JP2009007603A - 歯車 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬質炭素皮膜の密着性に優れた歯車を提供すること。
【解決手段】0.005≦C≦0.6mass%、0.01≦Si≦2.0mass%、0.01≦Mn≦2.0mass%、0.1≦Cr≦2.0mass%、0.15≦Mo≦1.5mass%、及び0.01≦V≦0.5mass%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、次の(1)式を満たす鋼からなる基材と、前記基材表面に形成された浸炭硬化層と、前記浸炭硬化層の上に形成された硬質炭素皮膜とを備えた歯車。
0.40≦V+0.15Mo≦0.70 ・・・(1)
【選択図】図3

Description

本発明は、歯車に関し、さらに詳しくは、表面に形成される硬質炭素皮膜の密着性が高い歯車に関する。
歯車、軸、軸受、ピストンピン、カムなどの転がり接触やすべり接触を伴う機械部品には、従来から浸炭鋼が用いられている。浸炭は、一般に低炭素鋼に適用され、浸炭後に焼入れされて使用される。浸炭鋼は、表面が硬く、内部が柔らかいという特徴があるので、歯車等の転動・摺動部材に好適な材料である。しかしながら、各種部品の小型化・軽量化に伴い、浸炭鋼には、耐摩耗性、耐疲労性等のさらなる向上が求められている。
また、自動車において、転動・摺動部材には、摩擦摩耗環境が過酷な部位に使用された場合であっても耐摩耗性に優れていることに加えて、低摩擦係数を発現することが求められている。そのため、最近では、浸炭鋼からなる転動・摺動部材の表面に硬質薄膜材料をコーティングすることが行われている。このような硬質薄膜材料としては、硬質炭素材料(ダイヤモンドライクカーボン(DLC))、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)などが知られている。特に、DLCは、空気中や潤滑油不存在下における摩擦係数が窒化チタンや窒化クロムと比べて低いことから、低摩擦摺動材料として期待されている。
このような浸炭鋼、あるいは浸炭鋼の表面に低摩擦摺動材料をコーティングした転動・摺動部材に関しては、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、C:0.15〜0.40%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.50〜1.50%、及びMo:0.05〜0.50%含有し、Ni:0.50〜3.50%、Ti:0.03〜0.20%、Nb:0.03〜0.15%、及びAl:0.01〜0.10%からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の元素を含有し、P:0.010%以下であり、残部がFe及び不可避的不純物である鋼材からなり、部品表面における転動部位の炭素濃度が0.8〜1.2%である耐高面圧部品が開示されている。
同文献には、転動部位の炭素濃度を0.8〜1.2%にすることによって、水素起因による脆化抑制効果を阻害することなく内部組織変化(WEC)を抑制することができる点が記載されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0〜1.50%、Ni:0〜4.50%、Cr:0.85〜3.0%、及びMo:0.15〜2.0%、かつ、Cr+Mo:2.5〜4.0%の条件を満たし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、Nb:0.03%未満である転動部品用肌焼き部材が開示されている。
同文献には、Nb:0.03%未満とすることにより、浸炭中に部品表面における網状粗大炭化物の生成を助長することなく、部品の転動疲労強度のばらつきを低減することができる点が記載されている。
また、非特許文献1には、自動車用トランスミッションギアへの適用を目的に、油潤滑、高負荷下におけるDLC皮膜の有効性を検討した例が開示されている。同文献には、DLC皮膜形成により、100倍以上の疲労寿命延長の効果が得られる点が記載されている。
さらに、非特許文献2には、ギア、タペット、及びピストンリングにカーボン系コーティングを適用した例が開示されている。同文献には、ギアにカーボン系コーティングを施すことにより、耐焼き付き性及び耐ピッチング性が向上する点が記載されている。
特開2005−68453号公報 特開2004−27305号公報 熊谷 正夫他、表面技術、vol.57、No.6、(2006)p40 金森 高司、機械と工具、2004、10
通常、硬質炭素材料を鋼材表面に成膜する場合には、密着性を向上させるために、表面硬化処理(浸炭、窒化)、アンダーコート(例えば、CrNなどのPVD膜)の成膜などを行う必要がある。これは、鋼材表面の硬さが低すぎると、鋼材表面が塑性変形し、靱性の乏しい硬質炭素皮膜が剥離しやすくなるためである。
確かに、非特許文献1、2に開示されているように、鋼表面を硬質炭素材料で被覆すれば、用途によっては歯車の寿命も延長される。しかしながら、硬質炭素材料で被覆された歯車であっても、より高負荷に曝されると、相対的に短時間で被膜が剥離するという問題がある。自動車のさらなる燃費向上の要求が高まる中、高負荷下においても歯車の寿命を伸ばしていくには、膜の種類の選択だけでは限界があり、母材の種類や熱処理によって母材そのものの寿命を高める必要がある。
本発明が解決しようとする課題は、硬質炭素皮膜のより密着性に優れた歯車を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、高負荷下においても硬質炭素皮膜が剥離しにくい歯車を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る歯車は、
0.005≦C≦0.6mass%、
0.01≦Si≦2.0mass%、
0.01≦Mn≦2.0mass%、
0.1≦Cr≦2.0mass%、
0.15≦Mo≦1.5mass%、及び、
0.01≦V≦0.5mass%を含み、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、次の(1)式を満たす鋼からなる基材と、
前記基材表面に形成された浸炭硬化層と、
前記浸炭硬化層の上に形成された硬質炭素皮膜と
を備えていることを要旨とする。
0.40≦V+0.15Mo≦0.70 ・・・(1)
所定の組成を有する鋼を基材とする歯車において、基材のMo量及びV量を最適化すると、硬質炭素皮膜形成時の加熱や摺動時の発熱による軟化を抑制することができる。そのため、より高負荷下で使用した場合であっても、硬質炭素皮膜の剥離が抑制され、歯車の寿命を伸ばすことができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
初めに、本発明に係る歯車の基材として使用される鋼(歯車用鋼)について説明する。歯車用鋼は、以下のような合金元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。合金元素の種類、その成分範囲、及びその限定理由は、以下の通りである。
(1) 0.005≦C≦0.6mass%。
Cは、基地に固溶して強度を高くする効果、及び焼入れ性を高める効果がある。C含有量が少ないと、心部にフェライトが生成し、強度を低下させる。従って、C含有量は、0.005mass%以上が好ましい。
一方、C含有量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、C含有量は、0.6mass%以下が好ましい。
(2) 0.01≦Si≦2.0mass%。
Siは、鋼溶製時の脱酸剤であり、焼入れ性を向上させる効果、準高温〜高温下での基地の疲労強度を維持する効果、及び焼戻し軟化抵抗を高める効果がある。Si含有量が少ないと、マトリックスの焼戻し硬さが低下し、強度を低下させる。従って、Si含有量は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、Si含有量が過剰になると、炭化物の生成量が低下し、強度を低下させる。また、心部にフェライトが生成し、強度を低下させる。従って、Si含有量は、2.0mass%以下が好ましい。
(3) 0.01≦Mn≦2.0mass%。
Mnは、鋼溶製時の脱酸剤であり、焼入れ性を向上させる効果がある。Mn含有量が少ないと、マトリックスの焼入れ性が低下し、不完全焼入れにより強度が低下する。従って、Mn含有量は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、Mn含有量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、Mn含有量は、2.0mass%以下が好ましい。
(4) 0.1≦Cr≦2.0mass%。
Crは、靱性、焼入れ性、及び焼戻し軟化抵抗を向上させる効果がある。Cr含有量が少ないと、炭化物の生成量が低下し、強度を低下させる。また、心部にフェライトが生成し、強度を低下させる。従って、Cr含有量は、0.1mass%以上が好ましい。
一方、Cr含有量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、Cr含有量は、2.0mass%以下が好ましい。
(5) 0.15≦Mo≦1.5mass%。
Moは、焼入れ性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、Mo含有量は、0.15mass%以上が好ましい。
一方、Mo含有量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、Mo含有量は、1.5mass%以下が好ましい。
(6) 0.01≦V≦0.5mass%。
Vは、熱処理中に炭化物及び/又は窒化物を形成し、焼入れ・焼戻しをした部品の基地を強化させる効果がある。このような効果を得るためには、V含有量は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、V含有量が過剰になると、粗大な析出物が生成し、加工性を低下させる。従って、V含有量は、0.5mass%以下が好ましい。
(7) V+Mo。
本発明において、基材として用いられる歯車用鋼は、V量及びMo量が上述の範囲にあることに加えて、V量及びMo量が次の(1)式を満たすことを特徴とする。この点が、従来の材料とは異なる。
0.40≦V+0.15Mo≦0.70 ・・・(1)
V量及びMo量が(1)式を満たす場合、硬質炭素皮膜を形成する際に受ける加熱、あるいは、歯車として使用する際に生ずる摺動発熱による材料の軟化を抑制することができる。耐久性に優れた歯車を得るためには、V+0.15Moは、0.40以上が好ましい。V+0.15Moは、さらに好ましくは0.51以上、さらに好ましくは0.53以上、さらに好ましくは0.55以上である。
また、これらの元素を添加しすぎると、製造面(歯車に加工しにくくなる)、コスト面から望ましくない。従って、V+0.15Moは、0.70以下が好ましい。
基材として用いられる歯車用鋼は、上述した元素に加えて、以下のいずれか1以上の元素をさらに含んでいても良い。
(8) 0≦Nb≦0.5mass%。
(9) 0≦Ti≦0.5mass%。
(10) 0≦Zr≦0.5mass%。
Nb、Ti、及びZrは、いずれも炭化物を形成し、焼入れ・焼戻しをした部品の基地を強化させる効果がある。一般に、これらの元素の含有量が多くなるほど、耐摩耗性に優れた歯車が得られる。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、粗大な炭化物が生成し、加工性を低下させる。従って、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.5mass%以下が好ましい。
次に、本発明に係る歯車について説明する。
本発明に係る歯車は、基材と、浸炭硬化層と、硬質炭素皮膜とを備えている。
基材は、上述した組成を有する鋼からなる。歯車の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
浸炭硬化層は、基材表面に形成される。浸炭硬化層の厚さ、炭素濃度等は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、浸炭硬化層の硬さが高くなるほど、硬質炭素皮膜の密着性が向上する。
硬質炭素(DLC)被膜は、浸炭硬化層の上に形成される。硬質炭素皮膜の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
硬質炭素皮膜は、浸炭硬化層の上に直接形成されていても良く、あるいは、浸炭硬化層と硬質炭素皮膜の間にアンダーコート層が形成されていても良い。
アンダーコート層の組成及び厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。特に、アンダーコート層として、硬質炭素皮膜と浸炭硬化層の中間の硬さを有する材料を用いると、硬質炭素皮膜の密着性をさらに向上させることができる。このようなアンダーコート層としては、具体的には、CrN、TiNなどがある。
次に、本発明に係る歯車の製造方法について説明する。
本発明に係る歯車は、
(1) 所定の組成を有する鋼を溶解・鋳造し、
(2) 得られた鋼塊を適当な大きさの素材に鍛造し、
(3) 鍛造材を歯車形状に粗加工し、
(4) 歯車を浸炭・焼入れし、
(5) 歯車を焼戻して、精加工し、
(6) 必要に応じて歯車の表面にアンダーコート層を形成した後、歯車の表面に硬質炭素被膜を形成する、
ことにより製造することができる。
浸炭方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。特に、ガス浸炭及び真空浸炭は、取り扱いが容易で、処理時間も短いので、浸炭方法として好適である。特定の浸炭方法を採用した場合において、浸炭条件を最適化すると、表面の炭素濃度を目的とする範囲に収めることができる。
例えば、ガス浸炭は、浸炭性ガス雰囲気中で鋼材を加熱することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、浸炭雰囲気のカーボンポテンシャルにより制御することができる。カーボンポテンシャルとは、雰囲気と平衡する純鉄の表面平衡炭素濃度であり、雰囲気中のCO/CO2比やH2O量に依存する。一般に、カーボンポテンシャルが高くなるほど、及び/又は、浸炭温度が高くなるほど、短時間で表面の炭素濃度を高めることができる。
また、例えば、真空浸炭は、鋼材を挿入した炉内を1.3Pa程度に減圧した後、浸炭温度に加熱し、メタン、プロパンなどの炭化水素ガスを炉内に導入することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、炭化水素ガスの導入時間により制御することができる。なお、真空浸炭を行うと、表面近傍の炭素濃度が高くなりすぎる場合があるので、このような場合には、浸炭後に炭化水素ガスの供給を止め、その状態で保持する拡散処理を行うのが一般的である。
浸炭温度は、目的に応じて最適な温度を選択する。一般に、浸炭温度が高くなるほど、炭素の拡散速度が増大するので、短時間で表面の炭素濃度を高めることができる。浸炭温度は、具体的には、850℃以上が好ましい。
一方、浸炭温度が高くなりすぎると、クリープ変形が生じ、ひずみが大きくなる。従って、浸炭温度は、1200℃以下が好ましい。
焼入れは、浸炭終了後の歯車をAc3点以上の焼入れ温度に加熱し、焼入れ温度からMs点以下の温度まで急冷することにより行う。焼入れは、浸炭終了後、歯車を直ちに焼入れ温度まで昇温又は降温し、急冷することにより行っても良く、あるいは、浸炭終了後の歯車を一旦室温まで冷却し、再度焼入れ温度まで加熱した後、急冷することにより行っても良い。また、急冷時の変形を最小限に抑えるために、Ms点直上又は直下で急冷を一旦停止し、その温度で保持した後、さらに急冷しても良い。
急冷方法は、特に限定されるものではなく、フェライト、パーライトを析出させることなくマルテンサイト変態を生じさせることが可能なものであればよい。急冷方法には、通常、水冷、油冷、加圧ガス冷却などが用いられる。
焼入れされた歯車を焼戻し、精加工した後、必要に応じて、歯車の表面にアンダーコート層を形成する。アンダーコート層は、通常、PVD、イオンプレーティング、スパッタリングなどを用いて形成される。
歯車表面に浸炭硬化層(又は、浸炭硬化層+アンダーコート層)を形成した後、その上に硬質炭素(DLC)皮膜を形成する。硬質炭素皮膜は、スパッタリング法、プラズマCVD法等の各種の方法により形成することができる。
また、プラズマCVD法を用いて硬質炭素皮膜を成膜する場合、原料としてメタン、エチレン等の炭化水素化合物を用い、プラズマの発生条件を制御すると、水素濃度の異なる硬質炭素皮膜が得られる。プラズマCVD法で得られる硬質炭素皮膜は、一般に、水素量を少なくすることによってダイヤモンドに近い骨格が形成され、硬くなる。これに対し、水素量を増やしていくと、高分子に近い構造が形成され、柔らかくなる。硬質炭素皮膜の硬さは、目的に応じて任意に選択することができる。
次に、本発明に係る歯車の作用について説明する。
プラズマCVD法を用いて硬質炭素皮膜を形成する場合、通常、被処理材は、200〜250℃の温度に加熱される。被処理材が浸炭鋼である場合、プラズマCVD処理の際の加熱によって、表面に形成された浸炭硬化層の硬さが低下する。また、浸炭鋼からなる歯車は、使用時の摺動発熱によって表面の温度が上昇し、浸炭硬化層の硬さが低下する。
硬質炭素皮膜は、一般に、基材、並びに、基材表面に形成された浸炭硬化層及び必要に応じて形成されるアンダーコート層よりも硬く、靱性に乏しい。浸炭硬化層が硬質炭素皮膜形成時又は摺動時に受ける熱によって軟化すると、基材が外力によって容易に塑性変形する。一方、硬質炭素皮膜は、靱性に乏しいために、基材の変形に追随することができない。そのため、浸炭硬化層が軟化すると、硬質炭素皮膜が剥離しやすくなる。この傾向は、歯車にかかる負荷が高くなるほど顕著となる。
これに対し、所定の組成を有する鋼を基材とする歯車において、基材のMo量及びV量を最適化すると、硬質炭素皮膜形成時の加熱や摺動時の発熱による軟化を抑制することができる。そのため、より高負荷下で使用した場合であっても、硬質炭素皮膜の剥離が抑制され、歯車の寿命を伸ばすことができる。
(実施例1)
[1. 試料の作製]
表1に示す鋼を、真空誘導炉にて150kgのインゴットとし、その後熱間鍛造によりφ32mmに鍛造した。鍛造材を焼ならし処理した後、図1のようなローラーピッチング試験片に加工した。なお、図1において、左図は試験片の正面図、右図は試験片の右側面図である。試験片をガス浸炭焼入れし、180℃×90minの焼戻しを実施した。最後に、評価部の表面を0.5mm研削することを含め、試験片を精加工した。精加工後、表面に3μm厚さのDLC被膜を形成した。なお、実施例1、11は、浸炭硬化層とDLC被膜との間に0.5μmのアンダーコート層(実施例1はCrN、実施例11はTiN)を形成したものである。
Figure 2009007603
[2. 試験方法]
[2.1. ローラーピッチング試験]
得られた試験片を用いて、ローラーピッチング試験を行った。図2に示すように、試験片の評価部に大円筒を一定面圧で接触させ、すべりを与えながら回転させた。なお、図2において、左図は試験片の側面から見た試験の状態を示し、右図は試験片の正面から見た試験の状態を示している。小円筒である試験片にピッチングが発生するまでの時間をピッチング寿命とした。
試験条件は、面圧:2〜2.5GPa、すべり率:−40%、油温:323K、回転数:1500rpmとした。また、相手材(大円筒)には、SUJ2の調質材を用いた。
[2.2. 硬さ]
DLC成膜前と成膜後の試験片の深さ方向のビッカース硬度を測定した。
[3. 結果]
図3、表2、及び表3に、ローラーピッチング試験結果を示す。図3は、実施例及び比較例において、面圧と寿命の関係を示すグラフである。表2は、実施例1〜11の試験結果を示す表である。一方、表3は、比較例1〜5の試験結果を示す表である。表内の数値は、いずれもピッチングが発生するまでに至った回転数である。
Figure 2009007603
Figure 2009007603
表2と表3を対比すると良くわかるように、表3に示す比較例の回転数は、表2に示す回転数より極めて低い数値となっている。すなわち、実施例は、比較例よりも寿命を長くすることができる、という効果がある。
また、V+0.15Moが0.51以上である実施例4〜8は、2.5GPaにおける面圧時の回転数が、いずれも5×106以上となっている。つまり、V+0.15Moが0.51以上である歯車は、面圧が高くなっても歯車としての寿命が長くなることを意味している。
さらに、表2に示すように、アンダーコート層を形成した実施例1、11は、V+0.15Moの2.5GPaにおける数値(0.41)が実施例10の数値(0.41)と同じにもかかわらず、回転数が高くなっている。このことから、アンダーコート層を形成することで、DLC被膜の密着性が向上し、歯車としての寿命のさらなる延長が期待できる。
図4に、実施例1のDLC成膜前の硬さとDLC成膜後の硬さを示す。また、図5に、比較例5のDLC成膜前の硬さとDLC成膜後の硬さを示す。図4及び図5より、比較例5は、DLC成膜処理によって表面の硬さが低下しているのに対し、実施例1は、表面の硬さが低下していないことがわかる。
図6に、面圧2GPaで試験した後の実施例1、比較例1、及び比較例5の評価部の外観を示す。図6より、実施例1ではDLC膜は残存しているが、比較例1ではほぼ消滅しており、また比較例5についてはかなり大きな剥離挙動を呈していることがわかる。
鋼材のピッチング寿命は、材料表面からの硬さ分布、残留応力、残留オーステナイトなどの因子に左右されるが、今回の試験では、比較例を含め、ほとんどの材料の残留応力にそれほど大きな違いがなかった。一方、比較例5は、DLC成膜処理によって表面硬さが軟化している。従って、表面硬さの低下が強度低下を引き起こした一つの原因と考えられる。また、そうした母材硬度の低下が表面の膜との密着性を悪化させたと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る歯車は、自動車用の歯車などの高負荷環境下で使用される各種の歯車として用いることができる。
ローラーピッチング試験片の正面図(左図)及び右側面図(右図)である。 ローラーピッチング試験方法を示す概略構成図(左図:左側面図、右図:正面図)である。 ローラーピッチング試験片(実施例1〜11、及び比較例1〜5)の寿命と面圧との関係を示す図である。 ローラーピッチング試験片(実施例1)の評価部の表面からの距離と、DLC成膜前後の硬さとの関係を示す図である。 ローラーピッチング試験片(比較例5)の評価部の表面からの距離と、DLC成膜前後の硬さとの関係を示す図である。 ローラーピッチング試験後の試験片(実施例1、比較例1、及び比較例5)の評価部の外観写真である。

Claims (4)

  1. 0.005≦C≦0.6mass%、
    0.01≦Si≦2.0mass%、
    0.01≦Mn≦2.0mass%、
    0.1≦Cr≦2.0mass%、
    0.15≦Mo≦1.5mass%、及び、
    0.01≦V≦0.5mass%を含み、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、次の(1)式を満たす鋼からなる基材と、
    前記基材表面に形成された浸炭硬化層と、
    前記浸炭硬化層の上に形成された硬質炭素皮膜と
    を備えた歯車。
    0.40≦V+0.15Mo≦0.70 ・・・(1)
  2. 前記鋼は、
    0≦Nb≦0.5mass%、
    0≦Ti≦0.5mass%、及び、
    0≦Zr≦0.5mass%、
    のいずれか1以上をさらに含む請求項1に記載の歯車。
  3. 前記浸炭硬化層と前記硬質炭素皮膜との間に形成されたアンダーコート層をさらに備えた請求項1又は2に記載の歯車。
  4. 前記アンダーコート層は、CrN又はTiNである請求項3に記載の歯車。
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