JP2009248202A - 自動変速式動力工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 減速比の切り換えがスムーズに行われる自動変速式の動力工具を実現する。
【解決手段】 工具軸への負荷トルクが所定値未満の間、可動部材は第1位置に維持され、太陽ギヤと内歯ギヤを一体回転させる。工具軸への負荷トルクが所定値以上となると、可動部材は第2位置に移動し、内歯ギヤとギヤケースを相対回転不能にする。ギヤケースには、係止部材が設けられている。係止部材は、可動部材に対して進退可能に設けられており、可動部材が第2位置に移動したときに可動部材に係合する。それにより、工具軸への負荷トルクが変動した場合でも、可動部材が第2位置に維持され、減速比が繰り返し切り換えられるようなことが防止される。
【選択図】図2

Description

本発明は、動力工具に関する。特に、負荷トルクに応じて減速比を切り換える自動変速式の動力工具に関する。
特許文献1に、自動変速式の動力工具が開示されている。この動力工具は、動力源と、動力源によって駆動される工具軸と、動力源と工具軸との間に介挿されている減速機を備えている。減速機には、太陽ギヤ、遊星ギヤ、内歯ギヤ、及びキャリアからなる遊星歯車機構が設けられている。
この減速機では、遊星歯車機構の内歯ギヤが、軸方向に沿って第1位置から第2位置までの間を移動可能に設けられている。また、内歯ギヤが第1位置にあるときには内歯ギヤと太陽ギヤが一体回転するように連結され、内歯ギヤが第2位置にあるときには内歯ギヤがハウジングに回転不能に固定されるように構成されている。また、工具軸への負荷トルクが所定値未満の間は内歯ギヤが第1位置に維持され、工具軸への負荷トルクが所定値以上となると内歯ギヤが第2位置まで移動するように構成されている。そして、内歯ギヤが第1位置にあるときには内歯ギヤを第1位置に向けて付勢し、内歯ギヤが第2位置にあるときには内歯ギヤを第2位置に向けて付勢する反転ばねが設けられている。
これらの構成によると、工具軸への負荷トルクが所定値未満の間は、遊星歯車機構が機能しない状態となることから、高速(低トルク)運転が行なわれる。一方、工具軸への負荷トルクが所定値以上となった後は、遊星歯車機構が機能する状態となることから、低速(高トルク)運転が行なわれる。即ち、工具軸への負荷トルクが所定値以上となった時点で、減速機による減速比が切り換えられる。
特開平6−8151号公報
特許文献1の動力工具では、内歯ギヤが第2位置へ一旦移動すると、内歯ギヤは反転ばねによって第2位置に維持される。そのことから、負荷トルクが所定値を挟んで変動したときでも、減速比の切り換えが繰り返されるといった問題が防止される。
しかしながら、ばねの付勢力によって内歯ギヤを第2位置に保持する構造では、内歯ギヤを第2位置に確実に維持するために、大きな付勢力を発揮するばねが必要となる。この場合、比較的に大型なばねが必要となるとともに、その大型なばねとその大きな付勢力を支えるための構造も大きなものとなってしまう。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、大きな付勢力を発揮するばねを必要とすることなく、減速比の切り換えがスムーズに行われる自動変速機構を実現する。
動力工具は、動力源と、動力源によって駆動される工具軸と、動力源と工具軸との間に介挿されている遊星歯車機構と、遊星歯車機構を収容しているギヤケースを備えている。遊星歯車機構は、太陽ギヤ、遊星ギヤ、内歯ギヤ、及びキャリアを有している。
この構造により、動力源からの動力が遊星歯車機構を介して工具軸へ伝達されるようになっている。
動力工具はさらに、可動部材とトルク連動機構を備えている。可動部材は、少なくとも第1位置と第2位置の間を移動可能であり、第1位置あるときには内歯ギヤと太陽ギヤを一体回転するように連結し、第2位置にあるときには内歯ギヤとギヤケースを相対回転不能に連結する。トルク連動機構は、工具軸への負荷トルクが所定値未満の間は可動部材を第1位置に維持し、工具軸への負荷トルクが前記所定値以上となったときに可動部材を第2位置まで移動させる。
この構造により、工具軸への負荷トルクが所定値未満の間、太陽ギヤと内歯ギヤは一体となって回転することから、遊星歯車機構が減速機として機能を発揮しない。即ち、工具軸は高速(低トルク)で回転する。一方、工具軸への負荷トルクが所定値以上となると、内歯ギヤとギヤケースが相対回転不能に連結され、遊星歯車機構が減速機として機能を発揮する。それにより、工具軸は低速(高トルク)で回転する。このように、工具軸の回転速度は、工具軸への負荷トルクの上昇により、高速から低速へと自動的に切り換えられる。
動力工具はさらに、係止部材を備えている。係止部材は、ギヤケースによって支持されている。係止部材は、可動部材が第2位置に移動したときに可動部材に係合する。
この構造により、可動部材が第2位置まで一旦移動した後は、工具軸への負荷トルクが低下した場合でも、可動部材が第1位置に戻ることが禁止される。負荷トルクが所定値を挟んで変動したときでも、減速比の切り換えが繰り返されるといったことがない。係止部材は、可動部材の可動方向に垂直な力よりも可動方向と同じ方向の力で係合部に係合していることが好ましい。
以上のように、この動力工具の構造によると、大きな付勢力を発揮するばねを必要とすることなく、減速比の切り換えをスムーズに行うことができる。
前記した可動部材は、遊星歯車機構の軸方向に沿って少なくとも第1位置と第2位置の間を移動可能であるとともに、係止部材が係合可能な係合部が形成されていることが好ましい。この場合、可動部材に形成された係合部は、遊星歯車機構の軸に対して垂直な面上に位置することが好ましい。
この構造によると、上記した動力工具の構成を比較的に簡素に実現することができる。
前記した可動部材は、遊星歯車機構と同軸に配置されたリング状の部材であることが好ましい。
可動部材がリング状の部材であって、遊星歯車機構と同軸に配置されていると、可動部材は遊星歯車機構の軸方向に沿ってスムーズに動作することができる。
前記可動部材には、前記内歯ギヤが一体に形成されていることが好ましい。
この構造によると、部品点数を減少させることができる。
可動部材と内歯ギヤが一体に形成されている場合、可動部材に形成された係合部は、可動体の周方向に沿って或る長さで伸びていることが好ましい。
この構造によると、係止部材が可動部材の係合部に係合することによって、可動部材が第2位置に維持されるだけでなく、内歯ギヤがギヤケースに対して相対回転不能に連結される。内歯ギヤとギヤケースを相対回転不能に連結するための構造を、別途設ける必要がない。
上記した構造の係合部では、その周方向における両端部のうち、太陽ギヤの回転方向に関して前方に位置する前方端部において、第2位置側の側面が第1位置に向かって変位していることが好ましい。
内歯ギヤと太陽ギヤとの連結が解除された直後、内歯ギヤには遊星ギヤからの反力が加わることから、内歯ギヤは可動部材と共に太陽ギヤとは反対方向に回転し始める。ただし、可動部材の係合部は周方向に有限の長さで形成されており、その係合部には係止部材が係合しているので、係止部材が係合部の前方端に当接した時点で内歯ギヤと可動部材の回転は停止する。このとき、係合部の第2位置側の側面が第1位置に向かって変位していると、可動部材は第1位置に対してさらに離反するように移動する。それにより、内歯ギヤと太陽ギヤの再連結が防止される。
上記した構成において、係止部材は、球形状を有していることが好ましい。この場合、前記可動部材の係合部の前方端部では、第2位置側の側面が係止部材よりも大径で円弧状に湾曲していることが好ましい。
係止部材が球形状を有していると、係止部材は可動部材の係合部へスムーズに係合することができる。さらに、係合部の第2位置側の側面が係止部材よりも大径で円弧状に湾曲していると、可動部材を第1位置に対してさらに離反させる動作もスムーズに行われる。これらの構造により、減速比の切り換えをよりスムーズに行うことが可能となる。
さらに、上記した有限の長さを有する係合部では、その周方向における両端部のうち、太陽ギヤの回転方向に関して後方に位置する後方端部においても、第2位置側の側面が第1位置側に変位していることが好ましい。
係止部材の形状については、上記した球形状に限られず、様々に定めることができる。ただし、係止部材の形状によっては、可動部材が第2位置に到達する以前から、係止部材が可動部材の係合部に係合し始めることがある。この場合、可動部材は内歯ギヤ及び太陽ギヤとともに一体回転しているので、係止部材が係合部の後方端に当接することがある。このとき、先に説明した前方端部と同様に、係合部の後方端部においても第2位置側の側面が第1位置に向かって変位していると、内歯ギヤと太陽ギヤの連結がスムーズに解除され、減速比の切り換えがスムーズに行われるようになる。
動力工具は、係止部材が可動部材に係合したときに、係止部材と可動部材との係合を保持する保持部材が付加されていることが好ましい。
この構成によると、可動部材と係止部材との係合が、予期せず解除されることを防止することができる。即ち、減速比の無用な切り換えが防止される。
保持部材は、ギヤケースによって係止部材の移動方向と直交する方向に移動可能に支持されていることが好ましい。また、保持部材は、係止部材が可動部材に係合したときに係止部材に当接する直交当接面を有することが好ましい。そして、その直交当接面は、係止部材の移動方向に垂直であることが好ましい。
この構成によると、保持部材が係止部材から受ける力の向きが、保持部材の移動可能な方向と直交するので、保持部材は係止部材の位置を確実に保持し続けることができる。
保持部材は、係止部材が可動部材と係合しない位置にあるときに係止部材に当接する傾斜当接面をさらに有することが好ましい。この場合、その傾斜当接面は、係止部材を可動部材に向けて付勢する向きに傾斜していることが好ましい。
この構成によると、保持部材が係止部材に向けて付勢されれば、係止部材についても可動部材に向けて同時に付勢されることになり、それらの付勢に必要とされる構造を簡素なものとすることができる。
本発明により、大きな付勢力を発揮するばねを必要とすることなく、減速比の切り換えがスムーズに行われる自動変速機構を実現することができる。それにより、構造が比較的に簡素な自動変速式の動力工具を具現化することが可能となる。
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1) 減速機は、複数の遊星歯車機構を備える。複数の遊星歯車機構は、直列に接続されている。即ち、モータ側に設けられた遊星歯車機構のキャリアと、工具軸に設けられた遊星歯車機構の太陽ギヤが、一体に固定されている。
(特徴2) 係止部材は、ボールベアリング等に使用されるスチールボールである。スチールボールは、ギヤケースの周壁に形成された貫通孔内に収容されている。
(特徴3) 保持部材は、リング形状の部材であり、ギヤケースの外周面に摺動可能に取り付けられている。
(特徴4) 可動部材は、リング状の部材である。可動部材の内周面には、遊星ギヤに噛み合っている内歯ギヤが形成されている。可動部材の外周面には、係止部材が係合する溝状の係合部が形成されている。その溝状の係合部は、可動部材の周方向に沿って或る(有限の)長さで伸びている。
本発明を実施した電動工具について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例の電動工具10の構成を示す一部断面図である。電動工具10は、電動モータを動力源とするドリルドライバであり、穴あけ作業やねじ締め作業に用いられる。
図1に示すように、電動工具10は、概して、略円柱形状の本体部14と、本体部14から側方に伸びるグリップ部12を備えている。グリップ部12の先端部には、電池パック26が着脱可能に取付けられている。電動工具10の利用者は、グリップ部12を把持して電動工具10を使用する。
本体部14には、モータ16と、モータ16によって回転駆動される工具軸20と、モータ16と工具軸20との間に介挿されている減速機18が収容されている。減速機18は、モータ16からの回転動力を入力し、その回転速度を減速して(その回転トルクを増幅して)、工具軸20へと出力する。工具軸20には工具チャック22が固定されている。工具チャック22には、ドライバビットやドリルビットといった各種の工具ビットが着脱可能となっている。
グリップ部12には、トリガスイッチ24が設けられている。トリガスイッチ24は、モータ16を起動/停止させるための操作スイッチである。利用者がトリガスイッチ24を引くとモータ16が回転を開始し、利用者がトリガスイッチ24を戻すとモータ16が停止する。即ち、利用者がトリガスイッチ24を引くと工具チャック22が回転し、利用者がトリガスイッチ24を戻すと工具チャック22が停止する。
減速機18は、自動変速機能を有している。即ち、減速機18は、工具軸20への負荷トルクが所定値以上となったときに減速比を増大させ、運転モードを高速運転モード(低トルク運転)から低速運転モード(高トルク運転モード)へと切り替わる。
図2、図3、図4を参照して、減速機18の構成について詳しく説明する。図2は、高速運転モード時の減速機18を示している。図3は、低速運転モード時の減速機18を示している。図4は、減速機18を分解して示す斜視図である。
減速機18は、本体部14に固定された円筒状のギヤケース60と、直列に接続された3組の遊星歯車機構30、40、50を備えている。以下では、それら3組の遊星歯車機構30、40、50を、モータ16側に位置するものから順に、第1遊星歯車機構30、第2遊星歯車機構40、第3遊星歯車機構50と称する。
第1遊星歯車機構30は、第1太陽ギヤ32と3つの第1遊星ギヤ34と第1内歯ギヤ36と第1キャリア38を備えている、第1太陽ギヤ32は、モータ16のモータ軸16aに固定されている。3つの第1遊星ギヤ34は、第1太陽ギヤ32に噛み合っている。第1内歯ギヤ36は、第1太陽ギヤ32と同軸上に配置されており、第1遊星ギヤ34と噛み合っている。第1内歯ギヤ36は、ギヤケース60に回転不能に固定されている。第1キャリア38は、3つの第1遊星ギヤ34を回転可能に支持しているとともに、ギヤケース60によって第1太陽ギヤ32と同軸で回転可能に支持されている。第1キャリア38は、第2遊星歯車機構40に接続されている。第1遊星歯車機構30では、モータ16からの回転動力が第1太陽ギヤ32に入力され、入力された回転動力が第1キャリア38から第2遊星歯車機構40へ出力される。
第2遊星歯車機構40は、第2太陽ギヤ42と3つの第2遊星ギヤ44と第2内歯ギヤ46と第2キャリア48を備えている、第2太陽ギヤ42は、第1遊星歯車機構30の第1キャリア38に同軸で固定されている。3つの第2遊星ギヤ44は、第2太陽ギヤ42に噛み合っている。第2内歯ギヤ46は、第2太陽ギヤ42と同軸上に配置されており、第2遊星ギヤ44と噛み合っている。第2キャリア48は、3つの第2遊星ギヤ44を回転可能に支持しているとともに、ギヤケース60によって第2太陽ギヤ42と同軸で回転可能に支持されている。第2キャリア48は、第3遊星歯車機構50に接続されている。第2遊星歯車機構40では、第1遊星歯車機構30からの回転動力が第2太陽ギヤ42に入力され、入力された回転動力が第2キャリア48から第3遊星歯車機構50へ出力される。
第2遊星歯車機構40の第2内歯ギヤ46は、ギヤケース60内で軸方向に沿って移動可能に支持されている。それにより、第2内歯ギヤ46は、第1キャリア38に接近した第1位置(図2参照)と、第1キャリア38から離反した第2位置(図3参照)との間を移動可能となっている。また、第2内歯ギヤ46は、コイルばね72によって第1キャリア38に向けて付勢されている。即ち、第2内歯ギヤ46は、第1位置に向けて付勢されている。このように、第2内歯ギヤ46は、第1位置と第2位置を移動可能なリング状の部材であり、その内周面に第1キャリア38と噛合するギヤ部が形成されたものである。
詳しくは後述するが、電動工具10では、第2内歯ギヤ46が第1位置と第2位置の間を移動することによって、運転モードが高速運転と低速運転との間で換えられるようになっている。
第3遊星歯車機構50は、第3太陽ギヤ52と6つの第3遊星ギヤ54と第3内歯ギヤ56と第3キャリア58を備えている。第3太陽ギヤ52は、第2遊星歯車機構40の第2キャリア48に同軸で固定されている。6つの第3遊星ギヤ54は、第3太陽ギヤ52に噛み合っている。第3内歯ギヤ56は、第3太陽ギヤ52と同軸上に配置されており、第3遊星ギヤ54と噛み合っている。第3内歯ギヤ56は、ギヤケース60に回転不能に固定されている。第3キャリア58は、6つの第3遊星ギヤ54を回転可能に支持しているとともに、ギヤケース60によって第3太陽ギヤ52と同軸で回転可能に支持されている。第3キャリア58は、工具軸20に接続されている。第3遊星歯車機構50では、第2遊星歯車機構40からの回転動力が第3太陽ギヤ52に入力され、入力された回転動力が第3キャリア58から工具軸20へ出力される。
次に、第1キャリア38、第2太陽ギヤ42、及び第2内歯ギヤ46に係る構造について説明する。
図5に示すように、第1キャリア38の第2内歯ギヤ46側の端面38aには、第2内歯ギヤ46に向けて突出する3箇所のクラッチ突起39が形成されている。また、図5、図6に示すように、第2内歯ギヤ46の第1キャリア38側の端面46bにも、第1キャリア38に向けて突出する3箇所のクラッチ突起47が形成されている。
第2内歯ギヤ46が第1キャリア38に近接する第1位置にある場合(図2参照)、第1キャリア38のクラッチ突起39と第2内歯ギヤ46のクラッチ突起47は互いに係合し、第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)と第2内歯ギヤ46が回転方向Rに関して互い連結される。第1キャリア38と第2内歯ギヤ46(及び第2太陽ギヤ42)が連結されると、第1キャリア38、第2太陽ギヤ42、第2遊星ギヤ44、第2内歯ギヤ46、第2キャリア48、及び第3太陽ギヤ52が一体回転する。この場合、第2遊星歯車機構40が減速機機構として機能しないことから、減速機18の減速比(減速する度合)は小さくなる。その結果、電動工具10は、高速運転(低トルク運転)を行うことになる。
一方、第2内歯ギヤ46が第2位置に移動すると(図3参照)、第1キャリア38のクラッチ突起39と第2内歯ギヤ46のクラッチ突起47との係合が解除され、第1キャリア38と第2内歯ギヤ46との連結も解除される。この場合、第2遊星歯車機構40が減速機構として機能することから、減速機18の減速比(減速する度合)は大きくなる。その結果、電動工具10は、低速運転(高トルク運転)を行うことになる。
図5、図6に示すように、第1キャリア38のクラッチ突起39と第2内歯ギヤ46のクラッチ突起47の互いに当接する当接面39a、47aは、回転方向Rに沿って傾斜する傾斜面となっている。それにより、互いに係合したクラッチ突起39、47の間では、工具軸20への負荷トルクに応じて、軸方向に反発する反発力が生じる。工具軸20への負荷トルクが小さければ、クラッチ突起39、47の間で生じる反発力も小さいことから、コイルばね72によって第2内歯ギヤ46は第1位置に維持される。即ち、高速運転が維持される。一方、工具軸20への負荷トルクが増大して所定値以上となると、クラッチ突起39、47の間でコイルばね72による付勢力を上回る反発力が生じ、第2内歯ギヤ46が第2位置へ移動する。即ち、高速運転から低速運転への切り換えが行なわれる。
このように、電動工具10は、工具軸20への負荷トルクが所定値未満の間は高速運転を維持し、工具軸20への負荷トルクが所定値以上となると低速運転を自動的に開始する。
図2、図3、図4に示すように、減速機18のギヤケース60には、スチールボール64と、保持リング66と、コイルばね68が設けられている。また、図5、図6に示すように、第2内歯ギヤ46の外周面46cには、周方向に沿って或る長さで伸びる外溝80が形成されている。即ち、外溝80は、第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)の回転方向Rに関して前方に位置する前方端82から、回転方向Rの後方に位置する後方端84まで、周方向に沿って有限の長さで伸びている。第2内歯ギヤ46の外周面46cには、3本の外溝80が設けられている。ここで、外溝80を設ける本数は3本に限定されず、例えば1、2本でもよいし4本以上であってもよい。
スチールボール64は、ギヤケース60に形成された貫通孔62に収容されており、第2内歯ギヤ46に対して進退可能に支持されている。スチールボール64とそれを収容する貫通孔62は、ギヤケース60の周方向に沿って3箇所に設けられている。ギヤケース60に形成された貫通孔62は、ギヤケース60の外周面に対して垂直に形成されている。それにより、スチールボール64の移動方向は、ギヤケース60の径方向のみに制限されている。ギヤケース60には、スチールボール64とそれを収容する貫通孔62が、周方向に沿って等間隔で三箇所に設けられている。
保持リング66は、概してリング形状を有しており、ギヤケース60の外周面で保持されている。保持リング66は、ギヤケース60の軸方向に沿って摺動可能となっている。また、保持リング66は、コイルばね68によってスチールボール64に向けて付勢されている。保持リング66は、スチールボール64にギヤケース60の径方向外側から当接している。保持リング66の内周面には、スチールボール64が当接する傾斜当接面67aと直交当接面67bが形成されている。傾斜当接面67aは、スチールボール64の移動方向に対して斜めに傾いた面であり、直交当接面67bは、スチールボール64の移動方向に対して直交する面となっている。
図2に示すように、第2内歯ギヤ46が第1位置にある場合、スチールボール64は第2内歯ギヤ46の外周面に当接しており、第2内歯ギヤ46の外溝80の外に位置している。この場合、第2内歯ギヤ46は、ギヤケース60に対して回転可能であるとともに、ギヤケース60に対して軸方向にも移動可能となっている。スチールボール64は、保持リング66の傾斜当接面67aに当接しており、コイルばね68からの力によって第2内歯ギヤ46に向けて付勢されている。
一方、図3に示すように、工具軸20への負荷トルクが所定値以上となり、第2内歯ギヤ46が第2位置に移動すると、スチールボール64が第2内歯ギヤ46の外溝80に係合する。スチールボール64が第2内歯ギヤ46の外溝80に係合すると、第2内歯ギヤ46は第1位置へ戻ることができなくなる。それにより、工具軸20への負荷トルクに所定値に一旦到達した後は、工具軸20への負荷トルクが低下した場合でも、第1キャリア38と第2内歯ギヤ46との再連結が防止される。
また、スチールボール64が第2内歯ギヤ46の外溝80に係合すると、保持リング66がコイルばね68の付勢力によって移動し、スチールボール64は保持リング66の直交当接面67bに当接する。保持リング66の直交当接面67bは、スチールボール64の移動方向に対して直交している。また、保持リング66の移動方向についても、スチールボール64の移動方向に対して直交している。そのことから、保持リング66は、スチールボール64から受ける力によって移動することがなく、スチールボール64を第2内歯ギヤ46の外溝80内に確実に保持することができる。
図7に示すように、第2内歯ギヤ46の外溝80は、スチールボール64に沿って湾曲する断面形状を有している。それにより、第2内歯ギヤ46が第1位置から第2位置へ移動したときに、スチールボール64は第2内歯ギヤ46の外溝80にスムーズに係合する。また、外溝80に係合しているスチールボール64は、第2内歯ギヤ46を第1位置に向けて付勢するコイルばね72の付勢力Fよって、外溝80から離脱する方向Gに付勢される。ただし、スチールボール64には、保持リング66の直交当接面67bが当接しているので、スチールボール64が外溝80から意図せず離脱することはない。
第2内歯ギヤ46と第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)との連結が解除された直後、第2内歯ギヤ46は、第2遊星ギヤ44からの反力によって第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)と反対方向に回転し始める。第1キャリア38が回転すると、第2内歯ギヤ46の外溝80に係合したスチールボール64は、外溝80の前方端82に当接する。それにより、第2内歯ギヤ46は、回転方向に関してギヤケース60に固定される。
図8を参照し、外溝80の前方端82の近傍における構造について説明する。図8に示すように、外溝80の前方端82の近傍では、外溝80の第2位置側(第1キャリア38の反対側)の側面81が、第1位置に向かって(第1キャリア38に向かって)変位している。側面81の変位部分81aは、円弧状に湾曲しており、その曲率半径はスチールボール64の半径よりも大きくなっている。
上記の構造により、外溝80の前方端82がスチールボール64に当接するときに、第2内歯ギヤ46は第1位置に対してさらに離間するように移動する。それにより、第2内歯ギヤ46と第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)の接触が防止され、高速運転から低速運転への運転モードの切り換えがスムーズに行われる。この第2内歯ギヤ46の移動は、第2内歯ギヤ46が第2遊星ギヤ44から受ける大きな反力によって確実に行われる。
図8に示すように、外溝80の後方端84の近傍においても、前方端82の近傍と同様に、第2位置側の側面81が、第1位置に向かって変位している。側面81の変位部分81bは、円弧状に湾曲しており、その曲率半径はスチールボール64の半径よりも大きくなっている。
本実施例では、スチールボール64が球形状であることから、第2内歯ギヤ46が第2位置に到達する以前から、スチールボール64は第2内歯ギヤ46の外溝80内へ入り始める。この時点では第2内歯ギヤ46が第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)とともに一体回転しているので、スチールボール64に外溝80の後方端84が当接することがある。そのことから、外溝80の後方端84の近傍においても、第2位置側の側面81を第1位置に向かって変位させておくとよい。
ここで、外溝80の前方端82や後方端84の近傍に設ける側面81の変位部分81bは、上記のように円弧状に湾曲させることなく、自由曲線や直線に沿って変位するように形成することもできる。
次いで、低速運転モードから高速運転モードへの復帰に係る構造について説明する。図2、図3、図4に示すように、減速機18のギヤケース60には、解除リング70が設けられている。
解除リング70は、概してリング形状を有しており、ギヤケース60の外周面で保持されている。解除リング70は、ギヤケース60の軸方向に沿って摺動可能となっている。解除リング70は、図示しないリンクによってトリガスイッチ24に連結されている。
図3に示すように、低速運転モードでは、工具軸20側に位置する保持リング66が解除リング70に当接している。このとき、トリガスイッチ24はオン操作されている。作業終了後、利用者はトリガスイッチ24をオフ操作する。図9に示すように、トリガスイッチ24のオフ操作に連動して、解除リング70は保持リング66と共にモータ16側へ移動する。スチールボール64は、第2内歯ギヤ46の外溝80から離脱する方向Gに付勢されているので(図7参照)、保持リング66の移動に伴って第2内歯ギヤ46の外溝80から離脱する。スチールボール64が第2内歯ギヤ46の外溝80から離脱すると、第2内歯ギヤ46はコイルばね72の付勢力によって第1位置へ移動する。その結果、第2内歯ギヤ46と第1キャリア38(及び第2太陽ギヤ42)は再連結され、減速機18は高速運転モードに復帰する。
以上のように、本実施例の電動工具では、工具軸への負荷トルクの上昇に伴って、その運転モードが高速運転から低速運転へとスムーズに切り換えられる。そして、運転モードが高速運転から低速運転へ切り換えられた後は、工具軸20への負荷トルクが低下した場合でも、運転モードが高速運転へ再度切り換えられることはない。さらに、ねじ締め等の作業終了後、トリガスイッチ24をオフ操作することによって、減速機18の状態が高速運転を行う状態へと自動的に復帰させられる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記した電動工具10において、その動力源を空圧モータや小型エンジンに変更することも可能であり、同様の機能を実現する空圧式やエンジン式の動力工具を具現化することもできる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
電動ドリルを側方から見た図(部分断面図)。 減速機の構成を示す断面図(高速運転モード)。 減速機の構成を示す断面図(低速運転モード)。 減速機を分解して示す斜視図。 第1キャリア、第2太陽ギヤ、及び第2内歯ギヤを示す斜視図。 第2内歯ギヤを示す斜視図。 第2内歯ギヤの外溝の断面形状を説明する図。 第2内歯ギヤの外溝の両端の開口形状を説明する図。 解除リングによる高速運転モードへの復帰動作を説明する図。
符号の説明
10:電動工具
12:グリップ部
14:本体部
16:モータ
16a:モータ軸
18:減速機
20:工具軸
22:工具チャック
24:トリガスイッチ
26:電池パック
30:第1遊星歯車機構
38:第1キャリア
39:クラッチ突起
40:第2遊星歯車機構
42:第2太陽ギヤ
44:第2遊星ギヤ
46:第2内歯ギヤ
47:クラッチ突起
48:第2キャリア
50:第3遊星歯車機構
60:ギヤケース
64:スチールボール
66:保持リング
70:解除リング
80:外溝
81:外溝の第2位置側の側面
81a、81b:変位部分
82:外溝の前方端
84:外溝の後方端

Claims (11)

  1. 動力源と、
    前記動力源によって駆動される工具軸と、
    前記動力源と前記工具軸との間に介挿されており、太陽ギヤ、遊星ギヤ、内歯ギヤ、及びキャリアを有する遊星歯車機構と、
    前記遊星歯車機構を収容しているギヤケースと、
    少なくとも第1位置と第2位置の間を移動可能であり、前記第1位置にあるときには前記内歯ギヤと前記太陽ギヤを一体回転させ、前記第2位置にあるときには前記内歯ギヤと前記ギヤケースを相対回転不能にする可動部材と、
    前記工具軸への負荷トルクが所定値未満の間は前記可動部材を前記第1位置に維持するとともに、前記工具軸への負荷トルクが前記所定値以上となったときに前記可動部材を前記第2位置まで移動させるトルク連動機構と、
    前記ギヤケースによって支持されており、前記可動部材が前記第2位置に移動したときに前記可動部材に係合する係止部材と、
    を備える動力工具。
  2. 前記可動部材は、前記遊星歯車機構の軸方向に沿って少なくとも前記第1位置と前記第2位置の間を移動可能であるとともに、前記係止部材が係合可能な係合部が形成されており、
    前記係合部は、前記遊星歯車機構の軸に対して垂直な面上に形成することを特徴とする請求項1に記載の動力工具。
  3. 前記可動部材は、前記遊星歯車機構と同軸に配置されたリング状の部材であることを特徴とする請求項2に記載の動力工具。
  4. 前記可動部材には、前記内歯ギヤが一体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の動力工具。
  5. 前記可動部材に形成された係合部は、前記可動体の周方向に沿って或る長さで伸びていることを特徴とする請求項4に記載の動力工具。
  6. 前記可動部材に形成された係合部の周方向における両端部のうち、前記太陽ギヤの回転方向に関して前方に位置する前方端部では、前記第2位置側の側面が前記第1位置に向かって変位していることを特徴とする請求項5に記載の動力工具。
  7. 前記係止部材は、球形状を有しており、
    前記可動部材の係合部の前方端部では、前記第2位置側の側面が前記係止部材よりも大径で円弧状に湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の動力工具。
  8. 前記可動部材に形成された係合部の周方向における両端のうち、前記太陽ギヤの回転方向に関して後方に位置する後方端部では、前記第2位置側の側面が前記第1位置側に変位していることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の動力工具。
  9. 前記係止部材が前記可動部材に係合したときに、前記係止部材と前記可動部材との係合を保持する保持部材が付加されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の動力工具。
  10. 前記保持部材は、前記ギヤケースによって前記係止部材の移動方向と直交する方向に移動可能に支持されており、前記係止部材が前記可動部材に係合したときに前記係止部材に当接する直交当接面を有しており、
    前記保持部材の直交当接面は、前記係止部材の移動方向に垂直であることを特徴とする請求項9に記載の動力工具。
  11. 前記保持部材は、前記係止部材が前記可動部材と係合しない位置にあるときに前記係止部材に当接する傾斜当接面をさらに有し、
    前記保持部材の傾斜当接面は、前記係止部材を前記可動部材に向けて付勢する向きに傾斜していることを特徴とする請求項10に記載の動力工具。
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