JP2006257501A - 誘電体薄膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エアロゾルデポジション法で形成した誘電体薄膜の表面を切削や研磨をすることなしに、平滑な表面を得ることのできる誘電体薄膜の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成した後、その第一の誘電体薄膜上に、化学溶液法で第二の誘電体薄膜を形成するか、又はCVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、水熱合成法のいずれかの方法、又はドクターブレード法で第二の誘電体薄膜を形成する。あるいは、基材上に、エアロゾルデポジション法で誘電体薄膜を形成した後、その誘電体薄膜の表面をウエットエッチングして、平滑度を向上させた表面を現出させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、誘電体薄膜の製造方法に関するものであり、数μm以上50μm以下の膜厚で高い膜密度が要求されるセラミックス膜の形成方法として広範囲の分野において有効である。具体的には、インクジェットプリンタヘッド、ハードディスクドライブヘッドのポジショナー、様々なMEMSスイッチ用のアクチュエータの駆動部分に用いる圧電薄膜や電気光学素子用薄膜、表面コーティング膜等を形成する方法として適用できるものである。
薄膜形成技術として、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、化学溶液法(ゾルゲル法を含む)、等があるが、これらの成膜方法は、原子または分子状態からの成長過程を経るため、成膜レートをあまり高くすることができないため、数μm以上の膜を得るのは実用上困難である。また、原料の価格や装置の価格が高いという問題もある。
一方、近年、セラミックの微粒子をガス攪拌などによりエアロゾル化し、微小なノズルを通して加速し、これを基板上に噴射、衝突させることで膜を形成するエアロゾルデポジション法が研究されている。例えば、特開2002−235181号公報(特許文献1)、特開2002−309384号公報(特許文献2)、特開2003−183848号公報(特許文献3)等である。この成膜方法では、微粒子の運動エネルギーの一部が基板に衝突することにより熱エネルギーに変換され、微粒子間あるいは基板−微粒子間を焼結させている。エアロゾルデポジション法は、成膜速度が非常に速く(他の成膜方法の100倍以上)、原料価格も安価で、しかも、密度の高い膜が容易に得られることから、他の成膜方法と比べて非常に魅力的な成膜方法であると言われている。
特開2002−235181号公報 特開2002−309384号公報 特開2003−183848号公報
しかしながら、現状、エアロゾルデポジション法で形成した誘電体薄膜の表面は、微視的には平滑ではない。そこで、平滑な表面が要求される場合は、膜形成後に表面の切削あるいは研磨を行う必要がある。平面研削を行う場合は研削機の機械的制約のため、研削前に堆積する誘電体薄膜の膜厚は最低50μm以上存在する必要がある。また、繊細な機能性を期待する誘電体薄膜(例えば圧電薄膜や焦電薄膜、等)の場合、研削時のダメージで特性に悪影響を与えることもある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、エアロゾルデポジション法で形成した誘電体薄膜の表面を切削あるいは研磨などの処理をすることなしに、平滑な表面を得ることのできる誘電体薄膜の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1の発明に係る誘電体薄膜の製造方法は、基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成する工程と、その第一の誘電体薄膜上に、化学溶液法で第二の誘電体薄膜を形成する工程を有することを特徴とする。
請求項2の発明に係る誘電体薄膜の製造方法は、基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成する工程と、その第一の誘電体薄膜上に、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、水熱合成法のいずれかの方法で第二の誘電体薄膜を形成する工程を有することを特徴とする。
請求項3の発明に係る誘電体薄膜の製造方法は、基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成する工程と、その第一の誘電体薄膜上にドクターブレード法で第二の誘電体薄膜を形成する工程を有することを特徴とする。
請求項4の発明に係る誘電体薄膜の製造方法は、基材上に、エアロゾルデポジション法で誘電体薄膜を形成する工程と、その誘電体薄膜の表面をウエットエッチングすることによって、平滑度を向上させた表面を現出させる工程を有することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体薄膜の製造方法において、最終的な誘電体薄膜の表面の中心平均粗さRaが50nm以下であることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体薄膜の製造方法において、エアロゾルデポジション法で形成する誘電体薄膜が、ペロブスカイト構造を有する誘電体薄膜であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6記載の誘電体薄膜の製造方法において、上記ペロブスカイト構造を有する誘電体薄膜が、Pb(Zr、Ti)O3、PbTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3、A・ANbO3(A=アルカリ金属のカリウム、ナトリウム、リチウム、またはそれらの組み合わせ)のうちのいずれかからなることを特徴とする。
<発明の要点>
本発明では、エアロゾルデポジション法で誘電体薄膜を形成した後に、その上に化学溶液法(ゾルゲル法)で誘電体薄膜を形成する。これにより、エアロゾルデポジション法で形成した誘電体薄膜の表面を切削あるいは研磨などの処理をすることなしに、平滑な表面を得ることができる。
これによって、所望の膜厚よりも無駄に厚い膜を形成する必要がなくなるため、製造コストや製造時間を削減することができ、更に、研削時のダメージがなくなるため、薄膜を素子の一部として用いる場合は信頼性が大幅に向上する。
エアロゾルデポジション法での成膜の後の成膜は、化学溶液法に限定されるものではなく、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、水熱合成法等、様々な方法が適用できる。
本発明によれば、エアロゾルデポジション法で形成した誘電体薄膜の表面を切削あるいは研磨などの処理をすることなしに、平滑な表面の誘電体薄膜を得ることができる。
従って、本発明によって、エアロゾルデポジション法の弱点と言われていた表面平滑性が悪いという問題を、容易かつダメージフリーな方法で改善できるようになる。これによって、エアロゾルデポジション成膜の応用範囲が大幅に広がる。
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
本発明には4つの実施形態がある。
第一の実施形態は、基材(例えば図1(a)の基板1)上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜(例えば図1(b)の第一のPZT薄膜4)を形成した後、その第一の誘電体薄膜上に、化学溶液法で第二の誘電体薄膜(例えば図1(c)の第二のPZT薄膜5)を形成するものである。ここで、化学溶液法で形成する第二の誘電体薄膜は、必ずしも第一の誘電体と同じ組成の誘電体薄膜である必要はなく、第一の誘電体と異なる組成の誘電体薄膜であってもよい。
第二の実施形態は、基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成した後、その第一の誘電体薄膜上に、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、水熱合成法のいずれかの方法で第二の誘電体薄膜を形成するものである。ここで、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、水熱合成法のいずれかの方法で形成する第二の誘電体薄膜は、第一の誘電体と同じ組成の誘電体薄膜または第一の誘電体と異なる組成の誘電体薄膜のいずれであってもよい。
第三の実施形態は、基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成した後、その第一の誘電体薄膜上にドクターブレード法で第二の誘電体薄膜を形成するものである。ここで、ドクターブレード法で形成する第二の誘電体薄膜は、第一の誘電体と同じ組成の誘電体薄膜または第一の誘電体と異なる組成の誘電体薄膜のいずれであってもよい。
上述の三つの実施形態において、第一誘電体薄膜と第二誘電体薄膜を合わせた全体の厚さは、50μm未満、例えば20μmでよい。ちなみに従来の研削による場合は50μm以上の厚さが必要である。
第四の実施形態は、基材(例えば図8の基板1)上に、エアロゾルデポジション法で誘電体薄膜(例えば図8のPZT薄膜(Pb(Zr0.53Ti0.47) O3膜)62)を形成した後、その誘電体薄膜の表面をウエットエッチングすることによって、平滑度を向上させた表面を持つ誘電体薄膜(例えば図8のPZT薄膜(Pb(Zr0.53Ti0.47) O3膜)60)を現出させるものである。
この第四の実施形態においても、エッチング後の誘電体薄膜の厚さは、50μm未満、例えば20μmでよく、従来の研削による場合のように50μm以上の厚さを確保する必要がない。
第一の実施例として、誘電体薄膜としてのPZT圧電膜(Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜)(膜厚20μm)の製造例について記載する。
図1(a)に示すように、基板1にはSi(100)基板(20mm×20mmの大きさに切り出した物、厚さ1.0mm)を用いて、まず、その基板上にPt下部電極膜2(膜厚0.5μm)をRFマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。Pt下部電極膜2の成膜条件は、基板温度300℃、放電パワー200W、導入ガスAr、圧力約2.666Pa(0.02Torr)で行った。
その後、図1(b)に示すように、前記のPt下部電極膜2上にエアロゾルデポジション法で、第一の誘電体薄膜として、Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(第一のPZT薄膜ともいう)4を19.7μmの膜厚に形成した。
このエアロゾルデポジション法によるPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜の形成方法の詳細を以下に記載する。
図2にエアロゾルデポジション成膜装置の構成の概略を示す。
このエアロゾルデポジション成膜装置においては、ヘリウム(He)のガスボンベ11が、配管12aにより減圧弁21、マスフロコントローラ22、開閉弁23を介してエアロゾル発生器であるエアロゾル室(AD室)13に連結され、さらに開閉弁24、配管12bを通じて、成膜チャンバー14内に配置されたノズル15に連結される。ノズル15の先方には、ヒータ20を内蔵する基板ホルダー16により基板3がノズル15に対向して10mmの間隔をあけて配置される。基板ホルダー16はXYステージ17に取り付けられており、基板3がXY方向に移動できる構成となっている。成膜チャンバー14には粉体フィルタ18を通して排気ポンプ19が接続されている。
原料微粒子には、粒径が0.1〜2μmの良好な圧電特性を有するペロブスカイト構造のPb(Zr0.53Ti0.47) O3微粒子を用いた。原料微粒子は200gをエアロゾル室13にチャージし、搬送用ガスとしてはHeガスを用いた。エアロゾル室13でエアロゾル化した原料を、搬送用のHeガスに乗せて、成膜チャンバー14に搬送し、開口面積(0.3mm×5mm)のノズル15を通すことで高速に加速し、基板3に吹き付けることで前記の第一のPZT薄膜4を成膜した。基板3はノズルに対してXYステージ17で連続的に走査することで、基板全面に均一に成膜した。He搬送ガスの流量は1〜5L/min、成膜チャンバー内の圧力は約133.32Pa〜2666.4Pa(1〜20Torr)の範囲で行った。
更に、図1(c)に示すように、上記Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(19.7μm)から成る第一のPZT薄膜4上に、化学溶液法で、第二の誘電体薄膜として、Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(第二のPZT薄膜ともいう)5を0.3μmの膜厚に形成し、積層した。
この化学溶液法での成膜条件の詳細を以下に記載する。
Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜原料溶液としては以下に示す成分及び含有量のものを用いた。
・PbOとして 11.5wt%
・ZrO2として 5.2wt%
・TiO2として 4.8wt%
・1−プロパノール 34.5wt%
・プロピレングリコール 44.0wt%
原料溶液を0.1ml滴下し、スピンコーター(500rpm×3秒、9000 rpm×15秒)で均一に塗布した後、乾燥のために空気中で400℃、5分間加熱した。この薄膜を、結晶化のために空気中で700℃、1分間焼成して、膜厚15nmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜を得た。この塗布・乾燥・焼成のサイクルを20回繰り返すことで、膜厚0.3μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜から成る第二のPZT薄膜5を得た。
以上のような工程で、図3に示す第一のPZT薄膜4と第二のPZT薄膜5を合わせた合計膜厚20μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(全PZT薄膜ともいう)6を得た。なお、図3は作製した試料の断面構造を示す。
<比較例>
次に、従来技術による比較例として、図4に示す断面構造物を作成した。すなわち、Pt下部電極膜2上にエアロゾルデポジション法でPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜から成るPZT薄膜7を50μm形成した後に、表面を研削することで、PZT薄膜7の厚さを20μmにした試料(比較例)も作製した。図4に、PZT薄膜7のうち研削で削除した薄膜部分をPZT薄膜7aとして、研削後に残った薄膜部分をPZT薄膜7bとして示す。
<評価>
上記実施例1(図3)と比較例(図4)について、両者の表面平滑度を測定した結果、従来技術(比較例)で作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7b)の表面では、表面の中心平均粗さRaが40nmであるのに対して、本発明(実施例1)を用いて作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(第二のPZT薄膜5)の表面は、表面の中心平均粗さRaが30nmであった。すなわち、本発明によれば、研削により表面を平坦化した試料と同レベルの平滑度が得られることが分かった。
得られたPZT薄膜の特性評価を目的として、更に、上記第一のPZT薄膜4と第二のPZT薄膜5を合わせた厚さ20μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(全PZT薄膜6)上に、膜厚0.5μmのPt上部電極膜8をRFマグネトロンスパッタリング法で形成し、これにより上下の電極にPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(全PZT薄膜6)が挟まれた圧電素子構造を作製した。作製した構造を図5に示す。
比較例(図4)についても、同様にPZT薄膜7b(研削後に残った薄膜部分)上にPt上部電極膜8(図示せず)を形成し、これにより上下の電極にPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7b)が挟まれた圧電素子構造を作製した。
次に、これらの圧電素子から、長さ20mm幅5mmの短冊形状を切り出し、図6の如く、長手方向の一端をクランプ9で固定することで簡易的なユニモルフカンチレバー(カンチレバー型小型アクチュエータ)10を形成した。
この状態で上下の電極2、8を通じて両電極間のPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(全PZT薄膜6又はPZT薄膜7b)に電圧を印加すると、そのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜が伸縮することでカンチレバー全体が屈曲動作し、レバー先端が変位する。その変位量を、図6に示す如く、CCDカメラ30で観察しながら、干渉計31、干渉計ユニット32、復調ユニット33、オシロスコープ34を含むレーザードップラ変位計で測定し、この測定した変位量からPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(全PZT薄膜6又はPZT薄膜7b)の圧電定数d31を算出した。圧電定数d31の評価方法の概略を図6の上系統に示す。
上記実施例1(図3)及び比較例(図4)から作製した圧電素子について、その圧電定数d31および圧電動作の信頼性(寿命劣化)の測定結果を以下に示す。
本発明(実施例1)を用いて作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(全PZT薄膜6)の圧電定数d31は−110pm/Vであり、従来技術(比較例)で作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7b)の圧電定数d31は−100pm/Vであった。すなわち本実施例1のPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜の圧電定数d31の方が、従来技術に較べて高い値を示した。
次に、信頼性(寿命劣化)を評価するため、ユニモルフカンチレバー10に、ファンクションジェネレータとアンプ回路から成る信号発生器35から、周波数10kHz、±20Vの電圧を連続的に印加させることで、連続的に長時間圧電動作させて信頼性を確認した。圧電動作信頼性の測定結果を図7に示す。
図7から、従来技術(比較例)で作製したカンチレバー10は、振幅回数が5000万回付近から変位量が低下し、約7000万回で全く動作しなくなったのに対して、本発明(実施例1)を用いて作製したカンチレバー10は、振幅回数が1億回でも全く変位量が低下していないことが分かる。
次に、第二の実施例として、誘電体薄膜としてのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(膜厚20μm)を他の方法で形成した例について記載する。
図8に示すように、基板1にはSi(100)基板(20mm×20mmの大きさに切り出した物、厚さ1.0mm)を用いて、まず、その基板1上にPt下部電極膜2(膜厚0.5μm)をRFマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。Pt下部電極膜2の成膜条件は、基板温度300℃、放電パワー200W、導入ガスAr、圧力約2.666Pa(0.02Torr)で行った。
その後、上記のPt下部電極膜2の付いた基板3上に、エアロゾルデポジション法でPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(擬制層付きPZT薄膜ともいう)62を20.5μmの厚さに形成した。
このエアロゾルデポジション法によりPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(擬制層付きPZT薄膜62)を形成する方法の詳細を以下に記載する。
図2のエアロゾルデポジション成膜装置において、原料微粒子には、粒径が0.1〜2μmの良好な圧電特性を有するペロブスカイト構造のPb(Zr0.53Ti0.47) O3微粒子を用いた。原料微粒子は200gをエアロゾル室13にチャージし、搬送用ガスとしてはHeガスを用いた。エアロゾル室13でエアロゾル化した原料を、搬送用のHeガスに乗せて、成膜チャンバー14に搬送し、開口面積(0.3mm×5mm)のノズル15を通すことで高速に加速し、前記基板3に吹き付けた。基板3はノズル15に対してXYステージ17で連続的に走査することで、基板全面に均一に成膜した。He搬送ガスの流量は1〜5L/min、成膜チャンバー内の圧力は約133.32Pa〜2666.4Pa(1〜20Torr)の範囲で行った。
次に、上記膜厚20.5μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(擬制層付きPZT薄膜62)の表面を、厚さ0.5μmだけ、フッ硝酸系のエッチング液でウエットエッチングした。
エッチャントとしては、フッ酸:硝酸:水=1:1:100の配合の液を用いた。またエッチングは、室温、攪拌無しの状態で30秒間行った。これにより、上記膜厚20.5μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(擬制層付きPZT薄膜62)の表面を、厚さ0.5μmだけウエットエッチングして除去した。図8中に、擬制層付きPZT薄膜62からエッチングで除去した薄膜部分をPZT薄膜61として、またエッチングで残った薄膜部分をPZT薄膜60として示す。
以上のような工程で、膜厚20μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60)を得た。作製した試料(実施例2)の断面構造を図8に示す。
また、従来技術との比較のために、図4の如く、Pt下部電極膜2上にエアロゾルデポジション法でPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7)を50μm形成した後に、表面を研削することで、Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7b)の厚さを20μmにした試料(比較例)も作製した。作製した試料(比較例)の断面構造を図4に示す。
実施例2(図8)と比較例(図4)について、両者の表面平滑度を測定した結果、従来技術(比較例)で作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7b)の表面では、表面の中心平均粗さRaが40nmであるのに対して、本発明(実施例2)を用いて作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60)の表面は、表面の中心平均粗さRaが20nmであり、本発明により、表面を研削した試料と同レベルの平滑度が得られることが分かった。
更に、図5に示すように、上記厚さ20μmのPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60)上に、膜厚0.5μmのPt上部電極膜8をRFマグネトロンスパッタリング法で形成することで、上下の電極2、8にPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60)が挟まれた圧電素子構造を作製した。同様に、図4の比較例についても、そのPZT薄膜7b上にPt上部電極膜8を形成して、図5と同様の圧電素子構造を作製した。
次に、これらの圧電素子から、長さ20mm幅5mmの短冊形状を切り出し、図6に示すように、長手方向の一端をクランプ9で固定することで、簡易的なユニモルフカンチレバー10を形成した。この状態で上下の電極を通して、両電極間のPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60又は7b)に電圧を印加すると、Pb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60又は7b)が伸縮することでカンチレバー全体が屈曲動作し、レバー先端が変位する。その変位量をレーザードップラ変位計(図6参照)で測定し、変位量からPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜の圧電定数d31を算出した。圧電定数d31評価方法の概略図を図6に示す。
実施例2(図8)と比較例(図4)について、その圧電定数d31および圧電動作の信頼性(寿命劣化)の測定結果を以下に示す。
本発明(実施例2)を用いて作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜60)の圧電定数d31は−110pm/Vで、従来技術(比較例)で作製したPb(Zr0.53Ti0.47) O3圧電薄膜(PZT薄膜7b)の圧電定数d31は−100pm/Vであった。
また、こられのユニモルフカンチレバー10に周波数10kHz、±20Vの電圧を連続的に印加させることで、連続的に長時間圧電動作させて信頼性を確認した。圧電動作信頼性の測定結果を図9に示す。従来技術(比較例)で作製したカンチレバー10は、振幅回数が5000万回付近から変位量が低下し、約7000万回で全く動作しなくなったのに対して、本発明(実施例2)を用いて作製したカンチレバー10は、振幅回数が1億回でも全く変位量が低下していないことが分かる。
<他の実施例、変形例>
上記実施例では、基材たる基板の全面に誘電体薄膜を形成した例について記載したが、本発明は、基材の一部分のみに誘電体薄膜が形成された構造への適用も可能である。
本発明の実施例1に係る誘電体薄膜の製造方法を示した図である。 本発明の実施例で用いたエアロゾルデポジション成膜装置の構成を示した概略図である。 本発明の実施例1で作製した誘電体薄膜の複合構造体を示した図である。 比較例として作製した誘電体薄膜の複合構造体を示した図である。 本発明の実施例1の複合構造体から作製した圧電素子の構造を示した図である。 圧電定数d31及び信頼性の評価方法を示した概略図である。 本発明の実施例1で得られた圧電薄膜を動作させた際の信頼性の評価結果を、従来技術による圧電薄膜の場合と比較して示した図である。 本発明の実施例2で作製した誘電体薄膜の複合構造体を示した図である。 本発明の実施例2で得られた圧電薄膜を動作させた際の信頼性の評価結果を、従来技術による圧電薄膜の場合と比較して示した図である。
符号の説明
1 基板
2 下部電極膜
2a 下部電極膜
4 第一のPZT薄膜(第一の誘電体薄膜)
3 基板
5 第二のPZT薄膜(第二の誘電体薄膜)
6 全PZT薄膜
7、7a、7b PZT薄膜
8 上部電極膜
13 エアロゾル室
14 成膜チャンバー
15 ノズル
16 基板ホルダー
17 XYステージ
19 排気ポンプ
20 ヒータ
60、61 PZT薄膜
62 擬制層付きPZT薄膜

Claims (7)

  1. 基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成する工程と、
    その第一の誘電体薄膜上に、化学溶液法で第二の誘電体薄膜を形成する工程を有することを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  2. 基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成する工程と、
    その第一の誘電体薄膜上に、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、水熱合成法のいずれかの方法で第二の誘電体薄膜を形成する工程を有することを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  3. 基材上に、エアロゾルデポジション法で第一の誘電体薄膜を形成する工程と、
    その第一の誘電体薄膜上にドクターブレード法で第二の誘電体薄膜を形成する工程を有することを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  4. 基材上に、エアロゾルデポジション法で誘電体薄膜を形成する工程と、
    その誘電体薄膜の表面をウエットエッチングすることによって、平滑度を向上させた表面を現出させる工程を有することを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体薄膜の製造方法において、
    最終的な誘電体薄膜の表面の中心平均粗さRaが50nm以下であることを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体薄膜の製造方法において、
    エアロゾルデポジション法で形成する誘電体薄膜が、ペロブスカイト構造を有する誘電体薄膜であることを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  7. 請求項6記載の誘電体薄膜の製造方法において、
    上記ペロブスカイト構造を有する誘電体薄膜が、Pb(Zr、Ti)O3、PbTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3、A・ANbO3(A=アルカリ金属のカリウム、ナトリウム、リチウム、またはそれらの組み合わせ)のうちのいずれかからなることを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
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