JP2007332069A - オゾンガスを用いたアブラナ科植物種子における黒腐病菌の殺菌方法 - Google Patents

オゾンガスを用いたアブラナ科植物種子における黒腐病菌の殺菌方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、殺菌処理後に種子を乾燥する必要がなく、且つ短時間で殺菌が可能な、アブラナ科植物種子における黒腐病菌の殺菌方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アブラナ科植物の種子をオゾンガスにより処理することを特徴とする、アブラナ科植物の種子における黒腐病菌の殺菌方法に関する。処理中、種子を転動させることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、アブラナ科植物種子における黒腐病菌の殺菌方法に関する。
野菜類の圃場では多くの病害の発生があり、その防除には困難を極めている。とくに植物細菌による病害には、主に銅剤による防除が行われているが、その効果には限界があり、最近、農薬の使用についてヒトに対する安全性、環境汚染の問題が注目され、農薬の使用回数、使用量を削減することが望まれている。一方、植物の病害発生の源として、種子が汚染しており種子伝染性の病害が多い。そのため、健全な種子の生産が極めて重要であるとの観点から種子消毒が注目されている。
アブラナ科植物の黒腐病菌(Xanthomonas campestris pv. campestris)は、ハクサイ、チンゲンサイ、カブ、コマツナ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー等のアブラナ科野菜を侵し、大きな被害をもたらしている。本病は種子伝染することが知られており、種子消毒は極めて大切であるとされている。種子消毒を行うに当たり、野菜の種類、病原の種類等により農薬の粉衣、農薬へ浸漬、乾熱処理、温湯処理等による消毒が行われているが、黒腐病等の細菌病に対する登録農薬はない。さらに、効果の高い農薬があっても、消毒後の乾燥に多大の労力、場所、時間が必要であり、薬剤処理による発芽率等に影響を及ぼすことがあるため、消毒効果が高くても実用的には利用できないのが現状である。また、温湯処理の場合、乾燥が必要であり、発芽に対する影響にも注意が必要である。
アブラナ科植物種子の黒腐病菌をはじめ野菜の細菌病を対象とした種子消毒剤は、現在のところ全くないのが現状である。また、湿った種子を乾燥させるためには通常4日程度の日数をかけて乾熱処理を行うことが必要であるから、殺菌処理工程において種子が濡れるような方法は好ましくない。
一方、オゾンの殺菌力を利用した種子の殺菌方法は特開平5−211808号公報(特許文献1)、特開平11−158015公報(特許文献2)等に開示されている。特許文献1記載の技術は、オゾン水を使用して「たで」の種子を使用した試験を行い、種子の殺菌・発芽促進を特徴とするものであるが、オゾン水を用いて処理した種子は乾燥させる必要があるという問題がある。特許文献2記載の技術は、もやし、カイワレ大根等の施設園芸で栽培される農作物の種子における大腸菌、サルモネラ菌等の微生物を殺菌することを目的としている。特許文献2記載の技術は、オゾン気相を少量の水(6〜20%)の共存下で種子に接触させることにより、種子に付着した微生物を殺菌することを特徴としている。この方法においても処理後の種子を乾燥させる必要があるという問題がある。特許文献1及び2に記載された種子の殺菌処理がオゾンと水との存在下で行われるのは、一般に、オゾンによる殺菌が水の共存下において進行しやすいことが知られているためであると考えられる。また、特許文献1及び2には黒腐病菌に感染したアブラナ科植物種子を殺菌する技術は開示されていない。
特開平5−211808号公報 特開平11−158015公報
本発明は、殺菌処理後に種子を乾燥する必要がなく、且つ短時間で殺菌が可能な、アブラナ科植物種子における黒腐病菌の殺菌方法を提供することを目的とする。
本発明者らは驚くべきことに、黒腐病菌に汚染されたアブラナ科植物種子はオゾンガス(気体)で処理することにより殺菌が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の発明を包含する。
(1)アブラナ科植物の種子をオゾンガスにより処理することを特徴とする、アブラナ科植物の種子における黒腐病菌の殺菌方法。
(2)処理中に種子を転動させることを特徴とする(1)記載の方法。
本発明の方法により殺菌されたアブラナ科植物の種子は乾燥を必要としない。また当該種子は比較的短時間で殺菌が可能である。また、オゾンガスは廃棄の場合、酸素に変換されて排出するため、本発明の方法は環境に対する悪影響が少ない方法であると言える。
本発明の方法により黒腐病菌が殺菌されうるアブラナ科植物の種子としては、ハクサイ、チンゲンサイ、カブ、コマツナ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、カイラン、サイシン、ターサイ、ダイコン等の種子が挙げられるがこれらには限定されない。本発明で使用される種子は表面が濡れていない(すなわち表面が乾燥した)種子である。
本発明において黒腐病菌とはXanthomonas campestris pv. campestrisを指す。
本発明による、アブラナ科植物の種子における黒腐病菌の殺菌方法は、アブラナ科植物の種子をオゾンガスにより処理することを特徴とする。
本発明で使用されるオゾンガスのオゾン濃度は、黒腐病菌を殺菌するのに有効な濃度であれば特に限定されないが、高濃度であるほど好ましい。オゾン濃度が高いほど殺菌効果が高く、短時間で殺菌ができるからである。オゾンガスはオゾン発生器を用いて発生させることができる。高濃度のオゾンガスを発生させるには、500ppm以上の濃度のオゾンガスを発生させることのできるオゾン発生器を使用することがより好ましい。市販のオゾン発生器としては株式会社テックジャム製のEO-1(オゾン発生量50〜100mg/h、発生口のオゾン濃度80〜150ppm、流量1リットル/分)、EO-4(オゾン発生量1,000mg/h、発生口のオゾン濃度500〜900ppm、流量5リットル/分)、エコデザイン株式会社のED-OG-A7TM(オゾン発生量1,500mg/h、オゾン濃度500ppm、原料ガス流量30リットル/分)などが挙げられる。好適なオゾンガスの濃度範囲は、これらの市販のオゾン発生器を用いて約85Lの容量の容器中に45分間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上かけてオゾンガスを注入した場合の、容器中のオゾン濃度の範囲と規定することもできる。
本発明に使用されるオゾンガスは実質的に水を含まない。すなわちオゾンガスによる種子の処理は乾燥条件下で行われる。なお、「実質的に水を含まない」とは、人為的又は外来的に水を添加しないことを意味する。
オゾンガスによる処理は、オゾンガスの雰囲気中でアブラナ科植物の種子をオゾンガスと接触させることにより行われる。接触機会を多くするために、処理中の種子は連続的に又は一定の時間間隔毎に転動されることが好ましい。転動を行わない場合は、種子は4層以上は重ならないように薄く広げて静置することが好ましい。オゾンガスは適宜流動させてもよい。
オゾンガスによるアブラナ科植物の種子の処理は、種子が通常貯蔵される温度、例えば常温(20℃前後)で行われることが好ましい。処理時間は0.5〜5時間が好ましい。
実験手順の概要
以下の実験ではオゾン発生器として、株式会社テックジャム製のオゾン発生器、EO-1を用いた。EO-1の能力は、オゾン発生量50〜100mg/h、発生口のオゾン濃度80〜150ppm、流量1リットル/分である。オゾン処理実験はアクリル製のデシケータ(縦74 x横34 x高さ34cm)内で行った。このデシケータに小さな穴を開け、オゾン発生器のオゾン発生口に接続されたチューブを挿入して内部にオゾンガスを注入した(図1参照)。
デシケータ内に予め45分間オゾンガスを注入した後、種子を挿入して所定の時間オゾンガスを注入した。培地上の黒腐病菌は1分、10分、30分、1時間および2時間処理した。黒腐病菌汚染種子を処理する場合、少量の種子が一重または二、三重になるように置き、あるいは多量の種子を使用してオゾンガスにより1時間処理した。
また種子を網の容器に入れてオゾンガス処理を行う場合には、図2に示す容器中に種子を入れ、10〜15分間隔で容器を動かして種子を移動させてオゾンガスに曝した。
オゾンガスによる処理は常温(20〜25℃)で行った。
実施例1においてオゾンガスで処理したシャーレ上の黒腐病菌は25℃の恒温室に置床し、5日間培養した後、黒腐病菌のコロニー数を調査した。
種子における菌を調査する場合は、処理および無処理の種子(10ml)を乳鉢で磨砕し、生理食塩水を加えて20分間、遠心分離し(2,000回転/分)、上清(必要に応じて希釈する)を黒腐病菌選択培地(NV培地)に置床して25℃の恒温室で5日間培養後、コロニーの形状から黒腐病菌を調査した。
実施例1 培地上の黒腐病菌に対するオゾンガスの殺菌効果
アブラナ科植物黒腐病菌(Xanthomonas campestris pv. campestris )をNV培地上に広げて乾燥した後、オゾンガスが充満したデシケータ内に置いて処理した。25℃の恒温室で5日間培養後、黒腐病菌のコロニー数を調査した。結果を表1、図3および図4に示す。
黒腐病菌は1分間の処理でも部分的に殺菌されたが(図4)、10分間以上の処理ですべてが殺菌され、培地上で生育できなかった(表1及び図3)。黒腐病の病原細菌はオゾンガス処理により10分間で殺菌されることが明らかになった。
Figure 2007332069
実施例2 チンゲンサイの黒腐病菌人工汚染種子のオゾンガスによる消毒効果(1)
黒腐病菌人工汚染種子の作成には、ジャガイモ・デキストロース・寒天培地(PDA培地)に黒腐病菌を培養し、菌濃度を4×1010 cfu/mlに希釈して、チンゲンサイの種子を15分間浸漬した。ガーゼで濾した種子を紙に広げて自然乾燥し、人工汚染種子とした。
チンゲンサイの人工汚染種子を用いて、オゾンガス処理による黒腐病菌に対する消毒効果を調査した。まず、オゾンガスを45分間注入し充満したデシケータ内に、黒腐病菌人工汚染種子であるチンゲンサイ種子を置き1時間処理した。汚染種子は3区に分け、(1)一層にした種子、(2)二、三層にした種子及び(3)多量の種子に汚染種子を埋没させた種子の3種類を用いてオゾンガスで処理した。
処理後の種子(10ml)を乳鉢で磨砕し、生理食塩水を加えて20分間、遠心分離し(2,000回転/分)、上清を100倍又は10倍に希釈し、上清又は希釈液を黒腐病菌選択培地(NV培地)に置床して25℃の恒温室で5日間培養後、コロニーの形状から黒腐病菌を調査した。結果を表2、図5及び図6に示す。
Figure 2007332069
調査の結果、チンゲンサイの人工汚染種子を用いて行った試験では、種子が二、三層までの薄い層であればオゾンガスが種子に到達し、オゾンガス処理により黒腐病菌の数は大きく減少することが認められた。高濃度で汚染された人工汚染種子を使用したため、種子から菌が検出されなくなるまでは殺菌されなかったが、汚染種子の黒腐病菌の大部分は殺菌され、消毒効果が高いことが認められた(表2、図5、6)。
実施例3 チンゲンサイ黒腐病菌人工汚染種子のオゾンガスによる消毒効果(2)
チンゲンサイの人口汚染種子を用いて、オゾンガス処理による黒腐病菌に対する消毒効果を調査した。チンゲンサイの人工汚染種子を(1)一層にした種子、(2)網の容器に入れた種子の2種類を用いて、オゾンガスで充満したデシケータ内に入れ、1時間処理した。処理中は種子の全表面がオゾンガスに接触できるように10〜15分間隔で容器を動かして種子を移動させた。処理後の種子は前述と同様な方法で黒腐病菌の調査をした。結果を表3及び図7に示す。
Figure 2007332069
調査の結果、オゾンガスで処理した種子では、(1)一層にした種子、(2)網の容器の中の種子のいずれからも黒腐病菌は検出されたが、そのコロニー数は極めて少なく、オゾンガスによる消毒効果が高いことを示した。
実施例4 ハクサイの黒腐病菌自然汚染種子の消毒効果
ハクサイの黒腐病菌自然汚染種子を用いて、オゾンガス処理による黒腐病菌に対する消毒効果を調査した。ハクサイの自然汚染種子を網の容器に入れ、処理中は種子の全表面がオゾンガスに接触できるように10〜15分間隔で容器を動かして種子を移動させ、オゾンガスで1時間処理した。処理後の種子は前述と同様な方法で黒腐病菌の調査をした。結果を表4及び図8に示す。
無処理のハクサイ種子からはシャーレ当たり10個の黒腐病菌が検出されたが、種子を動かしてオゾンガスで処理することにより菌の検出はかなり減少した。菌が検出されないまで殺菌することはできなかったが、自然汚染種子においてもオゾンガス処理によりかなりの消毒効果が高いことを示した。以上の結果、種子のオゾンガス処理は黒腐病菌の消毒効果が高いことを示した。
Figure 2007332069
実験例5 チンゲンサイ種子の発芽率に及ぼすオゾンガス処理の影響
チンゲンサイ種子をオゾンガスで1時間処理した後、発芽率を調査した。オゾンガス処理及び無処理の種子を直径9cmのシャーレ上にろ紙を置き、種子を置床した後、4mlの水を加え、25℃、明8時間、暗16時間の恒温室で3日間培養し、発芽率を調査した。その結果、オゾン処理したチンゲンサイ種子の発芽率は無処理のそれと変わらず正常な発芽が認められた。結果を表5及び図9に示す。
Figure 2007332069
実験例6 カブ種子の発芽率に及ぼすオゾンガス処理の影響
カブ種子をオゾンガスで1時間及び3時間処理した後、発芽率を調査した。オゾンガス処理はチンゲンサイの場合と同様である。その結果、1時間、3時間オゾン処理したカブ種子の発芽率はいずれも無処理のそれと変わらず正常な発芽が認められた。
Figure 2007332069
種子消毒に用いた、オゾン発生器が接続されたデシケータを示す。 種子を攪拌するための網の容器を示す。 選択培地に黒腐病菌を移植し、オゾンガスで10分〜2時間処理し、恒温箱で培養後の菌のコロニーを示す。 選択培地に黒腐病菌を移植し、オゾンガスで1〜10分間処理し、恒温箱で培養後の菌のコロニーを示す。 チンゲンサイ人工汚染種子を一層、二、三層、或いは塊りとしてオゾンガスで1時間処理し、種子を磨砕、遠心分離後、上清の10倍希釈液を選択培地を用いて黒腐病菌の検査を行った結果を示す図である。 チンゲンサイ人工汚染種子を一層、二、三層、或いは塊りとしてオゾンガスで1時間処理し、種子を磨砕、遠心分離後、上清の100倍希釈液を選択培地を用いて黒腐病菌の検査を行った結果を示す図である。 チンゲンサイ人工汚染種子を網の容器に入れて、時々容器を動かすことにより種子を移動させ、オゾンガスに曝されるように1時間処理し、種子を磨砕、遠心分離後、上清の100倍希釈液を選択培地を用いて黒腐病菌の検査を行った結果を示す図である。 ハクサイ自然汚染種子にオゾンガスで1時間処理し、種子を磨砕、遠心分離後、上清の10倍希釈液を選択培地を用いて黒腐病菌の検査を行った結果を示す図である。 チンゲンサイ種子をオゾンガスで1時間処理し、発芽に及ぼす影響を調査した結果を示す図である。

Claims (2)

  1. アブラナ科植物の種子をオゾンガスにより処理することを特徴とする、アブラナ科植物の種子における黒腐病菌の殺菌方法。
  2. 処理中に種子を転動させることを特徴とする請求項1記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101061038B1 (ko) 2009-02-11 2011-09-01 대전대학교 산학협력단 유채의 추출물을 유효성분으로 하는 식물 유해곤충 방제용 조성물
JP2019031462A (ja) * 2017-08-08 2019-02-28 株式会社アグリノザキ 種苗用生育助剤

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