JP2007109743A - 発光ダイオード - Google Patents

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泰司 西川
Shuhei Wakahara
修平 若原
Yusuke Ota
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Abstract

【課題】 高輝度高出力の用途で発熱量の増加に伴い、発光ダイオードの効率、寿命が低下する。
【解決手段】(A)発光ダイオード素子、
(B)透光性封止樹脂
および
(C)支持体、
を含む発光ダイオードにおいて、
該支持体がグラファイトフィルムを含むことを特徴とする、発光ダイオード、によって、解決する。LEDチップ(発光ダイオード素子)の温度をグラファイトフィルムを介して放熱する。駆動電流を増やしてもLEDチップの発光効率および動作寿命を低下させることなく、また、透光性樹脂の透明度の低下を防ぎ、薄型化された、発光ダイオードを提供することが可能である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、パーソナルコンピュータ、プリンタ、PDA、ファクシミリ、ページャー、携帯電話等の民生機器に使用される発光ダイオードに関し、更に詳しくは放熱特性に優れた発光ダイオードに関する。
従来(特許文献1)から軽薄短小を追求する電子機器向けに提供された表面実装型の発光ダイオードとして、一般的にガラエポ基板の上面に形成された電極パターン上にLEDチップを実装するとともに、前記LEDチップを覆うように透光性樹脂で封止した構造のものがある。
特開平8−298345号公報 従来技術(特許文献1)に開示されている発光ダイオード111は、図1に示すように、ガラスエポキシ樹脂よりなる回路基板112の上面に、一対の上面電極113a、113bをパターン形成し、該上面電極113a、113bと一体に形成された下面電極114a、114bをパターン形成し、該上面電極113a、113bの上に透明接着剤によってLEDチップ(発光ダイオード素子)116を固着すると共に、ワイヤボンディング実装されて作製される。前記発光ダイオード111を使用する時には、プリント基板118の上面に発光ダイオード111を搭載し、下面電極114a、114bをプリント基板118のプリント配線に半田119で電気的に固定することによって表面実装を実現するものである。
しかしながら、上記した発光ダイオードには次のような問題点がある。発光ダイオードを高輝度高出力の用途に使用する場合、放熱対策が問題になる。図2に示すように、(a)は放熱が良い場合、(b)は放熱が悪い場合を示すものである。LEDチップは一定の動作領域まで駆動電流と輝度は略比例関係にあり、高輝度を得るには、駆動電流を増加させる。しかし、駆動電流を増加させるとそれに比例してLEDチップの電力損失が増加し大部分のエネルギーは熱に変換させてLEDチップの温度が上昇し高温となる。LEDチップが実装されている回路基板の材質がガラスエポキシ樹脂のため熱の伝導率が極めて小さく、上昇した熱は電極パターンのメッキ面を通して放熱を行っているのみで放熱され難く、LEDチップの温度は下がらない。
LEDチップは温度が低いほど発光効率、即ち電流-光変換効率が高いので、LEDチップが高温になると発光輝度は低下するという問題が生じる。また、LEDチップの動作寿命も高温動作になるほど短くなる。
さらに、LEDチップを封止している透光性封止樹脂が熱により変色で透明度を低下させるなどの問題があり、高輝度高出力用途としては寿命や信頼性に大きな問題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、放熱特性に優れた、薄型の発光ダイオードを提供するものである。
「1」本発明の第1は、
(A)発光ダイオード素子、
(B)透光性封止樹脂
および
(C)支持体、
を含む発光ダイオードにおいて、
該支持体がグラファイトフィルムを含むことを特徴とする、発光ダイオード、
である。
「2」本発明の第2は、
(A)発光ダイオード素子、
(B)透光性封止樹脂
(C)透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体、
および
(D)透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体
を含む発光ダイオードにおいて、
該(C)
及び/又は
該(D)が、グラファイトフィルムを含むことを特徴とする発光ダイオード、
である。
「3」本発明の第3は、
前記グラファイトフィルムが、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「2」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「4」本発明の第4は、
前記グラファイトフィルムが、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有するグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「3」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「5」本発明の第5は、
前記グラファイトフィルムが、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様が観察されるグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「4」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「6」本発明の第6は、
前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「5」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「7」本発明の第7は、
前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、熱処理前および/または熱処理中に金属を含有する物質と接触させて、2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「6」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「8」本発明の第8は、
前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「7」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「9」本発明の第9は、
前記グラファイトフィルムが、面方向の熱拡散率が7.5×10-42/s以上であるグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「8」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「10」本発明の第10は、
前記グラファイトフィルムが、厚みが30μm以上のグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「9」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「11」本発明の第11は、
前記グラファイトフィルムが、密度が1.5g/cm3以上であるグラファイトフィルムであることを特徴とする、「1」〜「10」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
「12」本発明の第12は、
前記グラファイトフィルムが、少なくとも片面に絶縁層が存在するグラファイトフィルムであことを特徴とする、「1」〜「11」のいずれかに記載の発光ダイオード、
である。
以上説明したように、本発明によれば、LEDチップ(発光ダイオード素子)の上昇温度を、支持体のグラファイトフィルムを含む材料を介して、放熱することにより、駆動電流を増やしてもLEDチップ(発光ダイオード素子)の発光効率および動作寿命を低下させることなく、また、透光性樹脂の透明度の低下を防ぎ、薄型化された、発光ダイオードを提供することが可能である。
以上説明したように、本発明によれば、LEDチップ(発光ダイオード素子)の上昇温度を、
透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体のグラファイトフィルムを含む材料
および/または
透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体のグラファイトフィルムを含む材料を
介して、放熱することにより、駆動電流を増やしてもLEDチップ(発光ダイオード素子)の発光効率および動作寿命を低下させることなく、また、透光性樹脂の透明度の低下を防ぎ、薄型化された、発光ダイオードを提供することが可能である。
「1」本発明の第1は、
(A)発光ダイオード素子、
(B)透光性封止樹脂
および
(C)支持体、
を含む発光ダイオードにおいて、
該支持体がグラファイトフィルムを含むことを特徴とする、発光ダイオード、
である。
「2」本発明の第2は、
(A)発光ダイオード素子、
(B)透光性封止樹脂
(C)透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体、
および
(D)透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体
を含む発光ダイオードにおいて、
該(C)
及び/又は
該(D)が、グラファイトフィルムを含むことを特徴とする発光ダイオード、
である。
以下、一態様として、図面に基づいて本発明における発光ダイオードについて説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図である。
図3において、111(図3に描かれている全てを表す。ただし、下記128が無い場合も指す。)は発光ダイオードであり、透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体122(好ましくは、本支持体はグラファイトフィルムを含んでも良い。ただし、その場合、グラファイトフィルムを含む材料は、発光ダイオードとして使用する際に電気的な短絡現象を起こさない程度の電気抵抗率を有することが必要である)の上面に、一対の上面電極113a、113bをパターン形成し、上面電極113a、113bと一体に形成された下面電極114a、114bをパターン形成し、該上面電極113a、113bの上に透明接着剤によってLEDチップ(発光ダイオード素子)116を固着すると共に、ワイヤボンディング実装されて作製される。
さらに、放熱性を挙げるためには、透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体122の裏側に、透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体(好ましくは、高熱伝導性の層)128を設けると良く、透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体128としては、グラファイトフィルムを含む材料を用いるのが好ましい。
上記した発光ダイオードの作用・効果について説明する。前記発光ダイオード111(図3に描かれている全てを表す)を高輝度高出力の用途に使用する場合に、高輝度を得るために駆動電流を増やしても、LEDチップ(発光ダイオード素子)116に発生する熱は透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体122に伝わり、前記の透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体128側に逃がすことにより、LEDチップ116の温度上昇を防ぐことができ、発光効率は低下しない。また、LEDチップ116を封止している透光性樹脂117が熱による変色で透明度を低下させることもない。
透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体128がグラファイトフィルムを含む材料を用いている場合には、さらに特性が改善されるために、好ましい。
以下、図面に基づいて本発明における発光ダイオードについて説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図である。
図4において、111(図4に描かれている全てを表す。ただし、下記138が無い場合も指す。)は発光ダイオードであり、ガラスエポキシ樹脂よりなる回路基板112(これは、透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)の上面に、一対の上面電極113a、113bをパターン形成し、上面電極113a、113bと一体に形成された下面電極114a、114bをパターン形成し、上面電極113a、113bの上に透明接着剤によってLEDチップ(発光ダイオード素子)116を固着すると共に、ワイヤボンディング実装される。
さらに、放熱性を挙げるためには、ガラスエポキシ樹脂よりなる回路基板112(これは(すなわち、ガラスエポキシ樹脂よりなる回路基板は)、透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)の裏側にグラファイトフィルムを含む材料の、透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体138が形成されて作製される。
上記した発光ダイオードの作用・効果について説明する。前記発光ダイオード111(図4に描かれている全てを表す)を高輝度高出力の用途に使用する場合に、高輝度を得るために駆動電流を増やしても、LEDチップ(発光ダイオード素子)116に発生する熱は回路基板112に伝わり、前記グラファイトフィルムを含む材料の層138(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体)側に逃がすことにより、LEDチップ116の温度上昇を防ぐことができ、発光効率は低下しない。また、LEDチップ116を封止している透光性樹脂117が熱による変色で透明度を低下させることもない。
以下、図面に基づいて本発明における発光ダイオードについて説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図である。
図5において、111(図5に描かれている全て。ただし、下記128が無い場合も指す。)は発光ダイオードであり、その構成は、ガラスエポキシ樹脂などよりなる絶縁性を有する回路基板112(これは、透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)の略中央部に貫通穴112aが形成されている。前記回路基板112の上下面には一対の上面電極113a、113bと下面電極114a、114bがパターン形成されている。前記回路基板112に形成された貫通孔112aにグラファイトフィルムを含む材料145(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)を固着させる。該グラファイトフィルムを含む材料145(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)の上面にLEDチップ(発光ダイオード素子)116を透明接着剤等で固着し、上面電極113a、113bにワイヤボンディング実装し、該LEDチップ116を覆うように透光性樹脂117で封止する。前記発光ダイオード111(図5に描かれている全てを表す)を前記LEDチップ116を実装するグラファイトフィルムを含む材料145の上面を回路基板112(ガラスエポキシ基板、ガラエポ基板。透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)の上面より沈めて固着させると、その分薄くすることができる。
さらに、放熱性を挙げるためには、基材の裏側に透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体(好ましくは、高熱伝導性の層)128を設けると良く、グラファイトフィルムを含む材料を用いるのが好ましい。
上記した発光ダイオードの作用・効果について説明する。前記発光ダイオード111を高輝度高出力の用途に使用する場合に、高輝度を得るために駆動電流を増やしても、LEDチップ116に発生する熱はグラファイトフィルムを含む材料145に伝わり、前記層128が側に逃がすことにより、LEDチップ6の温度上昇を防ぐことができ、発光効率は低下しない。また、LEDチップ6を封止している透光性樹脂117が熱による変色で透明度を低下させることもない。透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体128がグラファイトフィルムを含む材料を用いている場合には、さらに特性が改善されるために、好ましい。
図6は、本発明の第4の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図である。
図6において、111(図6に描かれている全てを表す。ただし、下記138が無い場合も指す。)は発光ダイオードであり、ガラスエポキシ樹脂などよりなる絶縁性を有する回路基板112(図に明示は無いが、凹部112bを有する・右斜めの斜線部が112である)の略中央部に形成された凹部112b内にLEDチップ116(発光ダイオード素子)を実装し、該LEDチップ116(発光ダイオード素子)を覆うように透光性樹脂117で封止し、前記LEDチップ116が、好ましくはグラファイトフィルムを含む、透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体138上に形成されて作製される。
上記した発光ダイオードの作用・効果について説明する。前記発光ダイオード111を高輝度高出力の用途に使用する場合に、高輝度を得るために駆動電流を増やしても、LEDチップ116に発生する熱は直接グラファイトフィルムを含む、透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体138の側に逃げ放熱されることにより、LEDチップ116の温度上昇を防ぐことができ、発光効率は低下しない。また、LEDチップ116を封止している透光性樹脂117が熱による変色で透明度を低下させることもない。また、LEDチップ116を凹部112b内に実装されるので、薄型にすることができる。
上記によって、具体的に説明したが、改めて、概念的に、各構成要件を説明する。
この発明について、各項目を説明していく。本発明における、発光ダイオード素子とは、以下で別記説明するものである。
<支持体>
発光ダイオードを形成する発光ダイオード素子を支持することができる限りにおいては、特に限定を受けない。
下記においては、既に、上記の図を用いて説明済みの内容を、概念的に説明するものである。
ここでは、発光ダイオード素子の上を、透光性封止樹脂だけが覆うような構成を有する発光ダイオードの場合で、説明する。
もちろん、発光ダイオード素子の上を、透光性封止樹脂だけが覆うような構成ではなくて、透光性樹脂の上を、さらに、<透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体>を配置させるような構成を妨げるものではない。
ここでは、発光ダイオード素子の上を、透光性封止樹脂だけが覆うような構成を有する発光ダイオードの場合で、説明する。
支持体が一つだけの場合の一態様としては、
支持体は、
<透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体>である。
支持体が2以上の場合の一態様としては、
支持体は、
(1)<透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体>および、
(2)<透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体>を含む。
上記の(1)と(2)とは、物理的に接触させて、その接触面を、ねじ止めなどの原理で密着させることも可能である。また、少なくとも、接触面の一部を、接着剤のような材料で、接触・密着させても可能である。
支持体は、グラファイトフィルムを含む材料であると、好ましい。
グラファイトフィルムを含む材料の場合には、発光ダイオードとして使用する際に電気的な短絡現象を起こさない程度の電気抵抗率を有することが必要である。
<透光性封止樹脂>
本発明における透光性封止樹脂は、発光ダイオードを封止できる限りにおいては、特に限定を受けない。一般に使用される公知のものも、好適に用いられる。エポキシ樹脂なども、好適に用いられる。
<透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体>
下記で、図を用いて説明するが、透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体であれば、特に限定を受けない。
<透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体>
下記で、図を用いて説明するが、透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体であれば、特に限定を受けない。
<グラファイトフィルムを含む材料>
グラファイトフィルムを含む材料である限りにおいて、特に限定を受けない。グラファイトフィルムの片面あるいは両面が絶縁材料によって被覆されている形態のものであってもよい。
<発光ダイオード素子>
下記では、発光ダイオード素子について説明するが、この<発光ダイオード素子>項目の内容では、発光ダイオードと、発光ダイオード素子とを、特に区別することなく用いる。本発明の一態様の発光素子は窒化ガリウムである。
本発明における発光ダイオードの発光部を形成する発光ダイオード素子は、インジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)、ガリウム・リン(GaP)、アルミニウム・インジウム・ガリウム・リン(AlInGaP)とガリウム・リン(GaP)またはインジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)とYAG構造を有する蛍光体からなる発光ダイオード、またはインジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)と蛍光体からなる発光ダイオード、またはジンク・セレン(ZnSe)からなる発光ダイオードを言う。これらの発光ダイオードは複数個直列または並列に接続したものであってもよい。
これらの発光ダイオードにおいて、青色、緑色、黄色、赤色および白色の発光させるためには、インジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)およびアルミニウム・インジウム・ガリウム・リン(AlInGaP)とガリウム・リン(GaP)のそれぞれの発光ダイオードを使用することができる。また、青色から緑色を発光させるためには、インジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)の発光ダイオードを使用することができる。また、黄色から赤色を発光させるためには、アルミニウム・インジウム・ガリウム・リン(AlInGaP)とガリウム・リン(GaP)のそれぞれの発光ダイオードを使用することができる。赤色から赤外線を発光させるためには、ガリウム・リン(GaP)に亜鉛(Zn)をドープした発光ダイオードを使用することができる。白色を発光させるためには、インジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)とYAG構造を有する蛍光体からなる発光ダイオードの周囲にYAG構造を有する蛍光体(主波長:黄色)を塗布してチップ化した発光ダイオード、または紫外線発光するインジウム・ガリウム・ナイトライド(InGaN)と蛍光体を組合せてなる発光ダイオード、またはジンク・セレン(ZnSe)の発光ダイオードを使用することができる。

<グラファイトフィルム>
本発明のグラファイトフィルムは、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛粉末をシート化して得られるグラファイトフィルム、高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムが挙げられる。グラファイトフィルムは、面方向に高い熱伝導性を有し、面方向の熱伝導性と厚み方向の熱伝導性に大きな異方性があり、発光ダイオードのようにスポットで熱が高くなる電子部材において、有効に熱を拡散することできる。本発明のグラファイトフィルムとして、特に好ましいのは、以下の3種類のグラファイトフィルムである。
本発明の第1のグラファイトフィルムは、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られることを特徴とする、グラファイトフィルムである。
本発明の第2のグラファイトフィルムは、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様を有する、グラファイトフィルムである。
本発明の第3のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムである。さらに、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有することを特徴とする、グラファイトフィルムである。
<グラファイトフィルムの形態>
本発明のグラファイトフィルムは、熱拡散性、放熱性、固定性、取り扱い性、絶縁性を改善するために、片面および/または両面に樹脂層、セラミック層、金属層、絶縁層、導電層を形成すると良い。
<グラファイトフィルムの熱拡散率>
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムの熱拡散率は、2.5×10-42/s以上、好ましくは7.5×10-42/s以上、さらに好ましくは9.0×10-42/s以上であると良い。2.5×10-42/s以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、2.5×10-42/s未満になると、熱伝導性が悪いために、発熱機器から熱を逃がすことができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムの厚みの具体的レベルは、30μm以上、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは70μm以上である。また用いる原料高分子フィルムの厚みは、70μm以上、好ましくは120μm以上、さらに好ましくは150μm以上である。グラファイトフィルムの厚みが50μm以上、原料フィルムの厚みが70μm以上であれば、熱輸送量が向上し、従来よりも優れた放熱性を発現することが可能となる。
<フィルム内における最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様>
本発明の第2のグラファイトフィルムは、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様を有する、グラファイトフィルムである。
本発明のフィルム内に存在する不定形形状の模様の大きさは、最短径が0.1〜50μmの範囲であることが好ましい。内部の不均一層・不均一相は硬度が高く、0.1μm以上であると、表面硬度を高める働きをするために好ましい。また50μm以下であると、フィルムの熱伝導性を悪化させないために好ましい。また、グラファイトフィルム内部は密な状態であり、不均一層・不均一相で層間が結合して形成されているため、硬度が高く、接着剤や粘着剤に対する表面の接着性に優れ、表面の緻密な剥がれのない外観に優れたグラファイトを得ることが出来る。また、0.1μm以上であると、フィルムに内部からの発生するガスをうまく逃がすことが出来、フィルム内の応力を緩和し、グラファイトの層間の相互作用を高め、フィルムが熱処理中に剥離するのを抑制され、表面及び内部でグラファイト化が進行し、熱伝導性に優れたグラファイトとなる。
本発明の第2のグラファイトフィルムの表面硬度は、JIS K 5400に基づいて測定される鉛筆硬度の値で2B以上、好ましくはB以上、さらに好ましくはHB以上である。鉛筆硬度が2B以上では、グラファイトの取り付け時や取り扱い時に傷が入らない程度に十分な表面硬度となる。
本発明の第2のグラファイトフィルムの、表面の接着性は、JIS Z 0237に基づいて測定される粘着テープ・粘着シート試験方法に基づいて測定される粘着力が3N/cm以上、好ましくは4N/cm以上、さらに好ましくは5N/cm以上である。鉛筆硬度が3N/cm以上では、グラファイトと発熱部品を接着剤や粘着剤を用いて取り付けた場合に、剥がれることなく、グラファイトが本来有する放熱特性を発揮することが出来る。
本発明の第2のグラファイトフィルムの、表面の外観の具体的レベルは、JIS K 5400に基づいて測定されるXカットテープ法に基づいて測定される評価が6以上、好ましくは8以上である。外観が6以上では、グラファイトと発熱部品を接着剤や粘着剤を用いて取り付けた場合に、剥がれることなく、また、取り付け時の接触や装置に組み込んだ後にファンの風によって表面から黒鉛が剥がれ落ちることがなくなり、電子機器内を汚染しなくなる。
<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分>
本発明の第3のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムである。
本明細書で使う「表面層」とは、グラファイトフィルムの断面を見た場合に、フィルム全体の厚みの外側30%以内の厚みの部分であるフィルム両表面からの範囲をいう。すなわち、片側(ここで上側とする)からの表面だけから表現すると、フィルム断面の上側(反対側は下側)から0〜30%の部分、および、上側から70%〜100%の部分)を、「表面層」という。
表面層以外とは、グラファイトフィルムの断面を見た場合に上記の表面層以外の部分をいう。片側(ここで上側とする)からの表面だけから表現すると、フィルム断面の上側(反対側は下側)から30%を越えて、70%未満の部分を、「表面層以外」という。
初めに断面模様について説明する。断面模様の観察には、一般に提供されているグラファイトフィルムの厚みを考慮すると、電子顕微鏡(SEM(走査型電子顕微鏡)を含む)を用いることが好ましいが、断面が観察できれば特に制限はない。また、ここでは断面模様についてのみ記述するものであって、これらは、表面層および/または表面層以外のどこの部分に存在してもよい。
グラファイトフィルムの断面模様としては、以下の(1)〜(6)が考えられる。
(1)グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらがフィルム表面形状に平行に積層した高密度なグラファイト層の断面模様。
(2)グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらが積層しているが、フィルム表面形状に平行ではなく、うねった状態で存在している高密度のグラファイト層の断面模様。
(3)グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、フィルム表面形状に平行に存在している低密度な空気層に富んだグラファイト層の断面模様。
(4)グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、またフィルム表面形状に平行ではなく、うねった状態で存在している低密度な空気層に富んだグラファイト層の断面模様。
(5)グラファイト結晶子が発達しておらず、燐片状のグラファイト層の断面模様。
(6)上記(1)〜(5)以外の断面模様。
上記(6)は、例えば、グラファイト化工程において不純物などの影響により形成された、グラフェン構造ではない炭素塊などの、グラファイト層を形成していないものをいう。
面方向の優れた熱伝導性には、グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらが積層した高密度のグラファイト層が必要である。高密度のグラファイト層であれば、熱伝導のロスが少なく効率が良い。したがって、観察される上記(1)〜(6)の断面模様のなかで、高熱伝導性を示す断面模様として、好ましいのは(1)と(2)であり、次に好ましいのは(3)と(4)であり、次に好ましいのは(5)、次にこのましいのは(6)である。
一方で、フィルムの柔軟性のためには、空気層を含んだグラファイト層が必要である。これは、グラファイト層が高密度に積層し、空気層を含んでいないグラファイトフィルムでは、屈曲した場合、緩衝する部位がないために、フィルムが破損してしまうためである。また、放熱材料として使用時の形状の自由度から、柔軟性のあるグラファイトフィルムが好ましい。したがって、観察される上記(1)〜(6)の断面模様のなかで、柔軟性を示す断面模様として、好ましいのは(3)と(4)であり、次に好ましいのは(5)であり、次に好ましいのは(1)と(2)であり、次に好ましいのは(6)である。
<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、少なくとも異なる部分>
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有している。
なお、この<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、少なくとも異なる部分>項目中でのすべての括弧内数字
((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で示される断面模様は、
上記<断面模様について>項目中での括弧内数字
((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で示される断面模様を意味している。
仮に、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が高密度なグラファイト層である(1)の断面模様だけであれば、熱拡散率に優れ、フィルムの強度にも優れるが、一方で、屈曲した場合などに緩衝する部位がないために、柔軟性に乏しいグラファイトフィルムになる。また、仮に、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、空気層を含んだ低密度なグラファイト層である(3)の断面模様だけであれば、柔軟性に優れるが、熱拡散率に劣り、フィルムの強度も劣るグラファイトフィルムになる。したがって、高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムには、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、上記の観察される断面模様(1)〜(6)で異なった組み合わせが好ましい。以下に示す、上記の観察される断面模様(1)〜(6)での異なった組み合わせは、表面層全体と表面層以外全体であっても、表面層の一部分、表面層以外の一部分であってもよい。
高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムであるためには、組み合わせとして特に好ましくは、表面層に(1)の断面模様であって、表面層以外に(3)の断面模様である。この組み合わせにより、表面近傍に高密度なグラファイト層が存在することから面方向の熱拡散率に優れ、また表面層以外に空気層を含んだグラファイト層を有することで柔軟性を有することができる。また、表面近傍に高密度なグラファイト層が存在するために高強度のグラファイトフィルムである。
したがって、さらに拡張して一般的に、熱拡散率に優れ、柔軟性に富み、高強度のグラファイトフィルムを達成するためには、
表面層に高密度にグラファイト層が積層した(1)(2)の断面模様が存在し、表面層以外には空気層を含んだグラファイト層である(3)(4)の断面模様が存在することが好ましい。
上述したとおり、組み合わせとして特に好ましくは、
表面層に(1)の断面模様であって、表面層以外に(3)の断面模様の組み合わせである。
同様の理由で、次に好ましくは、
表面層に(1)の断面模様で、表面層以外に(4)の断面模様の組み合わせ、
次に好ましくは
表面層に(2)の断面模様で表面層以外に(3)の断面模様の組み合わせ、
次に好ましくは、
表面層に(2)の断面模様で表面層以外に(4)の断面模様の組み合わせである。
<表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状>
本発明では、断面模様の一部として観測される層状の構造を、あえて略長方形で、表現したものである。従い、実際の層状の構造が、略長方形で囲まれた閉じた空間で有る必要は無い。層状の構造が半無限に拡がっているような場合であっても、略長方形という視点で切り出して、層状の構造を表現するものである。
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有するグラファイトフィルムである。
少なくとも表面層の断面模様の一部に、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層したグラファイト層が形成されていることが望ましい。略平行に積層すれば、1μm未満の厚みの略長方形が空気層を生じることなく、高密度に積層することができ、結果として高熱伝導性のグラファイトフィルムを得ることができる。
また、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される略長方形の短辺は5μm以上であることが好ましい。これは、表面層の上記の略長方形の短辺が5μm以上であることで、面方向の熱伝導性に優れ、またフィルムの強度が十分なものとなるからである。
したがって、上記の略長方形の形状は、好ましくは短辺5μm以上、さらに好ましくは短辺10μm以上である。
1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される略長方形の長辺については、特に制限はないが、熱伝導性やフィルム強度を勘案すると、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、熱伝導性のためには上記の略長方形の長辺が長ければ長いほど好ましい。これは、上記の略長方形の長辺は、途切れることなく長ければ長いほうが、面方向の熱伝導の効率がよいためである。
<グラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成する方法>
グラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成するには、カッターナイフおよび/または剃刀で割断、ミクロトームで切削、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムをミクロトームで切削すればよいが、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が観察できれば、これらだけに限定されることはない。
グラファイトフィルムの断面・切断面を出す・断面を形成する場合、グラファイトフィルムは一般に厚み方向の層構造を有するために、厚み方向から力を加えて切削すると、断面が潰れやすいために注意を要する。
カッターナイフおよび/または剃刀で割断してグラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成する場合は、カッターナイフおよび/または剃刀などの鋭利な刃で、グラファイトフィルムの一端に微小な切り目をいれ、その切り目の反対側から力を加えることによりフィルムを割断させる。この割断する方法は、断面を切削することではないので、断面が潰れないために、好ましく、簡便性に優れる。
ミクロトームは、切片の厚さを調節でき、また切断面の平坦性も優れる。さらに、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムであれば、ミクロトームで切削するときの固定安定性や操作性に優れるために、さらに好ましい。
したがって、グラファイトフィルムの断面を出す方法として、好ましくはカッターナイフおよび/または剃刀で割断、次に好ましくは樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムをミクロトームで切削、次に好ましくはミクロトームで切削である。ミクロトームは、滑走式と回転式のどちらであってもよい。ただし、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が観察できれば、これらだけに限定されることはない。
<本発明の第1のグラファイトフィルムの製造方法>
本発明の第1のグラファイトフィルムは、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られることを特徴とする、グラファイトフィルムである。
<高分子フィルム>
本発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの熱伝導性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
<炭素化した高分子フィルム>
本発明で用いられる炭素化した高分子フィルムとしては、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して得られる。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行うことが望ましい。
<ポリイミドフィルム>
ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする原料フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく、かつ電気伝導度そのものも高くなりやすい。その結果、後述の電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する場合には、フィルム部分に炭素化の進行に伴って均一に電流が流れ、表面及び内部での均一な発熱が起こり、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトとなる。また、出来上がるグラファイトの結晶性が優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
<ポリイミドフィルムと複屈折>
本発明の高分子フィルムにおける分子の面内配向性に関連する複屈折Δnが、フィルム面内のどの方向に関しても0.08以上、好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.12以上、最も好ましくは0.14である。複屈折0.08以上であると、フィルムの炭化(炭素化)、黒鉛化が進行しやすくなる。その結果、グラファイトの結晶配向性がよくなり、熱伝導性が顕著に改善される。また、黒鉛化温度が低温でも十分高い熱伝導性のグラファイトフィルムとなり、厚みが厚くても、高い熱伝導性を有するグラファイトフィルムとなる。また、炭化が進行しやすいため、炭化中の昇温速度を速く、熱処理時間を短くしても、品質の優れたグラファイトとなる。また、黒鉛化が進行しやすいため、最高温度を下げて熱処理時間を短くしても品質の優れたグラファイトとなる。またさらに、後述の金属と接触させて熱処理した場合には、従来技術では改善の余地があった表面硬度、密度、表面の密着性が改善される。またさらに、複屈折が高くなるほど、フィルムの炭化(炭素化)、黒鉛化が進行しやすいため、後述のフィルムの電気伝導度が高くなりやすい。その結果、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程では、フィルム部分に炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて均一に電流が流れ、また炭素化の進行に伴いフィルムに流れる電流量が増え、表面及び内部での均一な発熱が起こるため、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、低温で炭化(炭素化)及び黒鉛化が進行するために、低温の熱処理中からフィルムの電気伝導度が高くなり、表面及び内部での均一な発熱が起こり、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。また、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトとなる。また、複屈折が高くなるほど、結晶性に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトフィルムとなる。
複屈折が高くなると黒鉛化しやすくなる理由は明らかではないが、グラファイト化のためには分子が再配列する必要があり、複屈折の高い分子配向性に優れたポリイミドフィルムでは分子の再配列が最小で済むことから、ポリイミドフィルムの中でも、より配向性に優れたポリイミドフィルムの方が、比較的低温の通電処理による熱発生に伴う最高処理温度で、厚みが厚くても、結晶性の高いグラファイトフィルムになると推測される。
<複屈折>
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折Δnxは次式(数式1)で与えられる。
図7と図8において、複屈折の具体的な測定方法が図解されている。図7の平面図において、フィルム1から細いくさび形シート2が測定試料として切り出される。このくさび形シート2は一つの斜辺を有する細長い台形の形状を有しており、その一底角が直角である。このとき、その台形の底辺はX方向と平行な方向に切り出される。図8は、このようにして切り出された測定試料2を斜視図で示している。台形試料2の底辺に対応する切り出し断面に直角にナトリウム光4を照射し、台形試料2の斜辺に対応する切り出し断面側から偏光顕微鏡で観察すれば、干渉縞5が観察される。この干渉縞の数をnとすれば、フィルム面内X方向の複屈折Δnxは、次式(数式2)で表される。
ここで、λはナトリウムD線の波長589nmであり、dは試料2の台形の高さに相当する試料の幅3である。
なお、前述の「フィルム面内の任意方向X」とは、例えばフィルム形成時における材料流れの方向を基準として、X方向が面内の0゜方向、45゜方向、90゜方向、135゜方向のどの方向においても、の意味である。サンプル測定個所・測定回数は、好ましくは、下記の通りである。例えば、ロール状の原料フィルム(幅514mm、)からサンプルを切り出す際には、幅方向で10cm間隔に6カ所サンプリングして、各部位で複屈折を測定する。その平均を複屈折とする。
<ポリイミドフィルムの熱的性質、機械的性質、物理的性質、化学的性質>
また、本発明に用いられるグラファイトの原料となるポリイミドフィルムは、100〜200℃の範囲において2.5×10-5/℃未満の平均線膨張係数を有しているとよい。線膨張係数が2.5×10-5/℃未満であれば、熱処理中の伸びが小さく、スムースに黒鉛化が進行し、脆くなく、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。このようなポリイミドフィルムを原料に用いることで、グラファイトへの転化が2400℃から始まり、2700℃で十分結晶性の高いグラファイトに転化が生じ得る。なお、その線膨張係数は、2.0×10-5/℃以下であることがより好ましい。
なお、高分子フィルムの線膨張係数は、TMA(熱機械分析装置)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させた後に一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時の100℃〜200℃における平均線膨張係数を測定することによって得られる。具体的には、熱機械分析装置(TMA:セイコー電子製SSC/5200H;TMA120C)を用いて、3mm幅×20mm長のサイズのフィルム試料を所定の治具にセットし、引張モードで3gの荷重をかけて窒素雰囲気下で測定が行われる。
また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、その弾性率が3.4GPa以上であれば、グラファイト化をより容易に行い得るということから好ましい。すなわち、弾性率が3.4GPa以上であれば、熱処理中のフィルムの収縮によるフィルムの破損を防止することができ、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。
なお、フィルムの弾性率は、ASTM−D−882に準拠して測定することができる。ポリイミドフィルムのより好ましい弾性率は3.9GPa以上であり、さらに好ましくは4.9GPa以上である。フィルムの弾性率が3.4GPaより小さければ、熱処理中のフィルムの収縮で破損および変形しやすくなり、得られるグラファイトの結晶性は劣り、熱伝導性が劣る傾向にある。
フィルムの吸水率は、下記のごとく測定した。フィルムを絶乾するために、100℃で30分乾燥して、25μm厚み10cm角のサンプルを作製した。この重量を測定してA1とする。25μm厚み10cm角のサンプルを蒸留水に23℃で24時間浸漬し、表面の水を拭いて除去し直ちに重量を測定した。この重量をA2とする。下記式より吸水率を求めた。
吸水率(%)=(A2−A1)÷A1×100
<ポリイミドフィルムの作製方法>
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種が実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによってポリアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、例えば次のような重合方法(1)−(5)が好ましい。
(1) 芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
(2) 芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマを得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
この好ましい1つの態様は、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成する方法である。
(3) 芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマを得る。続いて、このプレポリマに芳香族ジアミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
(4) 芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
(5) 実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
これらの中でも(2)、(3)に示すプレポリマを経由するシーケンシャル制御(シーケンスコントロール)(ブロックポリマー同士の組み合わせ・ブロックポリマー分子同士の繋がりの制御)をして重合する方法が好ましい。というのは、この方法を用いることで、複屈折が大きく、線膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得られやすく、このポリイミドフィルムを熱処理することにより、結晶性が高く、密度および熱伝導性が優れたグラファイトを得やすくなるからである。また、規則正しく、制御されることで、芳香環の重なりが多くなり、低温の熱処理でもグラファイト化が進行しやすくなると推定される。また複屈折を高めるために、イミド基含有量を増やすと、樹脂中の炭素比率が減り、黒鉛処理後の炭素化収率が減るが、シーケンシャル制御をして合成されるポリイミドフィルムは、樹脂中の炭素比率を落とすことなく、複屈折を高めることが出来るために好ましい。炭素比率が高まるために、分解ガスの発生を抑えることができ、外観上優れたグラファイトフィルムが得られやすくなる。また芳香環の再配列を抑えることができ、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル(3,3’−オキシジアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−オキシジアニリン)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
特に、線膨張係数を小さくして弾性率を高くかつ複屈折を大きくし得るという観点から、本発明におけるポリイミドフィルムの製造では、下記式(1)で表される酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
ここで、R1は、下記の式(2)〜式(14)に含まれる2価の有機基の群から選択されるいずれかであって、
ここで、R2、R3、R4、およびR5の各々は−CH3、−Cl、−Br、−F、または−OCH3の群から選択されるいずれかであり得る。
上述の酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得られ、このことはグラファイト化過程において水分による発泡を防止し得るという観点からも好ましい。
特に、酸二無水物におけるR1として式(2)〜式(14)に示されているようなベンゼン核を含む有機基を使用すれば、得られるポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が高く、さらには吸水率が低くなるという観点から好ましい。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きく、吸水率を小さくするためには、本発明におけるポリイミドの合成に下記式(15)で表される酸二無水物を原料に用いればよい。
特に、2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を有する酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むけれども全体として非常に直線的なコンフォメーションをとりやすく、比較的剛直な性質を有する。その結果、この原料を用いることによってポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくすることができ、例えば1.5×10-5/℃以下にすることができる。また、弾性率は500kgf/mm2(490GPa)以上に大きくすることができ、吸水率は1.5%以下に小さくすることができる。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
また、本発明においてポリイミドの合成に用いられる最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これらの単独または2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが10モル%以上、さらには20モル%以上、さらには30モル%以上、またさらには40モル%以上を含むことが好ましい。これらのジアミンの含有量がこれらのモル%範囲の下限値未満になれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジアミンの全量をp−フェニレンジアミンにすると、発泡の少ない厚みの厚いポリイミドフィルムを得るのが難しくなるため、4,4’−オキシジアニリンを使用するのが良い。また炭素比率が減り、分解ガスの発生量を減らすことができ、芳香環の再配列の必要が減り、外観、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。
本発明においてポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物および/または式(15)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または2者の合計モルが全酸二無水物に対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が40モル%未満であれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。
また、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グラファイト等の添加剤を添加しても良い。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。
次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、またはポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いてもよい。中でも、イソキノリンのように沸点の高いものほど好ましい。というのは、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。特に、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすく、また比較的低温で迅速なグラファイト化が可能で、品質のよいグラファイトを得ることができるという観点からケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することは、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が大きくなり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するので加熱処理においてイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた工業的に有利な方法である。
具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒からなるイミド化促進剤を加えて、支持板、PET等の有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。この加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲内にあることが好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを容器に接触させたり固定・保持したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
<グラファイト化の方法>
本発明の高分子フィルムのグラファイト化は、2000℃以上の温度で熱処理して行う。
熱処理は、高分子フィルムを炭素化させる工程と黒鉛化させる工程の二つの工程からなる。炭素化と黒鉛化は、別々に行っても良いし、連続的に行っても良い。
炭素化は、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは窒素ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常800〜1500℃の温度で行われる。また、炭化の最高温度に達した時点で30分から1時間程度、最高温度のまま温度の保持を行っても良い。例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度の保持を行っても良い。昇温の段階では、出発高分子フィルムの分子配向性が失われないように、フィルムの破損が起きない程度に膜面に垂直方向に圧力を加えてもよい。
次に、黒鉛化は、炭素化した高分子フィルムを一度取り出した後、黒鉛化用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素化から黒鉛化を連続的におこなっても良い。黒鉛化は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。熱処理温度としては最低でも2000℃以上が必要で、最終的には2400℃以上、より好ましくは、2600℃以上さらに好ましくは2800℃以上で熱処理することが、熱伝導性、表面硬度、密度、表面の接着性、外観に優れたグラファイトを得るためにはよい。
熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒーターに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。グラファイトヒーターの消耗は2700℃以上で進行し、2800℃ではその消耗速度が約10倍になり、2900℃ではさらにその約10倍になる。したがって、原材料の高分子フィルムの改善によって、良質のグラファイトへの転化が可能な温度を例えば2800℃から2700℃に下げることは大きな経済的効果を生じる。なお、一般に入手可能な工業的炉において、熱処理可能な最高温度は3000℃が限界である。高分子フィルムを一旦炭素化して取り出した後、これを黒鉛化しても、炭素化と黒鉛化を連続的におこなっても良い。
<高分子フィルムの固定方法・保持方法>
本発明の熱処理では、容器に高分子フィルムを固定して行われてもよい。本発明のような2000℃の温度領域まで加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、繰り返し用いる場合には好ましい。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、高分子フィルムを容器に巻きつける方法でも良い。容器の形状は、高分子フィルムを接触させることができる限りにおいて、特に制約を受けない。
なお、黒鉛製容器内に、高分子フィルムを接触させる方法(例えば、保持する方法・固定する方法を含む)とは、例えば、高分子フィルムをグラファイト板で挟んだ上で、グラファイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に接するように接触させる方法(保持させたり、固定させたりしてもよい)や円筒の黒鉛容器に巻きつける方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるものではない。
<高分子フィルムのグラファイト化>
高分子フィルムのグラファイト化機構について説明する。
高分子フィルムのグラファイト化は、炭素化と黒鉛化の2段階を経由して起こる。まず、一般に炭素化とは、高分子フィルムを1000℃まで熱処理して、炭素分が主成分となる物質に変化させる過程のことを意味する。具体的には、高分子フィルムを分解温度で熱処理すると結合の開裂が起こり、分解成分は二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素等のガスとなって離脱し、1000℃まで熱処理されると、炭素が主成分の材料となる。次に黒鉛化とは、炭素質材料を2800℃以上の温度で熱処理し、芳香環が平面状に繋がったグラファイト層が多数積層した構造に変換させる過程のことを意味する。
しかし、高分子を熱処理して得られた炭素質材料が全て黒鉛になるわけではなく、エポキシやフェノール樹脂を熱処理して作製した炭素質材料は、2800℃以上の温度で熱処理しても黒鉛になることはなくガラス状炭素のままであり、ポリイミド、ポリオキサジアゾール等の芳香環を有する高分子で芳香環が面内にある程度配向し、耐熱性が高い限られた高分子材料を熱処理して得られる炭素質材料でのみが黒鉛となる。
<ポリイミドフィルムを含む、原料フィルムのグラファイト化>
高分子フィルムのグラファイト化は上述の通り、炭素化と黒鉛化の2段階を経由しておこり、熱処理により炭素化した後、さらに高温で熱処理することでグラファイト構造に転化させられる。この過程では炭素−炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。グラファイト化をできる限り起こしやすくするためには、その開裂と再結合が最小のエネルギーで起こるようにする必要がある。出発原料フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)の分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与え、その分子配向はグラファイト化の際に炭素−炭素結合の開裂と再結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計を行うことによって、比較的低温でのグラファイト化が可能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすることによって一層顕著になる。
グラファイト化反応における第二の特徴は、原料フィルムが厚ければ低温でグラファイト化が進行しにくいということである。したがって、厚い原料フィルムをグラファイト化する場合には、表面層ではグラファイト構造が形成されているのに内部ではまだグラファイト構造になっていないという状況が生じ得る。原料フィルムの分子配向性はフィルム内部でのグラファイト化を促進し、結果的により低温で良質のグラファイトへの転化を可能にする。
原料フィルムの表面層と内部とでほぼ同時にグラファイト化が進行するということは、内部から発生するガスのために表面層に形成されたグラファイト構造が破壊されるという事態を避けることにも役立ち、より厚いフィルムのグラファイト化を可能にする。本発明において作製される原料フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)は、まさにこのような効果を生じるのに最適な分子配向を有していると考えられる。
<本発明の第2のグラファイトフィルムの製造方法>
本発明の第2の、内部に最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様を有する、グラファイトフィルムは、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理し、熱処理前および/または熱処理中に金属を含む物質と接触させて行う。
<金属を含む物質と接触させる方法>
本発明の金属を含む物質と接触させる方法としては、熱処理中に<<1>>固体状、<<2>>液体状、<<3>>気体状の金属を含む物質と接触させることが挙げられる。
具体的な方法としては、例えば、次のような方法(1)−(4)が好ましい。
(1)熱処理する前に、高分子フィルムの表面に金属を含む物質を形成する方法。
表面に金属を含む物質を形成する方法としては、金属を含む物質を塗布したり、蒸着したりする方法が挙げられる。この方法では、熱処理を開始する前は、高分子フィルムと金属を含む物質が直接接している。熱処理中に、金属を含む物質が、直接高分子フィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成される。熱処理温度が高くなるに従い、金属を含む物質が液体状態および/または気体状態となり、さらにより活発かつ均一にフィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成されると推定する。
(2)黒鉛化する前に、炭素化した高分子フィルムの表面に金属を含む物質を形成する方法。
この方法では、操作としては(1)の方法と同じである。但し、金属を含む物質が接触するのは、高分子フィルムではなく、既に炭素化したフィルムとである。熱処理中に、金属を含む物質が、直接炭素化したフィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成される。熱処理温度が高くなるに従い、金属を含む物質が液体状態および/または気体状態となり、フィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成されると推定する。(2)の方法は、(1)の方法よりも好ましいと考えられる。(1)の方法では、炭素化中に高分子フィルムと直接接するため、炭素化過程で金属を含む物質が高分子フィルムと相互作用することとなり、炭素化と同時に副反応を起こす場合が考えられる。一方(2)の方法では、原料が既に炭素化しているため、熱処理中に副反応を起こすことがなくなり、より品質の高いグラファイトが得られると推定される。
(3)高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムを、金属を含む容器に入れる方法。
金属を含む容器は、予め容器に金属が含有している容器、金属を含む物質や粉末を入れておいた容器等を挙げられる。この方法では、高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムは、一部金属を含む物質と接触しているが、(1)(2)の方法よりもその接触の程度は低いものとも考えられる。(3)の方法では、熱処理中に金属を含む物質が、容器内で拡散し、順次原料フィルムと接触することになると考えられる。また、金属を含む物質の種類によっては、気体となり、気体状で原料フィルムに接触することになる。(3)の方法は、(1)の方法よりも好ましいと考えられる。(3)の方法では、低温では接触が少ないが、熱処理温度が高くなってはじめて、金属を含む物質と原料フィルムの十分な接触が起こる。その結果、原料に高分子フィルムを用いた場合には、熱処理温度が高くなる炭素化過程で金属を含む物質と相互作用しにくくなり、炭素化中に副反応を起こしにくくなると推定される。またさらに、(3)の方法では、熱処理温度が高くなり、金属を含む物質の拡散が高くなってはじめて、原料フィルムと金属を含む物質との接触が起こり、金属を含む物質の拡散の度合いが高いために、フィルムに表面全体に非常に均一に相互作用する。特に気体状態ではその相互作用の均一性がより高まる。その結果、非常に品質の高いグラファイトが得られる。
(4)高分子フィルムに金属を含む物質を添加する方法。
具体的な方法としては、粉末状の微粒子を添加する方法が挙げられる。但し、ポリイミドを作製する前のポリアミド酸溶液の状態に、金属を含む物質を溶かした溶液を添加する方法は好ましくない。というのは、原料フィルム全体に分子状に金属が分散すると、ポリイミドを作製する過程で、副反応が起こり、均一なポリイミドフィルムを得ることが困難となる。さらに、ポリイミドフィルムに均一に分散していると、炭素化過程の副反応がひどくなり、品質の高いグラファイトを得るのが困難となる。この方法は(1)の方法よりも好ましくない。
<金属を含む物質>
金属を含む物質としては、金属単体、の化合物(酸化物、窒化物、ハロゲン化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられるが、これに限定されるものではない)、金属塩等が挙げられる。原料フィルムに直接接触させる場合には、金属を含む物質が溶媒に溶けることよい。というのは、塗布という簡単な方法で、原料フィルムの表面に均一に金属を含む物質を接触させることが出来るからである。金属の種類としては、IUPAC(国際純正・応用化学連合)無機化学命名法改訂版(1989年)による族番号4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、12族、13族、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、セレン、錫、鉛、ビスマス、が挙げられる。中でも、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウムが良く、さらに好ましくは、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケルである。特に好ましくは、鉄、コバルトである。これらは、熱拡散率、表面硬度、表面の接着性、外観に優れるために好ましい。
<従来の原料フィルムの熱処理によるグラファイト化>
従来の原料フィルムの熱処理によるグラファイト化では、熱処理により熱伝導性に優れたグラファイトを得ることは可能であるものの、表面硬度、表面の接着性、外観においてはまだ改善の余地が有る、グラファイトフィルムになる。特に原料フィルムの厚みが厚くなるほど、この傾向は顕著になると考えられる。この理由について説明する。
従来のグラファイト化では、炭素化及び黒鉛化は、原料フィルムの内部よりも表面から優先的に起こると考えられる。その結果、表面の緻密な層が内部に残留した未炭化成分由来の分解ガスを閉じ込め、高温に加熱された時に、内部に残留したガスが表面層を破って抜け出し、表面がはがれ、外観においてまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。さらに、黒鉛化過程のグラフェン層の再配列で、配列しきれない余分なグラフェン層が分解ガスとして発生し、表面層を破って抜け出し、表面がはがれ、外観においてまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。またさらに、表面部分のみ黒鉛化が進行し、内部歪みを受け、表面の黒鉛層が脱落したり、全体に黒鉛化が進行しすぎた結果、面間の剥離を起こしやすくなり、黒鉛層が脱落しやすいという点で、まだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。
その結果、表面の破損や表面の剥がれによって、表面に脆弱層ができ、その結果として、表面硬度、表面の接着性、外観にまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。このことから、表面硬度、表面の接着性、外観を兼ね備えた熱伝導性の高いグラファイトを得ることは依然として非常に困難な課題である。さらに、原料厚みが厚くなると、厚みの薄いものに比べて、熱処理における表面と内部の炭素化と黒鉛化の進行度により大きな差がでる傾向が有るため、各特性はまだ改善の余地が有る結果となる場合が多かった。
さらに、金属と接触させない場合では、面配向を高くすぎると、黒鉛化が進行しすぎ、表面から黒鉛がはがれることがあり、原料フィルムの面配向と均一にきれいなグラファイトを得ることを両立させることは非常に難しいことであった。
<本発明の、金属を含む物質を接触させるグラファイト化>
しかし、本発明の金属を含む物質を接触させるグラファイト化では、従来困難であった表面硬度、表面の密着性、外観を兼ね備えた熱伝導性の高いグラファイトを得ることができた。さらに、原料に面配向の高い高分子フィルムを用い、この原料を金属と接触させて熱処理をおこなえば、従来の技術では改善の余地のあった表面からの黒鉛剥がれという問題を改善するだけにとどまらず、熱伝導性にも優れ、表面硬度、密度、表面の密着性に優れたグラファイトを得ることが可能となる。面配向の高い高分子フィルムと、金属と接触させて熱処理することとを組み合わせることで、従来の技術では予見できない効果が得られた。この金属の影響について説明する。
従来の金属を含む物質と接触させない場合には、分解ガスや余分なグラフェン成分の気化による表層の破壊や表層の部分的な黒鉛化や黒鉛化の進行しすぎによる黒鉛脱離が生じた。
一方、本発明の金属を含む物質をフィルムに接触させて熱処理する場合には、(1)熱処理中に金属を含む物質が原料フィルムと相互作用し、熱処理中のフィルムを取り出しSEM断面観察をすると、該フィルム内部に当初の原料フィルムには観察されなかった最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様が形成され、フィルムの表面および/または内部で不均一層・不均一相が形成される。不均一層・不均一相が形成される理由としては、熱処理中に分解ガスや余分なグラフェン成分の気化による表層や内部の破壊した部分に、金属を含む物質が浸透拡散し、部分的にフィルムと反応することが考えられる。また、フィルムの内部まで不均一層・不均一相が形成される理由としては、熱処理が高温でおこわれるために、フィルム内部に浸透拡散し、反応がおこったと考えられる。また原料フィルムに含まれるリン酸水素カルシウム、リン酸カルシウムとったフィラーと反応することやフィラーの抜け落ちた部分に金属を含む物質が浸透拡散し、不均一層・不均一相が形成されることが推定される。このような不均一層・不均一相が形成されることにより、グラファイト化過程で発生する分解ガスが不均一層・不均一相から抜け出すことにより、熱処理中にフィルムが破損することを防止したと考える。また従来のグラファイト過程では、グラフェン層が面に発達し、グラフェン層が層状に剥離するが、内部に不均一層・不均一相が形成されることにより、剥離を部分的に固定し、剥離を防止することが可能となる。またさらに、不均一層・不均一相が形成されることにより、熱処理中にたまる歪を緩和することができると考える。
(2)また別の効果として、金属を含む物質と接触されることにより、表面部分のグラファイト化の進行を抑えることなり、黒鉛化が進行しすぎることを防ぎ、フィルム全体が均一に黒鉛化することとなると推定される。表面の黒鉛化が進行しすぎることにより、表面部分が一部はがれかけたとしても、はがれ端部は反応性が高いため、金属を含む物質が接触することにより、端部と端部が金属を介してゆるい結合状態をもち、剥がれることを抑制するものと推定する。但し、このような金属によって表面の黒鉛層が保持・維持された状態では、金属が不純物となり、熱伝導性を悪化させることも考えられる。しかし、内部のガス発生が終了、表面と内部の黒鉛化の均一化がはかられる後では、熱力学的に安定な、金属を含まない黒鉛の状態となるために、端部と端部をつなぎとめていた金属がはずれ、端部の再結合が起こり、金属は炭素の結合から外れることになると推定する。さらに、2000℃以上という黒鉛化温度は、金属を含む化合物の沸点を超えるものであり、黒鉛化過程で、金属を含む物質が気化し、最終的には不純物を含まない炭素のみからなる物質となり、熱伝導性の優れたグラファイトとなると考えられる。
<本発明の第3のグラファイトフィルムの製造方法>
本発明の第3の、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルム。さらに、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有するグラファイトフィルムは、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、通電可能な容器(A)内に保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化することで作製される。
<通電しながらグラファイト化する工程>
本発明の通電しながらグラファイト化する工程は、原料フィルムによって、大きく下記の3つに分類できる。
後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」内に、
(その1)「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その2)「高分子フィルム」を予備加熱処理することで「炭素化した高分子フィルム」を得た後、その「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その3)絶縁体である「高分子フィルム」を保持し、
該容器に電圧を印加し通電しながら、グラファイト化する工程を含むことを特徴とする。
下記に、(その1)から(その3)について、具体的に説明する。
(その1)原料に炭素化した高分子フィルムを用い、該フィルムを電圧印加による直接通電が可能な容器内に保持し、該容器へ電圧印加することで通電してグラファイト化する場合、該フィルムは、発熱した容器からの直接熱伝導<<1>>及びフィルムの自己発熱<<2>>による2つの手段で加熱され、品質の優れたグラファイトフィルムとなる。詳細を説明すると以下の通りである。
従来の通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では、加熱は、雰囲気ガスの熱伝導及び/またはヒーターからの輻射熱によりおこなわれるため、フィルムが加熱される手段は基本的には、フィルム表面から内部への熱伝導の1つのみである。
しかし本発明の方法では、炭素化した高分子フィルムと導電体(容器(黒鉛製容器であってもよい)及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、炭素化した高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。その結果、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。発熱した容器からの直接熱伝導及び後述するフィルムの自己発熱による2つの手段で加熱されフィルム内部まで十分加熱され、フィルムの表層及び内部で均一に熱処理される。
本発明では、電圧を印加し直接通電可能な容器に通電にすると、通電による発熱が生じる。
また、出発原料に炭素化した高分子フィルムを用いた場合、容器に電圧を印加すると、該フィルムは既に炭素化しているために炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて電流が流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、より電流が流れ、フィルム自体が発熱する。特に、電流は表層及び内部の両方に流れるため、発熱は表層及び内部の両方で同時に進行する。その結果、均一な黒鉛化が起こる。
さらに、電流は、炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、フィルムに流れる電流量が増え、フィルムの発熱量が増加し、黒鉛化が進行しやすくなる。特に、部分的に発熱が大きくなったとしても、フィルムそのものが発熱しかつ黒鉛化が進行するに従い熱伝導性が高まるために、フィルム全体に熱が伝わり、フィルムは均一に加熱される。
グラファイトになる前の炭素化した高分子フィルムは、グラファイトと比べて熱伝導性に劣る傾向が有る。そのため、従来のような通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では加熱手段が熱伝導の1つのみであることから、内部まで熱が十分伝わりにくく、表層と内部で黒鉛化の状態に差ができやすく、表層のみ黒鉛化し、内部に黒鉛化の不十分な部分が残る傾向が有る。結果、従来の方法では、高温に熱処理した場合に、内部の不十分な部分が発泡破裂し、フィルムがボロボロになった。
一方、本発明の方法では、電圧を印加し直接通電可能な容器そのものが電圧印加に伴い発熱しているのと同時に、炭素化・黒鉛化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて、炭素化した高分子フィルムの炭素化部分に、電流が流れ、フィルム自体が発熱する。したがって、発熱した容器からの直接熱伝導及びフィルムの自己発熱による2つの手段によって、フィルムに十分熱を供給することが可能となり、内部の熱伝導性が悪い部分にも充分熱が供給され、表層のみ黒鉛化されることなく、表層と内部が同時に黒鉛化が進行する。
さらに、フィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラファイトが結晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
(その2)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、該フィルムを、不活性ガス雰囲気下および/または減圧下で予備加熱処理して得られる、炭素化した高分子フィルムを使用できる。このようにして炭素化した高分子フィルムは、(その1)で上記記載したとおりの方法で、グラファイト化が可能である。
(その3)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、グラファイトに至るまでの炭素化過程の最初から通電によるため、炭素化も均一に起こりやすい。また、絶縁体の高分子フィルムであっても、本発明の製造方法によれば、その絶縁体の高分子フィルムと導電体(黒鉛製容器及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、絶縁体高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。従って、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。
このように本発明では、絶縁体の高分子フィルムであっても、両方の表面に導電体が接しているため、電圧を印加し通電して加熱する場合、当初は、フィルムの両方の表面から炭素化が進行し、引き続き、フィルム内部の炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じてフィルム内部にも電流が流れ、また炭素化の進行に伴いフィルムに流れる電流量が増え、最終的に表面及び内部での均一な発熱が起こるため、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラファイトの結晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
本発明によるグラファイトフィルムが従来製造方法によるグラファイトフィルムよりも優れた均一性を発現する理由や機構については、学術的詳細研究がさらに必要ではあるが、上記のとおり、推定できる。
<電圧を印加し通電する方法>
本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および/又は直流電圧を印加し、通電することをいう。
本発明の原料フィルムのグラファイト化プロセスは、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程を含むことによって行なわれる。例えば次のよう方法「1」−「4」で通電されるのが好ましい。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。
「1」黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「2」黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボン粉末で覆い(充填し)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「3」黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し(黒鉛製容器と原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「4」黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し(黒鉛製容器と原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、さらに該黒鉛製容器をカーボン粉末で覆い(黒鉛製容器の外部周辺にカーボン粉末が充填されてい状態で)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
直接通電可能な容器及び製造されたフィルムの電気伝導性から考えて、サンプルの大きさにもよるが、通電の結果、例えば原料フィルムには10mA以上の電流が流れ、ジュ−ル熱により容器および/またはフィルムが発熱する。特に、初期絶縁体で途中から導電体に変換する場合であっても、投入電力を制御することにより急激な温度上昇を防止することで、安定的に高品質のグラファイトフィルムを製造できる。
従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触している部分や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面からおこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
しかし、本発明にある電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程では、結果として原料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。さらに、125μmや225μm程度の、従来より厚い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱されるため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
通電方法「2」である、黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボン粉末で覆い、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法は、通電方法「1」である黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法よりも、熱伝導性が高く、特性にバラツキのない優れたグラファイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛製容器をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一におこるためである。
またさらに、通電方法「3」「4」にあるように、黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持することも、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一になるために好ましい。
通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温度としては最低でも2400℃以上が必要で、好ましくは2600℃以上、最終的には2700℃以上の温度で熱処理することが好ましく、2800℃以上で熱処理することがより好ましい。
<電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持する方法>
電圧を印加し直接通電可能な容器(例えば黒鉛製容器)内に、原料フィルムを保持する方法とは、例えば、原料フィルムを金属板やグラファイト板で挟んだ上で、金属板やグラファイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に接するように保持する方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるものではない。
<通電可能な容器(A)内に、原料フィルムを保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながらグラファイト化する方法>
本発明のグラファイトフィルムの通電加熱によるグラファイト化方法は、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」(A)内に保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながらグラファイト化する工程を含むことを特徴とする。
<直接通電可能な容器(A)の直接通電可能な容器(B)内への保持方法>について
まず、本発明の第一の通電によるグラファイト化方法について述べる。容器(A)を容器(B)内に保持しないような場合、すなわち、容器を2つ使用せず1つの容器を使用して高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムの直接通電によるグラファイトの製造方法では、原料フィルムを1つの直接通電可能な容器内に保持して、該容器一つ一つの外部周辺にカーボン粉末で充填し、全体に通電してグラファイトフィルムを作製する。この場合、多数の該容器をそれぞれカーボン粉末で覆って通電し、グラファイトを作製した場合には、カーボン粉末の充填密度や該容器自身それぞれの電気抵抗の差に起因して、作製したグラファイトの品質が、原料フィルムを保持した容器によって、品質に差が生じる場合があった。
次に、本発明の第二の通電によるグラファイト化方法について述べる。本発明の原料フィルムのグラファイト化プロセスは、電圧を印加し、直接通電可能な容器内(A)に、該原料フィルムを保持し、さらに直接通電可能な容器(B)に該原料フィルムが保持されている容器(A)を保持する。例えば図9〜11のいずれかで示されている保持方法がある。ここでは、該容器(A)を直方体、該容器(B)を円筒として記載しているが、該容器(A)と該容器(B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
1.図9は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触しないように保持されている状態である。
2.図10は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺にカーボン粉末を覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態である。
3.図11は、該原料フィルムが保持されている直接可能な容器(A)を、直接通電可能な容器(B)に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態である。図11では該容器(B)内への該容器(A)の保持にはカーボン粉末が使われていない。
本発明では、原料フィルムを保持した該容器(A)を該容器(B)内に保持することで、該容器(A)に加わる電圧および/または熱を均一化でき該容器(A)間で作製されたグラファイトの品質には、差が生じないという特徴がある。さらに、原料フィルムを保持した該容器(A)の外部周辺のカーボン粉末の存在密度(充填する場合には充填密度)を均一にでき、多数の該容器(A)を用いた場合であっても、該容器(A)間で作製されたグラファイトの品質には、差が生じないという特徴がある。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)を直接通電可能な容器(B)内に保持し、電圧を印加し、通電する場合には、該容器(A)と該容器(B)が接触していないほうが好ましい。その理由は以下に示す通りである。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは、充填している状態で、))直接通電可能な容器(B)内に該容器(A)を該容器(B)と接触しないように保持していれば、電圧を印加し通電する場合、該原料フィルムを保持した該容器(A)への通電が、該容器(A)の外部周辺に存在する(好ましくは充填した)カーボン粉末を介して該容器(A)全面に均一に起きる。このために、該容器(A)には、部分的な電圧の偏りが生じず均一な通電発熱が発生し、該原料フィルムが品質のバラツキがない優れたグラファイトとなる。
一方で、該容器(A)と該容器(B)が接触している状態で、電圧を印加し通電すると、該容器(A)と該容器(B)が接触している部分からのみ該容器(A)への通電が起こるために、該容器(A)には均一な通電発熱の発生が達成されず、該原料フィルムのグラファイト化の均一性が1.の場合より不充分なものとなる。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺にカーボン粉末を覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填している)状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態では、該容器(A)への通電が、該容器(B)と接触している部分と、該容器(A)の外部周辺を覆っているカーボン粉末から2つの経路で通電が起きるが、該容器(B)とカーボン粉末とでは電気抵抗が異なるために、電気抵抗が低いほうから通電が起き、該容器(A)の通電発熱の均一性が2.の場合より不充分なものとなる。
従って、該容器(B)への該容器(A)の保持方法として、一番好ましいのは、前記1.であり、次に2.、次に3.である。
また、図9〜11のいずれかの保持状態に加えて、さらに、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器(A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器(B)の外部周辺にカーボン粉末が覆っている状態(該容器(B)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)であっても良い。
<該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器(A)に通電する方法>
本発明の原料フィルムのグラファイト化プロセス、特に、通電方法について説明する。
本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および/又は直流電圧を印加し、通電することをいう。
該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器(A)/原料フィルムへの通電方法は、例えば次のような方法(1)と(2)がある。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。また、該容器(A)を直方体、該容器(B)を円筒として記載しているが、該容器(A)と該容器(B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
(1)図12に示すような該容器(A)の保持方法であり、黒鉛製容器(B)内に外部周辺をカーボン粉末で覆った黒鉛製容器(A)を黒鉛製容器(B)と接触しないように保持し(該容器(A)と該容器(B)の間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、保持し)、直接、黒鉛製容器(B)に電圧を印加し、黒鉛製容器(B)およびカーボン粉末を介して、黒鉛容器(A)/または原料フィルムに通電する方法。
(2)図13に示すような保持方法であり、黒鉛製容器(B)内に黒鉛製容器(A)を黒鉛製容器(B)と接触しないように黒鉛製容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で保持し(該容器(A)と該容器(B)の間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、保持し)、さらには、黒鉛製容器(B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、(黒鉛製容器Bの外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、)該容器(B)の外部周辺に存在している(このましくは充填されている)カーボン粉末に電圧を印加し、該容器(B)を覆っているカーボン粉末、黒鉛製容器(B)、そして該容器Aと該容器Bの間のカーボン粉末を介して、黒鉛容器(A)/または原料フィルムに通電する方法。
図13に示す保持方法は、図12に示す保持方法よりも、熱伝導性が高く、特性にバラツキのない優れたグラファイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛製容器(B)をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一におこるためである。
(1)〜(2)のいずれかに記載した、該容器(A)/原料フィルムへの通電方法に加えて、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器(A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器(A)と該容器(B)が接触している状態であっても良いことは、いうまでもない。
従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触している部分や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面からおこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
しかし、本発明にある電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程では、結果として原料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。さらに、125μmや225μm程度の、従来より厚い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱されるため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温度としては最低でも2400℃以上が必要で、好ましくは2600℃以上、最終的には2700℃以上の温度で熱処理することが好ましく、2800℃以上で熱処理することがより好ましい。
なお、本発明で記載の温度は、例えば直接通電可能な容器の外壁や内部の一部などにおいて、放射温度計などを使用して計測することができる。
なお、本明細書で使う「熱処理」という言葉は、下記のような広義の意味で用いる。従来技術の場合は、概ね、「熱処理」とは、減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱を指す。一方で、本発明の特徴である通電についても、通電の結果生じる熱が原料フィルムに伝わることを「熱処理」と概括的に表現している場合が有る。従来技術との対比で説明する場合に、従来の減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱、通電の結果生じる熱が原料フィルムに伝わる場合を、区別なく説明する際に、特に注釈を付けずに複数の原理が有りうる「熱処理」という表現をすることが有る。
<通電方向と原料フィルムの法線との成す角度>について
本発明では、通電方向と該原料フィルムの位置関係は、原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの法線との、成す角度が0度より大きく180度未満であればよい。ここでいう、成す角度とは、通電における正極から負極への通電方向を直線で表した場合の、原料フィルムの面方向に対する法線との成す角度を意味する。
原料フィルムの面方向に対する法線と、通電方向を示す直線との、成す角は、好ましくは60度以上120度以下、さらに好ましくは75度以上105度以下、最も好ましくは90度である。
原料フィルムへの通電方向と原料フィルムの法線の成す角と90度がもっとも好ましい理由としては、成す角が90度であれば、通電方向が原料フィルムの面方向であるために、原料フィルムに均一な通電が可能であり、品質の優れたグラファイトフィルムが得られる。
一方で、通電方向と原料フィルムの面方向に対する法線との成す角が0度で、通電方向が原料フィルムの厚み方向である場合、原料フィルムを容器(A)内に保持するために用いられている板状の通電可能な黒鉛を介して、原料フィルムに通電が起きるために、成す角が90度に比べて、原料フィルムへの通電が妨げられる場合がある。このために、成す角が0度に比べて、90度のほうが原料フィルム自身の通電による加熱には有利である。
また、成す角が0度では、通電方向が原料フィルムの厚み方向であるのに対して、成す角90度では、通電方向が原料フィルムの面方向であることから、成す角90度のほうが通電距離が長く、このために、成す角90度であるほうが通電時の原料フィルム自身の発熱にも有利である。
<電圧を印加し直接通電可能な容器>
本発明の、電圧を印加し直接通電可能な容器とは、例えば、タングステン製、モリブデン製、黒鉛製の容器である。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、原料フィルムを容器に巻きつける方法でも良い。容器の形状は、原料フィルムを保持できる限りにおいて、特に制約を受けないが、作製の容易さ、工業的入手の容易さという観点から、例えば、直方体や立方体の形状をしており、ブロック状、蓋などが有る弁当箱状などの形状が、好ましい。
なお、使用される容器や、本明細書中に記載の容器(A)や容器(B)は、それぞれ独立に、容器内を密閉状態で使用してもよいし、密閉状態で使用しなくてもよい。
密閉状態にする方法としては、それぞれの容器に、密閉状態が実現できるような覆いを設ける方法が考えられる。密閉状態の場合には、加温・降温された結果膨張・収縮した気体の存在に伴って、容器内部が、常圧に比べて加圧されている状態や、常圧に比べて減圧されている状態を達成しうる。
密閉状態にしない方法は、それぞれの容器(容器(A)、容器(B)、それぞれ独立に)に覆い(例えば蓋など)を設けるものの、容器と覆い(例えば蓋など)との間を通じて、加温・降温された結果膨張・収縮した気体が、出入り可能な状態であるような状態を実現する方法などが有る。もちろん、容器(容器(A)、容器(B))をそのまま用いて、覆いを設けない方法も、密閉状態にしない方法の一態様である。
本発明においては、容器の内部が、密閉されても、密閉されなくても良い。
<黒鉛製容器>
本発明のような2500℃の温度領域まで通電によって加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、使用される容器(A)や容器(B)としては、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、電流を流しまた繰り返し用いる場合には好ましい。
<直接通電可能な容器(B)が円筒である>について
本発明では、該容器(B)は特に形状の限定はないが、円筒であることが好ましい。これは、通電時に、円筒であるほうが、角筒であるよりも、電圧の偏りが生じにくいため、該容器(A)の全体にわたって均一な通電加熱に有利であるためである。容器(А)については特には形状の制限はないが、工業的な入手の容易さ等を勘案すると立方体、直方体などの角筒、もしくは円筒の形状で、操作上の利便性から蓋つきのものが良い。
<原料フィルムが絶縁体>
また、製造工程の初期において原料フィルムが絶縁体であるとよい。というのは、炭化処理を通電加熱によって行われると、均一な炭化が起こり、その結果、黒鉛化中にフィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。その結果として、熱伝導性の優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
<カーボン粉末>
本発明において用いられるカーボン粉末は、下記に説明するカーボン粒子や、黒鉛粒子であってもよい。
<黒鉛粒子>
本発明において用いられる黒鉛粒子は、本発明のような2500℃の温度領域まで(通電によって)加熱される。ここでいう黒鉛粒子の素材である黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、グラファイトクロスを粉砕したもの、等方性黒鉛を粉砕したもの、押出製黒鉛を粉砕したもの、カーボンブラック、等が挙げられる。黒鉛粒子の粒子形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものではない。
<カーボン粒子>
本発明において用いられるカーボン粒子は、本発明のような2500℃の温度領域まで(通電によって)加熱される。
ここでいうカーボン粒子とは、炭素を主に含む粒子である限りにおいて、特に限定されるものではない、広い概念である。例えば、有機物を主に含む物質や粉末や繊維を熱処理した後、粒子状に粉砕したものや、造粒したものでもよい。熱処理の温度は、200℃以上、好ましくは、500℃以上、さらに好ましくは1000℃以上や1500℃以上である。また、天然および/または人工のピッチ、コークス、カーボンブラックのような炭素を主に含む物質を用いてもよい。また、カーボン粉末は黒鉛であっても良い。ここでいうとは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、グラファイトクロスを粉砕したもの、等方性黒鉛を粉砕したもの、押出製黒鉛を粉砕したもの、等が挙げられる。カーボン粒子の粉末形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものではない。
<通電加熱しながら金属を含む物質と接触させる方法>
また、原料フィルムと金属を含む物質とを接触させた状態(金属、金属を含むカーボン粉末、金属を含むカーボン容器が存在する)に通電がなされると、原料フィルムに加え、金属も加熱され、拡散が起こりやすくなり、原料フィルムと均一に相互作用をおこし、フィルム全体で均一なグラファイト化が進行する。さらに、金属に通電されると、金属の反応性が高まり、原料フィルムとの反応が促進されたために、各特性に優れたグラファイトフィルムが得られたと推定する。また、通電中は、フィルムが容器および/またはカーボン粉末で覆われているために、十分金属の効果が発揮しやすくなり好ましい。
以下において、本発明の種々の実施例がいくつかの比較例と共に説明される。
(グラファイトフィルム1)
一般に入手可能な大塚電気(株)のeGRAF「1210」である。
(グラファイトフィルム2)
一般に入手可能な松下電器産業(株)製のPGSグラファイトシート「EYGS182310」である。
(ポリイミドフィルムAの作製方法)
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥された。
出来上がり厚みが75μmの場合におけるフィルム作製用の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、フレームに固定された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒーターにて460℃で23秒段階的に加熱されて乾燥された。
以上のようにして、厚さ75μmのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルムA:弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10-5/℃)が製造された。なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例して焼成時間が調整された。例えば厚さ225μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を3倍に設定した。また、厚みか厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
実際のグラファイト化においては、上記方法と同様にして作製された(株)カネカ製・アピカルAHの厚さ75、225μmのポリイミドフィルムを用いた。
(炭素化フィルムA’の作製方法)
ポリイミドフィルムAを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まて昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)が行われた。この炭素化フィルムを炭素化フィルムA’(原料フィルム厚み:75μm、225μm)とする。
(グラファイトフィルム3の作製方法)
炭素化フィルムA’(75μmポリイミドフィルムAの炭化処理品)を黒鉛板に挟み、黒鉛容器にセットした。この容器全体を、黒鉛化炉を用いて、2100℃以下では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で3000℃まで昇温された後、3000℃で1時間熱処理し、グラファイトフィルムが作製された。
(グラファイトフィルム4の作製方法)
炭素化フィルムA’(225μmポリイミドフィルムAの炭化処理品)に硝酸鉄の10wt%メタノール溶液を塗布した後、黒鉛板に挟み、黒鉛容器にセットした。この容器全体を、黒鉛化炉を用いて、2100℃以下では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で3000℃まで昇温された後、3000℃で1時間熱処理し、グラファイトフィルムが作製された。
(グラファイトフィルム5の作製方法)
炭素化処理により得られた炭素化フィルムA’(400cm2(縦200mm×横200mm))を、縦270mm×横270mm×厚み3mmの板状の平滑なグラファイトで上下から挟み、図14に示す縦300mm×横300mm×厚み60mmの直接通電可能な黒鉛容器(容器(A))内に、保持した。
該容器(A)は、図15に模式的に示すように原料フィルムの面方向が直接通電可能な円筒容器(B)(さらに詳細に説明すると具体的には、図14に模式的に示すような、直接通電可能な、蓋付きの円筒容器(B))の円筒の高さ方向と平行になるように保持し、該容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆い(容器(A)と容器(B)の間にカーボン粉末を充填し)、また図17に示すように該容器(A)を該容器(B)と接触しないように、保持した。図17に示すように該容器(B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、電圧を該容器(B)の円筒の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に印加し、通電することで、3000℃まで加熱し、グラファイトフィルムA’’、B’’が作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は、90度である。
なお前述した図16は、容器(B)に蓋をする前の模式図である。
(グラファイトフィルム6の作製方法)
炭素化フィルムA’(225μmポリイミドフィルムAの炭化処理品)に硝酸鉄の10wt%メタノール溶液を塗布した後、黒鉛板に挟み、黒鉛容器にセットした以外は実施例5と同様にしてグラファイトフィルムが作製された。
グラファイトフィルム1〜6の熱拡散率(今回、発明者・出願人が測定したもの)、密度(今回、発明者・出願人が測定したもの)、熱伝導率、厚みが表1に示されている。
なお、表1に記載の比較例のグラファイト作製方法は、公知文献によって推定したものである。また、表1に記載の実施例2の原料は、ポリイミドフィルム(東レデュポン(株)製KAPTОN300Hであり、(株)カネカ製ではない)であると推定している。
グラファイト化の進行状況は、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定され、熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定された。
熱拡散率の値は、実施例1、実施例2、実施例4、実施例3、実施例6、実施例5の順で高くなっており、実施例1では2.5×10-42/s、実施例2では7.2×10-42/s、実施例4では8.5×10-42/s、実施例3では8.9×10-42/s、実施例6では9.5×10-42/s、実施例5では10.0×10-42/sとなっていた。
得られたグラファイトフィルムを、縦20mm×横10mmの短冊状の大きさにカッターナイフで切り取った。さらにこのフィルムの一端に面方向に剃刀で微小な切り目を入れ、その切り目の反対側から力を加え、フィルムを割断させることで、グラファイトフィルムの断面を出し、SEMによるフィルムの断面の観察をおこなった。
なお、この割断の模式図を図18に示した。図18の6は短冊状のグラファイトフィルムである。図と対応して、再度説明すると、次の通りである。
グラファイトフィルムを、縦20mm×横10mmの短冊状の大きさにカッターナイフで切り取ったものが、図18の7である。さらにこのフィルムの一端に面方向に剃刀で微小な切り目を入れ、その切り目の反対側から力を加え(割断時に、グラファイトフィルムに軽く力をかける方向が、図18の8である)、剃刀刃がグラファイトフィルムに対して相対的に進む方向(図18の9)に向かって進む結果、フィルムを割断させることで、グラファイトフィルムの断面を出し、SEMによるフィルムの断面の観察をおこなった。
グラファイトフィルムの断面の観察装置には、日立製走査型電子顕微鏡S−4500型を用い、加速電圧5kVで観察した。
グラファイトフィルム1は、原料に天然黒鉛を用いており、図19のとおり、表面層および表面層以外の断面模様は、グラファイト結晶子が発達しておらず、低密度なグラファイト層の断面模様であった。
グラファイトフィルム2は、原料にポリイミドフィルムを熱処理して作製されていると推定され、図20のとおり、表面層および表面層以外の断面模様は、グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、低密度なグラファイト層の断面模様であった。
グラファイトフィルム3は、原料フィルムに75μmアピカルAHを用いて、雰囲気加熱により得られたものであり、図21のとおり、表面層および表面層以外の断面模様は、グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、また、この断面模様は実施例2のPGSグラファイトシートの断面模様と類似していることがわかる。但し、熱拡散率は、グラファイトフィルム2よりも優れている。
グラファイトフィルム4の断面模様は、図22のとおり、該フィルム内部に、当初の原料フィルムには観察されなかった最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様(不均一層)が形成されていた。さらに、グラファイトフィルム1〜3、5のような層間に空気層はなくが密な状態であった。このような構造を有しているために、優れた熱伝導特性に加え、鉛事硬度はHB以上、密度1.9g/cm3以上、ビール強度5.0N/cm以上、外観8以上と各特性に優れていた。
グラファイトフィルムの鉛筆硬度は、JIS K 5400(1990年)(JIS K 5600(1999年))「塗料一般試験方法」の8.4.1 試験機法に準じて、評価された。評価値は2B、B、HB、Hといった鉛筆硬度で示され、この順で、表面硬度が高くなり、グラファイトの表面硬度が高いことを意味している。
グラファイトフィルムの密度は、グラファイトフィルムの重量(g)をグラファイトフィルムの縦、横、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出された。なお、グラファイトフィルムの厚みは、任意の10点で測定した平均値を使用した。密度が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
グラファイトフィルムのピール強度は、JIS Z 0237(1980年)「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて、評価した。値が大さいほど、表面の接着剤や粘着剤に対する接着性が高いことを意味している。
グラファイトフィルムの外観は、JIS K 5400(1990年)(JIS K 5600(1999年))「塗料一般試験方法」の8.5.3 Xカットテープ法に準じて、評価した。値は0〜10の範囲で示され、値が大きいぼど、表面の剥がれが少なく、外観の綺麗なグラファイトであることを意味している。
グラファイトフィルム5の断面模様は、図23であり、図24には、図23の表面層を拡大した断面SEM像である。該グラファイトフィルムは、表面層ではグラファイト結晶子が面方向に発達しこれらが積層した高密度なグラファイト層の断面模様であり、表面層以外ではグラファイト結晶子が面方向に発達しているがこれらは積層しておらず空気層に富んだグラファイト層の断面模様であるといえる。
また、この断面模様は、フィルム全体にわたって、表面層に高密度にグラファイト層が積層しており(1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有する)、表面層以外では空気層に富んだグラファイト層であることがわかる。また、図23の表面層を拡大した図24の断面SEM像を見ると、この表面層に積層したグラファイト層が非常に高密度であり、厚みが10μm以上(略長方形とみなすと、短辺10μm以上である)であることがわかる。グラファイトフィルム5は、この表面層に高密度に積層したグラファイト層が存在するために、グラファイトフィルム1〜3に比べて密度が高い。この様に実施例5のグラファイトフィルムは、フィルム全体にわたって、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムである。
熱拡散率の値は、グラファイトフィルム5の本発明のグラファイトフィルムが最も優れており、その値は10.0×10-42/sであった。これは、グラファイトフィルム5は、表面層に非常に高密度に積層したグラファイト層が少なくとも5μm以上の厚みで形成されており、厚いものでは20μmの厚みを有しているため優れたと考えられる。グラファイトフィルム5は通電加熱により作製されており、グラファイトフィルム2、3の雰囲気加熱に比べて均一加熱が達成されるために、面方向にグラファイト結晶子が発達し、それが高密度に積層したグラファイト層が形成されたと考えられる。グラファイトフィルム2、3においても、表面層に積層したグラファイト層が見られるが、グラファイトフィルム5のほうが明らかに表面層に積層したグラファイト層が厚いことがわかる。グラファイトフィルム2のグラファイトフィルムは、表面層に積層したグラファイト層は観察されなかった。このために、本発明のグラファイトフィルムは従来のグラファイトフィルムに比べて熱拡散率に優れていると考えられる。
また、このグラファイトフィルム5の前記表面層の高密度に積層したグラファイト層のうねりは20μm以下であり、フィルムの面方向に発達しており、100μm以上にわたって途切れていないことも、熱拡散率に優れた理由として考えられる。
グラファイトフィルム5のグラファイトフィルムは、グラファイトフィルム1〜3のグラファイトフィルムと同様に柔軟性にも優れていた。これは、表面層が高密度に積層したグラファイト層である一方で、表面層以外で空気層に富んだグラファイト層が形成されているため柔軟性に優れたと考えられる。また、グラファイトフィルム5のグラファイトフィルムは表面層に高密度なグラファイト層を形成しているために高強度なグラファイトフィルムである。
グラファイトフィルム6の断面模様は、図22と同様のであり、該フィルム内部に、当初の原料フィルムには観察されなかった最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様(不均一層)が形成されていた。さらに、グラファイトフィルム1〜3、5のような層間に空気層はなくが密な状態であった。このような構造を有しているために、優れた熱伝導特性に加え、鉛事硬度はHB以上、密度1.9g/cm3以上、ビール強度5.0N/cm以上、外観8以上と各特性に優れていた。グラファイトフィルム6はグラファイトフィルム4よりもグラファイトの層が面に発達しており、さらに密な状態であったため、グラファイトフィルム6の方が実施例4よりも各特性に優れたものであった。
(実施例1〜6)
実施例1〜6では、図3の122(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体)にグラファイトフィルム1〜6を含む材料を使用し、図3の128(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体)は形成させずに、発光ダイオードが作製される。発光ダイオード素子は、窒化ガリウムである。透光性封止樹脂は、エポキシ樹脂を用いる。
(実施例7)
実施例7では、図3の122(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体)にグラファイトフィルム6を含む材料、図3の128(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体)にグラファイトフィルム6を含む材料を用いて、発光ダイオードが作製される。
(実施例8)
実施例8では、図4の112(回路基板)にガラスエポキシ基板、138(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体)にグラファイトフィルム6を含む材料を用いて、発光ダイオードが作製される。
(実施例9)
実施例9では、図5の145(グラファイトフィルムを含む材料(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある))にグラファイトフィルム6を含む材料、128(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体)にガラスエポキシ基板5を含む材料を用いて、発光ダイオードが作製される。
(実施例10)
実施例10では、図6の138(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体)にグラファイトフィルム6を含む材料を用いて、発光ダイオードが作製される。
(比較例1)
比較例1では、図1の112(回路基板)にガラスエポキシ基板を用いて、発光ダイオードが作製される。
その結果、比較例1、実施例8、実施例9、実施例1、実施例2、実施例3、実施例5、実施例4、実施例9、実施例6、実施例10、実施例7の順で、発光ダイオードを高輝度高出力の用途に使用する場合に、高輝度を得るために駆動電流を増やしても、LEDチップに発生する熱は、グラファイトフィルム部分に伝わり、LEDチップの温度上昇を防ぐことができ、発光効率は低下しない。また、LEDチップを封止している透明樹脂(透光性風止樹脂)が熱による変色で透明度を低下させることもない。
比較例1が最も悪い理由は、回路基板(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)にガラスエポキシ基板を用いており、放熱性に劣るためである。実施例1、実施例2、実施例3、実施例5でこの順に放熱性に優れているのは、この順に用いたグラファイトフィルムの熱拡散率が優れていたためであると考える。実施例4、実施例6が実施例1、実施例2、実施例3、実施例5よりも放熱性が優れているのは、実施例4、実施例6の方が、用いたグラファイトフィルムの厚みが厚いためであると考える。
実施例6が実施例9よりも放熱性に優れている理由は、実施例6の方が、使用しているグラファイトフィルムの面積が大きいために、より広く熱を拡散できるためと考える。
実施例10が実施例6よりも放熱性に優れている理由は、実施例10の方が、使用しているグラファイトフィルムの面積が大きいために、より広く熱を拡散できるためと考える。
実施例7は、最も放熱性に優れている。これは、発光ダイオードを固定している図3の122(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体)に加え、図3の122のの裏側の層(図3の128(透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体))にもグラファイトフィルムを用いているためと考える。
従来の発光ダイオードの断面図。 放熱の良否により電流-輝度との関係を示すグラフ。 本発明の第1の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図。 本発明の第2の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図。 本発明の第3の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図。 本発明の第4の実施の形態に係わる発光ダイオードの断面図。 ポリイミドフィルム及びくさび形シート。 くさび形シートの斜視図。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 原料フィルムの容器(A)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への通電方法。 原料フィルムの容器(A)への通電方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法の模式図。 容器(A)の容器(B)への保持方法の模式図(図9の容器(B)には実際には蓋を付けることを示す図)。 容器(A)、容器(B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角が、90度。容器(A)と容器(B)は非接触。 グラファイト断面の割断方法の模式図。 実施例1の断面SEM像。 実施例2の断面SEM像。 実施例3の断面SEM像。 実施例4の断面SEM像。 実施例5の断面SEM像。 図23の表面層を拡大した実施例5の断面SEM像。
符号の説明
111 発光ダイオード
112 回路基板(ガラスエポキシ基板、ガラエポ基板)(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)
112a 貫通孔
112b 凹部
113a 上面電極
113b 上面電極
114a 下面電極
114b 下面電極
116 LEDチップ(発光ダイオード素子)
117 透光性封止樹脂
118 プリント基板
119 半田
122 透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体
128 透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体(グラファイトフィルムを含む材料)
138 透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体
145 グラファイトフィルムを含む材料(透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体でもある)
1 ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの幅
4 ナトリウム光
5 干渉縞
11 原料フィルムを保持するための、平滑な通電可能な平板
12 容器(A)
13 原料フィルムを保持した容器(A)
21 円筒の容器(B)
22 蓋
31 容器(A)と容器(B)の間に充填された、カーボン粒子
32 容器(B)の外部周辺に充填された、カーボン粒子
6 グラファイトフィルム(カッターナイフで短冊状に切り取ったもの)
7 剃刀刃
8 割断時に、グラファイトフィルムに軽く力をかける方向
9 割断時に、剃刀刃がグラファイトフィルムに対して相対的に進む方向

Claims (12)

  1. (A)発光ダイオード素子、
    (B)透光性封止樹脂
    および
    (C)支持体、
    を含む発光ダイオードにおいて、
    該支持体がグラファイトフィルムを含むことを特徴とする、発光ダイオード。
  2. (A)発光ダイオード素子、
    (B)透光性封止樹脂
    (C)透光性封止樹脂と接している部分を有する支持体、
    および
    (D)透光性封止樹脂と接している部分を有しない支持体
    を含む発光ダイオードにおいて、
    該(C)
    及び/又は
    該(D)が、グラファイトフィルムを含むことを特徴とする発光ダイオード。
  3. 前記グラファイトフィルムが、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の発光ダイオード。
  4. 前記グラファイトフィルムが、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有するグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の発光ダイオード。
  5. 前記グラファイトフィルムが、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様が観察されるグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の発光ダイオード。
  6. 前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の発光ダイオード。
  7. 前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、熱処理前および/または熱処理中に金属を含有する物質と接触させて、2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の発光ダイオード。
  8. 前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の発光ダイオード。
  9. 前記グラファイトフィルムが、面方向の熱拡散率が7.5×10-42/s以上であるグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の発光ダイオード。
  10. 前記グラファイトフィルムが、厚みが30μm以上のグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の発光ダイオード。
  11. 前記グラファイトフィルムが、密度が1.5g/cm3以上であるグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の発光ダイオード。
  12. 前記グラファイトフィルムが、少なくとも片面に絶縁層が存在するグラファイトフィルムであことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の発光ダイオード。
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