JP2007206830A - 移動体のサーボ制御装置及びレーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】補償効果に優れる移動体のサーボ制御装置およびレーザ加工装置を提供することおよび付加入力の演算に語長制限がある場合でも十分な補償効果を持たせる。
【解決手段】フィードバック・ループを備え、移動体を位置指令データに基づいて位置決めする移動体のディジタルサーボ制御装置において、位置指令データを受けた時刻におけるフィードバック・ループの状態量に関する伝達関数に対して、フィードバック・ループに固有の極を相殺するような零点を付加するディジタル・フィルタ10a、10b(付加入力手段)を設け、位置指令データに加えてディジタル・フィルタ10a、10bの出力をフィードバック・ループに入力して前記移動体を位置決めする。また、ディジタル・フィルタを縦続型構造とし、この構造を構成する伝達関数が複素平面上で接近した極と零点を持つようにして、演算に語長制限がある場合でも十分な補償効果を得る。
【選択図】図1
【解決手段】フィードバック・ループを備え、移動体を位置指令データに基づいて位置決めする移動体のディジタルサーボ制御装置において、位置指令データを受けた時刻におけるフィードバック・ループの状態量に関する伝達関数に対して、フィードバック・ループに固有の極を相殺するような零点を付加するディジタル・フィルタ10a、10b(付加入力手段)を設け、位置指令データに加えてディジタル・フィルタ10a、10bの出力をフィードバック・ループに入力して前記移動体を位置決めする。また、ディジタル・フィルタを縦続型構造とし、この構造を構成する伝達関数が複素平面上で接近した極と零点を持つようにして、演算に語長制限がある場合でも十分な補償効果を得る。
【選択図】図1
Description
この発明は、移動体の位置を検出し、移動体の位置が指定された目標値に追従するように制御するサーボ制御装置、及びこのような移動体のサーボ制御装置により移動部を制御するレーザ加工装置に関するものである。
例えばプリント配線板の製造工程において穴あけ加工を行うレーザ加工装置では、被加工物の複数の加工位置にレーザ光を次々と照射するための位置決め制御機構が必要であり、高い加工スループットと高精度な加工を実現するためにガルバノミラー制御装置が多く用いられている。
レーザ加工装置は通常、階層的な制御構造を有する数値制御(NC)装置であって、ガルバノミラー制御装置はその最下位の階層に含まれる。上位階層の制御装置(以下、「上位制御」と呼ぶ。)では、プリント配線板のCAM(Computer Aided Manufacturing)データに基づき、二次元の穴位置座標が加工される順番でNCプログラムに記述される。ここで穴加工の順番は、高い加工スループットを実現するように最適化される。このようなNCプログラムは事前に作られており、加工が始まると、上位制御はプログラム中の穴位置座標を次々に座標変換し、ガルバノミラー制御装置に対して時系列的な角度指令データを送信する。穴を真円に加工するには、ガルバノミラーが角度指令データで指定された角度で静止してからレーザ光を照射する必要がある。このため、角度指令データの送信とレーザ光の照射制御は、上位制御の内部で同期を取って行われる。
ガルバノミラー制御装置の主な構成要素は、ガルバノミラーと、ミラーを固定する回転軸を備え、回転軸を回転させることによりミラーの角度を変えるアクチュエータ(ロータリ・アクチュエータ)と、ミラーの角度をフィードバック制御する制御回路である。ロータリ・アクチュエータとしては、電磁気的な原理で駆動トルクを発生する電磁式のロータリ・アクチュエータが多く用いられる。さらにこのロータリ・アクチュエータはミラーの角度を検出するセンサを内蔵しており、このセンサからの角度検出データは制御回路にフィードバックされる。この制御回路はオペアンプからなるアナログ制御で実現される場合もあるし、マイクロ・プロセッサとプログラムを合わせたディジタル制御ファームウェアで実現される場合もある。特に近年は、後者の構成によって短期間で柔軟に制御プログラムを高性能化して、作業の高能率化が図られている。
ガルバノミラーの位置決めには角度ストロークのバリエーションがあり、位置決め時間も角度ストロークによって異なる。一回の位置決めに対応して、一つの角度指令データをステップ入力信号として受信する。それに応答して、ミラーが回転動作を開始すると、ミラー角度を角度指令データに誤差無く一致させるための積分補償が働く。この補償では、角度指令データから角度検出データを引き算した値、すなわち追従誤差信号を時間積分する。さらに、ガルバノミラー制御装置のフィードバック・ループが安定に動作するには、一巡伝達関数の位相余有やゲイン余有を十分大きくする必要がある。このため、角度検出データを微分したり、いわゆる状態オブザーバを用いることで、角速度信号による安定化補償や位相進み補償が作用する。これらの制御方式はフィードバック制御理論の基本として、良く知られている(非特許文献1)。
また、ガルバノミラーの位置決め時間を短縮するために、フィードバック・ループを広帯域化する技術が使われている。前述の電磁式のロータリ・アクチュエータの場合、回転軸にはミラーに加えて、センサと、可動コイルまたは可動磁石と、が取り付けられており、それらが慣性負荷として作用するので、高速動作では軸ねじり振動を発生することがある。数kHz以上の領域に複数のねじり振動モードが存在するので、従来のガルバノミラー制御装置では、振動モードの安定化補償器によって、フィードバック・ループを広帯域化している。この安定化補償器はねじり振動モードの状態量を推定してフィードバックする(特許文献1、2)。
そしてこれらの方式を上述の積分補償や位相進み補償と組み合わせて、フィードバック・ループが構成される。フィードバック・ループの特性は、一回の位置決めに要する時間(位置決め時間)が目標仕様を満たし、かつ目標角度近傍での過渡応答(セトリング応答)に含まれるオーバーシュートや残留ねじり振動が許容範囲に収まるように調整される。
上位制御から送信される一連の角度指令データ(以下、「角度指令パターン」と呼ぶ。)は、前述の最適化された穴加工の順番に基づいている。角度指令パターンをフーリエ解析すると、それぞれ異なる周波数スペクトルを持つことが分かる。あるスペクトル成分が前述のねじり振動の共振周波数に一致すれば、その振動モードが残留振動となって穴加工位置精度が悪くなることが考えられる。レーザ加工装置のスループットを向上するために、角度指令パターンのステップ信号の時間間隔(以下、「指令インターバル」と呼ぶ。)は短縮する傾向にある。指令インターバルが短くなれば、角度指令パターンの周波数スペクトルは高周波成分が増大する。このため、ロータリ・アクチュエータの高次振動モードによる残留振動が発生しやすく、位置決め精度の劣化が懸念される。また指令インターバルを極めて短くすると、セトリング応答振幅の許容範囲に入った後、ガルバノミラーが完全に静止する前にレーザ光の照射を行い、次の位置決め動作に移ることになる。この時、前回位置決めのセトリング応答が残留すると、次の動作開始時点で、フィードバック・ループに含まれる動特性モードの状態量(以下、「初期状態量」と呼ぶ。)は0にならない。そして角度指令パターンは一般に不規則なので、様々な初期状態量を取り得る。特に角度ストロークの小さな位置決めでは位置決め時間が短く、初期状態量の影響が十分に減衰する前に目標角度近傍に到達するので、その後のセトリング応答波形が毎回異なることになる。高精度加工のためにセトリング応答振幅の許容範囲を狭くするには、どのような角度指令パターンに対してもセトリング応答振幅を抑える技術が必要になる。このため、角度指令以外の付加入力信号をフィードバック・ループに入力する技術がある(特許文献3、非特許文献2)。
特許文献3と非特許文献2が開示する技術(以下、「従来の付加入力式初期値補償制御」と呼ぶ。)は、フィードバック・ループに含まれる動特性モードの初期状態量の影響を速やかに減衰させるために、動特性モードに固有の極を相殺するような付加入力信号を用いる技術である。これにより様々な角度指令パターンで、短い指令インターバルにおいても移動体を高精度に位置決めすることが可能であり、レーザ加工装置のスループットと加工精度の向上に有効である。
特開2002−40357号公報
特開2002−40358号公報
特開2005−221845号公報。
片山 徹著「フィードバック制御の基礎」、朝倉書店、1987年5月20日、6章〜7章。
廣瀬 徳晃、川福 基裕、岩崎 誠、平井 洋武「繰り返し位置決め制御時の初期値補償による残留振動抑制」、電気学会論文誌D、125巻1号、pp。76〜83、2005年。
従来の付加入力式初期値補償制御では、制御入力信号が必要以上の高周波成分を含んで飽和するケースがあり、その場合には移動体の高域共振が励起されて、理論どおりの十分な補償効果が得られないことが分かった。しかし、この課題の解決方法は、前記のいずれの公知技術にも開示されていない。
そこで、本発明が解決しようとする第一の課題は、補償効果に優れる移動体のサーボ制御装置およびレーザ加工装置を提供することである。
また従来の付加入力式初期値補償制御では、付加入力信号を発生するディジタル・フィルタに関して、最適な実現の構造が開示されていない。このため、ディジタル制御マイクロプロセッサの内部で、このディジタル・フィルタを倍精度浮動小数点演算する場合には十分な補償効果が得られるが、単精度の浮動小数点演算では理論どおりの補償効果が得られないケースがあることが分かった。しかし、次数の高いディジタル・フィルタでは、単精度演算の方が演算時間を短くできて望ましい。しかし、この課題も、前記のいずれの公知技術にも解決方法は開示されていない。
そこで、本発明が解決しようとする第二の課題は、ディジタル・フィルタの演算に語長制限がある場合でも(すなわち、単精度の浮動小数点演算を行っても)、倍精度浮動小数点演算と同等の十分な補償効果を有する移動体のサーボ制御装置およびレーザ加工装置を提供することである。
上記課題を解決するために、第1の手段は、フィードバック・ループを備え、移動体を位置指令データに基づいて位置決めする移動体のディジタルサーボ制御装置において、前記位置指令データを受けた時刻における前記フィードバック・ループの状態量に関する伝達関数に対して、前記フィードバック・ループに固有の極を相殺するような零点を付加する付加入力手段を設け、前記位置指令データに加えて前記付加入力手段の出力を前記フィードバック・ループに入力して前記移動体を位置決めすることを特徴とする。
また第2の手段は、レーザ加工装置として、移動体がガルバノミラーである移動体のサーボ制御装置と、前記ガルバノミラーの角度を制御する制御手段と、を備え、前記ガルバノミラーで反射されるレーザ光の角度を前記制御手段によって制御することにより、前記レーザ光を被加工物の所定の位置に入射させて前記被加工物に穴を加工することを特徴とする。
移動体を高速かつ高精度に位置決めできるので、加工スループットや加工精度を向上さえることが可能となる。さらに付加入力信号を発生するディジタル・フィルタの演算の語長を短くできるので、安価なマイクロプロセッサの使用が可能となり、装置コストを低減することができる。
以下、本発明をガルバノミラー制御装置に適用する場合について説明する。
図1は、本発明に係るガルバノミラー制御装置のブロック線図である。なお、このガルバノミラー制御装置は、図示していないマイクロ・プロセッサを用いたディジタル制御ファームウェアで実現されており、積分補償器2、比例補償器3、速度オブザーバ4、ねじり振動安定化補償器5、ディジタル・フィルタ10a、10bおよび加算器20〜24に関する処理演算は、前記マイクロ・プロセッサが実行するプログラムの一部に記述されている。そして、一定サンプル周期毎の離散的な時刻(以下、「離散的時刻」と呼ぶ。)において処理演算が実行される。
ロータリ・アクチュエータ1には、図示を省略するガルバノミラーが1つ取り付けられており、ガルバノミラーの角度がこのガルバノミラー制御装置の制御量信号11である。また、ロータリ・アクチュエータ1は、図示を省略するロータリ・エンコーダを内蔵しており、このエンコーダは離散的時刻ごとに角度検出データ9を出力する。
次に、ガルバノミラー制御装置がガルバノミラーを位置決めする手順について説明する。
上位制御から角度指令データ8を受信すると、加算器(減算器)20により、受信した角度指令データ8から角度検出データ9を減算し、その結果を追従誤差として積分補償器2に出力する。積分補償器2は追従誤差の時間積分を演算し、演算結果を加算器21に出力する。加算器21は、加算器22によって加算されたディジタル・フィルタ10aと10bの出力と、積分補償器2の出力とを加算して加算器23に出力する。ディジタル・フィルタ10aと10bは本発明の重要な要素であり、後で詳細に説明する。
比例補償器3は角度検出データ9を比例ゲインで係数倍し、その結果を加算器24に出力する。速度オブザーバ4はねじり振動安定化補償器5の出力と角度検出データ9とからミラーの角速度の推定値を演算し、その結果を加算器24に出力する。加算器24は比例補償器3と速度オブザーバ4の出力との和を加算器23に出力する。加算器23は、加算器21の出力から加算器24の出力を減算して、ねじり振動安定化補償器5に出力する。ねじり振動安定化補償器5は、ロータリ・アクチュエータ1が有する一つ以上のねじり振動モードに対して、このガルバノミラー制御装置のフィードバック・ループを安定化する。DA変換器6はねじり振動安定化補償器5の出力をアナログ値に変換する。このアナログ値は電流指令値であり、電流制御回路7は、この電流指令値に追従するように駆動電流を制御して、ロータリ・アクチュエータ1に供給する。
次に、初期値補償を行う付加入力について説明する。
この実施形態では、付加入力を、ディジタル・フィルタ10aと10bが離散的時刻ごとに発生するインパルス列信号とする。以下、定式化の都合により、図1において破線で囲んだ領域Sを拡大制御対象と呼ぶことにする。
拡大制御対象Sは1入力1出力系であって、加算器21の出力すなわち積分補償器2の出力とディジタル・フィルタ10aと10bの出力の和が拡大制御対象Sへの入力信号であり、角度検出データ9が拡大制御対象Sの出力信号である。
式1、2において、iは離散的時刻の経過を表すインデクス、xpはm次の拡大制御対象の状態ベクトル、u‘は拡大制御対象Sの入力信号、yは拡大制御対象Sの出力信号(制御量信号11)、Ap、Bp、Cpはそれぞれm×m、m×1、1×mの実数行列である。
式3、4において、xcはn次の積分補償器の状態ベクトル、rは角度指令データ、Ac、Bc、Cc、Dcはそれぞれn×n、n×1、1×n、1×1の実数行列である。
式1〜式4から、式5で表されるフィードバック・ループの伝達関数を導くことができる。
式1〜式4から、式5で表されるフィードバック・ループの伝達関数を導くことができる。
式5において、zはz変換の複素変数、Rは角度指令データrのz変換、Yは拡大制御対象Sの出力信号yのz変換、D(z)とNr(z)はそれぞれzに関する高次多項式、Np(z)はzに関する1×m次の高次多項式行列、Nc(z)はzに関する1×n次の高次多項式行列である。またxp0は式1、2における状態変数ベクトルxp(i)の初期状態量xp(0)、xc0は式3、4における状態変数ベクトルxc(i)の初期状態量xc(0)を表してる。
ここで、上記の初期状態量を考える初期時刻i=0とは、ある一回の位置決め動作を開始する時刻、すなわち一つの角度指令データをガルバノミラー制御装置が受信した時刻と定義する。
式5が意味することは、フィードバック・ループの応答Y(z)は角度指令データR(z)に対する応答と、初期状態量xp0に対する応答と、初期状態量xc0に対する応答の線形な重ねあわせで決まるということである。
式6において、Np1(z)〜Npm(z)はそれぞれzに関する高次多項式であり、式5における高次多項式行列Np(z)の要素である。同様にNc1(z)〜Ncn(z)はそれぞれzに関する高次多項式であり、式5における高次多項式行列Nc(z)の要素である。またxp01〜xp0mは式5における初期状態ベクトルxp0の各要素、xc01〜xc0nは式5における初期状態ベクトルxc0の各要素である。
いま、式6右辺第1項のq番目の初期状態量xp0qによる初期値応答がフィードバック・ループの応答Y(z)に悪影響を及ぼしているものと仮定し、図1のディジタル・フィルタ10aと10bが出力する付加入力によってその悪影響を抑圧することを考える。
なお、以下、一つのディジタル・フィルタの伝達関数を、nq(z)/dq(z)と表す。ここで、qは添え字であり、式6右辺第1項に現れたq番目の初期状態量xp0qの添え字qと同じ意味で用いるので、q=1、2、…、mである。また、nq(z)とdq(z)は、それぞれzに関する高次多項式である。さらに、ディジタル・フィルタが出力する付加入力のz変換をUaq(z)と表すことにする。
式8において、Nu(z)はzに関する高次多項式であり、伝達関数Nu(z)/D(z)は、付加入力Uaq(z)が拡大制御対象Sへの入力信号に加算される形でフィードバック・ループに作用することを表している。
式8の右辺第3項について、次のことが言える。式6では、初期状態量xp0qに対する伝達関数がNpq(z)/D(z)であったが、式7のような付加入力Uaq(z)を用いると、初期状態量xp0qに対する伝達関数を式8右辺第3項のように変えることができる。
従って、式7で表されるディジタル・フィルタの伝達関数nq(z)/dq(z)を適切に設計すれば、応答Y(z)に悪影響を及ぼしていた初期状態量xp0qによる初期値応答を所望の望ましい応答に変えることができて、応答Y(z)を改善することができる。
以下、式7のディジタル・フィルタnq(z)/dq(z)の具体的な設計例について説明する。
式1、2で述べた拡大制御対象Sの次数mは、ロータリ・アクチュエータ1に固有のねじり振動モード、速度オブザーバ4、ねじり振動安定化補償器5、及びフィードバック・ループの位相遅れの大きさによって決まる。
今、ねじり振動の第1次モードに起因する初期値応答を改善したいとする。各振動モードは角変位と角速度の二つの状態量を持つので、式6の右辺第1項で、ねじり振動1次モードの角変位と角速度の初期状態量を形式的にq=1、2とする。そして、以下、角変位の初期状態量(q=1)を補償するディジタル・フィルタを図1の10aとし、角速度の初期状態量(q=2)を補償するディジタル・フィルタを図1の10bとする。
まず、q=1について、ディジタル・フィルタn1(z)/d1(z)を次のように設計する。ここで基本となる考え方は、伝達関数における極と零点の配置である。
図9は、式6の右辺第1項で、ねじり振動1次モードの角変位の初期状態量xp01にかかる伝達関数Np1(z)/D(z)に関する極と零点の配置を示す図である。
図9は複素平面であり、横軸は複素数の実数部を表す実軸、縦軸は虚数部を表す虚軸である。また、図中破線で示す円は座標原点を中心とする半径1の単位円であり、記号×は極、記号○は零点を表している。
極と零点はそれぞれ一般的には複素数であるから、複素平面上の二次元座標で表される。これらの極と零点の配置は、フィードバック・ループが持つ動特性モードの応答の性質を決めるものである。
フィードバック・ループに固有の極はm+n=16個存在し、これらは特性方程式D(z)=0を数値計算で解くと、図9の記号×に配置されている。フィードバック・ループが安定であるために、すべての極は前述の単位円の中に存在している。一方、零点は方程式Np1(z)=0の根であって、この方程式を数値計算で解くと、図9の記号○に配置されている。
次に、付加入力Uaq(z)を加えた後の初期状態量xp01にかかる伝達関数、すなわち式8右辺第3項の伝達関数の極と零点について考える。
この伝達関数の極は分母多項式=0とした方程式の根であるから、前述の特性方程式D(z)=0の根と、方程式d1(z)=0の根を合わせたものに一致する。この多項式d1(z)は、ここで設計しようとしているディジタル・フィルタの伝達関数n1(z)/d1(z)の分母多項式である。一方、式8右辺第3項の伝達関数の零点は分子多項式=0とした方程式の根であり、零点の配置は任意に決めることができる。なぜならば、この分子多項式には、設計パラメータであるディジタル・フィルタの伝達関数の分母多項式d1(z)と分子多項式n1(z)が含まれているからである。
そこで、図9に示された16個の極を相殺するように零点を配置する。さらに、制御入力が必要以上に高周波成分を含むことを避けるために、付加入力を発生するディジタル・フィルタが持つ極をナイキスト周波数以下の領域に配置する。
上記のような極と零点の配置になるように、ディジタル・フィルタの伝達関数の分子多項式n1(z)と分母多項式d1(z)を決めると、式8右辺第3項の伝達関数の極と零点は、図10に示すような配置になる。ここで、図10は図9と同様の複素平面である。
図9に含まれていた16個の極には、新たに配置した16個の零点が重なって相殺されるので、これらの極が初期値応答に与える影響は抑圧される。さらに,新たに追加される極は、図10の破線の四角で囲んだ領域である。
また、以上の考えで設計したディジタル・フィルタの伝達関数をマイクロプロセッサのプログラムで実現するには、語長制限の影響を受けにくくする必要がある。これに適した構成として、本発明では図11に示す縦続型を用いる。これは2次/2次の伝達関数の直列接続で構成する方法である。なお、図11における−b01〜−bL2、a01〜aL2は係数であり、z−1はシフト演算子である。また、Xはインパルス入力、Yは付加入力信号である。
2次/2次の伝達関数の係数の決定方法については、以下に示す考え方を用いる。
ディジタル・フィルタの極と零点は図12に示す配置になる。なお、図9の場合と同様に、図中の記号×は極、記号○は零点、破線の円は座標原点を中心とする半径1の単位円である。
ここで単位円に近い極と零点について、互いに最も近い極と零点を一組のペアとする。この操作をペアリングと呼ぶ。実数ではない極と零点は必ず共役複素数であるから、あるペアとその共役複素数を極と零点に持つような2次/2次の伝達関数を作ることができる。図12において、実線で囲んだa、b、c、dの領域がペアリングの結果である。このようなペアリングに基づく一般的なディジタル・フィルタの実現方法は、Signal Processing Toolbox User’s Guide、MathWorks, Inc.、(2000年)に説明されている。
以上述べたように、付加入力を発生するディジタルフィルタを縦続型構造とペアリングで実装することにより、語長制限のある制御プログラムでも理論どおりの初期値補償の効果を実現できる。
以上のようにして、ねじり振動1次モードの角変位の初期状態量xp01を補償するディジタル・フィルタ10aの伝達関数n1(z)/d1(z)が設計された。
同様にして、q=2、すなわち、ねじり振動1次モードの角速度の初期状態量xp02についても、ディジタル・フィルタ10bの伝達関数n2(z)/d2(z)を設計する。
次に、上記のディジタル・フィルタを用いた初期値応答の補償方法について説明する。
まず、初期時刻において、ねじり振動1次モードの角変位と角速度の初期状態量xp01とxp02を検出する。通常、これらの状態量をセンサ等で直接検出することは困難である。そこで、複数のねじり振動モードを含む制御対象の状態方程式モデルを構築し、これを元に状態オブザーバを設計し、ディジタル制御ファームウェアに実装すれば、初期状態量を推定計算することができる。特に未知外乱を考慮した状態オブザーバを用いれば、初期状態量を高精度に推定できる。未知外乱を考慮した状態オブザーバの設計法は、岩井、井上、川路:「オブザーバ」6章、コロナ社(1988年)に説明されている。それらの初期状態量を、式7に関する説明で述べたように、q=1、2の各ディジタル・フィルタ10aと10bに対してインパルス入力する。ねじり振動1次モードの初期値応答を補償する付加入力は、ディジタル・フィルタ10aと10bの各インパルス応答の加算である。これを図1に示したように積分補償器2の出力に加算する。 さらに、角度指令パターンに対する位置決めを次々と連続して行うために、次のようなことを実施する。すなわちディジタル・フィルタ10aと10b各々の内部の状態変数を、毎回の初期時刻においてゼロにクリアする。その理由は、指令インターバルが非常に短い場合、すなわち、ディジタル・フィルタ10aと10bのインパルス応答が定常的に0に減衰する前に次の角度指令データを受信して、新たな初期時刻になる場合でも、正常な付加入力を発生させるためである。
次に、本発明の付加入力式初期値補償制御を用いたガルバノミラー制御装置とレーザ加工装置の動作について説明する。図2は、製造中のプリント配線板の穴加工位置を丸(○)で示した模式図であり、レーザ加工装置が図2の穴加工を行うとする。
本発明のレーザ加工装置には、縦軸方向と横軸方向それぞれを受け持つガルバノミラーが搭載されており、各々のミラーに対して図1に示したガルバノミラー制御装置が用いられる。縦軸と横軸それぞれのガルバノミラー制御装置には、異なる角度指令パターンが上位制御から送信される。縦軸方向のミラーは穴間隔Lに相当する角度ストロークの往復動作を行うので、図3のような角度指令パターンとなる。角度ストロークが一定なので、指令インターバルも一定であり、この値を以下τ(ただし、τは無次元化時刻である。)と表す。一方、横軸方向のミラーは穴間隔Lに相当する角度ストロークで、一定方向の送り動作を行うので、図4のような角度指令パターンとなる。指令インターバルはτである。この説明では簡単のため、図2で穴の個数を9個にしており、図3と図4の角度指令パターンは8個の角度指令データによるステップ状のパターンになっているが、実際のレーザ加工装置では加工する穴の個数は膨大であり、各軸の角度指令パターンもさらに長い時間で連続したステップ状のパターンになる。
次に、ガルバノミラー制御装置の応答波形を説明する。
図5〜8は、図3のような往復動作を継続した場合の、ガルバノミラーの応答波形を示す図である。これらの図が示す波形は追従誤差、つまり図1において、角度指令データ8から角度検出データ9を引き算した値の時間波形である。なお、図5〜8における上段(a)はいずれも、ガルバノミラーが往復動作を開始(時刻0)してから時刻36までに行った4回の往復動作のすべての追従誤差信号を順番に示しており、下段(b)は4回の往復動作の往きと戻りそれぞれの追従誤差を重ね描きしたもの(つまり、往きの動作の初期時刻における追従誤差信号の不連続な立ち上がりエッジをトリガにした場合の、オシロスコープによる重ね描き波形)のうち、追従誤差ゼロ近傍を拡大して示している。また、図中2本の破線で挟まれる領域が、本発明と従来技術とのセトリング波形の違いを示すために設定した範囲(以下、「整定範囲」と呼ぶ)である。
図5は、指令インターバルをτ=4.5に設定した場合における本発明による追従誤差の波形である。また、図6は、図5と比較するため、初期値補償制御を用いない従来のガルバノミラー制御装置で同じ往復動作を行った時の追従誤差を示している。
従来技術(図6)の場合、一回の位置決めで整定範囲に一旦入るが、その後のセトリング応答が振動的であり、整定範囲を外れてしまう。また追従誤差ゼロ近傍の応答は、時間の経過とともに変動している。
一方、本発明(図5)の場合、整定範囲以内に抑えられ、ほとんど変動の無い良好なセトリング応答が実現されている。
また、図7は、指令インターバルをτ=3.5に設定した場合における本発明による追従誤差の波形である。また、図8は、図7と比較するため、初期値補償制御を用いない従来のガルバノミラー制御装置で同じ往復動作を行った時の追従誤差を示している。
本発明では、この条件においても、整定範囲以内に抑えられ、ほとんど変動の無い良好なセトリング応答が実現されている。
なお、以上ではガルバノミラー制御装置について説明したが、プリント基板加工装置などにおいて、被加工物を保持して移動するテーブルのサーボ制御に対しても本発明を適用することができる。
2 積分補償器
8 角度指令データ
9 角度検出データ
10a,10b ディジタル・フィルタ
8 角度指令データ
9 角度検出データ
10a,10b ディジタル・フィルタ
Claims (6)
- フィードバック・ループを備え、移動体を位置指令データに基づいて位置決めする移動体のディジタルサーボ制御装置において、
前記位置指令データを受けた時刻における前記フィードバック・ループの状態量に関する伝達関数に対して、前記フィードバック・ループに固有の極を相殺するような零点を付加する付加入力手段を設け、
前記位置指令データに加えて前記付加入力手段の出力を前記フィードバック・ループに入力して前記移動体を位置決めすることを特徴とする移動体のディジタルサーボ制御装置。 - 前記付加入力手段が持つ極は、前記ディジタルサーボ制御のナイキスト周波数以下の極であることを特徴とする請求項1に記載の移動体のディジタルサーボ制御装置。
- 前記付加入力手段は、前記位置指令データを受けた時刻における前記状態量に等しいインパルス信号を入力信号とするディジタル・フィルタであり、縦続型構造であることを特徴とする請求項2に記載の移動体のサーボ制御装置。
- 前記ディジタル・フィルタの前記縦続型構造を構成する伝達関数は、複素平面上で接近した極と零点を持つことを特徴とする請求項3に記載の移動体のディジタルサーボ制御装置。
- 前記移動体がガルバノミラーであることを特徴とする請求項1に記載の移動体のディジタルサーボ制御装置。
- 請求項5に記載のディジタルサーボ制御装置と、
前記ガルバノミラーの角度を制御する制御手段と、
を備え、
前記ガルバノミラーで反射されるレーザ光の角度を前記制御手段によって制御することにより、前記レーザ光を被加工物の所定の位置に入射させて前記被加工物に穴を加工することを特徴とするレーザ加工装置。
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| JP2006022814A JP2007206830A (ja) | 2006-01-31 | 2006-01-31 | 移動体のサーボ制御装置及びレーザ加工装置 |
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| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2014098792A (ja) * | 2012-11-14 | 2014-05-29 | Via Mechanics Ltd | 回転体の制御装置及びレーザ加工装置 |
| CN106679608A (zh) * | 2017-02-27 | 2017-05-17 | 北京市汉华环球科技发展有限责任公司 | 振镜扫描系统中振镜电机偏转到位的检测方法和装置 |
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-
2006
- 2006-01-31 JP JP2006022814A patent/JP2007206830A/ja active Pending
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