JP2009089708A - 組換え微生物及びポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリ−ガンマ−グルタミン酸を効率良く生産する。
【解決手段】ポリ−ガンマ−グルタミン酸合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入し、枯草菌におけるpgsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を上記宿主微生物に導入していない、ポリ−ガンマ−グルタミン酸生産能を有する組換え微生物、および上記組換え微生物を用いたポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ−ガンマ−グルタミン酸産生能を付与された組換え微生物、及び当該組換え微生物を用いたポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法に関する。
ポリ−ガンマ−グルタミン酸は、グルタミン酸のγ-位のカルボキシル基とα-位のアミノ基がペプチド結合によって結合した高分子化合物である。また、ポリ−ガンマ−グルタミン酸はγ-ポリグルタミン酸と呼称される場合もある。ポリ−ガンマ−グルタミン酸は、納豆菌(Bacillussubtilis var.natto)が産生する粘性物質として知られており、種々の性質から近年新たな高分子素材として注目されている。以下の説明においてポリ−ガンマ−グルタミン酸をPGAと略称する。
PGAを生産する微生物としては、納豆菌を含む一部のバチルス(Bacillus)属細菌とその近縁種(Bacillussubtilis var.chungkookjangBacillus licheniformisBacillusmegateriumBacillus anthracisBacillus halodurans)や、NatrialbaaegyptiacaHydra等を挙げることができる(例えば、非特許文献1参照)。また、微生物の中でPGA生産性を有する納豆菌は分類学上はPGA非生産性の枯草菌の亜種とされるが、いずれの菌株もPGA合成酵素をコードするpgsBpgsC及びpgsA遺伝子は同一の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域の下流に存在し、クラスター構造(オペロン)を有していることが明らかにされている(例えば、非特許文献3、6及び8参照)。さらに、納豆菌のPGA産生制御機構は、枯草菌の形質転換能獲得機構とともに細胞内の多くの制御因子が関与する複雑な制御を受けていると推察されている(例えば、非特許文献9及び10参照)。PGAの生産法としては、上記PGA生産菌の育種によりその生産性を高めることが可能であるが、野生株の厳密な制御機構の解除、野生株の複雑な栄養要求性の解消、あるいは安定な生産性を得るための最適化などに労力を要することから、効率的なPGA生産法ではないと判断される。それ故に、これら野生株の育種に代わる効率的な手法として遺伝子組換え技術の利用が試みられていると考えられる。これまでに知られている遺伝子組換え技術を用いたPGA生産の例としては、プラスミドにて遺伝子導入された組換え枯草菌(Bacillussubtilis ISW1214株)において約9.0g/L/5日(非特許文献2参照)、プラスミドにて遺伝子導入された組換え大腸菌において約4g/L/1.5日(非特許文献7参照)、あるいは2.5mg/40mg-乾燥菌体(非特許文献6参照)の生産性が得られることが開示されている。しかしながら、これら開示されている生産法では充分な生産性に達していないと判断される。
PGAは、納豆菌においてPgsBCAと称される膜結合型酵素系によってリボソーム非依存的に生産されることが示されている(例えば、非特許文献4参照)。これらPGA合成酵素系PgsBCAのなかで、PgsB(YwsCと別称)はグルタミン酸におけるγ-位のカルボキシル基に作用するアミドリガーゼ反応に関与することが知られている(例えば、非特許文献3、5参照)。一方で、非特許文献3によれば、PgsC(YwtAと別称)は膜結合型タンパク質でPGAの細胞外への排出に関与すると推定されているが、非特許文献4及び5によればPgsCはPgsBと共同してグルタミン酸の連結反応に関わるとされ、PgsCの機能は現在のところ明確にはなっていない。
さらに、非特許文献2において、染色体上のpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を欠損した枯草菌に、pgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子から選ばれる1つの遺伝子を単独で発現するベクターもしくは複数を組み合わせて発現するベクターを導入し、PGA生産性を検討した結果が開示されている。非特許文献2によれば、pgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を全て発現しなければPGAが生産できないと結論されている。また、非特許文献3には、PGA生産能を有する納豆菌(IFO16449株)において、pgsB遺伝子(ywsC遺伝子と別称)欠損株、pgsC遺伝子(ywtA遺伝子と別称)欠損株及びpgsA遺伝子(ywtB遺伝子と別称)欠損株を構築し、それぞれの欠損株におけるPGA生産能を検証している。このなかで非特許文献3によれば、PGA生産能を有する納豆菌において、PGA生産にはpgsB遺伝子及びpgsC遺伝子が必須であり、さらにPGAを高生産するにはpgsA遺伝子が必要であると結論している。
またさらに、特許文献1においては、pgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子をこの順で導入したベクターを用いて大腸菌を形質転換することによって、本来、PGA生産能を有しない大腸菌においてPGA生産能を付与できることが開示されているが、非特許文献6によれば、組換え大腸菌においてpgsBCA遺伝子を導入した条件ではPGA生産が認められているが、pgsBC遺伝子を導入した条件ではPGAが生産されないことが明示されている。
また、特許文献2〜5においては、納豆菌等のPGA産生微生物を種々の栄養塩培地で培養することによって平均分子量数千〜200万のPGAが生産されることが開示され、また特許文献6においては納豆菌に外的ストレスを与えることによって300万以上のPGAが生産されることが開示されている。
一方、非特許文献11、特許文献7及び8においては、微生物により光学純度の高いPGAを生産できることが開示されており、特許文献7においてはバチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)株を用いて、L-グルタミン酸含有量が90%以上のPGAを約10g/L/5日で生産できることが示され、特許文献8においてはナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)の変異株が分子量130万以上のポリ−ガンマ−L−グルタミン酸を約5g/L/6日で生産できることが開示されている。
Ashiuchi, M., et al.: Appl. Microbiol. Biotechnol., 59, 9-14 (2002) Ashiuchi, M., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1794-1797 (2006) Urushibata, Y., et al.: J. Bacteriol., 184, 337-343 (2002) 芦内誠ほか: 未来材料,3,44-50(2003) Ashiuchi, M., et al.: Eur. J. Biochem., 268, 5321-5328 (2001) Ashiuchi, M., et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 263, 6-12 (1999) Jiang, H., et al.: Biotechnol. Lett., 28, 1241-1246 (2006) Presecan,E., et al.: Microbiology, 143, 3313-3328 (1997) Itaya,M., et al.: Biosci.Biotechnol.Biochem., 63, 2034-2037 (1999) 今中忠行ほか: 微生物利用の大展開, 第1章4節,657-663 (2002) Shimizu, K., et al.: Appl. Environ. Microbiol., 73, 2378-2379 (2007) 特開2001−17182号公報 特公昭43−24472号公報 特開平1−174397号公報 特開平3−47087号公報 特許第3081901号明細書 特開2006−42617号公報 特開2007−228957号公報 特開2007−314434号公報
しかしながら、上述した非特許文献1〜3、7及び特許文献1においても、PGAを高生産するための技術は開示されておらず、従来知見においてPGAを効率良く生産することができないといった問題があった。また、これまでに、遺伝子工学的手法を用いてPGAの分子量を調整することは報告されていない。そこで、本発明は、上述したような実情に鑑み、PGAを効率良く生産することができる組換え微生物、当該微生物を用いたPGAの製造方法、並びに、遺伝子導入によるPGAの生産性向上方法、PGAの分子量調整方法及びPGAの光学純度を調整する方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、鋭意検討した結果、pgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、pgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入することによって得られる組換え微生物を用いることで、PGAの高生産、PGAの分子量調整及び/又は光学純度の調整が可能であることを見い出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至った。
本発明に係る組換え微生物は、PGA合成に関与する遺伝子群(pgsBCA遺伝子)のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入し、枯草菌におけるpgsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を当該宿主微生物に導入していないものである。すなわち、本発明に係る組換え微生物は、従来の知見に反し、枯草菌におけるpgsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を導入しない方がPGAの生産性に優れるといった知見に基づいている。
ここで、上記pgsB遺伝子は以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子であることが好ましい。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質
また、上記pgsC遺伝子は以下の(c)又は(d)のタンパク質をコードする遺伝子であることが好ましい。
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(d)配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、上記pgsB遺伝子がコードするPgsBタンパク質の存在下でPGAを生成する機能を有するタンパク質
さらにまた、本発明に係る組換え微生物において、導入される遺伝子は上記pgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と上記pgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が、宿主細胞内において機能を有しており正的に発現制御を受ける転写開始制御領域、翻訳開始制御領域の下流に結合したものであることが好ましい。
さらにまた、本発明に係る組換え微生物は、宿主となる微生物がバチルス(Bacillus)属細菌であることが好ましい。バチルス(Bacillus)属細菌としては例えば枯草菌(Bacillus subtilis)を挙げることができる。
一方、本発明に係るPGAの製造方法は、上述した本発明に係る組換え微生物を培養し、生成されたPGAを取得する方法である。
一方、本発明に係るPGAの生産性向上方法は、PGA合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られた組換え微生物を用いてPGAの生産性を向上させることを特徴とするものである。
一方、本発明に係るPGAの分子量調整方法は、PGA合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られた組換え微生物を用いてPGAの分子量を調整する(好ましくはPGAを高分子化する)ことを特徴とするものである。
一方、本発明に係るPGAの光学純度調整方法は、PGA合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られた組換え微生物を用いてPGAの光学純度を調整する(好ましくはPGAのL-体比率を増加させる)ことを特徴とするものである。
本発明に係る組換え微生物を用いることにより、優れた生産性でPGAを生産することができる。本発明に係るPGAの製造方法によれば、優れた生産性でPGAを製造することができる。本発明に係るPGAの生産性向上方法によれば、PGAの生産性向上を図ることができる。本発明に係るPGAの分子量調整方法によれば、PGAを高分子量化することができる。さらには、本発明に係るPGAの光学純度調整方法によれば、光学純度(L-体比率)の高いPGAを生産することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る組換え微生物は、宿主となる微生物にPGA合成に関与する遺伝子群のなかで枯草菌におけるpgsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を除く、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られたものであって、ポリ−ガンマ−グルタミン酸産生能を有するものである。
ここで、PGA合成に関与する遺伝子群とは、枯草菌においては、pgsB遺伝子(BG12531:ywsC遺伝子、またはcapB遺伝子と別称される)、pgsC遺伝子(BG12532:ywtA遺伝子、またはcapC遺伝子と別称される)及びpgsA遺伝子(BG12533:ywtB遺伝子、またはcapA遺伝子と別称される)から構成されている。遺伝子組換えの宿主微生物として広く利用されているBacillussubtilis Marburg No.168系統株は、これらpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を染色体上に有しているが、PGA生産能を有していない。同じく、納豆菌(Bacillussubtilis var.natto)は、これらpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を染色体(ゲノム)上に有しているが、PGA生産能を有している。尚、遺伝子の名称、番号は、JAFAN[Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis(BSORF DB)]でインターネット公開(http://bacillus.genome.ad.jp/、2006年1月18日更新)の枯草菌ゲノムデーターに基づき記載している。
pgsB遺伝子の塩基配列を配列番号1に示し、pgsB遺伝子によってコードされるPgsBタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。尚、本発明においてpgsB遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列からなる遺伝子に限定されず、配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、グルタミン酸を基質とするアミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、複数個とは、例えば2〜80個、好ましくは2〜40個、より好ましくは2〜20個、更に好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個とすることができる
また、本発明においてpgsB遺伝子とは、配列番号1に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を含み、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで塩基配列の同一性は、Lipman-Pearson法[Lipman, DJ., Pearson, WR.: Science, 227, pp1435-1441 (1985)参照]によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。また、上記アミドリガーゼ活性は、グルタミン酸及びATPを基質とし、これに塩化マンガン加えたものを反応溶液として用いた場合に、反応溶液中にPGAの生成を確認することにより測定することができる[例えば、Urushibata, Y., et al.: J. Bacteriol., 184, pp337-343 (2002)参照]。
さらに、本発明においてpgsB遺伝子とは、配列番号1に示す塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、「ストリンジェントな条件下」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION [Joseph Sambrook, David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の条件が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハート及び100mg/mL ニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
また、上述したアミドリガーゼ活性とは、詳細には後述する実施例で示すように、pgsC遺伝子とともに宿主微生物に導入された際に菌体外にPGAを生産する能力を意味する。所定の微生物におけるPGA生産能の評価は、例えばグルタミン酸又はその塩を含有するPGA生産寒天培地に培養したときにコロニー周辺に形成される半透明の粘性物質を目視によって観察する方法、SDS-PAGEによってPGAを検出する方法[例えば、Yamaguchi, F., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 60, pp255-258 (1996)参照]、或いは酸加水分解後にアミノ酸分析装置を用いて定量する方法[例えば、Ogawa, Y., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 61, pp1684-1687 (1997) 参照]、培養液から精製し乾燥重量を求める定量法[例えば、Ashiuchi,M., et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 263, pp6-12 (1999) 参照]、ゲルろ過カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量/定性法[例えば、Kubota, H., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 57, pp1212-1213 (1993) 参照]によって行うことができる。
pgsC遺伝子の塩基配列を配列番号3に示し、pgsC遺伝子によってコードされるPgsCタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す。尚、本発明においてpgsC遺伝子は、配列番号3に示す塩基配列からなる遺伝子に限定されず、配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、前述のPgsBタンパク質の存在下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、複数個とは、例えば2〜30個、好ましくは2〜15個、より好ましくは2〜8個、更に好ましくは2〜4個、最も好ましくは2個とすることができる。
また、本発明においてpgsC遺伝子とは、配列番号3に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を含み、前述のPgsBタンパク質の存在下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで塩基配列の同一性は上記と同じ定義である。
さらに、本発明においてpgsC遺伝子とは、配列番号3に示す塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前述のPgsBタンパク質の存在下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、「ストリンジェントな条件下」とは上記と同じ定義を用いる。
また、前述のPgsBタンパク質の存在下でPGAを生成するといったPgsCタンパク質の機能とは、宿主微生物にてpgsB遺伝子とともにpgsC遺伝子を発現させた際に菌体外にPGAを生産する能力を意味する。詳細は後述の実施例及び参考例で示すように、pgsB遺伝子を単独で発現させた宿主微生物ではPGAが生産されず、pgsB遺伝子とともにpgsC遺伝子を発現させた場合に、PGAが生産されるといった本発明者らが見出した知見に基づいている。
一方、本発明に係る組換え微生物は、上述したような枯草菌由来のpgsB遺伝子及びpgsC遺伝子を宿主微生物に導入したものに限定されず、例えば枯草菌以外の微生物に由来するPGA合成関連遺伝子を構成する遺伝子群のうち、pgsB遺伝子に相当する遺伝子(pgsB相同遺伝子)及びpgsC遺伝子に相当する遺伝子(pgsC相同遺伝子)を宿主微生物に導入したものであっても良い。pgsB相同遺伝子及びpgsC相同遺伝子は、PGAを生産することが知られている微生物から常法に従って単離・同定することができる。PGA生産能を有する微生物としては、Bacillussubtilisの他に、Bacillus licheniformisBacillus megateriumBacillusanthracisBacillus haloduransや、Natrialba aegyptiacaHydra等を挙げることができ、これら微生物からpgsB相同遺伝子及びpgsC相同遺伝子を単離・同定することができる。例えば、上記の微生物からゲノムDNAを抽出し、上述した配列番号1に示した塩基配列からなるポリヌクレオチドをプローブとしたサザンハイブリダイゼーションによってpgsB相同遺伝子を単離することができる。pgsC相同遺伝子についても同様に単離することができる。さらに、近年の急速なゲノム解読の進展によりPGA非生産微生物であってもそのゲノム配列情報を基に、前述のように定義した枯草菌pgsB相同遺伝子を単離・同定することができる。これはさらに、枯草菌pgsC相同遺伝子についても同様である。
本発明に係る組換え微生物は、上述したpgsB遺伝子又はpgsB相同遺伝子とpgsC遺伝子又はpgsC相同遺伝子を宿主微生物に導入することで作製される。
ここで本発明において用いられる宿主微生物は特に限定されないが、具体的には、Bacillus licheniformisBacillusmegateriumBacillus anthracisBacillus haloduransBacillussubtilis 等のバチルス(Bacillus)属細菌や、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、大腸菌(Escherichiacoli)或いは酵母等が挙げられ、中でもバチルス(Bacillus)属細菌が好ましい。さらに、全ゲノム情報が明らかにされ、遺伝子工学、ゲノム工学技術が確立されている点、宿主微生物として安全且つ優良と認められた微生物菌株として開発されている点から、特に枯草菌(Bacillussubtilis)が好ましい。さらに、選択される宿主細胞は、野生型の細胞、あるいは野生型に対して所定の変異を導入した変異株のいずれも使用することができる。さらに、変異株のなかでも、特にPGA分解酵素をコードする遺伝子(PGA分解酵素遺伝子)を欠失させた変異株を宿主として使用することで、より良好な効果が期待できる。枯草菌におけるPGA分解酵素遺伝子としては、ggt遺伝子が知られている[例えば、Kimura,K.,et al.: Microbiology, 150, pp4115-4123 (2004)参照]。ggt遺伝子の塩基配列を配列番号7に示し、ggt遺伝子によりコードされるPGA分解酵素のアミノ酸配列を配列番号8に示す。また、枯草菌以外の微生物を宿主として使用する場合にも、ggt遺伝子に相当する遺伝子を欠失させた変異株を使用することが好ましい。尚、本発明においてggt遺伝子は、配列番号7に示す塩基配列からなる遺伝子に限定されず、配列番号8に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、PGA分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、複数個とは、例えば2〜120個、好ましくは2〜60個、より好ましくは2〜30個、更に好ましくは2〜15個、最も好ましくは2〜8個とすることができる。また、本発明においてggt遺伝子とは、配列番号7に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を含み、PGA分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで塩基配列の同一性は上記と同じ定義である。
さらに、本発明においてggt遺伝子とは、配列番号8に示す塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、PGA分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、「ストリンジェントな条件下」とは前述と同じ定義を用いる。ggt遺伝子或いはその相同遺伝子を欠失させる方法としては、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、ggt遺伝子の一部を含むDNA断片を適当なプラスミド(ベクター)にクローニングして得られる環状の組換えプラスミドを親微生物細胞内に取り込ませ、標的遺伝子の一部領域に於ける相同組換えによって親微生物ゲノム上の標的遺伝子を分断して不活性化することが可能である[例えば、Leenhouts, K., et al.: Mol. Gen. Genet., 253, pp217-224 (1996)参照]。
特に、本発明微生物を構築するための親微生物として枯草菌を用いる場合、相同組換えにより標的遺伝子を欠失又は不活性化する方法については、既にいくつかの報告例があり[例えば、Itaya, M., Tanaka, T.: Mol. Gen. Genet., 223, pp268-272 (1990)参照]、こうした方法を繰り返すことによって、目的の宿主微生物を得ることができる。また、ランダムな遺伝子の不活性化方法としては、変異誘発剤の使用や親微生物への紫外線、ガンマ線等の照射によっても実施可能である。この場合、ggt構造遺伝子内への塩基置換、塩基挿入或いは一部欠失といった変異導入の他に、プロモーター領域等の制御領域への同様の変異導入、またはggt遺伝子の発現制御に関連する遺伝子への同様の変異導入によっても同等の効果が期待できる。さらに、より効率的な手法として、ggt遺伝子の上流、下流領域を含むがggt遺伝子を含まない直鎖状のDNA断片をSOE(splicing by overlap extension)-PCR法[例えば、Horton, RM., et al.: Gene, 77, pp61-68 (1989)参照]によって構築し、これを親微生物細胞内に取り込ませて親微生物ゲノム上のggt遺伝子の外側の2箇所で、二重交差の相同組換えを起こさせることにより、ゲノム上のggt遺伝子を欠失させるといった手法も実施可能である(図1参照)。
また、選択される宿主細胞は、本来的にPGA生産能を有している微生物であっても良いし、本来的にPGA生産能を有していない微生物であっても良い。すなわち、pgsBCA遺伝子を染色体(ゲノム)上に有し、かつPGA生産能を有する微生物、pgsBCA遺伝子を染色体上に有しているが、PGA生産能を有していない微生物、pgsBCA遺伝子を有していない微生物の何れでも良い。PGA生産能を有している微生物に上述したpgsB遺伝子又はpgsB相同遺伝子とpgsC遺伝子又はpgsC相同遺伝子を導入した場合には、PGA生産能を強化及び/又はPGAを高分子量化することになる。一方で、PGA生産能を有しない微生物に上述したpgsB遺伝子又はpgsB相同遺伝子とpgsC遺伝子又はpgsC相同遺伝子を導入した場合には、PGA生産能を付与することとなる。
宿主細胞としては、染色体(ゲノム)上に有している枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に、微生物において機能を有する転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域を導入すること等によってPGA生産能を有している微生物を用いることもできる。
本発明の宿主微生物において機能を有する転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域(以下、単に「制御領域」ともいう。)としては、これらが適正な形で結合されていることが望ましく、転写開始制御領域及び翻訳開始領域が結合されていることが好ましい。
当該制御領域は、結合した下流遺伝子を構成的に発現させ、当該遺伝子の発現を宿主細胞内において高めることができるものであることがより好ましい。このような制御領域としてはバチルス(Bacillus)属細菌由来のα-アミラーゼ遺伝子の制御領域、プロテアーゼ遺伝子の制御領域、aprE遺伝子の制御領域、spoVG遺伝子の制御領域、rapA遺伝子の制御領域、Bacillussp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域、Staphylococcus aureus由来のカナマイシン耐性遺伝子の制御領域、クロラムフェニコール耐性遺伝子の制御領域などが挙げられる。
pgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流への当該制御領域の導入は、枯草菌のpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の本来の制御領域の一部又は全部を置換すればよい。
当該制御領域への置換は、例えば相同組換えによる公知の方法(Mol.Gen.Genet.,223,268,1990記載の方法等)を用いて行うことができる。
例えば、まず、係る制御領域を含むDNA断片の上流にpgsBCA遺伝子の本来の転写開始制御領域の上流領域を含むDNA断片と薬剤耐性遺伝子断片を、一方、下流にpgsBCA遺伝子の翻訳開始制御領域と構造遺伝子領域の一部又は全部、或いはpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含むDNA断片を、SOE−PCR法(前述)などの通常の方法により結合させる。この様にして、pgsBCA遺伝子の本来の転写開始制御領域の上流領域を含むDNA断片、薬剤耐性遺伝子断片、当該制御領域を含むDNA断片、pgsBCA遺伝子の翻訳開始制御領域と構造遺伝子領域の一部又は全部、或いはpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含むDNA断片、の順に結合したDNA断片を得る(図3参照)。
次に、係るDNA断片を、通常の方法により親微生物細胞内に取り込ませることにより、親微生物ゲノムのpgsBCA遺伝子の本来の転写開始制御領域の上流領域、及びpgsBCA遺伝子の翻訳開始制御領域と構造遺伝子領域の一部又は全部、或いはpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含む領域の2箇所において、二重交差の相同組換えが起こる。その結果、本来の制御領域が当該制御領域に置換された形質転換体を、上記薬剤耐性遺伝子を指標として分離することができる。これにより、ゲノム上のpgsBCA遺伝子上流へ導入された制御領域は、遺伝的に安定に保持されることとなる。
尚、本発明に係る組換え微生物は、PGA合成に関与する遺伝子群のなかでもpgsA遺伝子を宿主微生物に導入していない。pgsA遺伝子の塩基配列を配列番号5に示し、pgsA遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示す。pgsA遺伝子にコードされるタンパク質は、PGAの菌体外排出に関与するタンパク質であることが示唆されているが[例えば、非特許文献5参照]、現在までにその機能は明確にされていない。一方で、本発明に係る組換え微生物は、pgsA遺伝子を導入していないにも拘わらず、PGAの生産性に優れるといった特徴を有している。本発明においてpgsA遺伝子とは、配列番号5に示す塩基配列からなる遺伝子に限定されず、配列番号6に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、PgsB及びPgsCと共同してPGA合成活性を有すると推定されるタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、複数個とは、例えば2〜80個、好ましくは2〜40個、より好ましくは2〜20個、更に好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個とすることができる。また、本発明においてpgsA遺伝子とは、配列番号5に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を含み、PgsB及びPgsCと共同してPGA合成活性を有すると推定されるタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで塩基配列の同一性は前述と同じ定義である。
さらに、本発明においてpgsA遺伝子とは、配列番号5に示す塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、PgsB及びPgsCと共同してPGA合成活性を有すると推定されるタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここで、「ストリンジェントな条件下」とは前述と同じ定義を用いる。
ここで「pgsA遺伝子を宿主微生物に導入しない」とは、PGA合成過程において機能するPgsAタンパク質をコードする遺伝子を導入しないことを意味している。従って、配列番号5に示される遺伝子と同一性の高い遺伝子を導入したとしても、その遺伝子が発現しない場合や、その遺伝子の発現により産生されるタンパク質がPGA合成過程において機能しないものであれば、本発明の技術範囲に含まれる。
また、本発明に係る組換え微生物は、上述したpgsB遺伝子又はpgsB相同遺伝子とpgsC遺伝子又はpgsC相同遺伝子は、その上流に、宿主細胞内において機能を有しており正的に発現制御を受ける転写開始制御領域、翻訳開始制御領域が結合されたものであることが好ましい。当該制御領域は、結合した下流遺伝子を発現させ、当該遺伝子の発現を宿主細胞内において高めることができるものであることがより好ましく、下流遺伝子を構成的に発現又は/及び高発現させるものが特に好ましい。このような制御領域として、バチルス(Bacillus)属細菌由来のα-アミラーゼ遺伝子の制御領域、プロテアーゼ遺伝子の制御領域、aprE遺伝子の制御領域、spoVG遺伝子の制御領域、rapA遺伝子の制御領域、Bacillussp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域、Staphylococcus aureus由来のカナマイシン耐性遺伝子の制御領域、クロラムフェニコール耐性遺伝子の制御領域などが例示されるが特に限定されない。
上述したBacillus sp.KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域であるセルラーゼ遺伝子の翻訳開始点上流0.4〜1.0kb領域由来の制御領域の塩基配列を配列番号9に示す。また当該制御領域としては、配列番号9に示す塩基配列に限定されず、例えば配列番号9に示す塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列の意味である。ここでの塩基配列の同一性とは前述と同じ定義を用いる。
また、枯草菌に由来するspoVG遺伝子(BG10112)の当該制御領域の塩基配列を配列番号10に示す。当該制御領域としては、配列番号10に示す塩基配列に限定されず、例えば配列番号10に示す塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列の意味である。ここでの塩基配列の同一性とは前述と同じ定義を用いる。さらに、枯草菌に由来するrapA遺伝子(BG10652)の当該制御領域の塩基配列を配列番号11に示す。また、当該制御領域としては、配列番号11に示す塩基配列に限定されず、例えば配列番号11に示す塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列の意味である。ここでの塩基配列の同一性とは前述と同じ定義を用いる。
上述したpgsB遺伝子又はpgsB相同遺伝子とpgsC遺伝子又はpgsC相同遺伝子を宿主微生物に導入する際は、通常のプラスミド(ベクター)を使用することができる。また、プラスミドは、遺伝子導入対象の宿主微生物の種類に応じて適宜選択することができる。枯草菌を宿主とする場合、例えば、pT181、pC194、pUB110、pE194、pSN2、pHY300PLK等を例示することができる。選択されるプラスミドは、宿主細胞内で自己複製可能なプラスミドであることが好ましく、そのプラスミドが多コピーであることがより好ましい。さらに、そのプラスミドのコピー数が宿主ゲノム(染色体)に対し、2以上100コピー以下であれば良く、好ましくは2以上50コピー以下、より好ましくは2以上30コピー以下であれば良い。また、発現ベクターを用いた形質転換には、通常の手法、例えばプロトプラスト法[例えば、Chamg, S., Cohen, SH.: Mol. Gen. Genet., 168, pp111-115 (1979)参照]やコンピテントセル法[例えば、Young, FE., Spizizen, J.: J. Bacteriol., 86, pp392-400 (1963)参照]を適用することができる。
以上で説明した本発明に係る組換え微生物を用いることによって、PGAを優れた生産性で製造することができる。製造されたPGAは、化粧品、医薬品、食品、水質浄化剤、保水材料、増粘剤等の様々な用途に使用することができる。特に本発明に係る組換え微生物においては、従来の遺伝子組換え技術によるPGA生産法と比較して優れた生産性が得られることから上記用途で利用されるPGAの生産コストを大幅に低減することができる。
特に、本発明に係る組換え微生物を用いてPGAを製造する際には、先ず、適切な培地において当該組換え微生物を培養し、菌体外に生産されたPGAを培地から回収する。培地としては、グリセロール、グルコース、フルクトース、マルトース、キシロース、アラビノース、各種有機酸等の炭素源、各種アミノ酸、ポリペプトン、トリプトン、硫酸アンモニウムや尿素等の窒素源、ナトリウム塩等の無機塩類及びその他必要な栄養源、微量金属塩等を含有する組成の培地を使用できる。また、培地としては合成培地でも良いし、天然培地でも良い。
特に、PGAの生産性を向上させるには、培養対象の組換え微生物が生育に必要とするグルタミン酸量よりも過剰量のグルタミン酸が添加された培地を使用することが好ましい。具体的には培地中へはグルタミン酸ナトリウムとして添加することが好ましいが、その濃度は、例えば0.005〜600g/L、好ましくは0.05〜500g/L、より好ましくは0.1〜400g/L、最も好ましくは0.5〜300g/Lとする。培地中のグルタミン酸ナトリウム濃度が低すぎる場合には、培地中のグルタミン酸が組換え微生物の生育に消費されPGAの生産性が向上しないおそれがある。また、培地中のグルタミン酸濃度が高すぎる場合には、グルタミン酸ナトリウムの飽和溶解度を超えることから、グルタミン酸ナトリウムやその他の培地成分が析出してしまうといった問題が生じるおそれがある。
培地中に蓄積されたPGAを回収する際には、PGAを生産させた微生物菌体を除去する必要があるが、これには遠心分離による方法、限外濾過膜を用いる方法、電気透析法、pHをPGAの等電点付近に維持することで沈殿として回収する方法等が挙げられ、さらに上記手法を組み合わせて用いることも可能である。
以上のようにして、本発明に係る組換え微生物を利用することによってPGAの製造を行うことができる。また、後述する実施例に示すように本発明に係る組換え微生物は1.5g/L以上の高い生産性を示し、従来公知の遺伝子組換え技術を利用したPGA生産微生物と比較して、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を導入し、且つ、枯草菌におけるpgsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を導入していない組換え微生物でありながら、PGA生産性に優れることから、PGAの工業的生産に有用である。
後記実施例に示すように、PGA生産能を付与した微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入するとPGAを高分子化できることから、PGA生産能を付与した微生物にこれらの遺伝子を導入すればPGAの分子量を調整することができ、更に得られた組換え微生物を用いれば所望の分子量のPGAを効率良く製造することができる。
特に、pgsBCA遺伝子上流の制御領域に上記Bacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域を結合させた微生物を用いた場合には、重量平均分子量約7,000,000〜7,800,000の高分子PGAを生産することができ、当該微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、PGAの分子量を調整することができ、そのPGAを好ましくは110〜115%に高分子化できる。
また、pgsBCA遺伝子上流の制御領域に上記rapA遺伝子の制御領域を結合させた微生物を宿主細胞として用いた場合には、重量平均分子量約590,000〜600,000の中分子PGAを生産することができ、当該微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すればPGAの分子量を調整することができ、PGAを好ましくは1,200〜1,600%に高分子化することができる。
さらには、PGA生産能を有していない微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することにより、L-グルタミン酸含有率が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上とすることができる。また、本発明によれば、光学純度の高いPGA(例えば、光学純度が好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%)を製造することができる。
本発明に係る組換え微生物は、各用途に応じた分子量の異なるPGAを適宜生産することができ、また様々な用途で利用されるPGAの生産コストを大幅に低減することができ、さらに光学純度の高いPGAを生産することができることから、PGAの工業的生産にも有用である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。表1には、本実施例で使用したプライマーの名称、その配列及び配列番号をまとめて示した。尚、表1に示す塩基配列において、下線部分は付加した制限酵素認識配列を示している。
Figure 2009089708
Figure 2009089708
〔製造例1〕ベクターの構築(1)
本製造例には、PGA合成に関与する遺伝子群のクローニング方法を示した(図1参照)。
先ず、Bacillus sp. KSM-366株(FERM BP-6262)から調製した染色体DNAを鋳型とし、表1に示したpgsB-F(配列番号12)とpgsA-R(配列番号13)のプライマーセットを用いて、pgsBCA遺伝子2.9kbのDNA断片(A)を調製した。なお、Bacillus sp. KSM-366株のpgsB遺伝子の塩基配列を配列番号47に、上記pgsB遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号48に、pgsC遺伝子の塩基配列を配列番号49に、上記pgsC遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号50に、pgsA遺伝子の塩基配列を配列番号51に、上記pgsA遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号52に示す。また、表1に示したpgsB-FとpgsC-R(配列番号14)のプライマーセットを用いて、pgsBC遺伝子1.7kbのDNA断片(B)を調製した。さらに、Bacillus sp. KSM-S237株(FERM BP-7875)から調製した染色体DNAを鋳型とし、表1に示したP_S237-FW(配列番号16)とP_S237-RV(配列番号17)のプライマーセットを用いて、KSM-S237株由来のセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報参照)プロモーター領域0.6kbのDNA断片(C)を調製した。次に、得られた断片(A)及び(C)を鋳型とし、P_S237-FWとpgsA-Rとのプライマーセットを用いたSOE−PCR法にて(A)及び(C)を1断片化した3.5kbのDNA断片(AC)を得た。同様に、断片(B)及び(C)を鋳型としP_S237-FWとpgsC-Rとのプライマーセットを用いたSOE−PCR法にて、(B)及び(C)を1断片化した2.3kbのDNA断片(BC)を得た。これらDNA断片(AC)及び(BC)をそれぞれ制限酵素BamHI及びHindIIIにて制限酵素処理し、同様の制限酵素処理を施したプラスミドベクターpHY300PLK(Takara)とDNA Ligation kit Ver.2(Takara)を用いてライゲーション反応(結合化)を行なった。上記ライゲーション試料を用いて、大腸菌(HB101株)をコンピテントセル法にて形質転換し、テトラサイクリン-塩酸塩(SIGMA-ALDRICH)を15ppm添加したLB寒天培地(LBTc寒天培地)上に出現したコロニーを形質転換体とした。得られた形質転換体を再度LBTc寒天培地にて生育させ、得られた菌体からハイピュア プラスミドアイソレーションキット(ロッシュ・ダイアグノスティックス)を用い組換えプラスミドを調製した。これらを制限酵素BamHI及びHindIIIにて制限酵素処理し、電気泳動法にてプラスミドベクター上のBamHI及びHindIII制限酵素認識部位に目的とする上記DNA断片(AC)及び(BC)が挿入していることを確認した。
本製造例において、DNA断片(AC)及び(BC)の挿入が確認できた組換えプラスミドを、それぞれPGA組換え生産用ベクターpHY-P_S237/pgsBCA、pHY-P_S237/pgsBCとした。尚、PCR反応はGeneAmp9700(PE Applied Biosystems)とTaKaRa LA Taq(Takara)を用い、キット添付のプロトコールに従い実施した。
〔製造例2〕ベクターの構築(2)
本製造例には、PGA合成に関与する遺伝子群のクローニング方法を示した(図3参照)。
先ず、Bacillus subtilisMarburg No.168株(枯草菌168株)から調製した染色体DNAを鋳型とし、表1に示したP_spoVG FW2(配列番号24)とP_spoVG/Cm R(配列番号25)のプライマーセットを用いて、spoVG遺伝子ORFより約0.6kb上流にプラスミドpC194[例えば、Horinouchi,S.,Weisblum,B.: J. Bacteriol.,150, pp815-825(1982)参照]由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cmr)を挿入するための上流側0.9kbのDNA断片(spoVG-UP)を調製した。同様に、表1に示したP_spoVG/Cm F(配列番号26)とP_spoVG RV(配列番号27)のプライマーセットを用いて、下流側0.6kbのDNA断片(spoVG-DW)を調製した(尚、この際にP_spoVG RVのプライマーはspoVG遺伝子ORFの開始コドンgtgをatgに変更するようにデザインした)。また、プラスミドpC194を鋳型とし、表1に示したcomp_Cm FW(配列番号28)とcomp_Cm RV(配列番号29)のプライマーセットを用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子0.9kbのDNA断片(comp_Cm)を調製した。次に、得られた断片(spoVG-UP)、(spoVG-DW)及び(comp_Cm)を鋳型とし、P_spoVG FW2とP_spoVG RVとのプライマーセットを用いて、SOE−PCR法にて上記3断片を1断片化した2.4kbのDNA断片(Cm-P_spoVG)を得た。さらに、このようにして得られたDNA断片を用いてコンピテントセル法(前述)により枯草菌168株の形質転換を行ない、クロラムフェニコール(SIGMA-ALDRICH)を10ppm添加したLB寒天培地(LBCm寒天培地)上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。
次に、得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したcomp_Cm FWとP_spoVG RVのプライマーセットを用いたPCRによってクロラムフェニコール耐性遺伝子とspoVG遺伝子プロモーター領域からなる1.5kbのDNA断片(P-spoVG-Cm2)を調製した。さらに、comp_P-spoVG R/BSpgsB atg FW(配列番号30)とpgsC FW(配列番号31)のプライマーセットを用いて、枯草菌168株から調製したゲノムDNAを鋳型とするPCRによってpgsB遺伝子1.2kbのDNA断片(pgsB1)を、pgsB/Cm F(配列番号32)とpgsB RV(配列番号33)のプライマーセットを用いてpgsB遺伝子ORFの上流側1.1kbのDNA断片(pgsB-UP)を調製した。さらに、得られた上記(pgsB1)、(P-spoVG-Cm2)及び(pgsB-UP)の3断片を鋳型として、pgsC FWとpgsB RVのプライマーセットを用いて、SOE-PCRにより3.6kbのDNA断片を調製した。
続いて、このようにして得られたDNA断片を用いてコンピテントセル法にて枯草菌168株の形質転換を行い、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した(以下、得られた組換え枯草菌を1cp-P_spoVG/pgsBCAcm株とする)。得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、pgsC-RとBamHI_PspoVG FW(配列番号34)のプライマーセットを用いて、枯草菌pgsBC遺伝子の上流に枯草菌spoVG遺伝子プロモーターを有する2.3kbのDNA断片(P_spoVG/pgsBC)を調製した。さらに、得られたDNA断片を製造例1と同様の手順にてプラスミドベクターにクローニングし、取得したPGA組換え生産用ベクターをpHY-P_spoVG/pgsBCとした。
〔製造例3〕ベクターの構築(3)
本製造例には、製造例2と同様にPGA合成に関与する遺伝子群のクローニング方法を示した(図3参照)。
枯草菌168株から調製した染色体DNAを鋳型とし、表1に示したrapA FW(配列番号35)とP_rapA/Cm R(配列番号36)のプライマーセットを用いて、rapA遺伝子ORFより約0.5kb上流にプラスミドpC194由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入するための上流側0.5kbのDNA断片(rapA-UP)を調製した。同様に、表1に示したP_rapA/Cm F(配列番号37)とP_rapA RV(配列番号38)のプライマーセットを用いて、下流側0.5kbのDNA断片(rapA-DW)を調製した(尚、この際にP_rapA RVのプライマーはrapA遺伝子ORFの開始コドンttgをatgに変更するようにデザインした)。
次に、得られた断片(rapA-UP)、(rapA-DW)及び製造例2にて調製したDNA断片(comp_Cm)を鋳型とし、rapA FWとP_rapA RVとのプライマーセットを用いて、SOE−PCR法にて上記3断片を1断片化した1.9kbのDNA断片(Cm-P_rapA)を得た。さらに、このようにして得られたDNA断片を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株の形質転換を行ない、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。次に、得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したcomp_Cm FWとP_rapA RVのプライマーセットを用いたPCRにより、クロラムフェニコール耐性遺伝子とrapA遺伝子プロモーター領域からなる1.4kbのDNA断片(P-rapA-Cm2)を調製した。また、comp_P-rapA R/BSpgsB atg FW(配列番号39)とpgsC FWのプライマーセットを用いて、枯草菌168株から調製したゲノムDNAを鋳型とするPCRによってpgsB遺伝子1.2kbのDNA断片(pgsB2)を調製した。さらに、得られた上記(pgsB2)、(P-rapA-Cm2)及び製造例2にて調製したDNA断片(pgsB-UP)の3断片を鋳型として、pgsC FWとpgsB RVのプライマーセットを用いて、SOE-PCRにより3.5kbのDNA断片を調製した。
続いて、製造例2と同様の手順により得られたDNA断片を用いて、コンピテントセル法にて枯草菌168株の形質転換を行なった(以下、得られた組換え枯草菌を1cp-P_rapA/pgsBCAcm株とする)。得られた形質転換体からゲノムDNAを調製し、このゲノムDNAを鋳型としてpgsC-RとBamHI_PrapA FW(配列番号40)のプライマーセットを用いて、枯草菌pgsBC遺伝子の上流に枯草菌rapA遺伝子プロモーターを有する2.2kbのDNA断片(P_rapA/pgsBC)を調製した。さらに、得られたDNA断片を製造例1と同様の手順にてプラスミドベクターにクローニングし、得られた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクターpHY-P_rapA/pgsBCとした。
〔製造例4〕ベクターの構築(4)
本製造例では、製造例2と同様に、PGA合成に関与する遺伝子群のクローニング方法を示した(図4参照)。
製造例1において調製したpHY-P_S237/pgsBCAを鋳型とし、表1に示したpgsC-R及びtet4-1(配列番号41)のプライマーセットを用いて、プラスミド上のテトラサイクリン耐性遺伝子(Tetr)を含みS237セルラーゼプロモーター配列を上流に有するpgsB遺伝子DNA断片3.3kb(tet-P_B)を調製した。また、枯草菌168株から調製した染色体DNAを鋳型とし、tet4-1_comp/pgsB FW(配列番号42)及びpgsB RVとのプライマーセットを用いて、枯草菌ゲノム上のpgsBCA遺伝子の上流1.0kbのDNA断片(pgsB-DW1)を調製した。
これら断片(tet-P_B)及び(pgsB-DW1)を鋳型としてpgsC-R及びpgsB RVのプライマーセットを用いてSOE−PCR法にて2断片を結合し、枯草菌ゲノム上のpgsBCA遺伝子オペロンの上流プロモーター置換用DNA断片(tet-P_S237)を得た。さらに、得られたDNA断片(tet-P_S237)を用いコンピテント法にて枯草菌168株の形質転換を行い、LBTc寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。尚、得られた形質転換体からはゲノムDNAを抽出し、これを鋳型とするPCRによってpgsBCA遺伝子オペロンの上流にS237セルラーゼプロモーターが導入された枯草菌変異株(以下、1cp-P_S237/pgsBCAtet株とする)であることを確認した。
次に、Bacillus sp. KSM-S237株(FERM BP-7875)から調製した染色体DNAを鋳型とし、P_S237-RV及びP_S237-Fのプライマーセットを用いて、PCR法にてS237セルラーゼプロモーター領域約0.6kbのDNA断片(PS237-Cm)を調製した。また、プラスミドpC194を鋳型とし、P_S237_comp/Cm FW(配列番号43)とCm RV(配列番号23)のプライマーセットを用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子0.9kbのDNA断片(Cm-PS237)を調製した。続いて、上記DNA断片(PS237-Cm)、(Cm-PS237)及び後述製造例6において調製したDNA断片(BCA-UP)を混合して鋳型とし、P_S237-RV及びpgsB RVのプライマーセットを用いたSOE-PCRにより3.2kbのDNA断片を得た。この得られたDNA断片を用いて、枯草菌変異株(1cp-P_S237/pgsBCAtet)をコンピテントセル法により形質転換し、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した(以下、得られた形質転換体を1cp-P_S237/pgsBCAcm株とする)。
次に、得られた形質転換体から調製した染色体DNAを鋳型として、pgsC-R及びpC194CmRV/HindIII RV(配列番号44)のプライマーセットを用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子を含みS237セルラーゼプロモーター配列を上流に有するpgsBC遺伝子断片3.4kbを調製した。得られたDNA断片を精製・回収後、制限酵素HindIIIにて処理し、同様の制限酵素処理を施したプラスミドベクターpHY300PLKとDNA Ligation kit Ver.2を用いてライゲーション反応(結合化)を行なった。上記ライゲーション試料を用いて、枯草菌168株をプロトプラスト法にて形質転換し、クロラムフェニコール5ppmを添加したプロトプラスト再生培地(DM3培地)上に出現したコロニーを形質転換体とした。得られた形質転換体を再度LBCm寒天培地にて生育させ、得られた菌体からハイピュア プラスミドアイソレーションキットを用いてプラスミドを調製し、得られたプラスミドをPGA組換え生産用ベクターpHY-P_S237/pgsBC-Cmとした。
〔製造例5〕枯草菌改変体の作製(1)
本製造例では、製造例1で得られたベクターを導入するための枯草菌変異株の作製方法を示した(図2参照)。
先ず、枯草菌168株から調製したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したggt-F(配列番号18)とggt/Cm-R(配列番号19)とのプライマーセット及びggt/Cm-F(配列番号20)とggt-R(配列番号21)とのプライマーセットを用いて、ゲノム上のggt遺伝子の上流に隣接する1.0kbのDNA断片(D)及び下流に隣接する1.0kbのDNA断片(E)をそれぞれ調製した。一方、プラスミドpC194を鋳型とし、表1に示したCmFW(配列番号22)とCmRVのプライマーセットを用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子を含む0.9kbのDNA断片(F)を調製した。
次に、得られた3つのDNA断片(D)、(E)及び(F)を混合して鋳型とし、ggt-Fとggt-Rとのプライマーセットを用いたSOE−PCRにて3断片を(D)-(F)-(E)の順になる様に結合し、2.9kbの遺伝子欠失用DNA断片を得た。次に、このDNA断片を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株の形質転換を行ない、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。さらに、得られた形質転換体からゲノムDNAを抽出し、これを鋳型とするPCRによってggt遺伝子の構造遺伝子(ORF)がクロラムフェニコール耐性遺伝子(断片F)と置換した目的とする枯草菌変異株(以下、Δggt株とする)であることを確認した。
〔製造例6〕枯草菌改変体の作製(2)
本製造例では、製造例1で得られたベクターを導入するための枯草菌変異株の作製方法を示した(図2参照)。
先ず、枯草菌168株から調製したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したpgsA FW(配列番号45)とpgsA/Cm R(配列番号46)とのプライマーセットを用いてゲノム上のpgsBCA遺伝子の下流に隣接する1.0kbのDNA断片(BCA-UP)、さらにpgsB/Cm FとpgsB RVとのプライマーセットを用いてゲノム上のpgsBCA遺伝子の上流に隣接する1.0kbのDNA断片(BCA-DW2)をそれぞれ調製した。
次に、得られたDNA断片(BCA-UP)、(BCA-DW2)及び製造例5にて調製したDNA断片(F)を混合して鋳型とし、pgsA FWとpgsB RVとのプライマーセットを用いたSOE−PCRにて3断片を(BCA-UP)-(F)-(BCA-DW2)の順になる様に結合し、2.9kbの遺伝子欠失用DNA断片を得た。次に、この遺伝子欠失用DNA断片を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株の形質転換を行ない、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。さらに、得られた形質転換体からゲノムDNAを抽出し、これを鋳型とするPCRによってpgsBCA遺伝子オペロンがクロラムフェニコール耐性遺伝子(断片F)と置換した目的とする枯草菌変異株(以下、ΔBCA株とする)であることを確認した。
〔製造例7〕プラスミド導入による形質転換
本製造例では、宿主となる枯草菌株及びその変異株、その他Bacillus 属細菌の形質転換法を示した。
枯草菌(Bacillus subtilis Marburg No.168株、NCIMB11623株及びIFO3215株)、製造例5で作製した枯草菌変異株(Δggt株)、製造例6で作製した枯草菌変異株(ΔBCA株)、製造例4で作製した1cp-P_S237/pgsBCAcm株及び製造例3で作製した1cp-P_rapA/pgsBCAcm株、さらに、Bacillusmegaterium ATCC14581株及びWH320株に対し、製造例1、2及び3で得られたPGA組換え生産用ベクター(pHY-P_S237/pgsBCA、pHY-P_S237/pgsBC、pHY-P_spoVG/pgsBC及びpHY-P_rapA/pgsBC、)及びコントロールベクター(pHY300PLK)を用い、形質転換を行なった。上記野生株及び変異株からリゾチーム処理により調製したプロトプラスト10 5 〜10 6 に上記プラスミドDNAを20〜100ngを供し、プラスミド導入を行なった。テトラサイクリン-塩酸塩20ppmを添加したDM3プロトプラスト再生培地(DM3培地)上に生育したコロニーをプラスミドを導入した目的とする枯草菌形質転換体として選抜した。
Bacillus licheniformisATCC9945a株においては、製造例4で得られたPGA組換え生産用ベクター(pHY-P_S237/pgsBC-Cm)を用いて形質転換を行ない、15ppmクロラムフェニコールを添加したDM3プロトプラスト再生培地(DM3培地)を用い、再生培地上に生育したコロニーをプラスミドを導入した目的の形質転換体として選抜した。
〔実施例1〕生産性評価(1)
枯草菌168株において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCA又はpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体をそれぞれLBTc寒天培地上に接種し、30℃で一晩静置培養を行なった後、このLBTc寒天培地上に生育した枯草菌形質転換体を、予め滅菌した2.0mL容微量遠心チューブ内で0.8〜1.6mLの改変2xL/Maltose培地(2.0%トリプトン、1.0%酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン-塩酸塩)中で攪拌/懸濁し、静置した後の上清液を種培養液とした。この種培養液を、新たな改変2xL/Maltose培地に1%(v/v)接種し、坂口フラスコにて、37℃、120rpm、3日間の往復振盪培養(TB-20R-3F、高崎科学機器)を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表2に示した。
Figure 2009089708
表2に示したように、対照となるpgsBCA遺伝子を導入した株に比べてpgsBC遺伝子を導入した株において高いPGA生産性が得られた。
〔実施例2〕生産性評価(2)
枯草菌168株において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCA又はpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体をそれぞれLBTc寒天培地上に接種し、30℃で一晩静置培養を行なった後、改変2xL/Maltose+MSG培地(2.0%トリプトン、1.0%酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、7.5%マルトース、8.0%グルタミン酸ナトリウム一水和物、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン-塩酸塩)中で攪拌/懸濁し、静置した後の上清液を種培養液とした。この種培養液を、新たな改変2xL/Maltose+MSG培地に1%(v/v)接種し、坂口フラスコにて、37℃、120rpm、3日間の往復振盪培養(TB-20R-3F、高崎科学機器)を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表3に示した。
Figure 2009089708
表3に示したように、培地中に過剰なグルタミン酸が含有されている場合には、特にPGAの生産性が向上することが明らかとなった。さらに、培地中に過剰なグルタミン酸が含有されている場合には、培養開始から3日後であってもPGA生産性が低下せず高い値を示すことが明らかとなった。
〔実施例3〕生産性評価(3)
枯草菌168株及び製造例5で作製した枯草菌変異株(Δggt株)において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体を、実施例1と同様の手順にてPGA生産性評価を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表4に示した。
Figure 2009089708
表4に示したように、Δggt株を宿主とした場合には、野生株である枯草菌168株を宿主とした場合と比較して、PGA生産性に優れ、且つ培養開始から3日後であっても高い生産性が維持できることが明らかとなった。
〔実施例4〕生産性評価(4)
枯草菌168株及び製造例6で作製した枯草菌変異株(ΔBCA株)において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体を、実施例1と同様の手順にてPGA生産性評価を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表5に示した。
Figure 2009089708
表5に示したように、PGA生産能は有していないが、pgsBCA遺伝子を染色体上に有している枯草菌168株のみならず、pgsBCA遺伝子を欠損したΔBCA株においても、高いPGA生産性が得られた。
〔実施例5〕生産性評価(5)
枯草菌168株において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBC、pHY-P_spoVG/pgsBC、又はpHY-P_rapA/pgsBCを導入した形質転換体を、実施例2と同様の手順にてPGA生産性評価を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表6に示した。
Figure 2009089708
表6に示したように、S237セルラーゼプロモーターのみならず、枯草菌由来のspoVG遺伝子及びrapA遺伝子プロモーター用いて、pgsBC遺伝子を有するPGA組換え生産ベクターを導入した枯草菌形質転換体にて高いPGA生産性が得られた。
〔実施例6〕生産性評価(6)
枯草菌(NCIMB11623株及びIFO3215株)において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体を用いて、実施例2と同様の手順にてPGA生産性評価を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表7に示した。
Figure 2009089708
表7に示したように、枯草菌168株のみならず、その他の枯草菌においてもpgsBC遺伝子のみを有するPGA組換え生産ベクターを導入することによりPGA生産が可能であることが明らかとなった。
〔実施例7〕生産性評価(7)
Bacillus licheniformisATCC9945a株において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBC-Cmを導入した形質転換体を用いて、実施例2と同様の手順にてPGA組換え生産性評価を行なった(尚、使用する抗生物質は15ppmテトラサイクリンを5ppmクロラムフェニコールに変更した)。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表8に示した。
Figure 2009089708
表8に示したように、枯草菌のみならず、その他のバチルス(Bacillus)属細菌においてpgsBC遺伝子を有するPGA組換え生産ベクターを導入することによりPGA生産性が高められることが明らかとなった。
〔実施例8〕生産性評価(8)
Bacillus megaterium ATCC14581株において製造例7にて調製したpHY-P_spoVG/pgsBCを導入した形質転換体、Bacillusmegaterium WH320株において製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体を各々用いて、実施例2と同様の手順にてPGA組換え生産性評価を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量を測定し、評価結果を表9に示した。
Figure 2009089708
表9に示したように、枯草菌のみならず、その他のバチルス(Bacillus)属細菌においてpgsBC遺伝子のみを有するPGA組換え生産ベクターを導入することによりPGA生産性が高められることが明らかとなった。
〔実施例9〕生産性評価(9)分子量評価
製造例3及び4にて作製した1cp-P_rapA/pgsBCAcm株及び1cp-P_S237/pgsBCAcm株において、製造例7にて調製したpHY-P_S237/pgsBCを導入した形質転換体を用いて、実施例2と同様の手順にてPGA組換え生産性評価を行なった。評価培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてPGA生産量及び分子量を測定し、評価結果を表10及び11に示した。
Figure 2009089708
表10に示したように、PGAを産生する枯草菌改変体において、pgsBC遺伝子のみ有するPGA組換え生産ベクターを導入することにより遺伝子導入前に比べてPGA生産性が向上することを確認した。
Figure 2009089708
表11に示したように、PGAを産生する枯草菌改変体において、pgsBC遺伝子のみ有するPGA組換え生産ベクターを導入することにより遺伝子導入前に比べて生産されるPGAが高分子化することを確認した。
〔測定例〕PGAの定量及び分子量測定法
実施例1〜9に示した評価培養終了後の培養液試料を、室温にて14,800rpmで30分間遠心分離(商品名himacCF15RX、、日立工機)に供し、遠心分離にて得られた培養液上清中の組換えPGA生産量の測定を行なった。上清試料中のPGA検出はYamaguchiらの方法(前述)に準じ、試料をアガロースゲル電気泳動に供した後、メチレンブルーによるゲルの染色を行ない、PGAに由来する染色物質の有無による組換えPGA生産を確認した。さらに、組換えPGAが検出された試料については、TSKGel G4000PWXL及びTSKGel G6000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー)を用いたHPLC分析を実施した。尚、分析条件は溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速1.0mL/分、カラム温度50℃、UV検出波長を210nmとした。また、濃度検定には分子量80万のPGA(明治フードマテリアル)を用いて検量線を作成した。さらに、分子量検定にはプルラン(Shodex STANDRD P-82、商品名、昭和電工)を用いて予め重量平均分子量を求めた各種分子量の異なるポリグルタミン酸[和光純薬工業(162-21411、162-21401)、SIGMA-ALDRICH(P-4886、P-4761)、明治フードマテリアル(分子量88万)]を用いた。尚、評価結果を示した表中のPGA生産性を表す数値の単位は(g/L)である。また、評価結果を示した表中の記号“ND”は検出限界以下であることを示している。
〔実施例10〕生産性評価(10)PGA組成の光学純度測定
実施例2においてpHY-P_S237/pgsBCAを導入した枯草菌168株形質転換体から得られた培養液、実施例4においてpHY-P_S237/pgsBCを導入した枯草菌変異株(ΔBCA株)形質転換体から得られた培養液を試料として用いた。培養液上清に等量のエタノールを添加し、遠心分離にて生成した沈殿を回収した。続いて、回収した沈殿生成物を乾固させ、これに6N塩酸を加えて窒素封入し、115〜120℃にて24時間の加熱処理を行なった。加熱処理後、窒素ガス気流下で塩酸及び水分を留去し加水分解試料として回収した。続いて、全自動アミノ酸分析計L-8500(商品名、日立計測機器)及びL-グルタミン酸測定キット(ヤマサ醤油)を用いて、上記加水分解物試料のアミノ酸組成とL-グルタミン酸の定量分析を行なった。尚、全自動アミノ酸分析計による分析において光学活性異性体(D-体及びL-体)の総量が定量結果として得られ、これよりL-体測定キットから得られた定量結果を差し引いた差分をD-体量とした。また、Bacillussp. KSM-366株(FERM BP-6262)より調製したPGAをBacillus属細菌の野生株が産生するPGA標品として上記分析に供した。さらに、加水分解反応におけるアミノ酸のラセミ化率を検証するために、D-グルタミン酸及びL-グルタミン酸(和光純薬工業)を標品として使用した。その結果を表12に示す。
Figure 2009089708
表12に示したように、pgsBC遺伝子のみ有するPGA組換え生産ベクターを導入した組換え枯草菌により生産されたPGAはL-グルタミン酸含量が90%以上の純度を有する光学純度の高いPGAであることを確認した。また、同時に検討した加水分解処理条件でのアミノ酸のラセミ化率が約10%であったことから、pgsBC遺伝子のみを導入した組換え枯草菌から得られたPGAの光学純度は80〜100%であると推定された。
〔参考例〕
製造例1と同様にBacillus sp. KSM-366株(FERM BP-6262)から調製した染色体DNAを鋳型とし、表1に示したpgsB-FとpgsB-R(配列番号15)のプライマーセットを用いて、pgsB遺伝子1.2kbのDNA断片(G)を調製した。これとKSM-S237株由来のセルラーゼ遺伝子プロモーター領域のDNA断片(C)を鋳型としP_S237-FWとpgsB-Rとのプライマーセットを用いたSOE−PCR法にて(G)及び(C)を1断片化した1.8kbのDNA断片(GC)を得た。以下、製造例1に示した同様の実験方法によりプラスミドベクターpHY300PLK(Takara)のBamHI及びHindIII制限酵素認識部位内に、上記DNA断片(GC)の挿入が確認できた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクターpHY-P_S237/pgsBとした。
PGA合成遺伝子導入前のpHY300PLK、並びに上記のpgsB遺伝子単独発現プラスミド(pHY-P_S237/pgsB)を用いて、実施例1及び2に示したPGA生産性評価を実施したところ、いずれの実験条件においてもPGA生成が認められなかった。
PGAの合成に関与する遺伝子群のクローニング工程の一例を説明するためのPGA組換え生産用ベクターの構築フローである。 製造例5における、SOE-PCR断片を用いた2重交差法による標的遺伝子欠失手順を説明するための、PGA組換え生産用ベクターの構築フローである。 製造例2および製造例3におけるPGAの合成に関与する遺伝子群のクローニング工程を説明するためのフローである。 製造例4におけるPGAの合成に関与する遺伝子群のクローニング工程を説明するための、PGA組換え生産用ベクターの構築フローである。

Claims (16)

  1. ポリ−ガンマ−グルタミン酸合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入し、且つ、枯草菌におけるpgsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を上記宿主微生物に導入していない、ポリ−ガンマ−グルタミン酸生産能を有する組換え微生物。
  2. 上記pgsB遺伝子が以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の組換え微生物
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質
  3. 上記pgsC遺伝子が以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1または2記載の組換え微生物
    (a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
    (b)配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、上記pgsB遺伝子がコードするPgsBタンパク質の存在下でポリ−ガンマ−グルタミン酸を生成する機能を有するタンパク質
  4. 上記pgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と上記pgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が、上記微生物の宿主細胞内で自己複製可能なプラスミド(ベクター)に組み込まれていることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の組換え微生物。
  5. 上記pgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と上記pgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が、その上流に、微生物において機能を有する転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域を有する請求項1〜4のいずれか一項記載の組換え微生物。
  6. 上記宿主微生物がバチルス(Bacillus)属細菌である、請求項1〜5いずれか一項記載の組換え微生物。
  7. 上記バチルス(Bacillus)属細菌が枯草菌(Bacillus subtilis)である請求項6記載の組換え微生物。
  8. 請求項1〜7いずれか一項記載の組換え微生物を培養し、生成されたポリ−ガンマ−グルタミン酸を取得することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法。
  9. ポリ−ガンマ−グルタミン酸合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られた組換え微生物を用いて、ポリ−ガンマ−グルタミン酸の生産性を向上させることを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の生産性向上方法。
  10. 上記組換え微生物が請求項1〜7のいずれか一項記載の組換え微生物であることを特徴とする請求項9記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の生産性向上方法。
  11. ポリ−ガンマ−グルタミン酸合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られた組換え微生物を用いて、ポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量を調整することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  12. 上記組換え微生物が請求項1〜7のいずれか一項記載の組換え微生物であることを特徴とする請求項11記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  13. 請求項11又は12記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法を用いた高分子量ポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法。
  14. 微生物を用いてポリ−ガンマ−グルタミン酸を生産する際に、ポリ−ガンマ−グルタミン酸合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsB遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子と、枯草菌におけるpgsC遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られた組換え微生物を用いて、ポリ−ガンマ−グルタミン酸のL-体比率を調整することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の光学純度調整方法。
  15. 上記組換え微生物が請求項1〜7のいずれか一項記載の組換え微生物であることを特徴とする請求項13記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の光学純度調整方法。
  16. 請求項14又は15記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の光学純度調整方法を用いたL-体比率の高いポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法。
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