JP2008196635A - 固定式等速自在継手 - Google Patents

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久昭 藏
Makoto Tomoue
真 友上
Tomoshige Kobayashi
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Teruaki Fujio
輝明 藤尾
Takeshi Obara
健 小原
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Abstract

【課題】ボールとトラック溝間に潤滑剤を十分介在させて摩擦力の低減を図り、トルク伝達効率を向上させる。
【解決手段】軸方向に延びる複数のトラック溝11が形成された外輪12と、内輪15と、内外輪15,12間に介在してトルクを伝達する複数のボール16と、ボール16を保持するケージ17とを備え、内外輪15,12のトラック溝14,11の曲率中心が継手中心に対して等距離だけ軸方向逆向きにオフセットされ、ボール16の表面に多数の微小凹部をランダムに形成すると共に、内外輪15,12のトラック溝14,11によるボールトラックにおけるPCDすきま(2×m)を25μm以上、内輪15の外球面13とケージ17の内球面19との間の球面すきま(2×n1)を40μm以上、ケージ17の外球面18と外輪12の内球面10との間の球面すきま(2×n2)を40μm以上とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用されるもので、駆動側と従動側の二軸間で作動角度変位のみを許容する固定式等速自在継手に関する。
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手の一種に固定式等速自在継手がある。この固定式等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。一般的に、前述した固定式等速自在継手としては、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)が広く知られている。
図15および図16と図17および図18は、例えばバーフィールド型の等速自在継手の二例を例示する。これら等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝111が内球面110の円周方向等間隔に形成された外側継手部材としての外輪112と、外輪112のトラック溝111と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝114が外球面113の円周方向等間隔に形成された内側継手部材としての内輪115と、外輪112のトラック溝111と内輪115のトラック溝114との間に介在してトルクを伝達する複数のボール116と、外輪112の内球面110と内輪115の外球面113との間に介在してボール116を保持するケージ117とを備えている。
この等速自在継手におけるトラック溝111,114は、軸方向の縦断面が単一の円弧面形状を有する。外輪112のトラック溝111の曲率中心O1および内輪115のトラック溝114の曲率中心O2は、ボール中心O3を含む継手中心Oに対して等距離F,fだけ軸方向に逆向きにオフセットされている(トラックオフセット)。なお、外輪112の内球面110(ケージ117の外球面118)の曲率中心および内輪115の外球面113(ケージ117の内球面119)の曲率中心は前述の継手中心Oと一致している。このように、トラックオフセットを設けることにより、一対のトラック溝111,114が外輪112の奥側から開口側に向けて、径方向間隔が徐々に増加する楔状にボールトラックを形成している。
この種の等速自在継手を、例えば自動車のドライブシャフトに使用した場合、外輪112を従動軸に連結し、内輪115に車体側のディファレンシャルに取り付けられた摺動式等速自在継手から延びる駆動軸をスプライン嵌合で連結した構造が一般的である。この等速自在継手では、外輪112と内輪115との間に作動角が付与されると、ケージ117に収容されたボール116は常にどの作動角においても、その作動角の二等分面内に維持され、継手の等速性が確保される。
複数のボール116は、ケージ117に形成されたポケット120に収容されて円周方向等間隔に配置されている。図15および図16に示す等速自在継手は6個のボール116を備えた構造を具備し、図17および図18に示す等速自在継手は8個のボール116を備えた構造を具備する。8個ボールタイプの等速自在継手では、6個ボールタイプの等速自在継手よりも、ボール径を小さく(d<D)、かつ、トラックオフセットを小さくすることにより(f<F)、高効率でコンパクトな等速自在継手を実現している。
図19は6個ボールタイプの等速自在継手が作動角(例えば40°)をとった状態を示し、同様に、図20は8個ボールタイプの等速自在継手が作動角(例えば40°)をとった状態を示す。図19の破線で示すように、L6INはアンギュラ接触による内輪115とボール116の接触点軌跡、L6OUTはアンギュラ接触による外輪112とボール116の接触点軌跡を示す。また、図20の破線で示すように、L8INはアンギュラ接触による内輪115とボール116の接触点軌跡、L8OUTはアンギュラ接触による外輪112とボール116の接触点軌跡を示す。
図20に示す8個ボールタイプの等速自在継手では、図21に示すように、ボール径を小さくしたことにより、内輪115とボール116の接触点軌跡L8INの長さ、および外輪112とボール116の接触点軌跡L8OUTの長さが6個ボールタイプの等速自在継手よりも短くなり(L8IN<L6IN,L8OUT<L6OUT)、外輪112のトラック溝111とボール116間での滑り速度が減少し、トルク伝達効率が向上する。
また、8個ボールタイプの等速自在継手では、図21に示すようにトラックオフセットを小さくしたことにより(f<F)、内輪115とボール116の接触点軌跡L8INの長さ、および外輪112とボール116の接触点軌跡L8OUTの長さが6個ボールタイプの等速自在継手よりも短くなり(L8IN<L6IN,L8OUT<L6OUT)、外輪112のトラック溝111とボール116間での滑り速度が減少し、トルク伝達効率が向上する。
また、8個ボールタイプの等速自在継手(図17参照)では、トラックオフセットを小さくしたことにより、ボール116のトラック溝111,114に対する挟み角γ8が6個ボールタイプの等速自在継手(図15参照)よりも小さくなり(γ8<γ6)、ボール116を軸方向で外輪開口側へ押し出す力M8が減少する(M8<M6)。
ここで、ボール116のトラック溝111,114に対する挟み角γ6,γ8とは、外輪112のトラック溝111および内輪115のトラック溝114とボール116との各接触点(図15および図17の破線参照)における軸線方向の2接線がなす角度を意味する。なお、図15および図17において、ボール116内の破線は、アンギュラ接触によるボール116とトラック溝111,114との接触点軌跡を示している。
このボール116を軸方向で外輪開口側へ押し出す力M8はケージ117に伝達され、その結果、8個ボールタイプの等速自在継手では、ケージ117の外球面118と外輪112の内球面110およびケージ117の内球面119と内輪115の外球面113との球面力が6個ボールタイプの等速自在継手よりも減少し、その球面接触部での摩擦損失(発熱)が少なくなり、トルク伝達効率が向上する(例えば、特許文献1,2参照)。
さらに、この等速自在継手の作動性を確保するためには、各部にすきまを設定する必要があり、例えば、PCD(ピッチ円直径)すきまや球面すきまを適正値に設定する必要がある(例えば、特許文献3,4参照)。
ここで、PCDすきまとは、外輪112のトラック溝111に接触した状態でのボール116のPCD(外輪PCD)と、内輪115のトラック溝114に接触した状態でのボール116のPCD(内輪PCD)との差を意味する。また、球面すきまとは、内輪115の外球面113とケージ117の内球面119との間のすきま、あるいはケージ117の外球面118と外輪112の内球面110との間のすきまを意味する。
PCDすきまは、内輪115のトラック溝114および外輪112のトラック溝111の加工精度、作動性、使用トルクでのトラック溝111,114からのボール116の乗り上げによる損傷や、トラック溝111,114での摩擦抵抗による発熱および疲労耐久性などを考慮して設定されている。また、球面すきまも同様に、内輪115の外球面113および外輪112の内球面110の加工精度、作動性、組み込み性などを考慮して設定されている。
特許第3460107号公報 特開平9−317784号公報 特開2002−323061号公報 特開2005−188620号公報
ところで、前述した特許文献1〜4に開示された8個ボールタイプの等速自在継手では、ボール径やトラックオフセットを小さくしたり、あるいは、PCDすきまや球面すきまを適正値に設定することにより、等速自在継手における各種継手機能を向上を図っている。
つまり、特許文献1では、ボールのピッチ円直径と直径との比を3.3〜5.0の範囲に規定することにより、等速自在継手のコンパクト化と同時に、6個ボールタイプの等速自在継手と同等以上の強度、負荷容量および耐久性を確保するようにしている。また、特許文献2では、トラックオフセット量と、外輪のトラック溝の中心または内輪のトラック溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さとの比を0.069〜0.121の範囲に規定することにより、等速自在継手のコンパクト化と同時に、6個ボールタイプの等速自在継手と同等以上の強度、負荷容量、耐久性および作動角を確保するようにしている。
一方、特許文献3では、ボールトラックにおけるPCDすきまを5〜50μmの範囲に規定することにより、高負荷時、ボールとトラック溝との接触楕円がトラック溝から食み出しにくくなり、欠けやフレーキングの発生を抑制することが容易となって耐久性の向上を図るようにしている。また、特許文献4では、ケージの内球面と内輪の外球面との間の球面すきま×1000とケージ基準内径(内輪基準外径)との比を0.9〜2.3の範囲に規定することにより、継手の作動角が変化する時に発生する折り曲げ方向荷重を小さくするようにしている。
しかしながら、8個ボールタイプの等速自在継手では、前述した特許文献1〜4で開示されているように、ボール径やトラックオフセットを小さくしたり、あるいは、PCDすきまや球面すきまを適正値に設定することにより、等速自在継手における各種継手機能を向上を図っているが、8個ボールタイプの等速自在継手において、その構成を大きく変更することなく、さらにトルク伝達効率を向上させることが要望されている。
また、この種の等速自在継手では、ボールとトラック溝との間の摩擦を低減して、トルク伝達効率を向上させるため、一般的に外輪の内部に潤滑剤が封入されている。しかし、継手回転時、ボールとトラック溝との接触部には大きな押圧力が作用するので、その接触部には潤滑剤の油膜層を形成しにくく、摩擦力低減効果を十分発揮することは困難であった。
そこで、本発明の目的は、構成を大きく変更することなく、ボールとトラック溝間に潤滑剤を十分介在させて摩擦力の低減を図り、トルク伝達効率をより一層向上させ得る固定式等速自在継手を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、軸方向に延びる複数のトラック溝が内球面に形成され、内部に潤滑剤が充填された外側継手部材と、外側継手部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外球面に形成された内側継手部材と、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備え、外側継手部材のトラック溝の曲率中心および内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットされた固定式等速自在継手において、ボールの表面に多数の微小凹部をランダムに形成すると共に、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで形成されたボールトラックにおけるPCDすきまを25μm以上、内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきまを40μm以上、ケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを40μm以上としたことを特徴とする。なお、ボールの個数、外側継手部材のトラック溝数および内側継手部材のトラック溝数は、8個であることが望ましい。
ここで、PCDすきまとは、外側継手部材のトラック溝に接触した状態でのボールのPCD(外側継手部材PCD)と、内側継手部材のトラック溝に接触した状態でのボールのPCD(内側継手部材PCD)との差を意味する。また、球面すきまとは、内側継手部材の外球面とケージの内球面との間のすきま、あるいはケージの外球面と外側継手部材の内球面との間のすきまを意味する。
本発明では、ボールの表面に多数の微小凹部をランダムに形成したことにより、継手回転時に、ボールとトラック溝相互間に押圧力が作用した場合であっても、ボール表面の多数の微小凹部内へ侵入した潤滑剤が、ボールとトラック溝との接触界面に介在して良好な油膜層を形成し得る。これにより、ボールとトラック溝相互間に生じる摩擦を低減させることができる。
なお、前述の潤滑剤の摩擦係数は0.07以下とすることが望ましい。また、潤滑剤としては、稠度が0〜2号のウレアグリースを使用することが望ましい。このような潤滑剤を使用すれば、ボールとトラック溝相互間に生じる摩擦を効果的に低減させ得る。
また、多数の微小凹部を形成したボールの表面粗さをRa0.03〜0.6μm、好ましくはRa0.05〜0.15μmとし、ボールの表面粗さのパラメータSK値を−1.0以下、好ましくは−4.9〜−1.0とし、ボールの表面積に対する微小凹部の合計面積の比率を10〜40%とすることが望ましい。このような値に設定すれば、ボール表面の微小凹部に潤滑剤を適度に侵入させて保持することができ、ボールとトラック溝との間に潤滑剤による油膜層を形成することができる。これにより、ボールとトラック溝相互間の摩擦を効果的に低減させることが可能となる。
本発明では、ボールトラックにおけるPCDすきまを25μm以上、好ましくは、40〜85μmとしたことにより、つまり、従来よりもPCDすきまを大きく設定することにより、回転トルクの伝達時、ボールトラックの非負荷側部位へのボールの接触を減らすことができるので、ボールトラックの非負荷側部位へのボール接触による伝達トルクの損失を低減できる。
さらに、内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきま、およびケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを40μm以上、好ましくは、50〜120μmとしたことにより、つまり、従来よりも球面すきまを大きく設定したことにより、内側継手部材の外球面とケージの内球面との球面接触、およびケージの外球面と外側継手部材の内球面との球面接触を減少させることができるので、その球面接触による摩擦発熱を低減でき、その摩擦発熱に起因する伝達トルクの損失を低減できる。なお、この球面すきまは、PCDすきまを考慮して球面接触を確実に減少させるように設定する必要がある。
また、本発明では、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に位置するボールのトラック溝に対する挟み角γ8を8.5〜12.5°、ボールのトラック溝に対する接触角α8を30〜38°とすることが望ましい。
ここで、ボールのトラック溝に対する挟み角γ8(図1参照)とは、外側継手部材12のトラック溝11および内側継手部材15のトラック溝14とボール16との各接触点(図1の破線参照)における軸線方向の2接線がなす角度を意味し、また、ボール16のトラック溝11,14に対する接触角α8(図3参照)とは、ボール中心O3と各接触点(図中、すきまを誇張)を通る直線Pとボール中心O3と継手中心Oを通る直線Qがなす角度を意味する。
このように、ボールのトラック溝に対する挟み角γ8を8.5〜12.5°とすれば、トルク伝達時のボールに作用する軸方向の押し出し力を小さくすることができる。これに伴って、保持器と両継手部材相互間の接触面圧を抑え、摩擦を低減させることができ、回転トルクの損失を軽減することが可能となる。また、ボールのトラック溝に対する接触角α8を30〜38°とすれば、高トルク入力時のトラック溝エッジ部へのボールの乗り上げ耐久性、外輪のトラック溝とボールの滑り量の低減、転動疲労寿命に影響のある接触面圧を良好な範囲とすることができる。
なお、本発明は、軸方向の縦断面が単一の円弧面形状を有するトラック溝を持つ外側継手部材および内側継手部材を具備したバーフィールド型の固定式等速自在継手(BJ)や、軸方向と平行なストレート底を有するトラック溝を持つ外側継手部材および内側継手部材を具備したアンダーカットフリー型の固定式等速自在継手(UJ)のいずれにも適用可能である。
本発明によれば、ボールの表面に多数の微小凹部をランダムに形成したことにより、ボールとトラック溝との間に潤滑剤による油膜層が形成されやすく、これにより、ボールとトラック溝相互間の摩擦を低減させてトルク伝達効率を向上させることが可能となる。また、ボールおよびトラック溝の転動疲労寿命を長くすることができる。
また、ボールトラックにおけるPCDすきまを25μm以上としたことにより、回転トルクの伝達時、ボールトラックの非負荷側部位へのボールの接触を減らすことができるので、ボールトラックの非負荷側部位へのボール接触による伝達トルクの損失を低減できる。
さらに、内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきま、およびケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを40μm以上としたことにより、内側継手部材の外球面とケージの内球面との球面接触、およびケージの外球面と外側継手部材の内球面との球面接触を減少させることができるので、その球面接触による摩擦発熱を低減でき、その摩擦発熱に起因する伝達トルクの損失を低減できる。
このように、ボール表面に多数の微小凹部を形成すると共に、PCDすきまおよび球面すきまを適正値の範囲に設定することにより、ボール接触および摩擦発熱による伝達トルクの損失を低減することができるので、等速自在継手の構成を大きく変更することなく、ボールとトラック溝間に潤滑剤を十分介在させて摩擦力の低減を図り、その等速自在継手におけるトルク伝達効率を向上させることができる。
本発明に係る固定式等速自在継手の実施形態を詳述する。図1および図2に示す実施形態は、軸方向の縦断面が単一の円弧面形状を有するトラック溝を持つ外側継手部材および内側継手部材を具備したバーフィールド型の固定式等速自在継手(BJ)を例示する。なお、本発明は、図14に示すように、軸方向と平行なストレート底を有するトラック溝21,24を持つ外側継手部材および内側継手部材を具備したアンダーカットフリー型の固定式等速自在継手(UJ)についても適用可能であり、図1と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。また、これらバーフィールド型やアンダーカットフリー型以外のトラック溝形状を有する他の固定式等速自在継手にも適用可能である。
図1および図2に示す8個ボールタイプの固定式等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝11が内球面10の円周方向等間隔に形成された外側継手部材としての外輪12と、外輪12のトラック溝11と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝14が外球面13の円周方向等間隔に形成された内側継手部材としての内輪15と、外輪12のトラック溝11と内輪15のトラック溝14との間に介在してトルクを伝達する8個のボール16と、外輪12の内球面10と内輪15の外球面13との間に介在してボール16を保持するケージ17とを備えている。
この等速自在継手におけるトラック溝11,14は、軸方向の縦断面が単一の円弧面形状を有する。外輪12のトラック溝11の曲率中心O1および内輪15のトラック溝14の曲率中心O2は、ボール中心O3を含む継手中心Oに対して等距離fだけ軸方向に逆向きにオフセットされている(トラックオフセット)。なお、外輪12の内球面10(ケージ17の外球面18)の曲率中心および内輪15の外球面13(ケージ17の内球面19)の曲率中心は前述の継手中心Oと一致している。このように、トラックオフセットを設けることにより、一対のトラック溝11,14が外輪12の奥側から開口側に向けて、径方向間隔が徐々に増加する楔状にボールトラックを形成している。
図3は、外輪12と、内輪15と、外輪12トラック溝11と内輪15のトラック溝14間に配置されたボール16と、外輪12の内球面10と内輪15の外球面13間に配されたケージ17とを示す横断面である。同図に示すようにトラック溝11,14の横断面形状は、ボール16の半径(d/2)よりも大きな曲率半径Rで形成されたゴシックアーチ状をなす。このトラック溝11,14の横断面形状をゴシックアーチ状としたことにより、ボール16はトラック溝11,14のそれぞれに対して二点で接触するアンギュラ接触となっている。
なお、図3では、PCDすきまや球面すきまを説明するための都合上、ボール16と外輪12のトラック溝11および内輪15のトラック溝14とが接触せず、また、ケージ17の外球面18と外輪12の内球面10およびケージ17の内球面19と内輪15の外球面13とが接触していない状態で、各すきまを誇張して示しているが、回転トルクの負荷時には、ボール16と外輪12のトラック溝11および内輪15のトラック溝14とが接触し、また、ケージ17の外球面18と外輪12の内球面10およびケージ17の内球面19と内輪15の外球面13とが接触する。
この等速自在継手の作動性を確保するためには、各部にすきまを設定する必要があり、例えば、PCD(ピッチ円直径)すきまや球面すきまを適正値に設定する必要がある。また、ボールトラックでのボール16の移動を良好にするため、ボール16のトラック溝11,14に対する挟み角γ8(図1参照)および接触角α8(図3参照)を適正値に設定する必要がある。
ここで、図3に示すように、すきまmは、外輪12のトラック溝11に接触した状態でのボール16の外輪PCR(外輪PCDの1/2)と、内輪15のトラック溝14に接触した状態でのボール16の内輪PCR(内輪PCDの1/2)との差であり、PCDすきまは、半径方向のすきまmの二倍となる。また、すきまn1は、内輪15の外球面13の半径とケージ17の内球面19の半径との差であり、すきまn2は、ケージ17の外球面18の半径と外輪12の内球面10の半径との差であり、球面すきまは、半径方向のすきまn1,n2の二倍となる。
また、ボール16のトラック溝11,14に対する挟み角γ8(図1参照)とは、外輪12のトラック溝11および内輪15のトラック溝14とボール16との各接触点(図1の破線参照)における軸線方向の2接線がなす角度を意味する。なお、図1において、ボール16内の破線は、アンギュラ接触によるボール16とトラック溝11,14との接触点軌跡を示している。また、ボール16のトラック溝11,14に対する接触角α8(図3参照)とは、ボール16の中心O3を基準としてボール16とトラック溝11,14とが接触するボール接触中心P(図ではボール16とトラック溝11,14間にすきまを誇張)とトラック溝11,14の溝底中心Qとのなす角度を意味する。
これらの等速自在継手を、例えば自動車のドライブシャフトに使用した場合、外輪12を従動軸に連結し、車体側のディファレンシャルに取り付けられた摺動式等速自在継手から延びる駆動軸(シャフト)を内輪15にスプライン嵌合で連結した構造としている。この等速自在継手では、外輪12と内輪15との間に作動角が付与されると、ケージ17に収容されたボール16は常にどの作動角においても、その作動角の二等分面内に維持され、継手の等速性が確保される。
複数のボール16は、ケージ17に形成されたポケット20に収容されて円周方向等間隔に配置されている。このボール16の数と同様に、トラック溝11,14の数、ケージ17のポケット20の数も8個である。この8個ボールタイプの等速自在継手では、6個ボールタイプの等速自在継手(図15参照)と比較して、ボール径を小さく(d<D)、かつ、トラックオフセットを小さくすることにより(f<F)、高いトルク伝達効率でコンパクトな等速自在継手を実現している。
この等速自在継手の内部構成でトルク伝達効率に与える影響を機構解析で調査した結果、その内部構成での各接触部のすきまを変化させると、PCDすきまはある範囲でトルク伝達効率に寄与し、球面すきまは大きい方がトルク伝達効率に寄与することが判明した(図4参照)。また、外輪内部に封入される潤滑剤の変更による内部摩擦係数も変数として考慮した場合における、継手内部構成の各接触部におけるPCDすきま、球面すきまの変化に対するトルク伝達効率への寄与度を図5に示す。
この等速自在継手では、PCD(ピッチ円直径)すきま(2×m)、球面すきま(2×n1),(2×n2)、ボール16のトラック溝11,14に対する挟み角γ8および接触角α8を適正値に設定する必要性から、それらを以下のように規定する。
まず、外輪12のトラック溝11と内輪15のトラック溝14とで形成されたボールトラックにおけるPCDすきま(2×m)を25μm以上、好ましくは、40〜85μmとする。このようにPCDすきま(2×m)を規定すれば、回転トルクの伝達時、ボールトラックの非負荷側部位へのボール16の接触を減らすことができるので、ボールトラックの非負荷側部位へのボール接触による伝達トルクの損失を低減できる。
ここで、前述のPCDすきま(2×m)が25μmよりも小さいと、ボール16の組み込みが困難となり、ボール16をトラック溝11,14間で拘束する力が大きくなってボール16の転動が妨げられ、ボール16とトラック溝11,14との接触部で滑りが発生し易く、温度上昇と寿命低下の一因となり、その結果、伝達トルクの損失を低減させることが困難となる。逆に、PCDすきま(2×m)が85μmよりも大きいと、打音、振動や高負荷時でボール16がトラック溝11,14から乗り上げてその接触楕円がトラック溝11,14から食み出すことによりエッジ欠けが発生し易くなり、寿命低下を招く一因となって伝達トルクの損失を低減させる効果が頭打ちとなる。
本出願人が行った継手内部力の解析結果から、作動角が0°では、内輪15のトラック溝14とボール16との接触部位、外輪12のトラック溝11とボール16との接触部位は、負荷側の各々1箇所となっている。この接触部位では、作動角が0°を超えるとボール16がトラック溝11,14内を転動するために摩擦発熱が生じる。そして、作動角が増すと、内輪15のトラック溝14とボール16との接触部位の反対側である非負荷側、外輪12のトラック溝11とボール16との接触部位の反対側である非負荷側でも接触するようになり、その接触でもトラック溝11,14に荷重が負荷される。その非負荷側での荷重負荷は、作動角が大きくなるほどその範囲と絶対量が増えていく。この非負荷側での荷重負荷はトルク伝達方向と逆方向であり、結果的にトルク伝達の損失となっている。
そこで、前述したようにボールトラックにおけるPCDすきま(2×m)を25μm以上、好ましくは、40〜85μmとして従来の等速自在継手よりも大きく設定したことにより、非負荷側での荷重負荷が減少し、伝達トルクの損失を低減できてトルク伝達効率の向上が図れる〔図4、図5および図6(位相角については図2)参照〕。図6では、PCDすきまが小さいものよりもPCDすきまが大きいものの方が、位相角60°付近の非負荷側での荷重負荷を低減できることを示している。
また、内輪15の外球面13とケージ17の内球面19との間の球面すきま(2×n1)、およびケージ17の外球面18と外輪12の内球面10との間の球面すきま(2×n2)を40μm以上、好ましくは、50〜120μmとしたことにより、内輪15の外球面13とケージ17の内球面19との球面接触、およびケージ17の外球面18と外輪12の内球面10との球面接触を減少させることができるので、その球面接触による摩擦発熱を低減でき、その摩擦発熱に起因する伝達トルクの損失を低減できる。なお、この球面すきま(2×n1),(2×n2)は、PCDすきま(2×m)を考慮して球面接触を確実に減少させるように設定する必要がある。
ここで、前述の球面すきま(2×n1),(2×n2)が40μmよりも小さいと、継手の作動性が悪化する。逆に、球面すきま(2×n1),(2×n2)が120μmよりも大きいと、打音や振動が発生する。なお、本出願人は、8個ボールの等速自在継手に関する実験結果から、球面すきま(2×n1),(2×n2)の合計(2×n1)+(2×n2)が240μmで異音が発生しないことを確認したことにより、二つの球面すきま(2×n1),(2×n2)の合計(2×n1)+(2×n2)の上限値を240μmとし、二つの球面すきま(2×n1),(2×n2)にそれぞれ均等に振り分けてその上限値を120μmとした。また、継手の製作上の公差を考慮して伝達トルクの損失を低減する効果を発揮し得る限界として、球面すきま(2×n1),(2×n2)の下限値を40μmとした。
ここで、内輪15の外球面13とケージ17の内球面19との球面接触、およびケージ17の外球面18と外輪12の内球面10との球面接触については、トラックオフセットによりボール16のトラック溝11,14に対する挟み角γ8が生じているため、ボール16がケージ17のポケット周壁面を外輪12の開口側へ押圧することにより、ケージ17が外輪12の開口側へ移動する。その結果、ケージ17の外球面18と外輪12の内球面10は外輪12の開口側で接触し、ケージ17の内球面19と内輪15の外球面13は外輪12の奥側で接触する。
この状態で作動角が0°の場合、トルクが負荷されると(トルク負荷方向については図2参照)、ボール16がケージ17のポケット周壁面を外輪12の開口側へさらに押圧する。この場合、内輪15のトラック溝14と外輪12のトラック溝11とは交差することなく平行に位置しているため、ケージ17は球面すきま(2×n1),(2×n2)がなくなるように移動して、そのケージ17の外球面18と外輪12の内球面10が接触する。
作動角が0°の場合、球面すきま(2×n1),(2×n2)の大小に拘わらず、伝達トルクの損失はないが、作動角をとると、位相角0°と位相角180°では内輪15のトラック溝14と外輪12のトラック溝11が平行に位置しているのに対して、他の位相角では、内輪15のトラック溝14と外輪12のトラック溝11が互いに交差する状態となる。その結果、ボール16が内輪15のトラック溝14と外輪12のトラック溝11に挟まれるため、ボール16がケージ17のポケット周壁面を押圧する移動量(ケージの移動量)はPCDすきま(2×m)により決定される。
この場合、PCDすきま(2×m)により決定されたケージ17の移動可能量よりも球面すきま(2×n1),(2×n2)が大きい状態であれば、内輪15の外球面13とケージ17の内球面19との間での球面接触力、およびケージ17の外球面18と外輪12の内球面10との間での球面接触力が小さくなり、その球面接触力に左右される摩擦発熱による伝達トルクの損失が低減される〔図4、図5および図7(位相角については図2)参照〕。図7では、球面すきまが小さいものよりも球面すきまが大きいものの方が、球面接触力を低減できることを示している。
一方、外輪12のトラック溝11と内輪15のトラック溝14との間に位置するボール16のトラック溝11,14に対する挟み角γ8(図1参照)を8.5〜12.5°、ボール16のトラック溝11,14に対する接触角α8(図3参照)を30〜38°とする。
このように、ボール16のトラック溝11,14に対する挟み角γ8を8.5〜12.5°とすれば、トルク伝達時のボールに作用する軸方向の押し出し力を小さくすることができる。これに伴って、保持器と内外輪相互間の接触面圧を抑え、摩擦を低減させることができ、伝達トルクの損失を軽減することが可能となる。また、ボール16のトラック溝11,14に対する接触角α8を30〜38°とすれば、高トルク入力時のトラック溝エッジ部へのボールの乗り上げ耐久性、外輪のトラック溝とボールの滑り量の低減、転動疲労寿命に影響のある接触面圧を良好な範囲とすることができる。
ここで、前述の挟み角γ8が8.5°よりも小さいと、作動性が悪化し、逆に、挟み角γ8が12.5°よりも大きいと、保持器と内外輪相互間の接触面圧が大きくなり、摩擦を低減させることが困難で、伝達トルクの損失を軽減することが困難となる。また、前述の接触角α8が30°よりも小さいと、トラック荷重が増大することにより強度が低下すると共に摩擦の低減が困難となり、伝達トルクの損失を低減させることが困難となる。逆に、接触角α8が38°よりも大きいと、高トルク入力時のトラック溝エッジ部へのボールの乗り上げが発生し易く、外輪のトラック溝とボールの滑り量の低減が困難となる。
この等速自在継手の内部構成でトルク伝達効率に与える影響を機構解析で調査した結果、その内部構成での各接触部の摩擦係数が変化すると、ボール16とトラック溝11,14の接触部を低摩擦とすることがトルク伝達効率の向上に寄与し、ケージ17と外輪12およびケージ17と内輪15の各球面部では、低摩擦となってもトルク伝達効率の向上には寄与しないことが判明した(図8参照)。
ここで、ボール16とトラック溝11,14の接触部を低摩擦にするためには、十分な油膜層を形成し、摩擦係数を下げる必要があるが、ボール16とトラック溝11,14の接触部は、トルク伝達時に大きな力が付加されることから、その面圧によって十分な油膜層が形成されない可能性がある。
従って、ボール16とトラック溝11,14の接触部に潤滑剤が介入し易いように表面処理を施して、より良好な油膜層を形成させることにより、ボール16とトラック溝11,14で発生する滑りによる摩擦を抑制してトルク伝達効率を向上させることが有効である。
そこで、ボール16の表面に多数の微小凹部41(図1の拡大部分参照)をランダムに形成し、このボール16の表面の表面粗さ(算術的平均粗さ)をRa0.03〜0.6μm、好ましくはRa0.05〜0.15μmとする。また、ボール16の表面積に対する微小凹部41の合計面積の比率を10〜40%とする。
また、ボール16の表面粗さのパラメータSK値を−1.0〜−4.9とする。ここで、SK値とは、表面粗さの分布曲線の歪度(SKEWNESS)、すなわち、表面粗さの平均線に対する凹凸の振幅分布曲線の相対性を表す値であり、表面粗さのSK値は次式で表される。
SK=∫(x−x03・P(x)dx/σ3
ここに、x:粗さの高さ、x0:粗さの平均高さ、P(x):粗さの振幅の確率密度関数、σ:自乗平均粗さである。
このパラメータSK値は、表面粗さの平均線に対して、振幅分布曲線の山が多いときは正、山と谷が等しいときは零、谷が多いときは負の値となる。従って、多数の微小凹部を形成したボール16の表面における表面粗さのパラメータSK値は負の値となる。
ボール16の表面におけるSK値および表面粗さRaと、微小凹部41の合計面積比率とをそれぞれ数値限定したものが、ボール16の表面に潤滑剤の油膜層を形成するために有効な範囲となる。
これら表面粗さRa,SK値,微小凹部の合計面積比率の測定は、ボール表面でほぼ90°離れた6箇所で実施し、その平均値で評価・判断する。その有効範囲の判断もこの方法に基づいている。微小凹部41の定量的な測定を行うためには、図9に示す装置構成で測定する。取り込み方法は、位置決め装置上にボールを設置し、ボール表面を顕微鏡で拡大し、CCDカメラでその画像を画像解析装置とパーソナルコンピュータで構成される画像処理装置に取り込み、画像の白い部分は表面平坦部、黒い部分は凹部として解析する。画像の黒い部分が凹部として、大きさ・分布を計算し、その表面積比率を求めて評価する。表面検査方法の詳細については、特開2001−183124号公報に示された方法である。
表面粗さ及びSK値の測定には、測定器ホームタリサーフ(テーラーホブソン製)で測定する。測定条件として、カットオフ種別:ガウシアン、測定長さ:5λで、カットオフ数:6、カットオフ波長:0.25mm、測定倍率:10000倍、測定速度:0.30mm/sとした。なお、ボール16の表面に多数の微小凹部41を形成する方法としては、例えば、特殊なバレル研磨処理があるが、それ以外にショットブラスト処理等により表面加工を行ってもよい。
また、潤滑剤としては、低摩擦係数のものが好ましく、例えば、サバン式摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦係数の上限値が0.07の潤滑剤であることが好ましい。ここで、サバン式摩擦摩耗試験機は、図10に示すように、直径40mm×厚さ4mmの回転リング31に1/4inchの鋼球32を圧接させたものであり、摩擦係数の測定に際しては、回転リング31を周速108m/minで回転し、荷重12.7Nをかけ、回転リング31の下端からスポンジ33を介して回転リング31の表面に潤滑剤を供給し、鋼球32を支持するエアスライド34の動きをロードセル35で検出して摩擦係数を測定した。潤滑剤の具体例としては、例えばウレアグリースが挙げられる。そのウレアグリースの稠度は、0〜2号とする。なお、この稠度は、0号より小さいと、シール構造が複雑になり、高速で使用された場合に遠心力により、潤滑剤切れとなり易い。また、2号より大きいと、潤滑剤の介入が困難となり、接触抵抗が大きくトルク損失の原因となる。
継手の回転時に、ボール16とトラック溝11,14相互間に押圧力が作用した場合であっても、ボール16の表面における多数の微小凹部41内へ侵入した潤滑剤が、ボール16とトラック溝11,14との接触界面に介在して良好な油膜層を形成し得る。
図11は、固定式等速自在継手に使用する潤滑剤の摩擦係数と、そのときのトルク損失率の関係を表したものである。それぞれ摩擦係数の異なる4種類の潤滑剤を使用し、潤滑剤ごとに、継手の入力トルクが小さく回転数が遅い場合、継手の入力トルクが大きく回転数が速い場合の2条件で、トルク損失率を測定した。図中にプロットされた印の説明をすると、丸マークが約0.1の摩擦係数の潤滑剤、それ以外の三角マーク・四角マーク・菱形マークは、0.07以下の摩擦係数の潤滑剤である。そして、図11から、摩擦係数が0.07以下の潤滑剤を用いると、摩擦係数が約0.1の潤滑剤を用いた場合よりトルク損失率が減少しており、つまりトルク伝達効率が向上しているのがわかる。
図12は、表面に多数の微小凹部41を形成したボール16を有する継手(本発明の継手)の場合と、微小凹部のないボールを有する継手(比較例の継手)の場合とで、それぞれのトルク損失率を比較したものである。この場合も、上記継手ごとに、継手の入力トルクが小さく回転数が遅い場合、継手の入力トルクが大きく回転数が速い場合の2条件で、トルク損失率を測定した。なお、本発明の継手と比較例の継手の両方に同じ摩擦係数の潤滑剤が封入されている。図中に示す丸マークが本発明の継手の試験データであり、菱形マークが比較例の継手の試験データである。また、一点鎖線で示すのは本発明の各データの平均線であり、点線は比較例の各データの平均線である。これら2つの平均線の差からわかるように、本発明は比較例よりもトルク損失率が減少し、トルク伝達効率が向上している。
また、図13は、摩擦係数が0.07以下の潤滑剤+多数の微小凹部41を形成したボール16を有し、前述の適正値範囲のPCDすきまおよび球面すきまを設定した継手(本発明の継手)と、摩擦係数が約0.1の潤滑剤+微小凹部のないボールを有し、PCDすきまおよび球面すきまを前述の適正値範囲に設定していない継手(比較例の継手)とで、それぞれのトルク損失率を示したグラフである。この場合も、上記継手ごとに、継手の入力トルクが小さく回転数が遅い場合、継手の入力トルクが大きく回転数が速い場合の2条件で、トルク損失率を測定した。図中の丸マークは比較例のデータであり、三角マークは本発明のデータである。この図13の結果から、本発明の場合は、比較例よりもトルク損失率は減少し、トルク伝達効率が向上していることがわかる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明の実施形態で、バーフィールド型の固定式等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。 図1の横断面図である。 PCDすきま、球面すきま、ボールの接触角、トラック形状を説明するためのもので、内輪、外輪、ボールおよびケージを示す要部拡大断面図である。 継手内部構成の各接触部におけるPCDすきま、球面すきまの変化に対するトルク伝達効率への寄与度を説明するための表である。 継手内部構成の各接触部におけるPCDすきま、球面すきまの変化に対するトルク伝達効率への寄与度で内部摩擦係数も変数として考慮した場合を説明するための表である。 PCDすきまの変化による非負荷側トラック荷重を示す特性図である。 球面すきまの変化による球面接触力を示す特性図である。 継手内部構成の各接触部における摩擦係数の変化に対するトルク伝達効率への寄与度を説明するための表である。 ボールに形成した多数の微小凹部の定量的な測定を行う測定装置の概略図である。 サバン式摩擦摩耗試験機の概略図である。 摩擦係数の低い潤滑剤を使用した場合と、比較例とのそれぞれのトルク損失率を示す特性図である。 多数の微小凹部を形成したボールを使用した場合と、比較例とのそれぞれのトルク損失率を示す特性図である。 摩擦係数の低い潤滑剤と多数の微小凹部を形成したボールを使用し、PCDすきまおよび球面すきまを適正値に設定した場合と、比較例とのそれぞれのトルク損失率を示す特性図である。 本発明の他の実施形態で、アンダーカットフリー型の固定式等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。 固定式等速自在継手の従来例で、6個ボールタイプの全体構成を示す縦断面図である。 図15の横断面図である。 固定式等速自在継手の従来例で、8個ボールタイプの全体構成を示す縦断面図である。 図17の横断面図である。 図15の等速自在継手が作動角をとった状態を示す縦断面図である。 図17の等速自在継手が作動角をとった状態を示す縦断面図である。 8個ボールタイプと6個ボールタイプとで、ボール径、トラックオフセット量および接触点軌跡の長さを比較した表である。
符号の説明
10 外側継手部材(外輪)の内球面
11 外側継手部材(外輪)のトラック溝
12 外側継手部材(外輪)
13 内側継手部材(内輪)の外球面
14 内側継手部材(内輪)のトラック溝
15 内側継手部材(内輪)
16 ボール
17 ケージ
18 ケージの外球面
19 ケージの内球面
41 微小凹部
O 継手中心
1 外側継手部材(外輪)のトラック溝の曲率中心
2 内側継手部材(内輪)のトラック溝の曲率中心
2×m PCDすきま
2×n1,2×n2 球面すきま
γ8 挟み角
α8 接触角

Claims (12)

  1. 軸方向に延びる複数のトラック溝が内球面に形成され、内部に潤滑剤が充填された外側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外球面に形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備え、前記外側継手部材のトラック溝の曲率中心および内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットされた固定式等速自在継手において、
    前記ボールの表面に多数の微小凹部をランダムに形成すると共に、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで形成されたボールトラックにおけるPCDすきまを25μm以上としたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  2. 軸方向に延びる複数のトラック溝が内球面に形成され、内部に潤滑剤が充填された外側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外球面に形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備え、前記外側継手部材のトラック溝の曲率中心および内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットされた固定式等速自在継手において、
    前記ボールの表面に多数の微小凹部をランダムに形成すると共に、前記内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきまを40μm以上、前記ケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを40μm以上としたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  3. 軸方向に延びる複数のトラック溝が内球面に形成され、内部に潤滑剤が充填された外側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外球面に形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備え、前記外側継手部材のトラック溝の曲率中心および内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットされた固定式等速自在継手において、
    前記ボールの表面に多数の微小凹部をランダムに形成すると共に、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで形成されたボールトラックにおけるPCDすきまを25μm以上、かつ、前記内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきまを40μm以上、前記ケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを40μm以上としたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  4. 前記PCDすきまを40〜85μmとした請求項1又は3に記載の固定式等速自在継手。
  5. 前記内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきまを50〜120μm、前記ケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを50〜120μmとした請求項2又は3に記載の固定式等速自在継手。
  6. 前記PCDすきまを40〜85μm、かつ、前記内側継手部材の外球面とケージの内球面との間の球面すきまを50〜120μm、前記ケージの外球面と外側継手部材の内球面との間の球面すきまを50〜120μmとした請求項3に記載の固定式等速自在継手。
  7. 前記潤滑剤の摩擦係数を0.07以下とした請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手。
  8. 前記潤滑剤をウレアグリースとし、そのウレアグリースの稠度を0〜2号とした請求項7に記載の固定式等速自在継手。
  9. 前記微小凹部を形成したボールの表面粗さをRa0.03〜0.6μmとし、前記ボールの表面粗さのパラメータSK値を−1.0以下とし、前記ボールの表面積に対する前記多数の微小凹部の合計面積の比率を10〜40%とした請求項1〜8のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手。
  10. 前記ボールの表面粗さをRa0.05〜0.15μmとし、前記ボールの表面粗さのパラメータSK値を−4.9〜−1.0とした請求項9に記載の固定式等速自在継手。
  11. 前記ボールの個数が8個である請求項1〜10のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手。
  12. 前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に位置するボールののトラック溝に対する挟み角を8.5〜12.5°、ボールのトラック溝に対する接触角を30〜38°とした請求項11に記載の固定式等速自在継手。
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