JP2006257204A - セルロースエステルフィルム、その製造方法、偏光板、位相差板および光学用表示装置 - Google Patents

セルロースエステルフィルム、その製造方法、偏光板、位相差板および光学用表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 液晶表示装置に組み込んだときに発生する表示ムラや湿度による視認性の変化を改善することができるセルロースエステルフィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記式を満足するセルロースエステルと該セルロースエステルの固形分に対して特定の構造を有するフッ素系界面活性剤0.01〜5質量%との混合物を溶融製膜する。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、溶融製膜によるセルロースエステルフィルムの製造方法に関する。また、本発明は光学特性に優れたセルロースエステルフィルムとそれを利用した偏光板、位相差板および光学用表示装置にも関する。
従来から、液晶画像表示装置に使用されるセルロースエステルフィルムを製造する際に、ジクロロメタンのような塩素系有機溶剤にセルロースエステルを溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。塩素系有機溶剤の中でもジクロロメタンは、セルロースアシレートの良溶媒であるとともに、沸点が低くて(約40℃)製膜工程や乾燥工程において乾燥させ易いという利点を有することから好ましく使用されている。
一方、近年では環境保全の観点から、塩素系有機溶媒を始めとする有機溶媒の排出を抑えることが強く求められるようになっている。このため、より厳密なクローズドシステムを採用して系から有機溶媒が漏れ出さないように努めたり、系から万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を通して有機溶媒を吸着させたり、火力により燃焼させたり、電子線ビームにより分解させたりするなどの処理を行って、殆ど有機溶媒を排出することがないように対策が講じられた。しかしながら、これらの対策を行っても完全な非排出には至っていないため、さらなる改良が必要とされていた。
この対策として、有機溶剤を用いない製膜法として、セルロースエステルを溶融製膜する方法が開発された(特許文献1)。これは、セルロースエステルのエステル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、従来から用いられていたセルロースアセテートを、セルロースプロピオネートやセルロースプロピオネート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。また、従来のセルロースエステルフィルムを基板として位相差フィルムを作製すると、湿度変化に伴い視野特性が変動し易くなるという問題もあった。
特開2000−352620号公報
しかしながら、この方法で溶融製膜したものを用いて偏光板を作成し液晶表示装置に組み込むと、著しい表示ムラが発生してしまうという問題がある。特に長手方向の表示ムラが大きくて、幅方向の表示ムラも改良が必要なレベルであった。このような故障は、15インチ以上の大型液晶表示板に組み込んだ際に特に顕著であり、大きな課題であった。これは、溶融混練機から溶融物をT−ダイ(スリット)を通してキャスティングドラム上に押出し冷却固化して製膜する過程において、T−ダイのところで発現するダイ筋が幅方向(TD)の厚みムラを引き起こし、キャスティングドラム上への密着条件により長手方向(MD)の厚みムラ(横ダン)を引き起こすことが原因である。
これらの従来技術の課題に鑑みて、本発明は、液晶表示装置に組み込んだときに発生する表示ムラや湿度による視認性の変化を改善することができるセルロースエステルフィルムを提供することを目的とする。更に本発明は、従来セルロースエステルフィルムの作製において、有機溶媒を用いたが、作業時の環境対応や有機溶媒の回収などに多大の時間と管理を必要とするのに対して、これらの問題を大幅に改善することを目的とする。
本発明の上記目的は以下の構成を有する本発明により達成された。
(態様1)
下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルと該セルロースエステルの固形分に対して下記一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤0.01〜5質量%との混合物を溶融製膜する工程を含むことを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
一般式(2A)
Figure 2006257204
式中、RA1およびRA2はそれぞれ置換もしくは無置換のアルキル基を表すが、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、LA1、LA2およびLA3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、X+はカチオン性の置換基を表す。Y-は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。mAは0または1である。
一般式(2B)
Figure 2006257204
式中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8のいずれかの整数を表す。LB1およびLB2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。
一般式(2C)
Figure 2006257204
式中、RC1は置換または無置換のアルキル基を表し、RCFはパーフルオロアルキレン基を表す。Aは水素原子またはフッ素原子を表し、LC1は置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。YC1およびYC2は、一方が水素原子を、もう一方が−LC2−SO3Mを表す。ここで、LC2は単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表し、Mはカチオンを表す。
一般式(2D)
[RfD−(LDnDmD−W

式中、RfDはパーフルオロアルキル基を表し、LDはアルキレン基、Wは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を有する基を表す。nDは0または1を表し、mDは1〜3のいずれかの整数を表す。
(態様2)
セルロースエステルと一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤との溶融混合物(メルト)をキャスティングドラム上で固化させ、キャスティングドラム上に形成されたセルロースエステルフィルムを剥離し、ニップロールで張力カットし、さらに巻き取り時の張力が0.01kg/cm2〜10kg/cm2で巻き取ることを特徴とする(態様1)に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
(態様3)
溶融混合物をキャスティングドラム上で固化する際、(Tg+30℃)からTgの間(ここでTgはセルロースエステルフィルムのガラス転移温度)の冷却を10℃/秒〜100℃/秒の速度(固化速度)で行うことを特徴とする(態様1)または(態様9)に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
(態様4)
セルロースエステルと一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤との混合物を、圧縮比2〜15のスクリューを用いて180℃〜250℃で溶融した後、T−ダイからキャスティングドラム上に押し出すことを特徴とする(態様2)または(態様3)に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
(態様5)
T−ダイから押し出した後、Tgから(Tg−20℃)の間の冷却を0.1℃/秒〜20℃/秒の速度で行うことを特徴とする(態様4)に記載のセルロースエステルフィルムの製膜法。
(態様6)
溶融製膜後に、少なくとも1方向(好ましくは流延方向または流延方向に直交する方向)に1%〜500%延伸する工程を有することを特徴とする(態様1)〜(態様5)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
(態様7)
(態様1)〜(態様6)のいずれか一項に記載の製造方法により製造したセルロースエステルフィルム。
(態様8)
下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルと、該セルロースエステルの固形分に対してフ一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤を0.01〜5質量%含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
一般式(2A)
Figure 2006257204
式中、RA1およびRA2はそれぞれ置換もしくは無置換のアルキル基を表すが、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、LA1、LA2およびLA3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、X+はカチオン性の置換基を表す。Y-は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。mAは0または1である。
一般式(2B)
Figure 2006257204
式中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8のいずれかの整数を表す。LB1およびLB2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。
一般式(2C)
Figure 2006257204
式中、RC1は置換または無置換のアルキル基を表し、RCFはパーフルオロアルキレン基を表す。Aは水素原子またはフッ素原子を表し、LC1は置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。YC1およびYC2は、一方が水素原子を、もう一方が−LC2−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
一般式(2D)
[RfD−(LDnDmD−W

式中、RfDはパーフルオロアルキル基を表し、LDはアルキレン基、Wは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を有する基を表す。nDは0または1を表し、mDは1〜3のいずれかの整数を表す。
(態様9)
セルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基が、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基からなる群より選択される1以上のアシル基であることを特徴とする(態様7)〜(態様8)に記載のセルロースエステルフィルム。
(態様10)
面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦200nmであり、厚み方向のレターデーション(Rth)が−200≦Rth≦500nmであることを特徴とする(態様7)〜(態様9)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
(態様11)
セルロースエステルフィルムの厚みムラが0%〜2%であることを特徴とする(態様7)〜(態様10)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
(態様12)
フィルム表面の水の接触角が45°以下(25℃/相対湿度60%)であることを特徴とする(態様7)〜(態様11)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
(態様13)
セルロースエステルが下記式(S−4)〜(S−6)を満足する(態様7)〜(態様12)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
式(S−4) 2.6≦A+B’≦3.0
式(S−5) 0≦A≦1.8
式(S−6) 1.2≦B’≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、B’はセルロースの水酸基に対するプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
(態様14)
偏光膜に(態様7)〜(態様13)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする光学用偏光板(本明細書中では単に偏光板ということがある)。
(態様15)
該偏光膜が長手方向に対して実質的に45°の方向にテンター延伸されたことを特徴とする(態様14)に記載の光学用偏光板。
(態様16)
(態様7)〜(態様15)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム(位相差板)。
(態様17)
(態様7)〜(態様16)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
(態様18)
(態様7)〜(態様13)のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを用いて作製された光学用表示装置。
(態様19)
(態様14)たは(態様15)に記載の光学用偏光板、(態様16)に記載の光学補償フィルム、または(態様17)に記載の反射防止フィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の製造方法によれば、厚さムラおよび光学特性ムラを大幅に軽減したセルロースエステルフィルムを提供することができる。また、耐傷性とゴミ付き防止の改善が見られ、予想外の効果をうることができた。さらにまた、本発明のセルロースエステルフィルムを組み込んで液晶表示装置を製造すれば、表示ムラや湿度による光学特性の変化を抑制することができる。更に本発明は、セルロースエステルフィルムの作製において、作業時の環境対応を大幅に改善することができた。
発明の実施の形態
以下において、本発明のセルロースエステルフィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<セルロースエステル>
(セルロースエステル)
本発明で用いられるセルロースエステルは下記式(S−1)〜(S−3)を満足する。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
セルロースを構成する、ベータ(β)−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースエステルは、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)の合計を意味する。本発明では、より好ましくは2.6≦A+B≦3.0であり、さらに好ましくは2.67≦A+B≦2.97である。また好ましくは、Aは0≦A≦1.4であり、Bは1.3≦B≦2.97が好ましく、さらには1.4≦B≦2.97が好ましい。本発明においては、セルロースの2位、3位および6位の水酸基の置換度は特に限定されないが、セルロースエステルの6位の置換度が好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは0.85以上である。これらによりセルロースエステルの溶解性、耐熱性を向上させることができる。
次に本発明のセルロースエステルの置換基Bで表される炭素数3〜22のアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよい。本発明のセルロースエステルのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数は3〜18であることが好ましく、炭素数は3〜12であることがさらに好ましく、炭素数は3〜8であることが特に好ましい。これらの脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、あるいはアルキニルカルボニル基などを挙げることができる。アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数は6〜22であることが好ましく、炭素数は6〜18であることがさらに好ましく、炭素数は6〜12であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。
好ましいアシル基の例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブチリル基、ピバロイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフタレンカルボニル基、フタロイル基、シンナモイル基などを挙げることができる。
本発明のセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、より好ましくは炭素原子数が6以下の脂肪族アシル基であり、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基からなる群より選択される1以上のアシル基が好ましい。より好ましいのは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基およびペンタノイル基からなる群より選択される1以上のアシル基であり、さらに好ましいのはアセリル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択される1以上のアシル基である。本発明のセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、単一種であってもよいし、複数種であってもよい。
さらに、本発明で使用するセルロースエステルは、2.6≦A+B’≦3.0、0≦A≦1.8、および1.0≦B’≦3を満足することが好ましい(ここでAはアセチル基の置換度、B’はプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和を示す)。またより好ましくは、本発明で使用するセルロースエステルが、2.6≦A+B’≦3.0、0≦A≦1.4、および1.2≦B’≦3を満足することが好ましい。特に、本発明で使用するセルロースエステルが、2.7≦A+B’≦3.0、0≦A≦1.0および1.7≦B’≦3を満足することが好ましい。このようにアセチル基の含率を低くし、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の含率を多くすることによって、フィルム化したときの湿度に対するRe、Rth変化を抑制することができる。
(セルロースエステルの製造方法)
次に、本発明のセルロースエステルの製造方法について説明する。本発明のセルロースエステルのさらに詳細な原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁に記載されている。セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。セルロース原料がシート状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態は微細粉末から羽毛状になるまで解砕が進行していることが好ましい。
セルロース原料はアシル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行っておくことが好ましい。活性化剤としては、カルボン酸または水を用いることができるが、水を用いた場合には、活性化の後に酸無水物を過剰に添加して脱水を行ったり、水を置換するためにカルボン酸で洗浄したり、アシル化の条件を調節したりするといった工程を含むことが好ましい。活性化剤はいかなる温度に調節して添加してもよく、添加方法としては噴霧、滴下、浸漬などの方法から選択することができる。活性化剤として好ましいカルボン酸は、炭素数2〜7のカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロピオン酸、吉草酸、3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、ヘキサン酸、2−メチル吉草酸、3−メチル吉草酸、4−メチル吉草酸、2,2−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、シクロペンタンカルボン酸、ヘプタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸など)であり、より好ましくは、酢酸、プロピオン酸、または酪酸である。活性化の際はさらに硫酸などをセルロースに対して0.1質量%〜10質量%添加してもよい。
活性化剤の添加量は、セルロース質量に対して0.05〜100質量倍であることが好ましく、0.1〜20質量倍であることがさらに好ましく、0.3〜20質量倍であることが特に好ましい。活性化の時間は20分〜72時間が好ましく、さらに好ましくは30分〜24時間、特に好ましくは30分〜12時間である。また、活性化の温度は0℃〜90℃が好ましく、15℃〜80℃がさらに好ましく、20℃〜60℃が特に好ましい。セルロースの活性化の工程は加圧または減圧条件下で行うこともできる。また、加熱の手段として、マイクロ波や赤外線などの電磁波を用いてもよい。
本発明におけるセルロースエステルを製造する方法においては、セルロースにカルボン酸の酸無水物を加え、ブレンステッド酸またはルイス酸を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をアシル化することが好ましい。本発明のセルロースエステルを得る方法としては、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を合成してセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロースエステルを一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて残存する水酸基をさらにアシル化する方法などを用いることができる。
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜7であり、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物、吉草酸無水物、3−メチル酪酸無水物、2−メチル酪酸無水物、2,2−ジメチルプロピオン酸無水物(ピバル酸無水物)、ヘキサン酸無水物、2−メチル吉草酸無水物、3−メチル吉草酸無水物、4−メチル吉草酸無水物、2,2−ジメチル酪酸無水物、2,3−ジメチル酪酸無水物、3,3−ジメチル酪酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、ヘプタン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、安息香酸無水物などを挙げることができる。
より好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物などの無水物であり、特に好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物である。セルロースエステルを調製する目的で、これらの酸無水物を併用して使用することが好ましく行われる。その混合比は目的とするセルロースエステルの置換比に応じて決定することが好ましい。酸無水物は、セルロースに対して、通常は過剰当量を添加することが好ましく、セルロースの水酸基に対して1.2〜50当量添加することが好ましく、1.5〜30当量添加することがより好ましく、2〜10当量添加することが特に好ましい。
本発明におけるセルロースエステルの製造に用いるアシル化の触媒には、ブレンステッド酸またはルイス酸を使用することが好ましい。ブレンステッド酸およびルイス酸の定義については、例えば、「理化学辞典」第五版(2000年)に記載されている。好ましいブレンステッド酸の例としては、硫酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを挙げることができる。好ましいルイス酸の例としては、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化マグネシウムなどを挙げることができる。触媒としては、硫酸または過塩素酸がより好ましく、硫酸が特に好ましい。触媒の好ましい添加量は、セルロースに対して0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
アシル化を行う際には、粘度、反応速度、攪拌性、アシル置換比などを調整する目的で、溶媒を添加してもよい。このような溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、カルボン酸、アセトン、エチルメチルケトン、トルエン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどを用いることもできるが、好ましくはカルボン酸であり、例えば、炭素数2〜7のカルボン酸{例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロピオン酸、吉草酸、3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、ヘキサン酸、2−メチル吉草酸、3−メチル吉草酸、4−メチル吉草酸、2,2−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、シクロペンタンカルボン酸}などを挙げることができる。さらに好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを挙げることができる。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
アシル化を行う際には、酸無水物と触媒、さらに、必要に応じて溶媒を混合してからセルロースと混合してもよく、またこれらを別々に逐次セルロースと混合してもよいが、通常は、酸無水物と触媒との混合物、または、酸無水物と触媒と溶媒との混合物をアシル化剤として調整してからセルロースと反応させることが好ましい。アシル化の際の反応熱による反応容器内の温度上昇を抑制するために、アシル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。冷却温度としては、−50℃〜20℃が好ましく、−35℃〜10℃がより好ましく、−25℃〜5℃が特に好ましい。アシル化剤は液状で添加しても、凍結させて結晶、フレーク、またはブロック状の固体として添加してもよい。
アシル化剤はさらに、セルロースに対して一度に添加しても、分割して添加してもよい。また、アシル化剤に対してセルロースを一度に添加しても、分割して添加してもよい。アシル化剤を分割して添加する場合は、同一組成のアシル化剤を用いても、複数の組成の異なるアシル化剤を用いても良い。好ましい例として、1)酸無水物と溶媒の混合物をまず添加し、次いで、触媒を添加する、2)酸無水物、溶媒と触媒の一部の混合物をまず添加し、次いで、触媒の残りと溶媒の混合物を添加する、3)酸無水物と溶媒の混合物をまず添加し、次いで、触媒と溶媒の混合物を添加する、4)溶媒をまず添加し、酸無水物と触媒との混合物あるいは酸無水物と触媒と溶媒との混合物を添加する、などを挙げることができる。
セルロースのアシル化は発熱反応であるが、本発明のセルロースエステルを製造する方法においては、アシル化の際の最高到達温度が−50℃〜50℃であることが好ましく重合度のコントロールが容易であり、好ましくは−30℃〜45℃であり、より好ましくは−20℃〜40℃であり、特に好ましくは−20℃〜35℃である。好ましいアシル化時間は0.5時間〜24時間であり、1時間〜12時間がより好ましく、1.5時間〜6時間が特に好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルを製造する方法においては、アシル化反応の後に、反応停止剤を加えることが好ましい。反応停止剤としては、酸無水物を分解するものであればいかなるものでもよく、好ましい例として、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)またはこれらを含有する組成物などを挙げることができる。反応停止剤の添加に際しては、反応装置の冷却能力を超える大きな発熱が生じて、セルロースエステルの重合度を低下させる原因となったり、セルロースエステルが望まない形態で沈殿したりする場合があるなどの不都合を避けるため、水やアルコールを直接添加するよりも、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸と水との混合物を添加することが好ましく、カルボン酸としては酢酸が特に好ましい。カルボン酸と水の組成比は任意の割合で用いることができるが、水の含有量が5質量%〜80質量%、さらには10質量%〜60質量%、特には15質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。
反応停止剤は、アシル化の反応容器に添加しても、反応停止剤の容器に反応物を添加してもよい。反応停止剤は3分〜3時間かけて添加することが好ましく、より好ましくは4分〜2時間であり、さらに好ましくは5分〜1時間であり、特に好ましくは10分〜45分である。反応停止剤を添加する際には反応容器を冷却しても冷却しなくてもよいが、解重合を抑制する目的から、反応容器を冷却して温度上昇を抑制することが好ましい。また、反応停止剤を冷却しておくことも好ましい。
アシル化の停止後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部または全部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)またはその溶液を添加してもよい。中和剤の溶媒としては、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)、カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、ケトン(例えば、アセトン、エチルメチルケトンなど)、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒、およびこれらの混合溶媒を好ましい例として挙げることができる。
このようにして得られるセルロースエステルは、セルロース水酸基の全置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸などのアシル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、所望のアシル置換度を有するセルロースエステルまで変化させること(いわゆる熟成)が一般的に行われる。部分加水分解の過程でセルロースの硫酸エステルも加水分解されることから、加水分解の条件を調節することにより、セルロースに結合した硫酸エステルの量を削減することができる。
所望のセルロースエステルが得られた時点で、系内に残存している触媒を、前記のような中和剤またはその溶液を用いて完全に中和し、部分加水分解を停止させることが好ましい。反応溶液に対して溶解性が低い塩を生成する中和剤(例えば、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなど)を添加することにより、溶液中あるいはセルロースに結合した触媒(例えば、硫酸エステル)を効果的に除去することも好ましい。
セルロースエステル中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減する目的として、アシル化後の反応混合物のろ過を行うことが好ましい。ろ過は、エステル化の完了から再沈殿までの間のいかなる工程において行ってもよい。ろ過圧や取り扱い性の制御の目的から、ろ過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。ろ過の際には、そのろ材は特に限定されず、布、ガラスフィルター、セルロース系ろ紙、セルロース系布フィルター、金属フィルター、ポリマー系フィルター(例えば、ポリプロピレン製フィルター、ポリエチレンフィルター、ポリアミド系フィルター、フッ素系フィルターなど)を挙げることができる。そのフィルター口径サイズは、0.1〜500μmが好ましく、より好ましくは2〜200μmであり、さらには3〜60μmである。
得られたセルロースエステル溶液を、水もしくはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)水溶液のような貧溶媒中に混合するか、セルロースエステル反応溶液中に、貧溶媒を混合することにより、セルロースエステルを再沈殿させ、洗浄および安定化処理により目的のセルロースエステルを得ることができる。再沈殿によって、精製効率の向上、分子量分布や見かけ密度の調節を図ることができる。再沈殿は連続的に行っても、一定量ずつバッチ式で行ってもよい。セルロースエステル溶液の濃度および貧溶媒の組成をセルロースエステルの置換様式あるいは重合度により調整することで、再沈殿したセルロースエステルの形態や分子量分布を制御することも好ましい。
生成したセルロースエステルは洗浄処理することが好ましい。洗浄には、不純物を除去することができるものであればいかなるものでも良いが、通常は水または温水が用いられる。洗浄水の温度は、好ましくは5℃〜100℃であり、さらに好ましくは15℃〜90℃であり、特に好ましくは30℃〜80℃である。洗浄処理はろ過と洗浄液の交換を繰り返すいわゆるバッチ式で行っても、連続洗浄装置を用いて行ってもよい。再沈殿および洗浄の工程で発生した廃液を再沈殿の貧溶媒として再利用したり、蒸留などの手段によりカルボン酸などの溶媒を回収して再利用することも好ましい。洗浄の進行はいかなる手段で追跡を行ってよいが、水素イオン濃度、イオンクロマトグラフィー、電気伝導度、ICP、元素分析、原子吸光スペクトルなどの方法を好ましい例として挙げることができる。処理により、セルロースエステル中のブレンステッド酸(硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸など)、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)、中和剤と触媒との反応物、カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、中和剤とカルボン酸との反応物などを除去することができ、セルロースエステルの安定性(特に高温高湿度によるエステル結合の分解)を高めるために有効である。
温水処理による洗浄後のセルロースエステルは、安定性をさらに向上させたり、カルボン酸臭を低下させるために、弱アルカリ(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物など)の水溶液などで処理することも好ましい。残存不純物の量は、洗浄液の量、洗浄の温度、時間、攪拌方法、洗浄容器の形態、安定化剤の組成や濃度により制御できる。
本発明においてセルロースエステルの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースエステルを乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されないが、加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせで用いることで効率的に行うことが好ましい。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃であり、特に好ましくは50〜160℃である。この時、セルロースエステルのガラス転移点(Tg)よりも低い温度で乾燥することが好ましく、Tgより10℃以上低い温度で乾燥することがさらに好ましい。乾燥によって得られる本発明のセルロースエステルは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
セルロースエステルをフィルム製造の原料として用いる場合、粒子状または粉末状であることが好ましい。乾燥後のセルロースエステルは、粒子サイズの均一化や取り扱い性の改善のために、粉砕や篩がけを行っても良い。セルロースエステルが粒子状であるとき、使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子サイズを有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子サイズを有することが好ましい。セルロースエステル粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの重合度は、平均重合度150〜700、好ましくは180〜550、さらに好ましくは180〜400であり、特に好ましくは平均重合度200〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。さらに特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。これらのセルロースエステルは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合しても良い。このような重合度の調整には低分子量成分を除去することでも達成できる。低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースエステルよりも低くなるため有用である。低分子成分の除去は、セルロースエステルを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。また、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、さらに好ましくは2.5〜5.0であり、さらに好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。これらのセルロースエステルは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合しても良い。また、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステルはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。この後、上述の条件で乾燥する。得られたセルロースエステルは、その保存は環境による影響を受けにくくするために、低温暗所で保存することが望ましい。さらに、保管用としてアルミニウムなどの防止素材で作製された防湿袋や、SUS製ドラムあるいはコンテナに保存することがさらに好ましい。
その他、6位置換度の大きいセルロースエステルの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号や特開2002−338601号各公報などに記載がある。セルロースエステルの他の合成法としては、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、tert−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)の存在下に、カルボン酸無水物やカルボン酸ハライドと反応させる方法、アシル化剤として混合酸無水物(カルボン酸・トリフルオロ酢酸混合無水物、カルボン酸・メタンスルホン酸混合無水物など)を用いる方法も用いることができ、特に後者の方法は、炭素数の多いアシル基や、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法が困難なアシル基を導入する際には有効である。
<フッ素系界面活性剤>
次に、本発明の一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤について記述する。
一般式(2A)
Figure 2006257204
式中、RA1およびRA2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、LA1、LA2およびLA3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、X+はカチオン性の置換基を表す。Y-は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。mAは0または1である。
前記一般式(2A)中、RA1およびRA2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表す。前記アルキル基は、炭素数1以上であって、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。但し、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基(以下、フッ素原子で置換されたアルキル基を「Rf」という)を表す。
Rfは、炭素数1以上の少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。Rfは少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよく、直鎖状、分岐状および環状のいずれの構造であってもよい。また、フッ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよいし、フッ素原子のみで置換されていてもよい。Rfのフッ素原子以外の置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
Rfとしては、炭素数1〜16のフッ素置換アルキル基が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数4〜10がさらに好ましい。Rfの好ましい例としては、
−(CH22−(CF24F、
−(CH22−(CF26F、
−(CH22−(CF28F、
−(CH2)−(CF24H、
−(CH2)−(CF26H、
−(CH2)−(CF28H、
−(CH23−(CF24F、
−(CH26−(CF24F、
−CH(CF3)CF3
などが挙げられる。
Rfとしてさらに好ましくは、末端がトリフルオロメチル基で置換された炭素数4〜10のアルキル基であり、特に好ましくは−(CH2)α−(CF2)βFで表される炭素数3〜10のアルキル基である(αは1〜6の整数を表す。βは3〜8の整数を表す)。具体的には、
−CH2−(CF22F、
−(CH26−(CF24F、
−(CH23−(CF24F、
−CH2−(CF23F、
−(CH22−(CF24F、
−(CH23−(CF24F、
−(CH26−(CF24F、
−(CH22−(CF26F、
−(CH23−(CF26F、
−(CH22−(CF26F、
等が挙げられる。これらの中でも、特に、
−(CH22−(CF24Fおよび−(CH22−(CF26Fが最も好ましい。
前記一般式(2A)中、RA1およびRA2の双方がRfを表すのが好ましい。
A1およびRA2がそれぞれRf以外のアルキル基、即ち、フッ素原子で置換されていないアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜24の置換または無置換のアルキル基が好ましく、炭素数6〜24の置換または無置換のアルキル基がより好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜24のアルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
A1およびRA2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、更に好ましくは炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアルキル基である。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
A1およびRA2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、特に好ましくは、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であり、最も好ましくは炭素数8〜16の直鎖状、環状または分岐状の無置換アルキル基である。
前記一般式(2A)中、RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。該置換基として後述の置換基Tが適用できる。 RA3、RA4およびRA5は、アルキル基または水素原子を表すのが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を表すのがより好ましく、メチル基または水素原子を表すのが更に好ましく、水素原子を表すのが特に好ましい。
前記一般式(2A)中、LA2およびLA3はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。単結合または2価の連結基であれば特に制約はないが、好ましくはアリーレン基、−O−、−S−または−NRA100−(RA100は水素原子または置換基を表す。置換基としては後述の置換基Tと同様である。RA100として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組み合わせて得られる基であり、より好ましくは−O−、−S−または−NRA100−である。LA2およびLA3としてより好ましくは、−O−または−NRA100−であり、更に好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
前記一般式(2A)中、LA1は2価の連結基を表す。2価の連結基であれば特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NRA100−(RA100は水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tと同様である。RA100として好ましくはアルキル基または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組み合わせて得られる基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NRA100−を単独またはそれらを組み合わせて得られる基である。Zとして更に好ましくは、炭素数1〜8のアルキレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NRA100−を単独またはそれらを組み合わせて得られる基であり、例えば、
−(CH22S−、
−(CH22NH−、
−(CH23NH−、
−(CH22C(=O)NH−、
−(CH22SCH2−、
−(CH22NHCH2−、
−(CH23NHCH2−、
等が挙げられる。
前記一般式(2A)中、X+はカチオン性の置換基を表し、X+として好ましくは、有機のカチオン性置換基であり、より好ましくは窒素または燐のカチオン性基である。さらに好ましくはピリジニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであり、より好ましくは下記一般式(3)で表されるトリアルキルアンモニウムカチオンである。
一般式(3)
Figure 2006257204
前記一般式(3)中、RA13、RA14およびRA15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表す。該置換基としては後述の置換基Tとして挙げたものが適用できる。また、RA13、RA14およびRA15は可能な場合にはお互いが結合して環を形成してもよい。RA13、RA14およびRA15として好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、メチルカルボキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
前記一般式(3)中、Y-は対アニオンを表し、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。また、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。無機アニオンとして好ましくは、ヨードイオン、臭素イオン、塩素イオン等が挙げられ、有機アニオンとして好ましくは、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。Y-としてより好ましくは、ヨードイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンであり、更に好ましくはp−トルエンスルホン酸である。
前記一般式(2A)中、mAは0または1を表し、好ましくは0である。
上記一般式(2A)で表される化合物の中でも、下記一般式(2A−1)で表される化合物が好ましい。
一般式(2A−1)
Figure 2006257204
一般式(2A−1)中、RA11およびRA12はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、RA11およびRA12の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、RA11およびRA12の炭素数の総計は19以下である。LA2およびLA3はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR100−を表し、R100は水素原子または置換基を表し、LA1は単結合または2価の連結基を表す。LA1およびY-はそれぞれ上記一般式(2A)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。RA13、RA14およびRA15については、それぞれ上記一般式(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(2A−1)中、LA2およびLA3はそれぞれ−O−、−S−または−NR100−(R100は水素原子または置換基を表し、該置換基としては後述の置換基Tとして挙げたものが適用できる。R100として好ましくはアルキル基、前述のRf、または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)である。LA2およびLA3としてより好ましくは−O−、−NH−であり、更に好ましくは−O−である。
前記一般式(2A−1)中、RA11およびRA12はそれぞれ一般式(2A)におけるRA1およびRA2と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、RA11およびRA12の炭素数の総計は19以下である。
上記一般式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(2A−2)で表される化合物がより好ましい。
一般式(2A−2)
Figure 2006257204
前記一般式(2A−2)中、RA13、RA14、RA15、LA1およびY-はそれぞれ上記一般式(2A)および上記一般式(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。AおよびBは共にフッ素原子または水素原子を表すのが好ましく、共にフッ素原子を表すのが好ましい。前記一般式(2A−2)中、nA1は1〜6の整数を表し、nA2は3〜8の整数を表す。上記一般式(2A)で表される化合物の中でも、下記一般式(2A−3)で表される化合物が更に好ましい。
一般式(2A−3)
Figure 2006257204
前記一般式(2A−3)中、nA1は1〜6のいずれかの整数を、nA2は3〜8のいずれかの整数を表すが、2(nA1+nA2)は19以下である。RA13、RA14、RA15、LA1およびY-はそれぞれ上記一般式(2A)および上記一般式(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
A1は1〜6のいずれかの整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表し、更に好ましくは2または3を表し、最も好ましくは2である。nA2は3〜8のいずれかの整数を表し、より好ましくは、3〜6であり、更に好ましくは4〜6である。nA1およびnA2の好ましい組み合わせとしては、nA1が2または3で、且つnA2は4または6であるのが好ましい。
以下に、上記一般式(2A)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖の構造を意味する。また、表記中の略号の内2EHは、2−ethylhexyl、2BOは2−Butyloctylを意味する。
Figure 2006257204
Figure 2006257204
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Figure 2006257204
Figure 2006257204
次に下記一般式(2B)で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(2B)
Figure 2006257204
前記一般式(2B)中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8のいずれかの整数を表す。LB1およびLB2は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。
前記一般式(2B)中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。該置換基として後述の置換基Tが適用できる。
B3、RB4およびRB5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基または水素原子であり、更に好ましくはメチル基または水素原子であり、特に好ましくは水素原子である。前記一般式(2B)中、AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子またま水素原子を表す。AおよびBとして好ましくは共にフッ素原子または共に水素原子であり、より好ましくは共にフッ素原子である。前記一般式(2B)中、nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8のいずれかの整数を表す。
B3およびnB4として好ましくは4〜6のいずれかの整数で、かつnB3=nB4であり、より好ましくは、4または6の整数で、かつnB3=nB4であり、更に好ましくはnB3=nB4=4である。 前記一般式(2B)中、mBは0または1を表し、どちらも同様に好ましい。
前記一般式(2B)中、LB1およびLB2は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基は後述の置換基Tの置換基が適用できる。LB1およびLB2はそれぞれ、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
Mはカチオンを表し、上記一般式(1)におけるMと同義である。Mとして好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンであり、より好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。更に好ましくはナトリウムイオンである。上記一般式(2B)で表される化合物の中でも、下記一般式(2B−1)で表される化合物が好ましい。
一般式(2B−1)
Figure 2006257204
前記一般式(2B−1)中、RB3、RB4、RB5、nB3、nB4、mB、A、BおよびMは、上記一般式(2B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。nB1およびnB2はそれぞれ独立に1〜6のいずれかの整数を表す。前記一般式(2B−1)中、nB1およびnB2はそれぞれ独立に1〜6のいずれかの整数を表す。nB1およびnB2は1〜6の整数で、かつnB1=nB2であるのが好ましく、2または3で、かつnB1=nB2であるのがより好ましく、nB1=nB2=2であるのが更に好ましい。
上記一般式(2B)で表される化合物の中でも、下記一般式(2B−2)で表される化合物がより好ましい。
一般式(2B−2)
Figure 2006257204
前記一般式(2B−2)中、nB3、nB4、mBおよびMは上記一般式(2B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。前記一般式(2B−2)中、nB1およびnB2は一般式(2B−1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
上記一般式(2B)で表される化合物としては、より好ましくは下記一般式(2B−3)で表される化合物である。
一般式(2B−3)
Figure 2006257204
前記一般式(2B−3)中、nB5は2または3を表し、nB6は4〜6のいずれかの整数を表す。mBは0または1を表し、どちらも同様に好ましい。Mは上記一般式(2B)におけるMと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。 以下に、上記一般式(2B)にで表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
次に下記一般式(2C)で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(2C)
Figure 2006257204
前記一般式(2C)中、RC1は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、RCFはパーフルオロアルキレン基を表す。Aは水素原子またはフッ素原子を表し、LC1は置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。YC1およびYC2は一方が水素原子を、もう一方が−LC2−SO3Mを表し、LC2は単結合または炭素数1〜10の、置換もしくは無置換のアルキレン基を表し、Mはカチオンを表す。
前記一般式(2C)中、RC1は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。RC1で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては後述の置換基Tが適用できる。前記置換基として好ましくはアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。RC1として好ましくは、無置換アルキル基であり、RC1としてより好ましくは、炭素数が2〜24の無置換アルキル基であり、更に好ましくは4〜20の無置換アルキル基であり、特に好ましくは炭素数6〜24の無置換アルキル基である。
CFはパーフルオロアルキレン基を表す。ここで、パーフルオロアルキレン基とは、アルキレン基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。RCFは、炭素数1〜10であるのが好ましく、1〜8であるのがより好ましい。
Aは、水素原子またはフッ素原子を表すが、フッ素原子であることが好ましい。
C1は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基はRC1で挙げた置換基の好ましい範囲と同様である。LC1は、炭素数が4以下であるのが好ましく、また無置換アルキレンであるのが好ましい。
C1およびYC2は一方が水素原子を、もう一方が−LC2−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、更に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、前記一般式(2C)の化合物の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。
C1、RCFおよびLC1の炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。 LC2は、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はRC1で挙げた置換基の好ましい範囲と同様である。
C2として好ましくは単結合または炭素数は2以下のアルキレン基であり、より好ましくは単結合または無置換でアルキレン基であり、更に好ましくは単結合またはメチレン基である。LC2として特に好ましくは単結合である。
前記一般式(2C)で表される化合物の中でも、下記一般式(2C−1)で表される化合物が好ましい。
一般式(2C−1)
Figure 2006257204
前記一般式(2C−1)中、RC11は総炭素数6以上の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。RCF1は炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。YC11およびYC12は、一方が水素原子を、もう一方がSO3Cを表し、MCはカチオンを表す。nC1は1以上の整数を表す。
前記一般式(2C−1)中、RC11は総炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表す。但し、RC11はフッ素原子で置換されたアルキル基になることはない。RC11で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
C11で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜24であるのが好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基の炭素も含めた総炭素数が6〜24の置換アルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
C11で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜18であるのがより好ましい。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、置換基の炭素数を含む総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。中でも、RC11としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であるのがさらに好ましく、炭素数8〜16の直鎖、環状または分岐の無置換アルキル基であるのが特に好ましい。
前記一般式(2C−1)中、RCF1は炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。ここで、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキル基中のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。RCF1で表されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。中でも、炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等)が好ましく、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基が特に好ましい。
前記一般式(2C−1)中、nC1は1以上の整数を表す。好ましくは1〜4のいずれかの整数であり、特に好ましくは1または2である。
また、nC1とRCF1の組み合わせとして、nC1=1の場合にはRCF1がヘプタフルオロ−n−プロピル基またはノナフルオロ−n−ブチル基;nC1=2の場合にはRCF1がノナフルオロ−n−ブチル基であるのがより好ましい。
前記一般式(2C−1)中、YC11およびYC12は、一方が水素原子を、もう一方がSO3Cを表し、MCはカチオンを表す。ここで、MCで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、最も好ましくはナトリウムイオンである。
以下に、上記一般式(2C)にで表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
次に一般式(2D)について詳細に説明する。
一般式(2D)
[RfD−(LDnDmD−W
式中、RfDはパーフルオロアルキル基を表し、LDはアルキレン基を表し、Wは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を有する基を表す。nDは0または1の整数を表し、mDは1〜3のいずれかの整数を表す。
RfDは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を表し、具体例としては、C37−基、C49−基、C613−基、C817−基、C1225−基、C1633−基などが挙げられる。
D基はアルキレン基を表す。アルキレン基の炭素数は1以上であるが、2以上であることが好ましく、20以下であることが好ましい。具体的にはメチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,2−オクチレン基などが挙げられる。
本発明では、RfDが互いに異なる鎖長のパーフルオロアルキル基である複数の化合物の混合物を用いてもよいし、単一のパーフルオロアルキル基を有する化合物のみを用いてもよい。また、RfDが同一でLDが互いに異なる複数の化合物の混合物を用いてもよい。 本発明において、RfDが互いに異なる鎖長のパーフルオロアルキル基である複数の化合物の混合物を用いる場合、そのパーフルオロアルキル基の鎖長の平均値は炭素数として4〜10であることが好ましく、4〜9であることが特に好ましい。
Dは0または1の整数を表し、1であることが好ましい。mDは1〜3のいずれかの整数を表し、mDが2または3のとき、[RfD−(LD)nD]は互いに同一でも異なっていてもよい。Wがリン酸エステル基でない場合はmD=1が好ましく、Wがリン酸エステル基を表す場合はmD=1〜3のいずれでもよく、mD=1〜3の混合物である場合は、その平均値は0.5〜2が好ましい。
Wは、界面活性を持たせるために必要な、カチオン性基、アニオン性基、ベタイン性基、または極性のノニオン性基を有する基を表す。これらの基が含まれていればRcとの連結の仕方は問わない。界面活性を持たせるために必要なアニオン基の例としては、スルホン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、カルボン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、ホスホン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、硫酸エステル基およびそのアンモニウムまたは金属塩、リン酸エステル基およびそのアンモニウムまたは金属塩が挙げられる。
界面活性を持たせるために必要なカチオン性基の例としては、トリメチルアンモニウムエチル基、トリメチルアンモニウムプロピル基などの4級アルキルアンモニウム基;ジメチルフェニルアンモニウムアルキル基、N−メチルピリジニウム基などの芳香族アンモニウム基が挙げられる。これらの基には適当な対イオンが存在しており、ハロゲン原子、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオンなどが挙げられ、トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。界面活性を持たせるために必要なベタイン性基としては、−N+(CH32CH2COO-、−N+(CH32CH2CH2COO-などのベタイン構造を有する基などが挙げられる。 界面活性を持たせるために必要なノニオン性基の例としてはポリオキシアルキレン基、多価アルコール基などが挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレン基である。但し、これらの基の末端は水素原子以外の基、例えばアルキル基であってもよい。
前記一般式(2D)においてRfDは好ましくは炭素数4〜16のパーフルオロアルキル基で、より好ましくは炭素数6〜16のパーフルオロアルキル基である。LDは好ましくは炭素数2〜16のアルキレン基を表し、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基を表し、特に好ましくはエチレン基を表す。nDは好ましくは1である。LDと界面活性付与に必要な基との間はどのように結合されていてもよく、例えばアルキレン鎖、アリーレン等で結合することができ、これらの基は置換基を有していてもよい。これらの基は主鎖または側鎖にオキシ基、チオ基、スルホニル基、スルホキシド基、スルホンアミド基、アミド基、アミノ基などが含まれていてもよい。
以下に、上記一般式(2D)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
Figure 2006257204
Figure 2006257204
Figure 2006257204
上記一般式(2D)で表される化合物は、通常の合成方法により製造することができ、また、いわゆるテロマー型のパーフルオロアルキル基含有界面活性剤として広く市販されているものを用いることができる。その例としては、DUPONT(株)製のZonyl FSP、FSE、FSJ、NF、TBS、FS−62、FSA、FSK(以上イオン性)、Zonyl 9075、FSO、FSN、FSN−100、FS−300、FS−310(以上非イオン性)、旭硝子(株)製のS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132(以上イオン性)、S−141、S−145(以上非イオン性)、ダイキン工業(株)製のユニダインDS−101、DS−102、DS−202、DS−301(以上イオン性)、DS−401、DS−403(以上非イオン性)等を挙げることができる。
また、上記の種々の化合物のうち、イオン性の界面活性剤はその使用目的、必要とされる諸特性等によってイオン交換もしくは中和等の手段で種々の異なる塩の形で、または1種もしくは2種以上の対イオン存在下で用いることができる。
以下に上記一般式中の置換可能な基が有していてもよい置換基の例、置換基Tについて説明する。 置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
本発明における上記フッ素系界面活性剤の使用量は、セルロースエステル固形分に対して0.01〜5質量%であるが、好ましくは0.02〜3質量%、より好ましくは0.05〜2質量%であり、特に好ましくは0.05〜1質量%である。
本発明のフッ素系界面活性剤は、その形態は特に限定されず、常温(25℃)で固定でも液体でも問題ない。その添加方法は特に規定されず、フッ素系界面活性剤のみを有機溶媒中に混合し、しかる後にセルロースエステル粉体を添加してもよい。また、セルロースエステルを有機溶媒に溶解した後に、フッ素系界面活性剤を添加してもよい。フッ素系界面活性剤は、その液体あるいは固体状態のまま添加してもよいし、予め有機溶媒の一部を利用して溶解し作製したフッ素系界面活性剤溶液を、有機溶媒あるいはセルロースエステル溶液に添加してもよい。特に、フッ素系界面活性剤が固体の場合は、一貫製造性を持たせるためには予め有機溶媒に溶解し、専用タンクに収納しておき必要に応じて配管などでセルロースエステル溶解設備に搬送される。
<セルロースエステルフィルムの製造方法>
本発明のセルロースエステルには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができる。またその添加する時期は溶融物(ドープ)作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。好ましく添加される可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートが含まれる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、が含まれる。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどがある。さらにトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテート、ソルビタンテトラブチレート等も好ましく利用される。
中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましい。特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。これらの可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量はセルロースエステルに対して5〜30質量%、特に5〜16質量%が好ましい。これらの可塑剤として、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類などが挙げられる。
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。これらの添加量は、調製する溶融物(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
特に好ましくは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることである。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
好ましい紫外線防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が最も好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜3.0%が好ましく、10ppm〜2%がさらに好ましい。
また光学異方性をコントロールするためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。これらは、セルロースエステルフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセレート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
レターデーション上昇剤を適宜使用することにより、Reレターデーション値およびRthレターデーション値を調整することができる。本明細書において、Reレターデーション値およびRthレターデーション値は、以下に基づき算出するものとする。Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定した複数のレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。この時、平均屈折率の仮定値および膜厚を入力することが必要である。
KOBRA 21ADHはRth(λ)に加えてnx、ny、nzも算出する。平均屈折率は、セルロースアセテートでは1.48を使用するが、セルロースアセテート以外の代表的な光学用途のポリマーフィルムの値としては、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)、等の値を用いることができる。その他の既存ポリマー材料の平均屈折率値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)やポリマーフィルムのカタログ値を使用することができる。た、平均屈折率が不明な材料の場合は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。本明細書におけるλは、特に記載がなければ550±5nmまたは590±5nmを指す。
一般には、本発明のセルロースエステルフィルムのRthは100μm当たり、−200nm〜500nmであり、さらには−100nm〜400nmで用いられる。特に−70nm〜250nmで用いることが好ましい。また、Reは、100μm当たり、0nm〜200nmであり、特に0nm〜150nmで用いることが好ましい。この時Reは、流延方法でも幅方向のどちらでもよく特に限定されない。
また、本発明のセルロースエステルには、必要に応じてさらに種々の添加剤を溶融液の調製前から調製後のいずれの段階で添加してもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、シリカ、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなど2族金属の塩などの熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤などである。
次の本発明の溶融製膜工程とその条件などについて記載する。
一般に、溶融製膜はセルロースエステルを予め所定の温度に予熱し、添加物などを混合する混練・押し出し工程、キャスト工程、延伸工程、緩和工程、冷却工程、巻き取り工程、加工工程を通じて、所望のセルロースエステルフィルムを得るものである。以下にそれらについて、本発明の溶融製膜技術を説明する。本発明では液晶表示装置の表示ムラを改良するために、セルロースエステルにフッ素系界面活性剤を含有させることを特徴とするが、これにより剥ぎ取り時のダイスジ発生が抑制され、厚みムラ、光学ムラを極力小さくすることが可能となったものである。溶融製膜条件の最適化について、以下に詳細に記述する。
1)セルロースエステルの予熱
セルロースエステルは予め十分に乾燥した後に、溶融押出し機のホッパーに投入される。好ましい乾燥としては、セルロースエステル中の水分量が0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%であり、特には0.1質量%以下である。これにより溶融中に発現するセルロースエステルの加水分解を抑制し、これに伴う異物の発生を抑止できる。このような乾燥は、セルロースエステルを好ましくは80℃〜180℃で好ましくは0.1時間〜100時間乾燥することで達成できる。なお、この処理は、空気雰囲気下で行っても、不活性気体(例えば窒素)雰囲気下で行っても、真空中で行っても良い。該前処理により製膜中に発生する異物も軽減することができる。これは異物の発生源がセルロースエステルの分解物に起因しているためである。本発明で好ましく使用されるホッパーの加熱温度は、セルロースエステルの好ましくは(Tg−50℃)〜(Tg+30℃)、より好ましくは(Tg−40℃)〜(Tg+10℃)、さらに好ましくは(Tg−30℃)〜Tgに加熱しておくことが推奨される。これによりホッパー内でのセルロースエステルへの空気中からの水分再吸着が抑制できる。
2)混練押出し
溶融押し出し機に設置されている2〜15の圧縮比を有する混練スクリューを用い、予熱過程で加熱された所望の溶融温度で、セルロースエステルを混練する。すなわち、本発明ではダイスジを解消するために、本発明のセルロースエステルの溶融温度を好ましくは180℃〜250℃、より好ましくは190℃〜240℃、さらに好ましくは200℃〜230℃に設定する。260℃以上の高い温度で溶融した場合は、本発明のセルロースエステルは分解が生じ、該分解物がダイ内に残留することで発生するダイラインが引き起こす厚みムラを軽減できる。しかし、このように溶融温度を低下させると、溶融不良が発生し、これがブツを発生する原因となりやすい。即ち本発明では、低温でも不溶解を発生させないために、高圧縮比のスクリューを用いていることも推奨される。好ましい圧縮比は3〜15、より好ましくは4〜12、より好ましくは5〜10である。通常は3未満の圧縮比で溶融するのが一般的である。
この際には、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御して得られた溶融温度で実施しても良い。より好ましくは上流側(ホッパー側)の温度を下流側(T−ダイ側)の温度より1℃〜50℃、より好ましくは2℃〜30℃、さらに好ましくは3℃〜20℃高くするほうが、セルロースエステルの分解をより抑制できて好ましい。好ましくは溶融を効率よく実施するために送液上流部をより高温にし、溶融された後はセルロースエステルの分解を抑制するために、温度を低めにするものである。好ましい混練時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中で実施するのも好ましい。
3)キャスト
溶融したセルロースエステルは、ギヤポンプに通して押し出し機の脈動を除去される。その後に続いて、金属メッシュフィルター等でろ過を行う。メッシュの目の大きさは2〜30μmが好ましく、より好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは2〜10μmである。この時、加圧を行い、ろ過に要する時間をできるだけ短縮することが好ましい。ろ過圧は、0.5MPa以上15MPa以下が好ましく、2Pa以上15MPaがさらに好ましく、10Pa以上15MPaがもっとも好ましい。ろ過圧は、高いほうが濾過時間を短くすることができるので好ましいが、フィルターの破損が起こらない範囲の高圧を用いることが好ましい。ろ過の時の温度は180℃〜230℃が好ましく、180℃〜220℃がさらに好ましく、190〜220℃がさらに好ましい。ろ過時の温度が該上限値以下であれば、熱劣化が進行するなどの問題が生じにくいので好ましく、該下限値以上であれば、ろ過に時間がかかりすぎて熱劣化が進行するなどの不都合が生じにくいので好ましい。ろ過に要する時間はできるだけ短くして、フィルムの黄変を防止するのがよい。フィルター1cm2当たり1分間のろ過量は、0.05〜100cm3が好ましく、0.1〜100cm3がさらに好ましく、0.5〜100cm3がもっとも好ましい。
次に、製膜ダイ(T型)から搬送する冷却ドラム上にシート状に押し出すが、前述のように溶融温度より低い温度に制御したT−ダイから押出すことが好ましい。なお、溶融温度が溶融押出し機内で複数に分割し異なる温度にすることも可能であるが、その場合はT−ダイに最も近いところの溶融温度を基準にする。この後、上述のようにT−ダイとキャスティングドラムの間を一定の距離(1〜50cmが好ましい)に保つ。この時、この間の温度変動が少ないよう、ケーシング内に入れることが好ましい。さらに本発明では、T−ダイの温度を溶融温度より5℃〜30℃低くすることが好ましい。これは、T−ダイ上で滞留しセルロースエステルが分解し焦げつき、これがダイラインを引き起こすのを防ぐため、T−ダイの温度を下げたことが特徴である。通常の製膜では溶融混練機からT−ダイまで同じ温度あるいはそれ以上にし、溶融粘度を低くすることで、発生したダイラインをレベリング化するのが一般的であるが、熱分解しやすいセルロースエステルを溶融製膜する場合は上記のように温度を下げることが有効である。
また、セルロースエステルフィルムの横ダン(幅方向に発生する段々状のムラ)を解消するために、本発明ではT−ダイとキャスティングドラムの間を2cm〜50cm離すことが好ましい。より好ましくは5cm〜40cm、さらに好ましくは7cm〜35cmである。通常はネックインを防ぐためにT−ダイとキャスティングドラムの間はなるべく近づけるのが一般的であり、本発明では1〜3cmに近づけることが好ましい。本発明ではセルロースエステルがネックインしにくいため、上記のようにキャスティングドラムとT−ダイの間を広くとることが好ましい。この時のキャスティングドラムの温度は(Tg−30℃)〜Tgが好ましく、より好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg−1℃)、さらに好ましくは(Tg−15℃)〜(Tg−2℃)である。さらにこのようにT−ダイ、キャスティングドラム間の距離を長くすることは、上記ダイ筋をレベリング化させ軽減させる効果も有する。なお、本発明のセルロースエステルのTgは70℃〜180℃が好ましく、より好ましくは80℃〜160℃、さらに好ましくは90℃〜150℃である。
押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィールドブロックダイを用いて複数層押出しても良い。この後、適宜選ばれた直径(10〜200cmが好ましい)、本数(2〜20本が好ましい)、温度(Tg−30℃が好ましい)のキャスティングドラム上に押出す。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの前面に実施してもよく、一部に実施しても良い。
次にT−ダイから押出された溶融されたセルロースエステル(メルト)は、キャスティングドラム上で冷却固化する時間をできるだけ長くすることが好ましい。即ち、T−ダイからTg以上で押出されたメルトがキャスティングドラム上でTg近傍以下になり収縮する。この時、面内方向の収縮はメルトとキャスティングドラムとの摩擦で抑制されるため、厚み方向の収縮が支配的になる。即ちここで面配向が形成されRthが発現する。この収縮が急激であると、Rthのムラを発現し易く、上記のようにゆっくり冷却することがポイントである。即ち(Tg+30℃)からTgの間を10℃/秒〜100℃/秒の速度(固化速度)で冷却し固化するのが好ましく、より好ましい固化速度は15℃/秒〜80℃/秒、さらに好ましくは20℃/秒〜60℃/秒で冷却するのが好ましい。通常の樹脂の場合は、300℃/秒以上で固化させるため、本発明の冷却における上記範囲は十分に遅い冷却速度である。そのために、キャスティングドラムとT−ダイの間を温調するのが好ましく、好ましい温度は(Tg−30℃)〜(Tg+50℃)、より好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+40℃)、さらに好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)である。
本発明では、好ましいキャスティングドラムの本数は2本〜10本、より好ましくは2本〜6本、さらに好ましくは3本〜5本である。これらのキャスティングドラムの温度は同じであってもよく、異なっていても良い。最上流のキャスティングドラムの温度を最下流のキャスティングドラムより低くすることがより好ましい。3本以上配置する場合は、これらの間のキャスティングドラム温度を、その前段のロールの温度より高くても低くても構わない。即ち、最上流とり最下流の温度を低くすればよく、その間のロール温度は任意に設定してよい。これらのキャスティングドラムの直径は通常20cm〜200cmである。これらの製膜速度は、15m/分〜300m/分の速度で製膜することが好ましい。より好ましくは20m/分〜200m/分、さらに好ましくは30m/分〜100m/分である。
冷却した後、セルロースエステルフィルムは、キャスティングドラムから剥ぎ取られ、ニップロールを経て、ニップロールで張力カットした後、巻き取り時の張力が0.01kg/cm2〜10kg/cm2で巻き取るのが好ましく、より好ましくは0.10kg/cm2〜9kg/cm2、さらに好ましくは0.10kg/cm2〜9kg/cm2である。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。製膜幅は好ましくは1.5m〜5m、より好ましくは1.6m〜4m、さらに好ましくは1.7m〜3mである。キャスティングドラムから剥ぎ取った直後のシートはTgに近い温度のため、巻き取り張力により延伸されRe、Rthが発現し、これは中央部より端部において顕著になる。
このため、Re,Rthが放物線状のムラを発現する。キャスティングドラムの後にニップロールを設置し、巻き取り張力のカットする方法が挙げられるが、完全にはカットできず僅かに張力がキャスティングドラム剥ぎ取り後のシートまで伝播する。これがRe,Rthムラを引き起こす。このようなムラは、幅方向全域に渡っておこるため、小さなサイズでは検知し難く、大きなサイズを切り出したときに、問題となる。このため、上記のような弱い張力で巻き取ることがポイントである(通常は20kg/cm2以上で巻かれる)。このような低張力で巻くことで巻きズレが発生し易くなるが、これには両端にナーリング(厚みだし)加工を付与することで対策できる。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。また、Re、Rthは0nm〜100nmが好ましく、より好ましくは0nm〜50nm、さらに好ましくは0nm〜25nmである。
このようにして得られる未延伸のフィルムの厚みムラは、本発明にしたがって一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤を用いることによって著しく改善される。フッ素系界面活性剤を用いて製造した未延伸のフィルムの厚みムラは、通常は3.5%以下にすることができ、好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、さらにより好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下にすることができる。
以上は未延伸のフィルムに対し、実施した本発明の改良策であるが、このようにして得た未延伸フィルムを延伸することで、同様に厚みムラ、Reムラ、Rthムラ、Re,Rthの湿度変動のさらに小さな延伸フィルムを得ることができる。このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
4)延伸
延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は1%〜500%、より好ましくは3%〜400%、さらに好ましくは5%〜300%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施しても良い。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げても良い(横延伸)。一般にいずれの場合も、延伸倍率を大きくすると、Re,Rthとも大きくすることができる。さらにRe、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することで達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比を大きくすることができる。横延伸の場合、直交方向に延伸すると同時に縦方向にも延伸したり、逆に緩和させることで制御することができる。即ち縦方向に延伸することでRth/Re比を大きくすることができ、逆に縦方向に緩和することでRth/Re比を小さくすることができる。このような延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、さらに好ましくは30%/分〜800%/分である。
本発明においては、好ましくは面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦200nmであり、厚み方向のレターデーション(Rth)が−200≦Rth≦500nmであり、そのフィルム厚が40〜150μmである。さらに好ましくは、面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦150nmであり、厚み方向のレターデーション(Rth)が−100≦Rth≦350nmであり、そのフィルム厚が40〜120μmである。さらに、Re,Rth、厚みのムラをより小さくするために、上述のようなムラの少ない原反を用いることに加えて、延伸温度に幅方向に勾配を持たせるのが好ましい。即ち縦延伸の場合でも、横延伸の場合でも両端部の延伸が進みやすくRe,Rthが発現し易いため、中央部より端部の温度を高くすることが好ましい。端部とは、全幅に対し10%の領域を指し、ここを中央部より6℃〜40℃、より好ましくは7℃〜30℃、さらに好ましくは8℃〜25℃高くすることで達成できる。このように両端の温度を上げるには、両端部に熱源(パネルヒーター、赤外線ヒーター等)を増設してもよく、熱風の噴出し口を増設しても良い。このように敢えて温度分布を付与することで、一定の温度で延伸するより一層均一な延伸が達成できる。このような減少はセルロースエステルフィルム特有の現象である。
延伸後の膜厚は10〜300μmが好ましく、より好ましくは20μm〜200μm、さらに好ましくは30μm〜100μmが好ましい。また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±1.5°、さらに好ましくは0±0.5°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±1.5°あるいは−90±1.5°、さらに好ましくは90±0.5°あるいは−90±0.5°である。
ここで、熱処理後の冷却温度は、熱処理温度やフィルム厚みによって異なるが、通常、−40℃〜(Tg−10)℃の温度範囲において空冷する。好ましくは、0〜40℃である。この際、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差が、得られる(二軸)延伸フィルムの非熱変形性に影響を及ぼす。冷却気体の温度差が大き過ぎると、得られる(二軸)延伸フィルムの表裏両面の熱収縮率差が大きくなり、加熱時にフィルムが歪み、ソリが生じ易くなり、変形が大きくなる。かかる点を考慮すると、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差は小さい方が好ましいが、本発明の目的を達成するためには、該温度差を5℃以内に調整することが重要である。
これらの延伸前、延伸後のセルロースエステルフィルムは、105℃、5時間での縦および横の寸法収縮率は±0.1%以下であることが好ましく、80℃・相対湿度90%における寸法収縮率が縦および横とも±0.5%未満であることが好ましく、ヘイズは0.6%以下であることが好ましく、引き裂き強度は縦、横とも10g以上であることが好ましく、引っ張り強度が縦、横とも50N/mm2以上であることが好ましく、弾性率が縦、横とも3kN/mm2以上であることが好ましい。
これらの未延伸、延伸セルロースエステルフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用しても良い。
延伸後のセルロースエステルフィルムの厚みムラは厚み方向、幅方向いずれも0%〜2%が好ましく、より好ましくは0%〜1.5%、さらに好ましくは0%〜1%であり、好ましいRthムラは0%〜10%が好ましく、より好ましくは0%〜7%、さらに好ましくは0%〜5%であり、好ましいReムラは0%〜10%が好ましく、より好ましくは0%〜7%、さらに好ましくは0%〜5%であり、湿度に伴うRe、Rth変動は0%/相対湿度%〜1.5%/相対湿度%が好ましく、より好ましくは0%/相対湿度%〜1.2%/相対湿度%、さらに好ましくは0%/相対湿度%〜1%/相対湿度%である。このような延伸フィルムは、上記特性を有する上記未延伸フィルムを延伸することで達成できる。即ちReムラの小さな未延伸フィルム(原反)を延伸することでReムラの小さな延伸フィルムを達成でき、Rthムラ、厚みムラ、Re,Rthの温度変化に対しても同様である。
本発明では、上述のように厚みムラを小さくしたフィルムを用いることで、厚みもレターデーションも均一な延伸を行うことができる(本発明のような手法を実施していない前述の特開2000−352620号公報記載のような厚みムラの存在するフィルムを延伸すると、力学的に弱い薄いところから延伸されるため、厚みムラが増幅され易い。延伸により厚みムラが軽減されるような印象をもたれる場合があるが、このようなセルロースエステルフィルムの場合はこの逆である)。
<セルロースエステルフィルムの改質>
次に本発明のセルロースエステルフィルムについて、さらに機能を付与する場合の好ましい態様を記述する。まずセルロースエステルフィルムの表面処理方法について記述する。
セルロースエステルフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースエステルフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。グロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
まず、低圧下でのグロー放電処理は、米国特許第3,462,335号、同3,761,299号、同4,072,769号および英国特許第891,469号各明細書に記載されている。また不活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガス等を導入することも行われる。ポリマーの表面をグロー放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施されてもよい。グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水を導入しながら実施してもよい。グロー放電処理時の真空度は0.005〜20Torrが好ましく、より好ましくは0.02〜2Torrである。また、電圧は500〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2が好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2である。
次に紫外線照射法も本発明では好ましく用いられる。使用される水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源はセルロースエステルフィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、および低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほどセルロースエステルフィルムと被接着層との接着力は向上するが、光量の増加に伴い支持体が着色し、また支持体が脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
次にセルロースエステルフィルムの表面処理としてコロナ放電処理も好ましく、コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中、常圧で行うことができる。処理時の放電周波数は、5〜40KV、より好ましくは10〜30KVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは0.1〜10mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.3〜0.4KV・A・分/m2、より好ましくは0.34〜0.38KV・A・分/m2である。
次に火炎処理について記述すると、用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。
また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行うとよい。
また、セルロースエステルフィルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリケン化処理を具体的に説明する。セルロースエステルフィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1mol/L〜4.0mol/Lであることが好ましく、0.5mol/L〜3.5mol/Lであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。次に一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理したセルロースエステルフィルムを得る。
この時、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などであり、その濃度は0.01mol/L〜3.0mol/Lであることが好ましく、0.05mol/L〜2.0mol/Lであることがさらに好ましい。アルカリケン化時間は、20〜600秒で実施されるがことが好ましくは、さらには30〜300秒が好ましく、特には40〜210秒であることが好ましい。また中和は、20〜600秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜250秒、特には40〜180秒であるであることが好ましい。さらに水洗については、20〜400秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜300秒、特には40〜210秒であるであることが好ましい。
これらの方法で得られた固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができ、接触角法を用いることが好ましく、水の接触角が10〜45°、更には10〜40°が好ましく、特には10〜30°が好ましい。セルロースエステルフィルムと機能性層を接着するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースエステルフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。
下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、第1層として支持体によく隣接する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。
単層法においては、セルロースエステルフィルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。本発明に使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースエステル、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースエステルとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などである。重層法における下塗第1層では、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、等のオリゴマーもしくはポリマーなどがある。
また本発明のセルロースエステルフィルムには好ましい態様としては、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられることである。例えば、−COOM基含有の酢酸ビニル−マレイン酸共重合体化合物、または親水性セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等)、ポリビニールアルコール誘導体(例えば酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)天然高分子化合物(例えばゼラチン、カゼインアラビアゴム等)、親水基含有ポリエステル誘導体(例えばスルホン基含有ポリエステル共重合体)が挙げられる。
本発明セルロースエステルフィルムに場合により施される下塗り層には、機能層の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO2),二酸化チタン(TiO2),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテ−トプロピオネート、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマ−などを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、更に好ましくは、1〜400mg/m2である。 下塗液は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコート法、エア−ナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムが利用される偏光板用保護膜の構成においては、フィルムの少なくとも一層に帯電防止層を設けたり、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられることが好ましい。まず、本発明の導電層について以下に記す。導電性素材としては、導電性金属酸化物や導電性ポリマーが好ましい。なお、蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。金属酸化物の例としては、 ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2あるいはV25が好ましい。複合酸化物の異種原子例としては、Al、In、Ta、Sb、Nb、ハロゲン、Agの添加が効果的であり、添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましい。また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω−cm特に105Ω−cm以下であって、1次粒子サイズが100Å〜0.2μmで、これら凝集体の高次構造の長径が300Å〜6μmである特定の構造を有する粉体を導電層に体積分率で0.01%〜20%含んでいることが好ましい。この導電性微粒子の使用量は0.01〜5.0g/m2が好ましく、特に0.005〜1g/m2が好ましい。
導電性微粒子の分散用バインダーは、フィルム形成能を有する物であれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体等の糖類、ポリビニールアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げることができる。
次にイオン導電性物質とは、電気伝導性を示し、電気を選ぶ担体であるイオンを含有する物質のことである。この例としては、イオン性高分子化合物と電解質を含む金属酸化物ゾルを挙げることができる。これらの導電性層の電気抵抗は1012Ω(25℃・相対湿度10%)以下が好ましく、より好ましくは1010Ω以下、特に好ましくは109Ω以下である。さらに導電性材料として、有機電子伝導性材料もこのましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体などを挙げることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの利用においては界面活性剤が好ましく用いられる。本発明の機能層には界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜使用することで、それらの目的は達成できる。本発明で使用される界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)いずれも使用できる。さらにフッ素系低分子界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤としたり、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用される層としてはセルロースエステルからなる層中でもよいし、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、バック下塗り層、バック層などである。その使用量は目的を達成するために必要な量であれば特に限定されないがしいが、一般には添加する層の質量に対して、0.0001〜5質量%が好ましく、更には0.0005〜2質量%が好ましい。その場合の塗設量は、1m2当り0.02〜1000mgが好ましく、0.05〜200mgが好ましい。
また、セルロースエステルフィルムの上のいずれかの層に滑り剤を含有させてもよく、その場合は特に最外層が好ましい。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書或いは特開昭55−126238号および同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールのエステル)、そして、米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、また、特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールのエステル、世界公開90108115.8に開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。
このうちポリオルガノシロキサンとしては、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−292号,特公昭55−49294号、特開昭60−140341号各公報等に示されるような、C5 以上のアルキル基を持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコキシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メルカプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変性ポリシロキサンを用いることもできるし、シロキサンユニットを有するブロックコポリマーや、特開昭60−191240号公報に示されるようなシロキサンユニットを側鎖に持つグラフトコポリマーを用いることもできる。上記滑り剤の塗設にあたっては,皮膜形成能のあるバインダーと共に用いることもできる。このようなポリマーとしては,公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂、およびこれらの混合物、ゼラチンなどの親水性バインダーを使用することができる。滑り性能は静摩擦係数0.25以下が好ましく、試料を温度25℃・相対湿度60%で2時間調湿した後、HEIDON−10静摩擦係数測定機により、5mmφのステンレス鋼球を用いて測定した値であり、数値が小さい程滑り性は良い。
本発明のセルロースエステルフィルムの機能層において、フィルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤を使用することが好ましい。その場合、表面の突起物の平均高さ0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。又、その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。好ましい突起物は突起物の平均高さを有する範囲であれば、例えば球形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2であり、より好ましいのは1〜400mg/m2である。この時、使用されるマット剤としてはその組成において特に限定されず、無機物でも有機物でもよく2種類以上の混合物でもよい。
マット剤の無機化合物、有機化合物は、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、などの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒子サイズの比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっても得られる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。
本発明のフィルムには、透明ハードコート層を設けることができる。透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂或いは熱硬化樹脂が好ましく用いられる。活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。なお、特開2003−039014号公報には、塗布されたフィルムを巻き回しや幅方向に把持して乾燥し、活性線硬化物質を含む塗布液を硬化処理等することにより、高い平面性を有する発明が記載されており、この発明は本発明にも適応できる。
本発明のフィルムには、反射防止層を設けることもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材或いはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。
本発明の光学フィルムは防眩層を設けることもできる。防眩層は表面に凹凸を有する構造をもたせることにより、防眩層表面または防眩層内部において光を散乱させることにより防眩機能発現させる為、微粒子物質を層中に含有した構成をとっている。これらの層として好ましい構成は以下に示される様なものである。これは膜厚0.5〜5.0μmであって、平均粒子サイズ0.25〜10μmの1種以上の微粒子を含む層であり、平均粒子サイズが当該膜厚の1.1から2倍の二酸化ケイ素粒子と平均粒子サイズ0.005〜0.1μmの二酸化ケイ素微粒子を例えばジアセチルセルロースのようなバインダー中に含有する層であって、これによって防眩機能を発揮することができる。この「粒子」としては、無機粒子および有機粒子が挙げられる。
本発明の光学フィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであるが、この加工を施すことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。カール防止層は基材の防眩層または反射防止層を有する側と反対側に設ける態様或いは、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もあり、又逆面にカール防止加工を塗設するような態様が挙げられる。
<本発明のセルロースエステルフィルムの利用>
本発明のセルロースエステルフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(1)偏光膜の付与(偏光板の作成)
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載の水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニールアルコール、変性ポリビニールアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニールアルコールおよび変性ポリビニールアルコールがさらに好ましく、ポリビニールアルコールおよび変性ポリビニールアルコールが最も好ましい。変性ポリビニールアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。バインダー厚みは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは2〜50μmであり、さらには5〜30μである。 偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性のホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は平行延伸法、特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。上記ケン化後のセルロースエステルフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースエステルフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45度になるように行うのが好ましい。貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
(2)光学補償層の付与(光学補償シートの作成)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースエステルフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。上記表面処理したセルロースエステルフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行うことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行うことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
(棒状液晶性分子)
棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
(円盤状液晶性分子)
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0151]〜[0168]に記載の化合物等が挙げられる。
(光学異方性層の他の組成物)
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
(光学異方性層の形成)
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
この光学補償フィルムと偏光膜を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
<液晶表示装置への利用>
(一般的な液晶表示装置の構成)
セルロースエステルフィルムは、様々な用途で用いることができる。本発明のセルロースエステルフィルムは、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると有効である。なお、フィルムそのものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースエステルフィルムからなる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるように配置することが好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの配置については、特開平10−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に80〜500μmの厚さを有する。
光学補償シートは、液晶画面の着色を取り除くための複屈折率フィルムである。本発明のセルロースエステルフィルムそのものを、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースエステルフィルムとして機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明のセルロースエステルフィルムと、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフィルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のフィルムの好ましい厚さと同じである。
偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニールアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25〜350μmの厚さを有することが好ましく、40〜200μmの厚さを有することがさらに好ましい。液晶表示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれる。
前述したように、支持体の上に液晶(特にディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報記載)。本発明のセルロースエステルフィルムは、そのような光学補償シートの支持体としても用いることができる。
(ディスコティック液晶性分子を含む光学的異方性層)
光学的異方性層は、傾斜配向したディスコティック液晶性分子を含む層であることが好ましい。ディスコティック液晶性分子の円盤面と支持体面とのなす角は、光学的異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。ディスコティック液晶性分子の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。ディスコティック液晶性分子は、円盤面の法線方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大きな複屈折性を有する。ディスコティック液晶性分子は、支持体表面に対して実質的に水平に配向させてもよい。
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有効に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。VA型液晶表示装置に光学補償シートを二枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、−5nm〜5nmの範囲内にすることが好ましい。従って、二枚の光学補償シートのそれぞれの面内レターデーションの絶対値は、0〜5とすることが好ましい。
VA型液晶表示装置に光学補償シートを一枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、−10nm〜10nmの範囲内にすることが好ましい。このような光学特性範囲になるように、本発明のセルロースエステルフィルムは各種VAセルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、セルギャップに対応して一枚型セルロースエステルフィルムでは、Reが40〜120nmであり、好ましくはReが50〜100nmであり、特には50〜90nmである。また、Rthが160〜300nmであり、好ましくはRthが170〜260nmであり、特には180〜240nmである。また、VA型液晶表示装置に光学補償シートをニ枚使用する場合は、本発明のセルロースエステルフィルムは各種VAセルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、セルギャップに対応して二枚型セルロースエステルフィルムでは、Reが20〜80nmであり、好ましくはReが30〜70nmであり、特には30〜60nmである。また、Rthが80〜200nmであり、好ましくはRthが90〜180nmであり、特には95〜165nmである。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。本発明のセルロースエステルフィルムは各種OCBモードの液晶セルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、Reが20〜100nmであり、好ましくはReが30〜80nmであり、特には30〜60nmである。また、Rthが150〜300nmであり、好ましくはRthが160〜260nmであり、特には170〜250nmである。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、ASM(Axially Symmetric Alligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)外の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。本発明のセルロースエステルフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報に記載がある。これらの各種液晶表示装置に対する光学補償シート用として、本発明のセルロースエステルはその光学特性を所望の範囲の付与すればよい。
<測定方法および評価方法>
以下にセルロースエステルフィルムに関する測定方法と評価方法ついて記載する。更に追加の特性評価方法は、別途後述した。
(ReおよびRth並びに、湿度に伴うReおよびRth変動)
セルロースエステルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定することにより、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出させた。特に断らない場合ReおよびRthは、この値をさす。
さらに、これらの試料を、25℃・相対湿度10%で同様に測定しRe(10%RH)、Rth(10%RH)を求めた。さらにこれらの試料を25℃・相対湿度80%で同様に測定し、Re(80%RH)、Rth(80%RH)を求めた。各試料について、下記式に従い湿度Re変動、湿度Rth変動を求めた。
・湿度Re変動(%/相対湿度%)=[100×{Re(80%RH)とRe(10%RH)の差の絶対値}/Re(60%RH)]/70
・湿度Rth変動(%/相対湿度%)=[100×{Rth(80%RH)とRth(10%RH)の差の絶対値}/Rth(60%RH)]/70
(Reムラ、Rthムラ、厚みムラ)
MD方向サンプリングは、長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングした。また、TD方向サンプリングは製膜全幅にわたり、1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプルングした。
それぞれ得られたサンプルの各最大値と最小値の差を、各平均値で割り、百分率で示したものをReムラ、Rthムラとした。また、厚みムラも各サンプルの厚みを測定し、MD方向、TD方向の各最大値と最小値の差を、各平均値で割り、百分率で示したものを厚みムラとした。
(光弾性係数)
(ア)1cm幅×10cm長のフィルムを、長手方向がMD方向とTD方向になるように2種類切り出した。
(イ)これをエリプソ測定装置(日本分光製 M−150)にセットし、長手方向(10cm長)に沿って100g、200g、300g、400g、500gの荷重を掛けながら、順次25℃・相対湿度60%において632.8nmの光でReを測定した。
(ウ)横軸に応力(荷重をフィルム断面積で割った値(kgf/cm2))、縦軸にRe変化(nm)をプロットし、この傾きから光弾性(cm2/kgf)を求めた。
(エ)2種類の試料の測定値を平均して光弾性(cm2/kgf)とした。
(セルロースエステルの置換度)
セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
(セルロースエステルの重合度)
絶乾したセルロースエステル約0.2gを精秤して、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0 T :測定試料の落下秒数
[η]=(1nηrel )/C T0 :溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C :濃度(g/l)
Km:6×10-4
(ヘイズ)
試料40mm×80mmを、25℃・相対湿度60%でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従って測定した。
(透明度)
試料20mm×70mmについて、25℃・相対湿度60%で透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)を用いて可視光(615nm)の透明度を測定した。
(分子配向軸)
試料70mm×100mmを、25℃・相対湿度65%で2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、 王子計測(株))を用いて垂直入射における入射角を変化させた時の位相差を測定して分子配向軸を算出した。
(軸ズレ)
自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))を用いて、試料70mm×100mmの軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
(引裂強度)
試料50mm×64mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、軽荷重引裂強度試験器(東洋精機製作所)を用いてISO6383/2−1983に従って引裂に要する加重を測定し、MD,TD方向で平均化して評価した。
(耐折強度)
試料120mm×120mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、ISO8776−1988に従って折り曲げによって切断するまでの往復回数を測定した。
(キシミ)
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))を用いて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動き出した時の力、動いているときの力を測定した。そして、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ次式に従い算出した。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
(動摩擦(鋼球法))
試料35mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、動摩擦係数測定器(東洋ボールドウィン)を用いて、測定面を上にして試料を台に固定し、鋼球を試料上におろし、台を送り測定した。
(アルカリ加水分解性)
試料100mm×100mmを、自動アルカリケン化処理装置(新東科学(株))にて、60℃,
2mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて3分間ケン化し、4分間水洗した後、30℃,0.01mol/L希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。その後、100℃で3分間乾燥し、さらに自然乾燥を1時間行って、下記の目視基準とケン化処理前後のヘイズ値からアルカリ加水分解性を評価した(25℃・相対湿度60%)。
A: 白化は全く認められなかった。
B: 白化がわずかに認められた。
C: 白化がかなり認められた。
D: 白化が著しく認められた。
(カール値)
試料35mm×3mmを、カール調湿槽(HEIDON(No.YG53−168)、新東科学(株))で相対湿度25%、55%、85%で24時間調湿し、曲率半径をカール板で測定した。またウェットでのカールは、水温25℃の水中に30分静置した後に、そのカール値を測定した。
(耐湿熱性)
試料35mm×25mmを、85℃・相対湿度90%で200,500,1000時間それぞれ経時させて、プラチナスレインボー(PR−1G、タバイ エスペック(株))にて、2枚の試料を接着剤にて張り合わせて調湿し、試料の状態を目視で観察し、色の変化を測定して以下の基準で評価した。
A: 特に異常が認められない。
B: 分解臭または分解による形状変化が認められる。
(含水率)
試料7mm×35mmを水分測定器と試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))を用いてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
(残留溶剤量)
ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株))を用いて、試料7mm×35mmのベース残留溶剤量を測定した。
(熱収縮率)
試料30mm×120mmを90℃・相対湿度5%で24時間、120時間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに90℃・相対湿度5%にて24時間、120時間熱処理してパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。熱収縮率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
(透湿度、透湿係数)
試料70mmφを25℃・相対湿度90%および40℃・相対湿度90%でそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量(g/m2)を算出した。そして、透湿度を調湿後質量−調湿前質量により求めた。更に強制的評価として、60℃・相対湿度95%にて24時間調室後に測定し、透湿係数とした。
(異物検査)
試料の全幅×1mの範囲に反射光をあて、膜中異物を目視にて検出した後、偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して評価した。
(寸法安定性)
寸法安定性は熱収縮率で評価した。試料の縦方向および横方向より30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取した。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開けた。これを23±3℃、相対温度65±5%の室内で3時間以上調湿した。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定した。次に試験片を80℃±1℃の恒温器に吊して3時間熱処理し、23± 3℃、相対湿度65±5%の室内で3時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。そして以下の式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率=(L1−L2/L1)×100
(弾性率)
東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用いて、23℃、70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径0.01mm以上の輝点数をカウントした。
(Tgの測定)
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
(1−1)未延伸セルロースエステルフィルムの製膜
(1)セルロースエステルペレットの調製
セルロースエステルとして、セルロースエステルA(アセチル置換度1.00、ブチリル置換度1.70、トータル置換度2.70、粘度平均重合度220、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度190mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)を用いた。なお、セルロースエステルAは、残存酢酸量が0.1質量%以下、残留ブタン酸が0.1質量%以下であり、Ca含有量が80ppm、Mg含有量が22ppm、Fe含有量が0.5ppmであり、さらに硫酸基としてのイオウ量を105ppm含むものであった。
また6位アセチル基の置換度は0.33、6位ブチリル基の置換度は0.57であり全アセチル中の33%であった。また、メタノール抽出分は5質量%以下、重量平均分子量/数平均分子量比は2.8であった。得られたセルロースエステルAを、メチレンクロライド/メタノール=90/10(質量比)を用いてガラス板上に溶液製膜して、80μmの厚さのフィルムを得た。このセルロースエステルAのみからなるフィルムのイエローインデックスは1.6であり、ヘイズは0.07、透明度は92.9%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は128℃であった。このセルロースエステルAは、綿から採取したセルロースを原料として合成した。
このセルロースエステルAを120℃、3時間乾燥し、含水率を0.1質量%以下にした後に、本発明のフッ素系界面活性剤または比較用の化合物(比較A〜D)を表1に記載したごとく添加し(添加量は、セルロースエステル固形分に対する質量部)、さらに二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%(対セルロースエステルに対して)、およびN,N’,N’’−トリ−m−トルイル−1,3,5ートリアジン−2,4,6−トリアミンを対セルロースエステルに対して4質量%添加した。これらを混合して2軸混練押し出し機のホッパーに投入し、さらに200℃でスクリュー回転数200rpm、滞留時間20秒で混練して融解した。さらに、水浴中で直径3mmのストランド状に押し出し、1分間浸漬した後(ストランド固化)、10℃の水中を30秒間通過させて温度を下げ、長さ5mmに裁断してペレットを得た。得られたセルロースエステルAからなるペレットを、100℃で10分間乾燥し、しかる後にアルミニウムを有するラミネートフィルムからなる防湿袋に袋詰めして保管した。
(2)ろ過
上記セルロースエステルを直径3mm長さ5mmの円柱状のペレットに成形したものを、110℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをホッパーに投入し200℃で溶融した後、口径5μmの焼結金属フィルターを用いて、10MPaで速度0.1m/分にて加圧ろ過した。得られたろ過物は、透明かつ均質な組成であることを確認した。
(3)溶融製膜
これを118℃(Tg−10℃)になるように調整したホッパーに投入し、上流側溶融温度180℃、中間溶融温度180℃、下流側溶融温度180℃、圧縮比14、T−ダイ温度がTg−7℃、T−ダイとキャスティングドラム間距離8cm、固化速度30℃/秒、キャスティングドラム温度は第一ロール(上流)(Tg−10)℃で第ニロール(上流)(Tg−11)℃でかつ第三ロール(上流)(Tg−12)℃であり、冷却速度は−15℃/秒であった。そして10分間かけてメルトを溶融押出しした。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、ニップロールを介して、巻き取り張力6kg/cm2で巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、巻き取った。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で500m巻き取った。得られたフィルムの膜厚は、100μmとした。
このようにして得た未延伸セルロースエステルフィルムの物性を、前述および下記の方法で測定し表1に記載した。本発明のフッ素系界面活性剤を含有した試料は優れた面状を有し、Re、Rthおよび厚みムラも小さく、光学特性の湿度変化依存性も小さく、耐傷性やゴミ付きの全ての点で優れたものであった。各評価は以下に従って実施した。
(ダイスジ)
ダイスジの評価は、反射光源のもとで目視観察し以下に従って実施した。
A: ダイスジは見られなかった。
B: ダイスジが微かに見られた。
C: ダイスジがはっきりと認められた。
D: ダイスジが全面に著しく発生した。
(フィルムの耐傷性)
試料を5cmX30cm(長手方向を流延方向とした)に裁断し、25℃,60%相対湿度で2時間調湿した後に、先端が0.025mmRのダイア針を垂直に設置し、連続荷重をかけて速度60cm/分で引っ掻いた。引き掻き後の試料を透過光を当てて、傷が見え始める荷重(g)を耐傷性の評価とした。大きいほど優れた耐傷性を有する。
(ゴミ付き)
20cm×20cmの試料を作製し、25℃/相対湿度25%環境下にて3日間調湿した。この調湿済みの試料の導電性の付与した面に、ナイロン布(5cm×5cm)に全体で1kgの分銅を掛け、試料表面(10cm×5cm)を10回擦って静電荷を付与した。得られた試料を5秒後に、予め採集したタバコの灰の上に1cmの距離に擦った面を置いて、タバコの灰の付着状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 特にタバコの付着は認められなかった。
B: かすかにタバコの付着が認められた。
C: かなりなタバコの付着が認められた。
D: タバコの付着が著しく認められた。
すなわち、本発明のセルロースエステルフィルム試料1−3〜試料1−8は、ダイスジが大幅に改善されていることがわかる。それに伴いReムラ、Rthムラ、厚みムラも非常に小さくて優れたものであった。また、ReおよびRthの湿度依存性は小さくて優れたものであることを確認した。耐傷性やゴミ付きの全ての点で優れたものであり、これは本発明のフッ素系界面活性剤を用いることによる予想されない優れた効果である。これに対して、本発明のフッ素系界面活性剤を含有しない比較試料1−1、あるいはフッ素系界面活性剤が少ない比較試料1−2、さらには他の素材を剥離剤として使用した比較試料1−10〜比較試料1−15はダイスジが悪く、Reムラ、Rthムラ、厚みムラも悪く、耐傷性やゴミ付きも不十分なものであった。また、本発明のフッ素系界面活性剤を含有するがその含有量が多すぎる比較試料1−9はフィルム膜が白化して白濁が見られて問題であった。以上から本発明のセルロースエステルにおいて本発明のフッ素系界面活性剤を含有させることで、優れたセルロースエステルフィルムを作製することができた。
なお、本発明の溶融製膜における製造方法は、従来の有機溶媒に溶解して溶液製膜する方法に比べ、有機溶媒の火災危険性や素材安全性に対する対策を必要とせず、かつ有機溶媒の回収も実施する必要がない点で優れている。
なお、本発明の試料1−3〜試料1−8は、残存酢酸量が0.01質量%未満であり、Ca含有量が0.05質量%未満、Mg含有量が0.01質量%未満であった。また、フィルムの縦横平均熱収縮(80℃/相対湿度90%/48時間)は−0.1%であり、熱収縮が生じ難いフィルムが得られた。
ここで本発明のフィルム試料の代表として試料1−3は、ヘイズが0.2%、透明度(透明性)が93.3%、傾斜幅は19.4nm、限界波長は393.3nm、吸収端は375.5nm、380nmの吸収は1.7%であり、Reは1.1nm、Rthは140nmであり、軸ズレ(分子配向軸)は0.2°、分子配向軸は0.3°、弾性率は長手方向が3.23GPa,幅方向が3.06GPa、抗張力は長手方向が126MPa、幅方向が122MPa、伸長率は長手方向が67%,幅方向が61%であり、キシミ値(静止摩擦係数)は0.53、キシミ値(動摩擦係数)は0.42、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は相対湿度25%で−0.2,ウェットでは1.3であった。
また、含水率は1.9質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.12%であり幅方向が−0.09%であった。異物はリントが5個/m未満であった。また、輝点は、0.02mm〜0.05mmが10個/3m未満、0.05〜0.1mmが4個/3m未満、0.1mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着も見られず(○)、透湿度も良好(○)であった。その他の本発明の試料も試料1−3とほぼ同等の特性値を示すものであった。
Figure 2006257204
(実施例2)
実施例1の本発明の試料1−5におけるセルロースエステルAをセルロースエステルB(アセチル置換度0.65、ブチリル置換度2.30、トータル置換度2.95、粘度平均重合度180、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度80mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)に変更する以外は、実施例1の試料1−5と全く同様にして本発明の試料2−1を作製した。さらに、セルロースエステルAをセルロースエステルC(アセチル置換度1.30、プロピオニル置換度1.60、トータル置換度2.90、粘度平均重合度360、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度265mPa・s、平均粒子サイズ1.4mmであって標準偏差0.5mmである粉体)に変更する以外は、実施例1の試料1−5と全く同様にして本発明の試料2−2を作製した。本発明の好ましいセルロースエステルの重合度が少し低目のセルロースエステルBでも、ダイスジは良好であり、Reムラ、Rthムラ、厚みムラも非常に小さくて優れたものであった。また、セルロースエステルがセルロースアセチルプロピオネートであり重合度が高めであるセルロースエステルCを用いた本発明の試料2−2も、ダイスジ、Reムラ、Rthムラ、厚みムラも非常に小さくて優れたものであった。さらに、耐傷性やゴミ付きの全ての点で優れたものであった。以上から本発明においてはセルロースエステルの重合度は、その許容幅は広い事を確認した。
(実施例3)
実施例1において本発明の試料1−5を、下記の条件でアルカリケン化処理を実施した。3mol/LのNaOH水溶液を60℃に加温した液中でフィルムを2分間浸漬した後、25℃の水で30秒間洗浄し、しかる後に0.5mol/Lの硫酸水溶液(25℃)で1分間処理し、再度25℃の水で水洗した。得られたアルカリケン化済みフィルムの接触角(対純水)を測定したところ、32°であり濡れ性は良好のものであった。なお、アルカリケン化処理前の接触角は61°であり、本発明の試料は優れた表面処理性を有することが判る。これらのフィルム上にPVA/グルタルアルデヒド(5質量%/0.2質量%))水溶液を10ml/m2塗布し、さらに市販の偏光膜HLC2−5618(サンリッツ社製)を貼り付けて、70℃/1時間処理し、さらに30℃で6日放置した。得られたセルロースエステルフィルム付の偏光膜をセルロースエステルフィルム側にカッターナイフで45°の角度で深さ200μmの碁盤目状の切り傷を11本ずつ直角に付与した。この傷跡部にニチバン製セロテープNo.405(セロテープ:登録商標)および日東テープ(PETテープ)を全面に強く付着し30分放置して、その端部を直角に勢いよく剥離した。その結果、未ケン化処理セルロースエステルフィルムは、すべての碁盤目状セルロースエステルフィルムが剥離したが、ケン化処理したセルロースエステルフィルムを付与した偏光膜は、セルロースエステルフィルムの剥離はいずれのテープに対しても全く見られなかった。以上から、本発明のセルロースエステルフィルムは優れた偏光膜特性を有することがわかる。
(実施例3−2)
実施例1で得られた本発明の試料1−5を、延伸温度は158℃、延伸倍率は縦(MD方向)109%、横(TD方向)145%で実施し、本発明の試料3−1(延伸フィルム)を得た。延伸速度は、1m/分で実施した。得られた延伸フィルム試料3−1についてその特性を表1にて評価したところ、延伸によりダイスジが一段と改善されていることがわかる。また、Reムラ、Rthムラ、厚みムラもさらに小さくなり優れたものであった。また、ReおよびRthの湿度依存性は小さくて優れたものであることを確認した。なお、Reは62nmであり、Rthは203nmであった。
(実施例4)
次に、セルロースエステルフィルムを偏光板等に応用した実施例を記載する。
(4−1)偏光板の作成
(1)セルロースエステルフィルムのケン化
未延伸セルローストリアセテートフィルム1−5、および延伸セルロースエステルフィルム3−1を以下の方法でケン化を実施した。すなわち、イソプロパノール80質量部に水20質量部を加え、これにKOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものをケン化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間ケン化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した。これらのケン化は、ロール状のフィルムを速度45m/分で実施した。
(2)偏光層の作成
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光層を調製した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光層と、上記ケン化処理した未延伸セルローストリアセテートフィルム1−10、および延伸セルロースエステルフィルム3−1を、これらで上記偏光層を挟んだ後、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースエステルフィルムの長手方向が90度となるように張り合わせた。このうち未延伸、延伸セルロースエステルフィルムを特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置液晶表示装置に25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価し、表示ムラの発生している領域を目視で評価し、それが発生している割合(%)を求めたところ、本発明のセルロースエステルフィルムの色調変化は1であり、非常に優れたものであった。
また、特開平2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が吸収軸に対して45°の角度となるように延伸した偏光板についても同様に本発明のセルロースエステルフィルムを用い作製したが、上記同様良好な結果が得られた。
(4−2)光学補償フィルムの作成
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明のケン化済みの延伸セルロースエステルフィルム3−1を使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価し、色変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)して2のマークを得た。本発明を実施したことにより良好な性能が得られた。
(4−3)低反射フィルムの作成
本発明のセルロースエステルフィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い本発明の延伸、未延伸セルロースエステルフィルム試料1−8を用いて低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能が得られた。
(実施例5)
実施例3において作製した本発明の延伸フィルム3−1を、特開2002−265636号公報記載の実施例13において、セルローストリアセテートフィルム試料1301の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報記載の実施例13と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料の作製によりベンド配向液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
(実施例6)
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム試料1−8用いて、作製したフィルムはReが3nm、Rthは81nmであった。このフィルムを特開2002−265636号公報記載の実施例14において、セルローストリアセテートフィルム試料1401の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報記載の実施例14と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料の作製によりTN型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
(実施例7)
(1)VAパネルへの実装
本発明の実施例4で作製した偏光板を、視認側偏光板は26’’ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように、バックライト側偏光板は偏光子の吸収軸が短辺となるように長方形に打抜いた。VAモードの液晶TV(ソニー(株)製、KDL−L26RX2)の、表裏の偏光板および位相差板を剥し、表と裏側に本発明の実施例4で作製した偏光板を組み合わせで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向となり、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。プロテクトフィルムを剥した後、測定機(ELDIM社製、EZ−Contrast 160D)を用いて、黒表示および白表示の輝度測定から視野角(コントラスト比が10以上の範囲)を算出した。いずれの偏光板を使用した場合も、全方位で極角80°以上の良好な視野角特性が得られた。
さらに、耐久試験による光漏れおよび偏光板剥がれテストを実施し問題ないことを確認した。耐久性テスト条件は以下の通りである。
1)60℃・相対湿度90%の環境に200時間保持し、25℃・相対湿度60%環境に取り出し24時間後に液晶表示装置を黒表示させ、光漏れ強度および偏光板の液晶パネルからの剥がれの有無を評価した。
2)80℃dryの環境に200時間保持し、25℃・相対湿度60%環境に取り出し1時間後に液晶表示装置を黒表示させ、光漏れ強度および偏光板の液晶パネルからの剥がれの有無を評価した。
(実施例8)
本発明の試料を所望の光学特性を示す光学異方性性フィルムに作製し、以下の異なる液晶モードの市販モニターあるいはテレビの位相差膜を剥ぎ取り、本発明の位相差膜を貼り付けてその視野角特性を調べたところ、優れた広い視野角特性と色味を得て、本発明のセルロースエステルが有用であることを確認した。
(TNモード)
視認側偏光板、バックライト側偏光板共に、17’’のサイズで打抜き後の偏光板の長辺に対して吸収軸が45°長辺となるように、長方形に打抜いた。TNモードの液晶モニター(サムソン社製、SyncMaster 172X)の表裏の偏光板および位相差板を剥し、表と裏側に、本発明のセルロースエステルからなる偏光板を組み合わせで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
(IPSパネル)
本発明の偏光板を、視認側偏光板は32’’ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように、バックライト側偏光板は偏光子の吸収軸が短辺となるように長方形に打抜いた。IPSモードの液晶TV(日立製作所(株)製、W32−L5000)の表裏の偏光板および位相差板を剥し、表と裏側に本発明のセルロースエステルから作製された偏光板を組み合わせで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向となり、粘着層表面が液晶セル側となるように配置した。
本発明の製造方法によれば、ダイスジ、厚さムラおよび光学特性のムラを大幅に軽減し、耐傷性とゴミ付き防止性が改善されたセルロースエステルフィルムを提供することができる。本発明のセルロースエステルフィルムを液晶表示装置などの光学用表示装置に組み込めば、従来から問題になっていた表示ムラや湿度による視認性の変化を大幅に抑えることができる。したがって、本発明のセルロースエステルフィルムは産業上の利用可能性が高い。

Claims (11)

  1. 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルと、該セルロースエステルの固形分に対して下記一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤0.01〜5質量%との混合物を、溶融製膜する工程を含むことを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
    一般式(2A)
    Figure 2006257204
    (式中、RA1およびRA2はそれぞれ置換もしくは無置換のアルキル基を表すが、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、LA1、LA2およびLA3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、X+はカチオン性の置換基を表す。Y-は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。mAは0または1である。)
    一般式(2B)
    Figure 2006257204
    (式中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8のいずれかの整数を表す。LB1およびLB2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。)
    一般式(2C)
    Figure 2006257204
    (式中、RC1は置換または無置換のアルキル基を表し、RCFはパーフルオロアルキレン基を表す。Aは水素原子またはフッ素原子を表し、LC1は置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。YC1およびYC2は、一方が水素原子を、もう一方が−LC2−SO3Mを表す。ここで、LC2は単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表し、Mはカチオンを表す。)

    一般式(2D)
    [RfD−(LDnDmD−W
    (式中、RfDはパーフルオロアルキル基を表し、LDはアルキレン基、Wは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を有する基を表す。nDは0または1を表し、mDは1〜3のいずれかの整数を表す。)
  2. 溶融製膜後に、少なくとも1方向に1%〜500%延伸する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法により製造したセルロースエステルフィルム。
  4. 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルと、該セルロースエステルの固形分に対して、下記一般式(2A)、(2B)、(2C)および(2D)のいずれかで表されるフッ素系界面を0.01〜5質量%含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
    一般式(2A)
    Figure 2006257204
    (式中、RA1およびRA2はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基を表すが、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、LA1、LA2およびLA3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、X+はカチオン性の置換基を表す。Y-は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。mAは0または1である。)
    一般式(2B)
    Figure 2006257204
    (式中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8のいずれかの整数を表す。LB1およびLB2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。)
    一般式(2C)
    Figure 2006257204
    (式中、RC1は置換または無置換のアルキル基を表し、RCFはパーフルオロアルキレン基を表す。Aは水素原子またはフッ素原子を表し、LC1は置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基またはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。YC1およびYC2は、一方が水素原子を、もう一方が−LC2−SO3Mを表す。ここで、LC2は単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表し、Mはカチオンを表す。)

    一般式(2D)
    [RfD−(LDnDmD−W
    (式中、RfDはパーフルオロアルキル基を表し、LDはアルキレン基、Wは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を有する基を表す。nDは0または1を表し、mDは1〜3のいずれかの整数を表す。)
  5. セルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基が、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基からなる群より選択される少なくとも一種類以上のアシル基であることを特徴とする請求項3または4に記載のセルロースエステルフィルム。
  6. 面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦200nmであり、厚み方向のレターデーション(Rth)が−200≦Rth≦500nmであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  7. セルロースエステルフィルムの厚みムラが0%〜2%であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  8. フィルム表面の水の接触角が45°以下(25℃/相対湿度60%)であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
  9. 請求項3〜7のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを用いて作製された光学用偏光板。
  10. 請求項3〜7のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを用いて作製された位相差板。
  11. 請求項3〜7のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを用いて作製された光学用表示装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011114764A1 (ja) * 2010-03-16 2011-09-22 コニカミノルタオプト株式会社 位相差フィルム及びそれが備えられた偏光板
JP2011227508A (ja) * 2011-06-06 2011-11-10 Fujifilm Corp 透明保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置
WO2014142465A1 (ko) * 2013-03-13 2014-09-18 (주)효성 아세틸기 및 부티릴기를 갖는 셀룰로오스 에스테르 필름을 이용한 버티컬 얼라인먼트 엘씨디(va lcd) 시야각 보상 광학 필름
JP2017128630A (ja) * 2016-01-18 2017-07-27 旭化成株式会社 セルロース製剤

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