JP2009283276A - リチウム二次電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウムの析出による電池容量の低下が防止されて高寿命化を実現でき、かつ高い出力を安定的に確保し得るリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によって提供されるリチウム二次電池の製造方法は、正極活物質を含む正極と負極活物質を含む負極とを備える電極体と、リチウムイオンを含む電解質とを電池ケースに収容したリチウム二次電池を用意すること、前記用意したリチウム二次電池に対して室温域の下で所定の電圧値まで充電処理を行うこと、前記充電処理の後、前記リチウム二次電池を、室温域またはそれ以下の温度域の下で12時間〜80時間保持すること、および前記室温域またはそれ以下の温度域下での保持処理の後、前記リチウム二次電池を、40℃〜65℃の高温域の下で少なくとも6時間保持すること、を包含する。
【選択図】図3

Description

本発明は、リチウム二次電池の製造方法、特に車両搭載用として好適なリチウム二次電池の製造方法に関する。
近年、リチウム二次電池、ニッケル水素電池その他の二次電池は、車両搭載用電源、あるいはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく利用できるものとして期待されている。
リチウムイオン電池は、一般的には、リチウム含有酸化物(典型的にはリチウム含有遷移金属酸化物、例えばニッケル酸リチウム(LiNiO))を正極活物質として含む正極と、グラファイト等の炭素系材料を負極活物質として含む負極を備える電極体と、リチウムイオンを含む非水系液体電解質とを電池ケースに収容することにより構築される。
かかる電池の構築後、典型的には、該電池を実際に使用可能な状態に調整するために所定条件での最初の充放電処理(コンディショニング処理)が施される。また、自己放電量に相当し得る初期の電池容量低下(初期劣化)が大きい電池の選別や出力特性等の電池性能の安定化等を目的として、上記コンディショニング処理の実施前に所定条件の環境下で上記リチウムイオン電池を保持(放置)するエージング処理が施される。かかるエージング処理として、例えば特許文献1では、構築されたリチウムイオン電池の負極電位の経時変化をモニタリングしながら、所定温度下で該電池を保持している。また、特許文献2では、構築されたリチウムイオン電池に対して初期充電を行った後に1週間〜1か月間保持している。
特開2002−298925号公報 特開2006−79857号公報
ところで、リチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)を高出力電源として自動車等の車両に搭載した場合、該リチウム二次電池の充放電は、例えば数十アンペア(A)以上の大電流(ハイレート)で急速に実施されることが望ましい。しかし、従来のリチウム二次電池では、ハイレートな充電により負極電位が低下してリチウム析出電位(酸化還元電位)を下回り、正負極間で授受されるリチウムイオンの一部が、例えば炭素系材料等からなる負極表面で還元されてリチウムとして析出することにより、電池容量(充電容量)が低下する虞がある。上記特許文献1,2に係るエージング処理が施されたリチウム二次電池においても、ハイレート充放電を実施した場合には負極にリチウムが析出する虞がある。なお、上記負極にリチウムが析出し得る原因として、例えば、上記負極の表面に生じて該表面を不活性化・安定化させリチウムイオンの負極材料(炭素系材料)への挿入および脱離を容易にかつ円滑にさせ得るSEI(Solid Electrolyte Interface)の形成が不十分であるか、該SEIが均質に形成されていないこと等が挙げられる。
そこで本発明は、ハイレート充放電をし得る上記リチウム二次電池の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、リチウム二次電池の製造方法であって、リチウムの析出による電池容量の低下が防止されて高寿命化を実現でき、かつ高い出力を安定的に確保し得るリチウム二次電池の製造方法を提供することである。
上記目的を実現するべく本発明によって提供されるリチウム二次電池の製造方法は、以下の工程を包含する。すなわち、かかる方法は、正極活物質を含む正極と負極活物質を含む負極とを備える電極体と、リチウムイオンを含む電解質とを電池ケースに収容したリチウム二次電池を用意すること、前記用意したリチウム二次電池に対して室温域の下で所定の電圧値まで充電処理を行うこと、前記充電処理の後、前記リチウム二次電池を、室温域またはそれ以下の温度域の下で12時間〜80時間保持すること、および前記室温域またはそれ以下の温度域下での保持処理の後、前記リチウム二次電池を、40℃〜65℃の高温域の下で少なくとも6時間保持すること、を包含する。
すなわち、かかる製造方法は、リチウム二次電池を用意する「用意工程」と、該電池を室温域の下で行う「充電処理工程」と、該リチウム二次電池を室温域またはそれ以下の温度域下で保持する「室温保持処理工程」、および上記リチウム二次電池を上記高温域下で保持する「高温保持処理工程」を包含している。
かかる製造方法によれば、用意(典型的には構築)されたリチウム二次電池に対して、室温域下の上記充電処理と、40℃〜65℃の高温域下で保持する上記高温保持処理との間に、室温域またはそれ以下の温度域の下で、(典型的には上記充電処理終了時の電圧値を維持した状態で)12時間〜80時間保持する「室温保持処理」を導入する。このことにより、当該室温保持処理の過程で上記リチウム二次電池の負極上にSEIが均質に形成され得る。このため、かかるリチウム二次電池では、サイクル試験実施後も負極へのリチウムの析出が抑制されて電池容量の低下が防止され、良好なサイクル特性を備え得る。例えば、上記高温保持処理の後、−15℃の温度条件で165Aの電流値で0.1秒間の充放電処理を900サイクル実施した後の電池容量は、該充放電処理の実施前の約90%以上に維持され得る。
また、上記充電処理および室温保持処理の過程において、電池ケースに収容された電解質等が(典型的には還元反応により)分解されて分解物が生成し、該分解物が正負極間でのリチウムイオンの授受(挿入および脱離)を阻む抵抗物質として正極表面に吸着および堆積し得る。しかし、上記高温保持処理の実施により、上記抵抗物質は正極から除去され得る。したがって、かかる方法により製造されるリチウム二次電池では、リチウム析出の抑制により電池容量の低下が防止されて良好なサイクル特性を備え得るとともに、正負極間のリチウムイオンの挿入・脱離が効率良く行われ、高い出力(放電出力)を確保できる高出力特性を備え得る。
なお、本明細書において「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンに伴う電荷の移動(リチウムイオンの授受)により充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。
また、本明細書において「室温域」とは、典型的には常温とされる温度領域をいい、該常温とは、JIS Z 8703−1983に規定する温度15級に準拠し、20℃±15℃(例えば10℃〜30℃、好ましくは20℃〜30℃)を指すものとする。
ここで開示される製造方法は、他の側面として、前記用意(典型的には構築)されたリチウム二次電池の調整方法として提供できるものである。すなわち、かかる調整方法は、正極活物質を含む正極と負極活物質を含む負極とを備える電極体と、リチウムイオンを含む電解質とを電池ケースに収容したリチウム二次電池を用意すること、前記用意したリチウム二次電池を室温域の下で所定の電圧値まで充電処理を行うこと、前記充電処理の後、前記リチウム二次電池を、室温域またはそれ以下の温度域の下で12時間〜80時間保持すること、および前記室温またはそれ以下の温度域下での保持処理の後、前記リチウム二次電池を40℃〜65℃の高温域の下で少なくとも6時間保持すること、を包含する。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様として、前記室温域またはそれ以下の温度域下での保持処理は、40時間〜60時間行う。かかる方法によれば、該方法により得られるリチウム二次電池では、より高い次元で電池容量の低下が防止されるとともに、高く安定な出力を得ることができる。例えば、上記高温保持処理後に−15℃の温度条件で165Aの電流値で0.1秒間の充放電処理を900サイクル実施した後の電池容量は、上記充放電処理の実施前の約92%以上に維持され得る。また、かかる態様のリチウム二次電池を30℃の温度条件下でSOC(充電状態;State of Charge)が満充電時(あるいは該電池の定格容量)の60%になるまで充電し、このときの電圧値(例えば3.73V)から3.0Vまで10秒間のうちに放電させると、その出力は約585W以上の高出力となり得る。
また、ここで開示される製造方法の他の好ましい一態様として、前記充電処理は、前記リチウム二次電池の電圧値が3.3V〜4.2Vの範囲内に至った時点で終了する。より好ましくは3.9V〜4.1Vの範囲内である。かかる態様によれば、処理対象のリチウム二次電池に対して初期劣化を適切に進行させ得るとともに、電池性能を効果的に安定化させ得る。すなわち、かかる電圧範囲で充電処理を行うことにより、いわゆるエージング処理としての効果を最大限に実現することができる。また、当該充電処理の終了時における電圧値、すなわち該電圧値が上記範囲内に保たれた状態(あるいは自己放電等によって該電圧値よりもわずかに低下した状態で)その後の室温保持処理に移行することにより、該室温保持処理の効果がより一層高まり、より均質なSEIが負極上に形成され得る。
また、ここで開示される製造方法の他の好ましい一態様として、前記高温域下での保持処理は、6時間〜24時間行う。かかる態様によれば、40℃〜65℃の高温域にリチウム二次電池を上記時間範囲内で保持することにより、正極に吸着(堆積)し得る抵抗物質を除去する効果が高まるとともに、上記のいわゆるエージング処理としての効果もより一層高まる。また、上記高温域下で保持することにより、室温域またはそれ以下の温度域下で保持するよりも上記効果(特にエージング処理効果)が早期に奏され得る。
ここで開示される製造方法の他の好ましい一態様として、前記電解質は、非水電解質である。非水電解質とは、典型的には非水系液体電解質であって、非水溶媒にリチウム塩を支持塩として溶解させた非水溶媒系電解液である。かかる態様によれば、水溶液系電解質のように溶媒が一部分解されても、その程度は水溶液系電解質に比べて小さく、また、非水溶媒が一部(典型的には還元反応によって)分解されることにより、リチウムイオンの挿入および脱離を容易にかつ円滑にさせ得る好適なSEIが負極上に形成され得る。また、このことにより、好ましい非水溶媒は上記SEIが形成し易くなるような負極材料と電解質との組み合わせにより適宜選択され得る。このような非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)や、ECとジエチルカーボネート(DEC)あるいはECとジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒等、が挙げられる。
さらに、本発明は、ここで開示される製造方法を採用することにより得られるリチウム二次電池を提供する。すなわち、かかるリチウム二次電池は、ここで開示される何れかの製造方法により得られるリチウム二次電池である。かかる電池では、上記高温保持処理後に−15℃の温度条件で165Aの電流値で0.1秒間の充放電処理を900サイクル実施した後の電池容量は、上記充放電処理実施前の約90%以上に維持され、良好なサイクル特性を備えて高耐久性(高寿命化)を実現し得る。これに加えて、かかる電池は、良好な出力特性を備えて高い出力を安定的に供給し得る。
また、本発明によると、ここで開示されるリチウム二次電池、またはここで開示されるいずれかの製造方法により製造されたリチウム二次電池は、ハイレート充放電を行ってもリチウムの析出が抑制されて電池容量の低下を防止し、高寿命化を実現し得るとともに、良好な(高い)出力特性も備え得ることから、車両に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に利用され得る。したがって、本発明によれば、かかるリチウム二次電池を備える車両(例えば自動車)が提供される。
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、リチウム二次電池の構成や構築手順、電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるリチウム二次電池の製造方法は、リチウム二次電池を構築あるいは用意し、この用意したリチウム二次電池を室温域の下で所定電圧値に至るまで充電処理を行い、次いで室温域の下で上記リチウム二次電池を所定時間保持(例えば放置)し、該時間経過後にはさらに高温域の下で所定時間保持する方法である。ここに開示される方法および技術は、正極活物質を含む正極および負極活物質を含む負極を備える電極体とリチウムイオンを含む電解質とを電池ケースに収容した構成のリチウム二次電池に好ましく適用され得るものである。また、かかるリチウム二次電池は、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現されるものであればよく、電池ケース、電極体、または電解質の種類は特に限定されない。例えば電池ケースは直方体状、扁平形状、円筒形状等の形状であり得る。
上記正極活物質としては、リチウムイオンを挿入および脱離(吸蔵および放出)可能な材料が用いられ、従来からリチウム二次電池に用いられる物質(例えば層状構造の酸化物やスピネル構造の酸化物)の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、リチウムニッケル系複合酸化物(リチウムとニッケルとを構成金属元素として含む酸化物であって、ニッケルサイトの一部がコバルトやアルミニウム等の他の金属元素で置換されたものを含む。典型的にはLiNiO)、リチウムコバルト系複合酸化物(典型的にはLiCoO)、リチウムマンガン系複合酸化物(典型的にはLiMn)等のリチウム含有遷移金属酸化物(リチウム含有複合酸化物)が挙げられる。また、一般式がLiMPO(MはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種以上の元素;例えばLiFePO、LiMnPO)で表記されるオリビン型リン酸リチウムを上記正極活物質として用いてもよい。
ここに開示される技術は、かかる正極活物質を含む正極と後述の負極活物質を含む負極とを用いて構築されるリチウム二次電池であって、両極間の電圧(端子間電圧)が凡そ3V〜4.2Vの範囲で使用されるリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)に対して好ましく適用され得る。
上記正極は、典型的には上記のような正極活物質を主成分とする層(正極活物質層)が正極集電体に保持(付与)された構成である。該正極集電体として、良好な導電性を有する金属製の導電性部材が好ましく用いられる。特に、アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金(アルミニウム合金)製の正極集電体の使用が好ましく、例えば、厚さ5μm〜30μm(好ましくは10μm〜30μm)程度のアルミニウム箔を正極集電体として好ましく用いることができる。正極集電体の形状は、得られた正極を用いて構築されるリチウム二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。なお、種々の形状の集電体自体の作製は、リチウム二次電池の分野において従来公知の方法であればよく、本発明を特徴付けるものではない。ここに開示される技術は、例えばシート状もしくは箔状の集電体に正極活物質層が保持された形態の正極を備えるリチウム二次電池に好ましく適用され得る。かかるリチウム二次電池の好ましい一態様として、捲回型の電極体を備えるリチウム二次電池が挙げられる。
上記正極活物質層は、例えば、正極活物質を適当な溶媒に分散させたペーストまたはスラリー状の組成物(正極活物質組成物)を正極集電体に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。かかる組成物を正極集電体(好ましくは箔状もしくはシート状)に付与するにあたっては、従来公知の方法と同様の技法を適宜採用することができる。例えば、適当な塗布装置を使用して、集電体の表面(片面または両面)に所定量の上記組成物を層状に塗布すればよい。また、上記溶媒(分散媒)としては水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒のいずれも使用することができる。
上記正極活物質組成物は、正極活物質および上記溶媒のほかに、一般的なリチウム二次電池において正極活物質層の形成に用いられる組成物に配合され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有し得る。かかる材料の例として、種々のカーボンブラック、ニッケル等の導電材、および/または、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のポリマー材料からなるバインダおよび粘度調整材(典型的には増粘材)が挙げられる。また、かかる正極活物質組成物の構成成分の配合比については、従来のリチウム二次電池における正極活物質層の形成に用いられる組成物と同様の配合比であればよく、特に限定されない。
一方、上記負極活物質としては、リチウムイオンを挿入および脱離可能な材料(好ましくは粒子状)が用いられ、従来からリチウム二次電池に用いられる種々の物質を特に限定することなく使用することができる。ここに開示される技術において好適な負極活物質としては、天然黒鉛、高配向性グラファイト(HOPG)等のグラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等を使用できる。電池の高電圧(高出力)化を実現するべく、グラファイト(黒鉛)等の炭素系材料(カーボン粒子)が好ましい。また、上記負極活物質(例えばグラファイトのカーボン粒子)としては、例えば平均粒径が凡そ5〜50μm(好ましくは凡そ5〜15μm)のカーボン粒子の使用が好ましい。このように比較的小粒径のカーボン粒子は、単位体積当たりの表面積が大きいことから、より急速充放電(例えば高出力放電)に適した負極活物質となり得る。したがって、かかる負極活物質を有するリチウム二次電池は、例えば車両搭載用のリチウム二次電池として好適に利用され得る。
ここに開示される技術における負極は、典型的には、このような負極活物質を主成分とする層(負極活物質層)が負極集電体に保持(付与)された構成である。該負極集電体としては、良好な導電性を有する金属製の導電性部材が好ましく用いられる。特に、銅(Cu)または銅を主成分とする合金(銅合金)製の負極集電体の使用が好ましく、例えば、厚さ5μm〜30μm(好ましくは10μm〜30μm)程度の銅箔を負極集電体として好ましく用いることができる。負極集電体の形状は、上述した正極集電体と同様に、得られた負極を用いて構築されるリチウム二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限されない。ここに開示される技術は、例えばシート状もしくは箔状の集電体に負極活物質層が保持された形態の負極を備えるリチウム二次電池(例えば捲回型の電極体を備えるリチウム二次電池)に好ましく適用され得る。
上記負極活物質層は、例えば、負極活物質を適当な溶媒に分散させたペーストまたはスラリー状の組成物(負極活物質組成物)を負極集電体に付与(典型的には塗布)し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。かかる組成物を負極集電体(好ましくは箔状もしくはシート状)に付与するにあたっては、正極活物質組成物を正極集電体に付与する場合と同様に、従来公知の方法と同様の技法を適宜採用することができる。上記溶媒(負極活物質の分散媒)としては水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒のいずれも使用可能である。例えば、上記溶媒が水系溶媒(水または水を主体とする混合溶媒)である負極活物質組成物を好ましく採用することができる。
上記負極活物質組成物は、負極活物質および上記溶媒のほかに、一般的なリチウム二次電池用負極において負極活物質層の形成に用いられる組成物に配合され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有し得る。かかる材料の例としてバインダおよび粘度調整材(増粘材)が挙げられ、例えば、正極活物質組成物に含有され得る材料として例示したポリマー材料と同様のものを好適に使用することができる。また、かかる負極活物質組成物の構成成分の配合比については、従来のリチウム二次電池における負極活物質層の形成に用いられる組成物と同様の配合比であればよく、特に限定されない。
ここで開示される技術における電解質は、リチウムイオンを含む非水電解質(典型的には非水系液体電解質)であって、非水溶媒(有機溶媒)にリチウム塩を支持塩として溶解させた非水溶媒系電解液であり、例えば一般的なリチウム二次電池に用いられる電解質を用いることができる。かかる電解質としてより好ましくは、電解質中のリチウムイオンの正負極間の移動速度(伝導度)が大きく、該リチウムイオンの正負極での挿入および脱離を容易にかつ円滑にし得るものである。また、リチウムイオンの負極(負極活物質)への円滑な挿入および脱離を可能にし得るSEIは、リチウム二次電池の充放電時において負極側に生じ得る電解質の分解生成物から形成され得る。このため、かかる電解質は負極活物質(例えばグラファイト等の炭素系材料)表面において好適なSEIを形成し得るものであることが好ましい。このような電解質を構成する非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート等の一種または二種以上(例えばECとDECとの混合系あるいはECとDMCとの混合系)を好ましく使用することができる。また、支持塩であるリチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiBF、LiCFSO等の一種または二種以上を使用することができる。例えば、ECとDMCとを1:1の質量比で含む混合溶媒に支持塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を約1Mの濃度で含有させた電解液等を好ましく用いることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るリチウム二次電池の製造方法の一実施形態、および当該方法により製造されるリチウム二次電池の一実施形態について、角型形状のリチウムイオン電池10を例として説明する。図1は、本実施形態に係るリチウム二次電池(リチウムイオン電池10)の模式的な全体斜視図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、後述の実施例の例5および例6における900サイクル試験の評価結果および出力特性の評価結果を示したグラフである。図4は、本実施形態に係る電池を備えた車両を模式的に示す側面図である。なお、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
ここで開示される製造方法は、上記したように、リチウム二次電池を用意する「用意工程」と、該電池を室温域下で所定電圧値まで充電する「充電処理工程」と、室温域またはそれ以下の温度域の下で所定時間保持する「室温保持処理工程」、および高温域下で所定時間保持する「高温保持処理工程」を包含している。
上記用意工程では、正極活物質を含む正極と負極活物質を含む負極とを備える電極体と、リチウムイオンを含む電解質とを電池ケースに収容したリチウム二次電池を用意(典型的には構築)する。本実施形態に係るリチウム二次電池、すなわち角型形状のリチウムイオン電池10であって、ここで開示される技術を適用し得る対象であるリチウムイオン電池10は、図1および図2に示されるように、正極および負極を備えた扁平な形状の電極体30が、図示しない電解質とともに、該電極体30の形状に対応した扁平な箱状の電池ケース11に収容された構成を有する。かかるリチウムイオン電池10を構築する際は、例えば以下のようにして行うことができる。
電池ケース11は、一端に開口部を有する扁平な有底四角筒状の筐体12と、その開口部に取り付けられて該開口部を塞ぐ蓋体13とを備える。電池ケース11を構成する材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましく用いられる。あるいは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料製であってもよい。例えば、筐体12および蓋体13がいずれもアルミニウム製である電池ケース11を好ましく使用することができる。
本実施形態に係る扁平形状の電極体30は捲回型の電極体(捲回電極体)であり、長尺シート状の正極シートと負極シートとを典型的には二枚の長尺シート状のセパレータ(セパレータシート)とともに積層して長手方向に捲回(典型的には略円形に捲回)し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって作製し得る。このようにシートの積層物を捲回した後に扁平に押しつぶす態様に代えて、例えば上記積層物を当初から扁平な形状(略長円形、楕円形等)になるように捲回してもよい。
正極シートおよび負極シートは、それぞれ、長尺シート状の集電体上に活物質層が形成された構成を有する。該活物質層を、集電体の幅方向の一端(長手方向に沿う一方の端部)を除いた帯状の領域に形成し、上記幅方向の一端は上記活物質層を形成させずに上記集電体を露出させ、活物質層非形成部分とする。正負の各電極シートとセパレータシートとを、両電極シートの活物質層が重なり合うように、かつ正極シートの活物質層非形成部分と負極シートの活物質層非形成部分とがセパレータの幅方向の一端および他端からそれぞれはみ出すように、正負の電極シートが幅方向に位置をややずらして積層してこれら積層体を捲回する。その結果として、捲回電極体30の捲回軸方向の一端には、正極シートの活物質層非形成部分が積層状態で捲回コア部分(すなわち両電極シートの活物質層とセパレータとが密に捲回された部分)から外方にはみ出し、上記捲回電極体30の他端には、負極シートの活物質層非形成部分が捲回コア部分から外方にはみ出している。各はみ出し部分に外部接続用の正極端子14および負極端子16の一端を接続する。電極端子14,16の他端を容器11(蓋体13)の外部に引き出す。
捲回電極体30を構成する材料および部材自体については、上記したように従来のリチウムイオン電池に備えられる電極体と同様のものを用いることができる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質樹脂シート(フィルム)を好適に使用し得る。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PP層の両面にPE層が積層された三層構造)であってもよい。例えば、厚さ5μm〜30μm程度の合成樹脂製(例えばポリエチレン等のポリオレフィン製)の多孔質セパレータシートを好ましく使用し得る。なお、電解質として固体電解質もしくはゲル状電解質を使用する場合には、一般的に用いられている上記のような樹脂製(例えばポリプロピレン製)のセパレータが不要な場合(すなわちこの場合には電解質自体がセパレータとして働く。)があり得る。
上記のようにして得られた電極体30を電池ケース11の筐体12の開口部を介して筐体12に収容する。次いで、例えば電池ケース11(筐体12)に形成された図示しない注液口から適当な電解質を注入する。そして蓋体13により筐体12を封止することによってリチウムイオン電池10を構築する。
次いで上記充電処理工程では、上記のようにして用意(構築)したリチウムイオン電池10(リチウム二次電池)に対して、該電池の正極(正極端子14)と負極(負極端子16)の間に外部電源を接続し、室温域の下で所定の電圧値まで充電処理を行う。
ここで「室温域」とは、上記したように典型的には常温とされる温度領域をいい、20℃±15℃を指すものとする。ここで、かかる充電処理においては、リチウムイオン電池10が曝される温度として、例えば5℃〜35℃の温度域から選択することができ、好ましくは10℃〜30℃、より好ましくは20℃〜30℃が挙げられる。また本実施形態にかかる充電処理は、20℃〜30℃の温度域の下で行なわれるが、かかる充電処理における温度は、実際に使用され得る環境に合わせて適宜変更することが可能であり、上記室温域の低限とされる5℃未満の温度下、すなわち室温域以下の温度の下で行ってもよい。
上記所定の電圧値とは、3.3V〜4.2Vの範囲内にある値であることが好ましく、特に3.9V〜4.1Vの範囲内にあることが好ましい。かかる電圧範囲は、上記リチウムイオン電池10のSOCが満充電時(あるいは該電池の定格容量)の凡そ5%〜95%(好ましくは70%〜90%)の範囲にあるときに示し得る電圧値の範囲である。SOC5%未満で充電処理を行うと、リチウムイオン電池10への充電量が十分でなく、処理対象のリチウムイオン電池10の初期劣化が適切に進行しない。また、SOC95%を超えて充電処理を行うと、満充電に近くなると該電池の電圧値は急上昇し得るため、該電池を劣化させる虞がある。また、かかる充電終了時の電圧値は、該充電処理後の室温保持処理時に上記リチウムイオン電池10を保持させておく際のSOCの値により適宜設定され得る。上記充電処理の充電レートについては、従来のリチウム二次電池(リチウムイオン電池)を初期充電(またはコンディショニング処理における最初の充電)するときに一般的に採用され得る従来公知の充電レートと同様でよい。例えば、充電開始から少なくともSOC20%に至るまでの間は、1/3C以下(典型的には、1/20C〜1/3C)の充電レート(電流値)で行うことが好ましい。より好ましくは1/5C以下(典型的には、1/20C〜1/5C)である。かかる充電レートで上記範囲内の電圧値に至るまで充電を行えばよい。なお、充電レートに関して「C」とは、電池の全容量を充電する際の速さ、すなわち充電率をいう。例えば充電レートに関して1Cとは電池を1時間で満充電状態(SOC100%)とする電流値で表すことができる。
なお、上記充電処理は、例えば上記リチウムイオン電池10における正極端子14と負極端子16との間に電圧計を接続し、この電圧計により測定電圧値をモニタリングし、予め設定された所定の電圧値に到達した時点で終了すればよい。
次いで、上記室温保持処理工程では、上記充電処理により所定の電圧値まで(すなわち所定のSOC(例えばSOC80%)まで)充電されたリチウムイオン電池10を、室温域またはそれ以下の温度域の下で保持(例えば放置)する。
室温域またはそれ以下の温度域とは、上記したように例えば20℃±15℃またはそれ以下の温度域であって、上記充電処理と同様の室温域でよく、またはそれよりも低温域(例えば−30℃〜5℃)であってもよい。
かかる室温保持処理工程において、処理対象のリチウムイオン電池10の保持時間(処理時間)は、12時間〜80時間が好ましく、より好ましくは20時間〜80時間であり、さらに好ましくは40時間〜60時間である。かかる保持時間が12時間未満では、保持時間が短すぎるためにリチウムイオン電池10の負極での均質なSEIの形成が不十分となり得る。また、かかる保持時間が80時間を超えると、電解質の分解が進み、特に正極側に吸着(堆積)し得る該電解質の分解物(抵抗物質)によって上記電池の内部抵抗が大きくなり過ぎ、上記電池の出力が低下し、また出力状態も不安定となり得る。
上記リチウムイオン電池10を上記温度域(すなわち室温域)に保持するには、該電池を処理する室内あるいは処理容器内の温度、すなわち上記電池の周囲の環境温度を上記温度域に調整しておけばよく、また温度調整方法は特に限定されない。
なお、室温保持処理工程の過程では、リチウムイオン電池10のSOCは、先の充電処理終了時の状態または自己放電等によりそれよりわずかに低下した状態となり得る。
次いで上記高温保持処理工程では、上記室温保持処理後のリチウムイオン電池10を、40℃〜65℃の高温域の下で保持する。
かかる高温保持処理工程において、上記リチウムイオン電池10の保持温度は40℃〜65℃であることが好ましい。かかる保持温度が40℃未満であると、電解質の分解物が正極に吸着(堆積)することにより生成する抵抗物質を除去する効果が低い。また、初期劣化の適切に進行させる効果および出力特性を安定化させる効果(いわゆるエージング効果)も低い。一方、上記保持温度が65℃を超えると、上記抵抗物質の除去効果あるいはエージング効果を得るために要する時間(即ち処理時間)は短縮され得るが、電解質の更なる分解を促進する虞がある。
また、かかる高温保持処理工程において、上記リチウムイオン電池10の保持時間は、少なくとも6時間が好ましく、好適には6時間〜24時間である。かかる保持時間が6時間未満であると、上記抵抗物質の除去に要する時間が短くなるため、該物質を十分に除去しきれない。また上記リチウムイオン電池10は40℃〜65℃の高温域の下で保持されるため、上記範囲の時間で保持すれば、上記抵抗物質の除去効果あるいは上記のいわゆるエージング効果は十分奏されるため、24時間を超えて保持しなくてもよい。また、上記保持時間は、保持温度が高いほど短縮され、保持温度が低いと長期化され得るので、両者をバランスさせて上記保持処理を行えばよく、例えば、保持温度が45℃で保持時間が10時間の高温保持処理は、好ましい処理条件(保持条件)の一つである。
なお、上記保持処理は一回の処理時に連続して行ってもよく、または2回以上の複数回に分けて断続的に行ってもよい。複数回に分けて行う場合には、保持時間の合計が上記範囲(すなわち6時間〜24時間)になるように各回の保持時間を設定すればよい。
上記保持処理対象のリチウムイオン電池10を上記の高温域下で保持する方法としては、従来公知の加熱手段を好ましく用いることができる。例えば、赤外線ヒーター等の熱源(加熱装置)を上記電池10に直接接触させて該電池10を上記高温域まで加熱してもよい。また、上記電池10を恒温装置等の加熱容器に収容し、該容器内を上記範囲内の所定温度に維持する(制御する)ことにより上記電池10を保持してもよい。
かかる高温保持処理の終了後は、上記充電処理と同じレートで放電処理を実施してもよく、次いでさらに上記充電処理と同じレートで充放電サイクルを数回繰り返してもよい。あるいは、該充放電サイクルの充放電レートとは異なるレートでコンディショニング処理を行ってもよい。
なお、上記室温保持処理工程および上記高温保持処理工程における雰囲気は特に限定されない。例えば、大気雰囲気、または窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス雰囲気等を好ましく採用することができる。
また、高温保持処理工程の過程においても、室温保持処理工程と同様にリチウムイオン電池10のSOCは先の充電処理終了時の状態または自己放電等によりそれよりもわずかに低下した状態となり得る。
以下の実施例によって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明の構成をかかる実施例として挙げたものに限定することを意図したものではない。
構築したリチウムイオン電池に対して、上記室温保持処理工程の保持時間の長さによって、充放電サイクル実施後の電池容量(サイクル特性)や出力特性に相違があるか否かを評価した。その具体的方法を以下に示す。
<例1;リチウムイオン電池の用意>
評価対象であるリチウム二次電池としてリチウムイオン電池を用意(構築)した。すなわち、正極活物質としてのLiNiOと、増粘材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの質量比が94:5:1となるように分散溶媒としてのイオン交換水に添加し、よく混合することによりペースト状の正極活物質層組成物を調製した。得られた正極活物質層組成物を、長さ2m、幅10cm、厚さ10μmのアルミニウム箔上に塗布し、ロールプレスによる処理を行って、該アルミニウム箔上に正極活物質層を形成してなる正極シートを作製した。
一方、負極活物質としての天然黒鉛と、増粘材としてのスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)を、これらの質量比が98:1:1となるように分散溶媒としてのイオン交換水に添加し、よく混合することによりペースト状の負極活物質組成物を調製した。得られた負極活物質組成物を、長さ2m、幅10cm、厚さ10μmの銅箔上に塗布し、ロールプレスによる処理を行って、該銅箔上に負極活物質層を形成してなる負極シートを作製した。
こうして得られた正極シートおよび負極シートを、長さ2m、幅11cm、厚さ30μmのポリプロピレン製の多孔質膜であるセパレータシート(2枚)とともに捲回し、次いで押し潰すことによってリチウムイオン電池用の扁平形状捲回電極体を作製した。
作製した捲回電極体に正負極それぞれのリード端子を溶接し、捲回電極体に対応する形状のアルミニウム製の扁平な箱形状の電池ケース(内容積:約100mL)に収容した。該ケースに適当量の電解液(質量比1:1であるエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒にリチウム塩として濃度1MとなるLiPFを溶解した非水電解液)を50mL注入し、封止した。このようにして同一のリチウムイオン電池を5個構築した。
<例2;充電処理の実施>
次いで、上記のようにして得られた5個のリチウムイオン電池に対して、25℃(室温)の温度条件の下で、1/5Cの充電レートで、電圧値(正負極端子間の電圧値)が0Vから4.0Vになるまで充電した。
<例3;室温保持処理の実施>
次いで、25℃(室温)の温度条件の下で、上記5個のリチウムイオン電池のそれぞれに対して、以下の保持時間で室温保持処理を行った。このようにして得られたリチウムイオン電池を、電池(1)〜(5)とした。
電池(1)および(2);室温保持時間を1.5時間とした。
電池(3);室温保持時間を24時間とした。
電池(4);室温保持時間を80時間とした。
電池(5);室温保持時間を96時間とした。
<例4;高温保持処理の実施>
上記のようにして得られた電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、45℃の高温条件の下で10時間の保持時間で高温保持処理を行った。
<例5;サイクル特性評価>
上記電池(1)〜(5)のそれぞれに対して以下の手順でサイクル試験を実施し、サイクル特性を評価した。
I.電池容量測定
まず、25℃の温度条件の下で、上記例2の充電レートと同じ放電レートで、上記電池(1)〜(5)を3.0Vになるまで放電した。
次に、該電池(1)〜(5)のそれぞれのサイクル試験実施前の電池容量を評価するため、電流5.0A、電圧4.1Vの定電流定電圧充電(CC/CV充電)を25℃の下で2時間実施した(電圧値が4.1Vに到達後は、該電圧値を維持して電流を減衰させた)。次いで30分間休止した後に、終止電圧が3.0Vになるまで、1Aの電流値で定電流放電を実施した。終止電圧が3.0Vになるまでに要した放電時間をその電池の「サイクル試験実施前の電池容量[Ah]」とした。
II.500サイクル試験
次に、上記電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、−15℃、165Aの電流値で0.1秒間の充電を行い、その後−15℃、165Aの電流値で0.1秒間の放電を行った。この充放電を1サイクル(cycle)として、500サイクルの充放電処理(500サイクル試験)を実施した。
次に、サイクル試験実施後の電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、上記Iと同様の測定手順で電池容量を求めた。このようにして得られた電池容量を「500サイクル試験実施後の電池容量[Ah]」とした。
III.900サイクル試験
さらに、上記電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、上記と同一条件の充放電サイクルを400サイクル追加し、合計で900サイクルの充放電処理(900サイクル試験)を実施した。
再び、サイクル試験実施後の電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、上記Iと同様の測定手順で電池容量を求めた。このようにして得られた電池容量を「900サイクル試験実施後の電池容量[Ah]」とした。
なお、上記サイクル試験は2回ずつ実施した。すなわち上記例1〜例5の一連の操作を2回ずつ繰り返してサイクル特性評価を行った。この結果を表1に示す。
Figure 2009283276
また、上記電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、「サイクル試験実施前の電池容量」と「500サイクル試験実施後の電池容量」とから、500サイクル試験実施後の電池容量の維持率(容量維持率)[%]を算出した。また、「サイクル試験実施前の電池容量」と「900サイクル試験実施後の電池容量」とから、900サイクル試験実施後の電池容量の維持率(容量維持率)[%]を算出した。500サイクル試験後および900サイクル試験後の各電池容量維持率の結果を1回目と2回目のサイクル試験ごとに表2に示す。また2回目に実施した900サイクル試験後の電池容量維持率の結果を図3に示す。なお、図3における縦軸は2回目の900サイクル試験実施後の容量維持率[%]を示し、横軸は室温保持処理時間(保持時間)[時間]を示す。
Figure 2009283276
<例6;出力特性評価>
上記例1〜4と同様の手順で、新たに出力特性評価用の電池(1)〜(5)を構築した。次いで、各電池(1)〜(5)の出力特性を評価するための試験として、以下に示す試験を実施した。かかる試験は、所定の充電レートでSOC60%の電圧値まで充電後、10秒間で3.0Vまで放電したときに出力される電力[W]を求めるものである。かかる試験について、具体的には以下に示すようにして実施した。
まず、例4の高温保持処理が終了した上記電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、25℃の温度条件の下で上記例2の充電レートと同じ放電レートで、上記電池(1)〜(5)を3.0Vになるまで放電した。
次に、上記電池(1)〜(5)のそれぞれに対して、30℃の温度条件の下で、2Cの充電率で定電流−定電圧充電を行い、SOC60%(約3.73V)になるまで充電した。次に、30℃の温度条件の下で、これらの電池(1)〜(5)のそれぞれに対して350W、550Wおよび650Wの3通りの電力値で3.0Vになるまで放電し、各電力値で3.0Vまで放電するのに要した時間(所要時間)を測定した。このようにして得られた上記所要時間と上記電力値との相関をプロットし、該プロットにより10秒間(の所要時間)における電力値を各電池に対して求めた。
上記のようにして得られた各電池(1)〜(5)のそれぞれの電力値(放電出力値[W])を表3および図3に示した。
Figure 2009283276
表1〜表3および図3に示されるように、室温保持処理時間(保持時間)が短い(例えば1.5時間)場合には、約585[W]以上の高い電力値(放電出力)を示して良好な出力特性が得られたが、逆に900サイクル試験実施後の電池の容量維持率は約82%と90%を下回った。一方、20時間以上の室温保持処理時間の場合には、上記容量維持率は約90%を上回り、かつ出力特性についても良好であった。一方、室温保持処理時間が80時間を越えると、得られる電池は、上記容量維持率が約92%を上回り良好なサイクル特性を有するが、出力特性については急激に悪化し、例えば96時間の室温保持処理時間では580[W]未満の出力(電力値)しか得られないことがわかった。また、図3に示されるように室温保持処理時間が40時間〜60時間である場合には、上記容量維持率(サイクル特性)および出力特性のいずれもが良好となり得ることがわかった。
上記実施例からも明らかなように、本発明によると、用意(構築)したリチウム二次電池を所定電圧値まで充電した後、高温域下で保持する前に室温域またはそれ以下の温度域下で所定時間保持することにより、サイクル試験実施後の電池容量の低下が防止されて良好なサイクル特性を有するとともに、高い出力を確保できて良好な出力特性をも有する好ましいリチウム二次電池を製造することができる。上記室温域下での保持時間が例えば20時間〜80時間であれば、例えば−15℃〜10℃のリチウムが析出し易い環境下で5C以上のハイレート充放電を行ってもリチウムの析出が抑制された好ましいリチウム二次電池を得ることができ得る。したがって、本発明によると、上記リチウム析出の抑制に伴う良好なサイクル特性と良好な出力特性とを高い次元で両立し得るリチウム二次電池を提供することができる。
したがって、本発明のリチウム二次電池または本発明の方法により製造されたリチウム二次電池は、特に自動車等の車両に搭載される車両搭載用電源として好適である。例えば、図4に示すように、本発明によって上記のように説明した構成のリチウム二次電池10を電源として備える車両1(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)を提供することができる。なお、本発明の製造方法は、他の側面として、用意したリチウム二次電池を上記のような良好な特性を備えた好ましい電池に調整し得る調整方法として提供され得るものである。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
本実施形態に係るリチウム二次電池の模式的な全体斜視図である。 図1のII−II線断面図である。 実施例の例5および例6における900サイクル試験の評価結果および出力特性の評価結果を示したグラフである。 本実施形態に係るリチウム二次電池を備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。
符号の説明
1 車両
10 リチウムイオン電池(リチウム二次電池)
11 電池ケース
12 筐体
13 蓋体
14 正極端子
16 負極端子
30 電極体

Claims (7)

  1. リチウム二次電池の製造方法であって、
    正極活物質を含む正極と負極活物質を含む負極とを備える電極体と、リチウムイオンを含む電解質とを電池ケースに収容したリチウム二次電池を用意すること、
    前記用意したリチウム二次電池に対して室温域の下で所定の電圧値まで充電処理を行うこと、
    前記充電処理の後、前記リチウム二次電池を、室温域またはそれ以下の温度域の下で12時間〜80時間保持すること、および
    前記室温域またはそれ以下の温度域下での保持処理の後、前記リチウム二次電池を、40℃〜65℃の高温域の下で少なくとも6時間保持すること、
    を包含する、リチウム二次電池の製造方法。
  2. 前記室温域またはそれ以下の温度域下での保持処理は、40時間〜60時間行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記充電処理は、前記リチウム二次電池の電圧値が3.3V〜4.2Vの範囲内に至った時点で終了する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記高温域下での保持処理は、6時間〜24時間行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記電解質は、非水電解質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られたリチウム二次電池であって、
    前記高温域下での保持処理後に−15℃の温度条件で165Aの電流値で0.1秒間の充放電処理を900サイクル実施した後の電池容量は、該充放電処理の実施前の約90%以上に維持される、リチウム二次電池。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたリチウム二次電池または請求項6に記載のリチウム二次電池を備える車両。
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