近年の省エネ、省資源化への社会的な背景を受け、より長寿命、高効率なランプの開発が望まれている。このような要請に応えるランプとして、特に、メンテナンスフリーの要望の高い施設や屋外照明、または、UV(紫外線)利用などの特殊用途向けとして、放電容器空間内部に電極を用いないことを特徴とした無電極放電灯装置が実用化されつつある。
現在、一般照明用光源として広く用いられている蛍光ランプや高輝度高圧放電ランプでは、点灯時間経過に伴う電極やフィラメントの劣化が寿命を制限する最大の要因であった。放電容器空間内部に電極を持たない無電極放電灯では、上記のような劣化要因が無いため長寿命が期待できる。また、この無電極放電灯を一般照明用として普及させるためには、現在の照明用光源として最も普及している直管タイプの蛍光ランプと同様に、細く、長い線状光源の形態で実現することが望まれている。これは既存の直管用照明器具が最も多く使われている理由として、管軸方向に対して均一な発光(輝度)で、かつ、器具効率(照明器具からの光の取り出し効率)、配光制御に優れているためである。
従来の細長い光源を実現するための無電極放電灯は、放電容器の回りに、複数個の誘導コイルを巻回することにより、コイルに高周波電流を供給することによって生じる誘導電磁場によって、放電容器内の可電離気体を電離、放電させ、安定したプラズマを持続させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
図10は、特許文献1に記載された従来の無電極放電灯装置を示すものである。
図10において、放電容器1101〜1104は光透過性の材質で気密に封止成形されており、通常、ソーダライムガラスやホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラス材料がその光源の用途によって使い分けられている。放電容器内部には、水銀およびクリプトン等の希ガス(図示しない)が封入され、発光管が実現されている。また、一般照明用途であれば、放電により放射された紫外線を可視光に変換するために、放電容器1101〜1104の内壁には蛍光体が塗布されて、発光管が実現されている。
誘導コイル1105〜1108は、放電容器1101〜1104に各々巻回され、細長い外管1109内においてその長手方向を軸として一列に設置されている。誘導コイル1105〜1108へは、高周波電源から、誘導コイルに電力が供給されるよう負荷側とのインピーダンスマッチングをとるための整合回路を介して接続されている(いずれも図示しない)。
高周波電源は、商用電源から供給される電力を数10kHz〜数10MHzの高周波に変換するインバータ回路により構成され、前記誘導コイル1105〜1108へと高周波電力を供給している。
このように構成される無電極放電灯装置は、主にUV殺菌灯などの特殊用途を中心として考案されており、その目的から、均一かつ幅広く紫外線を照射させるために、1つ、または、複数個の放電容器が直管状の外管内部に一直線上に配設されて構成されている。通常、この種の分野では、放電管内に電極を備えた直管形状の殺菌ランプが使用されることが多く、その概観的な形態を模したものである。
図10に示すような無電極放電灯装置においては、放電の開始時には高周波電源(図示しない)から供給される電流によって、誘導コイル1105〜1108が高周波電磁場を発生し、放電容器1101内において誘導コイル1105〜1108から発生される電磁界が最も強くなる巻線近傍において、放電の種火が発生する(E放電と呼ばれるプラズマ密度の低い微弱な放電:以下、E放電と称する)。
さらに、放電容器1101内に誘導される誘導高周波電磁場が、封入された希ガス及び水銀原子の電離を加速させることで、誘導コイル1105〜1108と同心円状の放電リングプラズマが形成され、誘導コイル1105〜1108から効率よくプラズマへエネルギーを伝達させることができる(H放電と呼ばれるプラズマ密度の高い放電:以下、H放電と称する)。
このようにして、微弱でプラズマ密度の低いE放電から、約1桁プラズマ密度の高いH放電へモードジャンプさせる。プラズマ中では、水銀の原子が電子によって共鳴準位に励起され、その励起された水銀原子が基底状態に脱励起する際に、主に紫外線が放射される。この紫外線のうちの主に波長253.7nmの共鳴線が、殺菌ランプなどのUV利用ではそのまま照射され、また、一般照明用途においては、放電容器1101〜1104の内壁に塗布された蛍光体層(図示しない)によって可視光に変換される。
E放電の領域では、一般的に、プラズマ密度が低いため、発光に必要な紫外線の放射量も相対的に低く、ランプの放電形態としては使用されない。さらに、誘導コイルにかかる電圧が高く、コイルに流れる電流値も高くなることから、コイル部分での損失が大きい。そのため、コイルにおける発熱によるコイルの耐熱寿命特性の低下や、コイル巻線間での絶縁破壊に対する信頼性の低下を引き起こす。さらに、誘導コイルへより大きな電流、電圧を供給しなくてはならないため、整合回路部にかかる電気的ストレスが大きくなる。これにより、点灯回路の寿命・信頼性が著しく低下することとなる。そのため、ランプとして実際に使用される領域は前述のH放電である。
H放電は、放電容器内に形成されたプラズマリングを2次側のコイルと見なせ、1次側の誘導コイルとの間で相互誘導を行うトランスとして見なせ、放電させる方式である。H放電は、一般的に、誘導コイルにかかる電圧が低くて済み、かつ、コイルに流れる電流値が低くて済むことから、コイルと回路素子に対する信頼性も高い。そのため、十数W〜数百Wの高出力な無電極放電灯装置として商品化されているものは、全てこのH放電を利用したものである。
このH放電を利用した光源の形態は、大きく下記A〜Cの3種類に分類できる。
(A).略球状、または、円筒状の放電容器の外面に誘導コイルを巻きつけた方式であり、前記記載の図10の放電容器および誘導コイルの配設形態である。
(B).略球状、または、円筒状の放電容器に内凹部を設け、その内凹部に円筒状(または円柱状)のマグネティックコアにコイルを巻きつけ、誘導コイルに形成したものを挿入した形態である。
(C).カタカナの“ロ”の字型、または、丸管蛍光ランプを模した放電容器で、その放電容器の一部を覆うような形のマグネティックコアにコイルを巻いて構成した誘導コイル(トクマク形)を配設したものである。
図10に示す構成の無電極放電灯装置は、複数の放電容器についてそれぞれ巻回された誘導コイルが並列接続されている。これにより回路側からの出力電圧に対して各誘導コイルにかかる電圧を等しくし、定常点灯時には誘導電界による放電の発光を均一化する効果がある。しかしながら、点灯始動時には、放電容器、封入物、誘導コイルなどの製造上の特性ばらつきが原因で、すべての発光管が同時に点灯始動することは通常ほとんどない。
ランプの始動時においては、E放電が発生した段階で、放電空間内の微弱なプラズマ中を電流が通る。つまり、電流パスが増えるため誘導コイルに流れる電流が実質的に低下することになる。そのため、誘導コイル両端で発生する誘導起電圧はその分だけ低下する。誘導コイルが並列接続であれば、先にE放電を開始した発光管に巻回された誘導コイルの起電圧低下に引きずられて、他の発光管(E放電すら開始していない発光管)に巻回された誘導コイルの起電圧も低下する。つまり、放電開始のために加えられる電圧が低下するため、始動には不利になる。
さらに、H放電に至っては、発生したプラズマとのカップリング(相互インダクタンス)の影響で、誘導コイルの両端にかかる誘導起電圧が大幅に低下(通常、E放電時の1/3〜1/5の電圧)するため、他の発光管(放電を開始していない発光管)は放電に必要な電圧を各誘導コイルから得られず、点灯始動性(特に、E放電からH放電への移行)が低下するか、または、点灯始動(H放電への移行)できない状態となる。よって、誘導コイルおよび回路素子へ、極端なストレスを与えることになる(信頼性・寿命の低下)。
そして、この現象は、前記A〜Cの3方式の無電極放電灯における本発明者らの実験比較検討の結果、C方式のトクマク形の無電極放電灯について特に顕著であり、複数の発光管を一様に点灯することが困難であることがわかった。その理由は、トロイダルコアを使用しているために誘導コイルによって励起される磁束がほぼ閉磁路(コアの一部に微小なギャップを入れる場合もある)となり、その閉磁路のループの中を、閉ループ状の放電容器に押し込まれたプラズマにより形成されたループ状の全放電電流が、もれなく完全に鎖交する形で通過しているため、プラズマとのエネルギーカップリングが非常に良くなるためであると考えられる。そのため、トクマク方式では、H放電によるプラズマとの相互インダクタンスの影響がA及びB方式に比べ大きく、点灯後に誘導コイルに誘起される起電圧の低下程度が大きくなるからである。A及びB方式については、開放磁路となるため、トクマク形に比べるとカップリングの性能が著しく低下するために影響の度合いが小さいためであると考えられる。
本発明者らは、3方式の比較のために単一の発光管を30W〜100Wの入力電力で点灯させた場合の実験した結果、トランスの結合係数でいうと、トクマク方式では、|k|=0.8〜1.0、その他2つの方式では、|k|=0.5〜0.7程度(誘導コイルの配設や放電容器の形状、発光管に投入する電力の違いにより係数は若干変化する)であることが分かった。つまり、トクマク方式では、発光管へのエネルギーの伝達効率は極めて高く、効率も得やすいが、その裏返しとして、プラズマが形成するインダクタンス成分による相互インダクタンスの影響を受けやすく、H放電への移行前後で大きく負荷(誘導コイルおよび発光管)のインピーダンス特性が変化してしまう。
このために、図10の構成の従来の無電極放電灯装置では、特に、ループ状の放電容器を有するトクマク方式のように、エネルギーカップリングの高い無電極放電灯装置においては、複数の放電容器を点灯させるためには、放電を開始できていない発光管を検出して、検出された発光管に配設されている誘導コイルには別途新たに始動補助用の誘導コイルを設置して放電を開始させるなど、特別なフィードバック制御と機構が必要不可欠であり、装置の大型化、高コスト化となる。
一方、発光管内に形成されるプラズマの形状については、前記2つの方式では、誘導コイルの内部、または、外側に配設された放電容器内部に、誘導コイルと同心円上のリング形状プラズマが形成され、電流ループが形成される。そのため、これらの2方式では、誘導コイルが配設されたコイルの幅に相当に対応して、誘導コイルに並列な発光管の一部(プラズマは拡散するので誘導コイルの幅より少し広め)しか発光しない。
これらの2方式において、細長い放電管を全長に渡って発光せしめるためには、全長に渡って誘導コイルを巻回するか、または、誘導コイルが巻回された複数の発光管を数珠つなぎに配列するしかない。したがって、図10に示すような放電容器1101〜1104の外面に誘導コイル1105〜1108を巻回する方式の場合、誘導コイル1105〜1108により発光管から放射される光が妨げられ、光の取り出し効率が低下してしまう。さらには、フェライトなどのマグネティックコアを構造上使用することができないため、放電を発生させるためにはより大きな電流を誘導コイルに流すか、コイルの巻数を極端に多くしないと、放電に必要な電圧を誘起できないとともに、管内に誘導電界を誘導できない。
加えて、図10に示すように、並列に誘導コイル1105〜1108を接続しているため、点灯回路からの出力電流は分流されて小さくなるので、元の点灯回路を流れる電流を大きくする必要がある。このため、点灯回路での損失がさらに大きくなり、放電灯装置(システム)としての効率は著しく低下する。よって、効率が要求される施設や屋内外の照明用光源としては不向きである。
一方、トクマク方式では、トロイダルコアを通る磁束と、ループ状の放電管が鎖交しているために、放電容器に沿ってループ状の放電電流が流れる。つまり、ループ状の放電容器が、そのままリング状のプラズマの形状を呈し、誘導コイルの幅に関わらず、放電管全体を発光せしめることができる。そのような理由で、トクマク方式の無電極放電灯はこの上なく有利なのであるが、他の2方式に比べ、放電のパス(電流ループ)が極端に長くなり、放電プラズマのインピーダンス(プラズマの抵抗成分、および、インダクタンス成分)が高くなるため、放電の維持が困難になり易い。線光源を模するために、長尺化すればするほど、放電維持が困難となる。さらには、放電を維持するために大きな電流を誘導コイルに供給させなければならず、誘導コイルでの損失が増加し、効率を低下させてしまうことになる。このためには、放電維持が容易な発光管長に分割し、複数の発光管を配列して線光源を実現することが、より現実的で優位であると考えられるが、トクマク方式の無電極放電灯を多灯点灯することは、前記のように、放電始動性に関する困難を伴う。
特開2001−167739号公報(図11参照)
好適な実施形態において、整合部は、少なくとも一つ以上のキャパシタ、または、キャパシタとインダクタとの組み合わせにより構成されている。
好適な実施形態において、一つの放電容器に、複数個の誘導コイルが配設されている無電極放電灯点灯装置であって、前記一つの放電容器に配設されている複数個の誘導コイル同士が、前記電源側から見て直列接続されている。
好適な実施形態において、前記複数の放電容器が隣接配置され、前記複数の放電容器の間には、一つの誘導コイルが配され、前記複数の放電容器は、前記一つの誘導コイルによって点灯制御される。
好適な実施形態において、前記複数の放電容器に、それぞれ複数の誘導コイルが配設され、各放電容器において、配設されている複数個の誘導コイル同士を、前記高周波電源側から見てそれぞれ並列接続され、前記各放電容器間の誘導コイル同士が直列接続されている。
好適な実施形態において、前記複数の放電容器の点灯始動時の状態に合わせ、前記整合部のキャパシタの定数を切り替える切換部と、前記放電容器の点灯始動の状態を検出する点灯検出部とを備え、前記切換部は、前記点灯検出部の検出結果に基づいて、段階的に前記整合部のキャパシタの定数を切り替えることができる。
好適な実施形態において、前記整合部は、少なくとも1つ以上のインダクタを含んだ構成であり、前記複数の放電容器の点灯始動時の状態に合わせ、前記整合部のインダクタの定数を切り替える切換部と、前記放電容器の点灯始動の状態を検出する点灯検出部とを備え、前記切換部は、段階的に前記整合部のインダクタの定数を切り替えることができる。
好適な実施形態において、前記複数の放電容器の点灯始動時の状態に合わせ、前記高周波電源の駆動周波数を変化させる周波数制御部と、前記放電容器の点灯始動の状態を検出する点灯検出部とを備え、前記周波数制御部は、前記点灯検出部の検出結果に基づいて、前記駆動周波数を段階的または連続的に上昇させるよう制御することができる。
好適な実施形態において、前記点灯検出部は、前記放電容器の点灯始動の状態を、各放電容器に配設された誘導コイルの電気特性であるコイルに流れる電流、コイルの両端にかかる電圧、もしくは、電源投入後の経過時間、または、前記放電容器の点灯による発熱や光、に基づき検知することができる。
このような構成により、複数の発光管をひとつの点灯回路にて容易に多灯点灯せしめ、かつ、製造上容易でかつ低コストな手段により、始動性能および点灯回路での効率を改善することができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施形態における無電極放電灯装置を示す回路図であり、図2A〜図2Dは、図1の実施の形態における発光管の点灯状態の推移に対する、誘導コイル部と発光管部の等価回路図である。
図1において、発光管111及び112は、ソーダライムガラスやホウ珪酸ガラス、石英などの光透過性の材料で成形した気密な環状の放電容器で構成されている。また、発光管111及び112の寸法は、既存の直管形の蛍光ランプや直管形を折り返した形状のコンパクト蛍光ランプと同様に、照明器具の配光設計の観点から、管外直径は15〜38mmが好ましく、その中でも、高周波点灯の直管蛍光ランプで最も普及率の高いT8管(25mm管)やT10管(32mm管)は、既存の器具の光学系をそのまま流用できることから有用である。また、管長(一本の放電管の全長)は、150mm〜600mmの放電管とすることが実用的であり、複数個並べることで、20Wの直管蛍光ランプの約600mm、40Wの直管蛍光ランプの約1200mmに相当する器具光学系を形成しやすい。また、ランプの消費電力については、既存の施設、屋外用の照明用として使用されている直管の蛍光ランプやコンパクト形の蛍光ランプと同程度で、20〜110Wが実用的である。また、発光管111及び112の内部には、水銀と、アルゴン、クリプトン、キセノンなどのうち一種類または複数種類の希ガスが封入され、放電容器壁面には蛍光体が塗布されている(図示しない)。
誘導コイル102及び103は、リッツ線により形成され、トロイダル形状のフェライトコア104及び105の周囲に数回から数十回の巻数で巻かれている。また、全誘導コイルの合成インダクタのQ値(Q=ωL/R ω:角周波数、L:インダクタンス、R:等価抵抗)が、100〜250になるよう設計することが、発光管の始動性、点灯安定性の観点から望ましい。
フェライトコア104及び105は、環状の発光管111及び112の一部を覆うように挟み込まれている(トクマク方式)。この際、発光管の点灯始動時にかかる誘導コイルが励起する磁束でフェライトコアが磁束飽和されて、所要の磁束が得られず始動性能を損なわないために、また、製造上の嵌め込み面の接触不良などによる電気特性ばらつきを吸収するために、トロイダルコアの一部に樹脂部材などのスペーサーを挟み込み、磁気的なギャップを設けても良い。
誘導コイル導入線113及び114は、それぞれ一端が誘導コイル102または103の一端に接続され、他端が整合回路107に接続されている。また、誘導コイル導入線115は、両端が誘導コイル102及び103に接続されている。すなわち、誘導コイル102及び103は、誘導コイル導入線113〜115によって直列接続されている。
整合回路107は、商用電源とインバータ回路とにより構成(図示しない)される高周波電源106と、誘導コイルとの間で、インピーダンス整合を行う回路である。通常、整合回路は、誘導コイルのインダクタとの共振現象を利用するため、キャパシタの組み合わせ、または、キャパシタとインダクタとの組み合わせにより構成される。図1では、最も簡易なキャパシタ2つによるL形の構成としているが、この限りでなく、誘導コイルのインダクタと狙いの駆動周波数(点灯周波数)で共振するよう定数の設計を行えばよい。
高周波電源106は、高周波電流を発生するものであり、高周波電源106から供給される高周波電流によって誘導高周波電磁場を発光管111及び112内に誘起して放電を発生させている。高周波電源106は、回路でのスイッチングロスや、使用しているコア材料を考慮すると、40kHz〜3MHz間の駆動周波数が望ましく、矩形波か正弦波を出力する。誘導コイル102及び103には、発光管の点灯始動時には1.5〜2.5kVのピーク・トゥ・ピークの電圧がかかるので、絶縁被覆を施した線材を使用しており、誘導コイル102と103は電源側から見ると互いに直列接続されている。
トクマク方式の無電極放電灯を構成しているのは、前述のようにトクマク方式では光の取り出し効率が高く、また、その形状から、直管蛍光ランプを模し、2灯配列したランプ配光となるからである。また、複数の発光管を配設しているのは、一つの発光管で長尺の線光源を実現する場合と比して、前述の通り、複数に分割した短尺の発光管とする方が、放電プラズマのインピーダンスを小さくし、放電維持性能と効率を向上させることができるからである。このトクマク方式の無電極発光管を複数個、長手方向に配列すれば線光源を実現することができ、マトリクス状に配置すると薄い面光源を実現することができる。以下、この動作原理を説明する。
図2A〜図2Dは、図1の誘導コイル部分と発光管の部分等価回路図と発光管の模式図である。図2Aは始動点灯前の状態を示し、図2Bは一方の発光管において先に種火が点火した直後のE放電の状態を示し、図2Cは一方の発光管がH放電に移行した状態を示し、図2Dは両方の発光管が共にH放電に移行した状態を示している。図2A〜図2Dの順番で、発光管が点灯される様子を示している。
以上のように構成された無電極放電ランプについて、以下その動作を説明する。
無電極放電灯は、商用電源からインバータにより変換された高周波電源を、図2Aに示す整合回路202のキャパシタと、誘導コイル203及び204との共振現象を利用して、大きな電圧及び電流を誘導コイル203及び204に供給している。電源投入後、複数個配設された発光管205及び206の内、最も始動し易いもの(図の例では発光管205)から順に、誘導高周波電磁場によって放電の種火が発生する。図2Bは、発光管205内において、種火発生により形成された容量結合プラズマ(E放電)の等価回路モデルを示している。
E放電では、図2Bに示すように、プラズマのキャパシタンス成分207のCplと抵抗成分208のRplとが、誘導コイル203に並列に接続された状態となり、新たに電流が流れるパスができる(厳密には、誘電体である放電容器によるキャパシタンス成分も存在する)。このため、誘導コイル203のL1を流れる電流は、誘導コイル側とプラズマ側の2つに分流され、誘導コイルL1の両端にかかる誘起電圧は、その分だけ低下することになる。つまり、インピーダンスが下がっているのである。
また、種火すら発生していないもう一方の発光管206においては、電流のパスが誘導コイル204のL2以外に無く、誘導コイルL1と誘導コイルL2とが直列に接続されているため、誘導コイルL2の両端にかかる誘起電圧は低下しない。仮に並列接続であれば、誘導コイルL1の誘起電圧の低下に引きずられて誘導コイルL2の誘起電圧も低下するのと比較すると、それだけでも、放電開始が遅れた発光管206を点灯始動させるのに十分な電圧(電界)を与えることができるので、有利に作用することは容易に類推できる。
さらに、図2Cでは、前述の先に放電を開始した発光管205で、E放電から、非常にプラズマ密度の高く発光効率の高い誘導結合プラズマ(H放電)へとモードジャンプしている様子の等価回路モデルを示している。
なお、E放電からH放電に移行するメカニズム、要件に関しての諸説はあるが、明確にはされていないのが実情である。一般的には、発光管内に満たされたプラズマが、ドーナツ状のループを形成し、このプラズマにループ状の電流が流れる状態になって初めて、プラズマがトランスの2次側コイルの役割を果たすことができ、誘導結合に至ると考えられている。
図2Cの場合、プラズマのインダクタンス成分309であるLp1と抵抗成分Rp1とにより構成され、誘導コイル203を1次側、プラズマのインダクタLp1を1ターンのループコイルとするトランスの2次側と見なせ、磁気的な結合(カップリング)によって発光管をH放電せしめる。このプラズマのインダクタLp1は、プラズマの形状によるものとプラズマ中の電子の運動の慣性によるものの合成であるが、通常、発光管の点灯周波数は数MHz以下とプラズマ周波数(数10GHz)と比して小さいため、電子の動きは点灯周波数に十分追随することができるため無視できる程度である。そのため、ほぼプラズマの形状によるものと考えてよい。
また、図2C中のCp2、Rp1はそれぞれ、遅れて放電の種火が発生した発光管206で発生した容量結合プラズマ(E放電)のキャパシタンス成分307、抵抗成分308を表す等価回路モデルである。これがモードジャンプし、誘導結合プラズマであるH放電に移行した時の状態を表しているのが、図2Dであり、それぞれ、Lp2、Rp2は、プラズマのインダクタンス成分311と抵抗成分312である。
一般的に良く知られているように、H放電になると、誘導コイルの両端にかかる電圧は、放電開始前やE放電の状態に比して、約1/3〜1/5程度と大幅に低下する。これは、後述する1次側コイル(誘導コイルに相当)と2次側コイル(プラズマにより形成された放電電流ループに相当し、1ターンのコイルと見なす)との間の相互インダクタンスの影響によるものである。この相互インダクタンスにより、見かけ上、誘導コイルのインダクタンス成分が下がることで、図2Cに示される誘導コイル203のL1の両端に誘起される電圧が大きく低下する。
本実施の形態では、誘導コイル203のL1と誘導コイル204のL2とが直列に接続されているため、オームの法則に従ってこのL1とL2の電圧の受け持ち(分圧)が、L1の電圧が低下した分だけL2の電圧を上昇せしめるのである。この結果、放電開始が遅れた方の発光管206では、放電開始(種火発生)からE放電、H放電へと放電のモードジャンプするに足る十分な電圧、誘導電界を得ることができるため、点灯始動が容易かつ確実なものとなる。
なお、L1とL2が並列に接続されている場合は、先にH放電に移行した発光管側の誘導コイルL1の電圧低下に引きずられて、誘導コイルL2の電圧が下がるので、放電開始の遅れた発光管では、L2からE放電、H放電へとモードジャンプするに足る電圧、誘導電界が得られないため、何らかの別の手段を付与しなければ不点状態となるのは言うまでもない。
次に、このH放電に至った際の誘導コイルとプラズマとの相互インダクタンスの影響について述べる。
図3Aにはトランスの一般的な結合回路を示し、図3Bはその等価回路を示している。図3A及び図3Bにおいて、L1は1次側コイル401で、無電極放電灯装置では誘導コイルに相当する。L2は2次側のコイル402で、無電極放電灯装置では誘導結合放電により発光管内に形成されるプラズマのインダクタンス成分(1ターンのコイル)に相当し、主にプラズマの形状(プラズマ密度も含む)に依存する。Mは、1次側コイル401と2次側コイル402との間に作用する相互インダクタンス(Mには符号を含む)であり、1次側にV1の電圧を与えることで、2次側にV2の電圧を誘起している様子を示している。図3A及び図3Bから明らかなように、1次側コイル401の電圧V1は、2次側コイル402に流れる電流I2の影響を受ける。また、2次側コイルの電圧V2は、1次側コイルの電流I1の影響を受ける。
このような結合回路の電圧、電流の関係はそれぞれ複素電圧、複素電流を用いて表記すると下記数式1のようになる。
V1=jωL1*I1+jωM*I2
V2=jωL2*I2+jωM*I1
(V1、V2、I1、I2はいずれも複素電圧、電流であり、jは虚数、ωは角周波数) ・・・〔数式1〕
この際、Mの中には符号が含まれている(無電極放電の場合、H放電に至ると電圧が低下することから、ここではM<0となる)。また、Mは、下記数式2のように表され、結合係数kは、−1≦k≦1の値をとり、|k|が1に近いほど結合が高いことを示している。
M=k√(L1*L2) ・・・〔数式2〕
このように、1次側の電圧V1は、相互インダクタンスMの大きさに比例して低下し、Mの大きさはL2(無電極放電灯ではプラズマのインダクタンス成分に相当)の平方根に比例、結合係数kに比例することから、結合率の高い無電極放電灯、すなわち、前述のトクマク方式によるものや、プラズマ密度が高くなる高効率な無電極放電灯ではH放電に移行することによる誘導コイルの電圧低下の度合いが大きくなるということである。さらに、整合回路のキャパシタと誘導コイルのインダクタによるLC共振周波数は、下記数式3として記述される。
F=1/(2π√(L*C)) ・・・〔数式3〕
(Fは共振周波数で、F=ω/2π)
数式3において、Lは複数個の配設された誘導コイルの合成インダクタンスで、Cは整合回路に含まれる全キャパシタの合成キャパシタンスである。
これがH放電移行後には、プラズマの形状と投入電力に依存して決まるプラズマのインダクタンス成分(こちらもトクマク方式が電流ループが大きくなるため圧倒的にインダクタンスは大きくなる)が加わることによりLからL’に推移し、共振周波数はFからF’に推移する。つまり、プラズマのインダクタンス成分が大きくなるほど共振周波数の推移が大きくなる。逆に、誘導コイルの合成インダクタンスが大きいほど、プラズマのインダクタンス成分による変動分が誘導コイルのインダクタンスに比して相対的に小さくなるため、共振周波数の推移は少なくなる。つまり、誘導コイルの直列接続の方が、誘導コイルの合成インダクタンスが大きくなるため、H放電移行前後での共振周波数との間のズレは小さくなる。
以上のことから、本発明の無電極放電灯装置の如く、それぞれ異なるループ状の発光管に配設された各誘導コイル同士の接続を直列接続とすることで得られる特徴を下記に記す。
まず、第一に、点灯始動を良好かつ確実にする行うことができる。すなわち、複数の発光管を多灯点灯する場合、先に放電を開始した発光管に配設した誘導コイルの誘起電圧の低下の影響で、点灯始動が遅れた発光管に配設した誘導コイルの誘起電圧が大きくなる。これにより、H放電に移行するのに十分な誘導電界を得ることができるためである。
第二に、点灯始動性と効率の双方を両立することができる。すなわち、複数の誘導コイルを直列に接続するために、並列接続に比して、その合成インダクタンスは大きくなる(並列接続の方が合成インダクタンスは小さい)。そのため、相対的に、H放電プラズマへとモードジャンプすることにより発生するプラズマのインダクタンス成分の変動の影響が小さくなる。その結果、放電の開始前における共振周波数と、H放電移行後の共振周波数のズレが小さくなるため、並列接続の場合に比して、力率(インピーダンス整合の適正化)の低下度合いが小さい。点灯始動の前後で共振周波数のズレが大きいと、始動前の共振点と定常点灯時(H放電移行後)の共振点との双方の妥協点にて、インバータの駆動周波数を設計しなければならず、始動性も効率の両立が困難になってしまうことは言うまでもない。
第三に、誘導コイルを直列接続することで、点灯回路中に流れる総電流量(電流量の総和)が、並列接続に比して大幅に小さく、高周波電源部での回路素子の消費電力を小さく抑えることができる。このため、点灯回路中での損失を低減できると同時に、点灯回路中から放射される電磁ノイズ(特に放射磁界)を低減させることができる。
無電極放電灯の形態の中で、比較的、1次側誘導コイルと2次側プラズマコイルとの間での電磁誘導の結合率が高く、効率が出やすい放電灯(たとえば、閉ループ状の発光管形状を有するトクマク方式の無電極放電灯)ほど、さらには、高出力用の投入電力が高い(プラズマ密度が高い)放電灯ほど、前記2つの特徴の優位性が顕著となる。
これにより、H放電の移行前後で、負荷(発光管および励起コイル)のインピーダンス変動が大きいトクマク方式の無電極放電灯を複数点灯させることができる。また、効率が良好で、光源の配列の仕方次第で線光源にも面光源にも展開可能な利便性、照明設計が容易なトクマク方式の複数の無電極放電灯を点灯させることができる。
なお、本実施形態では、2個の発光管を配設した例を示しているが、3個以上の場合も同様の効果を得ることができる。
また、発光管の形状は、カタカナの“ロ”の字形の場合を示したが、これに限定されるものでなく、アルファベットの“O”型(環状)や“H”型など放電プラズマの形状をループ型に形成せしめる放電容器の形態であっても良い。
また、整合回路107の構成は、本実施の形態ではキャパシタ2つを直並列に接続した最も簡易なL型の例を示したが、その構成に限定されるものではなく、いわゆるT型やπ型の回路構成でもよい。さらに、キャパシタやインダクタを複合組み合わせてもよい。また、本実施形態の整合回路107では、単一の共振系の構成としているが、各発光管に配設された誘導コイル毎に共振系(整合回路)を設けても良い。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を、図4を参照して説明する。
図4において、無電極放電装置は、高周波電源501と、誘導コイルと共振させるための整合回路502と、2個の発光管503及び504と、それぞれの発光管に配されている誘導コイル505〜508とを備えている。
発光管503には、誘導コイルの505と507が配設され、発光管504には誘導コイルの506と508が配設されている。全ての誘導コイル505〜508は、直列に接続され、誘導コイル505及び506の一端はそれぞれ整合回路502に接続されている。同一発光管上で誘導コイルを複数配設する際には、その誘導コイル同士の接続には、コイルの設置向きに注意が必要であり、誘導コイルにより発光管内に発生する誘導電界の向きが、管形状内のループに沿って同一方向になるように揃えなければならない(位相を合わせる)。誘導電界の向きが管形状内のループに沿って同一周方向でなければ、発生する誘導電界が互いに打ち消し合い、放電電流ループが形成されず、H放電に移行できないからである。
定常点灯のH放電に移行させるためには、発光管503及び504内をE放電によるプラズマで満たして、管内にループ状の電流パスを形成しなければならない。このループ状に形成されたプラズマの密度が高まり、このループに沿って放電電流が流れるようになると、E放電で形成された誘導コイルに近接する発光管内の一部のみで流れる電流パスよりも、ループ状に発光管内を一周する電流パスの方が主体へと移行する、つまり、これが、H放電への移行動作である。
本発明者らは、放電モードの移行(E放電からH放電)のメカニズムに関する実験検討、および、点灯始動時過渡状態における放電の発光部(プラズマ)高速カメラ撮影による画像解析の結果、以下の結論を見出すに至った。すなわち、E放電では、誘導コイルに近接した発光管の一部のみの放電であるから、これを、さらにプラズマの密度を高めて管内に拡散させ、かつ、プラズマは導体なので、プラズマ中に発生する誘導コイルによる誘導電界でプラズマ中の荷電粒子を管内ループ状に移動させる(つまり、放電電流ループを形成する)プロセスが滞りなく行われることが、H放電への移行を容易にすることを実験的に見出した。この理由から、E放電からH放電へと移行させるためには、発光管内の一部の誘導電界が部分的に極端に強いことではなく、管内全般に渡って幅広く、適度に強い誘導電界を形成することが、H放電の移行には大きな役割を果たすことが明らかになった。
誘導電界の強度は、誘導コイルから離れるほど、ビオ・サバールの法則に従って距離の2乗に反比例し低下する。そのために、管内で誘導コイルから最も離れた位置の誘導電界をいかに高めることができるかが、始動性(H放電へのモードジャンプ)を良好にするための重要な要件である。1つの発光管上において、誘導コイルから最も離れたところの発光管内部の部分までの距離、すなわち、図1における誘導コイル配設の例では誘導コイルと対向する側の発光管の端部108と、図4の誘導コイルの配設の例では対向する双方の誘導コイルからの距離が等しい発光管中央付近509とを比較すると、図4の場合は図1の場合の約半分(1/2)の距離になる。図4は1つの誘導コイルを2つの誘導コイルに分割して設置している構成である。たとえば、誘導コイルを等分割した時に誘導コイル両端に発生する誘起電圧は1/2になり、誘導コイル付近の発光管内部での誘導電界もおおよそ1/2となる(コイルと少し距離がある分、1/2より若干小さくなる)。距離の逆2乗に比例するので、発光管内部の誘導コイルから最も離れたところの位置509では、位置108に比べ距離が1/2になるので同一の誘導コイルであれば誘導電界は4倍となる。つまり、結果的に、誘導コイルの性能ファクターと距離のファクターを掛け合わせると、位置509では位置108の誘導電界の2倍となる。また、電磁気現象は重ね合わせが成立するので、図4のように誘導コイルが2個となると総計4倍の誘導電界強度となる。つまり、H放電へ移行するためにボトルネックとなっていた、誘導コイルからの最も遠方部の誘導電界を効果的に高めることができるため、点灯始動性(E放電からH放電へのモードジャンプ)を格段に向上させることができる。そのため、誘導コイルを複数個分割して、H放電の電流ループのパス上に配設することでさらに始動性が向上するのである。なお、図4に示す構成は、1つの発光管上に2つの誘導コイルを対向させて配設しているが、3以上に分割しても同様の効果が得られる。また、配設間隔が不均等であっても、同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
本発明の第3の実施形態を図5を参照して説明する。
図5(a)は無電極放電灯装置の側面図で、図5(b)は平面図である。図5の構成において、同一発光管上で配設された複数の誘導コイルのうち、一つの誘導コイル607を、2つの発光管603及び604を隣接して配設することで、共通化(一体化)している構成となっている。すなわち、図5に示すように、1つのフェライトコア609で保持された2個の発光管603及び604の間に、誘導コイル607が巻回されている。また、発光管603において、フェライトコア609に対向する位置に、誘電コイル605が巻回されているフェライトコア608が配されている。また、発光管604において、フェライトコア609に対向する位置に、誘電コイル606が巻回されているフェライトコア610が配されている。誘電コイル605、607、606は直列接続され、両端は整合回路602に接続されている。
誘導コイル605、606、607を、図5に示すように直列接続することで、誘導コイルによって発光管内に発生する誘導電界の向きが、発光管603及び604のループに沿って同一方向に揃うよう位相を合わせることができる。
このような構成の無電極放電灯装置においては、点灯の原理は前述の実施形態2(図4参照)と同じであるが、図4の構成に比べ部品点数を削減できるため、製造コストを削減することができる。また、装置のコンパクト化が図れる。
なお、本実施形態では、2個の発光管603及び604を一例に挙げて説明しているが、3個以上であってもよい。その場合は、フェライトコア609のように2つの発光管を保持可能な構成のフェライトコアで、複数の発光管を数珠繋ぎにして保持させることで、上記と同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
本発明の第4の実施形態を図6を参照して説明する。
図6は、高周波電源701は、整合回路702を介して誘導コイル705〜708に接続されている。発光管703に配設されている誘導コイル705と誘導コイル707とは並列に接続され、誘導コイル705及び707により発生する誘導電界の向きが合わせられている。また、発光管704に配設されている誘導コイル706と誘導コイル708とは並列に接続されている。2つの発光管703及び704を跨って配設された誘導コイル同士の接続は、高周波電源701側から見て直列接続とする。
図6に示す構成とすることで、先にH放電に移行した発光管に配設されている誘導コイルの両端にかかる誘起電圧が低下すると、他方の発光管(放電開始が遅れた方の発光管)に配設されている誘導コイルに誘起される電圧は、電源側から見て直列接続であるため、その分圧の関係から上昇する。つまり、放電開始からH放電移行までを容易にするという本来の特徴を有している。
同一の発光管上で複数個の誘導コイルを配設させているのは、本発明の実施形態2で述べた理由と同様に、誘導電界の強度を高め、E放電時の初期のプラズマの分布を広げるためである。
また、同一の発光管上で配設された誘導コイル同士の接続を並列にすることで、誘導コイル705と誘導コイル707、または、誘導コイル706と誘導コイル708の電圧、誘導コイルにより生じる発光管内の誘導電界が対称となるため、放電中のプラズマに作用する影響が双方で均等となる。結果、同一発光管上での発光輝度が均斉化され、効率を高めることができる。
以上のように本実施の形態によれば、誘導コイルを電源側から見て並列接続にした場合に比して、発光管の点灯始動前と、H放電移行後の共振周波数の変化が小さくて済むのは前述の通りである。しかしながら、この場合も、インバータの駆動周波数と共振周波数のズレにより、共振系(整合回路含む)の負荷側入力の力率が低下、電流、電圧の上昇することで回路効率がわずかに低下することは避けられない。この点灯前後でのインバータ駆動周波数と共振周波数のズレを改善し、効率の低下を抑制する本願発明の実施形態について、以下、図7A〜図8Bを参照して説明する。
図7Aは、本発明の実施形態の整合回路部の一例を示すものである。整合回路部への入力端子801から整合回路802を経て、誘導コイル及び発光管側への出力端子806に接続されている。整合回路802は、基本構成をキャパシタ803とキャパシタ804とで構成され、キャパシタ804に対して並列に可変キャパシタ805を接続している。
図7Aにおいて、発光管の放電モードがH放電に移行すると、放電プラズマのインダクタンス成分により、誘導コイルとプラズマのインダクタンス成分の負荷側の合成インダクタンスが低下する。そのため、前記数式3に示すように、インダクタンス成分が小さくなることで、共振周波数は高い方へ推移する。H放電の前後で、この共振周波数とインバータの駆動周波数を一致させるためには、このインダクタンス成分の低下分を整合回路部でのキャパシタ成分を増加させることで補い、共振系回路での共振周波数を一定にすることができる。つまり、整合回路部802に含まれる可変キャパシタ805は、この補正を行うためのものであり、H放電への移行前後で可変キャパシタ805により共振周波数を、インバータの駆動周波数を合わせることができる。段階的に切り替えるキャパシタの容量(定数)は、予め点灯させる発光管のプラズマによるインダクタンス成分の変化分に合わせて設計しておけばよい。
可変キャパシタ805のより具体的な構成を図7Bに示す。図7Bに示すように、図7Aの可変キャパシタ805を、図7Bの可変キャパシタ部807に代えて実現できる。可変キャパシタ部807は、互いに容量が異なるキャパシタC1及びC2を並列接続し、キャパシタC1はスイッチSW1でON/OFF制御され、キャパシタC2はスイッチSW2でON/OFF制御される。
複数点灯する際の各発光管が順次始動点灯する際、放電プラズマにより形成されるインダクタンス成分は、発光管の形状(プラズマの形状)と投入電力(定格消費電力)によって決まり、放電灯の仕様が決まれば自ずと確定する。そのため、発光管がH放電に移行する度に、点灯状態を検知して、順次、可変キャパシタ807に含まれるスイッチSW1及びSW2を切り替えて、可変キャパシタ807のキャパシタンスを決定し、整合回路部802における共振周波数をインバータの駆動周波数に合わせ込む。
点灯状態の検出方法は、発光管がH放電に切り替わると、その発光管に配設した誘導コイルの電圧、電流が大きく低下するため、これを検出しても良いし、発光管がH放電になると極端に光出力が増えるため、これをフォトダイオードなどの光検出素子で検知しても良い。また、発光管や誘導コイルの発熱量(温度)を検知するか、あらかじめ一定の時間が経過すると回路を切り替えるためのタイマー素子で構成しても良い。
切り替え用のスイッチング素子は、前記検出した信号をトリガーとして切り替えるリレー回路や、PTC(温度が上昇すると抵抗が増加する)やNTC(温度が上昇すると抵抗が減少する)に代表されるスイッチング用のサーミスタ素子により構成しても良い。
また、図7Aに示すように、最も簡易な例としてキャパシタを直並列に接続したL型の整合回路の1つのキャパシタ804に並列に可変キャパシタを接続しているが、この限りでなく、キャパシタ803やキャパシタ804に直列、または、並列に接続することで整合回路部のキャパシタ成分を可変にする構成であれば良い。ただし、直列に挿入する場合と並列に挿入する場合では、H放電移行前後でのスイッチの切り替え状態が逆になり、いずれの場合も、整合回路部でのキャパシタ成分を増加させるように切り替えなければならない。
次に、図8Aは、図7Aの可変キャパシタ805の役割を可変インダクタ903で代用した構成である。この構成は、発光管のH放電移行前後で変化する負荷側のインダクタンス成分を、整合回路に含めた可変インダクタ903で補うものであり、キャパシタC2に直列接続されている。これにより、インバータの駆動周波数と、整合回路および誘導コイル、発光管(プラズマ)により構成される共振系回路の共振周波数とを合わせることができる。
図8Bは、図8Aの可変インダクタ903をより具体化したもので、切り替えのための点灯状態検知手段や、切り替えスイッチの構成は図7Bの構成と同様である。可変インダクタ905は、スイッチSW3〜SW6と、互いにインダクタンスが異なるインダクタl1及びl2とから構成されている。点灯状態検知手段の検知結果に基づいて、SW3〜SW6が切り替えられて、可変インダクタ905におけるインダクタンスを決定し、整合回路部の共振周波数を切り替えている。具体的には、スイッチSW3とSW6とをONにしてインダクタl1を導通状態にする第1の状態と、スイッチSW4とSW5とをONにしてインダクタl2を導通状態にする第2の状態とを有している。
また、以上の構成は、整合回路、誘導コイル、発光管を含めた負荷側の共振周波数を調整する方式であるが、このような構成に限らず、発光管の点灯状態を検知する手段により、インバータ回路(高周波電源)の駆動周波数を決定する共振回路へフィードバックする機能を備え、インバータ回路の駆動周波数を負荷側の共振周波数の変化に追従させるよう構成しても良い。その場合は、駆動周波数を、段階的または連続的に上昇させるよう制御する周波数制御部を備えることが好ましい。
この結果、点灯始動の前後で、整合回路および誘導コイル、プラズマのインダクタンス成分により構成される共振系の共振周波数と、インバータの駆動周波数とを、適時合わせることができるため、点灯始動の前後で共振回路での発振電圧、発振電流、力率を低下させること無く、容易に点灯を開始することができ、かつ、定常点灯のH放電移行後も、共振回路での力率を低下させることがないため、点灯回路の効率を高めることができる。
なお、本発明の実施形態では、多灯点灯として2個の発光管の場合を示したが、これに限定されるものでなく、誘導コイルの配設個数、位置が異なっても同様の効果を得ることができる。
また、誘導コイルの巻き方は、本実施形態では、トロイダルコアに巻きつける構成としているが、これに限定されるものでなく、図9A〜図9Fに示されるように、トロイダルコアを搭載した誘導コイル1002の一部を、ループ状の発光管1001の壁面に沿わせた構成であってもよい。なお、図9Aは、誘導コイル1002を、発光管1001において整合回路から遠い側の端部に配した例である。図9Bは、発光管1001における対向する端部に、それぞれ誘導コイル1003及び1004を配した例であり、誘導コイル1003と1004とは直列接続されている。図9Cは、図9Bと同様の配置で、誘導コイル1003と1004とが並列接続されている例である。図9Dは、誘導コイル1010を、発光管1001に沿わせてループ状に巻き上げて配置させた例であり、端部がマグネット1007で固定されている。図9Eは、発光管1001の両端部において誘導コイル1010がマグネット1007及び1008で固定されている例である。図9Fは、発光管1001に沿わせてループ状に巻き上げて配置させた例であり、誘導コイル1010はマグネティックコアで固定されていない。
放電容器の仕様も前記実施例のみに限定されるものでなく、アルゴン、クリプトンの混合ガスのみでなく他の希ガス(ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)の単体または混合ガスでもよい。また、水銀の代わりに他の金属蒸気を用いても良いし、希ガスのみを使用しても同様の効果を得ることができる。