JP2006147406A - スパークプラグ - Google Patents

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修 吉本
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Abstract

【課題】 接地電極に対する接合性が良好で対火花消耗性に優れた貴金属チップを提供する。
【解決手段】 貴金属チップ90は、プラチナを主成分とし、ロジウム、イリジウム、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウムのうち少なくとも一つが添加された内側合金91と、イリジウムを主成分とし、ロジウム、プラチナ、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウムのうち少なくとも一つが添加された外側合金92とが、軸線と直交する方向に接合されたクラッド材より形成されている。内側合金は接地電極に対する接合性が高く、外側合金の接合が補強されるため、スパークプラグの接地電極に抵抗溶接であっても十分な接合強度を得ることができ、接合後の脱落が防止される。また外側合金により耐火花消耗性が高く、スパークプラグの長期間の使用でも着火性が低下しにくい。
【選択図】 図2

Description

本発明は、火花放電を行う電極に貴金属チップを接合した内燃機関用のスパークプラグに関するものである。
従来、内燃機関には点火のためにスパークプラグが用いられている。このスパークプラグは、一般的には、中心電極が挿設された絶縁碍子を保持する主体金具と、この主体金具の先端面に一端が接合され、他端側に一側面が中心電極の先端部に対向するように屈曲された接地電極とを有している。さらにスパークプラグには、中心電極と接地電極との対向する部位の少なくともいずれか一方に対火花消耗性向上のための貴金属を用いた電極チップ(貴金属チップ)が形成され、通常、抵抗溶接やレーザ溶接によって接合がなされる。こうした貴金属チップは、火花放電時の消炎作用を低減するために、中心電極や接地電極から突き出す針形状を有することが望ましい(例えば特許文献1参照)。
近年、スパークプラグの耐消耗性の向上に対する要求が高まり、従来から使用されているプラチナよりも高融点であるイリジウムを使用した貴金属チップが提案されている。しかしイリジウムを使用した貴金属チップは従来のプラチナを使用したものに比較して溶接性が劣るため、レーザ溶接により接合がなされることが一般的である。中心電極側に貴金属チップを接合する場合、絶縁碍子に組み付ける前の中心電極の先端部に、あらかじめ貴金属チップをレーザ溶接することができる。
一方、接地電極側に貴金属チップを接合する場合、通常は、中心電極、絶縁碍子、端子電極、および接地電極が溶接された主体金具等が互いに組み付けられて、火花放電ギャップの調整が行われる直前に、接地電極に貴金属チップがレーザ溶接される。このとき、レーザ光は貴金属チップと接地電極との当接境界付近に照射されるが、組み付けられた絶縁碍子や中心電極、主体金具の位置関係によりレーザ光の照射角度には制限が生ずる。このため、貴金属チップと接地電極との接合状態が不安定だったり、生産性が低下するといった虞があった。
また、貴金属チップをあらかじめ接地電極に接合し、その後に主体金具に溶接する方法も考えられるが、主体金具に接合する前の状態(貴金属チップが接合された状態)の接地電極を管理する際に、接地電極同士がぶつかったりすると貴金属チップが脱落する虞がある。これを防止しようとすると貴金属チップ接合後の接地電極の管理が煩雑となるため、生産性が低下するという問題があった。
そこで、耐火花消耗性の良好な貴金属チップ(放電層部材)の接地電極側の端面に、例えばプラチナ系合金などの溶接性の良好な貴金属チップ(緩和層部材)を接合した複合部材からなる貴金属チップ(複合電極チップ)を作製する。そして、両部材の積層方向を突出方向とし、先端側に放電層部材が接合された緩和層部材を基部側として接地電極に接合すれば、その接合が抵抗溶接であっても、複合電極チップは十分な接合性を得ることができる(例えば特許文献2参照)。
特開2003−317896号公報 特開平5−166577号公報
しかしながら、スパークプラグを取り付ける内燃機関は冷熱サイクルを繰り返すものであり、近年の内燃機関の小型化に伴いスパークプラグも小型化したことで、冷熱サイクルにおける温度差(振幅)が激しくなる傾向にある。この冷熱サイクルの影響により複合電極チップが熱膨張と熱収縮を繰り返すと、緩和層部材と放電層部材との間の線膨張係数の差により両部材間で寸法差が生じ、特にその体積が大きいもの、すなわち複合電極チップの外径の大きいものほど剥離が生じやすくなる虞があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、接地電極に対する接合性が良好で対火花消耗性に優れた貴金属チップを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のスパークプラグは、中心電極と、前記中心電極の軸線方向に延びる軸孔を有し、その軸孔の内部で前記中心電極を保持する絶縁碍子と、その絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、一端が前記主体金具の先端面に接合され、他端側の一側面が前記中心電極を指向するように屈曲された接地電極と、少なくとも前記接地電極の他端側に自身の基端側が接合された柱状の貴金属チップとを備え、前記貴金属チップは、前記接地電極と溶接された部位の先端側隣接部において自身の軸線と直交する方向に、プラチナを主成分とし、ロジウム、イリジウム、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウムのうち少なくとも一つが添加された第1合金と、イリジウムを主成分とし、ロジウム、プラチナ、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウムのうち少なくとも一つが添加された第2合金とが接合されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のスパークプラグは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記貴金属チップは、前記接地電極の他端側の一側面から0.3mm以上突出し、かつ、その先端面の外接円の直径が1.0mm以下であることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明のスパークプラグは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記第1合金は、10重量%以上30重量%以下のニッケルを含有することを特徴とする。
また、請求項4に係る発明のスパークプラグは、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第2合金は、75重量%以上のイリジウムを含有することを特徴とする。
また、請求項5に係る発明のスパークプラグは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記貴金属チップは、少なくとも自身の先端面においてその径方向の外周側が前記第2合金によって形成されていることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明のスパークプラグは、請求項5に記載の発明の構成に加え、前記貴金属チップは、前記第2合金からなる管部の内部に前記第1合金からなる芯部を配置した状態で、線引き加工を施すことによって作製されたことを特徴とする。
また、請求項7に係る発明のスパークプラグは、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記貴金属チップは、前記接地電極の他端側の一側面に抵抗溶接によって接合されたことを特徴とする。
また、請求項8に係る発明のスパークプラグは、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の構成に加え、少なくとも前記第1合金または前記第2合金のうちいずれか一方には、希土類酸化物が含有されていることを特徴とする。
請求項1に係る発明のスパークプラグでは、火花放電間隙にて火花放電を行う貴金属チップにイリジウムを主成分とする第2合金チップを有するため耐火花消耗性が高く、火花放電間隙が広がりにくいので長期間にわたって安定した着火性を得ることができる。この第2合金は第1合金と比較して融点が高く溶接性に劣るが、接地電極と溶接された部位よりも更に貴金属チップの先端側に隣接した部分において、貴金属チップの軸線と直交する方向にプラチナを主成分とする第1合金と接合されている。この第1合金は溶接性が高く接地電極との接合を強固に行えるので、接地電極と第2合金との溶接の強度が補強される。このため、貴金属チップと接地電極との溶接は抵抗溶接でも十分な溶接性を得ることができ、生産コストを低減することができる。なお、本発明において「主成分」とは、その成分が、含有される全成分のうち最も含有率の高い成分であることを示す。
また、請求項2に係る発明のスパークプラグでは、請求項1に係る発明の効果に加え、貴金属チップは、接地電極との他端部の一側面から0.3mm以上突出しているので、火花放電の際に火花放電間隙にて発生した火炎核が、その成長する過程において、接地電極に接触して熱量を奪われることで火炎核の成長が阻害される、いわゆる消炎作用を低減することができる。これはつまり、接地電極からの貴金属チップの突出量を大きくしたことで、貴金属チップよりも体積の大きな接地電極に、成長過程の火炎核が接触するまでの時間を遅らせることができるからであり、ひいてはスパークプラグの着火性を向上することができる。また、貴金属チップの先端面に外接する円の直径が1.0mm以下であるので、貴金属チップの体積をより小さくし、消炎作用を低減することができる。第1合金と第2合金とは組成が異なるため線膨張係数も異なるが、熱膨張・熱収縮を繰り返した際に、貴金属チップの体積が小さいため、線膨張係数の差による両合金間の寸法差が大きくなってしまうことを回避できる。このため、第1合金および第2合金と、接地電極との溶接界面における剥離の虞を低減することができる。
また、請求項3に係る発明のスパークプラグでは、請求項1または2に係る発明の効果に加え、第1合金は10重量%以上30重量%以下のニッケルを含有するので、接地電極との溶接をより強固に行うことができる。ニッケルの含有量が10重量%未満であった場合、第1合金の融点が高くなり溶接性が低下するため十分な接合強度が得られなくなる虞がある。また、ニッケルの含有量が30重量%より多い場合、加工性が低下してしまい、生産コストが高くなる虞がある。
また、請求項4に係る発明のスパークプラグでは、請求項1乃至3のいずれかに係る発明の効果に加え、第2合金は75重量%以上のイリジウムを含有するので、火花放電の際の耐火花消耗性を高くすることができる。イリジウムの含有量が75重量%未満であると第2合金の融点が下がることとなり、耐火花消耗性が低下する虞がある。
また、請求項5に係る発明のスパークプラグでは、請求項1乃至4のいずれかに係る発明の効果に加え次の効果を奏する。火花放電は尖突状の部位から発生しやすく、貴金属チップにおいて、その部位は先端面の縁部分となる。ここで貴金属チップの先端面においてその径方向の外周側を第2合金で形成すれば、先端面の縁部分には第2合金が配置されることとなる。貴金属チップをこのような構成とすることで、スパークプラグの耐火花消耗性は向上し、火花放電間隙が広がりにくくなるので、長期間にわたって安定した着火性を得ることができる。
また、請求項6に係る発明のスパークプラグでは、請求項5に係る発明の効果に加え、貴金属チップは第2合金からなる管部の内部に第1合金からなる芯部を配置した状態で線引き加工により作製されるため、線引き加工後の貴金属チップの原形を、その軸線方向と直交する方向に切断すれば、接地電極との接合面となる軸線断面に第1合金および第2合金を露出させることができる。すなわち、貴金属チップを容易に加工し、安価に作製することができ、生産コストを低減することができる。
また、請求項7に係る発明のスパークプラグでは、請求項1乃至6のいずれかに係る発明の効果に加え、貴金属チップを接地電極の他端部の一側面に抵抗溶接により接合しても十分な接合強度を得ることができるので、生産コストを低減することができる。
また、請求項8に係る発明のスパークプラグでは、請求項1乃至7のいずれかに係る発明の効果に加え、少なくとも第1合金または第2合金のうちいずれか一方に、希土類酸化物が含有されているので、耐火花消耗性を高くすることができる。
以下、本発明を具体化したスパークプラグの実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態におけるスパークプラグの一例としてのスパークプラグ100の構造について説明する。図1は、スパークプラグ100の部分断面図である。なお、図1において、スパークプラグ100の軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示すように、スパークプラグ100は、概略、絶縁体を構成する絶縁碍子10と、この絶縁碍子10を保持する主体金具50と、絶縁碍子10内に軸線O方向に保持された中心電極20と、主体金具50の先端面57に基部32を溶接され、先端部31の一側面が中心電極20の先端部22の先端面21に対向する接地電極30と、絶縁碍子10の後端部に設けられた端子金具40とから構成されている。
まず、このスパークプラグ100の絶縁体を構成する絶縁碍子10について説明する。絶縁碍子10は周知のようにアルミナ等を焼成して形成され、軸中心に軸線O方向へ延びる軸孔12が形成された筒形状を有する。この絶縁碍子10の胴部18の中央付近には、胴部18よりも拡径された鍔部19が形成されている。また、胴部18よりも先端側(図中下側)には、胴部18よりも外径が細く形成され、内燃機関の燃焼室に曝される脚長部13が設けられている。そして、脚長部13と胴部18との間は段部15として形成されている。一方、胴部18の後端側には、沿面距離を稼ぐためのコルゲーション部11が形成されている。
次に、中心電極20は、インコネル(商標名)600または601等のニッケル系合金等で形成され、内部に熱伝導性に優れる銅等からなる金属芯23を有している。中心電極20の先端部22は絶縁碍子10の先端面から突出しており、先端側に向かって径小となるように形成されている。その先端部22の先端面21には柱状の貴金属チップ95が、その柱軸を中心電極20の軸線にあわせるようにして溶接されている。また、中心電極20は、軸孔12の内部に設けられたシール体4およびセラミック抵抗3を経由して、上方の端子金具40に電気的に接続されている。そして端子金具40には高圧ケーブル(図示外)がプラグキャップ(図示外)を介して接続され、外部回路から高電圧が印加されるようになっている。
次に、主体金具50について説明する。主体金具50は、図示外の内燃機関にスパークプラグ100を固定するための円筒状の金具であり、絶縁碍子10を取り囲むようにして保持している。主体金具50は鉄系の材料より形成され、図示外のスパークプラグレンチが嵌合する工具係合部51と、図示外の内燃機関上部に設けられたエンジンヘッドに螺合する雄ねじ部52とを備えている。
さらに主体金具50には、工具係合部51より後端側に加締め部53が設けられている。その加締め部53を加締めることにより、主体金具50内に形成された段部56に、板パッキン8を介して絶縁碍子10の段部15が支持されて、主体金具50と絶縁碍子10とが一体にされる。加締めにより段部15と段部56との間の気密を保持して燃焼ガスの流入を防ぐことができるように、その密閉を完全なものとするため、主体金具50と絶縁碍子10との間に環状のリング部材6,7が介在され、さらにリング部材6,7の間にタルク(滑石)9の粉末が充填される。すなわち、主体金具50は、板パッキン8、リング部材6,7およびタルク9を介して絶縁碍子10を保持している。また、主体金具50の中央部には鍔部54が形成され、ねじ部52の後端側近傍、すなわち鍔部54の座面55にはガスケット5(薄板を折りたたんだ環状のパッキン)が嵌挿されている。
次に、接地電極30について説明する。接地電極30は、耐腐食性の高い金属から構成され、一例として、インコネル(商標名)600または601等のニッケル合金が用いられる。この接地電極30は自身の長手方向の横断面が略長方形を有しており、基部32が主体金具50の先端面57に溶接により接合されている。また、接地電極30の先端部31は、中心電極20の先端部22に対向するように屈曲されている。この中心電極20に対向する側の面である接地電極30の先端部31の内面33は、中心電極20の軸線O方向に略直交している。そして、その内面33上で、中心電極20の先端面21より突設された貴金属チップ95に対向する位置には、柱状の貴金属チップ90が抵抗溶接によって接合されており、両貴金属チップ90,95間で火花放電ギャップ(火花放電間隙)が形成されている。なお、先端部31が、本発明における「接地電極の他端」に相当し、内面33が、本発明における「一側面」に相当する。また、基部32が、本発明における「接地電極の一端」に相当する。
次に、図2,図3を参照して、接地電極30の貴金属チップ90について説明する。図2は、接地電極30に接合された貴金属チップ90の斜視図である。図3は、貴金属チップ90の製造方法の例を模式的に示す図である。
図2に示すように貴金属チップ90は、その軸線方向(図2における上下方向)と直交する方向において、外側にイリジウムを主成分とする外側合金92と、内側にプラチナを主成分とする内側合金91とが接合されたクラッド材からなる。接地電極30の先端部31の内面33に、その軸線方向の基端97側(軸線方向の一端側)の端面(接合面96)が溶接され、先端94側の先端面93が、中心電極20に接合された貴金属チップ95(図1参照)に対向している。
本実施の形態では、外側合金92は、イリジウムを主成分とし、ロジウム、プラチナ、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、および希土類酸化物(例えばイットリアなど)のうち少なくとも一つが第2添加成分として添加された合金である。なお、イリジウムの含有量は75重量%以上であることが望ましい。イリジウムの含有量が75重量%未満であると外側合金92の融点が下がり、耐火花消耗性が低下する虞がある。なお、外側合金92が、本発明における「第2合金」に相当する。
また、内側合金91は、プラチナを主成分とし、ロジウム、イリジウム、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、および希土類酸化物(例えばイットリアなど)のうち少なくとも一つが第2添加成分として添加された合金である。なお、内側合金91がプラチナ−ニッケル合金からなる場合、ニッケルの含有量は、10重量%以上30重量%以下であることが望ましい。ニッケルの含有量が10重量%未満である場合、溶接性が低下し、抵抗溶接では十分な接合強度が得られなくなる虞がある。また、ニッケルの含有量が30重量%より多い場合、加工性が低下し、生産コストが高くなる虞がある。なお、内側合金91が、本発明における「第1合金」に相当する。
また、上記のように外側合金92や内側合金91にイットリア等の希土類酸化物が含有すれば、貴金属チップ90の耐火花消耗性を高くすることができる。
このような構成の貴金属チップ90は、本実施の形態では線引き加工(伸線加工)によって作製される。図3に示すように、イリジウムを主成分とする合金からなる貴金属管192と、プラチナを主成分とする合金からなる貴金属芯191とを作製する(形成工程)。そして貴金属管192内に貴金属芯191を挿通させ(挿通工程)、これを伸線ダイス195のダイス穴に通すことで、断面が円形となるように引き延ばした線状の貴金属棒198を得る(線引き工程)。この貴金属棒198を所定の長さで切断し、円柱状の貴金属チップ90を得る(切断工程)。なお、貴金属管192および貴金属芯191が、それぞれ、本発明における「管部」および「芯部」に相当する。
こうして得られる貴金属チップ90は、接地電極30に抵抗溶接により接合される。貴金属チップ90は接地電極30の内面33に対して直交する方向に突出状に、その基端97側の接合面96が接合されるが、上記のように線引き加工によって作製されるため、接合面96には外側合金92および内側合金91が露出されていることとなる。貴金属チップ90と接地電極30との溶接界面では、溶接性に優れた内側合金91が接地電極30に強固に接合されるため、外側合金92の溶接の強度が補強され、貴金属チップ90の接合後の脱落は防止されることとなる。また、火花放電は尖突状の部位から発生しやすいが、貴金属チップ90においては、先端面93の縁部分が火花放電の際の尖突状の部位に相当する。本実施の形態では、その先端面93の縁部分に外側合金92が配置されているので、耐火花消耗性にも優れた効果を発揮することができる。このように構成された貴金属チップ90を用いることでスパークプラグ100の耐火花消耗性は向上し、火花放電ギャップが広がりにくくなるので、長期間にわたって安定した着火性を得ることができる。
こうした貴金属チップ90は、その先端面93の直径(あるいは胴部の外径が一定であれば、その外径であってもよい。)が1.0mm以下であり、接地電極30からの突出量(接地電極30との接合面からの突出長さ)が0.3mm以上の針形状のものであれば、貴金属チップ90を構成する内側合金91と外側合金92との間での剥離が発生する虞が低減される。これは、針形状の貴金属チップ90であれば接地電極に対するその体積が、より小さいため、熱膨張・熱収縮を繰り返した際に、内側合金91と外側合金92との間の線膨張係数の差による両合金間での寸法差が大きくはならないからであり、特に溶接界面における剥離の虞が低減され、貴金属チップ90が脱落しにくくなる。さらに、体積の大きい接地電極30から火花放電ギャップが離れるため、火花放電の際の消炎作用が低減されるので、スパークプラグ100の着火性を向上することができる。
[実施例1]
貴金属チップ90をこのような構成としたことの効果について検証するため、後述する評価試験を行った。本実施の形態の貴金属チップ90として、大きさや、内側合金91と外側合金92の組成を異ならせた12種類のサンプルを作製した。そして各サンプルを組み付けたスパークプラグを用い、火花消耗性および溶接性について評価する机上試験を行った。また、各サンプルを作製する際の加工性についても評価を行った。
第1〜第3のサンプルは、いずれも内側合金と外側合金の組成をそれぞれPt−20Ni,Ir−Yとし、各サンプルの外径を、順に0.6,1.0,1.2(mm)と異ならせた貴金属チップとして作製した。第4,第5のサンプルは、それぞれPt−20Ni,Ir−Yからなる外径0.6mmの貴金属チップとして作製した。第6,第7のサンプルは、内側合金の組成をいずれもPt−20Niとし、外側合金の組成をそれぞれIr−30Rh,Ir−25Rhとした外径0.6mmの貴金属チップとして作製した。第8〜第11のサンプルは、内側合金の組成をそれぞれPt−35Ni,Pt−30Ni,Pt−10Ni,Pt−5Niとし、外側合金の組成いずれもIr−5Ptとした外径0.6mmの貴金属チップとして作製した。第12のサンプルは、内側合金と外側合金の組成をそれぞれIr−Y,Pt−20Niとした外径0.6mmの貴金属チップとして作製した。
各サンプルを作製する際の線引き加工において、歩留まりをもって加工性についての評価を行った。そして、歩留まりが75%以上であった場合を「○」、75%未満50%以上であった場合を「△」、50%未満であった場合を「×」として評価した。
また、これら各サンプルを接地電極に抵抗溶接したスパークプラグに対して机上試験を行った。火花消耗性についての評価試験では、各スパークプラグに対して窒素雰囲気中にて0.6MPaの圧力をかけ、60Hzにて100時間の火花放電を行った。その結果、火花放電ギャップ(中心電極の先端面と、接地電極に溶接された貴金属チップの先端面との間の距離)が、試験前より増加した量(長さ)が0.1mm未満であった場合を「○」、0.1mm以上0.2mm未満であった場合を「△」、0.2mm以上であった場合を「×」として評価した。
溶接性についての評価試験では、各サンプルを組み付けたスパークプラグを用意し、貴金属チップが接合された接地電極や中心電極付近をバーナーで加熱した。950℃に加熱し、その後2分間保持し、1分間室温で自然冷却し、これを1サイクルとして1000サイクル行った後、貴金属チップの状態について調べた。検査方法は、貴金属チップの軸線を通る平面で貴金属チップごと接地電極を切断し、その断面をエッチング処理する。そしてその断面において接地電極と貴金属チップとの接合面を観察し、酸化スケールの進行度合いを測定する。貴金属チップの軸線に垂直な方向の長さに対する酸化スケールの合計長さを測定し、酸化スケールの割合が30%未満であった場合を「○」、30%以上50%未満であった場合を「△」、50%以上であった場合を「×」として評価した。これら評価試験の結果を表1に示す。
Figure 2006147406
各サンプルについての評価試験の結果、第1〜第12のテストサンプルの火花消耗性は、順に「○」,「○」,「○」,「×」,「○」,「×」,「○」,「×」,「○」,「○」,「○」,「×」と評価された。また、溶接性は、順に「○」,「△」,「×」,「○」,「×」,「○」,「○」,「○」,「○」,「○」,「×」,「○」と評価された。加工性については、順に「○」,「○」,「○」,「○」,「○」,「○」,「○」,「×」,「○」,「○」,「○」,「△」と評価された。
第1〜第3のサンプルを比較した結果、貴金属チップの先端面の直径、すなわち貴金属チップの外径が小さいほど貴金属チップの体積が、より小さくなるため、内側合金と外側合金との間の線膨張係数の差による両合金間での寸法差が小さく、溶接性が向上することが確認できた。また、第1,第4のサンプルを比較した結果、貴金属チップをプラチナ−ニッケル合金から形成すれば、溶接性については問題ないものの火花消耗性が低下することが確認できた。第1,第5のサンプルを比較した結果、貴金属チップをイリジウムから形成すれば、火花消耗性については問題ないものの溶接性が低下することが確認できた。
次に、第6,第7のサンプルを比較した結果、外側合金におけるイリジウムの含有量が70重量%未満となると、火花消耗性が低下することが確認できた。また、第8,第9のサンプルを比較した結果、内側合金においてニッケルの含有量が30重量%より多くなると、溶接性については問題ないが、硬度が高くなり、加工性が低下する。ニッケルの含有量が増えたことにより融点が下がり、耐火花消耗性が低下することが確認できた。さらに第10,第11のサンプルを比較した結果、内側合金においてニッケルの含有量が10重量%未満となると、火花消耗性や加工性については問題ないが、溶接性が低下することが確認できた。
そして、第1,第12のサンプルを比較した結果、溶接性については問題ないが、火花放電が発生しやすい外側側(先端面の縁部分)にプラチナ−ニッケル合金が配置されるため火花消耗性が低下することが確認できた。さらに、線引き加工においても、プラチナ−ニッケル合金が貴金属管側、より剛性の高いイリジウム−イットリア合金が貴金属芯側となるため、加工性がやや低下することが確認できた。
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、本実施の形態では、溶接界面に外側合金92と内側合金91とが露出されているとしたが、少なくとも溶接によって溶融した部分に外側合金92が接していればよく、必ずしも両合金が露出していなくともよい。また、貴金属チップ95の構成を貴金属チップ90と同じ構成とし、中心電極20の先端面21に抵抗溶接してもよい。また、貴金属チップ95はなくともよい。
また、貴金属チップ90は、本実施の形態では一本の貴金属芯191を貴金属管192に挿通した状態で線引き加工を行って外側合金92と内側合金91とがクラッド状に形成されるようにしたが(図3参照)、複数本の貴金属芯191を貴金属管192に挿通させて線引き加工を行ってもよい。例えば、図4に示すように貴金属芯191を3本用いた貴金属チップ190や、図5に示すように貴金属芯191を5本用いた貴金属チップ290などを作製してもよい。また、貴金属管192の内周に隔壁を設けて貴金属芯191を挿通した状態や、あるいは貴金属管192と同一の材料からなる貴金属芯と貴金属芯191とを挿通した状態で線引き加工を行って、図6に示すように、内側合金91が外側合金92内にて散らばった状態の貴金属チップ390を作製してもよい。すなわち、接地電極30との溶接界面、あるいは溶接によって溶融した部分に、内側合金91と外側合金92とが接した状態とすることのできる貴金属チップを作製すればよい。またその溶接界面付近に、上記溶接後の条件を満たすように内側合金91および外側合金92が配置されていれば足り、貴金属チップ90の先端側(放電側)に、内側合金91が露出していなくともよい。
また、線引き加工において形成される貴金属チップ90の外周の形状は軸線断面円形でなくともよく、多角形であってもよい。円形の場合は、その外径(先端面の直径)が1.0mm以下であればよく、また多角形の場合は、これに外接する円の直径が1.0mm以下となれば足りる。
さらに、接地電極の形状は本実施の形態のものに限られるものではない。本実施の形態の接地電極は、その先端側の一側面が中心電極の先端面に対し略水平に対向した形状のものであったが、接地電極の先端が中心電極の軸線に向かって傾いた、いわゆるスラント形状のものであってもよい。
本発明は、火花放電間隙を形成する電極にイリジウムを含有した貴金属チップを接合するスパークプラグに適用することができる。
スパークプラグ100の部分断面図である。 接地電極30に接合された貴金属チップ90の斜視図である。 貴金属チップ90の製造方法の例を模式的に示す図である。 貴金属チップ90の変形例としての貴金属チップ190の斜視図である。 貴金属チップ90の変形例としての貴金属チップ290の斜視図である。 貴金属チップ90の変形例としての貴金属チップ390の斜視図である。
符号の説明
10 絶縁碍子
12 軸孔
20 中心電極
21 先端面
22 先端部
30 接地電極
31 先端部
32 基部
33 内面
50 主体金具
57 先端面
90 貴金属チップ
91 内側合金
92 外側合金
93 先端面
94 先端
96 接合面
97 基端
100 スパークプラグ
191 貴金属芯
192 貴金属管

Claims (8)

  1. 中心電極と、前記中心電極の軸線方向に延びる軸孔を有し、その軸孔の内部で前記中心電極を保持する絶縁碍子と、その絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、一端が前記主体金具の先端面に接合され、他端側の一側面が前記中心電極を指向するように屈曲された接地電極と、少なくとも前記接地電極の他端側に自身の基端側が接合された柱状の貴金属チップとを備え、
    前記貴金属チップは、前記接地電極と溶接された部位の先端側隣接部において自身の軸線と直交する方向に、
    プラチナを主成分とし、ロジウム、イリジウム、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウムのうち少なくとも一つが添加された第1合金と、
    イリジウムを主成分とし、ロジウム、プラチナ、ニッケル、タングステン、パラジウム、ルテニウム、オスミウムのうち少なくとも一つが添加された第2合金と
    が接合されていることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記貴金属チップは、前記接地電極の他端側の一側面から0.3mm以上突出し、かつ、その先端面の外接円の直径が1.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記第1合金は、10重量%以上30重量%以下のニッケルを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記第2合金は、75重量%以上のイリジウムを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスパークプラグ。
  5. 前記貴金属チップは、少なくとも自身の先端面においてその径方向の外周側が前記第2合金によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスパークプラグ。
  6. 前記貴金属チップは、前記第2合金からなる管部の内部に前記第1合金からなる芯部を配置した状態で、線引き加工を施すことによって作製されたことを特徴とする請求項5に記載のスパークプラグ。
  7. 前記貴金属チップは、前記接地電極の他端側の一側面に抵抗溶接によって接合されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスパークプラグ。
  8. 少なくとも前記第1合金または前記第2合金のうちいずれか一方には、希土類酸化物が含有されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のスパークプラグ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018041573A (ja) * 2016-09-06 2018-03-15 株式会社デンソー スパークプラグ

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