JP2009255104A - アルミニウム合金成形品の製造方法およびその金型 - Google Patents

アルミニウム合金成形品の製造方法およびその金型 Download PDF

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Abstract

【課題】 金型の内部に成形された後,離型する前の鋳物の一部に,処理温度及び処理時間を正確に制御して熱処理を施すことができるアルミニウム合金の成形品の製造方法およびその金型を提供すること。
【解決手段】 金型10の内部に,入子101及び入子102を収容する。ここで,入子101及び入子102は,上型12と,下型11とともに鋳物の形状を形成するような形状をしているものである。また,入子101と,入子102とはソルト流路111を形成している。まず,金型10に溶湯を鋳込む。次に,ソルト流路111にソルトを流す。このソルトの温度は,溶湯の合金の溶体化処理温度と同じかわずかに高い温度とする。これにより,局所的熱処理対象箇所301の温度を溶体化処理温度に保持する。また,ソルトを流す時間を調節することにより,所望の溶体化処理時間を設定することができる。この熱処理の後,鋳物を金型から離型する。
【選択図】図9

Description

本発明は,アルミニウム合金の成形品を製造する方法およびその金型に関する。さらに詳細には,金型においてアルミニウム合金を鋳造しつつ,部分的に溶体化処理等の熱処理を施すことができるアルミニウム合金の成形品の製造方法およびその金型に関するものである。
アルミニウム合金成形品は,鋳造された後,強度などの機械的特性を向上させるために熱処理を施されることがある。このような熱処理として,例えば,溶体化処理後に人工時効処理を行うT6処理(JIS)が挙げられる。しかし,鋳物が冷えた後に鋳物全体に再度熱処理を施す場合,エネルギー効率においても生産効率においても良好ではない。また,機械的強度においても,鋳物の全体にわたって確保する必要のない場合もある。このため,鋳造後の熱処理を,強度の必要な箇所のみに部分的に施すことがある。
例えば,特許文献1では,準備工程と,鋳込み工程と,分離工程と,焼入れ工程と,時効処理工程とを有する軽合金製鋳物の製造方法が開示されている。当該軽合金製鋳物の製造方法では,鋳込み後に鋳物を金型から分離し,分離された鋳物の表面に冷却媒体を接触させることにより,焼入れを行うこととしている。これにより,部分的に熱処理を施した鋳物を製造することができるとしている。
特開2005−169498
このような熱処理は,その対象箇所の温度制御をより厳密に行うことが望ましい。製品毎に温度のバラツキが生じると,製造される鋳物の品質が安定しないためである。また,一製品内においても,熱処理の箇所内での温度ムラが生じると,必要とされる機械的性質が得られないおそれがあるためである。一方,熱処理温度が高いほど溶質原子の拡散速度が速く,主成分である金属に溶け込みやすい。このため,固相線温度直下の温度を一定時間保持することが好ましい。合金元素の濃度分布のより均一な合金を製造することができるためである。さらに,短い時間で熱処理を行うことができるためである。
しかし,特許文献1に記載の方法では,熱処理対象箇所の温度を目標温度に一定時間保持することは困難である。水を吹き付けることにより熱処理対象箇所の温度を操作しているためである。そして,水の温度と熱処理の目標温度とが大きくかけ離れているためである。さらに,熱処理対象箇所の形状によっては,水がかかりやすいところと,かかりにくいところとができるため,温度ムラを生じやすい。加えて,金型を分離した後,砂型を残したまま熱処理を施すため,熱処理を行いうる箇所が限定される(特許文献1の図6を参照)。また,当該方法は,処理箇所の温度を冷媒である水を吹き付ける時間で制御しているため,温度の制御性に不確実性を有する。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,金型の内部に成形された後,離型する前の鋳物の一部に,処理温度及び処理時間を正確に制御して熱処理を施すことができるアルミニウム合金の成形品の製造方法およびその金型を提供することである。
この課題の解決を目的としてなされた本発明の金型によりアルミニウム合金の成形品を製造する方法は,前記金型として,成形品の一部に接触して熱処理を施す局所熱処理部と,成形品の前記一部以外の残部に接触する非熱処理部とを有するものを用い,成形後,前記金型から成形品を取り出す前に,前記局所熱処理部により,成形品の前記一部をその合金の溶体化温度に保持して局所的に溶体化処理を施す局所溶体化工程を有することを特徴とするものである。かかるアルミニウム合金の成形品の製造方法は,金型の内部においてアルミニウム合金の成形品の一部に溶体化処理を施すことができる。
上記に記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法において,前記金型として,前記局所熱処理部が,前記非熱処理部を構成する金型本体とは別体であるとともに金型本体の内部に配置される入子であるものを用いることとしてもよい。かかるアルミニウム合金の成形品の製造方法においても,金型の内部においてアルミニウム合金の成形品の一部に溶体化処理を施すことができる。
上記に記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法において,前記入子と金型本体との間に隙間があるものを用いることとするとなおよい。入子と金型本体との隙間により,入子から金型本体への放熱が抑制されるためである。これにより,溶体化処理を施す箇所の保温性が向上する。
上記に記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法において,前記金型として,前記局所熱処理部に流体の流路が形成されているものを用いることとするとなおよい。金型の流路に熱流体を流すことができるためである。溶体化処理温度に保持された熱流体を流路に流すことにより,局所熱処理部及び溶体化処理を施す箇所の温度を一定時間保持することができるためである。
上記に記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法において,前記局所溶体化工程の後で成形品を前記金型から取り出した成形品を水で冷却する水冷工程と,前記水冷工程後の成形品に人工時効処理を施す人工時効工程とを有することとするとさらによい。アルミニウム合金の成形品の機械的性質が向上するためである。
本発明の成形品を成形する金型は,成形品の一部に接触して熱処理を施す局所熱処理部と,成形品の前記一部以外の残部に接触する非熱処理部とを有し,前記局所熱処理部には,成形後,前記金型から取り出す前の成形品の前記一部を加熱する熱源が設けられていることを特徴とするものである。かかる金型により,成形品を成形するとともに金型の内部の合金の一部に熱処理を施すことができる。
上記に記載の金型において,前記局所熱処理部が,前記非熱処理部を構成する金型本体とは別体であるとともに金型本体の内部に配置される入子であることとしてもよい。成形品を成形するとともに金型の内部の合金の一部に熱処理を施すことができることに変わりはないからである。
上記に記載の金型において,前記入子と金型本体との間に隙間があることとするとなおよい。入子から金型本体への放熱が抑制されるためである。
上記に記載の金型において,前記局所熱処理部に,熱流体を流す流路が形成されていることとするとさらによい。金型の流路に熱流体を流すことができるためである。溶体化処理温度に保持された熱流体を流路に流すことにより,局所熱処理部及び溶体化処理を施す箇所の温度を一定時間保持することができるためである。
本発明によれば,金型の内部に成形された後,離型する前の鋳物の一部に,処理温度及び処理時間を正確に制御して熱処理を施すことができるアルミニウム合金の成形品の製造方法およびその金型が提供されている。
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,アルミニウム合金成形品の製造方法およびその金型について,本発明を具体化したものである。
[金型]
本形態の金型10について,図1〜図4により説明する。図1は,本形態の金型10の断面図である。本形態の金型10は,金型本体として下型11と上型12とを有している。図2は,金型10の下型11の製品部分を示した平面図である。図3は,金型10の上型12の製品部分を示した平面図である。図1は,図2の下型11及び図3の上型12を一体とした場合のXX断面に相当するものである。なお,簡単のために図1では金型10の細部の形状を簡略化している。なお,下型11及び上型12の材質は,例えばSKD61(JIS)である。
また,本形態の金型10は,下型11及び上型12の他に入子101と,入子102とを有している。入子101と,入子102とは,下型11の内部に収まるようになっているものである。図4に,図1の下型11に入子101と,入子102とを収めた様子を示す。キャビティ200は,下型11と,上型12と,入子101と,入子102とで仕切られた閉空間である。このキャビティ200の形状が,溶湯が鋳込まれて鋳造される鋳物の形状を決めるものである。
キャビティ200の一部として,局所的熱処理対象箇所201がある。これは,鋳造の際に製品リブ等の鋳物の一部となるべき空間である。また,局所的熱処理対象箇所201は,入子101及び入子102により大部分を囲まれた領域であり,鋳物の製造工程において溶体化処理が施される箇所である。
このように,本形態の金型10は,鋳物製品を製造するとともに,鋳物の一部に対して局所的に熱処理を施すためのものである。ここで,入子101と入子102とで仕切られた空間としてソルト流路111が形成されている。ソルト流路111は,溶湯とは別の流体を流すためのものである。このため,ソルト流路111には金型10の外部からソルトを供給できるように流体の注入口及び排出口が設けられている。このソルト流路111には,後述するように熱容量の大きな流体(ソルト)を流すためのものである。ソルトとして,KNOとNaNOとを50%ずつの比で混合したものが挙げられる。なお,ソルトとして,熱容量が高い流体であれば別のもので代用しても構わない。ソルトの温度はアルミニウム合金の溶体化処理温度と同じかわずかに高い温度とする。このソルトにより,局所的熱処理対象箇所201の温度を一定の温度に保つことができる。これにより,局所的熱処理対象箇所201が,局所的に熱処理を施されるようにするものである。このように,入子101と,入子102とは,局所的熱処理対象箇所201に熱処理を施すための局所熱処理部である。また,金型10における上記局所熱処理部以外の残部,すなわち下型11及び上型12は,非熱処理部である。なお,入子101及び入子102の材質は,下型11及び上型12と同じである。
また,下型11と入子102との間には,空気層103が形成されている。これにより,入子102から下型11への放熱が抑制されている。このように,局所的熱処理対象箇所201は保温性に優れている。このため,局所的に熱処理を施す際に局所的熱処理対象箇所201の温度をほぼ一定に保つことができる。
以上,説明したように,本実施の形態に係る金型は,入子からなる局所熱処理部を設けたものである。この局所熱処理部には,溶湯とは別の流体を流す流路が形成されている。このため,鋳物の一部の温度を高い精度で保持することができる。これにより,鋳物の一部に正確な熱処理を施すことができるのである。
なお,入子は,上型12に収容するようにしても構わない。また,下型11と,上型12と,入子101と,入子102の材質は,SKD61以外のものであってもよい。ただし,熱膨張率の関係上,これらは同一の材質であることが好ましい。また,ソルト流路111の表面積は大きいほうが好ましい。入子101及び入子102の隅々までソルトの熱が行き渡るからである。また,下型11または上型12と,入子101または入子102との間に,断熱材を入れても構わない。
[製造方法]
ここで,アルミニウム合金成形品の製造方法について図5〜図9により説明する。本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造されるアルミニウム合金成形品は,鋳物の一部にリブ形状のような応力の集中しやすい箇所を有するものである。また,応力の集中しやすい箇所を強化するために,当該箇所に局所的な熱処理を施したものである。
図5は,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法を説明するフローチャートである。本形態のアルミニウム合金の成形品の製造方法は,鋳込み後金型から取り出す前に,鋳物の一部に溶体化処理を施すものである。図6は,局所的に溶体化処理を施す局所的熱処理対象箇所301(図8参照)の温度の時間変化を示すグラフである。図7は,局所的熱処理対象箇所301以外の鋳物の箇所である局所的熱処理非対象箇所300(図8参照)の温度の時間変化を示すグラフである。このため,図6のt1〜t7と図7のt1〜t7とはそれぞれ同じ時刻を示すものである。また,図6及び図7のS1〜S5は,図5の工程S1〜S5に対応するものである。
(時刻t1〜時刻t2:鋳込み工程S1)
本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法では,まず金型10のキャビティ200に700〜740℃(図6及び図7の温度A)の溶湯を湯口より流し込む(S1:鋳込み工程)。このため,キャビティ200は,溶湯によりほぼ満たされる。また,溶体化処理を施される局所的熱処理対象箇所301も溶湯で満たされる。また,溶湯で満たされたうちの溶体化処理を施されない箇所を局所的熱処理非対象箇所300とする。700〜740℃程度あった溶湯の温度(図6及び図7の温度A)は,鋳込み後,金型に接して温度が低下する(図6及び図7参照)。
そして,溶湯温度が合金の液相線温度を下回ると溶湯が固化し始め,さらに固相線温度を下回ると,溶湯が凝固し終える。ここで,凝固した鋳物の温度が,図6の溶体化処理温度(図6中の温度B)となった時刻をt2とする。本形態において設定する溶体化処理温度は,固相線温度の直下であり,なおかつ酸化を伴った溶融(バーニング)を起こすほど高くはない温度である。
(時刻t2〜時刻t3:局所的溶体化処理工程S2)
時刻t2の後,ソルト流路111にソルトを流す。これにより,局所的熱処理対象箇所301の温度を溶体化処理温度(図6の温度B)に保持する。局所的熱処理対象箇所301の温度を一定時間にわたり溶体化温度に保持することにより,溶体化処理を施す(局所的溶体化処理工程:S2)のである。このときの様子を図9に示す。なお,この溶体化処理温度及び溶体化処理時間は合金等の種類により異なるため詳細は後述するが,おおよそ固相線温度の直下にて数十分程度である。また,時刻t2の前に予めソルト流路111にソルトを流しておいてもよい。
ここで,ソルトの温度は,溶体化処理温度と同じか又はそれよりわずかに高いものとしている。ソルトがソルト流路111を通過することにより,ソルトの熱はソルト流路111を形成する入子101及び入子102へと伝達される。これにより,入子101及び入子102の温度はソルトの温度とほぼ等しくなる。入子101及び入子102の熱は,局所的熱処理対象箇所301に伝達される。このため,局所的熱処理対象箇所301の温度は,設定した溶体化処理温度とほぼ等しくなる。ここで,局所的熱処理対象箇所301は,入子101と入子102とでほとんど覆われている。このため,局所的熱処理対象箇所301から局所的熱処理非対象箇所300へ熱が逃げにくくなっている。また,入子102と下型11との間には空気層103があるため,入子102から下型11への放熱も抑制されている。
このように,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法は,金型内部の鋳物の一部に溶体化処理を施すために,溶体化処理温度にほぼ等しいかわずかに高い温度のソルトを,入子101及び入子102により形成されるソルト流路111に流すものである。このため,ソルト流路111にソルトを流している間,局所的熱処理対象箇所301は溶体化処理温度に保持される(図6参照)。局所的熱処理対象箇所301内での位置による温度ムラは,あったとしても±2℃(図6の二点鎖線間の領域α)の範囲内にすぎない。ソルト流路111が入子の隅々まで熱が伝わるように形成されているためである。なお,従来の鋳物全体に溶体化処理を施す場合,鋳物内での温度ムラは±10℃程度にもなる。また,特許文献1に記載の鋳物の製造方法では,熱処理箇所の温度が一定時間にわたり保持されることはない。熱処理対象箇所の温度と,当該箇所に吹き付ける水の温度とが大きく異なっているためである。
なお,時刻t2〜時刻t3の期間,局所的熱処理対象箇所301は,その温度が保持される一方,溶体化処理を施さない局所的熱処理非対象箇所300は自然放冷状態である。このため,その部分の温度は下がり続ける(図7参照)。
本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法は,ソルトの温度を調節することにより,局所的熱処理対象箇所301の熱処理温度を正確に制御することができる。また,ソルトを流す時間を調節することにより,局所的熱処理対象箇所301の熱処理時間を厳密に管理することができる。このため,必要な時間にわたり熱処理を施した後(時刻t3),ソルトの供給を停止する。これにより,局所的熱処理対象箇所301の溶体化処理が終了した。
(時刻t3〜時刻t4:離型工程S3)
時刻t3の後,金型から鋳物を分離する(S3)。このとき,局所的熱処理対象箇所301の温度は,図6に示すように未だ高いままである。局所的熱処理非対象箇所300の温度は,図7に示すように充分下がっている。ここで,鋳物を金型から離型し終えた時刻をt4とする。時刻t4において,局所的熱処理対象箇所301の温度は,時刻t3に比べて厳密にいえばわずかに下がっている。しかし,常温に比べれば高いままである。
(時刻t4〜時刻t5:水没焼入工程S4)
離型の後,鋳物全体を水没させる(S4)。これにより,鋳物全体に焼入が施される。鋳物を水中から取り出した時刻をt5とする。
(時刻t6〜時刻t7:人工時効処理工程S5)
そして,水没焼入(S4)を施した後,鋳物に人工時効処理を施す(S5)。この場合の処理温度(図6及び図7の温度C)及び処理時間は合金により異なるため後述する。以上により,鋳物の一部に熱処理を施したアルミニウム合金成形品が製造された。ここで,局所的熱処理対象箇所301は,溶体化処理(S2)を施された後,人工時効処理(S5)を施されている。このため,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造されたアルミニウム合金成形品は,その一部である局所的熱処理対象箇所301にT6処理(JIS)を施したものとなっている。
本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法は,金型とともに入子を用いることにより鋳物の一部に溶体化処理を施すものである。また,入子の形成するソルト流路にソルトを流して保温するようにしたので,熱処理の間,入子に囲まれた鋳物の一部をほぼ一定の温度に保つことができる。鋳物全体に溶体化処理を施した場合と比べて,溶体化処理を施した箇所内での異なる位置における温度ムラが小さい。このため,合金の種類に応じた熱処理温度および熱処理時間を設定し,局所的な熱処理を施すことができるようになった。つまり,熱処理の対象箇所を,時間的にも,空間的にも一定に保つことができるようになった。これにより,金型において,鋳造工程と,局所的溶体化処理工程とが一体となったアルミニウム合金成形品の製造方法が実現されている。
また,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造されたアルミニウム合金成形品は,その一部に熱処理が施されたものである。その鋳物における熱処理箇所は,溶質原子を過飽和に,なおかつ均一に固溶しているものである。このため,熱処理箇所内での溶質原子の固溶量のムラが小さい。また,製品毎の機械的性質のバラツキも小さい。なお,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法は,金型の内部で溶体化処理を施すため,溶体化処理のための加熱炉を必要としない。また,溶湯温度の熱を利用して熱処理を施すため,エネルギーを無駄に消費しない。さらに,鋳造工程と熱処理工程とが一体となっているため,サイクルタイムも短縮することができる。
[熱処理の実施例1]
本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法は,鋳物の一部に局所的に熱処理を施すものである。そして,対象とする製品,用いる合金等に応じて種々の熱処理温度及び熱処理時間を設定することが可能である。以下にその行った試験を例示する。
本試験は,鋳物全体に熱処理を施した比較例と,鋳物の一部に熱処理を施したその熱処理箇所とについて,機械的性質を比較したものである。比較項目はJISにならい,
1. 引張強度,
2. 0.2%耐力,
3. 伸び
の3項目とした。
まず,実施例1では,合金1として,JIS−AC4CHを用いた。合金1の主成分はアルミニウムであり,その他の元素の成分比は,表1のとおりであった。なお,合金1の固相線温度は564℃である。
Figure 2009255104

合金1に熱処理を行った合金の機械的性質を図10のグラフに示す。ここで,比較例は,鋳物全体を温度530℃(±10℃)で3時間かけて溶体化処理した後,水冷したものである。その後,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施した。この温度が,図6及び図7の温度Cに該当するものである。
また,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法及びそれを用いた金型により製造されたアルミニウム合金成形品の局所的熱処理対象箇所301の機械的性質について,図10の比較例の右側に結果を示す。温度545℃(±2℃)でそれぞれ10分,20分,30分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施したものの結果を,図10の左側から順に示す。さらに,温度555℃(±2℃)でそれぞれ10分,20分,30分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施したものの結果をその右側に示す。
本実施例1のアルミニウム合金成形品の局所的熱処理対象箇所は,引張強度及び0.2%耐力に関して,鋳物全体に熱処理を施した比較例に比べて若干高い数値を示した。一方,伸びについては,少々バラツキがあるものの適当な熱処理温度及び熱処理時間(545℃,30分または555℃,20分)を選べば,比較例と遜色のない数値を示した。なお,局所的熱処理の時間は全体を溶体化処理する場合に比べて短い。
[熱処理の実施例2]
次に,合金2について行った試験結果を実施例2として説明する。合金2として,JIS−AC2Bを用いた。合金2の主成分もまたアルミニウムであり,その他の元素の成分比は,表2のとおりであった。なお,合金2の固相線温度は520℃である。
Figure 2009255104

合金2に熱処理を行った合金の機械的性質を図11のグラフに示す。合金2について,以下に示す異なる熱処理を行った後,引張強度と,0.2%耐力と,伸びについて測定した。ここで,比較例は,鋳物全体を温度500℃(±10℃)で2時間かけて溶体化処理した後,水冷したものである。その後,温度220℃(±5℃)で2時間かけて人工時効処理を施した。
また,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法及びそれを用いた金型により製造されたアルミニウム合金成形品の局所的熱処理対象箇所301の機械的性質について,図11の比較例の右側に結果を示す。温度515℃(±2℃)でそれぞれ0分,10分,20分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度210℃(±10℃)で2時間かけて人工時効処理を施したものの結果を,図11の左側から順に示す。さらに,温度525℃(±2℃)でそれぞれ0分,10分,20分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度210℃(±10℃)で2時間かけて人工時効処理を施したものの結果をその右側に示す。なお,0分の局所的溶体化処理とは,局所的熱処理対象箇所301の温度を一旦溶体化温度にした後,その溶体化温度を保持しないことである。
本実施例2のアルミニウム合金成形品の局所的熱処理箇所は,引張強度及び0.2%耐力に関して,鋳物全体に熱処理を施した比較例に比べてほぼ同程度の数値を示した。局所的熱処理対象箇所を,温度525℃で10分熱処理を施すことにより,比較例と遜色のない機械的性質が得られた。なお,実施例1と同様,局所的熱処理の時間は全体を溶体化処理する場合に比べて短い。
[熱処理の実施例3]
次に,合金3について行った試験結果を実施例3として説明する。合金3として,JIS−AC4CHにCuを0.8重量パーセント添加したものを用いた。なお,Mgは0.3重量パーセントとした。合金3の主成分もまたアルミニウムであり,その他の元素の成分比は,表3のとおりであった。なお,合金3の固相線温度は556℃である。
Figure 2009255104

合金3に熱処理を行った合金の機械的性質を図12のグラフに示す。合金3について,以下に示す異なる熱処理を行った後,ビッカース硬さHvを測定した。(5kg荷重を使用)ここで,比較例は,鋳物全体を温度510℃(±10℃)で3時間かけて溶体化処理した後,水冷したものである。その後,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施した。
また,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法及びそれを用いた金型により製造されたアルミニウム合金成形品の局所的熱処理対象箇所301の機械的性質について,図12に結果を示す。横軸は,溶体化処理に要した時間であり,縦軸は,硬さを示したものである。溶体化温度510℃の線が示すのは,温度510℃(±2℃)でそれぞれ5分,10分,20分,30分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施したもののビッカース硬さHvである。溶体化温度530℃の線が示すのは,温度530℃(±2℃)でそれぞれ5分,10分,20分,30分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施したもののビッカース硬さHvである。溶体化温度545℃の線が示すのは,温度545℃(±2℃)でそれぞれ5分,10分,20分,30分の局所的溶体化処理を行った後,水冷し,温度170℃(±5℃)で3時間かけて人工時効処理を施したもののビッカース硬さHvである。
本実施例3のアルミニウム合金成形品は,溶体化処理温度を530℃若しくは545℃で溶体化処理を行ったものについて,鋳物全体に熱処理を施した比較例と変わらないビッカース硬さHvの値を示した。また,合金3の固相線温度に近い温度で溶体化処理(530℃,545℃)を設定すれば,5分程度でも充分固溶することが分かった。これは,3時間にわたって全体を溶体化処理した比較例と比べて,非常に短い時間である。一方,溶体化温度510℃では,固溶が充分進んでいない。
以上より,処理温度と合金の機械的性質との間の関連性を読みとることができる。つまり,アルミニウム合金の成形品において所望の機械的性質を得るためには,高い精度で熱処理対象箇所の温度を保持する必要がある。それには,温度ムラの生じにくい金型もしくは製造方法が不可欠である。そうでなければ,固相線温度に近い溶体化温度を設定することが困難であるからである。また,温度のコントロールを高い精度で行うことにより,熱処理時間を大幅に短縮できることが明らかとなった。また,温度制御が不充分であり,局所的に温度が上昇しない箇所が生じたとする。すると,その箇所の強度が不充分であり,製品として使用されるときに当該箇所に応力が集中するおそれがある。これにより,当該箇所が破損する可能性もある。
本形態では,局所熱処理部は,入子101と,入子102とを有することとしたが,入子101と,入子102とが一体となっているものであっても構わない。また,入子は3個以上であってもよい。入子が鋳物の一部の形状を形成するように構成されており,当該箇所を保温するためのソルト流路が当該箇所の近くに形成されていればよい。
また,局所熱処理部が,下型11または上型12と一体となったものであっても構わない。その場合,下型11または上型12の内側には,ソルト流路が形成されている。
なお,本形態の金型は,アルミニウム合金の成形品を製造するために用いた。しかし,それ以外の金属を鋳造するとともに,局所的熱処理を施すものを製造するために用いても構わない。また,鍛造用の金型にも適用できる。
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るアルミニウム合金成形品の製造方法は,溶湯を鋳型に鋳込んだ後,離型する前に,鋳物の一部に熱処理を施すものである。また,離型した後,水没焼入を施し,その後人工時効処理を施すものである。また,鋳物の一部に施す熱処理は,鋳物の当該箇所の温度を,時間的に及び空間的に一定なものとすることができるものである。これにより,部分的に強度を上げたアルミニウム合金成形品が製造される。また,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法は,鋳造工程と溶体化処理工程とを一体として行うものである。このため,熱処理炉を別途用意する必要がない。さらに,再度の熱処理を必要としないため,エネルギーを無駄に消費することがない。加えて,アルミニウム合金成形品の製造に要する時間も短縮される。
また,本形態のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造されたアルミニウム合金成形品は,リブ形状などの応力の集中しやすい箇所に熱処理が施されたものである。その鋳物における熱処理箇所は,溶質原子を過飽和に,なおかつ均一に固溶しているものである。このため,熱処理箇所内での溶質原子の固溶量のムラが小さい。また,製品毎の機械的性質のバラツキも小さい。
また,本形態の金型は,鋳物を鋳造するとともに,鋳物の一部に熱処理を施すことができるものである。入子が形成するソルト流路に流すソルトの温度と,流す時間とを調整することにより,合金の種類に応じた熱処理の処理温度及び処理時間を設定することができる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,下型11,上型12,入子101,入子102の材質はSKD61に限らない。金型として用いることのできる材質であれば構わない。ただし,材質により膨張率が異なるため,下型11,上型12,入子101,入子102で共通の材質を用いることが好ましい。
また,本形態では局所熱処理部として熱流体を用いたが,電気ヒータ,過熱水蒸気,誘導加熱等の他の加熱手段を用いても構わない。熱処理を施すべき箇所を局所的に加熱する,或いは保温する等の手段があれば,同様の効果を奏するからである。
本発明の金型の下型と上型を説明するための断面図である。 鋳物に局所的溶体化処理を施すための本発明の金型の下型を示す図である。 鋳物に局所的溶体化処理を施すための本発明の金型の上型を示す図である。 本発明の金型を説明する断面図である。 局所的熱処理を行うアルミニウム合金成形品の製造方法を説明するためのフローチャートである。 局所的熱処理を行う部分の製造工程に伴う温度変化を説明するグラフである。 局所的熱処理を行わない部分の製造工程に伴う温度変化を説明するグラフである。 本発明のアルミニウム合金成形品の製造方法を説明するための図(その1)である。 本発明のアルミニウム合金成形品の製造方法を説明するための図(その2)である。 本発明のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造した鋳物の局所的熱処理を施した箇所の機械的性質を説明するためのグラフ(その1)である。 本発明のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造した鋳物の局所的熱処理を施した箇所の機械的性質を説明するためのグラフ(その2)である。 本発明のアルミニウム合金成形品の製造方法により製造した鋳物の局所的熱処理を施した箇所の機械的性質を説明するためのグラフ(その3)である。
符号の説明
10…金型
11…下型
12…上型
101,102…入子
103…空気層
111…ソルト流路
200…キャビティ
300…局所的熱処理非対象箇所
201,301…局所的熱処理対象箇所

Claims (9)

  1. 金型によりアルミニウム合金の成形品を製造する方法であって,
    前記金型として,
    成形品の一部に接触して熱処理を施す局所熱処理部と,
    成形品の前記一部以外の残部に接触する非熱処理部とを有するものを用い,
    成形後,前記金型から成形品を取り出す前に,前記局所熱処理部により,成形品の前記一部をその合金の溶体化温度に保持して局所的に溶体化処理を施す局所溶体化工程を有することを特徴とするアルミニウム合金の成形品の製造方法。
  2. 請求項1に記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法であって,
    前記金型として,前記局所熱処理部が,前記非熱処理部を構成する金型本体とは別体であるとともに金型本体の内部に配置される入子であるものを用いることを特徴とするアルミニウム合金の成形品の製造方法。
  3. 請求項2に記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法であって,
    前記入子と金型本体との間に隙間があるものを用いることを特徴とするアルミニウム合金の成形品の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法であって,
    前記金型として,前記局所熱処理部に流体の流路が形成されているものを用いることを特徴とするアルミニウム合金の成形品の製造方法。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載のアルミニウム合金の成形品の製造方法であって,
    前記局所溶体化工程の後で成形品を前記金型から取り出した成形品を水で冷却する水冷工程と,
    前記水冷工程後の成形品に人工時効処理を施す人工時効工程とを有することを特徴とするアルミニウム合金の成形品の製造方法。
  6. 成形品を成形する金型であって,
    成形品の一部に接触して熱処理を施す局所熱処理部と,
    成形品の前記一部以外の残部に接触する非熱処理部とを有し,
    前記局所熱処理部には,成形後,前記金型から取り出す前の成形品の前記一部を加熱する熱源が設けられていることを特徴とする金型。
  7. 請求項6に記載の金型であって,
    前記局所熱処理部が,前記非熱処理部を構成する金型本体とは別体であるとともに金型本体の内部に配置される入子であることを特徴とする金型。
  8. 請求項7に記載の金型であって,
    前記入子と金型本体との間に隙間があることを特徴とする金型。
  9. 請求項6から請求項8までのいずれか1つに記載の金型であって,
    前記局所熱処理部に,熱流体を流す流路が形成されていることを特徴とする金型。
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