JP2009258193A - 偏光フィルムの製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた光学特性を有すると共に、一軸延伸の際に生じるネックインを抑制して幅広の偏光フィルムを得る。
【解決手段】延伸装置(5)において、上流側に設けられている第1の延伸ロール(21)のロール面の一部を大気中に出し、残りの部分を溶液中に浸す。フィルム11を第1の延伸ロール(21)と第1のニップロール(31)で大気中に露出しているロール面(41)で挟み込み、そして第1の延伸ロール(21)に密着させたまま溶液(15a)中に導く。フィルム11を第2の延伸ロール(22)と第2のニップロール(32)とで挟んで引き取り、張力を与えて一軸延伸する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ヨウ素等の二色性物質や有機性染料からなる二色性染料を染着させたポリビニルアルコール系フィルムを、所定の溶液中で一軸延伸して偏光フィルムを得る、偏光フィルムの製造方法および製造装置に関するものである。
テレビジョン装置、パソコン用モニタ装置等の表示装置として、近年液晶パネル、いわゆるLCDの需要が拡大している。LCDは、液晶組成物からなる液晶の層と、液晶の層を挟み込んでシールドしている2枚の透明基板と、2枚の透明板の表面に貼り付けられている2枚の偏光フィルムとを基本構造として、さらに、バックライトを導く導光板等の所定の機能を付加する複数枚の板、シート等が貼り合わされて製造されている。偏光フィルムは、いわゆる偏光軸を有し、所定の振動方向の光だけを透過して他の振動方向の光を吸収する。LCDを構成している2枚の偏光フィルタは、互いに偏光軸が直交するように貼り合わされているので、LCDの裏面から照らされているバックライトは通常遮光されてLCDの表面には届かないが、液晶に電圧を印加すると液晶の層で光の振動方向が変化して偏光フィルタを通過させることができる。このようにLCDでは、液晶に印加する電圧を制御して画像を表示させている。
LCDの製造に不可欠の偏光フィルムは、従来周知のように、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等の、ポリビニルアルコール系のフィルム、すなわちPVA系フィルムに、ヨウ素等の二色性物質や有機性染料からなる二色性染料を染着させて、一方向に引き延ばすいわゆる一軸延伸をかけて製造されている。そして、偏光フィルムには、所定の強度を得ると共に湿度から保護するため、トリアセチルセルロース(TAC)等からなる保護層が貼り合わされている。透過率および偏光度などの光学特性は、LCDの明るさと色の再現性に影響するので、LCDに用いられる偏光フィルムには、高い透過率と高い偏光度が要求される。
原料のフィルムを一軸延伸すると、延伸方向と直交する方向、すなわちフィルムの幅方向に、ネックインと呼ばれる収縮が生じる。原料のPVA系フィルムは、ロール状に巻き取られた原反として供給されているが、一般に流通している原反のフィルムの幅は規格された同一の長さである。従って、格別に幅広のフィルムを原料にしない限り、一軸延伸によって生じるネックインの大きさが得られる偏光フィルムの幅を決定してしまう。近年、LCDの大型化が進み、より幅広の偏光フィルムが求められるようになってきており、必要な光学特性を維持しながらネックインを抑制して幅広の偏光フィルムを得る技術が求められている。
フィルムは、フィルムを送り出す2本の延伸用ロール間で一軸延伸されるが、下流側の延伸用ロールの周速度を上流側の延伸用ロールの周速度よりも大きくして、フィルムに張力を与えて延伸する。このとき、フィルムが延伸用ロール上を滑らないように、それぞれの延伸用ロールにはニップロールが設けられ、フィルムはニップロールと延伸用ロールとで挟まれて送り出されるようになっている。代表的な一軸延伸法には、延伸ロールに加熱ロールを用いてフィルムを加熱しながら大気中で延伸する、いわゆる乾式延伸法と、フィルムを所定の溶液中に浸しながら延伸する、いわゆる湿式延伸法とが知られている。乾式延伸法は、フィルムが破断しやすいという欠点があり、充分に延伸できず必要な光学特性を得にくい。一方、湿式延伸法はフィルムが破断しにくく充分に延伸できるので、必要な光学特性が得やすい。従って、近年湿式延伸法が主流になってきている。
特許文献1には、湿式延伸法を実施するフィルム製造装置であって、ロール位置の変更が可能な複数の延伸ロールが設けられ、複数段にわたってフィルムを延伸することができる、フィルム製造装置が記載されている。ところで、ネックインは主にフィルムが延伸されるときに発生し、フィルムが延伸される距離、いわゆる延伸間距離が長いほどフィルムの幅方向の拘束が働きにくく、ネックインが大きくなる。一般的に、フィルムはロールに巻き付いている区間ではロールによって拘束されて延伸されないので、延伸間距離は、一方の延伸ロールから離れて他方の延伸ロールに接触するまでのフィルムの長さで与えられる。特許文献1に記載のフィルム製造装置においては、ロール位置を変更できるので、延伸間距離を短くしてネックインを抑制することができる。
特許文献1に記載のフィルム製造装置によっても、光学特性を確保しつつネックインを抑制して幅広の偏光フィルムを得ることができるが、改良すべき点も見受けられる。すなわち、特許文献1に記載のフィルム製造装置によれば、見かけ上の延伸間距離は短くすることはできるが、従来周知の湿式延伸法と同様に、実際には以下に説明するように実質的な延伸間距離は短くはない。
図5には、従来周知の湿式延伸法を実施する、延伸槽と延伸ロール等からなるフィルム製造装置が記載されている。延伸槽81には、所定の溶液82が満たされており、溶液82中に第1、2の延伸ロール83、84と第1、2の延伸ロール83、84に対応して設けられている第1、2のニップロール85、86とが浸漬されている。そして、第1、2のガイドロール87、88が、延伸槽81の上方の所定の位置に設けられている。このようなフィルム製造装置に、ヨウ素からなる二色性物質が染着されたPVAフィルム90が、第1のガイドロール87にガイドされ、第1のニップロール85と第1の延伸ロール83とによって、図面において逆S字状を呈するように巻き付けられている。さらにPVAフィルム90は、符号91で示されているように第1、2の延伸ロール83、84で掛け回され、第2の延伸ロール84と第2のニップロール86とによって、図面においてS字状を呈するように巻き付けられた後、第2のガイドロール88でガイドされて、符号92で示されているように、右方に送られている。本製造装置においては、上流側の第1の延伸ロール83の周速度に対して、下流側の第2の延伸ロール84の周速度を大きくして、PVAフィルム90に張力を与えて一軸延伸している。既に説明したように、延伸間距離は、一方の延伸ロールから離れて他方の延伸ロールに接触するまでのフィルムの長さで与えられるので、符号94で示されている距離になるはずである。しかしながら、矢印95と矢印96で示されている部分から溶液82が巻き込まれ、PVAフィルム90と第1の延伸ロール83との間、PVAフィルム90と第2の延伸ロール84との間に、薄い溶液82の層が形成される。そうすると、PVAフィルム90は第1、2の延伸ロール83、84に密着しないので摩擦力が充分に働かず、符号97、98で示されている点線の部分のPVAフィルム90も拘束されずに延伸されてしまう。すなわち、本フィルム製造装置においては、実質的な延伸間距離は、見かけ上の延伸間距離94に、符号97、98で示されている点線の長さが合計された距離になる。
特許文献1に記載のフィルム製造装置においても、従来周知のフィルム製造装置と同様に、フィルムと延伸ロールの間に薄い溶液の層が生じてしまうので、フィルムは延伸ロールに巻き付いている部分においても延伸されてしまう。すなわち、実質的な延伸間距離は長くなってしまい、ネックインを充分に抑制できてはいない。
さらに、ネックインはフィルムの乾燥のときにも生じる。一軸延伸されたフィルムは所定の水分を含んでいるので乾燥する必要があるが、延伸の際に生じて内部に残留している応力の働きにより、フィルムが乾燥するときに幅方向に収縮してしまう。すなわち、ネックインが生じる。特許文献1に記載のフィルム製造装置においては、フィルムの乾燥時に発生するネックインを抑制する点については格別に考慮されていない。
本発明は、上記したような従来の問題点あるいは課題を解決した、偏光フィルムの製造方法、およびそのような製造方法を実施する製造装置を提供することを目的とし、具体的には優れた光学特性を有する偏光フィルムを製造できる湿式延伸法を適用しているにも拘わらず、実質的な延伸間距離を短くすることができ、それによってネックインを充分に抑制して幅広の偏光フィルムを得ることができる、偏光フィルムの製造方法、および製造装置を提供することを目的としている。さらに本発明は、フィルムを乾燥させるときに発生するネックインを充分に抑制できるフィルムの乾燥方法を備えた、偏光フィルムの製造方法、および製造装置を提供することも目的としている。
本発明は、上記目的を達成するために、原料のフィルムを上流の一対のロールで挟んで送り出し、さらに下流の一対のロールで挟んで引き取り、上流と下流のロールの周速度の違いにより張力を与えて原料のフィルムを湿式延伸するとき、上流側の一対のロールを構成する1本のロールを、そのロール面の一部が大気中に露出するようにして溶液に浸す。そして、原料のフィルムを上流側の一対のロールで挟むとき、大気中に露出している部分で挟み、フィルムをロールに密着させながら溶液中に導くように構成される。また、延伸されたフィルムを乾燥用のロールに巻き付けながら乾燥するように構成される。
すなわち、請求項1に記載の発明は、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールからなるポリビニルアルコール系のフィルムを、二色性物質または二色性染料で染着して、所定の溶液に浸漬しながら一軸延伸して偏光フィルムを得る、偏光フィルムの製造方法であって、前記フィルムを、一対のロールで挟んで送り出すと共に、前記一対のロールよりも下流側に配置され、前記一対のロールの周速度よりも大きな周速度で駆動される他の一対のロールで挟んで引き取って一軸延伸するとき、前記フィルムを大気中で前記一対のロールで挟み込み、そして前記所定の溶液中に導くように構成される。また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記一軸延伸を複数回繰り返すように構成される。さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1、2のいずれかの項に記載の方法において、前記一軸延伸した前記フィルムを、乾燥用のロールに巻き付けて乾燥するように構成される。
請求項4に記載の発明は、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールからなるポリビニルアルコール系のフィルムを、二色性物質または二色性染料で染着して、所定の溶液に浸漬しながら一軸延伸して偏光フィルムを得る、偏光フィルムの製造装置であって、該製造装置は、所定の溶液が満たされた延伸槽と、フィルムを挟んで送る第1の一対のロールと、前記第1の一対のロールの下流側に配置され、前記フィルムを挟んで前記第1の一対のロールより速い周速度で駆動される第2の一対のロールとからなる延伸装置を備え、前記第1の一対のロールの一方のロールは、そのロール面の一部は大気中に露出し、他の部分は前記溶液の溶液中に浸されるように前記延伸槽に設けられ、前記第1の一対のロールの他方のロールは、前記第1の一対のロールの一方のロール面に接する位置が大気中に位置するように前記延伸槽に設けられるように構成される。そして、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の製造装置において、フィルムを挟んで送る一対のロールが上流側から下流側に向かって複数段にわたって設けられ、これらの一対のロールは下流側ほど速い周速度で駆動されるようになっていると共に、これらの一対のロールの一方のロールは、そのロール面の一部は大気中に露出し、他の部分は前記溶液の溶液中に浸された状態で前記延伸槽に設けられ、そして前記一対のロールの他方のロールは前記一対の一方のロール面に接する位置が大気中に位置するように前記延伸槽に設けられるように構成され、請求項6に記載の発明は、請求項4、5のいずれかの項に記載の製造装置において、前記延伸装置の下流には、一軸延伸されたフィルムを乾燥する乾燥装置が設けられ、前記乾燥装置は、温度調節されてフィルムが巻き付けられるようになっている乾燥用のロールと、前記乾燥用のロールのロール面に乾燥用空気を吹き付けるエアーノズルとを備えるように構成される。
以上のように、本発明によると、フィルムを大気中で一対のロールで挟み込み、フィルムを溶液中に導いているので、ロール面とフィルムの間には溶液が巻き込まれない。従って、フィルムはロール面と実質的に密着して拘束されるので、ロール面上では延伸されず、実質的な延伸間距離を短くすることが出来る。このため、ネックインを抑制して幅広の偏光フィルムを得ることができる。また、フィルムは溶液中に導かれて湿式延伸されるので、充分に延伸してもフィルムが破断する恐れが少なく、必要な光学特性を備えた偏光フィルムを容易に製造することができる。請求項2に記載の発明によると、上記したような湿式延伸法を複数回、すなわち複数段実施するので、ネックインを抑制しながら充分にフィルムを延伸することが出来、より光学特性に優れた幅広の偏光フィルムを得ることができる。さらに、請求項3に記載の発明によると、一軸延伸したフィルムを乾燥用のロールに巻き付けて乾燥するので、延伸時に生じた応力がフィルム内に残留していても、フィルムは乾燥用のロールに密着して乾燥して幅方向の収縮が抑制される。従って、幅広の偏光フィルムを得ることができる。また、請求項4に記載の発明によると、延伸装置は所定の溶液が満たされた延伸槽と、第1、2の一対のロールを有するだけなので、湿式延伸法を実施できる従来周知の延伸装置と、必要な構成設備や構成部品においては相違は無い。従って、従来周知の延伸装置において、構成部品のロールの配置を変えるだけで、本発明に係る延伸装置を構成することができ、安価に偏光フィルムの製造装置を構成することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る偏光フィルム製造装置1は、図1の(ア)に模式的に示されているように、原料のフィルムを膨潤させる膨潤槽2、ヨウ素等の二色性物質または有機性染料からなる二色性染料でフィルムを染着する染着槽3、架橋剤を添加して高分子を網目構造にしてフィルムに所定の強度を与える架橋槽4、所定の溶液中でフィルムを延伸する延伸装置5、延伸されたフィルムの色相調節を行う補色槽6、水分を含んだフィルムを所定の水分含有率まで乾燥する第1の乾燥装置7、さらにフィルムを乾燥する第2の乾燥装置8、そして前記各槽2、3、…間に設けられフィルムを挟んで送り出す複数本のニップロールN、N、…、フィルムをガイドする案内ロール2b、3b、A、…等から構成されている。
このような偏光フィルム製造装置1の、膨潤槽2、染着槽3、架橋槽4、補色槽6、および第2の乾燥装置8は、従来周知の偏光フィルム製造装置のそれぞれの槽や装置と同様に構成されおり、以下簡単に説明する。
膨潤槽2には所定の溶液2aが満たされており、原料のフィルムが、溶液2a中に設けられている案内ロール2bに案内されて溶液2aに浸漬されると、フィルムの表面に付着した汚れやフィルムに添加されているブロッキング防止剤等が洗浄されると共に、フィルムは適度な水分を吸収して膨潤するようになっている。この膨潤によって、後工程の染着の際に染色ムラが生じることを防ぐことができる。このような溶液2aは、ミネラル分等の成分が所定の濃度を超えないように、かつpH値が所定の範囲内になるように調整された、いわゆる生産水に、必要に応じてヨウ化カリウム、ホウ酸、柔軟剤等が所定の濃度で添加されたものになっている。
膨潤槽2には所定の溶液2aが満たされており、原料のフィルムが、溶液2a中に設けられている案内ロール2bに案内されて溶液2aに浸漬されると、フィルムの表面に付着した汚れやフィルムに添加されているブロッキング防止剤等が洗浄されると共に、フィルムは適度な水分を吸収して膨潤するようになっている。この膨潤によって、後工程の染着の際に染色ムラが生じることを防ぐことができる。このような溶液2aは、ミネラル分等の成分が所定の濃度を超えないように、かつpH値が所定の範囲内になるように調整された、いわゆる生産水に、必要に応じてヨウ化カリウム、ホウ酸、柔軟剤等が所定の濃度で添加されたものになっている。
染着槽3には、所定の生産水に、ヨウ素等の二色性物質や有機性染料からなる二色性染料が所定の濃度で添加された、溶液3aが満たされている。従って、溶液3a中に設けられている案内ロール3bによって、フィルムが溶液中に浸漬されると、フィルムは二色性物質や二色性染料で染着される。架橋槽4には、所定の生産水に、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物やグリオキザール、グルタルアルデヒド等の架橋剤が添加された溶液4aが満たされている。溶液4a中に設けられている案内ロール4bによって、フィルムが溶液4aに浸漬されると、フィルムを構成する高分子が架橋されて、フィルムに所定の強度が与えられるようになっている。
補色槽6には、所定の生産水に、微量のヨウ化カリウムやヨウ化ナトリウム等のヨウ素化合部が添加された溶液6aが満たされている。槽6内に設けられている案内ロール6bに案内されて、フィルムが溶液6aに浸漬されると、他の前処理においてフィルムに付着したホウ酸等の不要残存物が洗浄されると共に、色相も調節される。第2の乾燥装置8も従来周知のように、熱風を送風する送風機、電気パネルヒータ等が内部に設けられ、フィルムが装置内を送られる間に、フィルムが乾燥するようになっている。
本実施の第1の形態に係る延伸装置5について説明する。延伸装置5は、一部に相違はあるが、大部分は従来周知の延伸装置と同様に構成されており、図1の(イ)に示されているように、所定の溶液15aが所定の深さになるように入れられた延伸槽15と、フィルムを延伸する第1〜4の延伸ロール21、22、…、と、第1〜4の延伸ロール21、22、…のそれぞれと対になるように設けられ、フィルムを挟む第1〜4のニップロール31、32、…と、案内ロール36、37と、からなる。溶液15aは、ホウ素化合物、ヨウ化物等が添加されることもあるが、本実施の形態においては、ミネラル分、イオン等の濃度が基準値以下になるように精製された精製水である。本実施の形態に係る延伸装置5は、第1〜4の延伸ロール21、22、…の位置に特徴があり、溶液15a中に完全には沈められていない。すなわち、第1〜4の延伸ロール21、22、…は、図に示されているように、所定のロール面が大気中に露出した状態で、溶液15a中に沈められている。このような第1〜4の延伸ロール21、22、…のうち、第1、2の延伸ロール21、22の間隔と、第3、4の延伸ロール23、24の間隔は比較的狭く、第2、3の延伸ロール22、23の間隔は比較的広い。第1〜4のニップロール31、32、…は、第1〜4の延伸ロール21、22、…の、大気中に露出しているロール面に接するように設けられ、第1〜4の延伸ロール21、22、…と、第1〜4のニップロール31、32、…とで、フィルムを大気中において挟むことができるようになっている。第2、4のニップロール32、34についてさらに詳しく説明すると、第2、4のニップロール32、34の軸心は、第2、4の延伸ロール22、24の軸心の鉛直上方よりも、第1、3の延伸ロール21、23に近寄った位置に配置されている。従って、フィルムが第1、2の延伸ロール21、22の間、および第3、4の延伸ロール23、24の間でそれぞれ延伸されるとき、延伸間距離は充分に短くなる。そして、案内ロール36が、第2、3の延伸ロール22、23の中間位置近傍に設けられて溶液15a中に沈められ、案内ロール37が、第4の延伸ロール24の下流に設けられて、フィルムを案内して滑らかに下流に送り出すようになっている。
本実施の形態に係る乾燥装置、すなわち第1の乾燥装置7について説明する。第1の乾燥装置7は、図1の(ウ)に示されているように、フィルムを引き取りながらフィルムの水切りを行う一対の水切りロール51、51と、フィルムに付着している水滴を吹き飛ばすエアーナイフ52、52と、フィルムを巻き付けながら乾燥する乾燥用ロール53と、乾燥用ロール53の所定のロール面を覆うように設けられ、フィルムに乾燥空気を吹き付けるエアーノズル54と、乾燥用ロール53のロール面に接するように設けられているニップロール55と、案内ロール57と、から構成されている。このような乾燥用ロール53は、ロール面が鏡面加工されていると共に、内部にヒータ等の加熱手段が備えられてロール面を所定の温度、例えば50℃±5℃に保持できるようになっている。
本実施の形態に係る偏光フィルム製造装置1の作用を説明する。偏光フィルムの原料となるフィルムには、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等の、ポリビニルアルコール系のフィルム、いわゆるPVA系フィルムが適用される。原料のPVA系フィルムは所定の幅に揃えられてロール状に巻かれた原反として供給されている。このような原反10を偏光フィルム製造装置1の最上流部、すなわち膨潤槽2の近傍に取り付ける。フィルム11を原反10から引き出して膨潤槽2に導いて、膨潤槽2の溶液2a中で膨潤させる。膨潤されたフィルム11を、染着槽3に導いて溶液3a中で染着する。次いでフィルム11を、架橋槽4の溶液4a中で架橋処理した後、ニップロールNを経由して延伸装置5に導く。
フィルム11を、延伸装置5内の各ロール21、22、…、31、32、…に以下のようにして掛け回す。最初に、フィルム11を第1のニップロール31に約半周巻き付けながら、第1の延伸ロール21と第1のニップロール31によって大気中の符号41で示される位置で挟み、そして、第1の延伸ロール21に密着させながら溶液15a中に導く。従って、フィルム11は、ロールの軸方向から見ると図1の(イ)に示されているように、第1のニップロール31と第1の延伸ロール21に、逆S字状を呈するように巻き付けられることになる。次いで、フィルム11を引き出して第2の延伸ロール22に巻き付けながら大気中まで引き出し、大気中において第2の延伸ロール22と第2のニップロール32とで挟んだ後、再び第2の延伸ロール22に巻き付けながら溶液15a中に導く。フィルム11を溶液15aに没した案内ロール36を経由させた後に大気中に引き出す。フィルム11を第3のニップロール33と第3の延伸ロール23に、逆S字状を呈するように巻き付けて再び溶液15a中に導く。このとき、フィルム11は第3の延伸ロール23と第3のニップロール33によって、大気中の符号43で示されている位置で挟まれることになる。フィルム11を引き出して第4の延伸ロール24に巻き付けながら大気中まで引き出し、大気中において第4の延伸ロール24と第4のニップロール34とで挟んで引き取った後、案内ロール37を経由して下流に送り出す。
第1〜4の延伸ロール21、22、…は、それぞれ独立して周速度を制御して駆動でき、第1の延伸ロール21よりも第2の延伸ロール22の方が、第3の延伸ロール23よりも第4の延伸ロール24の方が周速度を大きい。従って、フィルム11を、第1、2の延伸ロール21、22の間において一軸延伸して、第3、4の延伸ロール23、24の間でさらに一軸延伸する。第2、3の延伸ロール22、23の間では積極的にはフィルム11を延伸しないが、フィルム11が弛まないように、第3の延伸ロール23は、第2の延伸ロール2よりもわずかに周速度を大きくして所定の張力を与えているので、フィルム11はわずかに延伸される。フィルム11が第1、2の延伸ロール21、22の間で一軸延伸される状態を詳しく説明する。フィルム11は、図2に示されているように大気中の符号41で示されている部分で第1の延伸ロール21と第1のニップロール31とで挟まれて、第1の延伸ロール21に密着したまま溶液15a中に導かれている。従って、矢印Y1で示されている方向からはフィルム11と第1の延伸ロール21との間に溶液15aが巻き込まれることはない。フィルム11と第1の延伸ロール21のロール面の間には溶液15aの層は形成されないので滑りは生じない。従って、フィルム11を溶液15a中で一軸延伸するとき、延伸されるフィルム11の区間、すなわち延伸間距離は、符号46で示されている点線部分のみになる。フィルム11を第3、4の延伸ロール23、24の間で一軸延伸するときも同様に延伸間距離は短い。すなわち、フィルム11は大気中の、符号43で示されている部分で第3の延伸ロール23と第3のニップロール33で挟まれるので、矢印Y2の方向から溶液15aが入り込むことはない。従って、フィルム11は第3の延伸ロール23に密着して滑らないので、フィルム11は符号47で示されている点線部分でのみ延伸される。本実施の形態に係る延伸装置5によれば延伸間距離を短くすることができるので、ネックインを充分に抑制することができる。
延伸装置5で一軸延伸されたフィルム11を案内ロールA、ニップロールNを経由して補色槽6に導く。フィルム11を補色槽6の溶液6aに浸漬して色相調整する。フィルム11を、ニップロールNを経由して第1の乾燥装置7に導く。
フィルム11を、水切りロール51、51で引き取るときに水切りして、大部分の水滴を除く。わずかに付着して残った水滴も、エアーナイフ52、52によって吹き飛ばす。このようにしてフィルム11の表面に付着した水滴を除去した後、フィルム11を乾燥用ロール53に巻き付ける。乾燥用ロール53のロール面を所定の温度になるように制御してフィルム11を加熱すると共に、エアーノズル54からフィルム11に乾燥用空気を吹き付ける。乾燥用空気と乾燥用ロール53の熱とによって、フィルム11は乾燥用ロール53のロール面に密着しながら乾燥する。フィルム11はロール面によって幅方向の収縮が規制されるので、乾燥時に発生するネックインが抑制される。フィルム11を、ニップロール55、案内ロール57を経由して第2の乾燥装置8に送り出す。なお、第1の乾燥装置7でフィルム11を完全に乾燥しても良いが、本実施の形態においては、第1の乾燥装置7においては水分含有率が約30%になるようにフィルム11を乾燥している。水分含有率が30%以下になると、その後従来周知の方法でフィルムを乾燥しても生じるネックインは比較的小さいからである。
第2の乾燥装置8で、従来周知のようにフィルム11を乾燥すると偏光フィルムが得られる。得られた偏光フィルムを、図に示されていない巻き取り機で巻き取る。あるいは、他の装置に送って、所定の強度を得ると共に湿度から保護するため、トリアセチルセルロース(TAC)等からなる保護層を貼り合わせる。
図3には、第2の実施の形態に係る延伸装置5’が示されている。第1の実施の形態に係る延伸装置5の構成要素と同じような要素には、同じ参照番号を付けて詳しくは説明しない。第2の実施の形態に係る延伸装置5’においては、第2の延伸ロールと第2のニップロールの位置が、第1の実施の形態に係る延伸装置5と異なっている。すなわち、第2の延伸ロール22aと第2のニップロール32aは共に大気中に設けられている。当業者であれば容易に理解できるので説明はしないが、このようにしても、実質的な延伸間距離は短い。図において点線のロールで示されているように、第2の延伸ロール22bと第2のニップロール32bを共に溶液15a中に没しても良い。このようにしても、同様に実質的な延伸間距離は短い。第2の実施の形態に係る延伸装置5’によっても、第1の実施の形態に係る延伸装置5と同様に、ネックインを充分に抑制して幅広の偏光フィルムを得ることができる。
図4には、第3の実施の形態に係る延伸装置5’’が示されている。第1の実施の形態に係る延伸装置5の構成要素と同じような要素には、同じ参照番号にダッシュ「’」を付けて詳しくは説明しない。第3の実施の形態に係る延伸装置5’’は、第1の実施の形態に係る延伸装置5が変形された装置になっている。すなわち、第1の実施の形態に係る延伸装置5において、第2の延伸ロール22’の下流に、第2の延伸ロール22’に隣接するように第5の延伸ロール25が設けられている。従って、第3の実施の形態に係る延伸装置5’’においては、第2、5の延伸ロール22’、25の間でも一軸延伸することができる。
本実施の形態に係る偏光フィルム製造装置1を使用して、一軸延伸して偏光フィルムS1を得た。比較のために、第1〜4の延伸ロールを完全に溶液中に没した状態で一軸延伸して、乾燥用ロールを用いないで乾燥して偏光フィルムS2を得た。すなわち、偏光フィルムS2は、従来周知の湿式延伸によって一軸延伸し、従来周知の乾燥方法によって乾燥させて得た。製造条件と比較結果を下記表にまとめる。
上記実施例1から、従来周知の湿式延伸方法および乾燥方法で得られる偏光フィルムS2と、ほぼ同等の光学特性を有するにも拘わらず、幅広の偏光フィルムS1が得られることが分かった。偏光フィルムの幅については、従来周知の湿式延伸方法および乾燥方法によっては、原反の幅の約50%の幅の偏光フィルムしか得られなかったのに対して、本実施の形態に係る偏光フィルムの製造方法では、原反の幅の約70%の偏光フィルムが得られることが分かった。
本発明の偏光フィルム製造装置は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、第1の実施の形態に係る延伸装置5においては、第2、3の延伸ロール22、23の間に設けられている案内ロール36は、完全に溶液中に沈められているように説明されているが、案内ロール36は大気中に設けても良く、ロール面の一部だけを溶液中に沈めても良い。また、延伸ロールは、特に温度調節するようには説明されていないが、フィルムを加熱するために延伸ロールの内部に加熱体を設けて、延伸ロール全体を加熱するように実施することもできる。このように実施すると、フィルムはより延伸されやすい。ロールの径についても変形が可能であり、図には延伸ロールと対になるニップロールはロールの径が異なっているように描かれているが、同じ径で構成することもできる。また、延伸槽において一部のロール面を大気中に露出しながら溶液中に漬けるロールは、延伸ロールの代わりにニップロールでもよい。さらには、乾燥装置において乾燥用ロールは2本以上設けても良い。乾燥用ロールを2本設けて、それぞれの乾燥用ロールに巻き付けるフィルムの面を変えると、フィルムを両面から乾燥することができるので、均一に乾燥することができる。
本発明の偏光フィルム製造装置によると、ネックインを抑制して幅広のフィルムを得ることができるので、偏光フィルム以外の他の用途のフィルムの製造にも適用可能である。
1 偏光フィルム製造装置 2 膨潤槽
3 染着槽 4 架橋槽
5 延伸装置 6 補色槽
7 第1の乾燥装置 8 第2の乾燥装置
10 原反 11 フィルム
15 延伸槽 15a 溶液
21、22、23、24 第1〜4の延伸ロール
31、32、33、34 第1〜4のニップロール
52、52 エアーナイフ
53 乾燥用ロール
54 エアーノズル
3 染着槽 4 架橋槽
5 延伸装置 6 補色槽
7 第1の乾燥装置 8 第2の乾燥装置
10 原反 11 フィルム
15 延伸槽 15a 溶液
21、22、23、24 第1〜4の延伸ロール
31、32、33、34 第1〜4のニップロール
52、52 エアーナイフ
53 乾燥用ロール
54 エアーノズル
Claims (6)
- ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールからなるポリビニルアルコール系のフィルムを、二色性物質または二色性染料で染着して、所定の溶液に浸漬しながら一軸延伸して偏光フィルムを得る、偏光フィルムの製造方法であって、
前記フィルムを、一対のロールで挟んで送り出すと共に、前記一対のロールよりも下流側に配置され、前記一対のロールの周速度よりも大きな周速度で駆動される他の一対のロールで挟んで引き取って一軸延伸するとき、
前記フィルムを大気中で前記一対のロールで挟み込み、そして前記所定の溶液中に導くことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法。 - 請求項1に記載の方法において、前記一軸延伸を複数回繰り返すことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法。
- 請求項1、2のいずれかの項に記載の方法において、前記一軸延伸した前記フィルムを、乾燥用のロールに巻き付けて乾燥することを特徴とする、偏光フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールからなるポリビニルアルコール系のフィルムを、二色性物質または二色性染料で染着して、所定の溶液に浸漬しながら一軸延伸して偏光フィルムを得る、偏光フィルムの製造装置であって、
該製造装置は、所定の溶液が満たされた延伸槽と、フィルムを挟んで送る第1の一対のロールと、前記第1の一対のロールの下流側に配置され、前記フィルムを挟んで前記第1の一対のロールより速い周速度で駆動される第2の一対のロールとからなる延伸装置を備え、
前記第1の一対のロールの一方のロールは、そのロール面の一部は大気中に露出し、他の部分は前記溶液の溶液中に浸されるように前記延伸槽に設けられ、
前記第1の一対のロールの他方のロールは、前記第1の一対のロールの一方のロール面に接する位置が大気中に位置するように前記延伸槽に設けられていることを特徴とする、偏光フィルムの製造装置。 - 請求項4に記載の製造装置において、フィルムを挟んで送る一対のロールが上流側から下流側に向かって複数段にわたって設けられ、これらの一対のロールは下流側ほど速い周速度で駆動されるようになっていると共に、
これらの一対のロールの一方のロールは、そのロール面の一部は大気中に露出し、他の部分は前記溶液の溶液中に浸された状態で前記延伸槽に設けられ、そして前記一対のロールの他方のロールは前記一対の一方のロール面に接する位置が大気中に位置するように前記延伸槽に設けられていることを特徴とする、偏光フィルムの製造装置。 - 請求項4、5のいずれかの項に記載の製造装置において、前記延伸装置の下流には、一軸延伸されたフィルムを乾燥する乾燥装置が設けられ、
前記乾燥装置は、温度調節されてフィルムが巻き付けられるようになっている乾燥用のロールと、前記乾燥用のロールのロール面に乾燥用空気を吹き付けるエアーノズルとを備えていることを特徴とする、偏光フィルムの製造装置。
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