JP2007100875A - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】防振すべき振動入力時において所期の防振性能を高い信頼性をもって発揮できると共に、衝撃的な大荷重振動が入力された際の異音や衝撃の軽減を有利に実現することが出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供すること。
【解決手段】オリフィス通路64によって連通された受圧室58と平衡室60を短絡させる短絡路66を、オリフィス通路64よりも短い流路長さで形成された短絡路66を、その一方の開口部が仕切部材56の受圧室58側の表面において外周部分に開口するように設けて、受圧室58と平衡室60を短絡路66を通じて短絡可能とすると共に、短絡路66の該一方の開口部を本体ゴム弾性体16の大径側端面の外周部分によって覆蓋することにより、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて短絡路66を連通状態と閉塞状態に切り換える弁体を構成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、例えば自動車用のエンジンマウント等として好適に採用され得る流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振装置として、内部に封入された非圧縮性流体の共振作用などの流動作用に基づく防振効果を利用した流体封入式の防振装置が知られている。かかる防振装置は、一般に、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室にそれぞれ水等の非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた構造とされている。
そして、このような流体封入式防振装置は、オリフィス通路のチューニング周波数域で特に有効な防振効果を得ることが出来る。それ故、例えば、アイドリング振動やエンジンシェイク等の特定周波数域の振動に対して優れた防振性能が要求される自動車用のエンジンマウント等への適用が検討されている。
ところで、本発明者が確認したところ、従来構造の流体封入式防振装置では、第一の取付部材と第二の取付部材の間に大きな振動荷重が入力されると、防振装置から異音や振動が発せられる場合があることがわかった。具体的には、流体封入式防振装置をエンジンマウントとして採用した自動車では、波状路やスピードブレーカ等を走行した場合に、車室内で乗員が体感できる程の異音や衝撃を発するおそれがある。
このような異音や振動の発生は、衝撃的な振動の入力時において、オリフィス通路を通じての受圧室と平衡室の間での流体流動が追従しきれず、受圧室内に瞬間的に著しい負圧が生ぜしめられることにより、封入流体からの溶存気体の遊離や蒸発でキャビテーションと解せられる気泡が形成されることに起因すると考えられる。そして、かかる気泡は、受圧室内で成長してから潰れる時に大きな衝撃を発生する。これが水撃圧となって、第一の取付部材や第二の取付部材に伝播し、自動車のボデーなどに伝達されることによって、前述の如き問題となる異音や振動が発生すると考えられる。
このような問題に対処するために、例えば、特許文献1(特公平7−107416号公報)には、受圧室と平衡室を仕切る仕切ゴム膜を設けると共に、この仕切ゴム膜に切込みを形成した構造が提案されている。このような構造では、受圧室と平衡室の圧力差が大きくなった場合に、仕切ゴム膜が大きく弾性変形することに伴い、切込みが開口する。これにより、受圧室と平衡室の圧力差を解消することが可能とされている。
しかしながら、このような特許文献1において提案されている構造では、受圧室に負圧が生じた場合だけでなく、正圧が生じた場合でも仕切ゴム膜の切込みが開口することから、振動入力時に受圧室と平衡室の相対的な圧力変動を十分に得ることが困難となる。その結果、オリフィス通路を通じての流体流動量を確保し難くなって、オリフィス通路による所期の防振効果が十分に発揮され難くなってしまうという問題があった。
そこで、本出願人は、先の出願である特許文献2(特開2003−148548号公報)において、リップ状のゴム弾性体による弁手段を採用することによって、設定負圧よりも大きな負圧が受圧室に生ぜしめられた場合に、仕切部材に形成された短絡通路によってオリフィス通路を受圧室に短絡させる構造を提案した。この先願の構造によれば、弁手段が一方向弁として機能することにより、受圧室に大きな正圧が発生しても圧力の逃げが防止される。従って、オリフィス通路を通じての流体流動量を確保しつつ、受圧室における過大な負圧の発生を回避してキャビテーションによると思われる上述の如き異音や衝撃の発生を抑えることが可能となるのである。
ところが、本発明者が更なる検討を加えた結果、特許文献2に示された流体封入式防振装置では、未だ十分でない場合のあることがわかった。即ち、特許文献2に図示された弁手段は、リップ状のゴム片によって構成されていることから、その肉厚寸法や大きさ、ゴム材料等の設定によっては、開閉作動を繰り返すことにより変形や変質,破損といった不具合が生じるおそれがあり、十分な耐久性の確保が困難となる場合があった。また、かかる弁手段を構成するゴム片の肉厚寸法や大きさ、ゴム材料等の設定によっては、受圧室に著しく大きな正圧が生ぜしめられた場合に、弁手段が短絡通路側に押し込まれるように弾性変形せしめられて復帰しなくなって、短絡通路が常時連通状態となってしまうおそれもある。
なお、特許文献2に記載の弁手段において、かくの如き問題に対処するために、充分に厚肉のゴム片で弁手段を構成することも考えられる。しかし、弁手段を構成するゴム片を厚肉にすると、ばね定数が大きくなって変形し難くなり、受圧室の負圧を有効に且つ速やかに解消することが難しくなることから、現実には採用が難しい。
特公平7−107416号公報 特開2003−148548号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、防振すべき振動入力時において所期の防振性能を高い信頼性をもって発揮できると共に、衝撃的な大荷重振動が入力された際の異音や衝撃の軽減を有利に実現することが出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(本発明の第一の態様)
本発明の第一の態様は、第一の取付部材を、円筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に配すると共に、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結せしめて該第二の取付部材の該一方の開口部を流体密に閉塞する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を可撓性膜で流体密に閉塞すると共に、該第二の取付部材に仕切部材を挿入して嵌着固定することにより、該仕切部材の一方の側には該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成し、該仕切部材の他方の側には該可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路を該仕切部材を利用して形成した流体封入式防振装置において、前記受圧室と前記平衡室を前記オリフィス通路よりも短い流路長さで連通する短絡路を形成して、該短絡路の該受圧室への開口を該仕切部材における該受圧室側の面の外周部分に位置せしめる一方、前記本体ゴム弾性体における該仕切部材との対向面に中央凹所を形成して該中央凹所の開口周縁部を該仕切部材における該受圧室側の面の外周部分に重ね合わせることにより、そこに開口せしめられた該短絡路の該受圧室への開口を閉塞状態とすると共に、該受圧室と該平衡室の間に過大な圧力差が生ぜしめられた際に該本体ゴム弾性体の弾性変形に基づいて該短絡路を連通状態とする弁体を構成したことを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、中央部分が第一の取付部材に固着されると共に外周面が第二の取付部材に固着された本体ゴム弾性体の外周部分を利用して、短絡路を開閉する弁体が構成されている。より詳しくは、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室において、本体ゴム弾性体の外周部分を仕切部材に重ね合わせることにより、仕切部材の受圧室側面の外周部分に開口して形成された短絡路を閉塞する弁体が構成されている。
これにより、振動荷重の入力時における本体ゴム弾性体の弾性変形を巧く利用して、弁体によるオリフィス通路の遮断状態と連通状態の切換制御を有利に為し得た。即ち、かかる弁体によれば、受圧室に正圧が生ぜしめられた場合には短絡路を遮断状態に安定して保持せしめることが出来ると共に、受圧室に大きな負圧が生ぜしめられた場合には短絡路を速やかに連通状態とすることが出来る。その結果、振動入力時において、受圧室には大きな正圧が有効に生ぜしめられてオリフィス通路を通じての流体流動量が充分に確保されることにより有効な防振効果が発揮されると共に、受圧室における過大な負圧の発生が回避されてキャビテーションによると思われる異音や衝撃が効果的に抑えられることとなる。
蓋し、第一の取付部材と第二の取付部材の間にバウンド方向(第一及び第二の取付部材が軸方向で相互に接近する方向)の荷重が及ぼされて受圧室に正圧が生ぜしめられた場合には、本体ゴム弾性体に対して、第二の取付部材の軸方向内方に押し込む方向の圧縮力が作用せしめられる。その結果、弁体を構成する本体ゴム弾性体の外周部分が、仕切部材における短絡路の開口部に対して押し付けられる。それ故、受圧室に大きな正圧が発生しても、短絡路が遮断状態に強固に維持されて、短絡路を通じての受圧室から平衡室への圧力の逃げが防止されるのである。
一方、第一の取付部材と第二の取付部材の間にリバウンド方向(第一及び第二の取付部材が軸方向で相互に離隔する方向)の荷重が及ぼされて受圧室に負圧が生ぜしめられた場合には、本体ゴム弾性体に対して、第二の取付部材の軸方向外方に引っ張る方向の引張力が作用せしめられる。その結果、弁体を構成する本体ゴム弾性体の外周部分では、仕切部材における短絡路の開口部に対する押付力が軽減され或いは解除せしめられる。それ故、受圧室に過大な負圧が発生すると、短絡路の受圧室側への開口を覆蓋する本体ゴム弾性体の外周部分が、平衡室と受圧室の圧力差によって比較的に容易に開口せしめられて、短絡路が連通状態とされる。而して、受圧室の負圧が短絡路を通じての流体流動で速やかに解消されて、過大な負圧の発生が回避されることにより、キャビテーションによると思われる異音や衝撃が防止され得るのである。
しかも、かかる弁体では、上述のように入力振動によって本体ゴム弾性体に及ぼされる圧縮応力と引張応力を利用して、短絡路を遮断状態と連通状態に切り換える弁機能が効率的に発揮され得る。それ故、例えば前記特許文献2に記載の如き作用流体圧による弁自体の弾性変形のみによって弁機能を発揮するゴム片からなる弁体に比して、短絡路の開閉制御機能を充分に確保しつつ、本体ゴム弾性体の外周部分によって充分な部材厚寸法で弁体が構成されることとなる。その結果、弁体の耐久性が極めて有利に確保され得ると共に、弁体が短絡路の開口部内に入り込んで作動不良になるようなことがなく、安定した弁機能が高い信頼性をもって発揮され得るのである。
(本発明の第二の態様)
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記弁体を構成する前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部が、前記仕切部材における前記短絡路の前記受圧室への開口部分に対して押し付けられて弾性変形せしめられた状態で重ね合わされていることを、特徴とする。
本態様においては、防振装置の装着前の状態で、本体ゴム弾性体のばね特性を利用して、短絡路が弁体によって閉塞状態に保持され得る。それ故、例えば、装着状態下でバウンド方向の静的な初期荷重が及ぼされない場合でも、短絡路の不必要な開口が抑えられる。また、例えば、本体ゴム弾性体のばね特性を利用した弁体の仕切部材への押し付け力を調節することにより、受圧室にある程度の負圧が発生しても短絡路を遮断状態に維持せしめることで受圧室の圧力変動をより効率的に生ぜしめることも可能となる。これにより、オリフィス通路を通じての流体流動量の更なる確保とそれによる防振性能の向上を図ることが出来る。
(本発明の第三の態様)
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る流体封入式防振装置において、前記弁体を構成する前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部が、該中央凹所の開口部から前記仕切部材に向かって軸方向に延びる円筒形状とされていることを、特徴とする。
本態様では、本体ゴム弾性体において円筒形状の部分を設定したことにより、本体ゴム弾性体の中央凹所と仕切部材との軸方向対向面間距離を大きく設定して、受圧室の容積を有利に確保することが可能となる。また、本体ゴム弾性体において円筒形状の部分の軸方向長さを適当に調節することで、振動入力時に本体ゴム弾性体に生ぜしめられる弾性変形が、弁体を構成する部分に対して及ぼされる程度を調節することが可能となる。例えば、本体ゴム弾性体に及ぼされる引張応力の弁体構成部分への伝達を軽減することで、ある程度の引張応力が本体ゴム弾性体に生じた場合でも、短絡路の弁体による遮断状態への維持がより安定して実現可能となる。
(本発明の第四の態様)
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記本体ゴム弾性体における前記中央凹所の開口周縁部に対して前記仕切部材の外周部分が重ね合わされることにより、該仕切部材の前記第二の取付部材に対する軸方向の組付位置が規定されていることを、特徴とする。
本態様においては、円筒状を有する第二の取付部材に嵌め込まれて組み付けられる仕切部材が、短絡路の弁体を構成する本体ゴム弾性体の端面に対して直接に当接されることで、第二の取付部材の軸方向で位置決めされることとなる。それ故、例えば第二の取付部材に形成した係止突起など、本体ゴム弾性体とは別の部材で仕切部材を軸方向に位置決めする場合に比して、本体ゴム弾性体の成形時の寸法精度に多少の誤差があった場合等でも、仕切部材の本体ゴム弾性体への当接状態を一層安定して得ることが可能となる。
(本発明の第五の態様)
本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記弁体を構成する前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部が、その外周面において円筒状の前記第二の取付部材の内周面に加硫接着されていることを、特徴とする。
本態様においては、本体ゴム弾性体において弁体を構成する部分が、その外周面において第二の取付部材に加硫接着されることで変形拘束されている。それ故、弁体を仕切部材に対して一層大きな押付力をもって重ね合わせることが出来る。また、振動荷重入力に際しての本体ゴム弾性体の弾性変形が、弁体を構成する部分にまで必要以上に及ぼされることを、その外周面に加硫接着された第二の取付部材で防止することが出来る。それ故、弁体による短絡路の連通/遮断制御が、一層安定して実現可能となる。
(本発明の第六の態様)
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係る流体封入式防振装置において、前記仕切部材の前記受圧室側の面に重ね合わされる前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部に対して、更に軸方向に延び出す薄肉のシールゴム層が一体形成されていると共に、該シールゴム層が前記第二の取付部材の内周面に加硫接着されており、該シールゴム層によって該仕切部材が該第二の取付部材に対して流体密に嵌着されていることを、特徴とする。
本態様では、仕切部材の外周面と第二の取付部材との嵌着面において、シールゴム層により高度な流体密性が実現される。それ故、かかる嵌着面を通じての、受圧室と平衡室の不必要な短絡が防止されて、目的とする防振性能の更なる安定化が実現され得る。
(本発明の第七の態様)
本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れか一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記オリフィス通路が、前記仕切部材の外周部分を周方向に延びるように形成されていると共に、該オリフィス通路における前記受圧室側の壁部を貫通して該オリフィス通路を該受圧室に連通せしめる通孔が、該オリフィス通路の該受圧室への開口よりも前記平衡室への開口に近い位置に形成されており、該オリフィス通路と該通孔によって前記短絡路が構成されていることを、特徴とする。
本態様においては、受圧室と平衡室を短絡する短絡路を、オリフィス通路を部分的に利用して簡単な構造で形成することが可能となる。特に、通孔の位置を、オリフィス通路における平衡室への開口に近い位置に形成したことにより、受圧室における過大な負圧を一層速やかに解消し得る短絡路が有利に形成され得る。
なお、かかる第七の態様は、特に前述の第六の態様と組み合わせて有利に採用される。即ち、例えば、仕切部材の外周面に開口して仕切部材の周方向に延びる周溝を形成し、この周溝の開口を、シールゴム層を介して、第二の取付部材で流体密に覆蓋することにより、仕切部材の外周部分を周方向に延びるオリフィス通路を、有利に形成することが出来る。更に、このようなオリフィス通路では、その受圧室側の壁部における通孔が、該壁部の外周縁部を切欠く構造で有利に形成され得る。このような切欠構造の通孔は、例えば仕切部材を樹脂成形する場合に、その成形型の構造を単純化できて、仕切部材の製造を容易となし得る。また、かくの如き切欠構造の通孔を採用した場合でも、第六の態様において、弁体を形成する本体ゴム弾性体とシールゴム層が連続して一体形成されていることにより、かかる通孔を安定して遮断状態に維持し得る弁体が、シールゴム層と協働して有利に実現可能となる。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置にあっては、受圧室と平衡室を短絡せしめる短絡路を連通状態と遮断状態で切り換える弁体が、本体ゴム弾性体を利用した特定構造をもって形成されていることにより、振動入力時における本体ゴム弾性体の弾性変形を利用して、目的とする弁機能を有利に得ることが出来る。
特に、バウンド荷重の入力時には、本体ゴム弾性体の圧縮変形を利用して短絡路を遮断状態に維持することで、受圧室に大きな正圧を生ぜしめて、オリフィス通路による防振効果を効果的に発揮させることが出来る。一方、リバウンド荷重の入力時には、本体ゴム弾性体の引張変形を利用して短絡路の連通状態が比較的容易に許容されるようにすることで、受圧室における過大な負圧の発生を回避して異音や衝撃の効果的な防止が図られ得る。
しかも、このように本体ゴム弾性体の引張変形を利用して、短絡路の連通状態が比較的容易に許容されることから、本体ゴム弾性体における弁体の形成部分の肉厚寸法も充分に大きく設定することが出来る。それ故、かかる弁体の耐久性が有利に確保されると共に、弁体による短絡路の連通/遮断の作動が安定して発現され得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,図2には、本発明の第一の実施形態としての流体封入式防振装置である自動車用のエンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、図1における上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、逆向きの略円錐台ブロック形状を有していると共に、大径側端面から上方に向かって突出する螺着部18が一体形成されており、この螺着部18に設けられたねじ穴20によって、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。また、第一の取付金具12の大径側端部外周面には、径方向外方に向かって突出する鍔状のストッパ部22が一体形成されている。
また、第二の取付金具14は、薄肉大径の略円筒形状を呈している。また、第二の取付金具14の軸方向上方の開口部分には、軸方向外方に向かって次第に拡開するテーパ状部24が設けられていると共に、このテーパ状部24の開口周縁部には、径方向外方に向かって広がるフランジ状部26が一体形成されている。更に、第二の取付金具14の軸方向下端部には、軸方向下方に向かって延びるかしめ部28が一体形成されている。
そして、第二の取付金具14と略同一中心軸上で、軸方向上方に離隔して第一の取付金具12が配置されていると共に、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向面間に本体ゴム弾性体16が介装されており、本体ゴム弾性体16によって第一の取付金具12と第二の取付金具14が相互に連結されている。この本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状とされており、軸方向上方に向かって次第に小径化するテーパ円筒形状の外周面を有している。また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、軸方向下方に向かって開口する逆向きの略すり鉢状とされた中央凹所30が形成されている。なお、本実施形態では、中央凹所30の開口周縁部(本体ゴム弾性体16の下端外周部分)が軸方向で延びる略円筒形状とされている。また、中央凹所30は、本体ゴム弾性体16において、本体ゴム弾性体16と後述する仕切部材(56)の対向面間に形成されている。
そして、この本体ゴム弾性体16の小径側端面から軸方向下方へ差し込まれた状態で、第一の取付金具12が加硫接着されており、かかる本体ゴム弾性体16の小径側端面が第一の取付金具12のストッパ部22の下面に対して重ね合わされて加硫接着されている。更に、第一の取付金具12のストッパ部22には、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム32が略全面を覆うように固着されている。一方、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14が、そのテーパ状部24の内周面において重ね合わせられて加硫接着されている。更に、中央凹所30の開口周縁部の外周面は、略全周に亘って第二の取付金具14の内周面に固着されており、中央凹所30の開口周縁部の弾性変形量が第二の取付金具14によって制限されている。要するに、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、第一の取付金具12の外周面と第二の取付金具14の内周面に対して、それぞれ加硫接着された一体加硫成形品とされているのである。
また、この一体加硫成形品においては、第二の取付金具14の軸方向上側の開口が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されていると共に、第二の取付金具14の内周面が略全面に亘って本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層34によって覆われている。このシールゴム層34は、薄肉の円筒形状であって、本体ゴム弾性体16の大径側端部(中央凹所30の開口周縁部)から軸方向下方に向かって延び出すように設けられて、シールゴム層34の外周面が第二の取付金具14の内周面に対して加硫接着されている。
また、シールゴム層34は、中央凹所30の開口周縁部に比して軸直角方向で薄肉とされていると共に、シールゴム層34と中央凹所30の開口周縁部が略同一の外径寸法とされていることから、中央凹所30の開口周縁部とシールゴム層34の境界部分において、段差部36が略全周に亘って連続的に形成されている。
さらに、第二の取付金具14の軸方向上方には、ストッパ筒金具38が取り付けられている。このストッパ筒金具38は、略円筒形状を呈しており、その軸方向下端部には、軸方向下方に向かって次第に拡開するテーパ状部を介して、軸方向下方に向かって延びる略円筒形状のかしめ部40が一体形成されている。また、ストッパ筒金具38の軸方向上端部には、軸直角方向内方に向かって延び出す略円環板形状のストッパ当接部42が一体形成されている。そして、ストッパ筒金具38は、第二の取付金具14の軸方向上側から被せられて、第二の取付金具14のフランジ状部26がストッパ筒金具38のかしめ部40でかしめ固定されることにより、第二の取付金具14に固定されている。また、ストッパ筒金具38の装着状態において、ストッパ筒金具38におけるストッパ当接部42が、第一の取付金具12におけるストッパ部22に対して軸方向上方に離隔して対向位置せしめられている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に大きな振動荷重が入力された際に、ストッパ部22が緩衝ゴム32を介してストッパ当接部42に当接することにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14のリバウンド方向(軸方向離隔方向)での相対変位量を制限するリバウンドストッパ機構が構成されている。
また、第二の取付金具14には、アウタブラケット44が外挿状態で取り付けられている。アウタブラケット44は、略円筒形状を呈しており、その軸方向一方の端部(軸方向上方の端部)に、軸直角方向外方に広がるフランジ部46が一体形成されている一方、軸方向他方の端部(軸方向下方の端部)には、軸直角方向外方に広がるように形成されて、ボルト孔を有する取付フランジ部48が一体形成されている。更に、アウタブラケット44が第二の取付金具14に外挿されると共に、フランジ部46が第二の取付金具14のフランジ状部26と重ね合わせられて、かしめ部40でかしめ固定されることにより、アウタブラケット44が第二の取付金具14に固定されている。そして、アウタブラケット44の取付フランジ部48が図示しない車両ボデーにボルト固定されることにより、第二の取付金具14がアウタブラケット44を介して車両ボデーに取り付けられるようになっている。
また、第二の取付金具14の軸方向下方の開口部には、可撓性膜としてのダイヤフラム50が配設されている。このダイヤフラム50は、変形容易なように撓みを持たせた略円板形状を呈する薄肉のゴム膜で形成されており、その外周縁部には略円環形状を有するリング金具52が加硫接着されている。そして、このリング金具52が第二の取付金具14の下端開口部に内挿されて、かしめ部28でかしめ固定されることにより、ダイヤフラム50が第二の取付金具14に固定されている。これにより、第二の取付金具14の軸方向下方の開口がダイヤフラム50によって流体密に覆蓋されており、第二の取付金具14の軸方向両側をそれぞれ覆蓋する本体ゴム弾性体16とダイヤフラム50の軸方向対向面間において、非圧縮性流体が封入された流体室54が形成されている。なお、流体室54に封入される非圧縮性流体としては,水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いは、それらを混合したものなどが好適に採用される。特に、封入流体としては、後述するオリフィス通路を通じての流体の共振作用に基づく防振効果を有利に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
さらに、第二の取付金具14には、仕切部材56が組み付けられている。仕切部材56は、全体として略厚肉円板形状を有しており、第二の取付金具14に対して略同軸状に内挿されて嵌着固定されている。また、仕切部材56は、その外周面がシールゴム層34を介して第二の取付金具14の内周面に対して流体密に密着せしめられており、流体室54内で軸直角方向に広がるように収容配置されている。そして、このような仕切部材56の第二の取付金具14に対する組付け状態下において、流体室54が仕切部材56の上下に二分されており、仕切部材56の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変動が惹起せしめられる受圧室58が形成されている一方、仕切部材56の軸方向下側には、壁部の一部がダイヤフラム50で構成されて、ダイヤフラム50の変形に基づく容積変化が容易に許容される平衡室60が形成されている。なお、仕切部材56は、第二の取付金具14の内周側に収容配置されると共に、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、第二の取付金具14に対して固定的に取り付けられている。更に、第二の取付金具14と仕切部材56の間には、シールゴム層34が挟圧された状態で配設されていることから、仕切部材56の外周面と第二の取付金具14の内周面がシールゴム層34を介して密着せしめられており、仕切部材56が第二の取付金具14に対して流体密に嵌着されている。これにより、第二の取付金具14と仕切部材56の対向面間を通じて受圧室58と平衡室60の間で不必要な短絡が生じることを有効に防ぐことが出来る。更にまた、仕切部材56の上面外周縁部が全周に亘って本体ゴム弾性体16の段差部36(中央凹所30の開口周縁部)に軸方向で押し付けられた状態で重ね合わされていると共に、仕切部材56の下面外周縁部が全周に亘ってリング金具52の上端面に軸方向で重ね合されており、それら本体ゴム弾性体16の段差部36とリング金具52の軸方向間に仕切部材56が軸方向で位置決めされて配設されている。
また、仕切部材56には、外周面に開口して周方向に延びる凹溝62が略3/4周の長さで形成されており、この凹溝62の開口がシールゴム層34を介して第二の取付金具14で流体密に閉塞されることにより、トンネル状の流路が形成されている。また、このトンネル状の流路の両端部は、それぞれ受圧室58と平衡室60に接続されており、かかる流路によって、仕切部材56の外周部分を周方向に延びて、受圧室58と平衡室60を相互に連通するオリフィス通路64が仕切部材56を利用して形成されている。これにより、オリフィス通路64を通じて受圧室58と平衡室60が常時連通状態とされており、オリフィス通路64を通じて受圧室58と平衡室60の間で封入流体の流動が生ぜしめられるようになっている。なお、特に本実施形態では、オリフィス通路64の通路長や通路断面積を調節することによって、オリフィス通路64を通じて流動せしめられる流体の共振作用などに基づく高減衰効果が、エンジンシェイクに相当する低周波数域の振動入力に対して発揮されるようにされている。
また、仕切部材56には、軸方向に延びる短絡溝65が形成されている。短絡溝65は、仕切部材56の外周面に開口するように形成されており、仕切部材56の第二の取付金具14への組付け状態において、仕切部材56の外周面側における短絡溝65の開口が、シールゴム層34を介して第二の取付金具14で流体密に覆蓋されている。これにより、仕切部材56とシールゴム層34の軸直角方向対向面間を軸方向に延びるトンネル状の流路が形成されており、かかる流路によって本実施形態における短絡路としての短絡流路66が設けられている。
本実施形態における短絡流路66は、周方向に所定の幅寸法で形成されて軸方向にオリフィス通路64よりも短い流路長さで延びるように形成された通孔であって、一方の端部が仕切部材56の上面(受圧室58側表面)外周縁部において受圧室58に開口せしめられていると共に、他方の端部がオリフィス通路64の長さ方向中間の一部に開口せしめられており、受圧室58とオリフィス通路64の長さ方向中間の一部が、オリフィス通路64の上壁部の一部を貫通して形成された短絡流路66によって連通されている。また、短絡流路66の他方の端部がオリフィス通路64の長さ方向中央よりも平衡室60側の開口部寄りに偏倚した位置に開口形成されており、特に本実施形態では、オリフィス通路64の平衡室60側の開口部付近において凹溝62の上側壁部をマウント軸方向で貫通するように短絡流路66が形成されている。要するに、本実施形態における短絡流路66は、オリフィス通路64の一部を介して受圧室58と平衡室60を短絡するように設けられている。
さらに、仕切部材56の受圧室58側の面(上面)の外周面に重ね合せられた中央凹所30の開口周縁部(本体ゴム弾性体16の下端外周縁部に設けられた段差部36)によって、短絡流路66の受圧室58側の開口部が流体密に覆蓋されており、本体ゴム弾性体16の初期弾性変形量で短絡流路66が遮断状態に保持されている。なお、本実施形態では、初期弾性変形量で本体ゴム弾性体16が仕切部材56の受圧室58側表面に押し付けられて所定量だけ圧縮変形せしめられており、短絡流路66が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。これにより、本実施形態における弁体が本体ゴム弾性体16(段差部36)によって構成されている。
ここにおいて、本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10では、自動車への装着状態下で第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に略上下方向の振動が入力されると、受圧室58と平衡室60の間に相対的な圧力差が生ぜしめられることに基づいて、それら両室58,60間において、オリフィス通路64を通じての流体流動が生ぜしめられることとなる。特に、本実施形態では、オリフィス通路64がエンジンシェイク等の低周波数域にチューニングされており、防振対象である低周波大振幅振動が入力された際には、短絡流路66が本体ゴム弾性体16(段差部36)によって流体密に閉塞された状態で保持されるようになっていることから、オリフィス通路64を通じての流体流動量を有効に得ることが出来て、流動せしめられる流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等の低周波大振幅振動に対して、有効な防振効果が発揮されることとなる。なお、特に低周波大振幅振動の入力によって受圧室58に正圧が生ぜしめられる場合には、第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向で相対的に接近するように変位せしめられることから、本体ゴム弾性体16が軸方向で圧縮変形せしめられることとなる。これにより、本体ゴム弾性体16の有する弾性力によって段差部36が仕切部材56の上面、即ち、短絡流路66の受圧室58側の開口部に対して軸方向で強く押圧された状態とされて、より有利に短絡流路66の流体密な閉塞状態を実現することが出来るようになっている。従って、本実施形態におけるエンジンマウント10では、受圧室58に正圧が生ぜしめられる場合には、特に安定して所期の防振性能を発揮することが出来るのである。
一方、自動車のクランキングや急加減速等に際して、エンジンマウント10に衝撃的な大荷重振動が入力されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14が離隔方向に相対変位せしめられた場合には、受圧室58に過大な負圧が生ぜしめられることとなる。特に、受圧室58内の負圧値が予め設定された受圧室58内の負圧値(設定負圧値)よりも絶対値で大きい場合には、本体ゴム弾性体16が軸方向で引張変形せしめられて、本体ゴム弾性体16の下端面である段差部36を仕切部材56の受圧室58側表面に対して押し付ける力が軽減乃至は解除されるようになっている。これにより、受圧室58に設定負圧値よりも大きな負圧が生ぜしめられる場合には、短絡流路66の受圧室58側開口における流体密な閉塞状態が解除されて、図3に示されているように、短絡流路66の受圧室58側開口が受圧室58に連通せしめられるようになっており、オリフィス通路64と受圧室58、延いては、受圧室58と平衡室60が短絡流路66を通じて短絡せしめられることとなる。而して、第一の取付金具12と第二の取付金具14の相対変位に基づいて、所期の設定負圧値よりも絶対値で大きな負圧が受圧室58に惹起される場合には、かかる過大な負圧が短絡流路66を通じて受圧室58と平衡室60の間で生ぜしめられる流体流動によって可及的速やかに解消されて、受圧室58における気体の分離とそれに起因する衝撃的な音や振動が効果的に防止されるのである。なお、本実施形態において、負圧が大きいとは、負圧の絶対値が大きいことを言うものとする。
なお、図1,図3からも明らかなように、本実施形態では、弁体(本体ゴム弾性体16の下端部分)に対して、受圧室58内に生ぜしめられる圧力変動が弁体の開閉作動方向(略軸方向上下)で作用せしめられないようなっている。即ち、本実施形態では、受圧室58内の圧力が本体ゴム弾性体16の下端部分に対して略軸直角方向で作用せしめられるようになっており、受圧室58と平衡室60の圧力差によってではなく、本体ゴム弾性体16の弾性変形によって弁体が開閉作動せしめられるようになっている。それ故、本実施形態では、弁体の開閉作動の境界となる受圧室58内の負圧値である設定負圧値が、本体ゴム弾性体16の弾性変形量によって設定されている。
換言すれば、本実施形態における設定負圧の値は、本体ゴム弾性体16の形状や材料等によって適当に設定することが出来るのであって、エンジンマウント10(本体ゴム弾性体16)の耐久性を十分に確保しつつ、受圧室58に正圧や設定負圧値以下の負圧が作用する場合におけるオリフィス通路64を通じての流体流動による防振効果と、設定負圧値以上の過大な負圧が生ぜしめられる場合におけるキャビテーションに起因する異音や振動の回避を何れも有効に実現できるように、本体ゴム弾性体16の材料や形状が適当に選択されて設定負圧の大きさが所期の負圧値に設定されるのである。蓋し、設定負圧の絶対値が大き過ぎる(設定される圧力値が小さ過ぎる)と、キャビテーションが問題となる程度の大きな負圧が受圧室58に生ぜしめられた場合に、弁体が巧く開作動せず、受圧室58内の過大な負圧が解消されないおそれがあって、気相分離に起因する異音や振動が問題となるおそれがある。一方、設定負圧の絶対値が小さ過ぎる(設定される圧力値が大き過ぎる)と、キャビテーションが問題となり得ない程度の小さな負圧が生ぜしめられた場合に、弁体が開作動して受圧室58と平衡室60の間で短絡流路66を通じての流体流動が生じるおそれがあり、オリフィス通路64を通じて流動せしめられる流体量を十分に得られないことによって、所期の防振効果を有効に発揮できないおそれがある。
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10では、短絡流路66を連通状態と遮断状態に切り換える弁体を本体ゴム弾性体16で構成することにより、弁体の形状や材料等を適当に設定することで弁体に十分な耐久性を与えることが可能となる。即ち、弁体を本体ゴム弾性体16で形成して、振動入力時における本体ゴム弾性体16の弾性変形を利用して弁体の開閉作動が実現されるようになっていることから、弁体の剛性を高めて耐久性の向上を図りつつ、弁体の作動を妨げることなく、設定負圧での迅速な開閉作動を実現することが出来るのである。なお、優れた耐久性を要求される本体ゴム弾性体16を利用して弁体を構成することから、弁体の耐久性を容易に向上せしめることが可能となる。
また、受圧室58に正圧が生ぜしめられる場合には、本体ゴム弾性体16が軸方向で圧縮変形せしめられることから、本体ゴム弾性体16の段差部36が仕切部材56の受圧室58側の表面に対してより強く押し付けられることとなって、本体ゴム弾性体16によって短絡流路66の受圧室58側開口部が流体密な閉塞状態でより有利に保持されることとなる。従って、特に受圧室58に正圧が生ぜしめられる場合には、オリフィス通路64を通じての流体流動量をより有利に確保することができて、流体の流動作用に基づく所期の防振効果を有効に発揮することが出来るのである。
しかも、本実施形態では、弁体が本体ゴム弾性体16によって形成されており、軸方向で十分に厚肉とされていることから、第一の取付金具12と第二の取付金具14が相対的に著しく接近変位せしめられる場合(受圧室58に著しい正圧が生ぜしめられる場合)にも、弁体が短絡流路66側に折り込まれるように弾性変形せしめられて、短絡流路66が予期しない連通状態とされることを有利に防ぐことが出来る。それ故、オリフィス通路64を通じて受圧室58と平衡室60の間で流動せしめられる流体量を安定して確保することが出来て、所期の防振性能を安定して発揮せしめることが出来る。
また、本実施形態では、短絡流路66が仕切部材56の外周部分において受圧室58に連通せしめられていることから、第二の取付金具14の内周面に固着される本体ゴム弾性体16の下端外周縁部を巧く利用して、短絡流路66の受圧室58側開口の連通状態/閉塞状態を切り替える弁体を容易に形成することが出来る。
また、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が仕切部材56に対して押圧された状態で重ね合わせられていることから、仕切部材56に形成される短絡流路66の受圧室58側開口をバウンド方向での荷重が入力されていない状態においても、安定して閉塞状態に保持することが出来る。しかも、本体ゴム弾性体16の仕切部材56に対する押付力を適当に調節することによって、弁体の開閉作動(短絡流路66の連通状態と遮断状態)の境界となる受圧室58内の設定負圧の大きさを所期の値に調節することが出来て、キャビテーションによる異音や振動の発生の回避とオリフィス通路64による防振効果の有効な発揮を高精度に両立して実現することが出来る。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態では、短絡流路66によって受圧室58とオリフィス通路64を短絡せしめる構造が示されているが、短絡流路66は、受圧室58と平衡室60を短絡せしめるように設けられていれば良く、必ずしもオリフィス通路64を介して受圧室58と平衡室60を短絡せしめる構造である必要はない。具体的には、例えば、図4に示された自動車用エンジンマウント68のように、仕切部材70を仕切部材本体72と蓋部材74を軸方向で流体密に重ね合わせることによって構成して、それら仕切部材本体72と蓋部材74の軸方向対向面間において仕切部材70の径方向中間部分で周方向に延びて受圧室58と平衡室60を相互に連通せしめるオリフィス通路76を形成する一方、仕切部材70の外周面に開口してオリフィス通路76よりも軸直角方向外方を軸方向で全長に亘って略直線的に延びる短絡溝77を設けて、該短絡溝77の開口をシールゴム層34を介して第二の取付金具14で流体密に覆蓋することにより、一方の端部が受圧室58に開口すると共に、他方の端部が平衡室60に開口する短絡流路78を形成し、かかる短絡流路78を通じて受圧室58と平衡室60が直接的に短絡するようになっていても良い。このようなエンジンマウント68においても、前記実施形態と同様に、本体ゴム弾性体16の弾性変形を利用して目的とする弁機能を有利に得ることが出来て、バウンド荷重の入力時におけるオリフィス通路76による防振効果の有効な発揮やリバウンド荷重の入力時に受圧室58で生じる過大な負圧の解消による異音や振動の効果的な防止といった優れた効果を得ることが出来る。なお、図4に示された上述のエンジンマウント68において、前記実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、図中に前記実施形態と同一の符号を付すことにより、説明を省略する。また、図中には明示されていないが、オリフィス通路76は、仕切部材70を利用して形成されて、周方向に所定の長さで延びており、一方の端部が受圧室58に連通されていると共に、他方の端部が平衡室60に連通されている。
また、前記実施形態では、周方向に所定の幅寸法で形成された一条の短絡流路66を仕切部材56に設けた例を示したが、短絡流路は前記実施形態に示された具体的な形状や形成数によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、仕切部材に形成される短絡流路を略一定の円形断面で軸方向に延びる複数本の円形貫通孔等によって形成することも可能であるし、周方向で略螺旋状や略蛇行状に延びるように形成することも出来る。
また、前記実施形態においては、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動に対して防振効果を発揮するオリフィス通路64のみを有するシングルオリフィス構造のエンジンマウント10が示されているが、例えば、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動に対して防振効果を発揮する第一のオリフィス通路とアイドリング振動等の高周波小振幅振動に対して防振効果を発揮する第二のオリフィス通路を有するダブルオリフィス構造のエンジンマウント等、異なる周波数域の振動に対して防振効果を発揮する複数のオリフィス通路を有するエンジンマウントについても、本発明を採用することが可能である。なお、このような複数のオリフィス通路を有する構造のエンジンマウントに本発明を採用する場合には、それら複数のオリフィス通路の何れか一条のオリフィス通路に対して短絡流路を設けることも可能であるし、各オリフィス通路の内の幾つか、或いは、全てに対してそれぞれ短絡流路を設けることも可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。 図1に示されたエンジンマウントを示す横断面図であって、図1におけるII−II断面に相当する図である。 図1に示されたエンジンマウントにおける弁体の開作動状態を示す要部縦断面図である。 本発明の別の一実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面図である。
符号の説明
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
30 中央凹所
50 ダイヤフラム
56 仕切部材
58 受圧室
60 平衡室
64 オリフィス通路
66 短絡流路

Claims (7)

  1. 第一の取付部材を、円筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に配すると共に、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結せしめて該第二の取付部材の該一方の開口部を流体密に閉塞する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を可撓性膜で流体密に閉塞すると共に、該第二の取付部材に仕切部材を挿入して嵌着固定することにより、該仕切部材の一方の側には該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成し、該仕切部材の他方の側には該可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路を該仕切部材を利用して形成した流体封入式防振装置において、
    前記受圧室と前記平衡室を前記オリフィス通路よりも短い流路長さで連通する短絡路を形成して、該短絡路の該受圧室への開口を該仕切部材における該受圧室側の面の外周部分に位置せしめる一方、前記本体ゴム弾性体における該仕切部材との対向面に中央凹所を形成して該中央凹所の開口周縁部を該仕切部材における該受圧室側の面の外周部分に重ね合わせることにより、そこに開口せしめられた該短絡路の該受圧室への開口を閉塞状態とすると共に、該受圧室と該平衡室の間に過大な圧力差が生ぜしめられた際に該本体ゴム弾性体の弾性変形に基づいて該短絡路を連通状態とする弁体を構成したことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記弁体を構成する前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部が、前記仕切部材における前記短絡路の前記受圧室への開口部分に対して押し付けられて弾性変形せしめられた状態で重ね合わされている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記弁体を構成する前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部が、該中央凹所の開口部から前記仕切部材に向かって軸方向に延びる円筒形状とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記本体ゴム弾性体における前記中央凹所の開口周縁部に対して前記仕切部材の外周部分が重ね合わされることにより、該仕切部材の前記第二の取付部材に対する軸方向の組付位置が規定されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記弁体を構成する前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部が、その外周面において円筒状の前記第二の取付部材の内周面に加硫接着されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記仕切部材の前記受圧室側の面に重ね合わされる前記本体ゴム弾性体の前記中央凹所の開口周縁部に対して、更に軸方向に延び出す薄肉のシールゴム層が一体形成されていると共に、該シールゴム層が前記第二の取付部材の内周面に加硫接着されており、該シールゴム層によって該仕切部材が該第二の取付部材に対して流体密に嵌着されている請求項5に記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記オリフィス通路が、前記仕切部材の外周部分を周方向に延びるように形成されていると共に、該オリフィス通路における前記受圧室側の壁部を貫通して該オリフィス通路を該受圧室に連通せしめる通孔が、該オリフィス通路の該受圧室への開口よりも前記平衡室への開口に近い位置に形成されており、該通孔によって前記短絡路が構成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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