JP2007270880A - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

【課題】負荷の大きいディーゼルエンジンの第2圧力リングとして好ましく用いられる低コストで特性のよいピストンリングを提供する。
【解決手段】内燃機関用ディーゼルエンジンに用いられる第2圧力リング10であって、質量%でCr:9.0%以上11.0%以下及びC:0.45%以上0.55%以下を含む鋼材からなり、上面b、下面c、外周面a、内周面dには、700Hv0.05以上の硬度を持つ窒化拡散層12が2μm以上25μm以下の深さDで形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関に使用するピストンリングに関し、更に詳しくは、内燃機関用ディーゼルエンジンに用いられる第2圧力リングに関する。
近年のエンジン開発は、地球温暖化防止に関する環境問題(CO削減)を主に考慮してなされている。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ熱効率が高い。但し、熱負荷や圧力負荷が大きいため、耐久性の向上が求められている。このようなディーゼルエンジンでも、フリクションの低減による燃費の向上が求められ、さらにディーゼルエンジン特有の問題として、燃焼による未燃性粒子状物質(パティキュレート)の削減等、環境にやさしいエンジン開発が進められている。
ディーゼルエンジンのピストンには、通常、圧力リングとしての第1圧力リングと第2圧力リング、及びオイルリングの3本のピストンリングが装着されている。過酷な環境に曝される第1圧力リングには、マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440相当等の鋼材が使用され、熱や圧力の負荷の少ない第2圧力リングには、Crを9〜13質量%程度含有する鋼材が使用されている。
従来のピストンリングとして、例えば、下記特許文献1には、耐摩耗性、高温強度、耐熱へたり性の向上を目的として、C:0.5〜1.0質量%、Mn:1.0質量%以下、Ni:2質量%以下、Cr:11〜13質量%、Mo:0.4〜1.5質量%、V:1.5質量%以下含有する鋼材からなるピストンリングが提案されている。また、下記特許文献2には、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐熱性、耐疲労性の向上を目的として、C:0.55〜1.40質量%及びCr:12.0〜19.0質量%含有する鋼材からなるピストンリングの外表面に軟窒化層を有するピストンリングが提案されている。また、下記特許文献3には、耐摩耗性、耐スカッフィング性の向上を目的として、C:0.8〜1.1質量%、Cr:9〜11質量%、Mo:0.6〜1.5質量%、V:0.1〜0.5質量%含有する鋼材からなるピストンリングの外表面に窒化層を有するピストンリングが提案されている。
ピストンリングに対しては、上記の各特許文献で提案されるような特性向上が要求されている一方で、低コスト化の実現も重要な技術的課題である。例えば下記特許文献4には、ガソリンエンジンに用いられ、アルミニウム凝着を抑制できる低コストの第2圧力リングとして、C:0.59〜0.76質量%、Si:0.15〜0.35質量%及びMn:0.6質量%以下を含有する鋼材からなるピストンリングが提案され、さらにそのピストンリングに化成処理が施されたものが提案されている。
特開昭58−45357号公報 特開昭57−203848号公報 特開昭60−155647号公報 特開2000−34543号公報
本発明者は、熱負荷の高い内燃機関用ディーゼルエンジンに好ましく用いられる低コストで特性のよいピストンリングの開発を行っているが、上記の各特許文献に記載の従来のピストンリングでは、必ずしも満足する結果を得ることができなかった。
例えば、上記特許文献4に記載のピストンリングはガソリンエンジンに対しては使用可能であるが、熱負荷の大きいディーゼルエンジンでは、熱によるへたりが生じるという難点があり、さらに、化成処理を施したものは、ピストン材(Al系合金)に対して耐熱性が十分ではないという難点があった。そして、このピストンリングをそのままディーゼルエンジン用のピストンに装着して使用すると摩耗が発生したり、アルミニウム合金製のピストン材(リング溝材)がピストンリングの下面に張り付いて、いわゆるアルミ凝着が発生することがあった。
また、特許文献1〜3に記載のピストンリングはCrを多く含み、焼入焼戻し等の熱処理及び窒化等の表面処理を施すことにより、ディーゼルエンジンの高い燃焼圧力に対して対応している。これらのピストンリングは、主に外周摺動面に硬質表面処理層を形成して対応しているが、摺動面以外の上下面に窒化層を形成させなければピストン材であるアルミ系合金との摩耗や、アルミ凝着を防止できないという問題があった。特許文献3には、質量%で、Cr:9〜11%、C:0.8〜1.1%、Mn:0.6〜1.5%、V:0.1〜0.5%の組成に、外周摺動面に硬質表面処理の開示がある。但し、窒化層厚さ、変形防止、アルミ凝着防止について何ら開示はない。特許文献2には、高Cr材(Cr:12〜19質量%)において軟窒化層を形成させているが、組成と窒化の組み合わせである。又、窒化層の深さも広く開示があるが、耐摩耗を重視しており、変形防止や、アルミ凝着防止については何ら開示はない。軟窒化層を30μm以上形成すると、処理前後の寸法変化が大きく、最表面には白層と呼ばれる高硬度の化合物層が形成されるという問題がある。そのため、窒化後においては、特に白層を除去する研削加工あるいは薬品による除去が必須となり、コスト低減が困難であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、負荷の大きいディーゼルエンジンの第2圧力リングとして好ましく用いられる低コストで耐摩耗性に優れ、アルミ凝着を防止でき、かつ安価なピストンリングを提供することにある。
上記課題を解決するための本発明のピストンリングは、内燃機関用ディーゼルエンジンに用いられる第2圧力リングであって、質量%でCr:9.0%以上11.0%以下及びC:0.45%以上0.55%以下を含む鋼材からなり、上面、下面、外周面、内周面には、700Hv0.05以上の硬度を持つ窒化拡散層が2μm以上25μm以下の深さで形成されていることを特徴とする。
この発明によれば、Cr:9.0%以上11.0%以下及びC:0.45%以上0.55%以下を含む鋼材からなるピストンリングを用いることで窒化拡散層が形成され易くなる。さらに、ピストンリングの上面、下面、外周面、内周面には、700Hv0.05以上の硬度を持つ窒化拡散層が2μm以上25μm以下の薄い深さで形成されているので、ピストンリングの表面には、白層が形成されないか、僅かしか形成されない。そのため、硬く、脆く、かつ相手攻撃性が高い白層を取り除く必要がなく、窒化後の研削加工が不要となるので、大幅なコスト低減を図ることができる。また、本発明のピストンリングは、窒化拡散層を2μm以上25μm以下と薄くしたので、窒化の前後での寸法差が小さいピストンリングとなっている。
本発明のピストンリングにおいては、前記窒化拡散層が、5μm以上20μm以下の深さで形成されていることが好ましい。この発明によれば、ピストンリングの上面、下面、外周面、内周面に形成する700Hv0.05以上の硬度を持つ窒化拡散層がムラ無く均一に形成され、さらに白層の影響を極力抑えた信頼性の高いピストンリングを提供できる。
本発明のピストンリングによれば、負荷の大きい内燃機関用ディーゼルエンジンの第2圧力リングとして、低コストで摺動特性に優れ、アルミ凝着を防止でき、かつ安価なピストンリングを提供することができる。本発明は、特に上記組成を有する鋼材で構成されているので、上記範囲の窒化拡散層を、白層の生成を抑えた状態で、ムラ無く均一に形成することができる。その結果、窒化後の研削加工が不要となり、大幅なコスト低減を図ることができる。
以下、本発明のピストンリングについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明のピストンリングは、以下の説明及び図面に示す形態のみに限定されるものではない。また、本願中、成分を示すときの「%」は、質量%を意味する。
図1は、本発明のピストンリングの一例を示す模式図である。図1中、(a)は模式平面図であり、(b)は図1(a)のA−A矢視断面図である。本発明のピストンリング10は、ピストンの外面に形成されたリング溝に装着されてシリンダ内面に接触摺動し、図1(a)に示すように、1つの合い口部1を有する環状の部材であり、鋼材より製作されている。ピストンリング10は、外周面a、上面bと下面c(以下、単に「上下面b,c」ということがある。)、及び内周面dとからなる略矩形状の断面をなしている。本発明のピストンリング10は、第2圧力リングとしての機能を発揮するため、その外周面の形状はテーパー、テーパーアンダーカット、テーパーインナーカット等の形状であることが好ましい。そして、その外周面a、上下面b,c及び内周面dには、700Hv0.05以上の硬度を持つ窒化拡散層が2μm以上25μm以下の深さDで形成されている。
本発明のピストンリング10において、外周面aは、シリンダ内周面と対向し摺動する面であり、上面b及び下面cは、ピストンがシリンダ内で往復運動する際にピストン外周面に形成されたピストンリング溝の壁面に当たる面である。この上面bと下面cは、ピストンリング10がピストンに装着されてシリンダ内を摺動する際にピストンリング溝と当接するために、ピストンリング溝の材質であるアルミニウム系合金との相性が求められる。また、内周面dは、リング溝の底面に対向する面である。本発明のピストンリングは、ディーゼルエンジン用のピストンに第2圧力リングとして好ましく用いられるものであるので、前記窒化拡散層12は、少なくとも耐摩耗性及びアルミ凝着を考慮して上面b及び下面cに設けられている必要がある。なお、上面bと下面cのみに窒化拡散層12を形成する場合には、他の面をマスキングする必要があるので、製造上煩雑になり、コストアップを招く。したがって、本発明では、上下面b,cと共に、外周面aと内周面dにも窒化拡散層12が形成されていることが好ましい。
最初に、窒化拡散層について説明する。本発明のピストンリングには、2μm以上25μm以下の深さDの窒化拡散層12が形成されている。窒化拡散層12は、ピストンリング10の周面のうち、少なくとも上下面b,cに形成されている必要があるが、好ましくは外周面a及び内周面dを含めた全周面に形成されていることが好ましい。
窒化拡散層12の深さDを2μm以上25μm以下の薄い範囲とすることにより、窒化前後のリング寸法の変化及び粗さの変化を小さくすることができると共に、白層の生成が極力抑えられている。よって、窒化拡散層12を形成した後においては、白層除去のための加工を行う必要が無く、研削工程を省いて加工工数の削減ができる。その結果、得られたピストンリングは、低コスト化を実現でき、その効果は極めて大きいものとなる。
窒化拡散層12の深さDが2μm未満になると、窒化ムラが生じ易く、各面において均一な特性を維持することができないことがある。窒化拡散層12の深さDが25μmを超えると、許容できない程度にリング寸法が変化するので、寸法調整のための研削加工が必要になり、加工工数が増加するという問題がある。また、白層も顕著に発生するので、白層を除去するための研削加工を同時に行う必要があり、加工工数が増加するという問題がある。
より好ましい窒化拡散層12の深さDは、5μm以上20μm以下であり、特に好ましくは、5μm以上15μm以下である。窒化拡散層12の深さDが5μm以上の場合は、窒化条件の精度を上げなくても窒化ムラが生じないので、製造上の観点からより好ましく、窒化拡散層12の深さDが20μm以下の場合は、リング寸法の変化量がより小さくなるという観点から好ましい(15μm以下の場合も同様である)。
窒化拡散層12の深さDは、全周面において上記範囲であることがより好ましいが、本発明においては、上下面b,cでの特性を優先的に確保するために上下面b,cと外周面a、内周面dを均一とせずに上記の厚さの中で差を生じさせてもかまわない。なお、第2圧力リングは、通常、図1(b)に示すようなテーパー形状となっているので、シリンダ内面には、外周面aのうち符号eで示す外周摺動部eが接触して摺動する。製品出荷時においては、その外周摺動部eになじみ性を持たせるために、軽くポリッシング又はラッピングして出荷するので、その外周摺動部eにおける窒化拡散層12の深さは、通常、外周摺動部e以外の部分の深さよりも薄くなっている。
上記範囲内の深さDで形成された窒化拡散層12の硬さは700Hv0.05以上であり、こうした硬さからなる窒化拡散層12は、ピストンリング10の耐摩耗性や耐スカッフ性の観点から好ましい。なお、窒化拡散層12の硬さの上限は、下記の成分組成との関係から、通常1000〜1100Hv0.05程度となる。第2圧力リングとして用いられるピストンリングにおいては、700Hv0.05以上の窒化拡散層12が上下面b,cに設けられており、外周面aと内周面dを含めた全周面に設けられていることが、製造上の観点からもより好ましい。
窒化拡散層12は、ガス窒化、イオン窒化、塩浴窒化、浸硫窒化等の窒化処理法により形成することができる。これらの窒化法のうちいずれの方法も適用できるが、迅速な窒化処理が可能な塩浴軟窒化が望ましい。各方法を用いた場合での窒化拡散層12の深さDの制御は、処理温度と窒化時間により容易にコントロールすることができる。
次に、ピストンリングの組成について説明する。本発明のピストンリングは、質量%でCr:9.0%以上11.0%以下及びC:0.45%以上0.55%以下を含む鋼材(スチール材ともいう。)で形成される。
C(炭素)は、硬さ、強度を与えるために重要な元素であると共に、微細な硬質Cr炭化物を形成することにより耐摩耗性を向上させる元素である。本発明のようにディーゼルエンジン用の第2圧力リングとして好ましく使用する場合、C含有量は、0.45%以上0.55%以下であることが好ましい。C含有量を上記範囲内とすることにより、各種の機械的特性を満足できると共に、一次炭化物の過剰な生成を抑制することができる。C含有量が0.45%未満では、硬さや強度等の機械的特性を満足させることができないことがある。また、C含有量が0.55%を超えると、板状の一次炭化物の析出が現れて相手材であるシリンダ内周面に対する攻撃性が強まり、摩耗を増大させることがある。
Cr(クロム)は、基地に固溶して耐熱性や耐食性を向上させ、一部は炭化物を形成して耐焼付性、耐摩耗性を向上させる元素である。本発明のようにディーゼルエンジン用の第2圧力リングとして好ましく使用する場合、Cr含有量は、9.0%以上11.0%以下の範囲内とすることが好ましい。Cr含有量を上記範囲内とすることにより、熱によるへたりを防ぐことができると共に、窒化処理後の窒化拡散層を均一な深さで上記範囲内にコントロールすることが容易となる。Cr含有量が9.0%未満では、炭素量とのバランスから、窒化処理後のCr窒化物が十分に形成されず、窒化拡散層の深さにムラが生じ易いという難点がある。また、Cr含有量が11.0%を超える場合には、Cr窒化物の形成が過剰となり、窒化拡散層の深さを上記範囲内にコントロールすることが難しく、また、白層(硬い化合物層)も生成し易いという難点がある。
本発明のピストンリングは、CrとCを上記範囲内で少なくとも含み、残部が鉄及び不可避不純物を有する鋼材であれば、他の元素を任意の目的に応じて含んでいてもよい。そうした元素としては、例えば下記のSiやMnを挙げることができるが、それ以外のMo、Ni、V等の元素を添加して耐摩耗性、耐食性、耐熱性等をさらに向上させることもできる。
Si(珪素)は、脱酸剤として添加されるものであり、Crと同様に熱によるへたりを防ぐのに有効な元素であり、好ましい含有量は、0.1%以上0.3%以下である。Si含有量が0.1%未満では、前記効果を奏することができず、Si含有量が0.3%を超えると、リング成形時の冷間加工性を害すると共に靱性が低下し易い。
Mn(マンガン)は、Siと同様に脱酸剤として添加され、また、強度を増すのに有効な元素であり、好ましい含有量は、0.2%以上0.4%以下である。る。Mn含有量が0.2%未満でも脱酸剤としては効果があるが、強度向上を図るために下限を0.2%とすることが好ましく、また、Mn含有量が0.4%を超えると、熱間加工性やリング成形時の冷間加工性を害することがあり、上限を0.4%とすることが好ましい。
本発明のピストンリングは、少なくともCとCrを上記範囲内の含有量としたので、ディーゼルエンジン用の第2圧力リングとして必要とされる強度を有すると共に、窒化処理時に窒化拡散層がムラ無く生成でき且つ急激な生成を防ぐことができ、さらに、窒化拡散層12の硬さを700Hv0.05以上とすることができる。窒化拡散層12の硬さが700Hv0.05未満では、耐摩耗性が低下して摩耗量の増大を生じることがある。なお、窒化拡散層12の硬さ調整は、鋼材の含有成分にも依存するが、窒化処理法の条件コントロ−ルによってもある程度調整可能である。例えば塩浴窒化法では、塩浴の組成、処理温度及び処理時間等をコントロールして、窒化拡散層12の硬さ調整を行うことができる。また、ガス窒化法の場合には、ガス雰囲気の成分、処理時間、処理温度等のコントロ−ルによっても窒化拡散層12の硬さ調整を行なうことができる。
本発明のように窒化拡散層12の深さDを上記範囲内とすれば、窒化処理後のリング寸法の変化が小さく、窒化処理後のラッピング加工等の研削加工を省略できるので、鋼材の組成範囲はCr,C以外の組成のSi,Mn等は、上記範囲内であることが望ましい。上記の組成とすることで窒化拡散層12を均一且つ安定して形成でき、また、窒化拡散層12の硬さも700Hv0.05以上という安定した硬さを保持できるという利点がある。
次に、本発明のピストンリング10の製造例について説明する。先ず、前記の成分を含む鋼線材を用意し、その鋼線材をリング状に巻き取り、切断し、さらに切削加工及び研削加工を施して、例えば図1に示す形態のピストンリング形状に形成する。得られたピストンリング素材に、窒化処理を行って窒化拡散層12を形成する。この窒化処理は、例えば塩浴窒化法、ガス窒化法等により行うことができる。
窒化処理の条件は、適用する窒化処理方法に応じて異なるが、窒化拡散層12の深さDが上記範囲内となる条件(処理時間や温度等)が任意に設定される。本発明では、窒化拡散層12の深さDを上記範囲内としたので、窒化処理後のリング寸法が大きく変化せず且つ白層(窒化拡散層の表面に形成されるN濃度が高く脆く硬い化合物層)の生成も僅かとなり、その結果、リング寸法を調整したり白層を除去するための、ラッピング加工等の研削加工が不要であるという製造上の顕著な効果がある。
なお、窒化拡散層12の硬さは、鋼材の成分組成に依存するので、上記の成分組成の鋼材を用いることによって、窒化拡散層12に700Hv0.05以上の硬さを付与することができる。以上のようにして、例えば図1に示した形態のピストンリング10が得られる。なお、外周摺動面には、窒化拡散層12の上にPVD膜又は複合めっき膜を施して、耐摩耗性をさらに向上させてもよい。
以上、本発明のピストンリングによれば、負荷の大きい内燃機関用ディーゼルエンジンの第2圧力リングとして、低コストで特性のよいピストンリングを提供することができる。特に上記組成を有する鋼材で構成されているので、上記範囲の窒化拡散層を、白層の生成を抑えた状態で、ムラ無く均一に形成することができる。その結果、窒化後の研削加工が不要となり、大幅なコスト低減を図ることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
ピストンリングを形成するための鋼製線材として、質量%で、Cr:10.05%、C:0.51%、Si:0.20%、Mn:0.31%、P:0.02%、S:0.02%の組成からなる材料(以下、A材という)を用い、図1に示す第2圧力リング形態のピストンリング形状となるように巻き取り加工、切削加工及び研削加工を行った。次いで、ピストンリング形状に加工されたピストンリング素材11を塩浴軟窒化(タフトライド処理)して窒化拡散層12を形成した。このときの軟窒化処理は、一般的に用いられる公知の塩浴を用い、580℃×5分間保持して窒化拡散層12を形成する条件で行った。こうした窒化処理を5つのサンプルについて行い、各サンプルの窒化拡散層12の深さDが2〜10μmの間に入る実施例1のピストンリング10を窒化処理後、上下面の白層を除去せずに作製した。
こうして作製されたピストンリング10の、窒化拡散層12の硬さは、各サンプルとも、900Hv0.05〜1100Hv0.05の範囲内であった。なお、ビッカース硬さは、微小ビッカース硬度計を用い、図1(b)に示すような断面を形成し、その断面に現れる窒化拡散層12に加重0.05kg(50g)のダイヤモンド圧子を押し当てて測定した。
(実施例2)
実施例1において、580℃×10分間保持して窒化拡散層12を形成した他は、実施例1と同様にして作製し、実施例2のピストンリングを得た。このピストンリングにおいても、窒化処理を5つのサンプルについて行った。各サンプルの窒化拡散層12の深さDは13〜16μmの間に入っており、また、窒化拡散層12の硬さは、各サンプルとも900Hv0.05〜1100Hv0.05の範囲内であった。得られたサンプルを切断し、ピストンリング下面側の窒化層の確認を行った。図2(A)は、窒化拡散層の断面形態を示す顕微鏡写真(400倍)である。
(実施例3)
実施例1において、580℃×15分間保持して窒化拡散層12を形成した他は、実施例1と同様にして作製し、実施例3のピストンリングを得た。このピストンリングにおいても、窒化処理を5つのサンプルについて行った。各サンプルの窒化拡散層12の深さDは18〜25μmの間に入っており、また、窒化拡散層12の硬さは、各サンプルとも900Hv0.05〜1100Hv0.05の範囲内であった。なお、窒化拡散層の表面には白層が僅かに見られたが、全く問題のない範囲であった。
(比較例1)
実施例1と同様なピストンリング素材を用いて、580℃×60分間保持して窒化拡散層12を形成した。実施例1と同様に、窒化処理後、上下面の白層を除去せずに作製し、比較例1のピストンリングを得た。このピストンリングにおいても、窒化処理を5つのサンプルについて行った。得られたサンプルを切断し、ピストンリング下面側の窒化層の確認を行った。窒化拡散層12の深さDは40〜50μmとかなり深く、図2(B)の顕微鏡写真(400倍)に示すように表面に厚い白層(4〜7μm)が見られた。なお、窒化拡散層12の硬さは、各サンプルとも950Hv0.05〜1100Hv0.05の範囲内であった。
(比較例2)
比較例1と同様な処理を施した後に白層を薬品により除去し、さらに上下面のみ研磨加工を行い、白層の除去を行った。
(寸法精度)
寸法精度については、薄窒化処理を施した実施例1、実施例2、実施例3の外周面の精度(合い口を閉じ、合い口と180度方向を縦とし、90度直角方向の外形の縦横に対応する比U)が処理前に対して、比較例1の値を100(比率)とした際に、実施例1は30、実施例2は50、実施例3は60であった。また、窒化処理による化合物層白層厚さは、実施例1は0.2〜0.5μm、実施例2は0.6〜1.3μm、実施例3は1.6〜2.3μmであった。これらの厚さでは、白層を除去する必要は無い。比較例1では、4〜7μm白層が形成されており、白層除去が必要である。
(外観比較)
実施例1で得られたピストンリングと比較例2で得られたピストンリングの外観を比較した。実施例1で得られたピストンリングは、窒化拡散層を形成した後に研削加工を行わないので、図3の上段の顕微鏡写真(10倍)に示すように、明確な研削痕は認められず、窒化処理前の母材加工時に形成された研削痕がうっすらと現れる外観を呈していた。一方、比較例2で得られたピストンリングは、窒化拡散層を形成した後に研削加工を行うので、図3の下段の顕微鏡写真(10倍)に示すように、明確な研削痕が認められる外観を呈していた。こうした比較により、本発明のピストンリングと、従来の研削加工されたピストンリングとを、外観においても明確に判別することができる。
本発明のピストンリングの一例を示す模式図であり、(a)は模式平面図であり、(b)は図1(a)の模式A−A断面図である。 実施例2及び比較例1で得られた窒化拡散層の断面形態の顕微鏡写真である。 実施例1で得られたピストンリングと比較例2で得られたピストンリングの外観比較の顕微鏡写真結果である。
符号の説明
10 ピストンリング
1 合い口部
11 鋼材
12 窒化拡散層
D 窒化拡散層の深さ
a 外周面
b 上面
c 下面
d 内周面
e 外周摺動部

Claims (2)

  1. 内燃機関用ディーゼルエンジンに用いられる第2圧力リングであって、質量%でCr:9.0%以上11.0%以下及びC:0.45%以上0.55%以下を含む鋼材からなり、上面、下面、外周面、内周面には、700Hv0.05以上の硬度を持つ窒化拡散層が2μm以上25μm以下の深さで形成されていることを特徴とするピストンリング。
  2. 前記窒化拡散層が、5μm以上20μm以下の深さで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピストンリング。
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