JP2007255247A - 摺動部材及び圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部の母材への二硫化モリブデンの密着性が高く、高信頼性の圧縮機の摺動部材および、高信頼性かつ高効率の圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供すること。
【解決手段】100〜200℃に加熱した金属材料からなる摺動部品の摺動面に気体とともに二硫化モリブデンの粒を衝突させることで化合物層152を形成することができ、これが、二硫化モリブデンが固溶した混合層150と母材との密着力を高めるバインダーの役割を果たし、摺動部の母材からの剥離を防ぐことができ、耐摩耗性が向上するものである。
【選択図】図4
【解決手段】100〜200℃に加熱した金属材料からなる摺動部品の摺動面に気体とともに二硫化モリブデンの粒を衝突させることで化合物層152を形成することができ、これが、二硫化モリブデンが固溶した混合層150と母材との密着力を高めるバインダーの役割を果たし、摺動部の母材からの剥離を防ぐことができ、耐摩耗性が向上するものである。
【選択図】図4
Description
本発明は、主に家庭用の電気冷凍冷蔵庫などに使用される圧縮機に関するものである。
近年、地球環境保護の観点から化石燃料の使用を少なくする高効率の圧縮機の開発が進められている。
従来の圧縮機用の摺動部材として摺動部表面に固体潤滑剤である二硫化モリブデン(MoS2)を固溶させた混合層を形成させたものの記載がある(例えば特許文献1参照)。
以下、図面を参照しながら上記従来の圧縮機を説明する。
図10は特許文献1に記載された従来技術の圧縮機の断面図、図11は特許文献1に記載された従来技術の二硫化モリブデンを固溶させた混合層の断面を示すものである。図10、図11に示すように密閉容器1は底部にオイル2を貯留するとともに、固定子3、および回転子4からなる電動要素5とこれによって駆動される往復式の圧縮要素6を収容している。
次に圧縮要素6の詳細を以下に説明する。
クランクシャフト7は回転子4を圧入固定した主軸部8および主軸部8に対し偏心して形成された偏心軸9からなり、給油ポンプ10を設けている。シリンダーブロック11は略円筒形のボアー12からなる圧縮室13を形成するとともに主軸部8を軸支する軸受部14を設けている。
ボアー12に遊嵌されたピストン15は、ピストンピン16を介して偏心軸9との間を連結手段であるコンロッド17によって連結されている。ボアー12の端面はバルブプレート18で封止されている。
ヘッド19は高圧室を形成し、バルブプレート18の反ボアー12側に固定される。サクションチューブ20は密閉容器1に固定されるとともに冷凍サイクルの低圧側(図示せず)に接続され、冷媒ガス(図示せず)を密閉容器1内に導く。サクションマフラー21は、バルブプレート18とヘッド19に挟持される。
クランクシャフト7の主軸部8と軸受部14、ピストン15とボアー12、ピストンピン16とコンロッド17、クランクシャフト7の偏心軸9とコンロッド17は相互に摺動部を形成する。そして、摺動部を構成する摺動部材はどちらか一方の摺動部表面には、二硫化モリブデンの粒をある速度以上で摺動部品の母材である金属の摺動面に衝突させることで固体潤滑剤である二硫化モリブデン(MoS2)を固溶させた混合層を形成している。
以上のような構成において次に動作を説明する。商用電源(図示せず)から供給される電力は電動要素5に供給され、電動要素5の回転子4を回転させる。回転子4はクランクシャフト7を回転させ、偏心軸9の偏心運動が連結手段のコンロッド17からピストンピン16を介してピストン15を駆動することでピストン15はボアー12内を往復運動し、サクションチューブ20を通して密閉容器1内に導かれた冷媒ガスはサクションマフラー21から吸入され、圧縮室13内で連続して圧縮される。
オイル2はクランクシャフト7の回転に伴い、給油ポンプ10から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、ピストン15とボアー12の間においてはシールを司る。
ここでピストン15とボアー12とは、漏れ損失を小さくするために非常に狭いクリアランスで遊嵌されている。その結果、ピストン15とボアー12の形状、精度のばらつきによっては部分的に相互接触を起こす部位が生ずることもある。
しかしながら二硫化モリブデンを固着させた混合層33を摺動部品の摺動面に形成することで、ピストン15が上死点ならびに下死点において速度0となり、ボアー12との間で金属接触が生じた場合でもピストン15の表面に形成した混合層33中の二硫化モリブデンが持つ固体潤滑性により摩擦係数が低下し、摺動損失を低減することができる。また、摺動部の表面に微細くぼみ34を設けることにより、圧縮時にラビリンスシールとして働き、漏れ損失を低減するとともに耐摩耗性を向上させることができる。
国際公開第2004/055371号パンフレット
しかしながら、上記従来の構成においては混合層33の密着力が低く、摺動部の母材から剥離しやすいものがあった。
その原因を究明した結果、剥離しやすいものは混合層33と母材との間に酸素、鉄、モリブデン、硫黄から形成される化合物層がほとんど形成されていないことが分かった。
化合物層は、二硫化モリブデンの粒が母材である金属の摺動面に衝突する際に生じる熱エネルギーにより、母材表面並びに空気中の酸素が、母材並びに二硫化モリブデンの粒とともに反応して形成されるものと推定する。
そしてこの化合物層が、混合層33と母材とのバインダーの役割を果たすことで二硫化モリブデンが固溶した混合層33と母材との密着力を高めているものと推定される。
すなわち、上記従来の構成において摩耗を生じたものは、混合層33と母材との間に形成される化合物層がほとんど形成されていないため、その結果混合層33と母材との密着力が低くなり、混合層33の剥離が生じ耐摩耗性が低下したものと推定される。
ピストン15、ボアー12間において混合層33の剥離が発生したものはクリアランスが大きくなり、圧縮した冷媒ガスがピストン15とボアー12のクリアランスから漏れ、効率も低下する可能性があった。
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、摺動部の母材への二硫化モリブデンの密着性が高く、高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供すること、また高信頼性かつ高効率の圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することを目的としている。
上記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機の摺動部材は、二硫化モリブデンの粒を衝突させる際、摺動部品と二硫化モリブデンの粒の少なくとも一方が加熱されていることで、衝突時に発生する熱エネルギーに加熱されることによって得られる熱エネルギーが加わることで、反応エネルギーを大きくし、二硫化モリブデンと摺動部の母材との反応を促進することで、化合物層を形成しやすくするため、二硫化モリブデンが固溶した混合層と母材との密着力が高まり、摺動部の母材からの剥離を防ぐという作用を有する。
本発明の圧縮機の摺動部材及び圧縮機及び冷凍サイクル装置は、母材と二硫化モリブデンが固溶した混合層の密着力が高まり母材から剥離しにくくなるため、高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供できるとともに、高信頼性かつ高効率の圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することができる。
請求項1に記載の発明は、金属材料からなる摺動部品の摺動面に二硫化モリブデンの粒を衝突させてこれを固溶させた混合層を形成した摺動部材であって、二硫化モリブデンの粒を衝突させる際、摺動部品と二硫化モリブデンの粒の少なくとも一方が加熱されているので、衝突時に発生する熱エネルギーに加熱されることによって得られる熱エネルギーが加わることで、反応エネルギーを大きくし、二硫化モリブデンと摺動部の母材との反応を促進することで、母材表面並びに空気中の酸素が、二硫化モリブデンと母材と反応してできる化合物層を形成しやすくし、化合物層が母材とのバインダーの役割を果たすことで、二硫化モリブデンが固溶した混合層と母材との密着力が高まり、摺動部の母材からの剥離を防ぐという作用を有するため、高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、摺動部品が100〜200℃に加熱されているものであり、加熱温度を100〜200℃にすることで、化合物層を安定して形成させるという作用を有するため、請求項1に記載の発明の効果に加えて、さらに高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、誘導加熱を用いて加熱したものであり、摺動部材を瞬間的、かつ、均一的に加熱することができるので、二硫化モリブデンの粒を衝突させる直前で加熱させることができるため、請求項2に記載の発明の効果に加えて、生産時に摺動部材の酸化時間を抑えているため、摺動部材が錆を生じにくく、請求項1に記載の発明の効果に加えて、さらに高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、密閉容器内にオイルを貯留するとともに圧縮要素とを収容し、前記圧縮要素は、主軸および偏心軸を備えたクランクシャフトと、一方が前記クランクシャフトに一体に形成され、他方が軸受部に一体に形成されたスラスト部と、主軸を回転自在に軸支する軸受部と、シリンダーを形成するシリンダーブロックと、前記シリンダー内を往復動するピストンと、前記偏心軸と平行に配置され前記ピストンに固定されたピストンピンと前記偏心軸と前記ピストンを連結するコンロッドを備えレシプロ型の圧縮要素を形成し、金属材料からなる摺動部品はクランクシャフト、スラスト部、シリンダーブロック、ピストン、ピストンピン、コンロッドの少なくともいずれかひとつであるため、摺動部の母材への二硫化モリブデンの密着性が高いため、二硫化モリブデンが剥離しにくいという作用を有すると共に、二硫化モリブデンの固体潤滑作用を発揮することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失を低減するという作用も有するため、特に、ピストン、ボアー間においては、クリアランスが大きくなることがなく、圧縮した冷媒ガスがピストンとボアーのクリアランスから漏れることがないため、高信頼性かつ高効率の往復式の圧縮要素を持つ圧縮機を提供することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、密閉容器内にオイルを貯留するとともに圧縮要素とを収容し、前記圧縮要素は、偏心部を有するシャフトと、前記シャフトの回転中心に同心に圧縮室を形成するシリンダーと、前記偏心部に嵌装され、前記圧縮室内で転動するローラと、前記ローラに圧接されることで前記圧縮室内を高圧側と低圧側に仕切るベーンと、前記シリンダーの両側面を封止するとともに、前記シャフトを軸支する電動要素側の主軸受及び、反電動要素側の副軸受と、前記シャフトの一端に固定した給油スプリングと、前記給油スプリングを収納するとともに、一端を前記オイル中に開口した給油管を備えローリングピストン型の圧縮要素を形成し、金属材料からなる摺動部品はシャフト、シリンダー、ローラ、ベーン、主軸受、副軸受、給油スプリング、給油管の少なくともいずれかひとつであるため、摺動部の母材への二硫化モリブデンの密着性が高いため、二硫化モリブデンが剥離しにくいという作用を有すると共に、二硫化モリブデンの固体潤滑作用を発揮することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失を低減するという作用を有するため、高信頼性かつ高効率の回転式の圧縮要素を持つ圧縮機を提供することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の圧縮機を備え、凝縮器と、ドライヤーと、キャピラリーと、蒸発器を有し、冷媒にHFC冷媒またはHC冷媒を用いることで、請求項4または5に記載の圧縮機が高信頼性かつ高効率であるため、高信頼性かつ高効率の冷凍サイクル装置を提供することができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における圧縮機の断面図及び冷凍サイクル装置図、図2は、図1におけるA部拡大図、図3は、図2におけるB部拡大図、図4は、本発明の実施の形態1における二硫化モリブデンの形成図、図5は、本発明の実施の形態1における摺動部品の温度と化合物層の膜厚の関係図、図6は、本発明の実施の形態1における摺動材を用いた圧縮機の特性図である。
図1は、本発明の実施の形態1における圧縮機の断面図及び冷凍サイクル装置図、図2は、図1におけるA部拡大図、図3は、図2におけるB部拡大図、図4は、本発明の実施の形態1における二硫化モリブデンの形成図、図5は、本発明の実施の形態1における摺動部品の温度と化合物層の膜厚の関係図、図6は、本発明の実施の形態1における摺動材を用いた圧縮機の特性図である。
図1、図2、図3において、密閉容器101内にはR600aまたはR134aからなる冷媒ガス102を充填するとともに、底部にはオイル103を貯留し、固定子104、および回転子105からなる電動要素106と、これによって駆動される往復式の圧縮要素107を収容している。
次に圧縮要素107の詳細を以下に説明する。
クランクシャフト108は回転子105を圧入固定した主軸109および主軸109に対し偏心して形成された偏心軸110からなり、下端にはオイル103に連通する給油ポンプ111を設けている。鋳鉄からなるシリンダーブロック112は略円筒形のボアー113と主軸109を軸支する軸受部114を形成している。
また、前記回転子105にはフランジ面120が形成され、軸受部114の上端面はスラスト部122になっている。フランジ面120と軸受部114のスラスト部122の間にはスラストワッシャ124が挿入されている。フランジ面120、スラスト部122及びスラストワッシャ124でスラスト軸受部126を構成している。
ある一定量のクリアランスを保ってボアー113に遊嵌されたピストン132は鋳鉄、または鉄系の焼結材といった鉄系の材料からなり、ボアー113とともに圧縮室134を形成し、ピストンピン137を介して連結手段であるコンロッド138によって偏心軸110と連結されている。ボアー113の端面はバルブプレート139で封止されている。
ヘッド140は高圧室を形成し、バルブプレート139の反ボアー113側に固定される。サクションチューブ141は密閉容器101に固定されるとともに冷凍サイクルの蒸発器142側に接続され、冷媒ガス102を密閉容器101内に導く。サクションマフラー143は、バルブプレート139とヘッド140に挟持される。
ピストン132とボアー113、主軸109と軸受部114、スラスト部122とスラストワッシャ124、ピストンピン137とコンロッド138、偏心軸110とコンロッド138は相互に摺動部を形成するとともにそれぞれの摺動部の少なくとも一方には母材の表面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層150を形成している。
そしてピストン132とボアー113は漏れ損失を小さくするために非常に狭いクリアランス、例えば径で5μm〜15μm程度のクリアランス寸法で遊嵌されている。
ここではピストン132を例にとって詳しく述べることにする。
ピストン132とボアー113が相互に形成する摺動部のうち、ピストン132の摺動部表面、つまり母材である鉄系材料の表面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層150を形成している。より好ましくは、混合層150における二硫化モリブデンの最大濃度を5wt%以上50wt%以下とすることである。
ここで、図4を用いて、二硫化モリブデンを固溶させた混合層150を形成する方法を説明する。本発明の実施の形態1においては、ドライエアー等の気体と共に二硫化モリブデンの粒を所定の速度以上で、加熱された摺動部品の母材である金属の摺動面に衝突させる方法を用いている。
具体的には、誘導加熱を用いて摺動部品を瞬間的、かつ、均一的に150℃程度に加熱したものを使用している。
この方法によって、衝突時に発生する熱エネルギーに加熱されることによって得られる熱エネルギーが加わることで、反応エネルギーが大きくなり、二硫化モリブデンと摺動部の母材との反応が促進されることで、母材表面並びに空気中の酸素が、二硫化モリブデンと母材と結合して、混合層150と母材の間に酸素、鉄、モリブデン、硫黄から成る化合物層152が形成される。
こうして形成された化合物層152が母材とのバインダーの役割を果たすことで、二硫化モリブデンが固溶した混合層150と母材との密着力を安定して高めることができ、その結果、極めて密着力の強い混合層150を形成することができたものと推定する。
なお、本実施の形態においては摺動部品を加熱したが、摺動部品の代りに二硫化モリブデンの粒を加熱し、加熱されたドライエアー等の気体と共に所定の速度以上で、摺動部品の母材である金属の摺動面に衝突させても同様な効果を得ることができ、また摺動部品、ドライエアー等の気体、二硫化モリブデンの粒の全てを加熱しても良い。
圧縮機160は、ディスチャージチューブ162及びサクションチューブ141を通して、凝縮器164、ドライヤー166、キャピラリー168、蒸発器142と図1の如く順次接続されて、周知の冷凍サイクルを構成している。
以上のように構成された圧縮機160及び冷凍サイクル装置について、以下その動作を説明する。
商用電源(図示せず)から供給される電力は電動要素106に供給され、電動要素106の回転子105を回転させる。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心軸110の偏心運動が連結手段のコンロッド138からピストンピン137を介してピストン132を駆動することでピストン132はボアー113内を往復運動し、サクションチューブ180を通して密閉容器101内に導かれた冷媒ガス102はサクションマフラー143から吸入され、圧縮室134内で圧縮される。
オイル103はクランクシャフト108の回転に伴い、給油ポンプ111から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、ピストン132とボアー113の間においてはシールを司る。
圧縮室134内で圧縮された冷媒ガス102はディスチャージチューブ162から凝縮器164へと流れ放熱されて液化する。その後、ドライヤー166で水分をトラッピングされた後キャピラリー168で減圧され蒸発器142で蒸発し周囲の熱を奪うことで冷却し、再びサクションチューブ141から圧縮機160へと戻ってくるといった周知の冷凍サイクルの動作を行う。
ピストン132がボアー113内で往復圧縮運動をする際、ピストン132とボアー113のクリアランスが非常に狭いため、ピストン132とボアー113の形状、精度のばらつきによっては部分的に相互接触を起こす部位が生ずることもある。こういった場合には、二硫化モリブデンの母材への密着性が高いと二硫化モリブデンが剥離することなく、二硫化モリブデンの組織が稠密六方晶で、分子の大きさが約6×10−4μmと小さくことから低い摩擦係数でへき開することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下するため、高信頼性かつ高効率の圧縮機を提供することができる。
また、二硫化モリブデンが剥離しないため、摩耗が発生しにくいので、ピストン132とボアー113のクリアランスが大きくなりにくく、圧縮した冷媒ガス102がピストン132とボアー113のクリアランスから漏れることがないため、高効率の圧縮機を提供することができる。
次に密着力を高める化合物層の生成についての検討結果として、摺動部品の温度と化合物層152の膜厚の関係を図5に示す。横軸に摺動部品の温度、縦軸に化合物層152の膜厚を示す。図5より、温度100℃以上で膜厚がほぼ10nmになり、200℃以上でほぼ一定値を示すことが予測される。このことから温度100℃以上で安定した膜厚の化合物層152が得られ、母材の密着力が確保できることが判る。
ここで、摺動部品の温度を200℃以上に上げても化合物層152の膜厚がほぼ一定となるのは、二硫化モリブデンが摺動部品の母材へ衝突する際に発生する熱エネルギーに加熱されることによって得られる熱エネルギーが加わることで得られる反応エネルギーが、本条件での熱エネルギー下におけるモリブデン、硫黄、鉄への酸素の固溶限界に近くなっていることによるものと考えられる。よって、摺動部材を高い温度に上げると、摺動部材自体が酸化反応を起こし、錆を生じる可能性があるため、摺動部品の温度の上限を200℃とした。
ここで、参考として、本発明の実施の形態1における摺動材を用いた圧縮機の特性と従来例の圧縮機の特性を比べたものを図6に示す。二硫化モリブデンを用いた摺動材は、どちらもピストンに使用しており、ピストンとボアーのクリアランスは同一にして組立てを行っている。図6より、実施例1に示す圧縮機160の効率が従来例の圧縮機に比べ明らかに安定して高いことが判る。
次に、ピストン132が上死点ならびに下死点に位置したときには速度が0m/sとなり理論的に油圧が発生せず油膜が形成されなくなるため、この上死点ならびに下死点において金属接触が生じることが多い。
また、圧縮機160においては、ピストン132が上死点付近にあるときは、ピストン132が圧縮された高圧冷媒により大きな圧縮荷重を受ける。この圧縮荷重はピストンピン137、コンロッド138を介してクランクシャフト108に伝わり、クランクシャフト108が反ピストン132方向へ押され、傾斜する。この傾斜はボアー113の中でピストン132を傾斜させる力となり、その結果ピストン132のトップ面側の上端と反トップ面側の下端にボアー113とのこじりが発生する。そしてこのこじりによってピストン132がボアー113と接触し摩耗が生ずる。
特に本実施の形態1に示す片持ち軸受の圧縮機の場合は、クランクシャフト108の傾斜が大きくなるため、このこじりが顕著に表れる。その結果、二硫化モリブデンの混合層150が剥離しやすくなることがある。
しかしながら、本実施の形態1においては混合層150の二硫化モリブデンが化合物層152により母材との密着性が高いため、二硫化モリブデンが剥離しにくいので、二硫化モリブデンの組織が稠密六方晶で、分子の大きさが約6×10−4μmと小さくことから低い摩擦係数でへき開することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下するため、高信頼性の圧縮機160を提供することができる。
また、混合層150における二硫化モリブデンの最大濃度を5wt%以上20wt%以下とすることで、二硫化モリブデンの自己潤滑性が安定し摩擦係数がさらに低下するため、さらに高信頼性かつ高効率の圧縮機160を提供することができる。
なお、本発明の実施の形態1においては、一定速度の圧縮機160についてのべたが、インバーター化に伴い圧縮機160の低速化が進む中、特に20Hzを切るような超低速運転に於いてはさらに流体潤滑を成立させにくくなり、金属接触を起こし易くなるので、本発明の効果がより顕著になる。
なお、本発明の実施の形態1においてはピストン132の摺動部表面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層150を形成させたが、ボアー113、並びにピストン132とボアー113の双方に施してもよく、更に高い耐摩耗性が得られる。
また本発明の実施の形態1においては、ピストン132の摺動部表面に二硫化モリブデンを固溶させた混合層150を形成させたものを例にとって詳しく述べたが、相互に摺動部を形成しているクランクシャフト108の主軸109と軸受部114、回転子105のフランジ面120とスラストワッシャ124、軸受部114の上端面のスラスト部122とスラストワッシャ124、ピストンピン137とコンロッド138、偏心軸110とコンロッド138の摺動部においても、相当の作用効果が得られるものである。
さらに、本発明の実施の形態1においては、スラスト軸受部126をフランジ面120、スラスト部122及びスラストワッシャ124にて構成したものを例にとって説明したが、クランクシャフト108の主軸109と偏心軸110との間のフランジ部170の反偏心軸110側に設けられたクランクシャフト108のスラスト面172と軸受部114のスラスト部122でスラスト軸受を構成した場合においても、相当の作用効果が得られる。
さらに、また、圧縮機160が、高信頼性かつ高効率のものであるため、冷凍システム装置も必然的に高信頼性、高効率のものを提供することが出来る。
以上のように本実施の形態によれば高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供できるとともに、高信頼性かつ高効率の圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することができる。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における圧縮機の断面図及び冷凍サイクル装置図、図8は、図7のC−D線断面図、図9は図8のE部拡大図である。
図7は、本発明の実施の形態2における圧縮機の断面図及び冷凍サイクル装置図、図8は、図7のC−D線断面図、図9は図8のE部拡大図である。
図7、図8、図9において、密閉容器201には固定子202と回転子203からなる電動要素204と、電動要素204によって駆動されるローリングピストン型の圧縮要素205がオイル206とともに収納されている。
圧縮要素205は偏心部207、主軸部208、副軸部209を有するシャフト210と、圧縮室211を形成するシリンダー212と、シリンダー212の両端面を封止するとともに各々主軸部208と副軸部209を軸支する主軸受213と副軸受214と、偏心部207に遊嵌され圧縮室211内を転動するローラ215と、ローラ215に挿圧され、圧縮室211を高圧側と低圧側に仕切る板状のベーン216とを備えており、主軸部208には回転子203が固定されている。
副軸受214に固定されたオイルポンプ217は給油管220と給油管220に遊嵌された給油スプリング222によって構成され、オイル206に連通し、偏心部207とローラ215、主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214が各々形成する摺動部への給油を司る。
そして、シャフト210の偏心部207、主軸部208、副軸部209の摺動部表面に、母材である鉄系材料の表面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層224を形成している。より好ましくは、混合層224における二硫化モリブデンの最大濃度を5wt%以上50wt%以下とすることである。
ここで、図4を用いて、二硫化モリブデンを固溶させた混合層224を形成する方法を説明する。本発明の実施の形態1においては、ドライエアー等の気体と共に二硫化モリブデンの粒を所定の速度以上で、加熱された摺動部品の母材である金属の摺動面に衝突させる方法を用いている。
具体的には、誘導加熱を用いて摺動部品を瞬間的、かつ、均一的に150℃程度に加熱したものを使用している。
この方法によって、衝突時に発生する熱エネルギーに加熱されることによって得られる熱エネルギーが加わることで、反応エネルギーを大きくし、二硫化モリブデンと摺動部の母材との反応を促進することで、母材表面並びに空気中の酸素が、二硫化モリブデンと母材と結合して、混合層224と母材の間に酸素、鉄、モリブデン、硫黄から成る化合物層226を形成する。この際、化合物層226が母材とのバインダーの役割を果たすことで、二硫化モリブデンが固溶した混合層224と母材との密着力を安定して高めることができ、その結果、極めて密着力の強い混合層224を形成することができたものと推定する。
なお、本実施の形態においては摺動部品を加熱する方法を用いたが、摺動部品の代りに二硫化モリブデンの粒を加熱し、加熱されたドライエアー等の気体と共に所定の速度以上で、摺動部品の母材である金属の摺動面に衝突させても同様な効果を得ることができ、また摺動部品、ドライエアー等の気体、二硫化モリブデンの粒の全てを加熱しても良い。
圧縮機275は、ディスチャーチチューブ277及びサクションチューブ280を通して、凝縮器282、ドライヤー284、キャピラリー286、蒸発器288と図8の如く順次接続されて、周知の冷凍サイクルを構成している。
以上のように構成された圧縮機275及び冷凍システム装置について、以下その動作を説明する。
回転子203の回転に伴ってシャフト210は回転し、偏心部207に遊嵌されたローラ215が圧縮室211内を転動することで、圧縮室211の高圧側と低圧側の部屋は連続的に容積変化をし、これに伴って冷媒ガス290は連続して圧縮される。さらに圧縮された冷媒ガス290は密閉容器201内に吐出され、密閉容器201内が高圧雰囲気となる。また、密閉容器201内が高圧であることからベーン216に密閉容器201内の雰囲気圧力が背圧として働き、ローラ215の外周表面にベーン216の先端を押しつけている。
また、シャフト210の回転に伴って給油管220に遊嵌された給油スプリング222はオイル206を連続的に各摺動部へ給油する。
圧縮室211内で圧縮された冷媒ガス290はディスチャージチューブ277から凝縮器282へと流れ放熱されて液化する。その後、ドライヤー284で水分をトラッピングされた後キャピラリー286で減圧され蒸発器288で蒸発し周囲の熱を奪うことで冷却し、再びサクションチューブ280から圧縮機275へと戻ってくるといった周知の冷凍サイクルの動作を行う。
ここで、特に、ローリングピストン型の圧縮機では、ローラ215が偏心部207に回転自在に遊嵌されていることから、ローラ215と偏心部207間の相対速度は主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214間の相対速度に比較して小さくなる。このことは軸受半径Rと半径すきまCと速度Nとオイル粘度μと面圧Pから求められるジャーナル軸受の特性を示すゾンマーフェルト数S(数1)が小さくなることであり、摺動潤滑上金属接触が発生しやすい不利な条件である。
S=μ×N/P×(R/C)2 …(数1)
さらにローリングピストン型の圧縮機は一般に密閉容器201内が凝縮圧力となるため、内圧が高く、オイル206の冷媒が溶け込みやすい。このことはオイルの粘度を低下させることであり、上述したジャーナル軸受の特性を示すゾンマーフェルト数S(数1)が小さくなることであり、摺動潤滑上不利な条件である。
さらにローリングピストン型の圧縮機は一般に密閉容器201内が凝縮圧力となるため、内圧が高く、オイル206の冷媒が溶け込みやすい。このことはオイルの粘度を低下させることであり、上述したジャーナル軸受の特性を示すゾンマーフェルト数S(数1)が小さくなることであり、摺動潤滑上不利な条件である。
しかしながら、このような際、シャフト210の偏心部207、主軸部208、副軸部209の摺動部表面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層224を形成させることで、ゾンマーフェルト数S(数1)が小さくなる摺動潤滑上不利な条件下においても、二硫化モリブデンが化合物層226により母材との密着性が高いため、二硫化モリブデンが剥離しにくいので、二硫化モリブデンの組織が稠密六方晶で、分子の大きさが約6×10−4μmと小さくことから低い摩擦係数でへき開することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下するため、高信頼性の圧縮機275を提供することができる。
また、混合層224における二硫化モリブデンの最大濃度を5wt%以上20wt%以下とすることで、二硫化モリブデンの自己潤滑性が安定し摩擦係数がさらに低下するため、さらに高信頼性かつ高効率の圧縮機275を提供することができる。
なお、本発明の実施の形態2においては、偏心部207、主軸部208、副軸部209の摺動面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層224を形成させたが、ローラ215の内周表面、主軸受213、副軸受214並びに、偏心部207とローラ215の内周表面の双方、主軸部208と主軸受213の双方、副軸部209と副軸受214の双方に施してもよく、相当の作用効果が得られる。
さらに、相互に摺動部を形成しているローラ215とベーン216、主軸受208とベーン216、副軸受209とベーン216、主軸受208とローラ215、副軸受209とローラ215、シリンダー212とベーン216、シリンダー212とローラ215、及び給油管と給油スプリングの摺動部表面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層224を形成させた場合においても、相当の作用効果が得られる。
以上、本発明の実施の形態2においては、一定速度の圧縮機275についてのべたが、インバーター化に伴い圧縮機275の低速化が進む中、特に20Hzを切るような超低速運転に於いてはさらに異常摩耗の課題が大きくなり、本発明の効果がより顕著になる。
さらに、また、圧縮機275が、高信頼性かつ高効率のものであるため、冷凍システム装置も必然的に高信頼性、高効率のものを提供することが出来る。
以上のように本実施の形態によれば高信頼性の圧縮機の摺動部材を提供できるとともに、高信頼性かつ高効率の圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することができる。
以上のように、本発明にかかる圧縮機は、摺動部品の摺動面に、二硫化モリブデンを固溶させた混合層を形成し、前記混合層の表面にさらに二硫化モリブデンの単体の層を形成することにより摩擦係数の低減が図れ、高信頼性かつ高効率の圧縮機を提供することが可能となるので、冷凍サイクルを用いた機器に幅広く適用できる。
101,201 密閉容器
103,206 オイル
107,205 圧縮要素
108, クランクシャフト
109 主軸
110 偏心軸
112 シリンダーブロック
114 軸受部
122 スラスト部
132 ピストン
137 ピストンピン
138 コンロッド
142,288 蒸発器
150,224 混合層
160,275 圧縮機
164,282 凝縮器
166,284 ドライヤー
168,286 キャピラリー
204 電動要素
207 偏心部
208 主軸部
210 シャフト
212 シリンダー
213 主軸受
214 副軸受
215 ローラ
216 ベーン
220 給油管
222 給油スプリング
103,206 オイル
107,205 圧縮要素
108, クランクシャフト
109 主軸
110 偏心軸
112 シリンダーブロック
114 軸受部
122 スラスト部
132 ピストン
137 ピストンピン
138 コンロッド
142,288 蒸発器
150,224 混合層
160,275 圧縮機
164,282 凝縮器
166,284 ドライヤー
168,286 キャピラリー
204 電動要素
207 偏心部
208 主軸部
210 シャフト
212 シリンダー
213 主軸受
214 副軸受
215 ローラ
216 ベーン
220 給油管
222 給油スプリング
Claims (6)
- 金属材料からなる摺動部品の摺動面に二硫化モリブデンの粒を衝突させてこれを固溶させた混合層を形成した摺動部材であって、二硫化モリブデンの粒を衝突させる際、摺動部品と二硫化モリブデンの粒の少なくとも一方が加熱されていることを特徴とする摺動部材。
- 摺動部品が100〜200℃に加熱されている請求項1に記載の摺動部材。
- 誘導加熱を用いて加熱した請求項2に記載の摺動部材。
- 密閉容器内にオイルを貯留するとともに圧縮要素とを収容し、前記圧縮要素は主軸および偏心軸を備えたクランクシャフトと、一方が前記クランクシャフトに一体に形成され、他方が軸受部に一体に形成されたスラスト部と、主軸を回転自在に軸支する軸受部と、シリンダーを形成するシリンダーブロックと、前記シリンダー内を往復動するピストンと、前記偏心軸と平行に配置され前記ピストンに固定されたピストンピンと、前記偏心軸と前記ピストンを連結するコンロッドとを備えレシプロ型の圧縮要素を形成し、前記クランクシャフト、スラスト部、シリンダーブロック、ピストン、ピストンピン、コンロッドの少なくともひとつに請求項1から3のいずれか一項に記載の摺動部材を用いた圧縮機。
- 密閉容器内にオイルを貯留するとともに圧縮要素とを収容し、前記圧縮要素は偏心部を有するシャフトと、前記シャフトの回転中心に同心に圧縮室を形成するシリンダーと、前記偏心部に嵌装され前記圧縮室内で転動するローラと、前記ローラに圧接されることで前記圧縮室内を高圧側と低圧側に仕切るベーンと、前記シリンダーの両側面を封止するとともに前記シャフトを軸支する電動要素側の主軸受及び反電動要素側の副軸受と、前記シャフトの一端に固定した給油スプリングと、前記給油スプリングを収納するとともに一端を前記オイル中に開口した給油管とを備えローリングピストン型の圧縮要素を形成し、前記シャフト、シリンダー、ローラ、ベーン、主軸受、副軸受、給油スプリング、給油管の少なくともひとつに請求項1から3のいずれか一項に記載の摺動部材を用いた圧縮機。
- 請求項4または5に記載の圧縮機を備え、凝縮器と、ドライヤーと、キャピラリーと、蒸発器を有し、冷媒にHFC冷媒またはHC冷媒を用いた冷凍サイクル装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2006078441A JP2007255247A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | 摺動部材及び圧縮機及び冷凍サイクル装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2006078441A JP2007255247A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | 摺動部材及び圧縮機及び冷凍サイクル装置 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2007255247A true JP2007255247A (ja) | 2007-10-04 |
Family
ID=38629744
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2006078441A Pending JP2007255247A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | 摺動部材及び圧縮機及び冷凍サイクル装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2007255247A (ja) |
-
2006
- 2006-03-22 JP JP2006078441A patent/JP2007255247A/ja active Pending
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