JP2008024995A - 耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板 - Google Patents

耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度化と優れた耐熱性とを両立させたCu−Fe−P系銅合金板を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体装置用リードフレームの素材として好適なFe含有量が比較的少ないCu−Fe−P系銅合金板の板表面の板表面の(200)面からのX線回折強度I(200)と(220)から面のX線回折強度I(220)との比、I(200)/I(220)が0.3以下とする集合組織を有することによって、高強度で、かつ、耐熱性を向上させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度で、かつ、歪み取り焼鈍などの熱処理を行った場合の強度低下が少ない、耐熱性に優れたCu−Fe−P系の銅合金板に関する。本発明の銅合金板は、半導体装置用リードフレームの素材として好適で、半導体装置用リードフレーム以外にも、その他の半導体部品、プリント配線板等の電気・電子部品材料、開閉器部品、ブスバー、端子・コネクタ等の機構部品など様々な電気電子部品用として好適に使用される。ただ、以下の説明では、代表的な用途例として、半導体部品であるリードフレームに使用する場合を中心に説明を進める。
半導体リードフレーム用銅合金としては、従来よりFeとPとを含有する、Cu−Fe−P系の銅合金が一般に用いられている。これらCu−Fe−P系の銅合金としては、例えば、Fe:0.05〜0.15%、P:0.025〜0.040%を含有する銅合金(C19210合金)や、Fe:2.1〜2.6%、P:0.015〜0.15%、Zn:0.05〜0.20%を含有する銅合金(CDA194合金)が例示される。これらのCu−Fe−P系の銅合金は、銅母相中にFe又はFe−P等の金属間化合物を析出させると、銅合金の中でも、強度、導電性および熱伝導性に優れていることから、国際標準合金として汎用されている。
近年、電子機器に用いられる半導体装置の大容量化、小型化、高機能化に伴い、半導体装置に使用されるリードフレームの小断面積化が進み、より一層の強度、導電性、熱伝導性が要求されている。これに伴い、これら半導体装置に使用されるリードフレームに用いられる銅合金板にも、より一層の高強度化、熱伝導性が求められている。
その一方で、これら高強度化したCu−Fe−P系の銅合金板には、歪み取り焼鈍などの熱処理を行った場合でも強度低下を殆ど起こすことのない耐熱性に優れることが要求される。
Cu−Fe−P系の銅合金板を、リードフレーム等への加工を行う際には、スタンピング加工(プレス打ち抜き加工)することによって多ピン形状とするのが一般的である。最近では、前述した如く電気・電子部品の小型化・薄肉軽量化に対応するため、原材料として用いる銅合金板の薄肉化や多ピン化が進んでおり、それに伴って、上記スタンピング後の加工品に歪み応力が残留し易くピンが不揃いになる傾向がある。そこで通常は、スタンピングして得られる多ピン形状の銅合金板に、熱処理(歪取り焼鈍)を施して歪を除去することが行われる。
ところがこの様な熱処理を行うと材料が軟化し易く、熱処理前の機械的強度を維持することができない。また製造工程面からすると、生産性向上の観点から前記熱処理をより高温・短時間で行うことが求められており、高温での熱処理後も高強度を維持し得る耐熱性が強く求められている。
こうした課題に対し、これまでにもFe、P、Zn等の合金元素や、その他Sn、Mg、Ca等の微量添加元素を含有させ、或はそれらの添加量を調整する等の改善策が講じられてきた。また、銅合金の晶出物、析出物の制御も行なわれてきた。しかし、この様な成分調整や晶出物、析出物の制御だけでは、銅合金部品の小型・軽量化や耐熱強度特性などに十分対応しきれないことから、銅合金の組織などを制御する技術が更に提案されている。
例えば、特許文献1では、Cu−Fe−P系の銅合金では無いが、無酸素銅に少量の銀を添加した銅合金を素材として使用し、最終圧延後のX線回折強度比と最終圧延前の結晶粒径を制御することによって、強度の向上を図っている。即ち、熱間圧延の後、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最終の冷間圧延における加工度と、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍後の平均結晶粒径、および最終焼鈍前の冷間圧延加工度をコントロールすることによって、最終圧延後のX線回折強度比と最終圧延前の結晶粒径を制御し、高強度化を図っている。ところが、この文献で推奨する圧延・焼鈍条件を、そのまま、本発明が対象とするCu−Fe−P系の銅合金に適用しても、前記したリードフレーム等に要求される様な高レベルの耐熱性を得ることはできない(特許文献1参照)。
これに対して、Cu−Fe−P系銅合金における耐熱性改善技術も種々提案されている。例えば、特許文献2では、実質的なFeの含有量が0.7%以上と多いCu−Fe−P系銅合金の晶出物、析出物の形態自体を制御することによって、高耐熱性を得ることが提案されている。即ち、組織中に含まれるγ−Fe析出物のX線ピーク面積Xγとα−Fe析出物のX線ピーク面積Xαとの比Xγ/Xαが0.05以上として、高耐熱性を得ることが提案されている(特許文献2参照)。
また、特許文献3では、集合組織の制御によって高耐熱性を得るために、実質的なFeの含有量が0.5%以上と多いCu−Fe−P系銅合金の500℃で1分間焼鈍した後のCube方位の方位密度を50%以下とし、更に平均結晶粒径を30μm以下として、高耐熱性を得ることが提案されている(特許文献3参照)。
更に、特許文献4では、実質的なFeの含有量が2%以上と多いCu−Fe−P系銅合金について、耐熱性の向上目的では無いが、板の加工性やリードフレームへの成形性を、集合組織の制御によって向上させることが開示されている。この加工性とは、冷間圧延における板の波打ちや蛇行、残留応力の不均一、スリッターした条の蛇行、スタンピング加工における曲がりやバリの発生、リード曲げ加工部の肌荒れや割れなどである。また、集合組織は、(200)面と(220)面のX線回折強度比と、Cube方位の方位密度を適正範囲に制御することである。
特開2003−96526号公報(全文) 特開2004−91895号公報(全文) 特開2005−139501号公報(全文) 特開2002−339028号公報(全文)
しかし、Cu−Fe−P系銅合金の耐熱性の向上を目的としたこれら特許文献2、3の技術や、あるいは目的が異なる特許文献4の技術でも、本発明で意図する高レベルの耐熱性を保障するまでには至らない。
即ち、先ず、これら特許文献におけるCu−Fe−P系銅合金の実質的なFeの含有量は、最低でも0.5%を超えて多い。この点で、これら特許文献の技術は、確かにFeの含有量が多いCu−Fe−P系銅合金の耐熱性向上には有効かもしれない。
しかし、Feの含有量が0.5%を超えて多くなると、導電率やAgメッキ性が低下するという、別の問題が生じる。これに対して導電率を無理に増加させるために、例えば、上記析出粒子の析出量を増やそうとすると、逆に、析出粒子の成長・粗大化を招き、強度や耐熱性が低下する問題がある。言い換えると、これら特許文献の技術では、Cu−Fe−P系銅合金に要求される高強度化と、耐熱性とを兼備させることができない。
したがって、これらの特許文献の技術を、Feの含有量を実質的に0.5%以下と低減した組成によって、高強度化したCu−Fe−P系銅合金にそのまま適用しても、前記したリードフレーム等に要求される様な高レベルの耐熱性を得ることはできない
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、Feの含有量を実質的に0.5%以下と低減した組成によっても、高強度化と優れた耐熱性とを両立させたCu−Fe−P系銅合金板を提供することである。
この目的を達成するための本発明電気電子部品用銅合金板の要旨は、質量%で、Fe:0.01〜0.50%、P:0.01〜0.15%を各々含有する銅合金板であって、板表面の(200)面からのX線回折強度I(200)と(220)から面のX線回折強度I(220)との比、I(200)/I(220)が0.3以下であることとする。
本発明銅合金板は、高強度を達成するために、更に、質量%で0.005〜5.0%のSnを、あるいは、はんだ及びSnめっきの耐熱剥離性改善のために、更に、質量%で0.005〜3.0%のZnを、各々含有しても良い。
本発明銅合金板は、高強度化の目安として、引張強度が500MPa以上、硬さが150Hv以上であることが好ましい。なお、導電率は板の強度に相関するものであり、本発明でいう高導電率とは、高強度な割りには導電率が比較的高いという意味である。
本発明銅合金板は、更に、質量%で、Mn、Mg、Caのうち1種又は2種以上を合計で0.0001〜1.0%含有しても良い。
本発明銅合金板は、更に、質量%で、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptのうち1種又は2種以上を合計で0.001〜1.0%含有しても良い。
本発明銅合金板は、更に、質量%で、Mn、Mg、Caのうち1種又は2種以上を合計で0.0001〜1.0%と、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptのうち1種又は2種以上を合計で0.001〜1.0%とを各々含有するとともに、これら含有する元素の合計含有量を1.0%以下として、含有しても良い。
本発明銅合金板は、更に、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素全体の合計で0.1質量%以下とすることが好ましい。
本発明の銅合金板は、様々な電気電子部品用に適用可能であるが、特に、半導体部品である半導体リードフレーム用途に使用されることが好ましい。
本発明で、上記X線回折強度比、I(200)/I(220)を0.3以下としているのは、Cube方位の発達を抑制するとともに、Cube方位以外の特定の結晶方位の発達を強くし、異方性を強くして、優れた耐熱性を得ようとするからである。更には、Feの含有量を実質的に0.5%以下と低減したCu−Fe−P系銅合金板の組成によっても、高強度化と、優れた耐熱性とを両立させようとするからである。
これに対して、同じX線回折強度比で規定している、前記特許文献4は、I(200)/I(220)を、本発明とは逆に、0.5以上、10以下としている。これは、前記特許文献4では、前記した加工性向上のために、本発明とは逆に、Cube方位を発達させるとともに、Cube方位以外の特定の結晶方位の発達が強くなることを抑制し、異方性を抑制しようとしているからである。これでは、Feの含有量を実質的に0.5%以下と低減したCu−Fe−P系銅合金板の組成において、高強度化と、優れた耐熱性とを両立させることができない。
以下に、半導体リードフレーム用などとして、必要な特性を満たすための、本発明Cu−Fe−P系銅合金板における各要件の意義や実施態様を具体的に説明する。
(X線回折強度比)
本発明のX線回折強度比は、通常のX線回折法を用いて、板表面における、Cube方位である(200)面からのX線回折強度I(200)と、Cube方位以外の方位である(220)から面のX線回折強度I(220)とを測定する。そして、これらのX線回折強度比(X線回折ピーク比)、I(200)/I(220)から求めることができる。
通常の銅合金板の集合組織は、上述のように、かなり多くの方位因子からなるが、これらの構成比率が変化すると板材の塑性異方性が変化し、耐熱性が変化する。そして、その中でも、特にCube方位の方位密度〔D(Cube)ともいう〕と、それ以外の特定の結晶方位密度とを適正範囲に制御することにより、耐熱性が向上する。
このため、本発明では、板表面における、Cube方位である(200)面からのX線回折強度I(200)と、Cube方位以外の方位である(220)から面のX線回折強度I(220)との比、I(200)/I(220)が0.3以下、好ましくは0.25以下であることとする。
これによって、前記した通り、Cube方位の発達を抑制するとともに、Cube方位以外の特定の結晶方位の発達を強くし、異方性を強くして、優れた耐熱性を得ることができる。そして、Feの含有量を実質的に0.5%以下と低減したCu−Fe−P系銅合金板の組成によっても、高強度化と優れた耐熱性とを両立させることができる。
これに対して、I(200)/I(220)が0.3、より厳しくは0.25を越えた場合、前記した通り、特許文献4などと同じとなり、Cube方位が発達し、Cube方位以外の特定の結晶方位の発達が抑制され、異方性が抑制される。このため、Feの含有量を実質的に0.5%以下と低減したCu−Fe−P系銅合金板の組成では、高強度化と優れた耐熱性とを両立させることができなくなる。
(銅合金板の成分組成)
本発明では、半導体リードフレーム用などとして、引張強度が500MPa以上、硬さが150Hv以上、導電率が50%IACS以上である高強度化と優れた耐熱性とを併せて達成する。このために、Cu−Fe−P系銅合金板として、質量%で、Feの含有量が0.01〜0.50%の範囲、前記Pの含有量が0.01〜0.15%の範囲とした、残部Cuおよび不可避的不純物からなる基本組成とする。
この基本組成に対し、Zn、Snの一種または二種を、更に下記範囲で含有する態様でも良い。また、その他の選択的添加元素および不純物元素も、これら特性を阻害しない範囲での含有を許容する。なお、合金元素や不純物元素の含有量の表示%は全て質量%の意味である。
(Fe)
Feは、Fe又はFe基金属間化合物として析出し、銅合金の強度や耐熱性を向上させる主要元素である。Feの含有量が0.01%未満では、製造条件によっては、上記析出粒子の生成量が少なく、導電率の向上は満たされるものの、強度向上への寄与が不足し、強度や耐熱性が不足する。一方、Feの含有量が0.50%を超えると、前記した従来技術のように、導電率やAgメッキ性が低下する。そこで、導電率を無理に増加させるために、上記析出粒子の析出量を増やそうとすると、逆に、析出粒子の成長・粗大化を招く。このため、強度や耐熱性、プレス打ち抜き性などが低下する。したがって、Feの含有量は0.01〜0.50%の比較的低めの範囲とする。
(P)
Pは、脱酸作用がある他、Feと化合物を形成して、銅合金の強度や耐熱性を向上させる主要元素である。P含有量が0.01%未満では、製造条件によっては、化合物の析出が不十分であるため、所望の強度や耐熱性が得られない。一方、P含有量が0.15%を超えると、導電性が低下するだけでなく、却って耐熱性や、熱間加工性、プレス打ち抜き性なども低下する。したがって、Pの含有量は0.01〜0.15%の範囲とする。
(Zn)
Znは、リードフレームなどに必要な、銅合金のはんだ及びSnめっきの耐熱剥離性を改善する。Znの含有量が0.005%未満の場合は所望の効果が得られない。一方、3.0%を超えるとはんだ濡れ性が低下するだけでなく、導電率の低下も大きくなる。したがって、選択的に含有させる場合のZnの含有量は、用途に要求される導電率とはんだ及びSnめっきの耐熱剥離性とのバランスに応じて(バランスを考慮して)、0.005〜3.0%の範囲から選択する。
(Sn)
Snは、銅合金の強度向上に寄与する。Snの含有量が0.001%未満の場合は高強度化に寄与しない。一方、Snの含有量が多くなると、その効果が飽和し、逆に、導電率の低下を招く。したがって、選択的に含有させる場合のSn含有量は、用途に要求される強度(硬さ)と導電率のバランスに応じて(バランスを考慮して)、0.001〜5.0%の範囲から選択して含有させることとする。
(Mn、Mg、Ca量)
Mn、Mg、Caは、銅合金の熱間加工性の向上に寄与するので、これらの効果が必要な場合に選択的に含有される。Mn、Mg、Caの1種又は2種以上の含有量が合計で0.0001%未満の場合、所望の効果が得られない。一方、その含有量が合計で1.0%を越えると、粗大な晶出物や酸化物が生成して、強度や耐熱性を低下させるだけでなく、導電率の低下も激しくなる。したがって、これらの元素の含有量は総量で0.0001〜1.0%の範囲で選択的に含有させる。
(Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Pt量)
これらの成分は銅合金の強度を向上させる効果があるので、これらの効果が必要な場合に選択的に含有される。これらの成分の1種又は2種以上の含有量が合計で0.001%未満の場合、所望の効果か得られない。一方、その含有量が合計で1.0%を越えると、粗大な晶出物や酸化物が生成して、強度や耐熱性を低下させるだけでなく、導電率の低下も激しく、好ましくない。したがって、これらの元素の含有量は合計で0.001〜1.0%の範囲で選択的に含有させる。なお、これらの成分を、上記Mn、Mg、Caと共に含有する場合、これら含有する元素の合計含有量は1.0%以下とする。
(Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタル量)
これらの成分は不純物元素であり、これらの元素の含有量の合計が0.1%を越えた場合、粗大な晶出物や酸化物が生成して強度や耐熱性を低下させる。したがって、これらの元素の含有量は合計で0.1%以下とすることが好ましい。
(製造条件)
次に、銅合金板組織を上記本発明規定の組織とするための、好ましい製造条件について以下に説明する。本発明銅合金板は、上記集合組織を制御した本発明規定の組織とするための、最終冷間圧延条件などの好ましい条件を除き、通常の製造工程自体を大きく変えることは不要で、常法と同じ工程で製造できる。
即ち、先ず、上記好ましい成分組成に調整した銅合金溶湯を鋳造する。そして、鋳塊を面削後、加熱または均質化熱処理した後に熱間圧延し、熱延後の板を水冷する。この熱間圧延は通常の条件で良い。
その後、中延べと言われる一次冷間圧延して、焼鈍、洗浄後、更に仕上げ(最終)冷間圧延、低温焼鈍(最終焼鈍、仕上げ焼鈍)して、製品板厚の銅合金板などとする。これら焼鈍と冷間圧延を繰返し行ってもよい。例えば、リードフレーム等の半導体用材料に用いられる銅合金板の場合は、製品板厚が0.1〜0.4mm程度である。
なお、一次冷間圧延の前に銅合金板の溶体化処理および水冷による焼き入れ処理を行なっても良い。この際、溶体化処理温度は、例えば750 〜1000℃の範囲から選択される。
(最終冷間圧延)
Cu−Fe−P系銅合金板表面の(200)面からのX線回折強度I(200)と(220)から面のX線回折強度I(220)との比、I(200)/I(220)を0.3以下とするためには、最終冷間圧延での圧延速度を大きくするか、最終冷間圧延におけるロールの硬さ(シェア硬さ)を高くする。即ち、最終冷間圧延での圧延速度を200m/min以上に大きくするか、最終冷間圧延におけるロールの硬さ(シェア硬さ)を60Hs以上に高くする、などの手段を選択して使用するか、組み合わせて使用する。
これによって、本発明のようなFe含有量が少ないCu−Fe−P系銅合金板でも、Cube方位の発達を抑制するとともに、Cube方位以外の特定の結晶方位の発達を強くし、異方性を強くして、上記X線回折強度比、I(200)/I(220)を0.3以下とでき、優れた耐熱性を得ることができる。
一方、最終冷間圧延における圧延速度は小さ過ぎる、ロールの硬さが低過ぎると、本発明のようなFe含有量が少ないCu−Fe−P系銅合金板では、特に、Cube方位が発達し、Cube方位以外の特定の結晶方位の発達が抑制され、異方性が抑制される。このため、上記X線回折強度比I(200)/I(220)を0.3以下とできなくなる。
また、前記スタンピング加工におけるプレス打ち抜き性を向上させるためには、最終冷間圧延での導入歪み量を大きくする。即ち、最終冷間圧延における、ロール径を80mmφ未満の小径ロールとするか、1パス当たりの最小圧下率(冷延率、加工率)を20%以上とするか、ロール長さ(ロール幅)を500mm以上とする、などの手段を選択して使用するか、組み合わせて使用することが好ましい。
最終冷間圧延のパス数は、過少や過多のパス数を避けて、通常の3〜4回のパス数で行なうことが好ましい。また、1パス当たりの圧下率は50%を超える必要は無く、1パス当たりの各圧下率は、元の板厚、冷延後の最終板厚、パス数、この最大圧下率を考慮して決定される。
(最終焼鈍)
本発明では、最終冷間圧延後に、低温での最終焼鈍を行なうことが好ましい。この最終焼鈍条件は、100〜400℃で0.2分以上300分以下の低温条件とすることが好ましい。通常のリードフレームに用いられる銅合金板の製造方法では、強度が低下するため、歪み取りのための焼鈍(350℃×20秒程度)を除き、最終冷間圧延後に最終焼鈍はしない。しかし、本発明では、前記冷間圧延条件によって、また、最終焼鈍の低温化によって、この強度低下が抑制される。そして、最終焼鈍を低温で行なうことにより、プレス打ち抜き性が向上する。
焼鈍温度が100℃よりも低い温度や、焼鈍時間が0.2分未満の時間条件、あるいは、この低温焼鈍をしない条件では、銅合金板の組織・特性は、最終冷延後の状態からほとんど変化しない可能性が高い。逆に、焼鈍温度が400℃を超える温度や、焼鈍時間が300分を超える時間で焼鈍を行うと、再結晶が生じ、転位の再配列や回復現象が過度に生じ、析出物も粗大化するため、プレス打ち抜き性や強度が低下する可能性が高い。
以下に本発明の実施例を説明する。最終冷間圧延における圧延速度か、ロールの硬さ(シェア硬さ)を変えて、種々の板表面の上記X線回折強度比I(200)/I(220)を有する銅合金薄板を製造した。そして、これら各銅合金薄板の引張強さ、硬さ、導電率などの特性や、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量で耐熱性を評価した。これらの結果を表1に示す。
具体的には、表1に示す各化学成分組成の銅合金をそれぞれコアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法で造塊して、厚さ70mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を得た。各鋳塊を表面を面削して加熱後、950℃の温度で熱間圧延を行って厚さ16mmの板とし、750℃以上の温度から水中に急冷した。次に、酸化スケールを除去した後、一次冷間圧延(中延べ)を行った。この板を面削後、中間焼鈍を入れながら冷間圧延を4パス行なう最終冷間圧延を行い、次いで350℃で20秒の低温条件で最終焼鈍を行って、リードフレームの薄板化に対応した厚さ0.15mmの銅合金板を得た。
最終冷間圧延の圧延速度、ロールの硬さ(シェア硬さ)を表1に各々示す。なお、最終冷間圧延での使用ロール径は60mm、1パス当たりの最小圧下率は25%とした。
なお、表1に示す各銅合金とも、記載元素量を除いた残部組成はCuであり、その他の不純物元素として、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量は、表1に記載の元素を含めて、これらの元素全体の合計で0.1質量%以下であった。
また、Mn、Mg、Caのうち1種又は2種以上を含む場合は、合計量を0.0001〜1.0質量%の範囲とし、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptのうち1種又は2種以上を場合は、合計量を0.001〜1.0質量%の範囲とし、更に、これらの元素全体の合計量も1.0質量%以下とした。
このようにして得た銅合金板に対して、各例とも、銅合金板から試料を切り出し、各試料の集合組織、引張強さ、硬さ、導電率、耐熱性などの特性を評価した。これらの結果を表1に各々示す。
(集合組織の測定)
銅合金板試料について、リガク製X線回折装置を用いて、ターゲットにCoを用い、管電圧50kV、管電流200mA 、走査速度2°/min、サンプリング幅0.02°、測定範囲(2θ)30°〜115°の条件で、板表面の(200)面からのX線回折強度I(200)と(220)から面のX線回折強度I(220)とを測定し、これらのX線回折強度比、I(200)/I(220)を求めた。測定は2箇所行い、I(200)/I(220)はそれらの平均値とした。
(硬さ測定)
銅合金板試料の硬さ測定は、マイクロビッカース硬度計にて、0.5kg の荷重を加えて4箇所行い、硬さはそれらの平均値とした。
(導電率測定)
銅合金板試料の導電率は、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により算出した。
(耐熱性)
また各供試材の耐熱性は、焼鈍による硬さの低下度合いで評価した。硬さの測定は、最終冷間圧延と最終低温焼鈍を終えた製品銅合金板と、これを500℃で1分間焼鈍後に水冷した板から、各々任意に試験片(幅10mm×長さ10mm)を採取し、松沢精機社製のマイクロビッカース硬度計(商品名「微小硬度計」)を用いて0.5kgの荷重を加えて行った。
表1から明らかな通り、本発明組成内の銅合金である発明例1〜14は、最終冷間圧延の圧延速度、ロールの硬さなどの製造方法も好ましい条件内で製造されている。このため、発明例1〜14は、Cu−Fe−P系銅合金板表面の(200)面からのX線回折強度I(200)と(220)から面のX線回折強度I(220)との比、I(200)/I(220)が0.3以下である。
この結果、発明例1〜14は、引張強さが500MPa以上、硬さが150Hv以上の高強度であって、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量が30Hv以下である優れた耐熱性を有する。
これに対して、比較例15〜17は、本発明組成内の銅合金であるものの、最終冷間圧延における圧延速度が小さ過ぎるか、ロールの硬さが低過ぎる。このため、このため、比較例15〜17は、上記X線回折強度比I(200)/I(220)が上限0.3を大きく超えている。この結果、強度レベルが低く、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量も50Hvを超えており、耐熱性に著しく劣る。
比較例18の銅合金はFeの含有量が0.005%と、下限0.01%を低めに外れている。一方、最終冷間圧延の圧延速度、ロールの硬さなどの製造方法も好ましい条件内で製造されている。このため、上記X線回折強度比I(200)/I(220)が0.3以下であるものの、この結果、強度レベルが低く、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量も40Hvを超えており、耐熱性に著しく劣る。
比較例19の銅合金は、Feの含有量が0.55%と、上限5.0%を高めに外れているが、最終冷間圧延などの製造方法は好ましい条件内で製造されている。このため、上記X線回折強度比I(200)/I(220)が0.3以下であり、耐熱性と導電率が著しく低い。
比較例20の銅合金は、Pの含有量が0.005%と、下限0.01%を低めに外れているが、最終冷間圧延などの製造方法は好ましい条件内で製造されている。このため、上記X線回折強度比I(200)/I(220)が0.3以下であるものの、強度レベルが低く、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量も40Hvを超えており、耐熱性に著しく劣る。
比較例21の銅合金は、Pの含有量が0.17%と、上限0.15%を高めに外れているため、熱延中に板端部に割れが生じた。但し、最終冷間圧延などの製造方法は好ましい条件内で製造されているため、上記X線回折強度比I(200)/I(220)が0.3以下であり、耐熱性と導電率が著しく低い。
以上の結果から、高強度化させた上で、耐熱性にも優れさせるための、本発明銅合金板の成分組成、上記X線回折強度比I(200)/I(220)の臨界的な意義および、このような組織を得るための好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
Figure 2008024995
以上説明したように、本発明によれば、高強度化させた上で、耐熱性にも優れ、これら特性を両立(兼備)させたCu−Fe−P系銅合金板を提供することができる。この結果、小型化及び軽量化した電気電子部品用として、半導体装置用リードフレーム以外にも、リードフレーム、コネクタ、端子、スイッチ、リレーなどの、高強度化と耐熱性とが要求される用途に適用することができる。

Claims (9)

  1. 質量%で、Fe:0.01〜0.50%、P:0.01〜0.15%を各々含有する銅合金板であって、板表面の(200)面からのX線回折強度I(200)と(220)から面のX線回折強度I(220)との比、I(200)/I(220)が0.3以下であることを特徴とする耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板。
  2. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Sn:0.005〜5.0%を含有する請求項1に記載の電気電子部品用銅合金板。
  3. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Zn:0.005〜3.0%を含有する請求項1または2に記載の電気電子部品用銅合金板。
  4. 前記銅合金板の引張強度が500MPa以上、硬さが150Hv以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
  5. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Mn、Mg、Caのうち1種又は2種以上を合計で0.0001〜1.0%含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
  6. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptのうち1種又は2種以上を合計で0.001〜1.0%含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
  7. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Mn、Mg、Caのうち1種又は2種以上を合計で0.0001〜1.0%と、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptのうち1種又は2種以上を合計で0.001〜1.0%とを各々含有するとともに、これら含有する元素の合計含有量を1.0%以下とした請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
  8. 前記銅合金板が、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素全体の合計で0.1質量%以下とした請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
  9. 前記銅合金板が半導体リードフレーム用である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
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