JP2009167352A - 樹脂成形体の表面物性改良剤、その製造方法及び用途 - Google Patents

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典幸 福島
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雄亮 坂田
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Abstract

【課題】樹脂成形体の外観が良好で、ブリード、臭気及びフォギングを抑制することができると共に、耐擦傷性を向上させることができる樹脂成形体の表面物性改良剤、その製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】樹脂成形体の表面物性改良剤は、融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合してなる重合体を含有する。混合液にはさらに融点40〜100℃の酸化ワックスが含まれていることが好ましい。表面物性改良剤は下記の第1工程及び第2工程を経て製造される。第1工程:前記無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。第2工程:第1工程の重合体を乳化重合の場合には塩析、濾過後、乾燥して精製し、懸濁重合の場合には濾過後、乾燥し精製して樹脂成形体の表面物性改良剤を得る工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば自動車内装部品等に用いられる樹脂成形体の外観が良好で、ブリード、臭気及びフォギングを抑制することができると共に、耐擦傷性を向上させることができる樹脂成形体の表面物性改良剤、その製造方法及び用途に関するものである。
従来、自動車のインストルメントパネルやドアトリム等の自動車内装部品は、軟質塩化ビニル樹脂が主流であったが、近年、軽量でリサイクルが容易であり、コストパフォーマンスが高く、燃焼時にガスを発生しない等の利点から、ポリオレフィン系樹脂に代替が進められている。該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が用いられている。しかしながら、これらポリオレフィン系樹脂の自動車内装部品は、塩化ビニル樹脂を原料とする自動車内装部品と比較して、耐傷つき性、耐摩耗性及びシボ残り性が劣るといった欠点があるため、その改良が強く望まれており、いくつかの改善提案がなされている。具体的には、自動車内装部品用プロピレン重合体組成物として、プロピレン系ブロック共重合体と高級脂肪酸アミドとからなる組成物が提唱されている(例えば、特許文献1を参照)。この組成物は、流動性に優れ、耐衝撃性、剛性等の機械的特性のバランスに優れている。
また、自動車内外装部品の表皮層として、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、(1)結晶性ポリオレフィン樹脂、(2)スチレン熱可塑性エラストマー、(3)シリコーンオイル、脂肪族エステル、フッ素系ポリマー及び高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種の成分を含有してなり、部分的に架橋されていてもよいものである。この自動車内外装部品によれば、耐傷付性に優れ、軽量でリサイクルが容易である。
特許第3472980号公報(第1頁及び第5頁) 特開平9−156053号公報(第2頁及び第4頁)
しかしながら、特許文献1に記載されているプロピレン重合体組成物では、ポリプロピレンに高級脂肪酸アミドを単にブレンドしただけでは、滑剤成分である高級脂肪酸アミドが表面に移行し難く、かつ滑剤の効果が長期にわたって持続されないため、満足できる耐擦傷性が得られないという欠点があった。さらに、脂肪酸アミドに由来して臭気及びフォギングが発生するという欠点があるため、自動車内装部品として使用することが難しいという問題があった。
一方、特許文献2に記載されているオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物では、成分(3)のうち、シリコーンオイルは、結晶性ポリオレフィン樹脂やスチレン熱可塑性エラストマーと非相溶性であるため、シリコーンオイルが表面にブリードするという問題があった。また、フッ素系ポリマーも、結晶性ポリオレフィン樹脂やスチレン熱可塑性エラストマーと非相溶性であるため、耐擦傷性と耐摩耗性の点で劣るという問題があった。さらに、脂肪酸エステルや高級脂肪酸アミドは、成分(1)と成分(2)に単純にブレンドしただけでは耐擦傷性や耐摩耗性を十分に発現することができないという問題があった。
そこで本発明の目的とするところは、樹脂成形体の外観が良好で、ブリード、臭気及びフォギングを抑制することができると共に、耐擦傷性を向上させることができる樹脂成形体の表面物性改良剤、その製造方法及び用途を提供することにある。
第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤は、融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合してなる重合体を含有することを特徴とする。
第2の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤は、第1の発明において、前記混合液がさらに融点40〜100℃の酸化ワックスを含有することを特徴とする。
第3の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法は、第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法であって、下記に示す第1工程及び第2工程を経て樹脂成形体の表面物性改良剤を製造することを特徴とする樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法。
第1工程:融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた重合体を乳化重合の場合には塩析、濾過後、乾燥して精製し、懸濁重合の場合には濾過後、乾燥して精製することにより樹脂成形体の表面物性改良剤を得る工程。
第4の発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を主成分とし、第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有することを特徴とする。
第5の発明の樹脂成形体は、ポリオレフィン樹脂を主成分とし、第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有する熱可塑性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明における樹脂成形体の表面物性改良剤は、融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合してなる重合体を含有するものである。このように、無極性ワックスの存在下でラジカル重合開始剤を使用して重合を行うことによって、無極性ワックスからの水素引き抜き反応が起こり、無極性ワックスとビニル単量体から形成される重合体(又は共重合体)とのグラフト共重合体が形成されるものと考えられる。このグラフト共重合体は、樹脂成形体を形成する例えばポリオレフィン樹脂に親和性を示さず、樹脂成形体の表面に配向されやすい無極性ワックスと、ポリオレフィン樹脂よりも硬質でかつポリオレフィン樹脂と極性の異なるビニル単量体から形成される重合体とから構成されている。
そのため、表面物性改良剤をポリオレフィン樹脂に配合して熱可塑性樹脂組成物を調製し、それを成形して樹脂成形体を得たとき、無極性ワックスによる表面配向性とビニル単量体から形成される重合体の極性の相違による排斥効果によって、表面物性改良剤が樹脂成形体の表面近傍に配向するものと推測される。従って、低摩擦係数で表面を滑らす効果のある無極性ワックスと、ポリオレフィン樹脂よりも硬質なビニル単量体から形成される重合体の相乗効果により、無極性ワックスとビニル単量体の重合体を単純にブレンドしただけでは得られなかった高い耐擦傷性が発現されるものと考えられる。
加えて、無極性ワックスはビニル単量体の重合体とグラフト共重合体を形成していることから、係るグラフト共重合体はポリオレフィン樹脂と分子間力などによって親和性を示し、樹脂成形体内に良好に保持される。このため、樹脂成形体はブリードが抑制され、外観が良好に保持されると共に、フォギングも抑制される。また、無極性ワックスは臭いがなく、ビニル単量体の重合体は高分子化され脂肪酸アミドのような低分子量ではないことから、樹脂成形体の臭気を抑制することができる。
第2の発明における樹脂成形体の表面物性改良剤では、前記混合液がさらに融点40〜100℃の酸化ワックスを含有する。このため、第1の発明の効果に加え、酸化ワックスが界面活性作用を発現し、乳化重合による乳化液又は懸濁重合による懸濁液の安定性を向上させることができ、結果として凝集物の少ない表面物性改良剤が得られ、その表面物性改良剤を配合して得られる樹脂成形体の外観を一層良好にすることができる。
第3の発明における樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法は、下記に示す第1工程及び第2工程を経て行われる。
第1工程:融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた重合体を乳化重合の場合には塩析、濾過後、乾燥して精製し、懸濁重合の場合には濾過後、乾燥して精製することにより樹脂成形体の表面物性改良剤を得る工程。
このため、無極性ワックス単体で乳化又は懸濁させる場合には高温、加圧下に行うことが一般的であるのに対し、無極性ワックスがビニル単量体に溶解された状態で乳化又は懸濁され、安定した状態で乳化液又は懸濁液を得ることができ、凝集物の少ない表面物性改良剤を得ることができる。従って、第1の発明の効果を奏する表面物性改良剤を簡便な操作で容易に得ることができる。
第4の発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を主成分とし、第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有するものである。従って、熱可塑性樹脂組成物に含まれる表面物性改良剤に基づいて第1の発明の効果を発揮することができる。
第5の発明の樹脂成形体はポリオレフィン樹脂を主成分とし、第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有する熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるものである。このため、表面物性改良剤は主として極性の相違により樹脂成形体の表面側へ移行する。従って、樹脂成形体について第1の発明の効果を有効に発揮することができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
〔樹脂成形体の表面物性改良剤〕
本実施形態の樹脂成形体の表面物性改良剤(以下、単に表面物性改良剤とも称する)は、融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合してなる重合体を含有するものである。係る重合体は、無極性ワックス(幹成分)にビニル単量体の重合体(枝成分)がグラフト重合してなるグラフト共重合体であるものと考えられ、該グラフト共重合体の性質に基づいて樹脂成形体の耐擦傷性が向上し、その外観が良好で、ブリード、臭気及びフォギングを抑制することができる。従って、表面物性改良剤を含む熱可塑性樹脂組成物から成形される樹脂成形体は、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品として好適に使用される。
(無極性ワックス)
前記無極性ワックスは低摩擦性などの性質を発現できる化合物であり、融点が50〜100℃、好ましくは60〜100℃の範囲にある公知のワックスが全て含まれる。融点が50℃よりも低い場合、常温でタッキ性(粘着性)を持つため作業性が悪く、樹脂成形体表面へのブリードも多く、かつ耐擦傷性も低下する。その一方、融点が100℃よりも高い場合、重合時に安定な乳化液及び懸濁液が得られず、最終的な表面物性改良剤の粒子径が大きくなって樹脂成形体の外観を悪化させる上に、耐擦傷性も低下する。無極性ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油由来の天然ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらの中で表面物性改良剤をポリオレフィン樹脂に添加した際に優れた耐擦傷性を発現できる点でパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びフィッシャートロプシュワックスが好ましい。
前記パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びフィッシャートロプシュワックスは一般に市販されている。パラフィンワックスとしては、日本精蝋(株)製の商品名:パラフィンワックス155、パラフィンワックス150、パラフィンワックス140、パラフィンワックス135、パラフィンワックス130、パラフィンワックス1251、パラフィンワックス120、HNP-3、HNP-5、HNP-9、HNP-10、HNP-311、HNP-12、HNP-51、LUVAX-1266、LUVAX-2191、LUVAX-1151、LUVAX-1211等が挙げられる。また、マイクロクリスタリンワックスとしては、日本精蝋(株)製の商品名:Hi-Mic-2095、Hi-Mic-1090、Hi-Mic-1080、Hi-Mic-1070、Hi-Mic-2065、Hi-Mic-1045、Hi-Mic-2045等が挙げられる。また、フィッシャートロプシュワックスとしては、日本精蝋(株)製の商品名:FT-0070、FT100、FT-0165、FT-5165等が挙げられる。
(ビニル単量体)
ビニル単量体としては、その重合体が例えばポリオレフィン樹脂より硬質であり、かつポリオレフィン樹脂との極性の相違による排斥(排除)効果によって、ポリオレフィン樹脂成形体の表面に配向されることにより、耐擦傷性の効果が大きくなるような単量体が好適に用いられる。
このような単量体として、例えばアルキル鎖長の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酸基を有するビニル単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、シアノ基を有するビニル単量体、スチレン等が挙げられ、これらより選択される少なくとも1種の単量体が使用される。なお、本明細書ではアクリルとメタクリルを(メタ)アクリルと総称する。
より具体的なビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。これらの中でも、耐擦傷性の効果が大きい点で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が特に好ましい。
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤はビニル単量体のラジカル重合を開始させ得る化合物であり、一般的に知られているアゾ系重合開始剤、有機過酸化物、過硫酸塩、過酸化水素水、レドックス重合開始剤(酸化剤及び還元剤を組合せた重合開始剤)等が使用できる。
アゾ系重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1−フェニルエチルアゾジフェニルメタン等が挙げられる。
有機過酸化物としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、クミルパーオキシルネオデカノエート、t−ブチルパーオキシルネオデカノエート等のパーオキシエステル類等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
これらの中でレドックス重合開始剤が重合の制御が容易であることからより好ましい。レドックス重合開始剤に用いられる酸化剤としては、ハイドロパーオキサイド又は過硫酸塩が使用され、例えばハイドロパーオキサイドとしては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等、また過硫酸塩としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、グルコース、デキストロース、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸銅及びヘキサシアノ鉄(III)カリウム等が挙げられる。
これらの中では、酸化剤としてターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーヘキシルパーオキシベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等で代表される有機パーオキシエステル類を使用し、還元剤としてグルコースや硫酸第一鉄を使用する場合、水素引き抜きによるグラフト化反応を促すことができるため好ましい。
ラジカル重合開始剤の含有量は、ビニル単量体総量100質量部に対して好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。この含有量が0.001質量部未満の場合には、重合を完結させるために長時間の反応が必要となるばかりでなく、反応が完結しないため好ましくない。その一方、5質量部を超える場合には、発熱が大きくなり、重合反応の制御が困難となる傾向にある。
(酸化ワックス)
酸化ワックスは前記無極性ワックスを薬品や空気中の酸素で酸化したものであり、融点が40〜100℃のものである。この酸化ワックスを無極性ワックスと併用することで界面活性作用により乳化液又は懸濁液をより安定にする効果があり、結果として重合体の粒子径を容易に制御することが可能となる。酸化ワックスの融点が40℃よりも低い場合、無極性ワックスと同様にタッキ性を有するため作業性が悪く、樹脂成形体表面へのブリード量も多くなり、耐擦傷性も低下する。その一方、融点が100℃よりも高い場合、重合時に安定な乳化液及び懸濁液が得られず、表面物性改良剤の粒子径が大きくなって樹脂成形体の外観を悪化させる上に、耐擦傷性も低下する。
酸化ワックスの酸価、ケン化価及びヒドロキシル価は、それぞれ酸価1〜100mgKOH/g、ケン化価0〜250mgKOH/g及びヒドロキシル価0〜120mgKOH/gであることが好ましく、酸価5〜80mgKOH/g、ケン化価0〜200mgKOH/g及びヒドロキシル価0〜100mgKOH/gであることがさらに好ましい。
このような酸化ワックスの代表例としては、石油ワックスを酸化させた日本精蝋(株)製のNPSシリーズ、LUVAXシリーズやOXシリーズ、ポリエチレンワックスを酸化させたクラリアントジャパン(株)製のLicowaxシリーズ、三井化学(株)製の三井ハイワックスシリーズ等が挙げられる。これらの中で、日本精蝋(株)製の商品名: NPS-8070、NPS-9210、NPS-9125、LUVAX-0321、OX-1949、OX-020Tがさらに好ましい。これらの酸化ワックスの含有量は、無極性ワックスに対して0〜200質量%であることが好ましく、0〜100質量%であることがより好ましい。
前述した無極性ワックス又は無極性ワックス及び酸化ワックスと、ビニル単量体から形成される重合体の割合は、好ましくはワックスが10〜90質量%、ビニル単量体から形成される重合体が90〜10質量%である。なお、単にワックスというときは、無極性ワックスと酸化ワックスの双方を意味する。より好ましくはワックスが20〜80質量%、ビニル単量体から形成される重合体が80〜20質量%であり、さらに好ましくはワックスが30〜70質量%、ビニル単量体から形成される重合体が70〜30質量%である。ワックスが10質量%より少ない場合には樹脂耐擦傷性が低下するため好ましくなく、90質量%よりも多い場合には樹脂成形体表面にワックスがブリードし、外観が低下するため好ましくない。
〔表面物性改良剤の製造方法〕
表面物性改良剤は、下記に示す第1工程及び第2工程を経て製造することができる。
第1工程:融点50〜100℃のワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた重合体を塩析又は濾過後、乾燥して精製することにより樹脂成形体の表面物性改良剤を得る第2工程。
次に、代表的な製造方法について以下に態様別に示す。
まず、乳化重合法による表面物性改良剤の製造方法を説明する。
乳化重合法(1):
次の第1〜第4工程を経て表面物性改良剤を製造する。
第1工程:ワックス、ビニル単量体及び界面活性剤を混合し、ワックスの融点以上まで加温して油相を得る工程。第2工程:油相中にワックスの融点以上に加温した水を加え、撹拌して乳化液を得る工程。第3工程:乳化液にラジカル重合開始剤を加え、重合反応させて重合体を得る工程。第4工程:重合体を精製する工程。
乳化重合法(2):
次の第1〜第3工程を経て表面物性改良剤を製造する。
第1工程:ワックス、ビニル単量体、界面活性剤及び水を混合し、ワックスの融点以上まで加温しながら撹拌して乳化液を得る工程。第2工程:乳化液にラジカル重合開始剤を加え、重合反応させて重合体を得る工程。第3工程:重合体を精製する工程。
乳化重合法(3):
次の第1〜第5工程を経て表面物性改良剤を製造する。
第1工程:ワックス、ビニル単量体及び界面活性剤を混合し、ワックスの融点以上まで加温して油相を得る工程。第2工程:油相中にワックスの融点以上に加温した水を加え、撹拌して乳化液を得る工程。第3工程:水及び界面活性剤からなる混合液を加温して水相を得る工程。第4工程:水相中に乳化液及びラジカル重合開始剤を加え、重合反応させて重合体を得る工程。第5工程:重合体を精製する工程。
乳化重合に使用される界面活性剤としては、公知のノニオン系、アニオン系又はカチオン系の界面活性剤が使用できるが、塩析によって重合物を取り出すことを考慮すると、アニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種以上が適宜選択して使用され、ワックスとビニル系単量体100質量部に対して通常0.1〜10質量部、好ましては1〜5質量%の割合で使用される。
乳化重合に際しては、必要により公知のpH調整剤、キレート剤、重合調節剤、重合安定剤などを添加することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のpH調節剤、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のキレート剤、無機電解質、有機電解質、高分子電解質等からなる粘度調節剤又は重合安定剤等が挙げられる。さらに、重合度を制御するために、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加することも可能である。
重合温度は、使用するワックスの融点以上及び重合開始剤の種類によって適宜変えることが好ましいが、例えば50〜100℃、より好ましくは60〜100℃である。このような温度範囲において、温度制御が容易で、かつ重合が完結する温度を適宜選択する。
重合が完結した後、乳化重合で得られた乳化液は通常の方法に従って精製される。精製方法としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の酸類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硝酸カルシウムなどの電解質類を用い、ワックスの融点以下の温度で塩析した後、濾過、乾燥する方法が挙げられる。
次に、懸濁重合法による表面物性改良剤の製造方法について説明する。
次の第1〜第3工程を経て表面物性改良剤を製造する。
第1工程:水、懸濁剤、ワックス及びビニル単量体を混合し、ワックスの融点以上まで加温する工程。第2工程:懸濁液にラジカル重合開始剤を加え、重合反応させて重合体を得る工程。第3工程:重合体を精製する工程。
ここで用いられるラジカル重合開始剤としては、前記乳化重合法で用いたラジカル重合開始剤の全てが含まれる。
懸濁重合法に用いられる分散剤としては、例えば無機系化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ、磁性体、フェライト等が挙げられる。また、有機系化合物としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられ、それを水相に分散又は溶解されて使用される。
これらの分散剤の含有量は、ワックス及びビニル単量体の総量100質量部に対して好ましくは0.01〜10.0質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。また、分散剤として市販のノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤も利用することができる。そのような界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。懸濁重合が完結した後、得られた重合体は通常の方法に従い精製される。精製方法としては、例えば懸濁液を濾過及び乾燥する方法が挙げられる。
ビニル単量体から形成される重合体の質量平均分子量〔テトラヒドロフラン(THF)中、スチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による測定値〕は、通常1,000〜6,000,000、好ましくは1,0000〜4,000,000である。この質量平均分子量が1,000未満であると重合体の耐熱性が低下する傾向があり、質量平均分子量が6,000,000を超えると重合体を溶融させたときの流動性が悪化し、成形性が低下する傾向にある。
また、グラフト効率を高めるために、表面物性改良剤を製造する際に、下記の一般式(1)又は一般式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物を共重合しても良い。これらのラジカル重合性有機過酸化物を使用することで、簡便に、かつ高いグラフト効率を得ることが可能となる。
Figure 2009167352
式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。mは1又は2である。
Figure 2009167352
式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。nは0、1又は2である。
ここで、ラジカル重合性有機過酸化物とは、過酸化物結合とラジカル重合性の官能基を一分子中に有する化合物をいう。このラジカル重合性有機過酸化物として、例えば前記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の1種又は2種以上の混合物が使用される。係るラジカル重合性有機過酸化物の含有量は、ビニル単量体100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましい。
前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物としては、例えばt−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイルカーボネートが好ましい。
このようにして得られる表面物性改良剤は微細な粒子状であり、その粒子の平均粒子径は好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.3〜20μmである。係る平均粒子径が0.1μm未満の場合には、表面物性改良剤の粒子が細かくなり過ぎて取扱性が悪くなったり、その製造が困難になったりして好ましくない。一方、100μmを超える場合には、表面物性改良剤をポリオレフィン樹脂に配合したときに分散性が低下し、表面物性改良剤の機能が十分に発現できなくなると共に、樹脂成形体の外観が悪くなる。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を主成分とし、前述した表面物性改良剤を含有するものであって、ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有するものである。ポリオレフィン樹脂としては、α−オレフィン樹脂及び熱可塑性エラストマー等が含まれる。
α−オレフィン樹脂を形成するα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、或いはこれらの混合物等が挙げられる。α−オレフィン樹脂の具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられ、スチレン系熱可塑性エラストマー等が含まれていてもよい。オレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリプロピレンとエチレン・プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物;ポリエチレンとエチレン・プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物;ポリプロピレンとエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムのブレンド物又はその架橋物;ポリエチレンとエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムのブレンド物又はその架橋物;ポリプロピレンとスチレン・ブタジエンブロック共重合体ゴムの水素添加品(SEBS)とのブレンド物又はその架橋物;ポリプロピレンとエチレン・1−オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物;ポリエチレンとエチレン・1−オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物等が挙げられる。
このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーは市販されており、例えば商品名:ミラストマー〔三井化学(株)製〕、商品名:サントプレーン〔エー・イー・エスジャパン(株)製〕、商品名:住友TPE〔住友化学(株)製〕、商品名:エンゲージ〔デュポン・ダウ・エラストマー(株)製〕、商品名:サーモラン〔三菱化学(株)製〕等が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)又はその水素添加品(H−SBR)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体ゴム(SBS)又はその水素添加品(SEBS);スチレン・イソプレンブロック共重合体ゴム(SIS)又はその水素添加品(SEPS、HV−SIS)等が挙げられる。
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーは市販されており、例えば商品名:タフテック〔旭化成(株)製〕、商品名:エラストマーAR〔アロン化成(株)製〕、商品名:セプトン〔(株)クラレ製〕、商品名:クレイトン〔クレイトンポリマージャパン(株)製〕、商品名:JSR TR〔JSR(株)製〕等が挙げられる。
α−オレフィン樹脂及び熱可塑性エラストマーは単独で用いてもよく、また2種以上を適宜組合せて用いてもよい。なお、架橋は公知の方法により行われ、その中でも有機過酸化物による架橋が好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中における表面物性改良剤の含有量は0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。即ち、ポリオレフィン樹脂の占める割合は80〜99.9質量%が好ましく、90〜99質量%がより好ましい。表面物性改良剤が0.1質量%未満であると、表面物性改良剤による特性の発現が不十分となる傾向にあり、その一方20質量%を超えると、樹脂成形体の剛性を低下させたり、流動性を低下させたりするため好ましくない。
また、熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の樹脂やゴム、或いは無機充填剤を配合してもよい。このような樹脂やゴムとしては、例えば、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物等のエチレン系共重合体;エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン・ブテン共重合体ゴム、エチレン・ブテン・非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン・ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・オクテン共重合体ゴム等のエチレン系共重合体ゴム;ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、アクリルゴム(ACM)及びシリコーンゴム等が挙げられる。
無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で滑剤を配合しても良い。このような滑剤としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘミン酸アミド等の飽和脂肪族アミド系;エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド系;メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミド系;ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ油脂肪酸オクチル、ステアリン酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、ネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラパルミネート等の脂肪酸エステル系;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の炭化水素系;ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系;ステアリルアルコール等の高級アルコール系;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸系;シリコーンオイル等のシリコーン系;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコール系等の滑剤が挙げられる。
さらに、熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で公知の熱安定剤、難燃剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、分散剤、発泡剤、紫外線防止剤、着色剤、可塑剤、鉱物油系軟化剤等を配合することも可能である。
熱可塑性樹脂組成物は、前記各成分を混合して加熱して溶融、混合することにより調製されるが、その際の加熱温度は70〜300℃が好ましい。この加熱温度が70℃未満の場合、ポリオレフィン樹脂と表面物性改良剤との混練が不完全になったり、溶融粘度が高いため混合が不十分になり、相分離や層状剥離が現れる傾向にあるため好ましくない。一方、300℃を超える場合、ポリオレフィン樹脂と表面物性改良剤の分解が激しくなる傾向にあるため好ましくない。溶融、混合方法としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールによる混練法等公知の方法が採用される。
〔樹脂成形体〕
樹脂成形体は、上記の熱可塑性樹脂組成物を所定形状に成形することにより得られ、熱可塑性樹脂組成物に含まれる表面物性改良剤の効果が発現される。樹脂成形体の形態としては、シート、フィルム、加熱成形体、中空成形体、発泡体、射出成形体等が挙げられる。成形方法としては、一般に採用される熱可塑性樹脂の成形機で成形する方法が採用され、具体的にはカレンダー加工法、圧空加工法、加熱成形法、ブロー成形法、発泡成形法、押出成形法、射出成形法、真空成形法、粉末スラッシュ成形法等が挙げられる。樹脂成形体は、前記の優れた特徴を生かして、自動車部品、家電部品、雑貨等の幅広い分野における多種の製品、半製品に利用することができる。
具体的には、樹脂成形体が自動車内装用の表皮材の形態に成形されることにより、自動車内装表皮材が得られる。自動車内装表皮材は、例えばポリオレフィン発泡体層と、その表面に設けられる上記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる表皮層との積層体である。この表皮層上にトップコート層を塗布形成することもできる。表皮層とトップコート層との間にはプライマー層を介することもできる。熱可塑性樹脂組成物を成形してなる表皮層は、常法に従って、T−ダイ付き押出成形機、カレンダー成形機等のプラスチック加工機に供給してシート状等の所望形状に成形することによって得られる。
ポリオレフィン発泡体層に使用されるポリオレフィンとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの架橋発泡体がより好ましい。その架橋発泡体は、ポリエチレン又はポリプロピレンに発泡剤及び架橋剤(ラジカル発生剤)を混合し、得られた混合物の軟化点以上の温度で加熱し、架橋剤を分解させることにより得ることができる。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機パーオキサイドが用いられる。その他の架橋方法としては、電離性放射線照射による方法や多官能性単量体の存在下における電離性放射線照射による方法等が挙げられる。電離性放射線には電子線、γ線、X線、イオンビーム等があるが、工業的に利用しやすいのは電子線とγ線である。電離性放射線の照射量としては、30〜500kGy程度が適当である。照射量が増える程架橋度は高くなるが、耐熱老化性が悪くなるため、60〜300kGyの範囲が好ましい。
積層体の成形は、公知の成形方法に従って行われる。例えば、熱可塑性樹脂組成物をT-ダイ付き押出機によって押出し、押出された溶融状態にあるシート状の熱可塑性樹脂組成物をポリオレフィン発泡体シートと積層させた状態で一対のロール間を通す方法で成形される。
表皮層上に塗布形成されるトップコート層の材料として具体的には、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びイソシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。さらに具体的には、飽和ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びその誘導体等、アクリル酸エステル樹脂としてはポリメチル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリ2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等、イソシアネート樹脂としてはポリヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。このトップコート層の厚さは、300μm以下であることが好ましい。
また、自動車内装表皮材は、通常表面にシボ付けされて用いられる。シボ付けは公知の方法により行うことができ、例えばシート成形時にシボロールとピンチロールとの間を通すこと等により行うことができる。このような自動車内装表皮材は、例えばインストルメントパネル、ドアトリム、シフトレバー、ハンドル、コンソールボックス、エアバッグカバー、アシストグリップ、天井、座席シート等の表皮層として用いられる。
〔実施形態の作用、効果のまとめ〕
・ 本実施形態の表面物性改良剤は、前記無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合してなる重合体を含有するものである。無極性ワックスの存在下でラジカル重合開始剤を使用して重合を行うことによって、無極性ワックスからの水素引き抜き反応が起こり、無極性ワックスとビニル単量体から形成される重合体とのグラフト共重合体が形成されるものと考えられる。係るグラフト共重合体は、ポリオレフィン樹脂に親和性を示さず、樹脂成形体の表面に配向されやすい無極性ワックスと、ポリオレフィン樹脂よりも硬質でかつポリオレフィン樹脂と極性の異なるビニル単量体から形成される重合体とから構成されている。
そのため、表面物性改良剤をポリオレフィン樹脂に配合して熱可塑性樹脂組成物を調製し、それを成形して樹脂成形体を得たとき、無極性ワックスによる表面配向性とビニル単量体から形成される重合体とポリオレフィン樹脂との極性の相違による排斥効果によって、表面物性改良剤が樹脂成形体の表面近傍に配向するものと推測される。従って、低摩擦性を有し表面を滑らす効果のある無極性ワックスと、ポリオレフィン樹脂よりも硬質なビニル単量体から形成される重合体の相乗効果により、無極性ワックスとビニル単量体の重合体を単純にブレンドしただけでは得られなかった高い耐擦傷性を発揮することができる。
加えて、無極性ワックスはビニル単量体の重合体とグラフト共重合体を形成していることから、係るグラフト共重合体はポリオレフィン樹脂と分子間力などによって親和性を示し、樹脂成形体内に良好に保持される。このため、樹脂成形体はブリードが抑えられ、外観を良好に保持することができると共に、フォギングも抑制することができる。しかも、無極性ワックスは臭いがなく、ビニル単量体の重合体は高分子化され脂肪酸アミドのような低分子量ではないことから、樹脂成形体の臭気を抑制することができる。よって、樹脂成形体を自動車の内装部品をはじめ、電気部品、機械部品等として好適に使用することができる。
・ 前記混合液がさらに融点40〜100℃の酸化ワックスを含有することにより、該酸化ワックスは無極性ワックスと共に、ビニル単量体がグラフト重合してグラフト共重合体が形成されるものと考えられる。そして、酸化ワックスが界面活性作用を発現し、乳化重合による乳化液又は懸濁重合による懸濁液の安定性を向上させることができ、凝集物の少ない表面物性改良剤を得ることができる。従って、樹脂成形体の外観を一層良好にすることができる。
・ 表面物性改良剤は、下記に示す第1工程及び第2工程を経て製造される。
第1工程:融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた重合体を乳化重合の場合には塩析、濾過後、乾燥して精製し、懸濁重合の場合には濾過後、乾燥して精製することにより樹脂成形体の表面物性改良剤を得る工程。
従って、無極性ワックスがビニル単量体に溶解された状態で乳化又は懸濁され、安定した状態で乳化液又は懸濁液を得ることができ、凝集物の少ない表面物性改良剤を得ることができる。従って、上記の効果を奏する表面物性改良剤を簡便な操作で容易に得ることができる。
・ 熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を主成分とし、表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有するものであり、熱可塑性樹脂組成物に含まれる表面物性改良剤に基づいて前述した効果を発揮することができる。
・ 樹脂成形体はポリオレフィン樹脂を主成分とし、表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有する熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるものである。従って、表面物性改良剤は主として極性の相違により樹脂成形体の表面側へ移行し、樹脂成形体について前記の効果を有効に発揮することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。また、各例中の部、%は特に断らない限り質量部及び質量%を示す。なお、これらの実施例及び比較例における物性の試験方法は以下の通りである。
(1)粒子径の測定:レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LA-920〔(株)堀場製作所製〕を用い、得られた表面物性改良剤の粒子の平均粒子径(μm)を測定した。
(2)樹脂成形体の外観:射出成形機〔田端機械工業(株)製〕を用い、熱可塑性樹脂組成物のペレットから縦90mm、横55mm及び厚さ2mmの樹脂成形体(プレート試験片)を成形し、その外観を次の評価基準で評価した。
○:ブランクとの差異が認められない。○△:細かい粒子が少量認められる。△:細かい粒子が多量認められる。△×:大きな粒子が少量認められる。×:大きな粒子が多量認められる。
(3)樹脂成形体のブリード性:前記のプレート試験片を70℃のオーブン中に72時間放置し、プレート試験片の表面にブリードする成分を目視にて観察し、外観を次の評価基準で評価した。
○: ブリードは全くなし。△: ブリードが僅かにある。×: ブリードがある。
(4)耐擦傷性:ファイブフィンガースクラッチ試験機(ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT, INC.製)を用い、目視にて傷の白化を観察し、白化が生じない荷重を評価点とした。荷重は3、6、10、15及び20Nで試験した。
(5)フォギング試験:HAAKE社製フォギングテスターを用いて、ISO6452に準拠した方法により、熱可塑性樹脂組成物のペレット10g、試験温度100℃、試験時間16時間及び冷却板21℃での質量変化を測定した。
(6)臭気:容量477mlのマヨネーズ瓶に、得られたプレート試験片を10枚入れて密閉し、90℃の乾燥機中で3時間静置した。その後、室温で2時間冷却した。パネラー10人により、当該サンプルとブランクとを比較して臭気試験を行った。該ブランクには、比較例2及び比較例6に相当するプレート試験片を用いた。評価は、下記の判定基準に従って10人の合計の平均点で行った。点数が少ないほど、臭気特性に優れている。
1点:ブランクと差異が認められない。2点:僅かにブランクと差異が認められる。3点:僅かに臭気が認められる。4点:弱い臭気を感じる。5点:強い臭気が認められる。
以下の実施例、比較例及び表中の略記号は次の物質を表す。
PW−1:パラフィンワックス155〔日本精蝋(株)製、融点69℃〕
PW−2:FT−0070〔日本精蝋(株)製、融点72℃〕
PW−3:パラフィンワックス115〔日本精蝋(株)製、融点47℃〕
PW−4:FT−115〔日本精蝋(株)製、融点114℃〕
mPW−1:NPS−9125〔日本精蝋(株)製、融点69℃〕
mPW―2:LUVAX0321〔日本精蝋(株)製、融点75℃〕
St:スチレン、AN:アクリロニトリル、MMA:メタクリル酸メチル、MAA:メタクリル酸、HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、PP:ポリプロピレン〔商品名:プライムポリプロJ708UG、(株)プライムポリマー製〕
TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー〔商品名:ミラストマー8030、三井化学(株)製〕
OA:オレイン酸アミド〔商品名:アルフローE−10、日油(株)製〕
シリコーンオイル〔商品名:SH200−1000CS、東レ・ダウコーニング(株)製、分子量約20000〕
〔実施例1、表面物性改良剤1の製造〕
容積1リットルのセパラブルフラスコに、無極性ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:パラフィンワックス155、融点:69℃〕140g、スチレン42g、アクリロニトリル18g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10g、連鎖移動剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン〔日油(株)製、ノフマーMSD〕0.09gを入れ、撹拌しながら70℃に昇温し、ほぼ均一な油相を得た。次いで、70℃の温度を保持しながら、かつ撹拌しながら、イオン交換水466.7gに還元剤として硫酸第一鉄(II)7水和物0.02gとグルコース1g、キレート剤としてピロリン酸ナトリウム10水和物1gを溶解させた70℃の温水相を、油相中に滴下ポンプを使用して2時間で滴下し、乳化液を得た。
次に、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド〔日油(株)製、パーブチルH〕0.84g添加し、70℃で5時間、80℃に昇温後撹拌しながら1時間重合し、重合体を得た。冷却後、炭酸カルシウムを用いて塩析を行った。析出した重合物を濾過及び乾燥して、本発明の表面物性改良剤1を得た。
〔実施例2、表面物性改良剤2の製造〕
パラフィンワックス155をFT−0070〔日本精蝋(株)製、融点72℃〕に変更する以外は、前記実施例1と同様の操作で表面物性改良剤2を得た。
〔実施例3、表面物性改良剤組成物3の製造〕
無極性ワックス(パラフィンワックス155)140gを100gに、酸化ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:NPS9125、融点:63℃〕40g添加すること以外は、前記実施例1と同様の操作で表面物性改良剤3を得た。
〔実施例4、表面物性改良剤4の製造〕
前記実施例3の無極性ワックス(パラフィンワックス155)100gをワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:FT−0070、融点:72℃〕を80gに、酸化ワックス(NPS9125)40gを20gに、ビニル単量体(スチレン42gとアクリロニトリル18g)をメタクリル酸メチル100gに、連鎖移動剤(ノフマーMSD0.09g)をn−ドデシルメルカプタン〔日油(株)製、NDM−1〕0.05gに、油相を得る温度を70℃から72℃に変更する以外は、前記実施例3と同様の操作で表面物性改良剤4を得た。
〔実施例5、表面物性改良剤5の製造〕
前記実施例3の無極性ワックス(パラフィンワックス155)100gを40gに、酸化ワックス(NPS9125)をLUVAX0321〔日本精蝋(株)製、融点75℃〕に、スチレン42gを96gに、アクリロニトリル18gを24gに、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン〔日油(株)製、ノフマーMSD〕0.09gを0.36gに、油相を得る温度を70℃から75℃に変更する以外は、前記実施例3と同様の操作で表面物性改良剤5を得た。
〔比較例1〕
パラフィンワックス155をパラフィンワックス115〔日本精蝋(株)製、融点47℃〕に変更する以外は前記実施例1と同様の操作で重合体を得た。
〔比較例2〕
パラフィンワックス155をFT−115〔日本精蝋(株)製、融点114℃〕に変更する以外は前記実施例1と同様の操作で重合体を得た。
〔実施例6、表面物性改良剤6の製造〕
容積1リットルのセパラブルフラスコに、無極性ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:FT−0070、融点:72℃〕80g、酸化ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:LUVAX0321、融点:75℃〕40g、メタクリル酸メチル60g、メタクリル酸20g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン〔日油(株)製、NDM−1〕0.04g、イオン交換水466.7g、還元剤として硫酸第一鉄(II)7水和物0.02gとグルコース1g、キレート剤としてピロリン酸ナトリウム10水和物1gを入れて75℃に昇温し、ホモミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌して乳化液を得た。
次に、冷却して70℃にし、重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド〔日油(株)製、パーブチルH〕を0.84g添加し、70℃で5時間、80℃に昇温して1時間重合し、重合体を得た。冷却後、炭酸カルシウムで塩析を行った。析出した重合物を濾過及び乾燥して、表面物性改良剤6を得た。
〔実施例7、表面物性改良剤7の製造方法〕
容積1リットルのセパラブルフラスコに、無極性ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:パラフィンワックス155、融点:69℃〕80g、酸化ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:NPS9125、融点:63℃〕20g、メタクリル酸メチル80g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン〔日油(株)製、NDM−1〕0.1gを入れ、撹拌しながら70℃に昇温し、均一な油相を得た。
次に、70℃のイオン交換水200gを温度が下がらないように油相中に滴下ポンプで2時間滴下し、乳化液を得た。一方、1リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水266.7g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4g、還元剤として硫酸第一鉄(II)7水和物0.02gとグルコース1g、キレート剤としてピロリン酸ナトリウム10水和物1gを入れ、70℃に昇温した。この温水相に前記乳化液と重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド〔日油(株)製、パーブチルH〕0.84gとを滴下ポンプで2時間滴下し、70℃で5時間、80℃に昇温して1時間重合し、重合体を得た。冷却後、炭酸カルシウムで塩析を行った。析出した重合物を濾過及び乾燥して、表面物性改良剤7を得た。
〔実施例8、表面物性改良剤8の製造〕
容積1リットルのセパラブルフラスコに、水500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール0.5gを溶解させた。この中に、無極性ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:パラフィンワックス155、融点:69℃〕56g、酸化ワックス〔日本精蝋(株)製、商品名:LUVAX0321、融点:75℃〕24g、スチレン100g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20g、連鎖移動剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン〔日油(株)製、ノフマーMSD〕0.36gを入れ、撹拌しながら80℃に昇温した。重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド〔日油(株)製、ナイパーBW〕0.3gを投入して80℃で5時間、90℃で1時間重合を行い、重合体を得た。次に、水洗及び乾燥して表面物性改良剤8を得た。
Figure 2009167352
実施例1〜8及び比較例1では粉末状の重合体が得られたが、比較例2では重合時にワックスが溶解せず、均一な乳化液が得られなかったため、結果的に凝集物が多く平均粒子径の測定ができなかった。また、実施例1と3の比較において、実施例3の方が重合後の凝集物が少なく、平均粒子径も細かくなったことから酸化ワックスの併用の効果が観察された。
〔実施例9〜16及び比較例3〜10、熱可塑性樹脂組成物の製造及び樹脂成形体の評価〕
表2に示す成分及び配合割合でドライブレンドした後、シリンダー温度200℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融・混合して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。これらのペレットを用いて樹脂成形体としての試験片(縦90mm、横55mm及び厚さ2mm)を射出成形した。得られた樹脂成形体について前記の外観、ブリード性、耐擦傷性、フォギング及び臭気の試験を行った。それらの結果を表2に示した。なお、比較例3はポリプロピレンのブランク、比較例4はワックスのみ、比較例5はビニル共重合体としてのスチレン・アクリロにリル共重合体(AS)のみ、比較例6はワックスとスチレン・アクリロにリル共重合体(AS)をそれぞれ配合したもの、比較例7はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)のブランク、比較例8はオレイン酸アミド(OA)添加系、比較例9はシリコーンオイル添加系、比較例10は比較例1添加系であって、何れも本発明の範囲外となる例を示した。
Figure 2009167352
実施例9〜16の結果に見られる通り、本発明の樹脂成形体は、外観とブリード性と耐擦傷性に優れ、しかもフォギングと臭気はブランクと差異がない。従って、これらの樹脂成形体を自動車部品、家電部品、雑貨等の幅広い分野における多種の製品及び半製品に利用することができる。その中でも、自動車内装用の表皮材等に好適に使用することができる。
それに対し、比較例3では、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン単体であるため、外観とブリード性は優れ、フォギング量と臭気は少ないが、耐擦傷性は劣っている。比較例4では、ポリプロピレンにパラフィンワックスをブレンドしたものであり、比較例3よりは耐擦傷性が良好となるが、実施例9〜14よりは劣っている。また、外観は良好であるがブリード性で劣っている。比較例5では、ポリプロピレンにビニル単量体から形成される共重合体であるスチレン・アクリロニトリル共重合体をブレンドしたものであり、ブリード性、フォギング性及び臭気は優れるが、樹脂成形体の外観と耐擦傷性で劣っている。比較例6では、ポリプロピレンにワックスとビニル単量体から形成される共重合体であるスチレン・アクリロニトリル共重合体をブレンドしたものであり、フォギングと臭気は優れているが、外観、ブリード性、耐擦傷性は劣っている。
比較例7では、オレフィン系熱可塑性エラストマー単体であり、外観、ブリード性、フォギング及び臭気は優れるが、耐擦傷性は劣っている。比較例8では、ポリプロピレンにオレイン酸アミドをブレンドしたものであり、外観は良好で、比較例3より耐擦傷性は向上するが、実施例9〜16より劣っている。また、ブリード、フォギング、臭気で劣っている。比較例9では、ポリプロピレンにシリコーンオイルをブレンドしたものであり、外観は良好で、比較例3よりは耐擦傷性は向上するが、実施例9〜16より劣っている。さらに、ブリード性で劣っている。比較例10では、ポリプロピレンに比較例1の組成物をブレンドしたものであり、外観、フォギング及び臭気は良好だが、ブリードが生じてしまう。耐擦傷性は比較例3より向上するが、実施例9〜16より劣っている。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 無極性ワックス又は酸化ワックスとして、融点の異なるものをそれぞれ複数組合せて使用することもできる。
・ 無極性ワックス及び酸化ワックスを併用する場合、それらの融点が近いものを組合せて使用し、それらの効果を有効に発揮できるようにすることができる。
・ 滑剤などの耐擦傷性を向上させる成分を前記混合液に加え、乳化重合又は懸濁重合によりビニル単量体をグラフト重合するように構成することもできる。
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ 請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法であって、下記に示す第1工程及び第2工程を経て樹脂成形体の表面物性改良剤を製造することを特徴とする樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法。
第1工程:融点50〜100℃の無極性ワックス、融点40〜100℃の酸化ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた重合体を乳化重合の場合には塩析、濾過後、乾燥して精製し、懸濁重合の場合には濾過後、乾燥して精製することにより樹脂成形体の表面物性改良剤を得る工程。
この場合、乳化液又は懸濁液の安定性を向上させることができ、請求項1に係る発明の効果をより一層発揮できる表面物性改良剤を簡便な操作で容易に得ることができる。
・ ポリオレフィン樹脂を主成分とし、請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有する熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体が自動車内装用の表皮材の形態に成形されていることを特徴とする樹脂成形体。この場合、請求項1に係る発明の効果を自動車内装表皮材として有効に発揮させることができる。
・ 粒子状に形成され、その平均粒子径は0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤。このように構成した場合、表面物性改良剤をポリオレフィン樹脂に配合したとき、優れた分散性を発現でき、表面物性改良剤の効果を十分に発揮することができる。
・ 前記ラジカル重合開始剤は、レドックス重合開始剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤。このように構成した場合、ワックスからの水素引き抜きによるグラフト化反応を促すことができる。

Claims (5)

  1. 融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合してなる重合体を含有することを特徴とする樹脂成形体の表面物性改良剤。
  2. 前記混合液がさらに融点40〜100℃の酸化ワックスを含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤。
  3. 請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法であって、下記に示す第1工程及び第2工程を経て樹脂成形体の表面物性改良剤を製造することを特徴とする樹脂成形体の表面物性改良剤の製造方法。
    第1工程:融点50〜100℃の無極性ワックス、ビニル単量体及びラジカル重合開始剤を含む混合液を乳化重合又は懸濁重合して重合体を得る工程。
    第2工程:第1工程で得られた重合体を乳化重合の場合には塩析、濾過後、乾燥して精製し、懸濁重合の場合には濾過後、乾燥して精製することにより樹脂成形体の表面物性改良剤を得る工程。
  4. ポリオレフィン樹脂を主成分とし、請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリオレフィン樹脂を主成分とし、請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤を含有し、前記ビニル単量体がポリオレフィン樹脂とは異なる極性を有する熱可塑性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする樹脂成形体。
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