JP2007332106A - 骨形成用徐放性医薬組成物 - Google Patents

骨形成用徐放性医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】各種ゼラチンハイドロゲルの中からヘパリン結合能の亢進した改変型BMPとの組み合わせに最も適したキャリアを選択し、改変型BMPおよび最適のゼラチンハイドロゲルを含む骨形成用徐放性医薬組成物を提供する
【解決手段】大腸菌を宿主として生産され、ヘパリン結合能の亢進した改変型BMPと、塩基性ゼラチンハイドロゲルとを含む構成の骨形成用徐放性医薬組成物とする。当該骨形成用徐放性医薬組成物は低コストで製造できるとともに、低用量の投与でも十分な骨形成効果を発揮できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、骨形成用徐放性医薬組成物に関するものであり、特にヘパリン結合能の亢進した改変型BMPおよび塩基性ゼラチンハイドロゲルを含む骨形成用徐放性医薬組成物に関するものである。
骨の再建、再生は、高齢化が進んだ現代において重要な解決課題として認識されている。現在、その解決策として、メンブレンと自家骨移植を併用したGBR(guided bone regeneration)法や、自己多血小板血漿(PRP: platelet rich plasma)療法が試みられているが、それらの効果は限定的で未だに十分な解決策が提供されていない。
近年、強力な骨誘導能を有する骨形成因子(bone morphogenetic protein ;BMP)が、その骨再生能力の高さから注目されている。BMPは異所性の骨形成を誘導する因子として1965年に発見されたが、完全な精製タンパク質として単離されず、具体的な構造は未解明のままであった。しかし、1988年にWozneyらによってヒトBMPをコードする遺伝子がクローニングされたことによりその構造が明らかとなり、組み換えタンパク質としての製造が可能となっている(非特許文献1を参照)。また、その後の研究により、BMPはTGFβファミリーに属する成長因子の一群でBMPサブファミリーとして分類され、BMPサブファミリーに分類される多数のタンパク質が報告されている。
BMPのうちいくつかは、2量体として活性をもつ。したがって、組み換えBMPを生産するための宿主細胞としては、高次構造が取りにくいとされている大腸菌ではなく、哺乳動物細胞や昆虫細胞などの真核生物の細胞を利用することが適切である。しかしながら、哺乳動物細胞を宿主とし、さらに複雑な精製システムを用いて活性な2量体構造の組み換えBMPを生産する方法は、コストが高くなるという問題がある。
組み換えBMPの効果は種々の動物実験で検討され、米国では臨床試験も実施された。その結果、組み換え型BMPは種々の骨欠損モデル動物に対して骨形成を促進し、骨欠損を修復できることが報告されている。しかしながら、霊長類などの大型の実験動物に対して十分な骨修復効果を発揮させるためには、大量のBMPを投与しなければならず、ヒト臨床試験においてもミリグラム単位という大量のBMP−2が使用されている。このような大量投与は、コスト的な問題のみならず、副作用等の安全性面でも問題が生じる可能性がある。
BMPの生体内における作用は、当初骨形成の促進因子としての機能だけが注目されていたが、その後の研究により、発生現象に深く関わっていることが明らかにされてきている。具体的には、BMPは発生過程において四肢の形成や種々の臓器の器官形成過程に関与していることが明らかにされている。したがって、骨再生に有効な大量のBMPを投与すれば、重篤な副作用が生じる可能性を否定できない。
上記のような問題を解決するために、種々の検討がなされてきた。まず、生体内において安定かつ有効濃度を維持するための、優れた徐放特性を有し、より少ない量のBMP投与量で骨形成を誘導しうる担体が検討されている。このような担体としては、従来、天然高分子(コラーゲン、不溶性骨基質(IBM:Insoluble bone matrix)、ヒアルロン酸など)、合成高分子(ポリ乳酸、L−乳酸−パラジオキサノンランダム共重合体とポリエチレングリコールからなる、ABタイプのブロック共重合体など)、無機材料(ハイドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウムなど)等が研究されてきた。なかでも、コラーゲンスポンジとIBMとが優れた担体として、米国での臨床試験に使用されている。
さらに、上記コラーゲンスポンジやIBMより優れた担体として、ゼラチンハイドロゲルが開発されている(特許文献1および非特許文献2参照)。
また、BMPのアミノ酸配列を改変することで、ヘパリン結合活性を増強させ、野生型BMPより好ましい体内動態を示す改変型BMPが報告されている(特許文献2参照)。この改変型BMPは、BMPのN末端に存在するヘパリン結合ドメインの数を増加させるようにアミノ酸が挿入されたものであり、実際に、改良型BMPは野生型BMPと比較してヘパリン結合能が高いことが報告されている(特許文献2、非特許文献3参照)。また、ラット頭蓋骨欠損モデルにおいて改良型BMPは野生型BMPより骨再生能が優れていることが報告されている(非特許文献4参照)。
さらに、上記改変型BMPは、大腸菌を宿主細胞として生産することが可能である。
特開2004−203829号公報(2004(平成16)年7月22日公開) 特表2002−536016号公報(2002(平成14)年10月29日公開) JM Wozney, et al., Science 1988 Dec 16;242(4885):1528-34 M.Yamamoto, et al., Biomaterials 2003, 24; 4375-4383 K.K.Wurzler, et al., Mund Kiefer GesichtsChir 2004, 8; 83-92 R.Depprich, et al., Mund Kiefer GesichtsChir 2005, 9; 363-368
特許文献1にはBMPおよびゼラチンハイドロゲルを含む徐放製剤、および当該徐放製剤からなる骨形成の誘導を促進するための医薬組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されているBMPは、何ら機能が改変されていない野生型の組み換えBMPである。
一方、本願発明に用いられるBMPは、ヘパリン結合ドメインのアミノ酸配列が挿入されてヘパリン結合能が亢進した改変型BMPである。すなわち、改変型BMPは野生型BMPと比較して、そのヘパリン結合活性が大幅に異なるため、キャリアとの結合様式がまったく異なることが予想される。また、本願発明に用いられるBMPは大腸菌を宿主として生産された組み換えタンパク質であるため、哺乳動物細胞を宿主として生産された組み換えBMPと比較して、糖鎖の修飾が大きく異なることが予想される。
そうすると、特許文献1に開示されている哺乳動物細胞で生産された野生型BMPとの組み合わせに好適なゼラチンハイドロゲルが、上記改変型BMPと組み合わせた場合にも適しているか否かについては容易に予測できるものではない。また、ゼラチンハイドロゲルは原料のゼラチンや製造方法を変更することにより、種々の物性を備えたハイドロゲルとすることが可能である。したがって、大腸菌を宿主として生産された改変型BMPとの組み合わせに最も適したゼラチンハイドロゲルを見出すことは、大量投与に伴う副作用やコストの問題から臨床適用が遅れているBMPを用いる骨再生治療において、非常に意義のある成果を提供できると考えられる。さらに、信頼性の高い骨再生を目指すためには、再生現場における環境の差異(例えば、出血の多寡,骨欠損のタイプの差異)に大きく左右されない臨床効果が得られることが肝要である。このためにも、局所停滞性のよい改変型BMPをさらに組織吸収性徐放キャリアを用いて安定投与することは理にかなっている。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、各種ゼラチンハイドロゲルの中から改変型BMPとの組み合わせに最も適したキャリアを選択し、改変型BMPおよび最適のゼラチンハイドロゲルを含む骨形成用徐放性医薬組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、大腸菌を宿主として生産され、ヘパリン結合能の亢進した改変型BMPは、塩基性ゼラチンハイドロゲルをキャリアとして用いたときに、骨欠損モデル動物における骨形成効果が最も高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、ヘパリン結合能の亢進した改変型BMPおよび塩基性ゼラチンハイドロゲルを含むことを特徴としている。
上記改変型BMPは、野生型BMPのN末端領域にヘパリン結合ドメイン配列を含むペプチドが挿入されていることが好ましい。
また、上記野生型BMPはBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)およびBMP−8(OP−2)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ヘパリン結合ドメイン配列が、以下の(a)および(b)の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
(a)リジン−ヒスチジン−リジン;および
(b)アルギニン−リジン−アルギニン
の少なくともいずれかであることが好ましい。
上記改変型BMPは大腸菌を宿主細胞として発現させた組換えタンパク質であることが好ましく、以下の(1)〜(4)から選択されるアミノ酸配列からなることが好ましい。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列
(4)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列。
上記塩基性ゼラチンハイドロゲルは、等電点が7.0以上13.0以下のゼラチンを原料として製造されることが好ましい。
本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、ヘパリン結合能の亢進した改変型BMPおよびこれとの組み合わせにおいて最も高い骨形成効果をもたらす塩基性ゼラチンハイドロゲルを含むものである。したがって、低用量の投与でも十分な骨形成効果を発揮できるとともに、副作用の少ない骨形成用徐放性医薬組成物を提供できるという効果を奏する。
さらに、本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物に含有される改変型BMPは、大腸菌を宿主細胞として生産されるので、哺乳動物細胞を宿主として生産される組み換えBMPと比較して生産コストを低く抑えることができ、低価格の骨形成用徐放性医薬組成物を提供できるという効果を奏する。
〔改変型BMP〕
本発明に使用されるヘパリン結合能の亢進した改変型BMPは、ヘパリン結合能が亢進するようにアミノ酸配列が改変されたBMPであればよい。「ヘパリン結合能の亢進した」とは、アミノ酸配列が改変されていないBMP(野生型BMP)と比較した場合に、より強くヘパリンと結合することができることを意味する。ヘパリン結合能が亢進しているか否かは、例えば、ヘパリンをコートした担体を用いた表面プラズモン共鳴分析によって測定できる(参考文献:Ruppert et al., Eur. J. Biochem. 237(1996), 252-261)
ヘパリン結合能が亢進するようにアミノ酸配列が改変される前のBMP、すなわち野生型BMPは、未分化の間葉系細胞に作用して、これを軟骨細胞や骨芽細胞へ分化させ、軟骨又は骨を形成させる活性を有するタンパク質であれば、特に限定されるものではなく、例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4(BMP−2Bともいう)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)、BMP−8(OP−2)、もしくはBMP−9、またはこれらの機能的等価改変体、すなわち天然に存在するBMPのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、しかも、天然に存在するBMPと同じ活性を有するタンパク質、を挙げることができる。なかでも、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)およびBMP−8(OP−2)が好ましく、骨形成能が最も高いことが従来の基礎研究で明らかにされていることからBMP−2がより好ましい。
改変型BMPのアミノ酸配列は、野生型BMPのN末端領域にヘパリン結合ドメイン配列を含むペプチドが挿入されている。ここで、野生型BMPの「N末端領域」とは、成熟型BMPのアミノ酸配列におけるN末端から第20位までのアミノ酸配列の範囲が意図される。
ヘパリン結合ドメイン配列を含むペプチドは、ヘパリン結合能の亢進および骨形成活性に悪影響を及ぼさない限りにおいて、ヘパリン結合ドメイン配列以外のアミノ酸を含んでいてもよい。また、複数の異なるヘパリン結合ドメイン配列を含んでいてもよく、同一のヘパリン結合ドメイン配列を複数重複して含んでいてもよく、これらを複合的に含んでいてもよい。ヘパリン結合ドメイン配列は、具体的には、例えば、(a)リジン−ヒスチジン−リジン、および、(b)アルギニン−リジン−アルギニン、を挙げることができる。
改変型BMPは大腸菌を宿主細胞として発現させた組換えタンパク質であることが好ましい。大腸菌を宿主細胞とすることにより、安価な改変型BMPを生産することが可能となる。改変型BMPを、大腸菌を宿主細胞として生産する場合、成熟BMPのN末端に組換えタンパク質の発現に好適なメチオニン−アラニンを付加することが好ましい。
ここで、ヒトBMP−2の改変型について説明する。ヒトBMP−2のmRNAの塩基配列は、GenBank Accession NM_001200に、preproproteinのアミノ酸配列は、GenPept Accession NP_001191に開示されている。ヒトBMP−2の成熟タンパク質はpreproprotein(全396アミノ酸)の第283位〜第396位に該当し(配列番号5)、ヒトBMP−2の成熟タンパク質をコードする塩基配列はmRNAの塩基配列(全3150塩基)の第1632位〜第1973位(配列番号6)に該当する。
改変型BMPの1種であるヒトBMP−2T3(以下、「BMP2T3」と記す)は、配列番号5に示されるヒトBMP−2のアミノ酸配列の第9位のアルギニンと第10位のロイシンとの間に、アラニン−アルギニン−リジン−アルギニン(配列番号7)が挿入されるとともに、N末端にメチオニン−アラニンが付加されたアミノ酸配列(配列番号1)からなる、全アミノ酸数が120のタンパク質である。
改変型BMPの他の1種であるヒトBMP−2T4(以下、「BMP2T4」と記す)は、配列番号5に示されるヒトBMP−2のアミノ酸配列の第9位のアルギニンと第10位のロイシンとの間に、アラニン−リジン−ヒスチジン−リジン−グルタミン−アルギニン−リジン−アルギニン(配列番号8)が挿入されるとともに、N末端にメチオニン−アラニンが付加されたアミノ酸配列(配列番号3)からなる、全アミノ酸数が124のタンパク質である。
これら2種類の改変型BMPは、野生型BMP−2と比較してヘパリン結合能が高いことが報告されており(非特許文献2参照)、本発明に好適に用いることができる。また、これら2種類の改変型BMPのアミノ酸配列(配列番号1または配列番号3に示されるアミノ酸配列)において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、骨形成活性を維持しつつヘパリン結合能の亢進したタンパク質も本発明に好適に用いることができる。
ここで「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。
タンパク質のアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このタンパク質の構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけでなく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有する。好ましくは、サイレント置換、付加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチド活性を変化させない。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
BMP2T3は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子を適切な発現ベクターに挿入し宿主細胞である大腸菌に導入して発現させ、これを精製することにより製造することができる。同様に、BMP2T4は、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子を適切な発現ベクターに挿入し宿主細胞である大腸菌に導入して発現させ、これを精製することにより製造することができる。
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるものであれば限定されない。具体定期には、例えば、配列番号2に示される塩基配列からなるDNAを挙げることができる。配列番号2に示される塩基配列は、ヒトBMP−2mRNAの塩基配列における成熟ヒトBMP−2をコードする部分に該当する塩基配列(配列番号6)の第27位のシトシンと第28位のシトシンとの間にgctcgtaaacgt(配列番号9)を挿入するするとともに5’末端にatggct(配列番号10)を付加することにより得ることができる。なお、塩基配列の挿入および付加は、公知の遺伝子工学的手法を用いることにより行うことができる。
配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるものであれば限定されない。具体定期には、例えば、配列番号4に示される塩基配列からなるDNAを挙げることができる。配列番号4に示される塩基配列は、ヒトBMP−2mRNAの塩基配列における成熟ヒトBMP−2をコードする部分に該当する塩基配列(配列番号6)の第27位のシトシンと第28位のシトシンとの間にgctaagcataagcaacgtaagcgt(配列番号11)を挿入するするとともに5’末端にatggct(配列番号10)を付加することにより得ることができる。
BMP2T3やBMP2T4を製造するためにこれらのタンパク質をコードする遺伝子を作製し、組み換え発現ベクターを構築し、宿主細胞である大腸菌に導入し、組み換えタンパク質を発現させ、精製して取得する一連の操作は、公知の遺伝子工学的手法を適宜組み合わせることにより行うことができる。
〔ゼラチンハイドロゲル〕
ゼラチンは、牛、豚、魚類など各種の動物の皮膚、骨、腱などの身体のあらゆる部位から採取できるコラーゲン、あるいはコラーゲンとして用いられている物質から、アルカリ加水分解、酸加水分解、および酵素分解等の種々の処理によって変性させて得ることができる。
本発明で使用されるゼラチンハイドロゲルの原料として利用可能なゼラチンは、塩基性ゼラチンである。本明細書において「塩基性ゼラチン」とは、等電点が7.0以上13.0以下のものが意図される。本発明に用いる塩基性ゼラチンの等電点は、7.5以上10.0以下であることがより好ましく、8.5以上9.5以下であることがさらに好ましい。
なお、ゼラチンの等電点を測定する方法は限定されないが、例えば以下に示すパギィ法を挙げることができる。したがって、市販のゼラチンを購入して等電点を測定すれば、本発明で使用されるゼラチンハイドロゲルの原料として利用可能な塩基性ゼラチンを取得することができる。また、等電点を表示して市販されているゼラチンから、上記範囲の等電点を有するゼラチンを購入してもよい。例えば、等電点9のゼラチンは、新田ゼラチン株式会社からAPH200という商品名で市販されている。
パギィ法について説明する。パギィ法は、pH計を用い、イオン交換樹脂の混床カラムに通した被検液の水素イオン濃度を測定する方法である。被検液には試料ゼラチンの1%溶液を用いる。側手操作は以下の(1)〜(5)に記載のとおりである。
(1) 強酸性陽イオン交換樹脂5mlと強塩基性陰イオン交換樹脂(I形)10mlを混合してカラムに均一に詰める。ジャケットには40〜45℃の湯を通しておく。
(2) カラムに40〜45℃の湯100ml通して温める。
(3) 40〜45℃とした検液100mlを、1時間に50mlの速さでカラムに通す。
(4) 流出点の初めの約25mlを除いた後、約50mlを取り、液温を35℃にしてpHを測定する。得られたpH値を等イオン点(等電点)とする。
(5) 測定値は小数点以下2位に丸める。
強酸性陽イオン交換樹脂には、アンバーライトIR−120B、またはこれと同等の性能を有するものが使用できる。また、強酸性陽イオン交換樹脂は予め洗浄したものを使用する。洗浄方法としては、樹脂をカラムに詰め、樹脂の5倍量の6%塩酸を空間速度3で通した後、空間速度10で水洗する方法を挙げることができる。水洗は、流出液が硝酸銀溶液を加えても、白濁しなくなるまで行う。
強塩基性陰イオン交換樹脂(I形)には、アンバーライトIRA−401、またはこれと同等の性能を有するものが使用できる。また、強塩基性陰イオン交換樹脂(I形)は予め洗浄したものを使用する。洗浄方法としては、樹脂をカラムに詰め、樹脂の5倍量の10%水酸化ナトリウム溶液を空間速度3で通した後、空間速度10で水洗する方法を挙げることができる。水洗は、流出液がフェノールフタレインを加えても、着色しなくなるまで行う。
また、パギィ法に用いるイオン交換樹脂カラムは、ガラス製、ジャケット付き、内径約17mm、長さ約250mmのものが好ましい。pH計は、形式0(JIS Z8802、繰り返し性±0.005)と同等の性能を有するものが用いられる。
また、塩基性ゼラチンはさらに人為的に塩基性の化合物(例えばアミン化合物など)で修飾することによりカチオン化することが可能であるが、本発明で使用されるゼラチンハイドロゲルの原料として好適な塩基性ゼラチンは、何ら人為的な修飾を施していない塩基性ゼラチンである。
ここで、「ハイドロゲル」は、水分を多量に含むことにより膨潤する性質を持つ高分材料が意図される。本発明で使用されるゼラチンハイドロゲルは、上記塩基性ゼラチンを原料として製造されるハイドロゲルである。このようなゼラチンハイドロゲルは、上記塩基性ゼラチンを用いて種々の化学的架橋剤とゼラチン分子間に化学架橋を形成させることで製造できる。化学的架橋剤としては、EDC等の水溶性カルボジイミド、プロピレンオキサイド、ジエポキシ化合物、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、イミダゾール基などの間に化学結合を作る縮合剤を用いることができる。好ましいものは、グルタルアルデヒドである。また、ゼラチンは、熱処理または紫外線照射によっても化学架橋することができる。また、これらの架橋処理を組み合わせて用いることもできる。さらに、塩架橋、静電的相互作用、水素結合、疎水性相互作用などを利用した物理架橋によりハイドロゲルを作製することも可能である。
ゼラチンの架橋度は、所望の含水率、すなわちハイドロゲルの生体吸収性のレベルに応じて適宜選択することができる。ゼラチンハイドロゲルを調製する際のゼラチンと架橋剤の濃度の好ましい範囲は、ゼラチン濃度1〜20w/w%、架橋剤濃度0.01〜1w/w%である。架橋反応条件は特に制限はないが、例えば、0〜40℃、1〜48時間で行うことができる。一般に、ゼラチンおよび架橋剤の濃度、架橋時間が増大するとともにハイドロゲルの架橋度は増加し、生体吸収性は低くなる。
ゼラチンハイドロゲルの形状は、特に限定されないが、例えば、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、粒子状などを挙げることができる。円柱状、角柱状、シート状、ディスク状のものは、埋込片として用いるのに適しており、あるいは細かく砕いて粒子状にして用いることも可能である。また、球状、粒子状、ペースト状のものは注射投与も可能である。
円柱状、角柱状、シート状、ディスク状のゼラチンハイドロゲルは、ゼラチン水溶液に架橋剤水溶液を添加するか、あるいは、架橋剤水溶液にゼラチンを添加し、所望の形状の鋳型に流し込んで、架橋反応させることにより調製することができる。また、成形したゼラチンゲルにそのまま、あるいは乾燥後に架橋剤水溶液を添加してもよい。架橋反応を停止させるには、エタノールアミン、グリシン等のアミノ基を有する低分子物質に接触させるか、あるいは、pH2.5以下の水溶液を添加する。反応に用いられた架橋剤および低分子物質を完全に除去する目的で、得られたゼラチンハイドロゲルは、蒸留水、エタノール、2−プロパノール、アセトン等により洗浄し、製剤調製に供される。
球状、粒子状のゼラチンハイドロゲルは、例えば、三口丸底フラスコに固定した攪拌用モーター(例えば、新東科学社製、スリーワンモーター、EYELA miniD.C. スターラー等)とテフロン(登録商標)用プロペラを取り付け、フラスコと一緒に固定した装置にゼラチン溶液を入れ、ここにオリーブ油等の油を加えて200〜600rpm程度の速度で攪拌し、W/O型エマルジョンとし、これに架橋剤水溶液を添加するか、ゼラチン水溶液を予めオリーブ油中にて前乳化(例えば、ボルテックスミキサーAdvantec TME-21、ホモジナイザー、polytron PT10-35等を用いて)しておいたものをオリーブ油中に滴下し、微粒子化したW/O型エマルジョンを調製し、これに架橋剤水溶液を添加して架橋反応させ、遠心分離によりゼラチンハイドロゲルを回収した後、アセトン、酢酸エチル等で洗浄し、さらに2−プロパノール、エタノール等に浸漬して架橋反応を停止させることにより、調製することができる。得られたゼラチンハイドロゲル粒子は、2−プロパノール、Tween80を含む蒸留水、蒸留水等で順次洗浄し、製剤調製に供される。ゼラチンハイドロゲル粒子が凝集する場合には、例えば、界面活性剤などの添加あるいは超音波処理(冷却下、1分以内程度が好ましい)等を行ってもよい。
得られるゼラチンハイドロゲル粒子の平均粒径は、上述の粒子作製時におけるゼラチン濃度、ゼラチン水溶液とオリーブ油との体積比、および撹拌スピードなどにより変化する。一般には粒径は1〜1000μmであり、目的に応じて適宜必要なサイズの粒子をふるい分けて使用すればよい。さらに、前乳化することによって、粒子サイズが20μ以下の微粒子状のゼラチンハイドロゲルを得ることができる。
球状、粒子状のゼラチンハイドロゲルを調製する別法として以下の方法も挙げられる。上記の方法と同様の装置にオリーブ油を入れ、200〜600rpm程度の速度で攪拌し、ここにゼラチン水溶液を滴下してW/O型エマルジョンを調製し、これを冷却後、アセトン、酢酸エチル等を加えて攪拌し、遠心分離により未架橋ゼラチン粒子を回収する。回収したゼラチン粒子を、さらにアセトン、酢酸エチル等、次いで2−プロパノール、エタノール等で洗浄後、乾燥させる。この乾燥ゼラチン粒子を0.1%Tween80を含む架橋剤水溶液に懸濁させ、緩やかに攪拌しながら架橋反応させ、使用した架橋剤に応じて0.1%Tween80を含む100mMグリシン水溶液または0.1%Tween80を含む0.004N HC1等にて洗浄し、架橋反応を停止することによりゼラチンハイドロゲル粒子を調製することができる。本法で得られるゼラチンハイドロゲル粒子の平均粒径は上記の方法の場合と同様である。
本発明のゼラチンハイドロゲルは適宜、適当な大きさ及び形に切断後凍結乾燥し滅菌して使用することができる。凍結乾燥は、例えば、ゼラチンハイドロゲルを蒸留水に入れ、液体窒素中で30分以上、または−80℃で1時間以上凍結させた後に、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行うことができる。
〔骨形成用徐放性医薬組成物〕
本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、改変型BMPおよび塩基性ゼラチンハイドロゲルを含むものであればよい。
本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、例えば、凍結乾燥した塩基性ゼラチンハイドロゲルに改変型BMP溶液を滴下すること、またはゼラチンハイドロゲルを改変型BMP溶液中に浸漬させることにより得ることができる。この操作は、通常、4〜37℃で15分間〜1時間、好ましくは4〜10℃で6〜8時間で終了し、その間にハイドロゲルは改変型BMP溶液で膨潤する。
ゼラチン(乾燥重量)に対する改変型BMPの重量比は約1倍〜約10000倍の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、ゼラチン(乾燥重量)に対して改変型BMPは約2倍〜約5000倍の重量比であり、さらに好ましくは約10倍〜約1000倍の重量比である。
本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、任意の方法で生体に投与することができるが、目的とする特定部位で改変型BMPを持続的に放出させるためには局所投与が特に好ましい。また、本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、更に必要に応じて薬学的に許容し得る公知の担体(安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)を含有することができる。
本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、目的に応じて種々の形状の製剤化が可能である。例えば、粒状、円・角柱状、シート状、ディスク状、スティック状、ロッド状等の固形、半固形製剤が挙げられる。好ましくは目的とする特定部位での徐放効果に優れ、また局所投与に好適な固形製剤である。例えばシート状製剤は、局所に埋め込むのに適している。
本発明に係る骨形成用徐放性医薬組成物は、骨形成治療に好適に用いられる。骨形成治療とは、骨組織や軟骨組織の形成が必要な疾患の予防または治療、あるいは、骨組織や軟骨組織の形成または補填が必要な症状の改善を意味する。具体的には、例えば、(1)事故、疾患、先天性異常、または各種手術に伴う骨または軟骨の欠損部位の修復、(2)各種骨折の治癒促進、(3)人工関節、人工骨、若しくは人工歯根等の人工インプラント周囲での骨の形成、人工インプラント使用時の固着促進、脊椎固定促進、または脚延長等の整形外科分野における骨若しくは軟骨の再生若しくは補填、または関節の再建、(4)形成外科分野での骨または軟骨の補填、あるいは、(5)歯科領域での顎骨の修復、歯槽骨の再生、セメント質の修復、またはインプラント使用のための骨の増大等が含まれる。また、骨組織での骨吸収と骨形成とのバランスが破綻した場合に生じる骨粗鬆症、線維性骨炎、骨軟化症、またはページェット病等を含む代謝性骨疾患や変形性関節炎の予防または治療も含まれる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
〔実施例1:マウス皮下における徐放性試験1〕
(1)各種ゼラチンハイドロゲルの作製
塩基性ゼラチン(分子量99,000、等電点9.0、新田ゼラチン社製Type;G-2141 Lot:050803)および酸性ゼラチン(分子量99,000、等電点5.0、新田ゼラチン社製Type;G-2140 Lot:050803)をそれぞれ供与された。
塩基性ゼラチンのカルボキシル基にEthylenediamine(エチレンジアミン; C2H8N2=60.1)またはSupermine(スペルミン; C10H26N4=202.3)を化学導入することで2種類のカチオン化ゼラチンを作製した。すなわち、10gの塩基性ゼラチンに250mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH5)を加え、40℃で一時間撹拌し、塩基性ゼラチン水溶液を得た。ゼラチンのカルボキシル基に対して50倍モル等量のエチレンジアミンまたはスペルミンを加え、濃塩酸にて水溶液のpHを5に調整した後、1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochroride salt(EDC:ナカライテスク株式会社、東京)を5.35g加えた。0.1Mリン酸緩衝液を加え、全量を500ml(最終ゼラチン濃度0.02g/ml)とした後、37℃、18時間撹拌下反応させた。反応後、セルロースチューブ(分画分子量12,000−14,000:三光純薬株式会社、東京)を用い、超純水(Milli Q)に対してして48時間、室温で透析し、未反応のエチレンジアミンまたはスペルミン、EDC、および副生成物を除去した。透析後、得られた内容物を−80℃で凍結した後、凍結乾燥し、カチオン化ゼラチンを得た。
また、酸性ゼラチンのアミノ基にslufoacetic acid(スルホ酢酸; C2H4O5S=140.12)、Undecanoic acid(ウンデカン酸: C11H22O2=186.3)またはsuccinic anhydride(コハク酸:C4H6O4=118)を化学導入することで3種類のアニオン化ゼラチンを作製した。
すなわち、スルホ酢酸修飾ゼラチンおよびウンデカン酸修飾ゼラチンに関しては以下のとおり作製した。2gの酸性ゼラチンに45mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH5)を加え、40℃で一時間撹拌し、酸性ゼラチン水溶液を得た。別途、0.1Mリン酸緩衝液(pH5)5mlにスルホ酢酸;2.606gまたはC11;3.464gをそれぞれ溶解させ、EDCを1.07g加えて撹拌した。当該反応液を上記酸性ゼラチン水溶液に滴下し全量を50ml(最終ゼラチン濃度0.04g/ml)とした後、37℃、18時間撹拌下反応させた。反応後、上記カチオン化ゼラチンの作製と同様の手法でスルホ酢酸修飾ゼラチンおよびウンデカン酸修飾ゼラチンを得た。
コハク酸修飾ゼラチンに関しては2gの酸性ゼラチンに16mlのdehydrated demethylsulfoxide(DMSO)を加え、常温で3日間溶解させ酸性ゼラチンのDMSO溶液を得た。コハク酸81mgをDMSO9mlに溶解させ、上記酸性ゼラチンのDNSO溶液(最終ゼラチン濃度0.08g/ml)と混合して37℃、1時間反応させた。反応後ゼラチン溶液をアセトン中に滴下してゼラチンを再沈させ、得られたゼラチンをアセトンで3回洗浄し真空乾燥させることでコハク酸修飾ゼラチンを得た。
供与された2種類のゼラチン(塩基性ゼラチンおよび酸性ゼラチン)、並びに、作製した2種類のカチオン化ゼラチンおよび3種類のアニオン化ゼラチンを用いてゼラチンハイドロゲルを調製した。具体的には、7種類のゼラチンをそれぞれ超純水(Milli Q)に溶解し5%ゼラチン水溶液を調製した。この各ゼラチン水溶液に濃度0.25mg/mlのグルタルアルデヒドを添加した。この混合液をポリプロピレン製秤量皿(14×14cm2)に流延後、4℃にて12時間静置することによって、化学架橋したゼラチンハイドロゲルシート(厚さ2mm)を得た。100mM濃度のグリシン水溶液で37℃にて3時間処理し、未反応のグルタルアルデヒドあるいはアルデヒド基を不活性化した。次に、蒸留水にて数回洗浄し、凍結乾燥することによって架橋ゼラチンハイドロゲルを得た。凍結乾燥したハイドロゲルはエチレンオキシドガスを用いて滅菌した。
(2)BMPの放射線標識
大腸菌に発現させたBMP2T4は、株式会社オステオファーマより供与された。当該BMP2T4は配列番号3に示されるアミノ酸配列からなることが確認されており、当業者に周知の遺伝子工学的手法を用いて、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号4に示される塩基配列からなるDNA)を含む発現ベクターを大腸菌に導入し、発現、精製することにより取得することができる。
放射線標識にはクロラミンT法を用いた。すなわち、1.0mg/mlのBMP2T4溶液10μlに0.5M pottasium phosphate buffer(KPB:pH 7.5)を90μl加え、10μlのNa125I(740Mbq/ml in 0.1 N NaOH)を混和した。続いて0.2mg/mlのクロラミンT溶液100μlを加え2分間撹拌反応させた後、4mg/mlの二亜硫酸ナトリウム100μlで反応停止させた。反応物をカラムに添加し、その上から1500μlのPBSを加え、250μlずつPBSをカラムに滴下することで放射線標識されたBMP2T4を回収した。
(3)マウス皮下における徐放性試験
上記(1)で作製した7種類の凍結乾燥ゼラチンハイドロゲルをそれぞれ2mgにカットし、(2)により得られた20μlの放射線標識BMP2T4を4℃で一夜かけて含浸させた。
放射線標識BMP2T4を含む7種類のゼラチンハイドロゲルのγ線量をそれぞれ測定した後、1群あたり3匹のマウス(ddy系雄性マウス(日本エスエルシー株式会社、京都)、6週齢、体重22〜24g)の背部皮下に埋入した。3日後に皮下のゼラチンハイドロゲルを回収してγ線量を測定し、埋入前のγ線量と比較することでBMP2T4の残存率を算出した。なお、γ線量はガンマカウンター(ARC-301B,Aloka Co.,Ltd)にて計測した。
(4)結果
結果を図1に示した。各ゼラチンハイドロゲルは、ゼラチンの電荷が最も負に帯電しているものを左端、最も正に帯電しているものが右端となるように電荷の順に記載されている。なお、「スルホアセチル化」はスルホ酢酸修飾アニオン化ゼラチン、「コハク化」はコハク酸修飾アニオン化ゼラチン、「C11」はウンデカン酸修飾アニオン化ゼラチン、「PI5」は供与された酸性ゼラチン、「PI9」は供与された塩基性ゼラチン、「ED」はエチレンジアミン修飾カチオン化ゼラチン、「SM」はスペルミン修飾カチオン化ゼラチンを表す略称である。以下、適宜各ゼラチンハイドロゲルについてこれらの略称で表記する。
図1から明らかなように、電荷が正に帯電しているSM、EDおよびPI9のほうが、電荷が負に帯電している他の4種類のゼラチンハイドロゲルより皮下埋入3日後の残存率が高かった。したがって、電荷が正に帯電しているSM、EDおよびPI9がBMP2T4と高い親和性を有することが明らかとなった。
〔実施例2:マウス皮下における徐放性試験2〕
実施例1において、BMP2T4と最も高い親和性(高い徐放性)を示したSMおよびスペルミン修飾を施していないPI9の2種類について、マウス皮下において、より長期間の徐放性を試験した。
実施例1と同様に放射線標識したSMおよびPI9を作製し、マウス皮下に埋入した。埋入後1、3、7、10および14日後に、各3匹のマウスについて皮下のゼラチンハイドロゲル、並びに周囲の皮膚および皮下組織を回収してγ線量を測定し、埋入前のγ線量と比較することで残存率を算出した。
なお、対照としてキャリアを用いずに放射線標識BMP2T4溶液(20μl)のみを皮下投与する群を設けた。
結果を図2に示した。図2から明らかなように、対照のキャリアを用いない場合と比較して、SMおよびPI9とも高い徐放性を示した。SMとPI9とを比較した場合、実施例1と同様にSMのほうがわずかに徐放性の程度が高い傾向が認められたが、有意な差はなかった。
〔実施例3:ラット頭蓋骨欠損モデルにおける骨再生能の検討〕
(1)被検物質
ゼラチンハイドロゲルは、上記実施例2と同じSMおよびPI9を用いた。ゼラチンハイドロゲルを直径6mmの円形に成形し、滅菌MilliQ水を溶媒として0.1、1.0および5.0(μg/20μl)に濃度調整したBMP2T4溶液20μlを4℃、24時間含浸させた。
(2)ラット頭蓋骨欠損モデル
Wister系ラット(雄性、8週例、220〜240g、日本クレア株式会社、東京)の頭蓋骨に、トレフィンバー(ブローネマルク社製)を用い、直径6.2mmの円形の全層骨欠損部を作製し、各用量のBMP2T4溶液を含むSMもしくはPI9を欠損部に填塞した。その後、絹糸(MANI社製)にて骨膜および皮膚を縫合した。また、対照として頭蓋骨に欠損部を作製し、薬剤を填塞せずにそのまま縫合した群を設けた。なお、1群当たり5匹のラットを使用した。
(3)サンプリングおよび骨再生の測定
治癒期間を2週、4週、8週として組織を回収した。回収した組織は軟エックス線撮影を行い、得られた画像について、画像解析ソフト(image J)を用い、骨欠損部の周囲既存骨から骨欠損部の中心を通る直線を等間隔に設け直線的な輝度を3カ所測定した(図3参照)。骨欠損部を作製していないものを健常骨(natural bone)とし実験側/健常骨でradiopacity ratioを算定した。
(4)結果
図4に、BMP2T4填塞4週間後の軟エックス線写真の輝度のスキャンチャートを示した。(a)はSMの結果であり、(b)はPI9結果である。図4においてnatural boneは欠損部を作製していない頭蓋骨を表し、controlは薬剤を填塞していない対照群を表す。図4(a)および(b)から明らかなように、SMを用いた場合、5.0μgの用量においても欠損部の骨は殆ど再生していなかった。一方、PI9を用いた場合、用量5.0μgではほぼ欠損部の骨が再生していた。
図5にPI9およびSMの各サンプリング時の骨再生の程度を示した。また、図6には8週間後の骨再生の程度と用量との関係を示した。図5および図6において縦軸の数値が100であれば欠損部の骨が再生していると認められる。また、contは薬剤を填塞していない対照群である。図5および図6から、PI9は4週間後においてほぼ欠損部の骨が再生しており、8週間目の再生の程度から明らかな用量依存性が認められることがわかる。一方、実施例1および2の結果から最も高い骨再生能を有することが期待されたSMは、予想に反してPI9よりラット頭蓋骨における骨再生能が低いことが明らかとなった。
本発明は、製薬産業に利用可能である。
放射線標識BMP2T4を含浸させた7種類のゼラチンハイドロゲルを用い、マウス皮下における3日間の徐放性を試験した結果を示すグラフである。 放射線標識BMP2T4を含浸させた2種類のゼラチンハイドロゲルを用い、マウス皮下における14日間の徐放性を試験した結果を示すグラフである。 ラット頭蓋骨欠損モデルの骨再生の測定において、画像解析ソフトで軟エックス線撮影画像の輝度を解析した、骨欠損部の中心を通る3本の直線を示す模式図である。 ラット頭蓋骨欠損モデルの骨再生試験におけるBMP2T4填塞4週間後の骨再生の程度を示す画像解析スキャンチャートであり、(a)はキャリアにSMを用いた場合の結果を示し、(b)はキャリアにPI9を用いた場合の結果を示す。 ラット頭蓋骨欠損モデルの骨再生試験におけるPI9およびSMの各サンプリング時の骨再生の程度を示すグラフである。 ラット頭蓋骨欠損モデルの骨再生試験におけるBMP2T4填塞8週間後のPI9およびSMの骨再生の程度と用量との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. ヘパリン結合能の亢進した改変型BMPおよび塩基性ゼラチンハイドロゲルを含むことを特徴とする骨形成用徐放性医薬組成物。
  2. 上記改変型BMPは、野生型BMPのN末端領域にヘパリン結合ドメイン配列を含むペプチドが挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
  3. 上記野生型BMPはBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7(OP−1)およびBMP−8(OP−2)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
  4. 上記ヘパリン結合ドメイン配列が、以下の(a)および(b)の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
    (a)リジン−ヒスチジン−リジン
    (b)アルギニン−リジン−アルギニン
  5. 上記改変型BMPは大腸菌を宿主細胞として発現させた組換えタンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
  6. 上記改変型BMPは、以下の(1)〜(4)から選択されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項5に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
    (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列
    (2)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたされたアミノ酸配列
    (3)配列番号3に示されるアミノ酸配列
    (4)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたされたアミノ酸配列
  7. 上記塩基性ゼラチンハイドロゲルは、等電点が7.0以上13.0以下のゼラチンを原料として製造されることを特徴とする請求項1に記載の骨形成用徐放性医薬組成物。
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