JP2009021041A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料供給流路に設けた開閉弁の下流側における圧力変化分に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出する燃料電池システムにおいて、クロスリークの影響を抑制してガス噴射量の算出精度を向上させる。
【解決手段】燃料電池10と、燃料供給源30から供給される燃料ガスを燃料電池10へと流すための燃料ガス供給流路31と、燃料ガス供給流路31の上流側におけるガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁35と、開閉弁35からのガス噴射量を算出する噴射量算出手段4と、を備える燃料電池システム1である。燃料オフガス排出流路32、酸化ガス供給流路21及び酸化オフガス排出流路22に各々遮断弁を設ける。噴射量算出手段4は、各遮断弁を閉鎖し、開閉弁35下流側におけるガス圧力の増分と、カソード側閉空間におけるガス圧力の増分と、に基づいて開閉弁35からのガス噴射量を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
従来より、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが提案され、実用化されている。かかる燃料電池システムには、水素タンク等の燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料供給流路が設けられている。そして、この燃料供給流路には、燃料供給源からの燃料ガスの供給圧力を一定の値まで低減させる調圧弁(レギュレータ)が設けられるのが一般的である。
また、現在においては、燃料ガスの供給状態(供給量・供給圧力等)を変化させる開閉弁を燃料供給流路に設けることにより、システムの運転状態に応じて燃料ガスの供給状態を変化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2005−302563号公報
ところで、近年においては、燃料供給流路の開閉弁下流側における圧力変化分(例えば所定時間内における圧力の増分)を検出し、この圧力変化分に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出し、このガス噴射量等に基づいて開閉弁の開閉動作を制御する技術の開発が進められている。
しかし、燃料電池の運転時間が長くなったり、燃料電池を構成する電解質膜の温度が上昇したりすると、燃料供給流路を経由して燃料電池のアノード側へと供給された燃料ガスがカソード側へと透過する現象(クロスリーク)が発生する場合がある。このようなクロスリークが発生すると、燃料供給流路の開閉弁下流側における圧力変化分がクロスリーク分だけ低減してしまうため、圧力変化分に基づくガス噴射量の算出精度が低下し、この結果、開閉弁の制御精度が低下してしまうという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、燃料供給流路に設けられた開閉弁の下流側における圧力変化分に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出して開閉弁を制御する燃料電池システムにおいて、クロスリークの影響を抑制してガス噴射量の算出精度を向上させることを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る第一の燃料電池システムは、燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料ガス供給流路と、この燃料ガス供給流路の上流側におけるガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、この開閉弁からのガス噴射量を算出する噴射量算出手段と、燃料電池から排出される燃料オフガスを流すための燃料オフガス排出流路と、燃料電池へと供給される酸化ガスを流すための酸化ガス供給流路と、燃料電池から排出される酸化オフガスを流すための酸化オフガス排出流路と、を備える燃料電池システムであって、燃料オフガス排出流路に設けられたアノード側遮断弁と、酸化ガス供給流路に設けられた第一のカソード側遮断弁と、酸化オフガス排出流路に設けられた第二のカソード側遮断弁と、を備え、噴射量算出手段は、アノード側遮断弁を閉鎖するとともに、第一及び第二のカソード側遮断弁を閉鎖し、開閉弁下流側の燃料ガス供給流路内におけるガス圧力の増分と、第一及び第二のカソード側遮断弁の間に形成される閉空間内におけるガス圧力の増分と、に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出するものである。
かかる構成を採用すると、アノード側流路内のガス圧力の増分に係る情報だけでなく、カソード側流路内のガス圧力の増分に係る情報に基づいて、開閉弁からのガス噴射量を算出することができる。従って、クロスリークの発生により燃料ガスが燃料電池のアノード側からカソード側に透過しカソード側流路内のガス圧力が増大した場合においても、開閉弁からのガス噴射量を精度良く算出することができる。なお、「ガス状態」とは、流量、圧力、温度、モル濃度等で表されるガスの状態を意味し、特にガス流量及びガス圧力の少なくとも一方を含むものとする。
また、本発明に係る第二の燃料電池システムは、燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料ガス供給流路と、この燃料ガス供給流路の上流側におけるガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、この開閉弁からのガス噴射量を算出する噴射量算出手段と、燃料電池へと供給される酸化ガスを流すための酸化ガス供給流路と、を備える燃料電池システムであって、噴射量算出手段は、燃料ガス供給流路におけるガス圧力と酸化ガス流路におけるガス圧力とを一致させた状態で、開閉弁下流側における燃料ガス供給流路内のガス圧力の増分に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出するものである。
かかる構成を採用すると、アノード側流路におけるガス圧力とカソード側流路におけるガス圧力とを一致させることにより、クロスリークの影響を抑制することができる。従って、アノード側流路内のガス圧力の増分に係る情報に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出する際の算出精度を高めることができる。
前記燃料電池システムにおいて、燃料電池から排出される燃料オフガスを流すための燃料オフガス排出流路と、燃料電池から排出される酸化オフガスを流すための酸化オフガス排出流路と、を設けるとともに、燃料オフガス排出流路にアノード側遮断弁を、酸化ガス供給流路に第一のカソード側遮断弁を、酸化オフガス排出流路に第二のカソード側遮断弁を、各々設けることができる。そして、各遮断弁に開故障が発生した場合に、燃料ガス供給流路におけるガス圧力と酸化ガス流路におけるガス圧力とを一致させた状態で、開閉弁下流側における燃料ガス供給流路内のガス圧力の増分に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出する噴射量算出手段を採用することができる。
かかる構成を採用すると、各遮断弁に開故障が発生した場合においても、アノード側流路におけるガス圧力とカソード側流路におけるガス圧力とを一致させて、クロスリークの影響を抑制することができる。従って、アノード側流路内のガス圧力の増分に係る情報に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出する際の算出精度を高めることができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、開閉弁としてインジェクタを採用することができる。
本発明によれば、燃料供給流路に設けられた開閉弁の下流側における圧力変化分に基づいて開閉弁からのガス噴射量を算出して開閉弁を制御する燃料電池システムにおいて、クロスリークの影響を抑制してガス噴射量の算出精度を向上させることが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。
まず、図1〜図4を用いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。本実施形態に係る燃料電池システム1は、図1に示すように、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池10を備えるとともに、燃料電池10に酸化ガスとしての空気を供給する酸化ガス配管系2、燃料電池10に燃料ガスとしての水素ガスを供給する水素ガス配管系3、システム全体を統合制御する制御装置4等を備えている。
燃料電池10は、反応ガスの供給を受けて発電する単電池を所要数積層して構成したスタック構造を有している。燃料電池10により発生した電力は、PCU(Power Control Unit)11に供給される。PCU11は、燃料電池10とトラクションモータ12との間に配置されるインバータやDC−DCコンバータ等を備えている。また、燃料電池10には、発電中の電流を検出する電流センサ13が取り付けられている。
酸化ガス配管系2は、加湿器20により加湿された酸化ガス(空気)を燃料電池10に供給するための酸化ガス供給流路としての空気供給流路21と、燃料電池10から排出された酸化オフガスを加湿器20に導く酸化オフガス排出流路としての空気排出流路22と、加湿器21から外部に酸化オフガスを導くための排気流路23と、を備えている。空気供給流路21には、大気中の酸化ガスを取り込んで加湿器20に圧送するコンプレッサ24と、コンプレッサ24から燃料電池10へと供給される酸化ガスを遮断する第一のカソード側遮断弁25と、圧力センサ26と、が設けられている。また、空気排出流路22には、燃料電池10から排出される酸化オフガスを遮断する第二のカソード側遮断弁27が設けられている。圧力センサ26は、第一のカソード側遮断弁25と第二のカソード側遮断弁27との間に形成されるカソード側閉空間の圧力を検出する。
水素ガス配管系3は、高圧の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク30と、水素タンク30の水素ガスを燃料電池10に供給するための燃料ガス供給流路としての水素供給流路31と、燃料電池10から排出された水素オフガスを水素供給流路31に戻すための燃料オフガス排出流路としての循環流路32と、を備えている。なお、水素タンク30に代えて、炭化水素系の燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、この改質器で生成した改質ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクと、を燃料供給源として採用することもできる。また、水素吸蔵合金を有するタンクを燃料供給源として採用してもよい。
水素供給流路31には、水素タンク30からの水素ガスの供給を遮断又は許容する遮断弁33と、水素ガスの圧力を調整するレギュレータ34と、インジェクタ35と、が設けられている。また、インジェクタ35の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力及び温度を検出する一次側圧力センサ41及び温度センサ42が設けられている。また、インジェクタ35の下流側であって水素供給流路31と循環流路32との合流部A1の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力を検出する二次側圧力センサ43が設けられている。
レギュレータ34は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置である。本実施形態においては、一次圧を減圧する機械式の減圧弁をレギュレータ34として採用している。機械式の減圧弁の構成としては、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする公知の構成を採用することができる。本実施形態においては、図1に示すように、インジェクタ35の上流側にレギュレータ34を2個配置することにより、インジェクタ35の上流側圧力を効果的に低減させることができる。このため、インジェクタ35の機械的構造(弁体、筺体、流路、駆動装置等)の設計自由度を高めることができる。また、インジェクタ35の上流側圧力を低減させることができるので、インジェクタ35の上流側圧力と下流側圧力との差圧の増大に起因してインジェクタ35の弁体が移動し難くなることを抑制することができる。従って、インジェクタ35の下流側圧力の可変調圧幅を広げることができるとともに、インジェクタ35の応答性の低下を抑制することができる。
インジェクタ35は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ35は、水素ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座を備えるとともに、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に収容保持され噴射孔を開閉する弁体と、を備えている。インジェクタ35の弁体は例えばソレノイドにより駆動され、このソレノイドに給電されるパルス状励磁電流のオン・オフにより、噴射孔の開口面積を2段階又は多段階に切り替えることができるようになっている。制御装置4から出力される制御信号によってインジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期が制御されることにより、水素ガスの流量及び圧力が高精度に制御される。インジェクタ35は、弁(弁体及び弁座)を電磁駆動力で直接開閉駆動するものであり、その駆動周期が高応答の領域まで制御可能であるため、高い応答性を有する。
なお、本実施形態においては、図1に示すように、水素供給流路31と循環流路32との合流部A1より上流側にインジェクタ35を配置している。また、図1に破線で示すように、燃料供給源として複数の水素タンク30を採用する場合には、各水素タンク30から供給される水素ガスが合流する部分(水素ガス合流部A2)よりも下流側にインジェクタ35を配置するようにする。
循環流路32には、気液分離器36及び排気排水弁37を介して、排出流路38が接続されている。気液分離器36は、水素オフガスから水分を回収するものである。排気排水弁37は、制御装置4からの指令によって作動することにより、気液分離器36で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素オフガスと、を外部に排出(パージ)するものである。また、循環流路32には、循環流路32内の水素オフガスを加圧して水素供給流路31側へ送り出す水素ポンプ39が設けられている。排気排水弁37及び排出流路38を介して排出される水素オフガスは、希釈器40によって希釈されて排気流路23内の酸化オフガスと合流するようになっている。また、循環流路32には、燃料電池10から排出される水素オフガスの流通を遮断するオフガス遮断弁44が設けられている。オフガス遮断弁44は、本発明におけるアノード側遮断弁として機能する。
制御装置4は、車両に設けられた加速操作部材(アクセル等)の操作量を検出し、加速要求値(例えばトラクションモータ12等の負荷装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、負荷装置とは、トラクションモータ12のほかに、燃料電池10を作動させるために必要な補機装置(例えばコンプレッサ24や水素ポンプ39のモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等を含む電力消費装置を総称したものである。
制御装置4は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現されるようになっている。
具体的には、制御装置4は、図2に示すように、燃料電池10の運転状態(電流センサ13で検出した燃料電池10の発電時の電流値)に基づいて、燃料電池10で消費される水素ガスの量(以下「水素消費量」という)を算出する(燃料消費量算出機能:B1)。本実施形態においては、燃料電池10の電流値と水素消費量との関係を表す特定の演算式を用いて、制御装置4の演算周期毎に水素消費量を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、燃料電池10の運転状態(電流センサ13で検出した燃料電池10の発電時の電流値)に基づいて、インジェクタ35下流位置における水素ガスの目標圧力値(燃料電池10への目標ガス供給圧)を算出する(目標圧力値算出機能:B2)。本実施形態においては、燃料電池10の電流値と目標圧力値との関係を表す特定のマップを用いて、制御装置4の演算周期毎に、二次側圧力センサ43が配置された位置における目標圧力値を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、算出した目標圧力値と、二次側圧力センサ43で検出した圧力値(検出圧力値)と、の偏差に基づいてフィードバック補正流量を算出する(フィードバック補正流量算出機能:B3)。フィードバック補正流量は、目標圧力値と検出圧力値との偏差を低減させるために水素消費量に加算される水素ガス流量である。本実施形態においては、PI制御等の目標追従型制御則を用いて、制御装置4の演算周期毎にフィードバック補正流量を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、特定のマップを用いて、フィードフォワード補正流量を算出する(フィードフォワード補正流量算出機能:B4)。本実施形態においては、インジェクタ35の開弁時間(τ)と、フィードフォワード補正流量(Q)との関係を表す特定のマップ(Q−τ特性マップ)を用いて、制御装置4の演算周期毎にフィードフォワード補正流量を算出して更新することとしている。
なお、図3に示すように、インジェクタ35の特性変化(劣化、個体差、電圧変動等)やインジェクタ35上流側の水素ガスの温度変化等に起因して、初期のQ−τ特性マップを用いて算出されるフィードフォワード補正流量Q(理論値)と、実際にインジェクタ35から噴射される水素ガス流量Q´(実際値)と、の間にずれが生じる場合がある。このため、制御装置4は、このような理論値と実際値とのずれ量ΔQ(=Q´−Q)を学習し、この学習結果を用いて初期のQ−τ特性マップを補正している。
また、制御装置4は、インジェクタ35の上流のガス状態(一次側圧力センサ41で検出した水素ガスの圧力及び温度センサ42で検出した水素ガスの温度)に基づいてインジェクタ35の上流の静的流量を算出する(静的流量算出機能:B5)。本実施形態においては、インジェクタ35の上流側の水素ガスの圧力及び温度と静的流量との関係を表す特定の演算式を用いて、制御装置4の演算周期毎に静的流量を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、インジェクタ35の上流のガス状態(水素ガスの圧力及び温度)及び印加電圧に基づいてインジェクタ35の無効噴射時間を算出する(無効噴射時間算出機能:B6)。ここで無効噴射時間とは、インジェクタ35が制御装置4から制御信号を受けてから実際に噴射を開始するまでに要する時間を意味する。本実施形態においては、インジェクタ35の上流側の水素ガスの圧力及び温度と印加電圧と無効噴射時間との関係を表す特定のマップを用いて、制御装置4の演算周期毎に無効噴射時間を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、水素消費量と、フィードバック補正流量と、フィードフォワード補正流量と、を加算することにより、インジェクタ35の噴射流量を算出する(噴射流量算出機能:B7)。そして、制御装置4は、インジェクタ35の噴射流量を静的流量で除した値にインジェクタ35の駆動周期を乗じることにより、インジェクタ35の基本噴射時間を算出するとともに、この基本噴射時間と無効噴射時間とを加算してインジェクタ35の総噴射時間を算出する(総噴射時間算出機能:B8)。ここで、駆動周期とは、インジェクタ35の噴射孔の開閉状態を表す段状(オン・オフ)波形の周期を意味する。
そして、制御装置4は、以上の手順を経て算出したインジェクタ35の総噴射時間を実現させるための制御信号を出力することにより、インジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期を制御して、燃料電池10に供給される水素ガスの流量及び圧力を調整する。
ところで、フィードフォワード補正流量の算出に用いられるQ−τ特性マップを補正する際には、ある開弁時間(例えばτ1)における理論値Qと実際値Q´とのずれ量ΔQを学習する必要があるが、従来はこのようなずれ量ΔQを学習する際に、実際値Q´を以下の式(1)により算出していた。
Q´=k×T×Vアノード×ΔP …(1)
但し、前記式(1)において、k(=1/101.3)は単位変換係数を、Tはインジェクタ35の駆動周期を、Vアノードはインジェクタ35下流側におけるアノード側の閉空間容積(インジェクタ35とオフガス遮断弁44との間に形成される閉空間の容積)を、ΔPはインジェクタ35下流側における圧力増加分を、各々意味する。
ここで、図4(A)、(B)に示すように、燃料電池10の運転時間が長くなったり、燃料電池10を構成する電解質膜の温度が上昇したりすると、クロスリーク量(水素供給流路31を経由して燃料電池10のアノード側へと供給された水素ガスがカソード側へと透過する現象)が増大することが知られている。このようにクロスリーク量が増大すると、水素供給流路31のインジェクタ35下流側における圧力増加分ΔPがクロスリーク分だけ低減するため、圧力増加分ΔPに基づくガス噴射量Q´の算出精度が低下する。すると、ずれ量ΔQの学習及びQ−τ特性マップの補正を正確に行うことができず、結果的に、インジェクタ35の制御精度が低下してしまう。
そこで、本実施形態においては、制御装置4が、Q−τ特性マップ補正のためにずれ量ΔQを学習する際に以下のような制御を行う。すなわち、まず、制御装置4は、オフガス遮断弁44を閉鎖するとともに、第一のカソード側遮断弁25及び第二のカソード側遮断弁27を閉鎖してアノード側及びカソード側に閉空間を形成する。そして、制御装置4は、インジェクタ35下流側における水素供給流路31内のガス圧力増加分ΔPと、第一のカソード遮断弁25下流側における空気供給流路21内のガス圧力増加分ΔP´と、に基づいて、実際値Q´を算出する。
具体的には、制御装置4は、以下の式(2)により実際値Q´を算出する。
Q´=k×T×(Vカソード×ΔP´+Vアノード×ΔP) …(2)
但し、前記式(2)において、Vカソードはカソード側の閉空間容積(第一のカソード側遮断弁25と第二のカソード側遮断弁27との間に形成される閉空間の容積)を意味する。また、その他の定数及び変数(k、T、Vアノード及びΔP)は式(1)で定義したものと同一である。すなわち、制御装置4は、本発明における噴射量算出手段の一実施形態として機能する。
このように、本実施形態における制御装置4は、水素供給流路31内のガス圧力の増加分ΔPだけでなく、空気供給流路21内のガス圧力の増加分ΔP´に基づいて実際値Q´(インジェクタ35からのガス噴射量)を算出するため、クロスリーク量が増大した場合においても、実際値Q´を精度良く算出することができる。従って、理論値Qと実際値Q´とのずれ量ΔQを正確に学習することができ、この学習結果を用いて初期のQ−τ特性マップを精度良く補正することができる。
次に、図5のフローチャートを用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1の運転方法について説明する。
燃料電池システム1の通常運転時においては、水素タンク30から水素ガスが水素供給流路31を介して燃料電池10の燃料極に供給されるとともに、加湿調整された空気が空気供給流路21を介して燃料電池10の酸化極に供給されることにより、発電が行われる。この際、燃料電池10から引き出すべき電力(要求電力)が制御装置4で演算され、その発電量に応じた量の水素ガス及び空気が燃料電池10内に供給されるようになっている。本実施形態においては、このような通常運転時において燃料電池10に供給される水素ガスの圧力を高精度に制御する。
すなわち、まず、燃料電池システム1の制御装置4は、電流センサ13を用いて燃料電池10の発電時における電流値を検出する(電流検出工程:S1)。次いで、制御装置4は、電流センサ13で検出した電流値に基づいて、燃料電池10で消費される水素ガスの量(水素消費量)を算出する(燃料消費量算出工程:S2)。
次いで、制御装置4は、Q―τ特性マップを用いて、フィードフォワード補正流量を算出する(フィードフォワード補正流量算出工程:S3)。なお、本実施形態においては、燃料電池10の運転終了時又は起動時に、Q−τ特性マップを用いて算出されるフィードフォワード補正流量Q(理論値)と、実際にインジェクタ35から噴射される水素ガス流量Q´(実際値)と、のずれ量ΔQを学習し、この学習結果を用いてQ−τ特性マップを定期的に補正している。マップ補正の具体的な方法については、図6のフローチャートを用いて後述することとする。
フィードフォワード補正流量算出工程S3に次いで、制御装置4は、電流センサ13で検出した電流値に基づいて、インジェクタ35下流の所定位置における水素ガスの目標圧力値を算出する(目標圧力値算出工程:S4)。また、制御装置4は、二次側圧力センサ43を用いてインジェクタ35下流の所定位置における圧力値を検出する(圧力値検出工程:S5)。そして、制御装置4は、目標圧力値算出工程S4で算出した目標圧力値と、圧力値検出工程S5で検出した圧力値(検出圧力値)と、の偏差に基づいてフィードバック補正流量を算出する(フィードバック補正流量算出工程:S6)。
次いで、制御装置4は、燃料消費流量算出工程S2で算出した水素消費量と、フィードフォワード補正流量算出工程S3で算出したフィードフォワード補正流量と、フィードバック補正流量算出工程S6で算出したフィードバック補正流量と、を加算することにより、インジェクタ35の噴射流量を算出する(噴射流量算出工程:S7)。
次いで、制御装置4は、一次側圧力センサ41で検出したインジェクタ35の上流の水素ガスの圧力と、温度センサ42で検出したインジェクタ35の上流の水素ガスの温度と、に基づいてインジェクタ35の上流の静的流量を算出する(静的流量算出工程:S8)。そして、制御装置4は、噴射流量算出工程S7で算出したインジェクタ35の噴射流量を、静的流量算出工程S8で算出した静的流量で除した値に、インジェクタ35の駆動周期を乗じることにより、インジェクタ35の基本噴射時間を算出する(基本噴射時間算出工程:S9)。
次いで、制御装置4は、一次側圧力センサ41で検出したインジェクタ35の上流の水素ガスの圧力と、温度センサ42で検出したインジェクタ35の上流の水素ガスの温度と、印加電圧と、に基づいてインジェクタ35の無効噴射時間を算出する(無効噴射時間算出工程:S10)。そして、制御装置4は、基本噴射時間算出工程S9で算出したインジェクタ35の基本噴射時間と、無効噴射時間算出工程S10で算出した無効噴射時間と、を加算することにより、インジェクタ35の総噴射時間を算出する(総噴射時間算出工程:S11)。
その後、制御装置4は、総噴射時間算出工程S11で算出したインジェクタ35の総噴射時間に係る制御信号を出力することにより、インジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期を制御して、燃料電池10に供給される水素ガスの流量及び圧力を調整する。
続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1のマップ補正方法について説明する。
本実施形態においては、燃料電池10の運転終了時又は起動時に、以下の手順により、初期のQ−τ特性マップを用いて算出されるフィードフォワード補正流量Q(理論値)と、実際にインジェクタ35から噴射される水素ガス流量Q´(実際値)と、のずれ量ΔQを学習し、この学習結果を用いてQ−τ特性マップを補正する。
まず、制御装置4は、循環流路32に設けられたオフガス遮断弁44を閉鎖するとともに、空気供給流路21に設けられた第一のカソード側遮断弁25及び空気排出流路22に設けられた第二のカソード側遮断弁27を閉鎖する(遮断弁閉鎖工程:S21)。次いで、制御装置4は、アノード側の二次側圧力センサ43を用いて、インジェクタ35下流側における所定時間内のガス圧力増加分ΔPを検出するとともに、カソード側の圧力センサ26を用いて、第一のカソード側遮断弁25下流側における所定時間内のガス圧力増加分ΔP´を検出する(圧力変化分検出工程:S22)。
次いで、制御装置4は、圧力変化分検出工程S22で検出したガス圧力増加分ΔP、ΔP´に基づいて、実際値Q´(インジェクタ35の実際の噴射量)を算出する(噴射量算出工程:S23)。その後、制御装置4は、理論値Qと実際値Q´とのずれ量ΔQを学習し(学習工程:S24)、この学習結果に基づいてQ−τ特定マップを補正する(マップ補正工程:S25)。マップ補正工程S25は、ずれ量ΔQの学習値が相当数蓄積された時点で実施してもよく、燃料電池10の運転終了時や起動時に毎回実施してもよい。
以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、アノード側流路内のガス圧力の増加分ΔPだけでなく、カソード側流路内のガス圧力の増加分ΔP´に基づいて、実際値Q´(インジェクタ35のガス噴射量)を算出することができる。従って、クロスリークの発生により水素ガスが燃料電池10のアノード側からカソード側に透過し空気供給流路21内のガス圧力が増大した場合においても、実際値Q´を精度良く算出することができる。この結果、理論値Qと実際値Q´とのずれ量ΔQを正確に学習することができ、この学習結果を用いて初期のQ−τ特性マップを精度良く補正することができ、適切なフィードフォワード補正流量を算出してインジェクタ35の制御精度を向上させることが可能となる。
なお、以上の実施形態においては、クロスリークが発生することを前提とし、水素供給流路31内のガス圧力増加分ΔPと、空気供給流路21内のガス圧力増加分ΔP´と、に基づいて、インジェクタ35のガス噴射量を算出した例を示したが、クロスリークの発生を抑制した上でインジェクタ35のガス噴射量を算出することもできる。
すなわち、制御装置4は、アノード側の二次側圧力センサ43で検出される圧力値と、カソード側の圧力センサ26で検出される圧力値と、を比較し、両者が一致した状態で、インジェクタ35下流側における水素供給流路31内のガス圧力増加分ΔPに基づいてインジェクタ35のガス噴射量を算出することもできる。このようにすると、水素供給流路31におけるガス圧力と空気供給流路21におけるガス圧力とを一致させることにより、クロスリークの影響を抑制することができるので、インジェクタ35のガス噴射量の算出精度を高めることができる。このような手法は、オフガス遮断弁44やカソード側遮断弁25・27が開故障した場合に有効である。また、これら遮断弁が設けられていないシステムにおいても有効である。
また、以上の実施形態においては、燃料電池システム1の水素ガス配管系3に循環流路32を設けた例を示したが、例えば、図7に示すように、燃料電池2に排出流路38を接続して循環流路32を廃止することもできる。かかる構成(デッドエンド方式)を採用した場合においても、制御装置4で前記実施形態と同様にアノード側のガス圧力増加分ΔPとカソード側のガス圧力増加分ΔP´とに基づいてインジェクタ35のガス噴射量を算出することにより、ずれ量学習時(Q−τ特性マップ補正時)におけるクロスリークの影響を抑制することができる。
また、以上の実施形態においては、循環流路32に水素ポンプ39を設けた例を示したが、水素ポンプ39に代えてエジェクタを採用してもよい。また、以上の実施形態においては、排気と排水との双方を実現させる排気排水弁37を循環流路32に設けた例を示したが、気液分離器36で回収した水分を外部に排出する排水弁と、循環流路32内のガスを外部に排出するための排気弁と、を別々に設け、制御装置4で排気弁を制御することもできる。
また、以上の実施形態においては、水素供給流路31に遮断弁33及びレギュレータ34を設けた例を示したが、インジェクタ35は、可変調圧弁としての機能を果たすとともに、水素ガスの供給を遮断する遮断弁としての機能をも果たすため、必ずしも遮断弁33やレギュレータ34を設けなくてもよい。従って、インジェクタ35を採用すると遮断弁33やレギュレータ34を省くことができるため、システムの小型化及び低廉化が可能となる。
また、以上の実施形態においては、燃料電池10の発電時の電流値を検出し、この電流値に基づいて目標圧力値や水素ガスの消費量を算出してインジェクタ35の作動状態(噴射時間)を設定した例を示したが、燃料電池10の運転状態を示す他の物理量(燃料電池10の発電時の電圧値や電力値、燃料電池10の温度等)を検出し、この検出した物理量に基づいて目標圧力値や水素ガスの消費量を算出することもできる。
また、以上の実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した例を示したが、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)に本発明に係る燃料電池システムを搭載することもできる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用してもよい。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。 図1に示した燃料電池システムの制御装置の制御態様を説明するための制御ブロック図である。 フィードフォワード補正流量の算出に用いられるQ−τ特性マップを示す図である。 (A)は燃料電池の運転時間とクロスリーク量との関係を示す図であり、(B)は燃料電池の電解質膜の温度とクロスリーク量との関係を示す図である。 図1に示した燃料電池システムの運転方法を説明するためのフローチャートである。 図1に示した燃料電池システムのマップ補正方法を説明するためのフローチャートである。 図1に示した燃料電池システムの変形例を示す構成図である。
符号の説明
1…燃料電池システム、4…制御装置(噴射量算出手段)、10…燃料電池、21…空気供給流路(酸化ガス供給流路)、22…空気排出流路(酸化オフガス排出流路)、24…コンプレッサ(酸化ガス供給源)、25…第一のカソード側遮断弁、27…第二のカソード側遮断弁、30…水素タンク(燃料供給源)、31…水素供給流路(燃料ガス供給流路)、32…循環流路(燃料オフガス排出流路)、35…インジェクタ(開閉弁)、44…オフガス遮断弁(アノード側遮断弁)。

Claims (4)

  1. 燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを前記燃料電池へと流すための燃料ガス供給流路と、この燃料ガス供給流路の上流側におけるガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、この開閉弁からのガス噴射量を算出する噴射量算出手段と、前記燃料電池から排出される燃料オフガスを流すための燃料オフガス排出流路と、前記燃料電池へと供給される酸化ガスを流すための酸化ガス供給流路と、前記燃料電池から排出される酸化オフガスを流すための酸化オフガス排出流路と、を備える燃料電池システムであって、
    前記燃料オフガス排出流路に設けられたアノード側遮断弁と、
    前記酸化ガス供給流路に設けられた第一のカソード側遮断弁と、
    前記酸化オフガス排出流路に設けられた第二のカソード側遮断弁と、を備え、
    前記噴射量算出手段は、前記アノード側遮断弁を閉鎖するとともに、前記第一及び第二のカソード側遮断弁を閉鎖し、前記開閉弁下流側の前記燃料ガス供給流路内におけるガス圧力の増分と、前記第一及び第二のカソード側遮断弁の間に形成される閉空間内におけるガス圧力の増分と、に基づいて前記開閉弁からのガス噴射量を算出するものである、
    燃料電池システム。
  2. 燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを前記燃料電池へと流すための燃料ガス供給流路と、この燃料ガス供給流路の上流側におけるガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、この開閉弁からのガス噴射量を算出する噴射量算出手段と、前記燃料電池へと供給される酸化ガスを流すための酸化ガス供給流路と、を備える燃料電池システムであって、
    前記噴射量算出手段は、前記燃料ガス供給流路におけるガス圧力と前記酸化ガス流路におけるガス圧力とを一致させた状態で、前記開閉弁下流側における前記燃料ガス供給流路内のガス圧力の増分に基づいて前記開閉弁からのガス噴射量を算出するものである、
    燃料電池システム。
  3. 前記燃料電池から排出される燃料オフガスを流すための燃料オフガス排出流路と、
    前記燃料電池から排出される酸化オフガスを流すための酸化オフガス排出流路と、
    前記燃料オフガス排出流路に設けられたアノード側遮断弁と、
    前記酸化ガス供給流路に設けられた第一のカソード側遮断弁と、
    前記酸化オフガス排出流路に設けられた第二のカソード側遮断弁と、を備え、
    前記噴射量算出手段は、前記各遮断弁に開故障が発生した場合に、前記燃料ガス供給流路におけるガス圧力と前記酸化ガス流路におけるガス圧力とを一致させた状態で、前記開閉弁下流側における前記燃料ガス供給流路内のガス圧力の増分に基づいて前記開閉弁からのガス噴射量を算出するものである、
    請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記開閉弁は、インジェクタである、
    請求項1から3の何れか一項に記載の燃料電池システム。
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