JP2008043128A - 電動機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】2つのロータ間の位相差を変更可能な電動機において、その各ロータに備えた永久磁石の減磁を防止することができる電動機の制御装置を提供する。
【解決手段】電動機3は、それぞれ永久磁石13,14を有する2つのロータ10,11を備え、両ロータ10,11の間の位相差を変更する位相差変更駆動手段15を備える。制御装置50は、電動機3の運転中に、両ロータ10,11の永久磁石13,14の減磁が発生する状況であるか否かを判断する減磁判断手段66と、その判断結果が肯定的であるとき、前記両ロータ10,11間の位相差を、現在の位相差から永久磁石13,14の合成界磁の強さがより高まる位相差に変化させるように位相差変更駆動手段15を制御するロータ間位相差制御手段68を備える。
【選択図】図5

Description

本発明は、永久磁石によりそれぞれ界磁を発生する2つのロータを有し、両ロータ間の位相差を変更可能とした電動機の制御装置に関する。
永久磁石型の電動機においては、同軸に配置された2つのロータのそれぞれに界磁を発生する永久磁石を備えた2重ロータ構造の電動機が従来より知られている(例えば特許文献1を参照)。この種の電動機では、2つのロータは、それらの軸心回りに相対回転可能とされ、その相対回転によって、両ロータ間の位相差を変更可能としている。そして、両ロータ間の位相差を変更することによって、各ロータの永久磁石により発生する界磁を合成してなる合成界磁の強さ(磁束の大きさ)を変化させることが可能となる。
前記特許文献1に見られる電動機では、該電動機の回転速度に応じて機構的に両ロータ間の位相差が変化するようになっている。すなわち、両ロータが遠心力の作用により電動機の径方向に変位する部材を介して接続されている。なお、両ロータのうちの一方のロータは、電動機の発生トルクを外部に出力する出力軸と一体に回転可能とされている。そして、上記部材の変位に伴い、他方のロータが、出力軸と一体に回転可能な一方のロータに対して相対的に回転し、両ロータ間の位相差が変化するように構成されている。この場合、電動機が停止状態にあるときに、両ロータにそれぞれ備えた永久磁石の磁極の向き(磁束の向き)が互いに同一となって、それらの永久磁石の合成界磁の強さが最大となるように、各ロータの永久磁石が配列されている。そして、電動機の回転速度が高くなるに従って、遠心力により両ロータの間の位相差が変化して、両ロータの永久磁石の合成界磁の強さが弱くなる。
特開2002−204541号公報
ところで、前記特許文献1に見られる電動機では、単に出力軸の回転速度に応じて機構的にロータ間の位相差が変更されるだけなので、例えばその出力軸の回転速度が高速となる運転状態では、両ロータ間の位相差は、常に各ロータの永久磁石の界磁を互いに弱め合うような位相差になる。このため、このような運転状態が、長時間にわたって継続すると、各ロータの永久磁石の減磁が発生しやすい。また、各ロータの永久磁石は、その温度が過剰に高温になった場合にも、減磁が発生しやすい。そして、このような減磁が発生すると、電動機の能力が低下し、電動機の所望の運転を行なうことが困難となる恐れがあった。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、2つのロータ間の位相差を変更可能な電動機において、その各ロータに備えた永久磁石の減磁を防止することができる電動機の制御装置を提供することを目的とする。
本発明の電動機の制御装置は、かかる目的を達成するために、永久磁石によりそれぞれ界磁を発生する第1ロータおよび第2ロータと、両ロータのうちの第1ロータと一体に回転可能な出力軸とを互いに同軸に備えると共に、前記第2ロータが前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられ、該第2ロータの相対回転によって両ロータ間の位相差を変更することにより、各ロータの永久磁石の界磁を合成してなる合成界磁の強さを変更可能とした電動機の制御装置であって、前記第1ロータに対する第2ロータの相対回転を行なわせる駆動力を発生するアクチュエータを有する位相差変更駆動手段と、前記電動機の運転中に前記両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かを判断する減磁判断手段と、該減磁判断手段の判断結果が肯定的であるとき、前記両ロータ間の位相差を、現在の位相差から前記合成界磁の強さがより高まる位相差に変化させるように前記位相差変更駆動手段を制御するロータ間位相差制御手段を備えたことを特徴とする(第1発明)。
かかる第1発明によれば、前記位相差変更駆動手段を備えるので、前記両ロータ間の位相差を、該位相差変更駆動手段を介して所望の位相差に制御できる。
そして、第1発明では、前記減磁判断手段により、前記両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であると判断された場合に、前記ロータ間位相差制御手段によって、前記両ロータ間の位相差を、現在の位相差から前記合成界磁の強さがより高まる位相差に変化させるように前記位相差変更駆動手段が制御される。この場合、前記合成界磁の強さがより高まる位相差では、前記第1ロータの永久磁石と第2ロータの永久磁石とが互いの磁束をより強め合うように機能する。これにより、両ロータの永久磁石の減磁の発生を防止することができる。
なお、前記合成界磁の強さがより高まる位相差は、例えば前記合成界磁の強さが最大となる位相差でよいが、該合成界磁の強さが、減磁の発生を防止し得る最小限の強さとなるような位相差であってもよい。
かかる第1発明では、前記減磁判断手段は、例えば、少なくとも前記両ロータの永久磁石の温度、前記電動機の出力トルク、前記電動機の出力軸の回転速度および前記両ロータ間の位相差をそれぞれ表す状態量の値に基づき、両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かを判断する(第2発明)。
すなわち、一般に、永久磁石の温度が高温になるほど、減磁が発生しやすい。また、前記両ロータ間の位相差が、合成界磁の強さが低くなるような位相差である状態において、減磁が発生しやすい。また、電動機の出力トルクが比較的低く、前記出力軸の回転速度が比較的高いものとなる低トルク・高速回転域では、通常、電動機の通電電流に、永久磁石の界磁を弱める方向に機能する界磁電流成分が加えられるので、減磁が発生しやすい。従って、第2発明によれば、永久の磁石の減磁が発生する状況であるか否かを、前記電動機の種々様々の運転状態で適切に判断することが可能となる。
なお、前記両ロータの永久磁石の温度を表す状態量としては、例えばその温度または該温度とほぼ同等の温度の検出値もしくは推定値を使用すればよい。また、電動機の出力トルク(前記出力軸に発生するトルク)を表す状態量としては、例えばその出力トルクの指令値(目標値)や検出値を使用すればよい。また、電動機の出力軸の回転速度を表す状態量としては、例えば該回転速度の検出値または推定値を使用すればよい。また、前記両ロータ間の位相差を表す状態量としては、例えば、該位相差の指令値(目標値)、検出値、もしくは推定値を使用すればよい。
あるいは、前記減磁判断手段は、少なくとも前記電動機の電機子の通電電流のうちの界磁電流成分を表す状態量に基づき、両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かを判断するようにしてもよい(第3発明)。
すなわち、電機子の通電電流の界磁電流成分は、通常、その界磁電流成分によって発生する界磁が前記合成界磁をの強さを低下させる方向に機能する。従って、該界磁電流成分を表す状態量に基づいて、両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かの判断を適切に行なうことが可能となる。
なお、前記界磁電流成分を表す状態量としては、例えば電動機の電機子の通電電流をd−q座標系(永久磁石の界磁方向をd軸、これと直交する方向をq軸として、出力軸と一体に回転する回転座標系)で表現した場合におけるd軸方向の電流の指令値(目標値)、あるいは、d軸方向の電流の検出値を使用すればよい。
前記第2発明では、前記永久磁石の温度を表す状態量として、温度センサによる該温度の検出値を使用してもよいが、例えば電動機の電機子の通電電流の検出値を使用して前記永久磁石の温度を推定することも可能である。そして、このように永久磁石の温度を推定する場合には、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等であるか否かを判断する運転状態判断手段と、該第2運転状態判断手段の判断結果が肯定的であるときに、前記電動機の電機子を短絡するように該電機子の通電回路を制御しつつ、少なくとも該電機子の通電電流の検出値を用いて前記両ロータの永久磁石の温度を推定する磁石温度推定手段とを備え、前記減磁判断手段は、該磁石温度推定手段により推定された永久磁石の温度の推定値を、該永久磁石の温度を表す状態量として用いることが好ましい(第4発明)。
この第4発明によれば、電動機の運転状態が該電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等であるときに、前記電動機の電機子を短絡するように該電機子の通電回路を制御するので、電機子の通電電流を安定的に変化させることができる。なお、電機子の短絡は、各相の電機子を相互に短絡する(より詳しくは、各相の電機子の電圧入力端子を相互に短絡する)ことを意味する。
そして、このように電機子を短絡した状態での電機子の通電電流の検出値を用いて前記磁石温度推定手段により、前記両ロータの永久磁石の温度を推定するので、その推定を適切に行なうことができる。さらに、前記減磁判断手段は、該磁石温度推定手段により推定された永久磁石の温度の推定値を、該永久磁石の温度を表す状態量として用いるので、永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かの判断を適切に行なうことができる。
なお、この第4発明において、前記電機子の短絡は、前記通電回路として例えばインバータ回路を使用した場合、該インバータ回路の上アームおよび下アームのうちのいずれか一方のアームの全てのゲート素子(スイッチング素子)をONにし、他方のアームの全てのゲート素子(スイッチング素子)をOFFすることにより行なうことができる。
また、第4発明において、磁石温度推定手段は、より具体的には、例えば、電動機の電機子の通電電流の複数の検出値を基に、該電機子のコイル抵抗(巻き線抵抗)を推定する。そして、この推定したコイル抵抗の値と、電機子の電流と該電機子の電圧との相関関係とに基づいて、電動機の誘起電圧定数を推定する。さらに、この推定した誘起電圧定数と、該誘起電圧定数の温度特性(誘起電圧定数と永久磁石の温度との相関関係)とに基づいてに基づいて、永久磁石の温度を推定する。
本発明の一実施形態を図1〜図12を参照して説明する。
図1は電動機3の内部構成の要部を該電動機3の軸心方向で示す図、図2は該電動機3の2つのロータの間の位相差を変更するための駆動機構を示すスケルトン図である。なお、図1では駆動機構に関する図示は省略している。
図1を参照して、電動機3は、2重ロータ構造のDCブラシレスモータであり、第1ロータとしての外ロータ10と第2ロータとしての内ロータ11とを出力軸3aと同軸に備える。外ロータ10の外側には、電動機3のハウジング(図示省略)に固定されたステータ12を有し、このステータ12には図示を省略する電機子(3相分の電機子)が装着されている。
外ロータ10は環状に形成されており、その周方向にほぼ等間隔で配列された複数の永久磁石13を備える。この永久磁石13は、長尺の方形板状に形成されており、その長手方向を外ロータ10の軸方向に向け、且つ、法線方向を外ロータ10の径方向に向けた状態で、外ロータ10に埋め込まれている。
内ロータ11も環状に形成されている。この内ロータ11は、その外周面を外ロータ10の内周面に摺接させた状態で、外ロータ10の内側に該外ロータ10と同軸に配置されている。なお、内ロータ11の外周面と外ロータ10の内周面との間に若干のクリアランスが設けられていてもよい。さらに、この内ロータ11の軸心部を、該内ロータ11および外ロータ10と同軸に出力軸3aが貫通している。
また、内ロータ11は、その周方向にほぼ等間隔で配列された複数の永久磁石14を備える。この永久磁石14は、外ロータ10の永久磁石13と同形状で、外ロータ10の場合と同様の形態で、内ロータ11に埋め込まれている。内ロータ11の永久磁石14の個数は、外ロータ10の永久磁石13の個数と同じである。
ここで、図1において、外ロータ10の永久磁石13のうちの白抜きで示す永久磁石13aと、点描を付した永久磁石13bとは、外ロータ10の径方向における磁極の向きが互いに逆になっている。例えば、永久磁石13aは、その外側(外ロータ10の外周面側)の面がN極、内側(外ロータ10の内周面側)の面がS極とされ、永久磁石13bは、その外側の面がS極、内側の面がN極とされている。同様に、内ロータ11の永久磁石14のうちの白抜きで示す永久磁石14aと、点描を付した永久磁石14bとは、内ロータ11の径方向での磁極の向きが互いに逆になっている。例えば、永久磁石14aは、その外側(内ロータ11の外周面側)の面がN極、内側(内ロータ11の内周面側)の面がS極とされ、永久磁石14bは、その外側の面がS極、内側の面がN極とされている。
そして、本実施形態では、外ロータ10においては、互いに隣り合された永久磁石13a,13aの対と、互いに隣り合わされた永久磁石13b,13bの対とが、外ロータ10の周方向に交互に配列されている。同様に、内ロータ11においては、互いに隣り合された永久磁石14a,14aの対と、互いに隣り合わされた永久磁石14b,14bの対とが、内ロータ11の周方向に交互に配列されている。
図2を参照して、外ロータ10は、電動機3の出力軸3aと一体に回転可能なように該出力軸3aに連結されている。そして、内ロータ11は、該外ロータ10および出力軸3aに対して相対回転可能に設けられている。この内ロータ11の相対回転によって、外ロータ10との間の位相差を変更可能とされている。本実施形態では、内ロータ11の相対回転を行なわせる(両ロータ10,11間の位相差を変化させる)ための位相差変更駆動手段として、例えば遊星歯車機構30を有する位相差変更装置15が備えられている。
この位相差変更装置15の遊星歯車機構30は、内ロータ11の内側の中空部に配置されている。該遊星歯車機構30は、本実施形態では、シングルピニオン型のものであり、外ロータ10と一体に回転可能なように該外ロータ10に固定された第1リングギヤR1と、内ロータ10と一体に回転可能なように該内ロータ10に固定された第2リングギヤR2とを内ロータ10および外ロータ11と同軸に備える。両リンクギヤR1,R2は、それらの軸心方向に配列されている。両リングギヤR1,R2の軸心部には、その両者について共通のサンギヤSが設けられ、このサンギヤSを一体に有するサンギヤ軸33が複数のベアリング34により回転自在に支持されている。
サンギヤSと第1リングギヤR1との間には、これらと噛合する複数の第1プラネタリギヤ31が設けられ、これらの第1プラネタリギヤ31が、第1キャリアC1に自転自在に保持されている。この場合、第1キャリアC1は、サンギヤSの軸心まわりに回転可能とされ、該第1キャリアC1の回転によって、各第1プラネタリギヤ31がサンギヤSのまわりで公転可能とされている。
また、サンギヤ33と第2リングギヤR2との間には、これらと噛合する複数の第2プラネタリギヤ32が設けられ、これらの第2プラネタリギヤ32が第2キャリアC2に自転自在に保持されている。この場合、第2キャリアC2は、電動機3のステータ12(あるいはハウジング)に固定され、回転不能とされている。
なお、第1リングギヤR1と第1プラネタリギヤ31とサンギヤSとのギヤ比は、第2リングギヤR2と第2プラネタリギヤ32とサンギヤSとのギヤ比と同じである。
上記のように構成された遊星歯車機構15では、第1キャリアC1を回転不能に保持した状態では、電動機3の出力軸3aおよび外ロータ10が回転すると、これらと同一の回転速度で且つ同方向に内ロータ11が第2リングギヤR2と一体に回転することとなる。従って、内ロータ11が外ロータ10と一体に回転することとなる。そして、第1キャリアC1を回転駆動すると、内ロータ11が外ロータ10に対して相対的に回転することとなる。これにより、内ロータ11と外ロータ10との間の位相差(以下、ロータ間位相差という)が変化するここととなる。
そこで、本実施形態の位相差変更装置15は、電動機もしくは油圧アクチュエータなどのアクチュエータ25(回転駆動力発生源)により、遊星歯車機構30の第1キャリアC1を回転駆動することで、ロータ間位相差を変更する。この場合、アクチュエータ25は、第1キャリアC1と一体に回転可能に設けられた駆動軸35を介して該第1キャリアC1に接続され、該駆動軸35を介して第1キャリアC1に回転力(トルク)を付与するようにしている。
以上が、本実施形態における電動機3とこの電動機3に対する位相差変更装置15の機構的な構成である。
なお、本実施形態では、シングルピニオン型の遊星歯車機構30を使用したが、例えばダブルピニオン型の遊星歯車機構を使用するようにしてもよい。また、本実施形態では、電動機3の出力軸3aと外ロータ10とが一体に回転するように構成したが、電動機3の出力軸3aと内ロータ11とが一体に回転するようにして、これらの出力軸3aおよび内ロータ11に対して外ロータ10が相対回転し得るように構成してもよい。また、位相差変更装置15の構成は、上記した構成に限られるものではない。例えば、内ロータ11の内側にベーンロータなどにより油圧室を形成し、その油圧室の圧力を操作することで、内ロータ11を外ロータ10に対して相対回転させるようにしてもよい。
前記位相差変更装置15によって、内ロータ11を外ロータ10に対して回転させ、ロータ間位相差を変化させることで、内ロータ11の永久磁石14a,14bによって発生する界磁と外ロータ10の永久磁石13a,13bによって発生する界磁との合成界磁の(ステータ12に向かう径方向の界磁)の強さ(合成界磁の磁束の強さ)が変化することとなる。以降、その合成界磁の強さが最大となる状態を界磁最大状態、該合成界磁の強さが最小となる状態を界磁最小状態という。図3(a)は界磁最大状態での内ロータ11と外ロータ10との位相関係を示す図であり、図3(b)は界磁最小状態での内ロータ11と外ロータ10との位相関係を示す図である。
図3(a)に示す如く、界磁最大状態は、内ロータ11の永久磁石14a,14bと、外ロータ10の永久磁石13a,13bとが異極同士を対向させた状態である。より詳しくは、この界磁最大状態では、内ロータ11の永久磁石14aが外ロータ10の永久磁石13aに対向すると共に、内ロータ11の永久磁石14bが外ロータ10の永久磁石13bに対向する。この状態では、径方向において、内ロータ11の永久磁石14a,14bのそれぞれの磁束Q1の向きと、外ロータ10の永久磁石13a,13bのそれぞれの磁束Q2の向きとが同一となるため、それらの磁束Q1,Q2の合成磁束Q3の強さ(合成界磁の強さ)が最大となる。なお、電動機3の運転停止状態で、内ロータ11が自由に回転し得る状態(前記遊星歯車機構30の第1キャリアC1にアクチュエータ25から回転力を付与していない状態)では、通常、ロータ間位相差は、界磁最大状態の位相差で平衡する。
また、図3(b)に示す如く、界磁最小状態は、内ロータ11の永久磁石14a,14bと、外ロータ10の永久磁石13a,13bとが同極同士を対向させた状態である。より詳しくは、この界磁最小状態では、内ロータ11の永久磁石14aが外ロータ10の永久磁石13bに対向すると共に、内ロータ11の永久磁石14bが外ロータ10の永久磁石13aに対向する。この状態では、径方向において、内ロータ11の永久磁石14a,14bのそれぞれの磁束Q1の向きと、外ロータ10の永久磁石13b,13aのそれぞれの磁束Q2の向きとが逆向きとなるため、それらの磁束Q1,Q2の合成磁束Q3の強さ(合成界磁の強さ)が最小となる。
本実施形態では、前記界磁最大状態におけるロータ間位相差を0[deg]、前記界磁最小状態におけるロータ間位相差を180[deg]と定義する。
図4は、前記界磁最大状態と界磁最小状態とにおいて、電動機3の出力軸3aを所定の回転速度で作動させた場合に、ステータ12の電機子に誘起される誘起電圧を比較したグラフである。このグラフの縦軸と横軸とは、それぞれ、誘起電圧[V]、電気角での出力軸3aの回転角度[度]である。参照符号aを付したグラフが、界磁最大状態(ロータ間位相差=0[deg]の状態)でのグラフであり、参照符号bを付したグラフが、界磁最小状態(ロータ間位相差=180[deg]の状態)でのグラフである。図5から判るように、ロータ間位相差を0[deg]と180[deg]との間で変化させることで、誘起電圧のレベル(振幅レベル)を変化させることができる。なお、ロータ間位相差を0[deg]と180[deg]まで増加させていくと、合成界磁の強さが低下していき、これに伴い、誘起電圧のレベルが減少していく。
このようにロータ間位相差を変化させて、界磁の強さを増減させることにより、電動機3の誘起電圧定数を変化させることができる。なお、誘起電圧定数は、電動機3の出力軸3aの角速度と、この角速度に応じて電機子に生じる誘起電圧との関係を規定する比例定数である。誘起電圧定数の値は、ロータ間位相差を0[deg]から180[deg]まで増加させていくに伴い、小さくなる。
補足すると、例えば、前記界磁最小状態でのロータ間位相差(最小界磁位相差)を0[deg]、界磁最大状態でのロータ間位相差(最大界磁位相差)を180[deg]と定義してもよいことはもちろんである。より一般的に言えば、ロータ間位相差の零点は任意に設定してよい。
次に、図5〜図12を参照して、本実施形態における電動機3の制御装置50を説明する。図5は、電動機3の制御装置50(以下、単に制御装置50という)の機能的構成を示すブロック図、図6は該制御装置50に備えた減磁判断部66の処理を説明するための図、図7は制御装置50に備えた位相差指令決定部68の処理を示すフローチャート、図8は図7のSTEP4の処理を説明するための図、図9は制御装置50に備えた短絡判断部64の処理を説明するためのグラフ、図10は制御装置50の温度推定処理部65に関連する処理を示すフローチャート、図11は図10のSTEP53の処理を説明するための図、図12は図10のSTEP62の処理を説明するための図である。なお、図5では、電動機3を模式化して記載している。
図5を参照して、本実施形態の制御装置50は、いわゆるd−qベクトル制御により電動機3の通電を制御する。すなわち、制御装置50は、電動機3を、界磁方向をd軸としてd軸と直交する方向をq軸とする2相直流の回転座標系であるd−q座標系での等価回路に変換して取り扱う。その等価回路は、d軸上の電機子(以下、d軸電機子という)と、q軸上の電機子(以下、q軸電機子という)とを有する。d−q座標系は、電動機3の出力軸3aに対して固定された座標系である。そして、制御装置50は、外部から与えられるトルク指令値Tr_cに応じたトルクを電動機3の出力軸3aから出力させるように電動機3の電機子(3相分の電機子)の通電電流を制御する。また、制御装置50は、この通電制御と並行して、前記位相差変更装置15を介してロータ間位相差を制御する。
これらの制御を行なうために、本実施形態では、センサとして、電動機3の電機子の3相のうちの2つの相、例えばU相およびW相のそれぞれの電流を検出する電流センサ41,42(電流検出手段)と、電動機3の出力軸3aの回転位置θm(回転角度)(=外ロータ10の回転角度)を検出する回転位置検出手段としてのレゾルバ43と、ロータ間位相差θdを検出する位相差検出器44とが備えられている。位相差検出器44は、例えば前記位相差変更装置15のアクチュエータ25による前記第1キャリアC1の回転位置(目標値または検出値)を基に、ロータ間位相差θdを検出する。
制御装置50は、CPU、メモリ等により構成される電子ユニットであり、その制御処理が所定の演算処理周期で逐次実行される。以下に、制御装置50の機能的な手段を具体的に説明する。
制御装置50は、レゾルバ43で検出された回転位置θmを微分することで、電動機3の出力軸3aの回転速度ωm(=外ロータ10の回転速度)を求める回転速度算出部51と、電動機3の各相の電機子の通電電流をインバータ回路45を介して制御する通電制御部52とを備える。インバータ回路45は、周知であるので、その詳細な図示は省略するが、上アームと下アームとに3相分(3個)のスイッチング素子(FETなど)と、各スイッチング素子に並列に接続された還流ダイオードとを有するものである。
なお、インバータ回路45は、本発明における通電回路に相当する。
前記通電制御部52は、前記電流センサ41,42の出力信号から不要成分を除去することで、電動機3の電機子のU相、W相のそれぞれの電流検出値Iu,Iwを得るバンドパスフィルタ53と、該電流検出値Iu,Iwと前記レゾルバ43により検出された電動機3の出力軸3aの回転位置θmとに基づいて、3相−dq変換によりd軸電機子の電流(以下、d軸電流という)の検出値Id_sおよびq軸電機子の電流(以下、q軸電流という)の検出値Iq_sを算出する3相−dq変換部54とを備える。
また、通電制御部52は、d軸電流の指令値であるd軸電流指令値Id_cとq軸電流の指令値であるq軸電流指令値Iq_cとを決定する電流指令算出部55と、d軸電流指令値Id_cを補正する(d軸電流を操作する)ための第1d軸電流補正値Id_1を決定する第1界磁制御部56と、d軸電流指令値Id_cを補正する(d軸電流を操作する)ための第2d軸電流補正値Id_2を決定する位相差追従判定部57と、q軸電流指令値Iq_cを補正する(q軸電流を操作する)ためのq軸電流補正値Iq_aを決定する電力制御部58とを備える。
さらに、通電制御部52は、上記d軸電流指令値Id_cを第1d軸電流補正値Id_1および第2d軸電流補正値Id_2により補正してなる補正後d軸電流指令値Id_ca(=Id_c+Id_1+Id_2)とd軸電流の検出値Id_sとの偏差ΔId(=Id_ca−Id_s)を求める演算部59と、q軸電流指令値Iq_cをq軸電流補正値Iq_aにより補正してなる補正後q軸電流指令値Iq_ca(=Iq_c+Iq_a)とq軸電流の検出値Iq_sとの偏差ΔIq(=Iq_ca−Iq_s)を求める演算部60とを備える。
さらに、通電制御部52は、上記偏差ΔId,ΔIqに応じて、それらの偏差ΔId,Iqを0に近づけるように、PI制御則などのフィードバック制御則により、d軸電圧指令値Vd_c(d軸電機子の電圧の指令値)およびq軸電圧指令値Vq_c(q軸電機子の電圧の指令値)を決定する電流フィードバック制御部(電流FB制御部)61と、このd軸電圧指令値Vdcおよびq軸電圧指令値Vq_cを、前記レゾルバ43により検出された電動機3の出力軸3aの回転位置θmに応じて各相(U相、V相、W相)の交流電圧の指令値Vu_c,Vv_c,Vw_cに変換するdq−3相変換部62と、この交流電圧の指令値Vu_c,Vv_c,Vw_cに応じて、PWM制御によりインバータ回路45のスイッチング素子のON・OFFを制御することにより該インバータ回路45を介して電動機3の各相の電機子の通電電流を制御するPWM演算部63とを備える。
なお、電流フィードバック制御部61では、d軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vq_cとを決定するとき、偏差ΔId,ΔIqからPI制御則などのフィードバック制御則によりそれぞれ求められるd軸電圧指令値、q軸電圧指令値に、d軸とq軸との間で干渉し合う速度起電力の影響を打ち消すための非干渉成分を付加することで、d軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vq_cを求めることが好ましい。
前記電流指令算出部55には、制御装置50に外部から与えられるトルク指令値Tr_c(電動機3の出力軸3aに発生させるトルク(電動機3の出力トルク)の指令値)と、前記回転速度算出部51で求められた回転速度ωmと、前記位相差検出器44で検出されたロータ間位相差θdとが逐次入力される。そして、電流指令算出部55は、これらの入力値から、あらかじめ設定されたマップに基づいて、前記d軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cを決定する。このd軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cは、電動機3の電機子や永久磁石13,14の温度がある基準温度であるときにトルク指令値Tr_cのトルクを電動機3に発生させるためのd軸電流およびq軸電流のフィードフォワード値(基本指令値)としての意味を持つ。
なお、電動機3が、例えばハイブリッド車両や電動車両の走行用動力源として該車両に搭載されたものである場合には、トルク指令値Tr_cは、車両のアクセル操作量(アクセルペダルの踏み込み量)や走行速度に応じて決定される。また、トルク指令値Tr_cには、力行トルクの指令値と回生トルクの指令値とがあり、本実施形態では、力行トルクのトルク指令値Tr_cを正の値、回生トルクのトルク指令値Tr_cを負の値とする。
前記電力制御部58により決定されるq軸電流補正値ΔIq_aは、電動機3の運転時における前記永久磁石13,14の温度変化と電機子の温度変化とが、電動機3の出力トルクに及ぼす影響を補償するためのものである。永久磁石13,14の温度が変化すると、一般には、ロータ間位相差θdが一定であっても電動機3の誘起電圧定数Keが変化し、また、電機子のコイル抵抗R(電機子を構成する巻き線の抵抗)が変化する。このため、q軸電流指令値Iq_cが一定であっても、永久磁石13,14や電機子の温度変化の影響で、電動機3の出力トルクが変化する。そこで、本実施形態では、この影響をq軸電流補正値ΔIq_aにより補償する。このq軸電流補正値ΔIq_aを決定するために、電力制御部58には、後述する磁石温度算出部76で算出(推定)される永久磁石13,14の温度Tm(以下、磁石温度Tmという)と、後述するコイル温度算出部74で算出(推定)される電機子の温度Tc(以下、コイル温度Tc)とが入力される。そして、電力制御部58は、これらの入力値から、例えばあらかじめ設定されたマップに基づいてq軸電流補正値ΔIq_aを決定する。
前記第1界磁制御部56は、d軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vd_cとの合成ベクトルの大きさ(電機子の相電圧)を、制御装置50に外部から与えられる電源電圧Vdc(目標値)に一致させるためのd軸電流の操作量として、前記第1d軸電流補正値Id_1を決定する。なお、電源電圧Vdcは、電動機3の電源としての蓄電器(図示省略)の出力電圧の検出値などに応じて設定される。
この第1d軸電流補正値Id_1を決定するために、第1界磁制御部56には、電流フィードバック制御部61で決定されたd軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_c(前回の演算処理周期で決定された値)と、電源電圧Vdc(目標値)とが入力される。そして、第1界磁制御部56は、入力された電源電圧Vdc(目標値)と、d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cの合成ベクトルの大きさ(=√(Vd_c2+Vq_c2))との偏差に応じて、その偏差を0に近づけるようにフィードバック制御則により第1d軸電流補正値Id_1を決定する。
なお、位相差追従判定部57の処理については、詳細を後述するが、その処理により決定される前記第2d軸電流補正値Id_2は、ロータ間位相差の変更制御の開始直後など、位相差検出器44で検出される実際のロータ間位相差θdが、後述する位相差指令決定部68で決定される位相差指令値θd_cに一致していない状況で、d軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vd_cとの合成ベクトルの大きさ(各相の電機子の相電圧)を、前記電源電圧Vdc(目標値)に一致させるためのd軸電流の操作量を意味する。
補足すると、本実施形態では、電機子の相電圧を電源電圧Vdc(目標値)に一致させるために、基本的には、ロータ間位相差θdを操作する。そして、後述する位相差指令決定部68で決定される位相差指令値θd_cに対する実際のロータ間位相差θdの制御の遅れなどに起因して、位相差指令値θd_cに対して実際のロータ間位相差θdのずれを生じている場合(目標とする合成界磁の強さに対して、実際の合成界磁の強さのずれが生じている場合)に、そのずれを補償するためのd軸電流(界磁電流)の操作量として前記第2d軸電流補正値Id_2が機能する。また、前記第1d軸電流補正値Id_1は、ロータ間位相差θdを操作するだけでは、電機子の相電圧を電源電圧Vdc(目標値)に一致させることができないような場合に、それを補償するためのd軸電流(界磁電流)の操作量として機能する。
以上説明した通電制御部52の機能的手段によって、基本的には電動機3の出力トルクをトルク指令値Tcに従わせるように(ΔId,ΔIqが0に収束するように)、電動機3の各相の電機子の通電電流が制御される。
なお、通電制御部52のPWM演算部63および電流フィードバック制御部61には、電動機3の所定の運転状態で、後述する短絡判断部64から3相短絡指令short_cが一定時間ずつ、間欠的に入力される。そして、PWM演算部63は、3相短絡指令short_cが入力されている期間では、dq−3相変換部62から入力される電機子の各相の交流電圧の指令値Vu_c,Vv_c,Vw_cによらずに、インバータ回路45の上アームおよび下アームのいずれか一方のアームの全てのスイッチング素子(3個のスイッチング素子)をON状態に制御する。このとき、電動機3は、その各相の電機子が相互に短絡される(各相の電機子の電圧入力端子が相互に短絡する)3相短絡状態となる。また、電流フィードバック制御部61は、3相短絡指令short_cが入力されている期間では、3相短絡状態での電動機3の出力トルクの、トルク指令値Tr_cに対する過不足分を補償するように、q軸電圧指令値Vq_c(前記偏差ΔIqに応じてフィードバック制御則により決定されるをVq_c)を修正する。
制御装置50は、前記回転速度算出部51および通電制御部52のほか、電動機3の運転状態が、各相の電機子を相互に短絡させる前記3相短絡状態に移行可能な運転状態であるか否かを判断する短絡判断部64と、電動機3の前記磁石温度Tmおよびコイル温度Tcを算出する(推定する)処理を実行する温度推定処理部65と、該温度推定処理部65により推定された磁石温度Tmなどを基に、電動機3の運転状況が永久磁石13,14の減磁が発生する状況であるか否かを判断する減磁判断部66と、前記d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cの合成ベクトルの大きさ(各相の電機子の相電圧)を前記電源電圧Vdc(目標値)に一致させるための界磁の操作量としての界磁操作電流ΔId_volを決定する第2界磁制御部67と、この界磁操作電流ΔId_volおよび前記減磁判断部66の判断結果などに基づいてロータ間位相差の指令値である位相差指令値θd_cを決定する位相差指令決定部68とを備える。
なお、短絡判断部64は、本発明における運転状態判断手段に相当し、減磁判断部66は、本発明における減磁判断手段に相当し、位相差指令決定部68は、本発明におけるロータ間位相差制御手段に相当する。
ここで、本実施形態では、前記温度推定処理部65は、その処理を概略的に説明すると、電動機3の電機子のコイル抵抗Rを、前記3相短絡状態におけるいずれかの相の電機子、例えばU相の電機子の通電電流の検出値Iu_sを用いて推定する。そして、温度推定処理部65は、この推定したコイル抵抗Rの値を用いて、電機子の温度としてのコイル温度Tcを推定すると共に、電動機3の誘起電圧定数Keを推定する。さらに、温度推定処理部65は、推定した誘起電圧定数Keの値を用いて、磁石温度Tmを推定する。そして、このような推定処理で、3相短絡状態でのU相の電機子の通電電流の検出値Iu_sを使用するために、前記短絡判断部64が備えられている。これらの短絡判断部64および温度推定処理部65の処理の詳細については後述する。
前記減磁判断部66には、本実施形態では、詳細を後述する温度推定処理部65の磁石温度算出部76で算出される磁石温度Tmと、トルク指令値Tr_cと、前記回転速度算出部51で算出された回転速度ωmと、前記位相差検出器44で検出されたロータ間位相差θdとが、それぞれ永久磁石13,4の温度、電動機3の出力トルク、電動機3の出力軸3aの回転速度、およびロータ間位相差を表すパラメータとして逐次入力される。そして、減磁判断部66は、これらの入力値を基に、永久磁石13,14の減磁が発生する状況であるか否かを判断する。
この判断処理は、図6に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて行なわれる。図6は、ロータ間位相差θdの1つの値に対応して設定されたマップを示しており、縦軸をトルク指令値Tr_c、横軸を回転速度ωmとしている。このマップでは、トルク指令値Tr_cが正の値(力行トルク)となる領域と負の値(回生トルク)となる領域とにおいて、それぞれ各別に、永久磁石13,14の減磁が発生する状況であるか否かを判断するための判定曲線(双曲線状の曲線)が複数種類の磁石温度Tmに対応して設定されている。トルク指令値Tr_cが正の値となる領域では、各磁石温度Tmに対応する判定曲線の左側および下側の領域(判定曲線と縦軸と横軸との間の領域で、該判定曲線を含む)が、永久磁石13,14の減磁が発生しないと判断される領域であり、該判定曲線の右側および上側の領域が、減磁が発生すると判断される領域である。同様に、トルク指令値Tr_cが負の値となる領域では、各磁石温度Tmに対応する判定曲線の下側の領域が、永久磁石13,14の減磁が発生すると判断される領域であり、該判定曲線の左側および上側の領域(判定曲線と縦軸と横軸との間の領域で、該判定曲線を含む)が、減磁が発生しない判断される領域であり、該判定曲線の右側および上側の領域が、減磁が発生すると判断される領域である。なお、判定曲線は、磁石温度Tmの値が高くなるほど、縦軸および横軸に近づくように設定されている。従って、磁石温度Tmが高いほど、減磁が発生しないと判断される領域(トルク指令値Tr_cと回転速度ωmとの組に対する領域)が狭くなる。
本実施形態では、図6に示すようなマップが、ロータ間位相差θdの複数種類の値毎に設定されている。この場合、各ロータ間位相差θdにおける判定曲線は、磁石温度Tmを一定とした場合、ロータ間位相差θdが小さいほど(前記合成界磁の強さが高いほど)、減磁が発生しないと判断される領域が広くなる(判定曲線が、縦軸および横軸から遠ざかる)ように設定されている。
前記減磁判断部66は、入力された磁石温度Tmと、ロータ間位相差θdとから、図6で示すようなマップの判定曲線を特定し、その特定した判定曲線に対して、入力されたトルク指令値Tr_cと回転速度ωmとの組が、該判定曲線に対してどちら側の領域にあるかによって、減磁が発生する状況であるか否かを判断する。例えば、入力された磁石温度Tmと、ロータ間位相差θdとに対応する判定曲線が図6の判定曲線hであるとした場合において、入力されたトルク指令値Tr_cと回転速度ωmとの組が図6の点P1で表される場合には、減磁が発生しない状況であると判断される。また、該判定曲線hに対して、入力されたトルク指令値Tr_cと回転速度ωmとの組が図6の点P2で表される場合には、減磁が発生する状況であると判断される。
なお、本実施形態では、電動機3の出力トルクを表す状態量として、トルク指令値Tr_cを使用したが、例えば、該出力トルクの検出値や、前記q軸電流指令値Iq_cもしくはq軸電電流の検出値Iq_sを使用してもよい。また、出力軸3aの回転速度を表す状態量として、適宜の速度センサによる該回転速度の検出値を使用してもよい。また、永久磁石13,14の温度もしくはこれとほぼ同等の温度を検出する温度センサを備えた場合には、その温度の検出値を永久磁石13,14の温度を表す状態量として使用してもよい。また、ロータ間位相差を表す状態量として、モデルなどを使用した適宜の手法により推定したロータ間位相差の値を使用してもよい。
前記第2界磁制御部67には、界磁操作電流Id_volを決定するために、前記第1界磁制御部56と同様に、電動機3の電源電圧Vdc(目標値)と、前記通電制御部52で決定されるd軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vd_qとが逐次入力される。そして、第2界磁制御部67は、入力されたVd_cおよびVd_qの合成ベクトルの大きさ(=√(Vd_c2+Vd_q2))と、電源電圧Vdcとの偏差に応じて、この偏差を0に近づけるようにフィードバック制御則により、界磁操作電流Id_volを決定する。
補足すると、Vd_cおよびVd_qの合成ベクトルの大きさを電源電圧Vdcに一致させる(該合成ベクトルをVdcを半径とする円周にトレースさせる)ためには、d軸電流を調整することで、擬似的にロータ3,4と電機子との間の界磁を操作する手法と、ロータ間位相差θdを調整する(ひいては、誘起電圧定数Keを調整する)ことで、前記永久磁石6,8の合成界磁を直接的に操作する手法とがある。前記界磁操作電流Id_volは、これらの界磁の操作量をd軸電流の操作量で表したものである。
なお、第2界磁制御部67では、界磁操作電流Id_volの代わりに、ロータ間位相差θdまたは誘起電圧定数Keの操作量を決定するようにしてもよい。
前記位相差指令決定部68には、上記の如く第2界磁制御部67で決定された界磁操作電流Id_volが逐次入力されると共に、前記減磁判断部66の判断結果(以下、減磁判断結果ということがある)と、詳細を後述する温度推定処理部65の磁石温度算出部76で算出される磁石温度Tmと、トルク指令値Tr_cと、前記回転速度算出部51で算出された回転速度ωmとが逐次入力される。
そして、位相差指令決定部68は、これらの入力値を基に、図7のフローチャートで示す処理によって、位相差指令値θd_cを決定する。
図7を参照して、位相差指令決定部68は、まず、上記の如く入力される界磁操作電流Id_vol、減磁判断結果、磁石温度Tm、トルク指令値Tr_c、および回転速度ωmを取得する(STEP1)。
次いで、位相差指令決定部68は、減磁判断結果により、減磁が発生する状況であるか否かを判断する(STEP2)。なお、前記減磁判断部66の判断処理を位相差指令決定部68で行なうようにしてもよい。
STEP2の判断結果が否定的である場合(減磁が発生しない状況である場合)には、位相差指令決定部68は、入力された界磁操作電流Id_volに応じて位相差指令値θd_cを決定する(STEP3)。具体的には、界磁操作電流Id_volを、該界磁操作電流Id_volによってd軸電流を操作した場合と同等の界磁変化を生じるロータ間位相差θdの操作量(補正量)に変換し、そのロータ間位相差θdの操作量によって、現在の位相差指令値θd_c(前回の演算処理周期で決定した値)を補正することで、新たな位相差指令値θd_c1(今回値)を決定する。この場合、Id_volからロータ間位相差θdの操作量への変換は、例えば現在の位相差指令値θd_cに応じて設定されるゲインをId_volに乗じることで行なわれる。
一方、STEP2の判断結果が肯定的である場合(減磁が発生する状況である場合)には、位相差指令決定部68は、前記減磁判断部66で使用されるマップ(図6)を基に、入力されたトルク指令値Tr_c、回転速度ωmおよび磁石温度Tmに対して、減磁が発生しないと判断され得るロータ間位相差θdbを検索する(STEP4)。そして、位相差指令決定部68は、その検索したロータ間位相差θdbを位相差指令値θd_cとして決定する(STEP5)。
前記STEP4の処理の具体例を図8を参照して説明する。同図において、現在のロータ間位相差θdがθdaであるとし、現在の磁石温度Tmに対応する前記判定曲線が参照符号haを付した曲線で表されている。また、現在のトルク指令値Tr_cおよび回転速度ωmの組が、図4の点Paであるとする。この場合、減磁判断部66で減磁が発生する状況であると判断されるので、STEP2の判断結果が肯定的になる。
このとき、STEP4では、例えば、現在のトルク指令値Tr_cおよび回転速度ωmの組が、現在の磁石温度Tmに対応する判定曲線hb上の点Pbとなるような、ロータ間位相差θdの値θdbを検索する。このように検索したロータ間位相差θdbは、トルク指令値Tr_c、回転速度ωm、磁石温度Tmが現在値に維持されると共に、実際のロータ間位相差θdがθdbに制御された場合に、前記減磁判断部66によって、減磁が発生しない状況であると判断されるようなロータ間位相差である。
補足すると、磁石温度Tmを一定とした場合、ロータ間位相差θdが小さくなるほど(前記合成界磁の強さが高くなるほど)、減磁が発生しない状況であると判断される領域(トルク指令値Tr_cと回転速度ωmとの組に対する領域)が広くなるので、STEP4で上記の如く検索されるロータ間位相差θdbは、減磁が発生しないようにするための最小のロータ間位相差を意味する。このロータ間位相差θdbは、現在の実際のロータ間位相差θdに対応する合成界磁よりも、より強い合成界磁となるようなロータ間位相差である。
なお、STEP5では、余裕を見込んで、STEP4で上記の如く検索されるロータ間位相差θdbよりも若干、小さいロータ間位相差(例えば、θdbから所定値(>0)を差し引いた値)を、位相差指令値θd_cとして決定するようにしてもよい。
以上が、位相差指令決定部68の処理の詳細である。このように位相差指令決定部68で決定された位相差指令値θd_cは、前記位相差変更装置15に出力される。そして、位相差変更装置15は、入力された位相差指令値θd_cに従って、アクチュエータ25を介してロータ間位相差θdを制御する。すなわち、位相差検出器44で検出されるロータ間位相差θdが位相差指令値θd_cになるようにロータ間位相差が制御される。
上記のように、位相差指令値θd_cを決定することで、減磁が発生しない状況では、前記界磁操作電流Id_volに応じてロータ間位相差θdが制御されることとなる。このため、ロータ間位相差θdは、最大界磁状態となる位相差(=0[deg])と最小界磁状態となる位相差(180[deg])との間で、d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vd_qの合成ベクトルの大きさ(電機子の相電圧)が電源電圧Vdc(目標値)に一致するように制御されることとなる。一方、減磁が発生する状況では、前記した如く位相差指令値θd_cを決定することで、ロータ間位相差θdは、現在のロータ間位相差θdよりも、小さいロータ間位相差に前記位相差変更装置15を介して制御されることとなる。換言すれば、ロータ間位相差θdは、現在のロータ間位相差θdに対応する合成界磁よりも、より高い強さの合成界磁となるロータ間位相差(外ロータ10の永久磁石13の磁束と内ロータ11の永久磁石14の磁束とが相互に強め合う度合いが高まるロータ間位相差)に制御されることとなる。その結果、永久磁石13,14の減磁の発生を防止できることとなる。
ここで、説明を後回しにした前記通電制御部52の位相差追従判定部57の処理を説明しておく。本実施形態では、前記したようにd軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vq_cとの合成ベクトルの大きさが電源電圧Vdc(目標値)になるにようにするために、基本的には、ロータ間位相差θdを調整して、前記永久磁石6,8の合成界磁を操作する。この場合、実際のロータ間位相差θdは、一般に、前記位相差指令値θd_cに対して追従遅れを生じるため、位相差指令値θd_cと、前記位相差推定部74で推定されるロータ間位相差θd_eとが一致していない状況が生じる。そこで、この状況では、実際の合成界磁の過不足分を補償するために、位相差追従判定部57は、d軸電流の操作量としての前記第2d軸電流補正値Id_2を決定する。
この処理を行なうために、位相差追従判定部57には、前記位相差検出器44で検出されたロータ間位相差θdと、前記位相差指令決定部68で決定された位相差指令値θd_cと、前記第2界磁制御部67で決定された界磁操作電流Id_volとが逐次入力される。
そして、位相差追従判定部57は、入力されたロータ間位相差θd(検出値)と、位相差指令値θd_cとが一致しているときには、第2d軸電流補正値ΔId_2の値を0に設定し、一致していない場合には、前記界磁操作電流Id_volをそのまま、第2d軸電流補正値ΔId_2として設定する。このように設定された第2d軸電流補正値ΔId_2が前記演算部59に入力される。
次に、前記短絡判断部64および温度推定処理部65の処理をより詳細に説明する。
まず、短絡判断部64について説明する。短絡判断部64には、トルク指令値Tr_cと、前記回転速度算出部51で算出された電動機3の出力軸3aの回転速度ωmとが入力される。そして、短絡判断部64は、これらの入力値を基に、電動機3の運転状態が、前記3相短絡状態に移行可能な運転状態であるか否かを判断する。この場合、短絡判断部64は、前記PWM演算部63によるインバータ回路45の制御状態を3相短絡状態にした場合と、前記dq−3相変換部62で求められる各相の交流電圧の指令値Vu_c,Vv_c,Vw_cに応じてPWM演算部63によりインバータ回路45を制御した場合とで、電動機3の出力トルクがほぼ同等となるような電動機3の運転状態を、3相短絡状態に移行可能な運転状態であると判断する。換言すれば、3相短絡状態に移行しても、トルク指令値Tr_cとほぼ同等のトルクを電動機3に発生させることが可能な電動機3の運転状態を、3相短絡状態に移行可能な運転状態であると判断する。そして、短絡判断部64は、3相短絡状態に移行可能な状態であると判断したときには、一定時間ずつ、間欠的に前記短絡指令short_cを電流フィードバック制御部61やPWM演算部63に出力する。なお、短絡指令short_cは、温度推定処理部65の後述する電流測定部71にも出力される(図5を参照)。
ここで、前記3相短絡状態で電動機3の出力トルクである短絡トルク値TRQ1は、一般的に、次式(1)により与えられる。
Figure 2008043128

なお、式(1)の右辺のωeは、電動機3の出力軸3aの電気角速度であり、前記回転速度算出部51により算出される回転速度ωmに比例する値(ωmにロータ10,11の極対数を乗じた値)である。また、Ld,Lqはそれぞれd軸電機子のインダクタンス、q軸電機子のインダクタンスである。また、R,Keは、それぞれ前記した通り、コイル抵抗、誘起電圧定数である。
図9は、この式(1)により与えられる短絡トルク値TRQ1と、回転速度ωmとの関係を示すグラフである。図示の如く、短絡トルク値TRQ1は、負のトルク(回生トルク)となり、その値は、回転速度ωmが所定値ωmx以上になると概ね一定値となる(正確にはωmもしくはωeの逆数に比例する)。
そこで、本実施形態では、短絡判断部64は、次の条件1),2),3)が満たされる場合に、電動機3の運転状態が、3相短絡状態に移行可能な運転状態であると判断する。
条件1)トルク指令値Tr_cの一定時間あたりの変化量が微小である(該変化量の絶対値が所定値以下である)
条件2)回転速度ωmが、短絡トルク値TRQ1がほぼ一定となるような回転速度である(回転速度ωmが上記所定値ωmx以上である)
条件3)トルク指令値Tr_cと前記式(1)により求められる短絡トルク値TRQ1との差の絶対値が所定値以下である(TRQ1≒Tr_cである)
この場合、上記条件3)に関する短絡トルク値TRQ1を前記式(1)により求めるために必要なLd,Lq,R,Keの値としては、あらかじめ定められた固定値を使用する。回転速度ωmが所定値ωmx以上の高速域にある状態では、Ld,Lq,R,Keの変化に対する短絡トルク値TRQ1の変化は十分に小さいので、Ld,Lq,R,Keの値を固定値としても、短絡トルク値TRQ1を十分な精度で求めることができる。なお、R,Keの値として、それぞれ後述するR算出部73、Ke算出部75(図5参照)で算出された最新値を使用してもよい。
補足すると、回転速度ωmが所定値ωmx以上であるときの、短絡トルク値TRQ1と回転速度ωmとの関係をあらかじめデータテーブルとして定めておき、そのデータテーブルを基に、回転速度ωm(回転速度算出部51で算出された値)から短絡トルク値TRQ1を決定するようにしてもよい。
次に、前記温度推定処理部65を説明する。温度推定処理部65は、図5に示すように、前記電流センサ41の出力から不要成分を除去することで、電動機3の電機子のU相の電流検出値Iu_sを得るバンドパスフィルタ70と、3相短絡状態において、電流検出値Iu_sをサンプリングする電流測定部71と、電機子のインダクタンスLを算出(推定)するインダクタンス算出部72と、コイル抵抗Rを算出(推定)するR算出部73と、コイル温度Tcを算出(推定)するコイル温度算出部74と、誘起電圧定数Keを算出(推定)するKe算出部75と、磁石温度Tmを算出(推定)する磁石温度算出部76とを備える。
以下にこれらの処理部の具体的な処理を図5並びに図10〜図12を参照して説明する。図10は、コイル温度Tcおよび磁石温度Tmの推定処理に関するフローチャートである。なお、このフローチャートには、温度推定処理部65で実行される処理だけでなく、3相短絡状態で電流フィードバック制御部61およびPWM演算部63で実行される処理も含まれている。
図10を参照して、STEP50で前記短絡判断部64から短絡指令Short_cが出力されると、電流フィードバック制御部61、PWM演算部63、温度推定処理部65により、STEP51以下の処理が実行される。
まず、STEP51の処理がPWM演算部63により実行される。この処理は、電動機3の電機子を3相短絡状態に移行させる処理である。この処理では、PWM演算部63は、インバータ回路45の上アームおよび下アームのいずれか一方の全てのスイッチング素子(3個のスイッチング素子)をONに制御すると共に、他方の全てのスイッチング素子(3個のスイッチング素子)をOFFに制御する。これにより、電動機3の電機子は、3相短絡状態に移行する。
続いて、STEP52の処理が、温度推定処理部65の電流測定部71により実行される。この処理は、コイル抵抗Rを算出するために使用する複数の電流検出値をサンプリングする処理である。具体的には、電流測定部71は、前記バンドパスフィルタ70から入力されるU相電機子の電流検出値Iu_sを一定の時間間隔Δtで3点サンプリングする。以降、この電流検出値Iu_sのサンプリング値を時系列順にI1,I2,I3で表す。なお、本実施形態では、U相電機子の電流検出値Iu_sのサンプリング値I1,I2,I3を使用するが、他の相の電流検出値のサンプリング値を使用するようにしてもよい。
続いて、STEP53の処理が、温度推定処理部65のインダクタンス算出部72により実行される。インダクタンス算出部72には前記図5に示したように、前記電流指令算出部55で決定されるd軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cと、レゾルバ43で検出される電動機3の出力軸3aの回転位置θmとが入力され、STEP53では、これらの入力値を基に、電動機3の電機子のインダクタンスLが算出(推定)される。より詳しくは、インダクタンス算出部72は、図5に示すようにLd,Lq算出部72aと、L算出部72bとを備え、d軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cからLd,Lq算出部72aによりd軸電機子のインダクタンスLdおよびq軸電機子のインダクタンスLqをそれぞれ求める。そして、この求めたLd,Lqと回転位置θとから、電機子のインダクタンスLを求める。
ここで、図11は、このSTEP53の処理(インダクタンス算出部72の処理)を具体的に説明するための図である。図11を参照して、電動機3の電機子(d軸電機子およびq軸電機子を合わせた電機子)のインダクタンスLは、参照符号402のグラフで示すように、LdとLqとの間で、出力軸3aの回転位置θm(回転角度)に対して概ね正弦波状に変化する。また、参照符号400,401のグラフで示すように、d軸電機子のインダクタンスLdおよびq軸電機子のインダクタンスLqは、それぞれ、d軸電流Id、q軸電流と相関性を有する。そこで、本実施形態では、参照符号400,401のグラフをあらかじめマップ化しておく。そして、インダクタンス算出部72は、入力されるd軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cから、それぞれ、マップ400、401により、Ld,Lqを求める。この算出処理が、Ld,Lq算出部72aの処理である。
そして、インダクタンス算出部72は、上記の如く求めたLd,Lqと、入力された回転位置θmとから、次式(2)(図11の参照符号402のグラフを近似する式)により、インダクタンスLを算出する。
Figure 2008043128

以上が、STEP53の処理(インダクタンス算出部72の処理)の詳細である。なお、Ldの変化は比較的小さいので、あらかじめ定めた固定値を使用してもよい。また、Lqは、q軸電流指令値Iq_cの代わりに、トルク指令値Tr_cからあらかじめ設定したマップを使用して求めるようにしてもよい。
STEP53に続いて、STEP54の処理が、温度推定処理部65のR算出部73により実行される。R算出部73には、図5に示したように、インダクタンス算出部72で上記の如く求められたインダクタンスLと、電流測定部71で取得されたサンプリング値I1,I2,I3とが入力される。そして、R算出部73は、これらの入力値から次のようにして、コイル抵抗Rを算出する。
まず、電動機3の電機子をコイル抵抗RとインダクタンスLの直列回路と見なし、この直列回路の瞬時的な電位差をEとおくと、電機子に流れる電流I(t)(t:時刻)の過渡的な推移は、次式(3)により表される。
Figure 2008043128

そして、この式(3)の両辺を時間tで微分して対数(自然対数)をとると、以下の式(4)が得られる。
Figure 2008043128

ここで、前記STEP52で取得された電流値I1,I2,I3のサンプリング時刻をそれぞれt1,t2,t3とし、これらの時刻の時間間隔Δt(=t2−t1=t3−t2)を十分に短い時間間隔に設定しておくことで、上記式(4)により、近似的に次式(5),(6)が得られる。
Figure 2008043128
Figure 2008043128
そして、上記式(5)の各辺と式(6)の各辺との差をとって、式変形を行なうことにより、以下の式(7)が得られる。
Figure 2008043128
そこで、本実施形態では、R算出部73は、入力された電流値I1,I2,I3と、インダクタンスLとから、式(7)により、コイル抵抗Rを算出する。なお、式(7)の演算に必要なΔtはあらかじめ定められた値(固定値)である。
この場合、電流値I1,I2,I3は、前記3相短絡状態における電流値であるので、それらのサンプリング時刻間で、安定した変化を生じる。このため、前記式(7)により、コイル抵抗Rを比較的精度よく求めることが可能である。
次に、STEP55の処理が、前記コイル温度算出部74により実行され、コイル温度Tcが算出される。コイル温度算出部74には、R算出部73により上記の如く算出されたコイル抵抗Rが入力され、このRからコイル温度Tcが算出される。ここで、コイル抵抗Rは、一般に、電機子の温度(コイル温度Tc)に応じて変化し、コイル温度Tcに対して次式(8)の関係を有する。

R=R0・[1+αc・(Tc−T0)] ……(8)

但し、T0は所定の基準温度、R0はこの基準温度T0におけるコイル抵抗Rの値である。また、αcは、コイル抵抗Rの温度に対する変化率である。
そこで、本実施形態では、コイル温度算出部74は、入力されたコイル抵抗Rから、上記式(8)を変形した次式(9)により、コイル温度Tcを算出する。
Figure 2008043128

なお、この式(9)の演算に必要なT0、R0、αcの値は固定値であり、あらかじめ図示しないメモリに記憶保持されている。
以上説明したSTEP52〜STEP55と並行して、STEP60〜STEP62の処理が実行される。STEP60は電流フィードバック制御部61により実行される処理である。この処理では、電流フィードバック制御部61は、3相短絡状態での電動機3の出力トルクの、トルク指令値Tr_cに対する過不足分を補償するように、q軸電圧指令値Vq_c(前記偏差ΔIqに応じてフィードバック制御則により決定されるをVq_c)を修正する。すなわち、前記短絡トルク値TRQ1の絶対値が、トルク指令値Tr_cの絶対値に対して不足している場合には、その不足分に応じてq軸電圧指令値Vq_cを増加させる。また、前記短絡トルク値TRQ1の絶対値が、トルク指令値Tr_cの絶対値に対して大きい場合には、その余剰分に応じて、q軸電圧指令値Vq_cを増加させる。このようにすることにより、3相短絡状態が解除されて通常のPWM制御が再開される際に、電動機3の出力トルクをトルク指令値Tr_cに速やかに追従させることができる。
続いて、STEP61の処理が、前記Ke算出部75により実行される。Ke算出部75には、図5に示したように、回転速度算出部51で求めらられた出力軸3aの回転速度ωmと、前記R算出部73で算出されたコイル抵抗Rと、前記インダクタンス算出部72で求められたd軸電機子のインダクタンスLdと、前記3相−dq変換部54から出力されるd軸電流およびq軸電流の検出値Id_s,Iq_sと、前記電流フィードバック制御部61で決定されたq軸電圧指令値Vq_cとが入力される。そして、Ke算出部75は、これらの入力値から次のように、誘起電圧定数Keを算出する。
電動機3のd軸電圧Vdとq軸電圧Vqとd軸電流Idとq軸電流Iqとの間には、一般に、次の式(10)、(11)の関係式が成立する。

Ke・ωm+R・Iq=Vq−ωm・Ld・Id ……(10)
Vd=R・Id−ωm・Lq・Iq ……(11)

そこで、本実施形態では、Ke算出部75は、上記式(10)を変形した次式(12)により、誘起電圧定数Keを算出する。

Ke=(Vq−ωm・Ld・Id−R・Iq)/ω ……(12)

この場合、式(12)の演算に必要なVq、Ld、Id、Iq、R、ωmの値としては、それぞれ、Ke算出部75に入力されるq軸電圧指令値Vq_c、回転速度ωm、d軸電機子のインダクタンスLd、d軸電流の検出値Id_s、q軸電流の検出値Iq_s、コイル抵抗R、回転速度ωmが使用される。
続いて、STEP62の処理が、磁石温度算出部76により実行され、磁石温度Tmが算出される。磁石温度算出部76には、Ke算出部75で上記の如く算出された誘起電圧定数Keと、位相差検出器44で検出されたロータ間位相差θdとが入力され、これらの入力値から磁石温度Tmが算出される。ここで、誘起電圧定数Keは、一般に、永久磁石13,14の温度(磁石温度Tm)に応じて変化し、磁石温度Tmに対して次式(13)の関係を有する。

Ke=Ke0・[1+αm・(Tm−T0)] ……(13)

但し、T0は所定の基準温度、Ke0は、ロータ間位相差が入力されたロータ間位相差θdであるときの、基準温度T0における誘起電圧定数Keである。また、αmは、誘起電圧定数Keの温度に対する変化率である。
また、基準温度T0における誘起電圧定数Ke0は、ロータ間位相差θdとの間に図12のグラフで示すような相関関係を有する。
そこで、本実施形態では、磁石温度算出部76は、まず、入力されたロータ間位相差θd(検出値)からKe0を求める。この場合、図12に示す相関関係を予めマップ化しておき、このマップに基づいてθd(検出値)から、Ke0を求める。そして、磁石温度算出部76は、この求めたKe0と、入力された誘起電圧定数Keとから、前記式(13)を変形してなる次式(14)により、磁石温度Tmを算出する。
Figure 2008043128

なお、この式(14)の演算に必要なT0、αmの値は固定値であり、あらかじめ図示しないメモリに記憶保持されている。
以上が、本実施形態における温度推定に係わる処理の詳細である。
補足すると、本実施形態では、3相短絡状態以外の電動機3の運転状況では、電流測定部71の処理は実行されないが、R算出部73は、例えば最新の3相短絡状態で求めたコイル抵抗Rの値を継続的に出力する。そして、コイル温度算出部74、前記Ke算出部75、磁石温度算出部76、およびインダクタンス算出部72の前記した処理が、逐次実行される。
なお、前記電流FB制御部61、PWM演算部63、および温度推定処理部65による前記した図9のフローチャートの処理によって、本発明における磁石温度推定手段が構成される。
以上説明したように、本実施形態では、永久磁石13,14の減磁が発生する状況であるか否かを判断し、減磁が発生する状況である場合には、ロータ間位相差θdを前記合成界磁の強さが高まる位相差θdbに制御するようにしたので、永久磁石13,14の減磁の発生を防止できる。また、その減磁の発生の有無の判断に用いる磁石温度Tmを、前記3相短絡状態おける電機子の1つの相(本実施形態ではU相)の電流検出値を基に算出されるコイル抵抗Rを用いて推定するので、該磁石温度Tmを適切に推定できる。そして、この磁石温度Tmを用いることで、減磁の発生の有無を高い信頼性で適切に判断することができる。
なお、本実施形態では、磁石温度Tmを上記の如く推定したが、該磁石温度Tmまたはこれとほぼ同等の温度を、温度センサを使用して検出するようにしてもよい。同様に、コイル温度Tcまたはこれとほぼ同等の温度を、温度センサを使用して検出するようにしてもよい。両者を検出するようにした場合には、短絡判断部64や温度推定処理部65は省略してよい。あるいは、磁石温度Tmおよびコイル温度Tcのいずれか一方の温度(またはこれとほぼ同等の温度)を検出し、他方の温度を適当なモデル(熱伝達モデル)などを使用して推定するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、前記減磁判断部66において、磁石温度Tmなどを基に、減磁の発生の有無を判断したが、電機子の通電電流のうちの界磁電流成分を表す状態量に基づいて、減磁の発生の有無を判断するようにしてもよい。具体的には、例えば、前記界磁電流成分を表す状態量として、前記d軸電流指令値Id_cまたはd軸電流の検出値Id_sを用い、そのId_cまたはId_sの大きさ(絶対値)が所定値以上となる時間を計時する。そして、その計時時間が、あらかめ定めた所定時間を超えたときに、減磁が発生する状況であると判断する。また、該計時時間が、所定時間以下であるときには、減磁が発生しない状況であると判断する。
あるいは、例えば、d軸電流指令値Id_cまたはd軸電流の検出値Id_sの大きさ(絶対値)、または、これに比例する値を積分(累積加算)し、その積分値が、あらかじめ定めた所定値を超えたときに、減磁が発生する状況であると判断する。また、該積分値が、所定値以下であるときには、減磁が発生しない状況であると判断する。
d軸電流は、通常、それによって発生する界磁が永久磁石13,14の合成界磁を弱めるように機能するので、上記のように減磁の発生の有無を判断することで、その判断を適切に行なうことができる。
本発明の一実施形態における電動機の内部構成の要部を該電動機の軸心方向で示す図。 図1の電動機の2つのロータの間の位相差を変更するための駆動機構を示すスケルトン図。 図3(a)は界磁最大状態での図2の電動機の2つのロータ位相関係を示す図であり、図3(b)は界磁最小状態での図2の電動機の2つのロータの位相関係を示す図。 界磁最大状態と界磁最小状態とにおける図2の電動機の電機子の誘起電圧を示すグラフ。 実施形態における電動機の制御装置の機能的構成を示すブロック図。 図5の制御装置に備えた減磁判断部66の処理を説明するための図。 図5の制御装置に備えた位相差指令決定部68の処理を示すフローチャート。 図7のSTEP4の処理を説明するための図。 図5の制御装置50に備えた短絡判断部64の処理を説明するためのグラフ。 図5の制御装置50に備えた温度推定処理部65に関連する処理を示すフローチャート。 図10のSTEP53の処理を説明するための図。 図10のSTEP62の処理を説明するための図。
符号の説明
3…電動機、3a…出力軸、10…外ロータ(第1ロータ)、11…内ロータ(第2ロータ)、13,14…永久磁石、15…位相差変更装置(位相差変更駆動手段)、45…イナンバータ回路(通電回路)、50…制御装置、61…電流フィードバック制御部(磁石温度推定手段)、63…PWM演算部(磁石温度推定手段)、65…温度推定処理部(磁石温度推定手段)、66…減磁判断部(減磁判断手段)、68…位相差指令決定部(ロータ間位相差制御手段)。

Claims (4)

  1. 永久磁石によりそれぞれ界磁を発生する第1ロータおよび第2ロータと、両ロータのうちの第1ロータと一体に回転可能な出力軸とを互いに同軸に備えると共に、前記第2ロータが前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられ、該第2ロータの相対回転によって両ロータ間の位相差を変更することにより、各ロータの永久磁石の界磁を合成してなる合成界磁の強さを変更可能とした電動機の制御装置であって、
    前記第1ロータに対する第2ロータの相対回転を行なわせる駆動力を発生するアクチュエータを有する位相差変更駆動手段と、
    前記電動機の運転中に前記両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かを判断する減磁判断手段と、
    該減磁判断手段の判断結果が肯定的であるとき、前記両ロータ間の位相差を、現在の位相差から前記合成界磁の強さがより高まる位相差に変化させるように前記位相差変更駆動手段を制御するロータ間位相差制御手段を備えたことを特徴とする電動機の制御装置。
  2. 前記減磁判断手段は、少なくとも前記両ロータの永久磁石の温度、前記電動機の出力トルク、前記電動機の出力軸の回転速度および前記両ロータ間の位相差をそれぞれ表す状態量の値に基づき、両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の電動機の制御装置。
  3. 前記減磁判断手段は、少なくとも前記電動機の電機子の通電電流のうちの界磁電流成分を表す状態量に基づき、両ロータの永久磁石の減磁が発生する状況であるか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の電動機の制御装置。
  4. 前記電動機の運転状態が該電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等であるか否かを判断する運転状態判断手段と、該第2運転状態判断手段の判断結果が肯定的であるときに、前記電動機の電機子を短絡するように該電機子の通電回路を制御しつつ、少なくとも該電機子の通電電流の検出値を用いて前記両ロータの永久磁石の温度を推定する磁石温度推定手段とを備え、前記減磁判断手段は、該磁石温度推定手段により推定された永久磁石の温度の推定値を、該永久磁石の温度を表す状態量として用いることを特徴とする請求項2記載の電動機の制御装置。
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