JP2009016258A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能な固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子型燃料電池のプロトン導電性の電解質膜2として高吸水性のポリマー又は樹脂を使用し、この電解質膜2の水収着量WUを75wt%以上とし、毛細管現象を利用して水、水蒸気又はメタノールに室温でほぼ100%以上浸された状態に構成した。
【選択図】図1

Description

この発明は、携帯端末等に用いられる固体高分子型燃料電池に関するものである。
従来の固体高分子型燃料電池に用いる電解質膜は、例えば特許文献1に示すように、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド及びポリエーテルエーテルケトンのうちから選ばれた1種以上の重合体で作成された多孔質体にイオン交換樹脂を充填してなるイオン交換膜で構成されていた。
また、イオン交換樹脂としては、パーフルオロスルフォン酸樹脂(Nafion(登録商標)樹脂)やフッ素を導入した炭化水素樹脂等のような芳香族系エンジニアリングプラスチック樹脂が使用されていた。なお、プロトン導電性は、官能基としてのスルフォン基(SO3H)のプロトン(H+)がホッピングすることにより発生する。
なお、水素ガスを燃料とする固体高分子型燃料電池の各電極における反応は、以下の通りである。
負極(アノード):H2→2H++2e-
正極(カソード):2H++1/2O2+2e-→H2
トータル反応式:H2+1/2O2→H2
特開2003−297393号公報
従来の固体高分子型燃料電池では、電解質膜として、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド及びポリエーテルエーテルケトンのうちから選択された1種以上の重合体からなる多孔質体にイオン交換樹脂を充填して形成した膜や、イオン交換樹脂からなる膜をそのまま使用していた。これら電解質膜の材料はそれ自体の吸水性が低く、燃料電池の動作時、特に高電流で動作していると負極が乾燥し、電解質膜内の水蒸気の一部が負極へ移動して電解質膜内の相対湿度がほぼ100%RHとはならない。
このため、電解質膜のガス及び液体を遮断する性能が低下し、電解質膜を介して水素やメタノールが正極側に透過してクロスオーバが発生し、正極側でヒドロキシルラジカルや過酸化水素が生じる。これにより、分極が大きくなって内部抵抗が増大するため、当該燃料電池における電圧及び電流が減少して規定の出力に達しないという課題があった。
また、イオン交換樹脂はフッ素を含んで撥水性はあるが、燃料電池において長時間使用されるとその撥水性が損なわれ、正極に過剰な水分が含まれるようになり、この水分に阻害されて正極ガスが電解質膜に届きにくくなる、いわゆるフラッディングが発生する。このため、電圧及び電流が下がり、この結果として出力が低下するという課題があった。
さらに、固体高分子型燃料電池の正極で行われる酸素の還元反応は、一般にアルカリ性条件下で良好な速度で進行する。しかしながら、イオン交換樹脂のスルフォン基が電解質膜の正極との界面を酸性にするため、従来の固体高分子型燃料電池では、正極における酸素の還元反応の速度が著しく低下するという課題があった。
さらに、従来の固体高分子型燃料電池における電解質膜はそれ自体の吸水性が低いため、吸水や吸湿によって発熱しない。一方、燃料電池の中心部には、常温に近い正極ガスと負極ガスが常に流れる。このため、外部から加える熱エネルギーを大きくしなければ、良好な電極反応が得られる80℃〜95℃に燃料電池の動作温度が達せず、規定の出力を維持することができないという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能な固体高分子型燃料電池を得ることを目的とする。
この発明に係る固体高分子型燃料電池は、毛細管現象で吸水する高分子材料からなる電解質膜を備えるものである。
この発明によれば、毛細管現象で吸水する高分子材料からなる電解質膜を備えたので、負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能であるという効果がある。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図である。図1において、実施の形態1による電極セル1は、ガス拡散電極としてそれぞれ機能する正極及び負極によって電解質膜2を狭持し、この積層体を正極側と負極側とで燃料ガス及び酸素含有ガスの流路を形成する正極セパレータ5及び負極セパレータ6で狭持し、これらセパレータ5,6上に正極集電板7及び負極集電板8をそれぞれ設けて構成される。また。正極及び負極には、正極触媒反応層(以下、正極反応層と称す)3及び負極触媒反応層(以下、負極反応層と称す)4がそれぞれ形成される。
正極セパレータ5及び負極セパレータ6には、複数のリブがそれぞれ形成されている。正極セパレータ5側に形成されたリブは、正極反応層3を介した正極の表面との間で酸素含有ガスの流路となる酸素流路9を形成する。また、負極セパレータ6側に形成されたリブは、負極反応層4を介した負極の表面との間で燃料ガスの流路となる水素流路10を形成する。
電解質膜2には、従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマーやフッ素を導入した炭化水素ポリマーから成膜された吸水性のない電解質膜ではなく、毛細管現象で吸水する水収着量WU(Water Uptake)が75wt%以上のポリマー、樹脂若しくはこれらの繊維を成膜したものを使用した。これにより、この実施の形態1による燃料電池の動作時での電解質膜2内の相対湿度をほぼ100%RHとした。
なお、毛細管現象では、数10nmレベル程度の穴等の細い空間内を重力や上下左右に関係なく水が浸透していく。本発明では、電解質膜2に上述のポリマーを使用した毛細管現象により、電解質膜2と正極の界面で発生した反応水が正極内に移動する際に電解質膜2から水を吸出し、それと連続して負極ガスで加湿した水蒸気が負極から電解質膜2へ移動させ、電解質膜2の相対湿度をほぼ100%Rhとすることをいう。
電解質膜2を構成するポリマーとしては、例えばポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルを使用する。この場合、主成分がポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルであれば良い。なお、ポリアクリル酸エステルには、ポリアクリレート、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル等があるが、特にポリアクリレート、アミノアルキルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体(HEMA−MMA)及びジメチルアミノエチルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体(DMAEMA−MMA)のいずれかが良い。HEMA−MMAやDMAEMA−MMAでは、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジメチルアミノエチルメタクリレートに吸水性がある。
ポリ芳香族エステルには、ポリアリレート等がある。ポリアリレートは、二価フェノールと二塩基酸との重縮合物であるが、一般には二価フェノールと芳香族ジカルボン酸とのポリエステルとして全芳香族ポリエステル系樹脂に分類されており、本発明ではいずれを使用しても良い。
また、電解質膜2を構成するポリマーとしては、吸水性を持たせたポリエチレンナフタレート又はポリエーテルニトリルを使用しても良い。この場合、ポリエチレンナフタレート又はポリエーテルニトリルを0.5〜1.5秒かけて真空プラズマ処理することにより吸水性にする。
上述したポリマーのプロトン導電性は、例えばポリアリレート又はポリエチレンナフタレートのポリマー側鎖に官能基としてスルフォン基(SO3H)又はリン酸基(PO3H)を導入することにより持たせた。この他、フラッディング防止のため、ポリマーに疎水性のシロキサン側鎖、長鎖アルキル側鎖(炭素数が6〜22個)及びメソゲン側鎖のいずれかを導入する。
なお、正極における酸素の還元反応は、一般的にアルカリ性条件下で良好な反応速度で進行し、スルフォン基又はリン酸基を有する電解質膜の酸性条件下では反応速度が著しく低下してしまう。このような固体高分子型燃料電池に特有の問題に対しては、電解質膜2を構成するポリマーの側鎖に官能基としてナトリウムを導入したナトリウムアクリレートを用い、電解質膜2の正極との界面をアルカリ性とすることで解決する。
正極反応層3及び負極反応層4は、電解質膜2に面して正極及び負極を構成するカーボンペーパー(又はカーボン布)上に形成される。反応層3,4を形成した2枚の電極を電解質膜2を介して一体に積層した積層体に対して、電解質膜/電極接合体を形成し、この電解質膜/電極接合体を用いて実施の形態1による燃料電池の電極セル1が組み立てられる。
先ず、触媒金属である白金をカーボンブラック粉末に担示させた粉末、パーフルオロスルフォン酸ポリマー液及び水又はエチルアルコール等を混合して、ペースト状あるいはスラリー状にしたものを形成する。この後、ペースト状あるいはスラリー状にした混合物を、スクリーン印刷法で数十μmの厚さでパーフルオロスルフォン酸ポリマー液で撥水処理を施したカーボンペーパー上に付着させ、熱処理を行って反応層3,4を設けた正極及び負極を形成する。これら反応層3,4を設けた正極及び負極で電解質膜2を狭持したものを、ホットプレス等によって一体化して電解質膜/電極接合体を作成する。
また、正極反応層3及び負極反応層4には、正極反応層3で燃料電池の動作時に発生した水蒸気や水を排出し易くするため、負極反応層4で加湿する水を電解質膜2へスムーズに供給するため、空孔径の大きい多孔質のカーボンペーパーを使用する。正極セパレータ5及び負極セパレータ6は、成形金型を用いて酸素ガス流路9及び水素流路10となるリブが設けられ、上述の電解質膜/電極接合体を狭持する。
図2は、水素クロスオーバー量と水収着量の関係を示すグラフであり、実施の形態1による固体高分子型燃料電池の他、従来の構成のセルを用いた固体高分子型燃料電池及び実施の形態2〜4で後述する固体高分子型燃料電池の実験結果を示している。なお、図2に示す実験結果は、燃料電池を動作させた際に正極から出るガス成分中の水素をガスクロマトグラフィーで分析することにより得られた。図3は、固体高分子型燃料電池の出力電圧と出力電流密度の関係を示すグラフであり、実施の形態1による燃料電池の他、従来の構成のセルを用いた固体高分子型燃料電池及び実施の形態2〜5で後述する固体高分子型燃料電池の実験結果を示している。なお、図3における実施の形態1に対応する実験結果は、図2で示したものと同様のセル構成である。
図2及び図3に示す実験結果を得た実施の形態1による固体高分子型燃料電池のセル1は、スルフォン化したポリアクリレート膜を電解質膜2として使用している。具体的には、ポリアクリレート膜を亜硫酸ナトリウム溶液に浸漬させてスルフォン酸ナトリウム基(SO3Na)を導入した後、塩酸ナトリウムを溶出させる処理を施してプロトン導電性を有するスルフォン化されたポリアクリレート膜を得る。この際、プロトン導電率を最大にするため、スルフォン化効率を最大にした。ただし、後述する実施の形態5にも示すように、ポリアクリレートそのものは吸水により発熱するが、スルフォン化効率が大きいことは温度上昇に関係ない部分が多く、この実施の形態1では、温度はほとんど上昇しない。このポリアクリレート膜の電解質膜2を用いて、上述した手順で電解質膜/電極接合体を作成し、運転初期の特性に加え、長期運転後の特性の向上を考慮してフラッディング防止のためにシロキサン側鎖を導入し、酸素の還元反応速度を上げるためにナトリウムを導入することにより、セル1を作成した。
このように、実施の形態1による固体高分子型燃料電池では、電解質膜2が吸水性になって、燃料電池の動作時に電解質膜2内の湿度がほぼ100%RHとなっている。これにより、電解質膜2を室温の水に浸漬したときの水収着量WUは、図2中にプロットaで示すように75wt%程度となり、従来のように電解質膜としてパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の30wt%(図2中のプロットA)や炭化水素膜(フッ素を導入した炭化水素膜)を用いた場合の50wt%(図2中のプロットB)と比較して著しい向上がみられた。
また、図2に示すように、水素ガスのクロスオーバー量は、電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合は0.9%(図2中のプロットA)であり、炭化水素膜を用いた場合は0.3%(図2中のプロットB)であったが、実施の形態1による固体高分子型燃料電池では、0.05%となり、従来の構成と比較して著しい低下がみられた。
出力特性は、図3に示すように出力電流密度が200mA/cm2で出力電圧がおよそ0.73V(図3中の曲線a1参照)となり、同じ出力電流密度における電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の0.60V(図3中の曲線A1参照)、電解質膜に炭化水素膜を用いた場合の0.61V(図3中の曲線B1参照)と比較して著しい向上がみられた。
なお、負極燃料としてメタノール水溶液を使用した場合であっても、出力電圧を向上させることができる。これは、メタノールの平面表面に対する濡れ角が水より小さく濡れやすいため、電解質膜2の湿度がほぼ100%RHであれば、メタノールが電解質膜2の表面に留まる。このようにメタノールが正極側に移動し難くなることから、メタノールのクロスオーバー量が小さくなる。これにより、固体高分子型燃料電池の出力電圧を向上させることができる。
以上のように、この実施の形態1によれば、固体高分子型燃料電池のプロトン導電性の電解質膜2として高吸水性のポリマー又は樹脂を使用し、この電解質膜2の水収着量WUを75wt%以上とし、毛細管現象を利用して水、水蒸気又はメタノールに室温でほぼ100%以上浸された状態に構成したので、負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能な燃料電池を提供することができる。これにより、携帯端末用の固体高分子型燃料電池として好適に利用することができる。
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図である。図4において、実施の形態2による燃料電池の電極セル1Aでは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーに対して、吸水性を有する上記実施の形態1で示したポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルのポリマー、樹脂又はその繊維を、所定の体積比30%〜70%で重合又は混合させたものを成膜し電解質膜2aとして用いる。
ここで、上記実施の形態1で示した図2及び図3を用いて、実施の形態2による固体高分子型燃料電池の特性を説明する。図2及び図3に示す実験結果を得た実施の形態2による燃料電池のセル1Aは、スルフォン化したポリアクリレートとパーフルオロスルフォン酸ポリマーとを体積比60%/40%で混合してなる電解質膜2aを用いている。
このように、実施の形態2による固体高分子型燃料電池では、電解質膜2aが吸水性になって、燃料電池の動作時に電解質膜2内の湿度がほぼ100%RHとなっている。これにより、電解質膜2aを室温の水(水蒸気又はメタノール)に浸漬したときの水収着量WUは、図2中にプロットbで示すように70wt%程度となり、従来のように電解質膜としてパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の30wt%(図2中のプロットA)や炭化水素膜(フッ素を導入した炭化水素膜)を用いた場合の50wt%(図2中のプロットB)と比較して著しい向上がみられた。
また、図2に示すように、水素ガスのクロスオーバー量は、電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合は0.9%(図2中のプロットA)であり、炭化水素膜を用いた場合は0.3%(図2中のプロットB)であったが、実施の形態2による燃料電池では、0.06%となり、従来の構成と比較して著しい低下がみられた。
出力特性は、図3に示すように出力電流密度が200mA/cm2で出力電圧がおよそ0.73V(図3中の曲線b1参照)となり、同じ出力電流密度における電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の0.6V(図3中の曲線A1参照)、電解質膜に炭化水素膜を用いた場合の0.61V(図3中の曲線B1参照)と比較して著しい向上がみられた。
図5は、水素クロスオーバー量とポリアクリレート含有率との関係を示すグラフであり、上述したスルフォン化したポリアクリレートとパーフルオロスルフォン酸ポリマーとの体積比をポリアクリレートの含有率とした場合における水素ガスのクロスオーバー量を示している。図5に示すように、上述した所定の体積比30%〜70%の範囲内の数値であるポリアクリレートの含有率が60%の場合、水素ガスのクロスオーバー量が最も少なくなり、燃料電池の出力電圧も最も高い値が得られた。
一方、上述した所定の体積比30%〜70%の範囲外である、ポリアクリレートの含有率が70%を超えると、水収着量WUが減少することから、図5に示すように水素ガスのクロスオーバー量が上昇する。これは、スルフォン化したポリアクリレートとパーフルオロスルフォン酸ポリマーとを混合した際、ポリアクリレート粒子が直線状であり、パーフルオロスルフォン酸ポリマーの粒子が球状であるため、両者が均一に混合しなかったことに起因すると考えられる。
また、ポリアクリレート含有率が30%を下回る場合も水収着量WUが急激に減少し、水素ガスのクロスオーバー量が増加する。これは、スルフォン化したポリアクリレートの含有量が少ないと、パーフルオロスルフォン酸ポリマーの撥水性に電解質膜の特性が支配されるためである。
以上のように、この実施の形態2によれば、固体高分子型燃料電池のプロトン導電性の電解質膜2aとして、吸水性のない樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーに体積比で30%〜70%の高吸水性のポリマー又は樹脂を混合又は重合したものを用い、この電解質膜2aの水収着量WUを70wt%以上とし、毛細管現象を利用して、水、水蒸気又はメタノールに室温でほぼ100%以上浸された状態に構成したので、負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能な燃料電池を提供することができる。これにより、携帯端末用の固体高分子型燃料電池として好適に利用できる。
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図であり、図6(a)は吸水性のない樹脂による電解質膜の正極側に、毛細管現象で吸水する水収着量WU75wt以上のポリマー、樹脂又はその繊維から成膜した吸水性のある電解質膜を第2の電解質膜として設けた構成を示し、図6(b)は吸水性のない樹脂による電解質膜の負極側に同様に吸水性のあるポリマーからなる電解質膜を第2の電解質膜として設けた構成を示し、図6(c)は吸水性のない樹脂による電解質膜の正極側及び負極側の双方に上記吸水性のあるポリマーからなる電解質膜を第2の電解質膜として設けた構成を示している。
図6(a)に示す実施の形態3による固体高分子型燃料電池の電極セル1Bは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーで作成した電解質膜2bの正極側に、吸水性を有する上記実施の形態1で示したポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルのポリマー、樹脂又はその繊維で作成した電解質膜11を配置した構成を有する。
また、図6(b)に示す実施の形態3による固体高分子型燃料電池の電極セル1Cは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーで作成した電解質膜2bの負極側に、吸水性を有する上記実施の形態1で示したポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルのポリマー、樹脂又はその繊維で作成した電解質膜12を配置した構成を有する。
さらに、図6(c)に示す実施の形態3による固体高分子型燃料電池の電極セル1Dは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーで作成した電解質膜2bの正極側及び負極側の双方に、吸水性を有する上記実施の形態1で示したポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルのポリマー、樹脂又はその繊維からなる電解質膜11,12を配置した構成を有する。
ここで、上記実施の形態1で示した図2及び図3を用いて、実施の形態3による固体高分子型燃料電池の特性を説明する。図2及び図3に示した実験結果は、実施の形態3による燃料電池のうち、従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマーで作成した電解質膜2bの負極側に、吸水性を有するスルフォン化したポリアクリレートで作成した電解質膜12を配置したセル1Cを使用した燃料電池から得られた。なお、セル1B,1Dにおいても同様の結果が得られた。
実施の形態3による固体高分子型燃料電池では、セル1Cの場合、吸水性の電解質膜12によって負極ガスへ加湿した水蒸気が吸水されることにより、電解質膜12への水(水蒸気又はメタノール)の供給量が増加し、燃料電池の動作時に電解質膜内の湿度がほぼ100%RHとなる。これにより、その水収着量WUは、図2中にプロットcで示すように70wt%程度となり、従来のように電解質膜としてパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の30wt%(図2中のプロットA)や炭化水素膜(フッ素を導入した炭化水素膜)を用いた場合の50wt%(図2中のプロットB)と比較して著しい向上がみられた。
なお、セル1Bの場合は、正極で発生した水が電解質膜11へ吸水されることにより、電解質膜11への水(水蒸気又はメタノール)の供給量が増加し、燃料電池の動作時に電解質膜内の湿度がほぼ100%RHとなる。これにより、上記と同様の結果が得られる。また、セル1Dの場合においても、正極側及び負極側で吸水性の電解質膜11,12によって上記と同様の結果が得られる。このように、吸水性のない電解質膜2bの正極側、負極側、及び正極側と負極側の双方に毛細管現象で吸水性を有する電解質膜11,12を設けることにより、電解質膜2bと電解質膜11,12又はその両方との界面で負極側から正極側への水素移動を限りなく遮断することができるため、電解質膜の水収着量が上昇し、水素ガスのクロスオーバー量を下げることができる。
また、図2に示すように、水素ガスのクロスオーバー量は、電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合は0.9%(図2中のプロットA)であり、炭化水素膜を用いた場合は0.3%(図2中のプロットB)であったが、セル1Cを使用した実施の形態3による燃料電池では、0.072%となり、従来の構成と比較して著しい低下がみられた。
出力特性は、図3に示すように出力電流密度が200mA/cm2で出力電圧がおよそ0.70V(図3中の曲線c1参照)となり、同じ出力電流密度における電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の0.60V(図3中の曲線A1参照)、電解質膜に炭化水素膜を用いた場合の0.61V(図3中の曲線B1参照)と比較して著しい向上がみられた。
以上のように、この実施の形態3によれば、吸水性のない樹脂による電解質膜の正極側、負極側、正極側と負極側の双方に、毛細管現象で吸水する水収着量WU75wt以上のポリマー、樹脂又はその繊維から成膜した吸水性のある電解質膜11,12又はその両方を設けた電極セルを備えたので、負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能な燃料電池を提供することができる。これにより、携帯端末用の固体高分子型燃料電池として好適に利用できる。
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図であり、図7(a)は吸水性のない樹脂による電解質膜の正極側に、吸水性のある電解質膜を第2の電解質膜として設けた構成を示し、図7(b)は吸水性のない樹脂による電解質膜の負極側に同様に吸水性のある電解質膜を第2の電解質膜として設けた構成を示し、図7(c)は吸水性のない樹脂による電解質膜の正極側及び負極側の双方に上記吸水性のある電解質膜を第2の電解質膜として設けた構成を示している。なお、実施の形態4による上記吸水性のある電解質膜は、上記実施の形態2と同様に、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーに対して、吸水性を有する上記実施の形態1で示したポリアクリル酸エステル又はポリ芳香族エステルのポリマー、樹脂又はその繊維を、所定の体積比30%〜70%で重合又は混合させたものである。
図7(a)に示す実施の形態4による固体高分子型燃料電池の電極セル1Eは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーで作成した電解質膜2bの正極側に、吸水性を有する上記実施の形態2で示した電解質膜11aを配置した構成を有する。
また、図7(b)に示す実施の形態4による固体高分子型燃料電池の電極セル1Fは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーで作成した電解質膜2bの負極側に、吸水性を有する上記実施の形態2で示した電解質膜12aを配置した構成を有する。
さらに、図7(c)に示す実施の形態4による固体高分子型燃料電池の電極セル1Gは、吸水性を有さない電解質膜樹脂、例えば従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーで作成した電解質膜2bの正極側及び負極側の双方に、吸水性を有する上記実施の形態2で示した電解質膜11a,12aを配置した構成を有する。
ここで、上記実施の形態1で示した図2及び図3を用いて、実施の形態4による固体高分子型燃料電池の特性を説明する。図2及び図3に示した実験結果は、実施の形態4による燃料電池のうち、従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマーで作成した電解質膜2bの負極側に、スルフォン化したポリアクリレートとパーフルオロスルフォン酸ポリマーとを体積比60%/40%で混合してなる電解質膜12aを配置したセル1Fを使用した燃料電池から得られた。なお、セル1E,1Gにおいても同様の結果が得られた。
実施の形態4による固体高分子型燃料電池では、セル1Fの場合、負極ガスへ加湿した水蒸気が電解質膜12aに一部吸水されることにより、電解質膜12aへの水(水蒸気又はメタノール)の供給量が増加し、燃料電池の動作時に電解質膜内の湿度がほぼ100%RHとなる。これにより、その水収着量WUは、図2中にプロットdで示すように67wt%程度となり、従来のように電解質膜としてパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の30wt%(図2中のプロットA)や炭化水素膜(フッ素を導入した炭化水素膜)を用いた場合の50wt%(図2中のプロットB)と比較して著しい向上がみられた。
なお、セル1Eの場合は、正極で発生した水が電解質膜11aに一部吸水されることにより、電解質膜11aへの水(水蒸気又はメタノール)の供給量が増加し、燃料電池の動作時に電解質膜内の湿度がほぼ100%RHとなる。これにより、上記と同様の結果が得られる。また、セル1Gの場合、正極側及び負極側で吸水性の電解質膜11a,12aによって上記と同様の結果が得られる。
このように、吸水性のない電解質膜2bの正極側、負極側、及び正極側と負極側の双方に毛細管現象によって吸水性を有する電解質膜11a,12aを設けることにより、電解質膜2bと電解質膜11a,12a又はその両方との界面で負極側から正極側への水素移動を遮断することができるため、電解質膜の水収着量が上昇し、水素ガスのクロスオーバー量を下げることができる。
また、図2に示すように、水素ガスのクロスオーバー量は、電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合は0.9%(図2中のプロットA)であり、炭化水素膜を用いた場合は0.3%(図2中のプロットB)であったが、セル1Fを使用した実施の形態4による燃料電池では、0.1%となり、従来の構成と比較して著しい低下がみられた。
出力特性は、図3に示すように出力電流密度が200mA/cm2で出力電圧がおよそ0.67V(図3中の曲線d1参照)となり、同じ出力電流密度における電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の0.60V(図3中の曲線A1参照)、電解質膜に炭化水素膜を用いた場合の0.61V(図3中の曲線B1参照)と比較して著しい向上がみられた。
なお、電解質膜11a,12aが、上述した所定の体積比30%〜70%の範囲内の数値であるポリアクリレートの含有率が60%で、パーフルオロスルフォン酸ポリマーの体積比が40%である場合、水素ガスのクロスオーバー量が最も少なくなり、燃料電池の出力電圧も最も高い値が得られた。
以上のように、この実施の形態4によれば、吸水性のない樹脂による電解質膜の正極側、負極側、正極側と負極側の双方に、従来のパーフルオロスルフォン酸ポリマー又はフッ素を導入した炭化水素ポリマーに体積比で30%〜70%の高吸水性のポリマー又は樹脂を混合又は重合した吸水性のある電解質膜11a,12a又はその両方を設けた電極セルを備えたので、負極ガスのクロスオーバを防止し、安定した高出力が可能な燃料電池を提供することができる。これにより、携帯端末用の固体高分子型燃料電池として好適に利用できる。
実施の形態5.
この実施の形態5による固体高分子型燃料電池は、吸湿発熱性を有する樹脂からなる電解質膜を有するセルを使用する。吸湿発熱性を有する樹脂としては、例えばポリアクリレート、ポリアリレートやポリエチレンナフタレートがあり、これらは毛細管現象により吸水し水収着量WUが75wt%以上である。
次にスルフォン化したポリアクリレートを電解質膜に使用した場合を説明する。
ポリアクリレートの吸湿発熱性は、1gあたり800ジュールから2000ジュールある。この樹脂から成膜した膜は吸湿することで、1gあたり300calの発熱を得ることができ、これは弱い吸湿発熱性を持つとされる100%羽毛の90calの約3倍、ほとんど持たないとされるポリエステル5calの約60倍である。
従来の電解質膜に使用されていたパーフルオロスルフォン酸ポリマー等は、全く吸湿発熱性を有さないが、スルフォン化したポリアクリレートを使用することで燃料電池の電解質膜の温度が約10℃上昇した。なお、このときのスルフォン化効率は、温度上昇値を最大にするために適度な値(10℃上昇での最適値)にし、初期電圧が最大になるようにした。上記実施の形態1で示した図3を用いて、実施の形態5による燃料電池の特性を説明する。図3に示した実験結果は、スルフォン化したポリアクリレートを電解膜とした実施の形態5による燃料電池から得られた。
実施の形態5による固体高分子型燃料電池は、吸湿発熱性のあるポリアクリレートを電解質膜として使用していることから動作中の温度が10℃程度上昇する。これにより、出力特性が、図3に示すように出力電流密度が200mA/cm2で出力電圧がおよそ0.75V(図3中の曲線e1参照)となり、同じ出力電流密度における電解質膜にパーフルオロスルフォン酸膜を用いた場合の0.60V(図3中の曲線A1参照)、電解質膜に炭化水素膜を用いた場合の0.61V(図3中の曲線B1参照)と比較して著しい向上がみられた。また、上記実施の形態1の構成と比較して、電圧が高くなったが、動作中の温度が10℃上昇することにより燃料電池の長期運転で電解質膜の劣化が少し早くなる。このため、燃料電池寿命は少し短くなった。
以上のように、この実施の形態5によれば、吸湿発熱性を有する樹脂からなる電解質膜を使用したので、安定した高出力が可能な燃料電池を提供することができる。これにより、携帯端末用の固体高分子型燃料電池として好適に利用できる。
なお、上記実施の形態5で示したポリアクリレート樹脂から成膜した電解質膜は、アンモニア等のアルカリ性ガスが溶解した負極ガスの加湿水蒸気又は負極の燃料メタノール(本来は中性だが溶解するとアルカリ性)及び正極で発生した水(本来は中性だが溶解するとアルカリ性)を中和する。また、二酸化硫黄ガス等の酸性ガスが溶解した負極ガスの加湿水蒸気又は負極の燃料メタノール、及び正極で発生した水(本来は中性だが溶解すると酸性)を中和する。
さらに、KTアルカリ1212(3.0g)を溶解させた溶液はpH12と強アルカリ性であるが、上述した吸湿発熱性膜を通ると15分でpH8.8と中性になる。アルカリ汗液を溶解させた溶液はpH8.8と弱アルカリ性であるが、上述した吸湿発熱性膜を通ると15分でpH6.6と中性になる。酢酸(濃度48%:0.3mol/l)を溶解させた溶液はpH4と強酸性であるが、上述した吸湿発熱性膜を通ると15分でpH6.6と中性になる。酸性汗液を溶解させた溶液はpH6と弱酸性であるが、上述した吸湿発熱性膜を通ると、15分でpH6.6と中性になる。
また、上述した吸湿発熱性膜を通り、加湿水蒸気又はメタノール中の水を吸湿することで、強アルカリ性であるアンモニア濃度100%溶液を10分後に63%、30分後に56%溶液、180分後に38%溶液とアルカリ性を弱めることができた。
さらに、強酸性であるイソキチソウサン濃度100%溶液では、上述した吸湿発熱性膜に通すことにより、10分後に57%、30分後に30%溶液、180分後に20%溶液と酸性を弱めることができた。さらに、強酸性である酢酸濃度100%溶液では、上述した吸湿発熱性膜に通すことにより、10分後に47%、30分後に31%溶液、180分後に13%溶液と酸性を弱めることができた。
このように、上述した吸湿発熱性膜は、酸性溶液やアルカリ性溶液を中和することができるので、吸湿発熱性を有する樹脂からなる電解質膜は、従来の電解質膜を使用した場合の2倍の寿命にすることができる。
この発明の実施の形態1による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図である。 水素クロスオーバー量と水収着量の関係を示すグラフである。 燃料電池の出力電圧と出力電流密度の関係を示すグラフである。 この発明の実施の形態2による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図である。 水素クロスオーバー量とポリアクリレート含有率との関係を示すグラフである。 この発明の実施の形態3による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態4による固体高分子型燃料電池のセル構成を示す断面図である。
符号の説明
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G セル、2,2a,2b,11,11a,12,12a 電解質膜、3 正極反応層、4 負極反応層、5 正極セパレータ、6 負極セパレータ、7 正極集電板、8 負極集電板、9 酸素流路、10 水素流路。

Claims (7)

  1. 毛細管現象で吸水する高分子材料からなる電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池。
  2. 吸水性のない高分子材料と毛細管現象で吸水する高分子材料とを重合又は混合してなる電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池。
  3. 毛細管現象で吸水する高分子材料からなる電解質膜を、正極側、負極側及び正極と負極の両側のいずれかに設けた第2の電解質膜として備えた固体高分子型燃料電池。
  4. 吸水性のない高分子材料と毛細管現象で吸水する高分子材料とを重合又は混合してなる電解質膜を、正極側、負極側及び正極と負極の両側のいずれかに設けた第2の電解質膜として備えた固体高分子型燃料電池。
  5. 毛細管現象で吸水する高分子材料は、その主成分がポリアクリル酸エステル及びポリ芳香族エステルのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池。
  6. 毛細管現象で吸水する高分子材料は、吸湿発熱性を有することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池。
  7. 毛細管現象で吸水する高分子材料は、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、アミノアルキルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体及びジメチルアミノエチルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池。
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