JP2007193060A - 固体レーザ用ミラー - Google Patents

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Abstract

【課題】固体レーザ用の多層膜ミラーの反射率を改善するとともに膜層の熱損傷を抑えて耐久性を向上させる。
【解決手段】基体2上に交互に積層される低屈折膜層3と高屈折膜層4の各膜層の光学的膜厚を目的光の波長に合わせた基本となる値に設定した上で、一部の膜厚を調整することにより、膜層間の境界での繰り返し反射により形成される電界強度分布のピークが低屈折層内に来るようにする。これにより、光のエネルギー損失が少なくなるため反射率が改善され、高出力レーザに使用した場合でも膜層の熱破壊が抑制できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、LD励起YAG発振全固体レーザ等の固体レーザに用いられる多層膜ミラーであって、特に深紫外域での使用に適した多層膜ミラーに関する。
LD励起固体レーザ装置においては、例えば固体レーザ媒質の一面に形成された反射端面と出力ミラーとの間に形成される共振器を用いて発振を生じさせる。こうしたミラーとして従来、高屈折率(一般に屈折率が1.9以上)誘電体と低屈折率(一般に屈折率が1.5以下)誘電体とを交互に積層させた多層膜によるミラーが利用されている(例えば特許文献1など参照)。このような多層膜ミラーは、目標となる反射波長域や反射率を設定し、膜層による吸収や散乱、応力等を考慮に入れた上で、膜層数や各膜層の光学的膜厚、屈折率等の特性を適宜に決めるように設計を行うのが一般的である。
LD励起固体レーザ装置においてレーザの発振効率を高めるには上記ミラーの反射率が高いほど、つまり100%にできるだけ近いことが望ましい。反射率を高めるには膜層による光吸収や表面粗さを小さく抑える必要がある。光が膜層による吸収を受けると、光のエネルギーは減衰する。レーザ用ミラーでは光は繰り返し反射するので、1回の反射ではたとえ無視できる程度の小さな減衰であっても繰り返しにより減衰は大きくなり、発振効率を低下させることになる。したがって、使用する光の波長域についてできるだけ吸収のない材料から成る膜層を用いる必要がある。
しかしながら、上述のように膜層による光吸収を抑えたり表面粗さを小さくしたりしただけでは、99%以上の反射率を実現することは難しい。また、レーザ出力が小さい場合にはあまり問題とならないが、高出力レーザでは、使用に伴ってレーザによる多層膜ミラー内の膜層の損傷(主として熱破壊)が発生し、これによって反射率がさらに低下して使用に耐えなくなることがある。
特開平5−55671号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、従来よりもさらに反射率を高めることができるとともに特に高出力レーザ装置に使用する場合に耐久性を高めることができる固体レーザ用ミラーを提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、基体上に高屈折率である誘電体物質から成る高屈折膜層と低屈折率である誘電体物質から成る低屈折膜層とが交互に積層されて成る多層膜を利用した固体レーザ用ミラーにおいて、
目的とする光の波長に対する多層膜内での電界強度のピークが低屈折膜層内に現れるように1乃至複数の膜層の光学的膜厚を調整したことを特徴としている。
なお、ここで高屈折率とは屈折率が1.9程度以上であり、低屈折率とは屈折率が1.5程度以下のことである。
一般的に、この種の多層膜ミラーでは膜層数は20以上、典型的には25〜30程度であり、各膜層の基本的な光学的膜厚は目的とする光の波長λの1/2の整数倍に設定される。多層膜内での電界強度の分布は、各膜層の境界面での繰り返し反射の重ね合わせにより形成される。したがって、膜層の光学的膜厚を変えると電界強度のピークは光学的膜厚保の厚さ方向にシフトする。そこで、1乃至複数の膜層の光学的膜厚を波長域など基本的特性に影響のない範囲で調整することにより、電界強度のピークが高屈折膜層内ではなく低屈折膜層内に来るようにシフトさせることができる。
但し、上記のような20を超えるような膜層数の多層膜ミラーにおいて中間付近の膜層の光学的膜厚を調整すると、波長域のずれや反射率の低下など本来の特性を維持することが難しい。そこで、基体に近い位置の1乃至複数の膜層と基体から遠い位置の1乃至複数の膜層の光学的膜厚を調整するとよい。特に基体から最も遠い位置である最終膜層の光学的膜厚を目的光の波長λの1/2の整数倍からずらすことで、多層膜内での電界強度のピークが低屈折膜層内に現れるように大きくシフトさせることができる。
また、反射率を全体に高くするには、高屈折膜層と低屈折膜層との屈折率の差が大きいことが好ましい。そのために、高屈折率である誘電体物質として例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニア(ZnO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、又はセレン化亜鉛(ZnSe)のいずれかを選択し、低屈折率である誘電体物質として例えば、フッ化トリウム(ThF4)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化ガドリニウム(GdF3)、フッ化ネオジウム(NdF3)、フッ化ジスプロシウム(DyF3)、フッ化鉛(PbF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、クリオライト(Na3AlF6)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF3)、又は酸化シリコン(SiO2)のいずれかを選択するとよい。
特に高屈折率である誘電体物質として、目的光の波長が400〜1200nm程度の範囲である場合には五酸化タンタルが好適であり、目的光の波長が200〜300nm程度の範囲である場合には酸化ハフニウム、又は酸化アルミニウムが好適である。
本発明に係る固体レーザ用ミラーによれば、電界強度のピークが低屈折膜層内に存在するため、高屈折膜層内に存在する場合に比べて吸収によるエネルギーの損失を抑えることができる。それにより、反射率を従来よりも一段と改善して100%に近付けることができる。また、光のエネルギー吸収による熱損傷を抑制できるので、高出力レーザに適用した場合でも膜層の熱破壊を防止して高い耐久性を達成することができる。
以下、本発明に係る固体レーザ用多層膜ミラーの一実施例を説明する。図1はこの多層膜ミラーの概略断面図である。
この多層膜ミラー1は、精密につまり表面が高い平坦性を有するように研磨された合成石英から成る基体2の上に、低屈折率である誘電体物質から成る低屈折膜層3と、高屈折率である誘電体物質から成る高屈折膜層4とが交互に積層されている。各膜層3、4は、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム法、スパッタリング法などの周知の蒸発物薄膜形成装置により形成することができる。
400〜1200nmの波長域の固体レーザに使用する場合、例えば低屈折膜層3の材料は酸化シリコン(SiO2)(波長550nm付近における屈折率:1.45)とし、高屈折膜層4の材料は五酸化タンタル(Ta2O5)(波長550nm付近における屈折率:2.16)とするとよい。これによれば、屈折率の差が大きいため反射率を高め易い。また、膜層数は全体で25〜30程度とする。各膜層3、4の光学的膜厚は目的とする波長λに対しλ/2の整数倍とするのが基本である。但し、ここでは、多層膜ミラー1の内部に生じる電界強度のピークが高屈折膜層4内に来るのを避け低屈折膜層3内に来るようにするために、一部の膜層の光学的膜厚を調整する。
即ち、多層膜ミラー1の内部では、隣接膜層の境界面での反射が生じ、その繰り返し反射の過程でP偏向成分及びS偏向成分について+側の進行波と−側の反射波とによる4つの電界の重ね合わせにより、厚さ方向に山と谷とが交互に現れるような電界強度分布が形成される。したがって、一部の膜層の光学的膜厚を上記基本となる値からずらすことで、電界の重ね合わせ状態が変化し、ピークの位置が膜厚方向にずれることになる。
膜層の光学的膜厚を調整したときの電界強度のピークシフトについて、シミュレーション結果である図2を参照して説明する。ここでは膜層数を25としている。図2(a)、(b)において横軸は基体2表面からの相対的な光学距離であり、数値は基体2に接触する膜層を「1」(第1層)とし、最も遠い最終膜層を「25」(第25層)としたものとみなせる。
図2(b)は全ての膜層の光学的膜厚が同一である場合であり、図2(a)は一部の膜層の光学的膜厚を調整した場合である。具体的には、基本となる光学的膜厚を1としたとき、基体2に近い位置である第2層及び第3層の光学的膜厚と、基体2から遠い位置である第22層〜第25層の光学的膜厚とを調整してある。図2(b)に示すように、従来の多層膜ミラーでは電界強度のピークが2、4、…の位置、即ち、第2層、第4層、…の高屈折膜層4内に位置している。このため、光のエネルギーの損失が多いのみならず、高出力レーザの場合には膜層を損傷するおそれがある。
これに対し、本実施例による多層膜ミラー1では図2(a)に示すように、電界強度のピークが2、4、…の位置からシフトしており、実質的に低屈折膜層3内に位置している。これにより、光のエネルギーの損失を抑制できるとともに、高出力レーザの場合でも膜層の損傷を軽減することができる。また、本実施例による多層膜ミラーの反射率を計算した結果によれば、946nmの波長において99.9%以上の反射率が達成できることが確認できた。
なお、200〜300nmの深紫外域の固体レーザに使用する場合には、この波長域において吸収を持たない材料を高屈折膜層とする必要がある。そこで例えば低屈折膜層3の材料は酸化シリコン(SiO2)とし、高屈折膜層4の材料は酸化ハフニウム(HfO2)(波長550nm付近における屈折率:1.95)とするとよい。これによれば、屈折率の差が大きいため反射率を高め易い。また、酸化ハフニウムは紫外域での吸収が殆どない。そのため、高出力レーザにおいて第3高調波、第4高調波などの光強度が強い場合でも、吸収がないので光エネルギーの損失を抑え、且つ損傷を受けにくい。
また、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形や修正、追加などを行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
本発明の一実施例である多層膜ミラーの概略断面図。 膜層の光学的膜厚を調整したときの電界強度のピークシフトについてのシミュレーション結果を示す図。
符号の説明
1…多層膜ミラー
2…基体
3…低屈折膜層
4…高屈折膜層

Claims (3)

  1. 基体上に高屈折率である誘電体物質から成る高屈折膜層と低屈折率である誘電体物質から成る低屈折膜層とが交互に積層されて成る多層膜を利用した固体レーザ用ミラーにおいて、
    目的とする光の波長に対する多層膜内での電界強度のピークが低屈折膜層内に現れるように1乃至複数の膜層の光学的膜厚を調整したことを特徴とする固体レーザ用ミラー。
  2. 多層膜の膜層数は20以上で、各膜層の基本的な光学的膜厚は目的とする光の波長λの1/2の整数倍であり、その中で基体に近い位置の1乃至複数の膜層と基体から遠い位置の1乃至複数の膜層の光学的膜厚を調整することにより、多層膜内での電界強度のピークが低屈折膜層内に現れるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の固体レーザ用ミラー。
  3. 高屈折率である誘電体物質は、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、五酸化タンタル、又はセレン化亜鉛のいずれかであり、低屈折率である誘電体物質は、フッ化トリウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ネオジウム、フッ化ジスプロシウム、フッ化鉛、フッ化アルミニウム、クリオライト、フッ化ナトリウム、フッ化ストロンチウム、又は酸化シリコンのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体レーザ用ミラー。

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