、上記塑性加工時の素材の軸方向への塑性流動分を吸収したスリーブ素材11の逃げ部11cの跡として、逃げ部8c(環状溝8c1)が残っている。
このように、非多孔質状の軸受スリーブ8を備えた動圧軸受装置1であれば、潤滑油に限らず、例えば空気等の、潤滑油より低粘度の流体であっても好適に使用することができる。すなわち、多孔質状の軸受スリーブを用いた場合には、その表面や内部に多数存在する空孔に空気が流れ込んで、軸受隙間内の圧力が上昇し難い事態を招く可能性があるが、本発明のように、非多孔質状の軸受スリーブを用いれば、かかる事態を避けて、容易に軸受隙間内の圧力を上昇させることができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
以上の実施形態では、逃げ部8c(11c)を、軸受スリーブ8(スリーブ素材11)の外周に設けた場合を説明したが、特に外周に限らず、内周に設けることもできる。その場合には、動圧溝8a1、8a2の形成箇所を避けて逃げ部8cを設けるのがよい。
また、以上の実施形態では、逃げ部8c(11c)として、断面V字状の環状溝8c1(11c1)を形成した場合を説明したが、これ以外にも、例えば図8(a)や図8(b)に示すように、断面U字状(切欠き形状)の環状溝11c2や、断面コの字状の環状溝11c3など、種々の形態を採ることができる。
また、以上の実施形態では、軸受スリーブ8の下側端面8dへの動圧溝8d1加工を、内周面8aへの動圧溝8a1、8a2加工後に行う場合を説明したが、加工の順序はこれに限られず、種々の加工形態が可能である。例えば、第二パンチ(下パンチ)15の先端面に動圧溝8d1形状に対応した凹凸部を設けておき、[軸方向拘束工程]において、スリーブ素材11を軸方向上下から上下のパンチ14、15で拘束するのと同時に、下パンチ15の凹凸部をスリーブ素材11の下側端面に押し付けることによっても動圧溝8d1を形成することができる。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑流体の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、いわゆるステップ軸受や多円弧軸受を採用してもよい。
図9は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方をステップ軸受で構成した場合の一例を示している。この例では、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受隙間に面する領域(ラジアル軸受面となる領域)に、複数の軸方向溝形状の動圧溝8a3が円周方向所定間隔に設けられている。
図10は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の一例を示している。この例では、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が、3つの円弧面8a4、8a5、8a6で構成されている(いわゆる3円弧軸受)。3つの円弧面8a4、8a5、8a6の曲率中心は、それぞれ、軸受スリーブ8(軸部2a)の軸中心Oから等距離オフセットされている。3つの円弧面8a4、8a5、8a6で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の両方向に対して、それぞれ楔状に漸次縮小した形状を有している。そのため、軸受スリーブ8と軸部2aとが相対回転すると、その相対回転の方向に応じて、ラジアル軸受隙間内の潤滑流体が楔状に縮小した最小隙間側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑流体の動圧作用によって、軸受スリーブ8と軸部2aとが非接触支持される。なお、3つの円弧面8a4、8a5、8a6の相互間の境界部に、分離溝と称される、一段深い軸方向溝を形成してもよい。
図11は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の他の例を示している。この例においても、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が、3つの円弧面8a7、8a8、8a9で構成されているが(いわゆる3円弧軸受)、3つの円弧面8a7、8a8、8a9で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の一方向に対して、それぞれ楔状に漸次縮小した形状を有している。このような構成の多円弧軸受は、テーパ軸受と称されることもある。また、3つの円弧面8a7、8a8、8a9の相互間の境界部に、分離溝と称される、一段深い軸方向溝8a10、8a11、8a12が形成されている。そのため、軸受スリーブ8と軸部2aとが所定方向に相対回転すると、ラジアル軸受隙間内の潤滑流体が楔状に縮小した最小隙間側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑流体の動圧作用によって、軸受スリーブ8と軸部2aとが非接触支持される。
図12は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の他の例を示している。この例では、図8に示す構成において、3つの円弧面8a7、8a8、8a9の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ、軸受スリーブ8(軸部2a)の軸中心Oを曲率中心とする同心かつ同径の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)は一定になる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
以上の各例における多円弧軸受は、いわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらに6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用してもよい。また、ラジアル軸受部をステップ軸受や多円弧軸受で構成する場合、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成とする他、軸受スリーブ8の内周面8aの上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としてもよい。
また、スラスト軸受部T1、T2の一方又は双方は、例えば、スラスト軸受面となる領域に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、いわゆる波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。
(a)は本発明の一実施形態に係る軸受スリーブの縦断面図、(b)は軸受スリーブをAの方向から見た図である。 軸受スリーブを備えた動圧軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの断面図である。 動圧軸受装置の断面図である。 スリーブ素材の縦断面図である。 動圧溝成形工程を概念的に示す断面図である。 動圧溝成形工程中のスリーブ素材周辺を示す拡大断面図である。 (a)は動圧溝成形工程中のスリーブ素材周辺を示す拡大断面図、(b)はスリーブ素材の外周に設けた逃げ部周辺を示す拡大断面図である。 (a)は逃げ部として断面U字状をなす環状溝を形成した場合の逃げ部周辺の拡大断面図、(b)は断面コの字状の環状溝を形成した場合の逃げ部周辺の拡大断面図である。 ラジアル軸受部の他の構成例を示す断面図である。 ラジアル軸受部の他の構成例を示す断面図である。 ラジアル軸受部の他の構成例を示す断面図である。 ラジアル軸受部の他の構成例を示す断面図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
2 軸部材
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 ブラケット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8a 内周面
8a1、8a2 動圧溝
8b1 軸方向溝
8c 逃げ部
8c1 環状溝
8d1 動圧溝
8e1 円周溝
8e2 半径方向溝
9 シール部材
11 スリーブ素材
11c 逃げ部
11c1、11c2、11c3 環状溝
12 ダイ
13 コアロッド
13a 成形型
14、15 パンチ
G 内径すき間
H 成形型の凹凸部深さ
P 圧入代
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部

Claims (7)

  1. 金属製の非多孔質材で円筒状に形成され、内周面に動圧発生部を塑性加工で成形した軸受スリーブにおいて、
    その内周あるいは外周に、前記動圧発生部を塑性加工で成形する際のスリーブ素材の軸方向への伸びを逃がすための逃げ部が形成されていることを特徴とする軸受スリーブ。
  2. 前記逃げ部は、動圧発生部の軸方向における形成位置を避けて形成されている請求項1記載の軸受スリーブ。
  3. 前記非多孔質材が、軟質金属からなる請求項1記載の軸受スリーブ。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入され、軸受スリーブとの間でラジアル軸受隙間を形成する軸部材とを備え、前記ラジアル軸受隙間に生じた流体の動圧作用で圧力を発生させて前記軸部材と前記軸受スリーブとを非接触に保持する動圧軸受装置。
  5. 請求項4記載の動圧軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを備えたモータ。
  6. 金属製の非多孔質材で円筒状に形成したスリーブ素材を、軸方向に拘束した状態で径方向に圧迫して、その内周面に、動圧発生部の形状に対応した形状を有する成形型を押し当てることにより、内周面を塑性変形させて動圧発生部を成形するに際し、
    スリーブ素材の内周あるいは外周に、前記動圧発生部を塑性加工で成形する際のスリーブ素材の軸方向への伸びを逃がすための逃げ部を形成することを特徴とする軸受スリーブの製造方法。
  7. 前記逃げ部の軸方向における形成位置を、動圧発生部の軸方向における形成位置からずらした請求項6記載の軸受スリーブの製造方法。
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