JP2007309725A - 機能性物質の物質固定化剤、及び、該物質固定化剤を用いた機能性物質の固定化方法、並びに、該方法により機能性物質が固定化された基体 - Google Patents

機能性物質の物質固定化剤、及び、該物質固定化剤を用いた機能性物質の固定化方法、並びに、該方法により機能性物質が固定化された基体 Download PDF

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Abstract


【課題】 光架橋剤が適用された機能性物質の物質固定化剤であって、自家蛍光を発することがなく、マトリックスであるポリマーとのなじみが良好なものを提供する。
【解決手段】 本発明は、反応基を有する光架橋剤と、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーと、を含む物質固定化剤において、前記光架橋剤は、化1で示される化合物であることを特徴とする物質固定化剤である。本発明を用いた機能性物質の固定化法としては、(a)基板上に、化1で示される光架橋剤とポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーとを含んでなる物質固定化剤、及び、前記機能性物質を塗布する工程と、(b)基板に光照射する工程、とを含む。
【化1】
Figure 2007309725

【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリペプチド、核酸、脂質等の生体性の機能性物質を基板上に固定化するための物質固定化剤、及び、それを用いた機能性物質の基板への固定化方法、並びに、機能性物質が固定化された基体に関する。
免疫検査のためのイムノアッセイ法で使用されるイムノプレートや遺伝子発現検査等のためのDNAチップは、所定の基板に抗体、抗原、タンパク質、核酸等の生体性の機能性物質を固定化した基体を主要な構成材料とする。これら機能性物質の基板への固定化法としては、共有結合により機能性物質と基板とを結合させて固定化を図る方法が一般的となってきている。共有結合による固定化法は、機能性物質と基板との結合が強固であり、物理吸着法よりも安定的な固定化が可能だからである。そして、共有結合による固定化法では、基板と機能性物質とを結合させるために物質固定化剤と称される化合物を使用するのが一般的であり、種々の固定化剤が開発されている。例えば、特許文献1では、ジスルホン化合物をスペーサー(物質固定化剤)として基板に塗布し、基板上に形成される反応性基と機能性物質中の官能基とを共有結合させる技術が記載されている。
特開2001−337089号公報
ところで、従来の物質固定化剤は、固定化する機能性物質の特定の官能基に共有結合することができる基を含む化合物が多い。そのため結合目的となる機能性物質によって、固定化剤の選択を行なわなければならないという不都合がある。また、従来の固定化剤は、機能性物質中の特定の官能基に反応するようになっているため、その官能基が機能性物質の活性部位の中又は近傍にある場合、固定化により機能性物質の活性が低下又は消失するおそれがある点に問題がある。
そこで、これら問題を解決しつつ、機能性物質を共有結合させることができる物質固定化剤として、特許文献2に開示されるような、光反応基を含む光架橋剤を含むものが最近になって報告されている。
国際公開第2005/111618号パンフレット
この物質固定化剤は、次式で示される化合物である2つのアジド基を有する光架橋剤と、水溶性のポリマーとを含むものである。この物質固定化剤では、光を照射することにより、光架橋剤中の光反応性基であるアジド基の窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカルが生じる。窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することができ、ほとんどの有機物と結合することができるため、広範な機能性物質を固定化することができる。また、この物質固定化剤により生じる窒素ラジカルを介した結合は、機能性物質の特定の部位のみに対して生じるものではなく、機能性物質の分子ごとにランダムな部位で生じるため、機能性物質の活性は部分的には喪失するが、全体としてみれば維持されている。
Figure 2007309725
式中、Rは単結合又は任意の基を示す。
しかしながら、上記の光架橋剤は、自家蛍光を示す傾向があるという問題がある。自家蛍光を有する物質固定化剤が適用されたDNAチップ等は、蛍光検出による測定・観察の際、サンプルの蛍光強度の測定を妨げるノイズやバックグラウンドを増大せしめ測定誤差を生じさせる等、実用上の問題がある。
また、この物質固定化剤は、ノニオン性の水溶性ポリマー、好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートをマトリックス相とし、これに上記化3で示される光架橋剤を分散させたものである。しかし、従来の光架橋剤は、水溶性ポリマーとのなじみが悪いという問題もある。そして、これらの問題から従来の物質固定化剤は、基体としたときの安定性に欠き、また、機能性物質の固定効率(架橋率)に関しても必ずしも満足が得られるものではなかった。
そこで、本発明は、光架橋剤を適用し機能性物質を共有結合により基板へ固定化するための固定化剤であって、自家蛍光を発することがなく、かつ、マトリックスであるポリマーとのなじみが良好であり、機能性物質の固定効率(架橋率)に優れるものを提供する。また、本発明は、この固定化剤を利用した基板への機能性物質の固定化法、及び、機能性物質が固定化された基体を提供する。
本発明者等は、鋭意検討を行い、上記課題を解決することのできる新たな光架橋剤を見出し本発明に想到した。即ち、本発明は、光反応基を有する光架橋剤と、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーと、を含む物質固定化剤において、前記光架橋剤は、化1で示される化合物であることを特徴とする物質固定化剤である。
Figure 2007309725
本発明で適用する光架橋剤は、自家蛍光を示すことがなく、機能性物質を固定化後のDNAチップ等に測定誤差を生じさせる要因となることがない。また、本発明で適用する光架橋剤は脂肪族化合物であり、マトリックスとなるポリエチレングリコール(メタ)アクリレートに類似する構造を有する。この点、上記従来技術の光架橋剤は芳香族化合物であるが、かかる構造の類似性により本発明に係る物質固定化剤は、光架橋剤とマトリックスポリマーとのなじみが良好である。
そして、本発明に係る固定化剤は、上記した従来の光架橋剤と同様の作用により機能性物質を固定化する。即ち、光架橋剤中の光反応性基であるアジド基に起因する窒素ラジカルにより、アミノ基、カルボキシル基等の官能基の他、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することができ、広範な機能性物質を固定化することができる。また、この窒素ラジカルによる結合は、機能性物質の分子ごとにランダムな部位で生じるため、機能性物質の全体としての活性を維持することができる。本発明者によれば、本発明で適用される光架橋剤は、かかるアジド基による架橋率が従来よりも改善されたものとなっている。
ここで、本発明で適用される架橋剤において、式中のnの範囲は、1以上であればよい。好ましくは、1〜100であり、より好ましくは1〜50のものである。nの値が大きく分子量が大きくなりすぎると光架橋の効率が悪くなるからである。
光架橋剤となる化合物の製法としては、例えば、以下の工程で製造できる。THF溶媒中のテトラエチレングリコールにメタンスルフォニルクロライド及びトリエチルアミンを反応させて水溶性の析出物を得る。そして、反応系に水を加えて析出物を水に溶解させて溶液を2相分離してpHを調整し、アジ化ナトリウム(NaN)を反応させる。その後、THF相を留去し、ジエチルエーテルにて溶媒抽出を行なうことで本発明の光架橋剤の一例である、1,11−ジアジド−3,6,9−トリオキザウンデカンを得ることができる(この製造方法の詳細については、非特許文献1に詳述されている。)。また、光架橋剤となる化合物は、各種が市販されている。
Alan W.Schwabacherら, J.Org.Chem. 1998年,63巻,1727〜1729ページ
本発明に係る固定化剤は、上述の光架橋剤と、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーとを含むものである。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「メタクリレート」又は「アクリレート」を意味するものである。この水溶性ポリマーは、光架橋剤に対してマトリックス相となり、また、機能性物質の非固定化領域における非特異的吸着を抑制するためにブロッキングする作用を有する。本発明では、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの分子量(平均分子量、以上及び以下において同じ)は、100〜5000のものが好ましく、より好ましくは100〜1000のものである。
水溶性ポリマーに含まれるポリエチレングリコール(メタ)アクリレートは、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートを、AIBN等の適宜の開始剤を用いて重合させることで製造でき、また、市販品もある。
水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのみが重合したポリマーでも良いが、他の重合性モノマーとの共重合体であってもよい。共重合体を形成可能な他の重合性モノマーとしては、ビニル系モノマーが好ましい。共重合体を用いる場合において、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートと他の重合性モノマーとの比率は、特に限定されないが、モル比(ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート:他の重合性モノマー)を1:0.5以下とするのが好ましく、1:0.3以下がより好ましく、1:0.1以下が更に好ましい。
尚、本発明に用いられる水溶性ポリマーの水に対する溶解度(水100gに溶解するグラム数)は、好ましくは1以上、特に5以上である。また、水溶性ポリマーの分子量は、特に制限はないが、ポリマーの20%溶液の25℃での溶液粘度として、40〜70cPになるようなものが好ましい。水溶性ポリマーの分子量が大きくなり過ぎると、水溶性に限界が生じてくる一方、分子量が小さいと効率よく固定化が行えなくなるからである。
本発明に係る物質固定化剤は、上記光架橋剤と上記水溶性ポリマーとを含むものであるが、架橋剤の水溶性ポリマーに対する混合量には特に制限はない。但し、水溶性ポリマーに対して0.1〜50重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%である。
尚、本発明に係る物質固定化剤は、その使用に際し、水、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝溶液等、適宜の溶媒を含んでいても良い。基板への塗布を容易にするためである。このとき水溶性ポリマーの濃度は、特に限定されるものではないが、溶液(懸濁液)全体に対し0.005重量%〜20重量%とするのが好ましく、0.04重量%〜10重量%とするのがより好ましい。この場合の光架橋剤の濃度は上記のように、水溶性ポリマーに対して0.1〜50重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%である。
また、本発明に係る物質固定化剤は、ポリオキシモノラウレート(Tween20(登録商標))等の界面活性剤を含んでもよい。特に、緩衝溶液及び界面活性剤の両方を含むことにより、相乗効果として、バックグラウンド値を小さくする効果が得られ、これは特に血清などを使用して検出する際に有用である。この界面活性剤の添加量としては、溶液(懸濁液)全体に対し0.1〜20%が好ましい範囲である。更に、有機溶媒を含んでいてもよい。この有機溶媒としては、水と任意の割合で混じり合う低級アルコール(好ましくはエタノール)などを用いることができる。
次に、本発明に係る物質固定化剤を用いた、機能性物質の固定化方法について説明する。本発明に係る機能性物質の固定化方法は、基本的なものとして下記工程を含むものである。
(a) 基板上に、化1で示される光架橋剤とポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーとを含んでなる物質固定化剤、及び、前記機能性物質を塗布する工程。
Figure 2007309725
(b)基板に光照射する工程
本発明に係る方法において、物質固定化剤及び機能性物質を基板へ塗布する際には、両者を同時に塗布しても良く、別々に塗布しても良い。即ち、物質固定化剤と機能性物質とを混合して同時に塗布しても良いが、まず、物質固定化剤を基板に塗布し、その後に機能性物質を塗布しても良い。いずれにおいても、機能性物質を固定化するための光照射(上記(b)工程)の際に、基板上に物質固定化剤を介して機能性物質が存在するように両者を塗布すれれば良い。
物質固定化剤、又は機能性物質、若しくはそれら混合物の塗布は、溶液又は懸濁液の形態で塗布するのが好ましい。このとき溶媒は、水、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝溶液、これらの混合液が好ましい。そして、物質固定化剤の溶液において、各成分の好ましい濃度は、水溶性ポリマーは、溶液(懸濁液)全体に対し0.005重量%〜20重量%とするのが好ましく、0.04重量%〜10重量%とするのがより好ましい。また、光架橋剤の濃度は、水溶性ポリマーに対して0.1〜50重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%とする。一方、固定化する機能性物質の濃度は、光架橋剤と水溶性ポリマーとの合計重量に対し、等倍〜100倍程度、好ましくは2〜20倍となるようにするのが好ましい。物質固定化剤と機能性物質との混合溶液を塗布する場合には、物質固定化剤の重量(光架橋剤と水溶性ポリマーとの合計重量)に対して、前記重量割合の機能性物質を溶解・分散させるのが好ましい。また、両者を別々の溶液で塗布する場合には、先に塗布する物質固定化剤の重量(光架橋剤と水溶性ポリマーとの合計重量)を参照して、前記重量割合の機能性物質を適宜の容量の溶媒に溶解・分散させ、これを塗布するのが好ましい。尚、これらの溶液は、ポリオキシモノラウレート(Tween20(登録商標))等の界面活性剤を含んでも良い。
上述のように、本発明に係る方法においては、物質固定化剤を基板へ塗布し、その後に機能性物質を塗布しても良い。この場合において、両者の塗布領域は、機能性物質の塗布領域が物質固定化剤の塗布領域に重畳していれば良く、必ずしも完全同一である必要はない。例えば、物質固定化剤を基板の全面に塗布した後に、機能性物質を局所的に塗布しても良い。このようにすることで、光照射による光架橋剤の作用により、物質固定化剤(の水溶性ポリマー)が基板全面に固定され、基板全面に対して非特異的吸着の抑制するためのブロッキングの効果が期待できる。
また、物質固定化剤の塗布と、機能性物質の塗布とを別々に行なう場合においては、物質固定化剤を基板に塗布し、機能性物質を塗布する前に光照射を行い、その後機能性物質を塗布し光照射を行なっても良い。この方法は、2段の露光工程を含むものであるが、かかる2段露光を行なうことで、固定化された機能性物質の安定性が向上し、検出感度を上昇させることができる。これは、予め、物質固定化剤を塗布し露光して基板表面に窒素ラジカルを生じさせておくことで、その後に塗布される機能性物質の固定化の割合が高くなるためである。
また、この2段露光工程を含む方法でも、機能性物質の塗布領域と物質固定化剤の塗布領域は任意に設定することができ、物質固定化剤を基板の全面に塗布した後に、機能性物質を局所的に塗布しても良い。この場合には、1回目の光照射の際に物質固定化剤が基板全面に固定されていることから、基板全面に対して非特異的吸着の抑制効果が期待できる。
尚、物質固定化剤の塗布後に、機能性物質を塗布する場合には機能性物質のみを含む溶液を塗布しても良いし、機能性物質に光架橋剤、又は、光架橋剤及び水溶性ポリマーを含む溶液を塗布しても良い。特に、2段露光を行なう場合には、機能性物質の塗布の際、既に窒素ラジカルが生じおり、機能性物質溶液に光架橋剤を混合することで、基板への機能性物質の結合をより強固とすることができる。このように機能性物質溶液に光架橋剤を混合する場合、その量は、塗布する機能性物質の0.1〜30質量%とするのが好ましく、1〜20質量%とするのがより好ましい。
物質固定化剤溶液、機能性物質溶液、及び、両者の混合溶液の塗布方法は、特に限定されるものではない。例えば、溶液を基板へ噴霧する方法、スピンコート法等の他、溶液をマイクロスポッティングする方法が適用できる。マイクロスポッティングは、液を基板上の極小領域に塗布する手法として有用であり、DNAチップ等の作製に常用され、そのための装置も市販されている。
物質固定化剤及び機能性物質を塗布した後には、その後の取扱いを考慮し、乾燥を行なうことが好ましい。そして、物質固定化剤及び機能性物質の乾燥後、基板へ光を照射する。照射する光は、物質固定化剤の光反応性基がラジカルを生じさせることができる光であり、紫外線が好ましい。照射する光の線量は、特に限定されないが、1cm当たり1〜100mWとするのが好ましい。
光照射は、基板全面又は部分的に行なうことができる。部分的に行なう場合、光が照射されなかった部分では、光反応性基が基板及び固定化すべき物質に結合しないので、洗浄すれば光架橋剤も固定化すべき物質も除去される。そこで、フォトマスク等を介した選択露光を行っても良い。これにより機能性物質を任意のパターンで固定化することができ、マイクロアレイ等の種々の形状に機能性物質を固定化することができる。
尚、本発明において、機能性物質を固定化する基板としては、少なくともその表面が、上記過程で光反応性基と結合することができる物質、特に、有機物からなるものが好ましい。このような基板としては、マイクロプレート等で広く用いられているポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の有機物からなるものを例示することができる。また、ガラス板にシランカップリング剤をコーティングしたもの等も用いることができる。更には、金表面をアルキルチオールなどで有機処理されたものも好ましい。但し、上記した物質固定化剤の塗布と、機能性物質の塗布とを別々に行なう場合(2段露光を含む)においては、基板表面は必ずしも有機物又は有機処理されている必要はなく、ガラス、金属等を用いても良い。
また、基板の形態は何ら限定されるものではなく、マイクロアレイ用基板のような板状のものや、ビーズ状、繊維状のもの等を用いることができる。さらに、板に設けられた穴や溝、例えば、マイクロプレートのウェル等も用いることができる。
本発明の適用が可能な機能性物質は、特に限定されないが、ポリペプチド(糖タンパク質及びリポタンパク質を包含する)、核酸、脂質並びに細胞(動物細胞、植物細胞、微生物細胞等)及びその構成要素(核、ミトコンドリア等の細胞内小器官、細胞膜や単位膜等の膜等を包含する)を例示することができる。上述の通り、本発明の物質固定化剤は、光反応性基であるアジド基に起因する窒素ラジカルを介して機能性物質を基板へ結合させるものであり、この窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能である。従って、本発明の物質固定化剤による物質固定化法では、ほとんどの有機物の固定化が可能である。
以上説明したように、本発明によれば、ポリペプチド、核酸、脂質等の生体性の機能性物質を、共有結合により機能性物質の有する諸活性を損なうことなく固定化させることができる。この場合において、本発明に係る物質固定化剤は、自家蛍光を示すことなく、その後の使用においてノイズ等の障害を生じさせることはない。また、本発明は、固定化可能な機能性物質の限定もなく、有機物からなる機能性物質に対して適用可能である。
以下、本発明の実施形態として好適な実施例を説明する。
[光架橋剤の用意]:光架橋剤としては、市販(Exact Solution製、商品名BAG−3)の次式の有機化合物を用いた。
Figure 2007309725
[水溶性ポリマーの用意]:水溶性ポリマーの合成は、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(ポリエチレングリコール部分子量352)26gを酢酸エチル200mlに溶解し、AIBN61mgを開始剤として、還流下で6時間反応させた。反応液をジエチルエーテルに入れ重合物を取り出すと共に、ジエチルエーテルで洗浄した。得られたポリマーを20重量%になるように純水に溶解し、25℃で溶液粘度を測定した結果、50cPであった。
以上で用意した光架橋剤及び水溶性ポリマーを用いて、下記の通り機能性材料としてBSA(ウシ血清アルブミン)を固定化した。
実施例1:水溶性ポリマーを、5重量%の濃度になるように純水に溶解した。そして、得られた水溶性ポリマー水溶液に、光架橋剤を水溶性ポリマーに対して5重量%混合し、物質固定化剤溶液を得た。そして、この物質固定化剤溶液を、ポリスチレン基板の全面にスピンコーティングした。
基板を乾燥後、紫外線照射を行った。このときの条件は、照度1.7mW/cm、7分間とした。一方、0.125重量%のBSA水溶液に、上記と同じ光架橋剤をBSA重量に対して10重量%混合した機能性物質溶液を製造した。そして、この機能性物質溶液を、基板のポリマー層上に20nlずつスポットした。乾燥後、上記と同様に紫外線照射し、更に、0.1%のTween20を含むPBSで洗浄してBSAを基板に固定化した。
比較例:ここでは、従来技術で記載した架橋剤に属する有機物を用い、BSAの固定化の可否を検討した。実施例1において、光架橋剤として4,4‘−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸ナトリウムを水溶性ポリマー溶液に混合した。このときの混合量は、実施例1と同じである(ポリマーに対して5重量%)。そして、実施例1と同じ工程、条件でBSAを固定した。
免疫測定:実施例1及び比較例について、抗BSA抗体を用いた反応試験を行った。この試験は、10ng/ml濃度の抗BSA抗体(市販品)を試薬とし、BSAを固定化した基板と室温で20分間反応させた。そして、0.1%のTween20を含むPBSで洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体(市販品)と室温で20分間反応させ、洗浄した。その後、化学発光試薬を添加し発光強度を測定した。測定した発光強度を下記表1に示す。
Figure 2007309725
表1からわかるように、実施例1の発光強度は、比較例のそれよりも倍以上を示している。このことから、同じアジド基を含む光架橋剤であっても、機能性物質固定化の効率(架橋率)は、光架橋剤の構成によって大きく相違することが確認された。そして、物質固定化剤の光架橋剤としては、単に光反応性基を有するのみでは足りず、適切な化合物の選択が重要であることが確認された。
次に、実施例1及び比較例の物質固定化剤に関し、自家蛍光の有無を検討した。この検討は、上記水溶性ポリマーに光架橋剤をポリマーに対して5重量%添加したものをガラス基板にコーティングして、マイクロアレイ用スキャナにより自家蛍光を測定した。その結果、実施例1の物質固定化剤では自家蛍光は見られなかった。一方、比較例1の物質固定化剤では自家蛍光があることが確認された。従って、比較例1の物質固定化剤は蛍光検出に使用することは不可能であり、ここからも光架橋剤の適切な選択が必要であることが確認された。
次に、物質固定化剤中の、水溶性ポリマーに対する光架橋剤の割合を変えた場合の影響を検討した。
実施例2: 実施例1と同様の水溶性ポリマー水溶液に、光架橋剤を水溶性ポリマーに対して10重量%混合し、物質固定化剤溶液を得た。そして、これを基板に塗布し、実施例1と同様の工程でBSAを固定化した。BSA水溶液を塗布する光架橋剤の割合は、実施例1と同様BSA重量に対して10重量%である。
実施例3:実施例1と同様の水溶性ポリマー水溶液に、光架橋剤を水溶性ポリマーに対して20重量%混合し、物質固定化剤溶液とした。そして、実施例2と同様にしてBSAを固定化した。
これらの実施例について、上記と同様に免疫測定を行い、発光強度を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2007309725
表2からわかるように、物質固定化剤における光架橋剤の割合を変更しても、機能性物質(BSA)の固定化率に大きな差異はなく、いずれも良好な結果を示すことが確認できた。
本実施形態では基板に物質固定化剤を塗布し、(光照射した後)機能性物質(BSA)の溶液を塗布、固定化している。そして、固定化するBSAの水溶液に光架橋剤を混合している。以下では、BSA水溶液中の光架橋剤の割合を変更してその影響を検討した。
実施例4:実施例1と同様の物質固定化剤溶液を基板に塗布及び光照射後、光架橋剤をBSA重量に対して5重量%混合した機能性物質溶液を製造し、基板に塗布してBSAを固定化した。このときの条件は実施例1と同様とした。
実施例5:実施例4において、機能性物質溶液の光架橋剤の濃度をBSA重量に対して20重量%としたものを用いてBSAを固定化した。その他の条件は、実施例4(実施例1)と同様とした。
これらの実施例について、同様に免疫測定を行い、発光強度を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2007309725
表3からわかるように、機能性物質溶液中の光架橋剤の割合を変更しても、機能性物質(BSA)の固定化率に大きな差異はなく、いずれも良好な結果を示すことが確認できた。
実施例6:上記実施例1において、製造した物質固定化剤溶液に0.1重量%のTween20を添加した。その他の工程については、実施例1と同様にしてBSAを基板に固定化した。
実施例7:上記実施例1において、物質固定化剤溶液を製造する際、水溶性ポリマーの溶媒として水に替えてPBSを使用した。その他の工程については、実施例1と同様にしてBSAを基板に固定化した。
実施例8:上記実施例7において、製造した物質固定化剤溶液に10重量%のTween20を添加した。その他の工程については、実施例1と同様にしてBSAを基板に固定化した。
以上の実施例1、実施例6〜8について、100倍希釈の血清を試料として免疫測定を行い(試験条件は上記と同様)、その際のバックグラウンド値を対比した。その結果を表4に示す。
Figure 2007309725
表4から、溶媒として純水を用いた場合には、界面活性剤添加にはバックグラウンド低減の効果はないことがわかる。一方、緩衝溶液を溶媒とする場合、界面活性剤を添加することでバックグラウンド値を低減させることができ、且つ、純水を溶媒としたときよりも低い値を示した。即ち、緩衝溶液と界面活性剤との相乗作用によるバックグラウンド値の低減効果が確認された。
本発明に係る物質工程化剤及びそれを用いた物質固定化方法は、抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原を固定化した免疫測定用プレートの作製、DNAやRNAを基板上に固定化した核酸チップ、マイクロアレイ等の作製に好適である。また、これらに限定されるものではなく、例えば、細胞全体やその構成要素の固定化等にも適用することができる。

Claims (10)

  1. 光反応基を有する光架橋剤と、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーと、を含む物質固定化剤において、
    前記光架橋剤は、化1で示される化合物であることを特徴とする物質固定化剤。
    Figure 2007309725
  2. 緩衝溶液及び/又は界面活性剤を含む請求項1に記載の物質固定化剤。
  3. 基板に機能性物質を固定化するための方法であって、下記工程を含む方法。
    (a) 基板上に、化1で示される光架橋剤とポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーとを含んでなる物質固定化剤、及び、前記機能性物質を塗布する工程。
    Figure 2007309725
    (b)基板に光照射する工程。
  4. (a)工程の物質固定化剤及び機能性物質の塗布は、前記物質固定化剤と前記機能性物質とを含む溶液又は懸濁液を塗布するものである請求項3記載の方法。
  5. (a)工程の物質固定化剤及び機能性物質の塗布は、前記物質固定化剤を含む溶液又は懸濁液を塗布した後に、前記機能性物質の溶液又は懸濁液を塗布するものである請求項3記載の方法。
  6. (a)工程の物質固定化剤及び機能性物質の塗布は、物質固定化剤を含む溶液又は懸濁液を塗布した後、基板に光照射し、その後、機能性物質の溶液又は懸濁液を塗布する工程である請求項5記載の方法。
  7. 機能性物質の溶液又は懸濁液は、化1で示される光架橋剤、又は、前記光架橋剤及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む水溶性ポリマーを含む請求項5又は請求項6記載の方法。
  8. 請求項3〜請求項7のいずれか1項記載の方法により機能性物質が固定化された基体。
  9. 機能性物質は、ポリペプチド、核酸、脂質及び細胞、並びにその構成要素から成る群から選ばれる物質である請求項8記載の基体。
  10. 基板は、その表面が樹脂、又は、有機物で処理された金からなる請求項8又は請求項9記載の基体。
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