JP2009167467A - 曲げ性に優れた高強度冷延鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.05〜2.0%、Si: 0.2〜2.0%、Mn:0.5〜2.8%、P:0.005〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.5%、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、フェライト相の体積分率が60体積%以上、80体積%以下であって、さらにフェライト相のナノ硬さHnfと低温変態相のナノ硬さHnmとの比:Hnm/Hnfが3.0以上とする。別の態様では、フェライト相の体積分率が20体積%以上、50体積%以下であって、さらにフェライト相のナノ硬さHnfと低温変態相のナノ硬さHnmとの比:Hnm/Hnfが2.0以下としてもよい。
【選択図】図1
Description
今日、種々の強化法によって材料強度、つまり鋼板強度を確保することは可能であるが、高強度化に伴い加工性が低下するのが実情であった。加工性に優れた高強度薄鋼板として、フェライトとマルテンサイトやベイナイト等の低温変態相を第二相とする複合組織鋼板が提案されている。特に、伸びを重視した場合、二相鋼(DP鋼)とし、フェライト体積率を増大させれば良いことがわかっているが、曲げ性が劣化することが知られている。
このように、両者を両立させた高強度鋼板が強く求められているにも関わらず、従来の高強度鋼板では、伸び、つまり延性と曲げ性の両立は困難であった。
(1) 質量%で、C:0.05〜0.2%、Si: 0.2〜2.0%、Mn:0.5〜2.8%、P:0.005〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.5%、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、フェライト相および低温変態相を有し、フェライト相の体積分率が60体積%以上、80体積%以下であって、さらにフェライト相のナノ硬さHnfと低温変態相のナノ硬さHnmとの比:Hnm/Hnfが3.0以上である組織を備えたことを特徴とする引張強度780MPa以上の冷延鋼板。
超高張力鋼は、延性に富んだフェライト中に硬質な低温変態相を分散させた二相組織(以後、DP組織)とすることで、強度と延性を同時に確保する。また、焼入れ性を確保するためにMn等を多量に添加するが、通常の量産鋼材では、Mnの偏析は避けられない。そのためDP組織を構成するマルテンサイトなど低温変態相がそのようなMn偏析に対応して分散する。通常、Mnは圧延方向に平行にスジ状に偏析するので、低温変態相も同様に100μm 間隔程度のスジ状に分布することになる。
DP鋼では、上記の偏析に起因して低温変態相が密集した領域と粗な領域が100μm 程度の間隔で圧延方向に延びているのが認められることが多い。例えば、自動車用に一般的に用いられる超高張力鋼ではDP鋼におけるフェライト相と低温変態相との割合は50体積%−50体積%程度であることが多いが、Mn偏析による低温変態相の占める割合は、Mn偏析の程度や冷却条件にもよるが、密集領域で60体積%、粗な領域では40体積%程度となる。
自動車のシートレール等に用いられる高張力鋼では、所定の引張り強度を有すると同時に、曲げ半径R1t程度でもスジ欠陥やワレ欠陥が生じない曲げ特性が要求される。前述した低温変態相がスジ状に分布した超高張力鋼は、低温相が密な領域では伸びが小さく、フェライト主体の粗な領域では大きな伸びを示すことになる。このため、スジ方向に直行して曲げ変形を付加すると、伸びの小さな密な領域は表面に突き出るのに対して、大きく伸びる粗な領域は表面に対して陥没し、結果として、図1に示すように、鋼板表面において低温変態相の分布に対応した凹凸状のスジ欠陥が発生することになる。
フェライト単体の伸びは30%以上であり、焼入れままのマルテンサイト単体の3倍以上の伸びを示す。したがって、低温変態相が密であってもある程度のフェライトが存在すれば、フェライトのみで歪みを吸収することが可能となり、低温変態相への歪みの伝搬が避けられる。さらに、フェライトと低温変態相の硬度差が3倍以上であれば、さらにこの効果は顕著となる。この結果、曲げに伴う歪みの不均一が緩和され、スジ欠陥の発生を抑制することが可能となる。
これに対して、フェライト率を低減し、低温変態相の分率を増大させることによっても、低温変態相の不均一分布を避けることが可能となる。この結果、曲げに伴う歪みの不均一は生じにくくなり、スジ欠陥の発生を回避することが可能となる。この場合、一定の伸びを確保するために、ある程度のフェライトが必要であるが、フェライトと低温変態相の硬度差は2倍以下程度とし、低温変態相への歪み伝播を容易にしておく必要がある。
以上より、フェライト率を適宜調整するとともに、フェライトと低温変態相との硬度比を最適化することで、超高張力鋼としての780MPa以上の引張強度を確保した上で、伸びと曲げ特性に優れた鋼板を得ることが可能となる。
また、「伸び」とは、いわゆる引張試験における伸びをいい、本発明の場合、通常、13 〜18 %程度であり、また、「曲げ特性」は
JIS Z 2248の規定に準拠したVブロック法による曲げ性を言う。
ここに、図2に模式的に示すように、本発明においては、フェライト率が十分に高い場合は、DP組織を構成する二相の硬度比を3倍以上とし、曲げ変形に伴う歪みを主にフェライトで吸収することで、スジ欠陥の発生は避けることができる(図2の(a)領域参照)。
(7)熱処理による組織、硬さの最適化
上記のフェライト率は、A3変態点以下、A1変態点以上の温度域での保持時間を変化させて、初析フェライト量を制御することで調節が可能である。また、後述するように焼入れ時の冷却速度を一定値以上にすることによって、任意のフェライト量を室温でも得ることが可能となる。
本発明で示した薄鋼板に添加する元素に関して、その範囲と限定理由を説明する。本明細書において鋼組成を示す「%」は特にことわりがないかぎり、「質量%」である。
Cは、低温変態相を生じさせるのに必要であり、強度を確保するため少なくとも0.05%を添加する必要がある。しかしながら、添加量が0.20%を超えるとスポット溶接性が劣化するため、添加量の上限を0.20%とする。好ましくは、0.06 〜0.18 %である。
Mnは強度及び靭性を高める作用がある。さらに焼入れ性を向上させる作用も有するため、マルテンサイトなど低温変態相の生成に不可欠である。これらの効果はMnの含有量が0.5%以上で得られる。一方、Mnの過剰な添加はフェライトが生成し難くなるだけでなく、前述の通り、Mn偏析も生じやすくなる。このため、Mn量を0.5〜2.8%の範囲に限定した。好ましくは、1.2 〜2.7 %である。
Pは強化元素として、好ましくは、少なくとも0.005%の添加を必要とするが、多量に添加した場合、溶接性の劣化を招く恐れがあるため、0.15%以下の範囲とする。好ましくは0.02 %以下である。
Siは、フェライトの生成を促進し、DP組織を形成させるために有効な元素である。この効果を発揮させるためには、0.2%以上の含有が必要である。2.0%を超えて含有させると、溶接性が著しく低下するため、上限を2.0%とする。また、多量のSiの含有は、めっきの密着性や化成処理性を劣化させる傾向があり、そのために含有量を0.8%以下と低く抑える必要がある場合は、フェライトの生成が不十分でになるためAlの添加量を増大させ、SiとAlの添加量が合わせて1.5%以下になるよう調整すれば良い。Siの好ましい範囲は、0.3〜1.5%である。
AlもSiと同様、フェライト生成元素であり、Si添加量が少ない場合は、DP組織形成に不可欠であり、1.5%以下添加する。好ましくは、0.7 〜1.2 %である。
上述の通り、Al添加量はSi添加量に左右されるが、めっき施工を念頭にSi添加量が制限される場合、Al添加量は0.5%以上、好ましくは、0.7%以上添加する。
一方、Si添加量に制限がない場合は、Alは主に脱酸のため添加する。Alを脱酸のために添加するときは、Alが0.005%未満では脱酸が十分でなく、0.5%を超えて添加してもコストが嵩むばかりで効果が飽和するため、0.005〜0.5%とする。好ましくは、0.01 〜0.1 %である。
Sは鋼中不純物として存在するが、0.02%を超えると熱間圧延時に疵が発生しやすくなり表面性状が悪化するため、0.02%以下とする。
本発明では、必要に応じて上記元素を少なくとも一種含有できる。Cr、Moはフェライトの強化に有効に作用する。その効果を確実にするためには、Cr、Moは0.01%以上含有させる。ただし、Cr、Moは1%超含有すると延性の低下をもたらすとともに、これらの元素は高コストであるため、その上限を1.0%とする。
本発明にかかる冷延鋼板は、フェライト相および例えば、マルテンサイト、ベイナイトなどの低温変態相を含有するものであり、その他、残留オーステナイトなどの相の存在を許容するが、好適態様では、フェライト相と残部、低温変態相とからなる鋼組織を備えた冷延鋼板である。低温変態相としては、マルテンサイトが代表例として挙げられるが、ベイナイト相、それらの混合相であってもよい。
(i)フェライト率60体積%以上、80体積%以下で硬度比3倍以下
本発明の1態様によれば、鋼板が含有するフェライト率を60体積%以上とするとともに、フェライトと低温変態相とのナノ硬さの硬度比を3倍以上とする。
さらに、フェライト率が80体積%超の場合は、硬質相である低温変態相の体積分率が20体積%未満と小さくなり、鋼材強度を780MPa以上にすることが困難なため、フェライト率は80体積%以下とする。
本発明の別の態様においては、鋼板が含有するフェライト率が50体積%以下であると同時に、フェライトと低温変態相のナノ硬さの硬度比を2倍以下とする。本態様では、フェライト率が50体積%超で硬度比が2倍超、または、フェライト率20体積%未満で硬度比2超の範囲内では、曲げ変形時に薄鋼板内に歪みの不均一が生じ、結果として、スジ欠陥が生じることになる。さらに、フェライト率が20体積%未満の場合、局所変形である曲げ性は低下しないものの、鋼材の基本特性である全伸びが低下する。そこで、フェライト率の下限を20体積%とした。
ここに、「ナノ硬さ」は、鋭利なダイヤモンド探針を試料表面に押込み、このときの押込み深さから、探針と試料との接触面積を算出し、押込み荷重を接触面積で減じたときの変形抵抗によって定められる硬さを言う。本明細書では、実施例にも示すように、Hysitron社製のTriboscopeにberkovich探針を取付け計測されたデータを持って示す。
所望の成分を有する鋼を転炉、電炉等の公知の通常の方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼素材とするのが望ましい。なお、連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法などとしてもよい。この鋼素材に熱間圧延を施し熱延鋼板とする。熱間圧延は、鋳造された鋼素材を室温まで冷却せず温片のまま加熱炉に装入して加熱した後に圧延する直送圧延を行うか、あるいは保熱を行った後、直ちに圧延する直接圧延を行うか、あるいは一旦鋼素材を冷却した後に再加熱してから圧延を行ってもよい。
このように冷延鋼板の複合組織化を図ることができるが、このとき、フェライト率を制御する方法としては、前述の通り、薄鋼板をAr1 〜Ar3の温度域まで加熱し、一定時間保持することで、フェライト相とオーステナイト相からなる複合組織とする。この際の焼鈍温度と保持時間を選択することで、フェライト率が任意に制御可能となる。具体的には、加熱温度が高くなればオーステナイト相が多くなり、時間が経過すればフェライト相が多くなることから、それらを調整することでフェライト率を調整可能である。フェライト相は後続の冷却処理によっても保存される。
さらに本発明では、任意のフェライト相と低温変態相の硬度差を得るために、冷却後200〜500℃の温度範囲で30〜600秒保持による過時効処理を行ってもよい。
所望の成分を有する鋼を転炉、電炉等の公知の通常の方法で溶製し、連続鋳造法で連続鋳造により鋳片厚270mmのスラブとし、スラブ加熱後、熱間圧延により粗圧延後板厚40mm、仕上圧延後板厚2.6mmとし、その後冷却して巻き取った。さらに厚さ1.5mmまで冷間圧延し、Ac3点以上で焼鈍した後に、連続焼鈍を施した。
冷延焼鈍鋼板から試験片を採取し、圧延方向断面、圧延方向と直交する断面の組織を電子顕微鏡で観察し、フェライト率を画像解析により求めた。
冷延焼鈍鋼板の圧延方向に直交する方向にJIS5号引張試験片を採取し、引張り特性(引張り強度TS、伸びEl)を得た。
冷延焼鈍鋼板から圧延方向に直交する方向を長手方向とするJIS3号曲げ試験片を採取し、JIS Z2248の規定に準拠したVブロック法により曲げ性を調査した。頂角90度の押し金具をバリが内側となるよう押込んだ。曲げ性の良否は目視で判定し、試験後に割れやスジが生じない押し金具の最小半径を板厚で減じ、規格化することで最小曲げ半径を算出した。なお、押し金具はそれぞれ半径が2、1、0.5、0 mmのものを用いた。
フェライト、低温変態相それぞれのナノ硬さは以下のようにして求めた。測定位置は、鋼板の圧延方向に直交する方向の断面であり、鋼板表面から板中心方向へ25〜30μm 位置の各相の硬さを、Hysitron社のTriboscopeを用い測定した。ここで、測定時の荷重は500μNであり、探針押込み深さは、いずれの相であっても数10nmであった。各相について抽出した10カ所のナノ硬さを測定し、その平均値を用いた。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.5〜2.8%、P:0.005〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.5%、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、フェライト相および低温変態相を有し、フェライト相の体積分率が60体積%以上、80体積%以下であって、さらにフェライト相のナノ硬さHnfと低温変態相のナノ硬さHnmとの比:Hnm/Hnfが3.0以上である組織を備えたことを特徴とする引張強度780MPa以上の冷延鋼板。
- 前記が化学組成のSi含有量が0.2〜0.8質量%、Al含有量が0.7〜1.5質量%であり、鋼板表面にめっき層を備えた、請求項1記載の冷延鋼板。
- 質量%で、C:0.05〜0.2%、Si: 0.2〜2.0%、Mn:0.5〜2.8%、P:0.005〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.5%、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、フェライト相および低温変態相を有し、フェライト相の体積分率が20体積%以上、50体積%以下であって、さらにフェライト相のナノ硬さHnfと低温変態相のナノ硬さHnmとの比:Hnm/Hnfが2.0以下である組織を備えたことを特徴とする引張強度780MPa以上の冷延鋼板。
- 前記化学組成のSi含有量が0.2〜0.8質量%、Al含有量が0.7〜1.5質量%であり、鋼板表面にめっき層を備えた、請求項3記載の冷延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.01〜1.0%およびMo:0.01〜1.0%の少なくとも1種をさらに含む請求項1ないし4のいずれかに記載の冷延鋼板。
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