JP2006307680A - スタータ - Google Patents

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美樹夫 塚田
Kazuo Masaki
和雄 正木
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Abstract

【課題】リングギヤ23に噛み合うピニオン6の傾きを小さくすることで、ピニオン6に働く後退力を小さくできるスタータ1を提供する。
【解決手段】ピニオン6がリングギヤ23に対し角度θの傾きを有して噛み合うと、ピニオン6をリングギヤ23から離脱させる方向に後退力Fが働く。この後退力Fがピニオンスプリング20の反力Spより大きくなると、リングギヤ23からピニオン6が後退して、最悪の場合、リングギヤ23からピニオン6が外れることがある。そこで、ピニオンスプリング20の反力Spより、ピニオン6に働く後退力Fの方が小さくなる様に、ピニオンの傾き角度θが設定されている。これにより、リングギヤ23からピニオン6が後退することを抑制でき、ピニオン6のばたつきが少なくなるため、騒音を低減できると共に、ピニオン6及びリングギヤ23の摩耗を抑制できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、モータの回転力をピニオンからエンジンのリングギヤに伝達してエンジンを始動させるスタータに関する。
従来技術として、例えば、特許文献1に記載されたスタータがある。
このスタータは、図5に示す様に、モータ100の回転力がクラッチ110を介して伝達される筒状のスプラインチューブ120と、このスプラインチューブ120の内周にヘリカルスプライン結合される出力軸130と、この出力軸130の端部にスプライン結合されるピニオン140と、このピニオン140と出力軸130との間に反力を蓄えるピニオンスプリング150等を有し、電磁スイッチ160の働きで出力軸130を図示左方向に押し出すことにより、ピニオン140をエンジンのリングギヤ170に噛み合わせる方式である。
この構成では、ピニオンスプリング150の反力によって質量の軽いピニオン140をリングギヤ170に押し込むことができるので、ピニオン140とリングギヤ170との噛み合い性が向上する。
実公昭56−10931号公報
ところが、上記のスタータは、図6に示す様に、出力軸130とピニオン140とのスプライン結合部に多少のクリアランスがあるため、出力軸130に対しピニオン140が角度θだけ傾くことがある。このため、図7に示す様に、ピニオン140がリングギヤ170に角度θの傾きを有して噛み合うと、ピニオン140に後退力F(スラスト力)が発生する。このスラスト力Fは、ピニオン140をリングギヤ170から離脱させる方向(図示右方向)に働くため、その後退力Fがピニオンスプリング150の反力より大きくなると、ピニオン140がピニオンスプリング150を押し縮めながら出力軸130上を後退(図示右方向へ移動)する。このピニオン140の後退によってピニオンスプリング150の反力がスラスト力Fより大きくなると、再度、ピニオン140がピニオンスプリング150に付勢されて出力軸130上を前進する。
この様に、ピニオン140の後退と前進とが繰り返されると、そのピニオン140のばたつきに伴って発生する騒音が問題になるだけでなく、ピニオン140とリングギヤ170とが噛み合ったまま軸方向に擦れ合うため、ピニオン140及びリングギヤ170の摩耗が促進される。
また、ピニオン140とリングギヤ170との噛み合い幅、つまり両ギヤが噛み合っている部分の軸方向長さより、ピニオンストローク(ピニオン140が出力軸130上を軸方向に移動できる最大長さ)が大きく設定されていると、スラスト力Fによってピニオン140が出力軸130上を後退した時に、ピニオン140がリングギヤ170から外れることがある。この場合、リングギヤ170に対しピニオン140が噛み合いと離脱とを繰り返すため、そのピニオン140のばたつき(噛み合いと離脱とを繰り返す動作)に伴って発生する騒音が大きくなり、更にピニオン140及びリングギヤ170に摩耗や欠け等が発生する恐れがある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、リングギヤに噛み合うピニオンの傾きを小さくすることで、ピニオンに働く後退力を小さくできるスタータを提供することにある。
(請求項1の発明)
本発明は、回転力を発生するモータと、このモータに駆動されて回転する出力軸と、この出力軸の外周にヘリカルスプライン結合または直スプライン結合されるアウタ、および出力軸の外周に軸受を介して相対回転可能に、且つ軸方向に摺動可能に嵌合するインナチューブを有し、出力軸からアウタに一方向の回転が伝達された時に、アウタからインナチューブへトルク伝達するクラッチと、インナチューブの外周に直スプライン結合またはヘリカルスプライン結合され、インナチューブに対し軸方向に所定量だけ移動可能に支持されたピニオンと、インナチューブとピニオンとの間に配設され、両者間に軸方向の反力を蓄えるピニオンスプリングと、電磁力を発生してプランジャを吸引することにより、モータの通電回路に接続されるメイン接点を閉操作すると共に、プランジャを吸引する電磁力を利用して、ピニオンをクラッチと一体に軸方向に押し出す働きを有する電磁スイッチとを備え、軸方向に押し出されたピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合わされて、モータの回転力をピニオンからリングギヤに伝達するスタータであって、
ピニオンがリングギヤに対し角度θの傾きを有して噛み合っている時に、ピニオンをリングギヤから離脱させる方向に働く後退力をF、
ピニオンからリングギヤに伝達される最大トルクをT、
ピニオンとインナチューブとのスプライン結合部、及びピニオンとリングギヤとの噛み合い部における摩擦係数をμ、
リングギヤに噛み合うピニオンの噛み合いピッチ半径をDとすると、
F=T・sinθ・μ/D………………………(1)
上記(1)式によってピニオンに働く後退力Fが求められ、ピニオンに作用するピニオンスプリングの反力をSpとした時に、
F<Sp……………………………………………(2)
上記(2)式の関係が成立する様に、ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、ピニオンをリングギヤ側に付勢するピニオンスプリングの反力Spより、リングギヤに対するピニオンの傾きによって発生する後退力Fの方が小さくなる様に、ピニオンの傾き角度θが設定されているので、ピニオンの傾きによって後退力が生じても、リングギヤに対してピニオンの後退が抑制される。その結果、ピニオンのばたつき(後退と前進とを繰り返す動作)が少なくなるため、騒音を低減できると共に、ピニオン及びリングギヤの摩耗を抑制できる。
(請求項2の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、ピニオンとインナチューブとのスプライン結合部に生じるクリアランスを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とする。
ピニオンが傾く要因の一つには、ピニオンとインナチューブとのスプライン結合部に生じるクリアランスがある。つまり、スプライン結合部のクリアランスが大きくなれば、必然的にピニオンの傾きも大きくなる。そこで、スプライン結合部のクリアランスを調整して、ピニオンの傾きを小さくすることにより、前記(2)式の関係を満足することができる。
(請求項3の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、ピニオンは、インナチューブに対し軸方向へ移動する際に、インナチューブの外周面に案内される筒状のガイド部が設けられ、ピニオンとインナチューブとのスプライン結合部に生じるクリアランスと、インナチューブとガイド部との間に生じるクリアランスとを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とする。
上記の構成では、ピニオンがインナチューブに対し軸方向へ移動する際に、ピニオンに設けられたガイド部がインナチューブの外周面に案内されるので、ピニオンとインナチューブとのスプライン結合部に生じるクリアランスと、インナチューブとガイド部との間に生じるクリアランスとを調整することで、ピニオンの傾きを小さく抑えることができ、前記(2)式の関係を満足することができる。
(請求項4の発明)
請求項2または3に記載したスタータにおいて、出力軸の傾きを小さくできる様に、出力軸の剛性および出力軸を支持するハウジングの剛性が確保されていることを特徴とする。出力軸およびハウジングの剛性が低いと、出力軸の傾きが大きくなる恐れがあり、結果的に、リングギヤに対するピニオンの傾きが大きくなる。従って、出力軸およびハウジングの剛性を高めて、出力軸の傾きを小さくすることにより、リングギヤに対するピニオンの傾きを小さくできる。
(請求項5の発明)
請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、ピニオンスプリングを押し縮めながら、ピニオンがインナチューブに対し軸方向に移動できる最大距離をピニオンストロークと呼ぶ時に、このピニオンストロークは、軸方向に押し出されたピニオンがリングギヤの端面に当接した後、メイン接点が閉じる前に、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されていることを特徴とする。
上記の構成、つまり、リングギヤの端面に当接したピニオンが、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によってリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるためには、ピニオンストロークを比較的大きく設定する必要がある。この場合、ピニオンとリングギヤとの噛み合い幅よりピニオンストロークの方が大きく設定され、且つ前記(2)式の関係が成立していないと、ピニオンに働く後退力Fによってピニオンがリングギヤから外れる可能性が生じる。これに対し、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオンの傾き角度θが設定されていれば、ピニオンストロークを大きく設定しても、ピニオンがリングギヤから外れることはない。
また、リングギヤの端面に当接したピニオンが、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によってリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけのピニオンストロークが設定されていると、ピニオンがリングギヤの端面に当接した後、電磁スイッチによってモータ接点が閉操作される前に、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転して、ピニオンスプリングに蓄えられた反力によりピニオンを押し込んでリングギヤに噛み合わせることができる。この場合、ピニオンとリングギヤとの噛み合い荷重を小さくできる、つまり噛み合いをソフトに行うことができるので、ピニオンおよびリングギヤの摩耗や欠け等を防止できる。
(請求項6の発明)
本発明は、回転力を発生するモータと、このモータの回転がクラッチを介して伝達されるスプラインチューブと、このスプラインチューブの内周にヘリカルスプライン結合または直スプライン結合される出力軸と、スプラインチューブの反モータ方向へ突き出る出力軸の外周に直スプライン結合またはヘリカルスプライン結合され、出力軸に対し軸方向に所定量だけ移動可能に支持されたピニオンと、出力軸とピニオンとの間に配設され、両者間に軸方向の反力を蓄えるピニオンスプリングと、電磁力を発生してプランジャを吸引することにより、モータの通電回路に接続されるメイン接点を閉操作すると共に、プランジャを吸引する電磁力を利用して、ピニオンを出力軸と一体に軸方向に押し出す働きを有する電磁スイッチとを備え、軸方向に押し出されたピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合わされて、モータの回転力をピニオンからリングギヤに伝達するスタータであって、
ピニオンがリングギヤに対し角度θの傾きを有して噛み合っている時に、ピニオンをリングギヤから離脱させる方向に働く後退力をF、
ピニオンからリングギヤに伝達される最大トルクをT、
ピニオンと出力軸とのスプライン結合部、及びピニオンとリングギヤとの噛み合い部における摩擦係数をμ、
リングギヤに噛み合うピニオンの噛み合いピッチ半径をDとすると、
F=T・sinθ・μ/D………………………(1)
上記(1)式によってピニオンに働く後退力Fが求められ、ピニオンに作用するピニオンスプリングの反力をSpとした時に、
F<Sp……………………………………………(2)
上記(2)式の関係が成立する様に、ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、ピニオンをリングギヤ側に付勢するピニオンスプリングの反力Spより、リングギヤに対するピニオンの傾きによって発生する後退力Fの方が小さくなる様に、ピニオンの傾き角度θが設定されているので、ピニオンの傾きによって後退力が生じても、リングギヤに対してピニオンの後退が抑制される。その結果、ピニオンのばたつき(後退と前進とを繰り返す動作)が少なくなるため、騒音を低減できると共に、ピニオン及びリングギヤの摩耗を抑制できる。
(請求項7の発明)
請求項6に記載したスタータにおいて、ピニオンと出力軸とのスプライン結合部に生じるクリアランスを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とする。
ピニオンが傾く要因の一つには、ピニオンと出力軸とのスプライン結合部に生じるクリアランスがある。つまり、スプライン結合部のクリアランスが大きくなれば、必然的にピニオンの傾きも大きくなる。そこで、スプライン結合部のクリアランスを調整して、ピニオンの傾きを小さくすることにより、前記(2)式の関係を満足することができる。
(請求項8の発明)
請求項6に記載したスタータにおいて、ピニオンは、出力軸に対し軸方向へ移動する際に、出力軸の外周面に案内される筒状のガイド部が設けられ、ピニオンと出力軸とのスプライン結合部に生じるクリアランスと、出力軸とガイド部との間に生じるクリアランスとを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とする。
上記の構成では、ピニオンが出力軸に対し軸方向へ移動する際に、ピニオンに設けられたガイド部が出力軸の外周面に案内されるので、ピニオンと出力軸とのスプライン結合部に生じるクリアランスと、出力軸とガイド部との間に生じるクリアランスとを調整することで、ピニオンの傾きを小さく抑えることができ、前記(2)式の関係を満足することができる。
(請求項9の発明)
請求項7または8に記載したスタータにおいて、出力軸の傾きを小さくできる様に、出力軸の剛性および出力軸を支持するハウジングの剛性が確保されていることを特徴とする。出力軸およびハウジングの剛性が低いと、出力軸の傾きが大きくなる恐れがあり、結果的に、リングギヤに対するピニオンの傾きが大きくなる。従って、出力軸およびハウジングの剛性を高めて、出力軸の傾きを小さくすることにより、リングギヤに対するピニオンの傾きを小さくできる。
(請求項10の発明)
請求項6〜9に記載した何れかのスタータにおいて、ピニオンスプリングを押し縮めながら、ピニオンが出力軸に対し軸方向に移動できる最大距離をピニオンストロークと呼ぶ時に、このピニオンストロークは、軸方向に押し出されたピニオンがリングギヤの端面に当接した後、メイン接点が閉じる前に、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されていることを特徴とする。
上記の構成、つまり、リングギヤの端面に当接したピニオンが、メイン接点が閉じる前に、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によってリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるためには、ピニオンストロークを比較的大きく設定する必要がある。この場合、ピニオンとリングギヤとの噛み合い幅よりピニオンストロークの方が大きく設定され、且つ前記(2)式の関係が成立していないと、ピニオンに働く後退力Fによってピニオンがリングギヤから外れる可能性が生じる。これに対し、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオンの傾き角度θが設定されていれば、ピニオンストロークを大きく設定しても、ピニオンがリングギヤから外れることはない。
また、リングギヤの端面に当接したピニオンが、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によってリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけのピニオンストロークが設定されていると、ピニオンがリングギヤの端面に当接した後、電磁スイッチによってモータ接点が閉操作される前に、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転して、ピニオンスプリングに蓄えられた反力によりピニオンを押し込んでリングギヤに噛み合わせることができる。この場合、ピニオンとリングギヤとの噛み合い荷重を小さくできる、つまり噛み合いをソフトに行うことができるので、ピニオンおよびリングギヤの摩耗や欠け等を防止できる。
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
図1はスタータ1の半断面図である。
実施例1に係るスタータ1は、回転力を発生するモータ2と、減速装置3を介してモータ2に駆動される出力軸4と、この出力軸4上にクラッチ5と一体に配置されるピニオン6と、シフトレバー7を介してクラッチ5とピニオン6を反モータ方向(図1の左方向)へ押し出す働きを有すると共に、モータ2の通電回路に接続されるメイン接点(後述する)を開閉する電磁スイッチ8等より構成される。
モータ2は、磁気回路を形成するヨーク9の内周に複数の永久磁石10(界磁コイルでも良い)を配置して構成される界磁と、電機子軸11aに固定された電機子鉄心11bに電機子コイル11cを巻線して構成され、電機子コイル11cに作用する電磁力によって電機子軸11aに回転力を発生する電機子11と、整流子12を介して電機子コイル11cにバッテリ電流を供給するブラシ13等を備える周知の直流電動機である。
減速装置3は、電機子軸11aに形成された太陽歯車14に噛み合う複数の遊星歯車15を有し、この遊星歯車15が太陽歯車14の周囲を自転しながら公転する周知の遊星歯車減速機である。
出力軸4は、電機子軸11aと同一軸線上に配置され、一端側端部が減速装置3を介して電機子軸11aに連結され、他端側端部が軸受16を介してハウジング17に回転自在に支持されている。
ハウジング17には、モータ2と電磁スイッチ8が固定されると共に、エンジン側への取付け面を形成するフランジ部17aが設けられている。
クラッチ5は、出力軸4の外周にヘリカルスプライン結合されるアウタ5aと、出力軸4の外周に軸受18を介して相対回転可能に、且つ軸方向に摺動可能に嵌合するインナチューブ19と、出力軸4からアウタ5aに一方向の回転が伝達された時に、アウタ5aからインナチューブ19へトルク伝達するローラ5b等より構成される。
ピニオン6は、クラッチ5より前方(反モータ方向)へ突き出るインナチューブ19の外周に直スプライン結合され、インナチューブ19に対し軸方向に所定距離(ピニオンストロークSと呼ぶ)だけ移動可能に支持されている。
このピニオン6は、ピニオンスプリング20の反力を受けてインナチューブ19の先端方向(反クラッチ方向)に付勢され、インナチューブ19の先端部に取り付けられたピニオンストッパ21にピニオン6の先端面が当接して位置決めされている。また、ピニオン6の後側(クラッチ5側)には、インナチューブ19に対しピニオン6が軸方向へ移動する際に、インナチューブ19の外周面に案内される筒状のガイド部6a(図2参照)が設けられている。
インナチューブ19のクラッチ近傍には、ピニオン6の後退を規制する後退ストッパ22が突設され、この後退ストッパ22とガイド部6aの後端面との間に上記ピニオンストロークSが設定されている(図2参照)。つまり、ピニオン6は、ピニオンストッパ21に位置決めされる前進位置(図1及び図2に示す位置)と、ガイド部6aの後端面が後退ストッパ22に当接して後退規制される後退位置との間でインナチューブ19に対し軸方向に移動可能に支持されている。
なお、ピニオンストロークSは、軸方向に押し出されたピニオン6がエンジンのリングギヤ23の端面に当接した後、電磁スイッチ8によってメイン接点が閉操作される前に、出力軸4とアウタ5aとのヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、ピニオン6がリングギヤ23に噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されている。
ピニオンスプリング20は、図2に示す様に、ピニオン6の内側に設けられる段差面と、インナチューブ19の外周に設けられる段差面との間に初期荷重を蓄えた状態で配設されている。このピニオンスプリング20は、初期荷重を蓄えた状態から全圧縮するまでの撓み量が前記ピニオンストロークSと同等、あるいはそれ以上に設定されている。
電磁スイッチ8は、始動スイッチ(図示せず)の閉操作により、バッテリから通電されて電磁石を形成する励磁コイル24と、電磁石に吸引されて図1の右方向へ移動するプランジャ25と、このプランジャ25に連動して可動するロッド26と、励磁コイル24への通電が停止して電磁石の吸引力が消滅した時に、プランジャ25を押し戻すためのリターンスプリング27等より構成される。
シフトレバー7は、レバーホルダ28を介して揺動可能に支持され、プランジャ25の動き(図示左右方向への動き)をクラッチ5に伝達する。
メイン接点は、2本の外部端子29、30を介してモータ2の通電回路に接続される一組の固定接点31と、ロッド26の端部に支持されてロッド26と一体に可動する可動接点32とで構成され、可動接点32が一組の固定接点31に当接して両固定接点31が導通することによりメイン接点が閉状態となり、可動接点32が一組の固定接点31から離れて両固定接点31の導通が遮断されることによりメイン接点が開状態となる。
なお、図1に示す電磁スイッチ8は、プランジャ25とロッド26が別体に構成されており、プランジャ25とロッド26との間に所定のストロークギャップが設けられている。従って、プランジャ25は、図1に示す静止位置よりストロークギャップを単独で移動した後、ロッド26の端面に当接してからロッド26と共に移動する。
次に、実施例1に係るスタータ1の特徴を説明する。
ピニオン6がリングギヤ23に対し角度θの傾きを有して噛み合うと、ピニオン6をリングギヤ23から離脱させる方向に後退力Fが働く(図7参照)。
この後退力Fは、ピニオン6からリングギヤ23に伝達される最大トルクをT、
ピニオン6とインナチューブ19とのスプライン結合部、及びピニオン6とリングギヤ23との噛み合い部における摩擦係数をμ、
リングギヤ23に噛み合うピニオン6の噛み合いピッチ半径をDとすると、
下記(1)式によって求めることができる。
F=T・sinθ・μ/D………………………(1)
ここで、ピニオン6を付勢するピニオンスプリング20の反力Spより、ピニオン6に働く後退力Fの方が大きくなると、リングギヤ23からピニオン6が後退して、最悪の場合、リングギヤ23からピニオン6が外れることがある。
そこで、ピニオン6に働く後退力Fとピニオンスプリング20の反力Spとの間に、下記(2)式の関係が成立する様に、ピニオン6の傾き角度θが設定されている。
F<Sp……………………………………………(2)
ピニオン6の傾き角度θは、ピニオン6とインナチューブ19とのスプライン結合部に生じるクリアランスと、ピニオン6に設けられたガイド部6aとインナチューブ19との間に生じるクリアランスとで調整できる。
なお、ピニオン6とインナチューブ19とのスプライン結合部では、例えば、図3(a)大径合わせ、(b)小径合わせ、(c)歯面合わせ等の方法により、クリアランスの調整が可能である。
次に、上記スタータ1の作動を説明する。
始動スイッチの閉操作により、電磁スイッチ8の励磁コイル24に通電されて電磁石が形成されると、その電磁石にプランジャ25が吸引されて、図1の右方向へ移動する。このプランジャ25の移動により、シフトレバー7を介してクラッチ5が反モータ方向へ押し出されるため、クラッチ5と一体にピニオン6が出力軸4上を反モータ方向へ移動(前進)して、リングギヤ23の端面に当接する。
ピニオン6がリングギヤ23の端面に当接した後、更に、ピニオンスプリング20を撓ませながらクラッチ5のみ出力軸4上を前進する。この時、ピニオン6は、クラッチ5が前進した分だけインナチューブ19上を相対的に後退しながら、リングギヤ23に噛み合い可能な位置まで移動(回転)する。これにより、ピニオンスプリング20に蓄えられた反力によって、ピニオン6がリングギヤ23に押し込まれる。
ピニオン6とリングギヤ23との噛み合いが完了した後、メイン接点が閉じてモータ2に通電されると、モータ2のトルクがピニオン6からリングギヤ23に伝達されて、エンジンを駆動する。
(実施例1の効果)
本実施例のスタータ1は、ピニオン6をリングギヤ23側に付勢するピニオンスプリング20の反力Spより、ピニオン6がリングギヤ23に傾いて噛み合った時に生じる後退力Fの方が小さくなる様に、ピニオン6の傾き角度θが設定されているので、リングギヤ23からピニオン6が後退することを抑制できる。特に、ピニオン6とリングギヤ23との噛み合い幅よりピニオンストロークSの方が大きく設定されている場合は、後退力Fがピニオンスプリング20の反力Spを上回ると、ピニオン6が後退してリングギヤ23から外れることがある。これに対し、前記(2)式の関係が成立するために必要なピニオン6の傾き角度θが設定されていれば、ピニオン6の後退が抑制されて、リングギヤ23から外れることはない。その結果、ピニオン6のばたつき(後退と前進とを繰り返す動作)が少なくなるため、騒音を低減できると共に、ピニオン6及びリングギヤ23の摩耗を抑制できる。
図4はスタータ41の半断面図である。
この実施例2に係るスタータ41は、実施例1のスタータ1と比較して、出力軸4に対するモータ2と電磁スイッチ8の位置が異なり、図4に示す様に、出力軸4と同一軸線上に電磁スイッチ8が配置され、出力軸4とモータ2の電機子軸11aとが平行に配置されている。このスタータ41の基本的な構成は、特許文献1に記載されたスタータと略同じである。
出力軸4は、クラッチ5を介してモータ2の回転が伝達されるスプラインチューブ42の内周に挿入され、スプラインチューブ42にヘリカルスプライン結合されている。
ピニオン6は、スプラインチューブ42より反クラッチ方向(図示左方向)へ突き出る出力軸4の端部に直スプライン結合されると共に、ピニオンスプリング20に付勢されて、出力軸4の先端部に取り付けられたピニオンストッパ21に当接して位置決めされている。このピニオン6は、電磁スイッチ8の励磁コイル24に通電されて、プランジャ25が吸引されると、プランジャロッド43の先端に配置されるボール44を介して出力軸4が図示左方向へ押し出されることにより、出力軸4と一体に移動してリングギヤ23に噛み合わされる。
但し、ピニオン6がリングギヤ23の端面に当接した場合は、実施例1と同じく、メイン接点が閉じる前に、ピニオン6がリングギヤ23に噛み合い可能な位置まで回転できる様に、ピニオンストロークとヘリカルスプライン結合部の捩じり角とが設定されている。
また、ピニオン6がリングギヤ23に対し角度θの傾きを有して噛み合った時(図7参照)に、ピニオン6をリングギヤ23から離脱させる方向に後退力Fが働き、この後退力Fが、ピニオンスプリング20の反力Spより小さくなる様に、ピニオン6の傾き角度θが設定されることは、実施例1と同じである。
これにより、ピニオン6に後退力Fが働いても、ピニオン6がリングギヤ23から後退することを抑制できるので、ピニオン6のばたつきにより発生する騒音を低減できると共に、ピニオン6及びリングギヤ23の摩耗を抑制できる。
なお、図4に示すピニオン6には、実施例1に記載したガイド部6aが設けられていないため、ピニオン6と出力軸4とのスプライン結合部に生じるクリアランスを詰めることで、ピニオン6の傾きを小さくすることができる。但し、実施例1の場合と同様に、ピニオン6の後側にガイド部6aを設けることも可能である。
(変形例)
リングギヤ23に対しピニオン6が傾く要因には、スプライン結合部のクリアランス以外にも、出力軸4の剛性不足あるいはハウジング17の剛性不足がある。つまり、出力軸4およびハウジング17の剛性が低いと、ピニオン6がリングギヤ23に噛み合って回転する時に、出力軸4の傾きが大きくなり、結果的に、リングギヤ23に対するピニオン6の傾きが大きくなる。従って、出力軸4およびハウジング17の剛性を高めることで、出力軸4の傾きを小さくして、リングギヤ23に対するピニオン6の傾きを小さく抑えることもできる。また、ピニオン6の傾きを小さくする上で、ハウジング17を取り付けるエンジン側の取付け面の剛性を高めることも有効である。
実施例1に記載したスタータ1は、出力軸4の外周にクラッチ5のアウタ5aがヘリカルスプライン結合され、インナチューブ19の外周にピニオン6が直スプライン結合されているが、ヘリカルスプラインと直スプラインとの関係を逆にしても良い。つまり、出力軸4の外周にアウタ5aを直スプライン結合し、インナチューブ19の外周にピニオン6をヘリカルスプライン結合しても良い。あるいは、出力軸4とアウタ5a、およびインナチューブ19とピニオン6とを、共にヘリカルスプライン結合としても良い。
同様に、実施例2に記載したスタータ41においても、スプラインチューブ42の内周に出力軸4を直スプライン結合し、出力軸4の外周にピニオン6をヘリカルスプライン結合しても良い。あるいは、スプラインチューブ42と出力軸4、および出力軸4とピニオン6とを、共にヘリカルスプライン結合としても良い。
スタータの半断面図である(実施例1)。 ピニオン周辺の半断面図である(実施例1)。 スプライン結合部のクリアランスを示す断面図である。 スタータの半断面図である(実施例2)。 従来技術に係るスタータの部分断面図である。 ピニオンの傾きを示す断面図である(従来技術の説明)。 リングギヤにピニオンが傾いて噛み合った状態を示す図である。
符号の説明
1 スタータ(実施例1)
2 モータ
4 出力軸
5 クラッチ
5a アウタ
6 ピニオン
6a ガイド部
8 電磁スイッチ
17 ハウジング
18 軸受
19 インナチューブ
20 ピニオンスプリング
23 リングギヤ
25 プランジャ
31 固定接点(メイン接点)
32 可動接点(メイン接点)
41 スタータ(実施例2)
42 スプラインチューブ
S ピニオンストローク

Claims (10)

  1. 回転力を発生するモータと、
    このモータに駆動されて回転する出力軸と、
    この出力軸の外周にヘリカルスプライン結合または直スプライン結合されるアウタ、および前記出力軸の外周に軸受を介して相対回転可能に、且つ軸方向に摺動可能に嵌合するインナチューブを有し、前記出力軸から前記アウタに一方向の回転が伝達された時に、前記アウタから前記インナチューブへトルク伝達するクラッチと、
    前記インナチューブの外周に直スプライン結合またはヘリカルスプライン結合され、前記インナチューブに対し軸方向に所定量だけ移動可能に支持されたピニオンと、
    前記インナチューブと前記ピニオンとの間に配設され、両者間に軸方向の反力を蓄えるピニオンスプリングと、
    電磁力を発生してプランジャを吸引することにより、前記モータの通電回路に接続されるメイン接点を閉操作すると共に、前記プランジャを吸引する電磁力を利用して、前記ピニオンを前記クラッチと一体に軸方向に押し出す働きを有する電磁スイッチとを備え、
    軸方向に押し出された前記ピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合わされて、前記モータの回転力を前記ピニオンから前記リングギヤに伝達するスタータであって、
    前記ピニオンが前記リングギヤに対し角度θの傾きを有して噛み合っている時に、前記ピニオンを前記リングギヤから離脱させる方向に働く後退力をF、
    前記ピニオンから前記リングギヤに伝達される最大トルクをT、
    前記ピニオンと前記インナチューブとのスプライン結合部、及び前記ピニオンと前記リングギヤとの噛み合い部における摩擦係数をμ、
    前記リングギヤに噛み合う前記ピニオンの噛み合いピッチ半径をDとすると、
    F=T・sinθ・μ/D………………………(1)
    上記(1)式によって前記ピニオンに働く後退力Fが求められ、
    前記ピニオンに作用する前記ピニオンスプリングの反力をSpとした時に、
    F<Sp……………………………………………(2)
    上記(2)式の関係が成立する様に、前記ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とするスタータ。
  2. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオンと前記インナチューブとのスプライン結合部に生じるクリアランスを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要な前記ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とするスタータ。
  3. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオンは、前記インナチューブに対し軸方向へ移動する際に、前記インナチューブの外周面に案内される筒状のガイド部が設けられ、
    前記ピニオンと前記インナチューブとのスプライン結合部に生じるクリアランスと、前記インナチューブと前記ガイド部との間に生じるクリアランスとを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要な前記ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とするスタータ。
  4. 請求項2または3に記載したスタータにおいて、
    前記出力軸の傾きを小さくできる様に、前記出力軸の剛性および前記出力軸を支持するハウジングの剛性が確保されていることを特徴とするスタータ。
  5. 請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、
    前記ピニオンスプリングを押し縮めながら、前記ピニオンが前記インナチューブに対し軸方向に移動できる最大距離をピニオンストロークと呼ぶ時に、
    このピニオンストロークは、軸方向に押し出された前記ピニオンが前記リングギヤの端面に当接した後、前記メイン接点が閉じる前に、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されていることを特徴とするスタータ。
  6. 回転力を発生するモータと、
    このモータの回転がクラッチを介して伝達されるスプラインチューブと、
    このスプラインチューブの内周にヘリカルスプライン結合または直スプライン結合される出力軸と、
    前記スプラインチューブの反モータ方向へ突き出る前記出力軸の外周に直スプライン結合またはヘリカルスプライン結合され、前記出力軸に対し軸方向に所定量だけ移動可能に支持されたピニオンと、
    前記出力軸と前記ピニオンとの間に配設され、両者間に軸方向の反力を蓄えるピニオンスプリングと、
    電磁力を発生してプランジャを吸引することにより、前記モータの通電回路に接続されるメイン接点を閉操作すると共に、前記プランジャを吸引する電磁力を利用して、前記ピニオンを前記出力軸と一体に軸方向に押し出す働きを有する電磁スイッチとを備え、
    軸方向に押し出された前記ピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合わされて、前記モータの回転力を前記ピニオンから前記リングギヤに伝達するスタータであって、
    前記ピニオンが前記リングギヤに対し角度θの傾きを有して噛み合っている時に、前記ピニオンを前記リングギヤから離脱させる方向に働く後退力をF、
    前記ピニオンから前記リングギヤに伝達される最大トルクをT、
    前記ピニオンと前記出力軸とのスプライン結合部、及び前記ピニオンと前記リングギヤとの噛み合い部における摩擦係数をμ、
    前記リングギヤに噛み合う前記ピニオンの噛み合いピッチ半径をDとすると、
    F=T・sinθ・μ/D………………………(1)
    上記(1)式によって前記ピニオンに働く後退力Fが求められ、
    前記ピニオンに作用する前記ピニオンスプリングの反力をSpとした時に、
    F<Sp……………………………………………(2)
    上記(2)式の関係が成立する様に、前記ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とするスタータ。
  7. 請求項6に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオンと前記出力軸とのスプライン結合部に生じるクリアランスを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要な前記ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とするスタータ。
  8. 請求項6に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオンは、前記出力軸に対し軸方向へ移動する際に、前記出力軸の外周面に案内される筒状のガイド部が設けられ、
    前記ピニオンと前記出力軸とのスプライン結合部に生じるクリアランスと、前記出力軸と前記ガイド部との間に生じるクリアランスとを調整することで、前記(2)式の関係が成立するために必要な前記ピニオンの傾き角度θが設定されていることを特徴とするスタータ。
  9. 請求項7または8に記載したスタータにおいて、
    前記出力軸の傾きを小さくできる様に、前記出力軸の剛性および前記出力軸を支持するハウジングの剛性が確保されていることを特徴とするスタータ。
  10. 請求項6〜9に記載した何れかのスタータにおいて、
    前記ピニオンスプリングを押し縮めながら、前記ピニオンが前記出力軸に対し軸方向に移動できる最大距離をピニオンストロークと呼ぶ時に、
    このピニオンストロークは、軸方向に押し出された前記ピニオンが前記リングギヤの端面に当接した後、前記メイン接点が閉じる前に、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されていることを特徴とするスタータ。
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