JP2009247263A - 脂質代謝異常の遺伝的リスク検出法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】195個の候補遺伝子に関し258個の遺伝子多型をPCR、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ、およびサスペンション・アレイ・テクノロジー(SAT)を用いて検出し、脂質代謝異常に有意に関連する遺伝子多型を検出する方法。この検出法は、特に日本人の脂質代謝異常の発症予測、およびその予防に有用である。
【選択図】なし
Description
脂質代謝異常は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、高LDLコレステロール血症の状態を含むが、いずれの症状もアテローム性動脈硬化の重要なリスク因子である。我々は、これらの各状態のそれぞれと遺伝的変異との関係を調査した。本研究の目的は、脂質代謝異常に関与する遺伝子多型を同定し、この知見に基づいて、ある者に対して脂質代謝異常を予防するための有用な情報を与えることである。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記46個には限られず、これら46個の多型のうちの任意の1個−45個、或いは本明細書中で示される上記46個の他の多型を含む47個以上で実施することもできる。
なお、ABCA1の1051G→Aについては、dbSNPのrs番号(rs2230806)を見ると、順方向(forward strand)に読んでG/A多型として記録されているが、逆方向(reverse strand)で読むとC/T多型となる。多くの文献について、このSNPは「1051G/A」多型として記載されているので、本明細書においても上記の通りに記載する。
研究対象
研究対象は、2つの独立な母集団からなる5,421名であった。集団Aは4,002名から構成され、研究参加施設(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院、弘前大学病院、黎明郷リハビリテーション病院)に、2002年10月から2007年3月までに、様々な症状または毎年の健康診断のために来院した者であった。集団Bは1,419名から構成され、群馬県における人口に基づく将来の老化および加齢障害の研究のため地域社会に暮らす高齢者であった。
研究プロトコールはヘルシンキ宣言に従い、三重大学医学部、弘前大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、東京都老人総合研究、および参加病院の倫理委員会によって承認された。各参加者に対しては書面によるインフォームドコンセントを得た。
静脈血の採取は、早朝において各患者が一晩に渡って絶食し、脂質濃度低下のための適当な治療を受ける前に行った。血液サンプルは、4℃にて、1600×g、5分間遠心し、血清を分離した。血清は、脂質濃度を測定するまで−30℃にて保存した。血清中の全コレステロール(非特許文献36)、トリグリセリド(非特許文献37)、HDLコレステロール(非特許文献38)の濃度を周知方法によって測定した。LDLコレステロール濃度についても周知の方法(非特許文献39)、すなわちフリーデワルドの公式(Friedewald formula)に基づき、「血中LDLコレステロール濃度=血中全コレステロール濃度−血中HDLコレステロール濃度−(0.2×血中トリグリセリド濃度)。但し、血中トリグリセリド濃度が4.4mmol/L以下の場合」として求めた(非特許文献40、41)。
公開データベースの使用、および本発明者の鋭意検討により、195個の候補遺伝子を選択した。本発明者は、従来の知見およびデータベースに基づき、これら195個の遺伝子について、258個の多型を選択した。これらの多型の多くは、プロモーター領域、エクソン、イントロンのスプライシングの供与部位或いは受容部位に多く位置しており、多型の結果として、コードされたタンパク質の機能または発現に変化を与える可能性があるものであった。これら258個の多型は、下記表1−表6に示した。なお、表中においては、左欄から順に、座位(Locus)、遺伝子名(Gene)、簡易記載(Symbol)、多型(Polymorphism)、多型データベース登録番号(dbSNP)を示している。なお、多型データベース登録番号が無い場合には、NCBI遺伝子バンクに登録されている番号を示した。各多型の野生型および変異型対立遺伝子は、情報源のものを用いた。
7mLの静脈血を50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含むチューブに採取し、ゲノムDNAをキット(ゲノミックス社製)によって分離した。258個の多型の遺伝子型は、PCRと配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをサスペンジョン・アレイ・テクノロジー(SAT:Luminex 100)と組み合わせて使用する方法によって決定した(G&Gサイエンス株式会社)。プライマー、プローブ、その他の条件は、下表7に示した。表7は左から順に、遺伝子記(Gene Symbol)、多型(Polymorphism)、センスプライマー(Sense primer)、アンチセンスプライマー(Antisense primer)、プローブ1(Probe 1)、プローブ2(Probe 2)、アニーリング温度(Annealing)、およびサイクル数(Cycles)を示した。また、詳細な方法については、既報のもの(非特許文献42)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、脂質代謝異常との関連が認められなかった多型を検出するための条件については記載を省略した。
方法の詳細については、非特許文献42に記載の通りである。以下には、この方法の概要について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面には、特異的な塩基配列を認識するプローブが結合されている。各ビーズには、一種類のプローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との割合を変化させることにより、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。複数種類のプローブを備えたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類のプローブのみ)を適当な割合で混合し、100ビーズ/μLとなるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
<増幅反応(Amplification)>
目的とするDNAを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチンでラベルしたプライマーを用いた。1.5mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH8.3)、2%DMSO、0.2mM dNTPs、及び0.1μM−10μMプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(50U/mL)と50ng−100ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(3.75M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリダイゼーション反応の後、各ウエルに100μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを判定した。測定は2種類のレーザを使用して行い、ビーズの種類は635nmレーザにより同定し、PE蛍光は532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)−(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
臨床データは、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、高LDLコレステロール血症の患者群とコントロール群との間で、対応のないスチューデントt検定により比較した。質的データは、カイ二乗検定によって比較した。対立遺伝子頻度は遺伝子カウント法によって概算し、ハーディ・ワインベルク平衡にあてはまるかどうかを判断するためにカイ二乗検定を使った。遺伝子型分布は、2つの群から構成される遺伝モデルと高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、高LDLコレステロール血症の患者群とコントロール群との間でカイ二乗検定(2x2)によって比較した。遺伝モデルは、優性モデルは「変異型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」対「野生型のホモ接合体」(BB+AB対AA)、劣性モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」(BB対AA+AB)である。
5,421名の研究対象、集団Aおよび集団Bに関する背景データを表8に示した。表には、左欄より順に、特徴(Characteristic)、被験者集団A(Subject panel A)、および被験者集団B(Subject panel B)を示している。また、特徴欄は、上より順に、者数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(男性/女性)(Sex(male/female))、肥満指数(Body mass index)、血中総コレステロール(Serum total cholesterol)、高コレステロール者率(Hypercholesterolemia)血中トリグリセリド(Serum triglycerides)、高トリグリセリド者率(Hypertriglyceridemia)、血中HDL−コレステロール(Serum HDL-cholesterol)、低HDLコレステロール者率(Low HDL-cholesterol)、血中LDL−コレステロール(Serum LDL-cholesterol)、及び高LDLコレステロール者率(High LDL-cholesterol)を示している。
表9−表12には、ステップワイズ変数増加法で各疾患の発生に有意(に関連した遺伝子多型群および他の背景因子(年齢、性別、BMI)に関する詳細を示した。これらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な高血圧発症リスクを予測することができる。表には、左欄より順に、因子(Variable)、p値(P value)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子(Conventional risk factors)と、今回の研究で見出された遺伝因子(Genetic risk factors)のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別とBMIが、遺伝因子としては、ABCA、ABCC8、AGT、APOA5、APOB、APOE、CD14、CETP、ENPP1、EPHX2、GJA4、LIPC、LTA、PDE4D、SERPINE1、VAMP8の各遺伝子多型が高コレステロール血症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が0.472で最大オッズ比が1.062、遺伝因子では最小オッズ比が0.168で最大オッズ比が97.935であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.079で最大オッズ比が104.007であり、1316倍の差が認められた。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別とBMIが、遺伝因子としては、ACAT2、APOA5、APOC3、APOE、CYP3A5、CYP7A1、ITGB2、LPL、MMP1、MTP、PCSK9、PDE4D、SERPINE1、THBDの各遺伝子多型が高トリグリセリド血症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が0.981で最大オッズ比が1.061、遺伝因子では最小オッズ比が0.395で最大オッズ比が4.023であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.387で最大オッズ比が4.268であり、11倍の差が認められた。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別とBMIが、遺伝因子としては、ABCB1、ADIPOQ、AGT、AGTR2、APOA5、APOB、APOE、CD14、CETP、LIPC、LPL、PSMA6、SERPINE1、TNF、UTS2の各遺伝子多型が高トリグリセリド血症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が0.978で最大オッズ比が4.089、遺伝因子では最小オッズ比が0.230で最大オッズ比が4.887であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.225で最大オッズ比が19.983であり、88倍の差が認められた。
多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別が、遺伝因子としては、ABCC8、ADIPOR1、AGT、AGTR2、AKAP10、APOB、APOE、CPB2、FABP2、LPL、P2RY12、THBS2、TNFの各遺伝子多型が高LDLコレステロール血症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が0.632で最大オッズ比が1.044、遺伝因子では最小オッズ比が0.235で最大オッズ比が108.862であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.149で最大オッズ比が113.652であり、762倍の差が認められた。
実際に本研究における高コレステロール血症の分布は、リスクが高い群は11.8%(コントロール群は4.9%)、リスクがやや高い群は31.2%(コントロール群は21.3%)、平均的リスクの群は44.2%(コントロール群は49.2%)、リスクがやや低い群は10.8%(コントロール群は19.3%)、リスクが低い群は1.1%(コントロール群は5.3%)であった。高トリグリセリド血症の分布は、リスクが高い群は11.9%(コントロール群は4.7%)、リスクがやや高い群は46.5%(コントロール群は20.6%)、平均的リスクの群は44.3%(コントロール群は52.2%)、リスクがやや低い群は10.0%(コントロール群は18.5%)、リスクが低い群は1.4%(コントロール群は5.0%)であった。低HDLコレステロール血症の分布は、リスクが高い群は20.1%(コントロール群は5.0%)、リスクがやや高い群は39.2%(コントロール群は20.0%)、平均的リスクの群は34.8%(コントロール群は50.0%)、リスクがやや低い群は5.5%(コントロール群は19.9%)、リスクが低い群は0.5%(コントロール群は5.0%)であった。高LDLコレステロール血症の分布は、リスクが高い群は4.3%(コントロール群は4.3%)、リスクがやや高い群は23.2%(コントロール群は20.7%)、平均的リスクの群は49.5%(コントロール群は50.5%)、リスクがやや低い群は18.2%(コントロール群は19.7%)、リスクが低い群は4.8%(コントロール群は4.9%)であった。
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、高コレステロール血症で47個、高トリグリセリド血症で38個、低HDLコレステロール血症で61個、高LDLコレステロール血症で29個の遺伝モデルが疾患との関連を示した(p<0.05)。詳細を表13−表16に示した。表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、遺伝モデル(Dominant/Recessive)、および危険率(p)を示している。
対象の選択基準は組み入れ規準(inclusion criteria)を0.25とし、除外規準(external validity)を0.1とした。結果を表21−表24に示す。表中には、左欄より順に、因子(Variable)、多型(Polymorphism)、遺伝モデル(Dominant/Recessive)、p値(p value)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95% CI)をそれぞれ示している。
本発明者は、5,421名の日本人からなる2つの独立した集団において、195個の候補遺伝子中の258個の多型と、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、および高LDLコレステロール血症との関連を調べた。今回の大規模研究によって、(1)ABCA1の1051G→A多型、ABCC8の3857G→A多型、AGTの−6G→A多型、APOA5の−1131T→C多型、553G→T多型、APOBのT→C多型、APOEの4070C→T多型、3932T→C多型、CD14の−260C→T多型、CETPの−629C→A多型、ENPP1の97A→C多型、EPHX2のG→A多型、GJA4の1019C→T多型、LIPCの−250G→A多型、LTAの804C→A多型、PDE4DのTAAA→−多型、SERPINE1の668 4G→5G多型、VAMP8のA→G多型が高コレステロール血症と有意に関連すること、(2)ACAT2の41A→G多型、APOA5の−1131T→C多型、553G→T多型、APOC3の1100C→T多型、APOEの3932T→C多型、CYP3A5の6986A→G多型、CYP7A1の−204A→C多型、ITGB2の1323C→T多型、LPLの1595C→G多型、MMP1の−519A→G多型、MTPの−493G→T多型、PCSK9のA→G多型、PDE4DのC→T多型、SERPINE1の6684G→5G多型、THBDの2136C→T多型が高トリグリセリド血症と有意に関連すること、(3)ABCB1のT→G多型、ADIPOQの62G→T多型、AGTの−6G→A多型、AGTR2の3123C→A多型、APOA5の−3A→G多型、−1131T→C多型、APOBのC→T多型、APOEの−219G→T多型、3932T→C多型、CD14の−260C→T多型、CETPの−629C→A多型、LIPCの−250G→A多型、LPLの1595C→G多型、PSMA6の−8C→G多型、SERPINE1の668 4G→5G多型、TNFの−850C→T多型、UTS2の347G→A多型が、低HDLコレステロール血症と有意に関連すること、および(4)ABCC8の3857G→A多型、ADIPOR1のC→G多型、AGTの−6G→A多型、AGTR2の3123C→A多型、AKAP10の2073A→G多型、APOBのT→C多型、APOEの4070C→T多型、3932T→C多型、CPB2のT→C多型、FABP2の2445G→A多型、LPLの1595C→G多型、P2RY12の744T→C多型、THBS2の3949T→G多型、TNFの−238G→A多型が高LDLコレステロール血症と有意に関連することがわかった。
染色体11q23上のアポリポプロテイン遺伝子クラスター(APOA5−APOA1−APOC3−APOA4)は、血中脂質濃度と定量的に相関する遺伝子領域である。APOA5は、良く知られているAPOA1−APOC3−APOA4遺伝子クラスター(非特許文献9)の約27kb上流に位置しており、血中トリグリセリド濃度と強く相関することが知られている(非特許文献10)。ヒトAPOA5は、4個のエクソンによって構成されており、369個のアミノ酸からなるタンパク質である(非特許文献10)。マウスを用いた実験によれば、APOA5の発現量は、血中トリグリセリド濃度に大きな影響を与えることが知られている。ヒトAPOA5を発現するトランスジェニックマウスの血中トリグリセリド濃度は、コントロール動物の血中トリグリセリド濃度の1/3であるのに対し、APOA5をノックアウトしたマウスでは、血中トリグリセリド濃度はコントロールの4倍であった(非特許文献10)。
リポプロテインリパーゼ(LPL)は、血中のトリグリセリドに富むリポタンパク質の脂質分解を行う律速酵素である。このタンパク質は、脂肪組織の実質細胞、骨格筋、および心筋で合成され、血管内皮のヘパラン硫酸結合部位に運ばれる(非特許文献24)。LPLの加水分解機能は、トリグリセリドに富むカイロミクロンやVLDLをレムナント粒子にするための処理、およびリン脂質とアポリポプロテインをHDLに運搬するために重要である。また、LPLは、血中のリポプロテインを受容体を介して除去するために重要な働きを果たしている(非特許文献25)。LPLは多様型であり、アミノ酸の置換によって、トリグリセリドおよびHDLコレステロール濃度に影響を与える。これらの濃度は、アテローム性動脈硬化の発生について影響を与えている(非特許文献26)。
アポリポプロテインEは、脂質運搬と脂質代謝に重要な役割を果たしている。APOEの3つの一般的なアレル(ε2、ε3、ε4)は、三つの主要なアイソフォーム(E2、E3、E4)をコードしている。これらのアイソフォームは、112位と158位のアミノ酸が異なっている。ε4ではLDLコレステロール濃度が高く、ε2では低いというデータに基づき、APOEのアレル変異によって、総コレステロール濃度およびLDLコレステロール濃度の個体差が説明される(非特許文献28−30)。各種のアポリポプロテインEアイソフォームは、特異的なリポプロテイン受容体と異なった相互作用を示し、最終的に血中コレステロール濃度に影響を与える(非特許文献31)。
今回の研究においては、我々は、APOEの4070C→T(Arg158Cys)と3932T→C(Cys112Arg)が高LDLコレステロール血症に関連し、4070TアレルとE2アイソフォームをコードするハプロタイプが保護因子であること、および3932CアレルとE4アイソフォームをコードするハプロタイプがリスク因子であることを明らかとした。この結果は、従来の知見と矛盾しない(非特許文献8、28−30、33−35)。
<結論>
我々の研究によれば、日本人においては、APOA5、APOC3、APOA1、およびLPLは高トリグリセリド血症に関連し、APOA5とAPOEは低HDLコレステロール血症と高LDLコレステロール血症に、FABP2は高LDLコレステロール血症に関連していた。この結果に基づき、遺伝子多型を調べることにより、脂質代謝異常の危険性を知ることができる。
このように本実施形態によれば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、高LDLコレステロール血症を含む脂質代謝異常について、遺伝的リスクを判断するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、脂質代謝異常の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
Claims (5)
- ABCA1の1051G→A、ABCB1のT→G、ABCC6の3826G→A、ABCC8の3857G→A、ACAT2の41A→G、ADIPOQの62G→T、ADIPOR1のC→G、AGTの−6G→A、AGTR2の3123C→A、AKAP10の2073A→G、APOA5の−1131T→C、−3A→G、553G→T、APOBのC→T、T→C、APOC3の1100C→T、APOEの4070C→T、−219G→T、3932T→C、CD14の−260C→T、CETPの−629C→A、C→T、CPB2のT→C、CYP3A5の6986A→G、CYP7A1の−204A→C、ENPP1の97A→C、EPHX2のG→A、FABP2の2445G→A、GJA4の1019C→T、ITGB2の1323C→T、LIPCの−250G→A、LPLの1595C→G、LTAの804C→A、MMP1の−519A→G、MTPの−493G→T、P2RY12の744T→C、PCSK9のA→G、PDE4DのTAAA→−、C→T、PSMA6の−8C→G、SERPINE1の668 4G→5G、THBDの2136C→T、THBS2の3949T→G、TNFの−238G→A、−850C→T、UTS2の347G→A、VAMP8のA→Gの遺伝子多型と、性別、肥満指数(body mass index:BMI)とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする脂質代謝異常のリスク検出法。
- 脂質代謝異常が高コレステロール血症であり、ABCA1の1051G→A、ABCC8の3857G→A、AGTの−6G→A、APOA5の−1131T→C、APOBのT→C、APOEの4070C→T、3932T→C、CD14の−260C→T、CETPのC→T、ENPP1の97A→C、EPHX2のG→A、GJA4の1019C→T、LIPCの−250G→A、LTAの804C→A、PDE4DのTAAA→−、SERPINE1の668 4G→5G、VAMP8のA→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする脂質代謝異常のリスク検出法。
- 脂質代謝異常が高トリグリセリド血症であり、ACAT2の41A→G、APOA5の−1131T→C、553G→T、APOC3の1100C→T、APOEの3932T→C、CYP3A5の6986A→G、CYP7A1の−204A→C、ITGB2の1323C→T、LPLの1595C→G、MMP1の−519A→G、MTPの−493G→T、PCSK9のA→G、PDE4DのC→T、SERPINE1の6684G→5G、THBDの2136C→Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする脂質代謝異常のリスク検出法。
- 脂質代謝異常が低HDLコレステロール血症であり、ABCB1のT→G、ADIPOQの62G→T、AGTの−6G→A、AGTR2の3123C→A、APOA5の−3A→G、−1131T→C、553G→T、APOBのC→T、APOEの−219G→T、3932T→C、CD14の−260C→T、CETPの−629C→A、LIPCの−250G→A、LPLの1595C→G、PSMA6の−8C→G、SERPINE1の668 4G→5G、TNFの−850C→T、UTS2の347G→Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする脂質代謝異常のリスク検出法。
- 脂質代謝異常が高LDLコレステロール血症であり、ABCC8の3857G→A、ADIPOR1のC→G、AGTの−6G→A、AGTR2の3123C→A、AKAP10の2073A→G、APOBのT→C、APOEの4070C→T、3932T→C、CPB2のT→C、FABP2の2445G→A、LPLの1595C→G、P2RY12の744T→C、THBS2の3949T→G、TNFの−238G→Aのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする脂質代謝異常のリスク検出法。
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