JP2010023402A - 平版印刷版用アルミニウム支持体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速輪転機による新聞オフセットカラー印刷において、版ずれの少ないCTP用平版印刷版材として使用することができる平版印刷版原版、および、該平版印刷版原版の製造に用いる平版印刷版用アルミニウム支持体の提供。
【解決手段】アルミニウム合金板の表面を粗面化処理して得られた平版印刷版用のアルミニウム支持体であって、粗面化処理後のアルミニウム支持体のJIS Z2241による引張試験(引張速度:2mm/分)における引っ張り強度が、170〜225MPaである、平版印刷版用アルミニウム支持体。
【選択図】なし

Description

本発明は、リスフィルムを介さずに赤外線レーザ光での直接描画、高速製版可能な、サーマルネガタイプまたはサーマルポジタイプの平版印刷版原版、及び該平版印刷版原版に用いる平版印刷版用アルミニウム支持体に関する。
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有する感光性平版印刷版(PS版)が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフィルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。
近年、画像情報を、コンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、そのようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザ光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すこと無く、直接印刷版を製造するコンピューター・トゥ・プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
大量に印刷物を作成する産業の一例である新聞印刷の分野においては、近年、カラー印刷が用いられることが多くなってきている。新聞印刷においてカラー印刷を行う方法として、一般にAMスクリーンおよびFMスクリーンが挙げられる。
カラー印刷は一般に、シアン、イエロー、マジェンタ、ブラックの四色の画像を順次重ね合わせて印刷することにより作成される。そのため、画像がずれることなく印刷されることが必要であり、正確な見当合わせ(4色各版の位置合わせ)による重ね刷りが必要とされる。
これまで、アルミニウムなどの金属を支持体とする平版印刷版では、一般に版ずれによる色ずれは起こらないとされていた。しかしながら高速輪転機による新聞オフセットカラー印刷においては、版ずれに起因した色ずれが起こることがしばしば発生している。特にFMスクリーンによるカラー印刷においては、高い解像度を有するため、この色ずれの影響が大きいという問題がある。
このような色ずれの原因の一因として、高速に回転するブランケットとの摩擦によって、版胴に装着するために折り曲げた版の銜え(くわえ)部分が伸びることによる版ずれが生じ、そしてこの版ずれによって色ずれが起こると推定する。
特許文献1には、版ずれ対応策として、引張試験(引張速度:2mm/分)における抗張力および耐力が、それぞれ16.5〜18.5kg/mm2 (162〜181MPa)である、平版印刷用アルミニウム支持体、およびこの平版印刷用アルミニウム支持体の上に設けられた感光層を有する、CTP用平版印刷版材が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載された特性のアルミニウム支持体では、耐キズ性および印刷適性に優れた、高い平均表面粗さRaと、高い比表面積を有する支持体には不十分であった。
さらに、最近では、印刷技術の進歩に伴って印刷速度が速くなり、印刷機の版胴の両側に機繊的に固定される印刷版に加わる応力が増大したことに対応して、支持体に対する強度要求が大きくなっており、支持体強度が不足すると、その固定部分が変形または破損して印刷ずれなどの支障が生じるため、支持体強度の向上が不可欠となっている。
特開2008−105227号公報
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、高速輪転機による新聞オフセットカラー印刷において、版ずれの少ないCTP用平版印刷版材として使用することができる平版印刷版原版、および、該平版印刷版原版の製造に用いる平版印刷版用アルミニウム支持体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、アルミニウム合金板の表面を粗面化処理して得られた平版印刷版用のアルミニウム支持体であって、粗面化処理後のアルミニウム支持体のJIS Z2241による引張試験(引張速度:2mm/分)における引っ張り強度が、170〜225MPaである、平版印刷版用アルミニウム支持体を提供する。
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体において、前記アルミニウム支持体の表面の算術的平均表面粗さRaが0.35〜0.65μmであることがより好ましい。
また、本発明は、上記本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体上に画像記録層を設けてなる感光性平版印刷版原版を提供する。
ここで、前記画像記録層が830nmの半導体レーザに感光する層であることが特に好ましい。
また、前記画像記録層がサーマルネガタイプの画像記録層であることが特に好ましい。
本発明の平版印刷用アルミニウム支持体をCTP用平版印刷版材に用いることによって、高速輪転機による新聞オフセットカラー印刷において、色ずれのない良好な画像を有する印刷物を提供することができる。本発明によって、版ずれの少ない、印刷性能に優れ、かつ画像記録層表面の耐キズ性能に優れたCTP用平版印刷版材が提供することができる。
本発明の平版印刷用アルミニウム支持体は、アルミニウム合金板の表面を粗面化処理して得られた平版印刷版用のアルミニウム支持体であって、粗面化処理後のJIS Z2241による引張試験(引張速度:2mm/分)における引っ張り強度(以下、本明細書において、単に「引張強度」という。)が、170〜225MPaである。
引っ張り強度が170MPa以下だと版ズレが発生しやすく、225MPaを超えると、輪転機へ取り付けるための版の折り曲げが困難になる。
更に好ましい引っ張り強度は185〜210MPaであり、特に好ましくは190〜205MPaである。
更に、本発明の平版印刷用アルミニウム支持体は、粗面化処理後のJIS Z2241による引張試験(引張速度:2mm/分)における0.2%耐力(以下、本明細書において、単に「0.2%耐力」という。)が155〜225MPaであることが好ましい。更に好ましい0.2%耐力は160〜210MPaであり、特に好ましくは170〜195MPaである。
0.2%耐力が155MPa以下だと版ズレが発生しやすくなるおそれがあり、225MPaを超えると、輪転機へ取り付けるための版の折り曲げが困難になるおそれがある。
更に、本発明の平版印刷用アルミニウム支持体は、0.2%耐力と引っ張り強度の関係が、次式(1)で表される領域であることが好ましい。
0.2%耐力 < 引っ張り強度×0.76+40・・・ 式1
更に好ましくは、次式(2)で表される領域である。
0.2%耐力 < 引っ張り強度×0.76+35・・・ 式2
特に好ましくは、次式(3)で表される領域である。
0.2%耐力 < 引っ張り強度×0.76+33・・・ 式3
また、本発明の平版印刷用アルミニウム支持体は、JIS Z2241およびZ2201に規定される伸びが1〜10%であるのが好ましい。
また、本発明の平版印刷用アルミニウム支持体は、該アルミニウム支持体表面の平均表面粗さRaが0.35〜0.65μmであることが好ましく、特に0.40〜0.60μmに粗面化された支持体であることが好ましい。Raを0.35μm以上にすることで、耐キズ性能が良好になる。また、0.65μmを超えると耐汚れ性能が低下する。
[アルミニウム合金板]
本発明の平版印刷用アルミニウム支持体に用いるアルミニウム合金板(以下、単に「アルミニウム合金板」という。)の組成は特に限定されないが、Si:0.03〜0.15%、Fe:0.2〜0.7%、Cu:0.00〜0.05%、Mg:0.01〜0.4%、Ti:0.003〜0.5%、Mn:0.000〜1.5%を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる組成であることが好ましい。
アルミニウム合金板における含有成分の意義および限定理由について説明する。
Siは、Feと共存してA1−Fe−Si系金属問化合物を生成し、該化合物の分散により、再結晶組織が徴細化され、これらの化合物がピット発生の起点となって電解粗面化処理時のピットの形成を均一にし、且つピットを微細に分布させる。Siの好ましい含有量は0.03〜0.15%の範囲である。0.03%未満では化合物の分布が不均一となって、電解粗面化処理時に未エッチング部が発生し、ピットの形成を不均一にするおそれがある。0.15%を超えると、粗大化合物が生成し、また単体のSiの析出が生じ易くなって粗面化構造の均一性が低下するおそれがある。
Feは、A1−Fe系金属間化合物を生成し、またSiと共存してAl−Fe−Si系金属間化合物を生成し、これらの化合物の分散により、再結晶組織が微細化され、これらの化合物がピット発生の起点となって電解粗面化処理時にピットの形成を均一にし、旦つピットを微細に分布させる。Feの好ましい含有量は0.2〜0.7%の範囲である。0.2%未満では化合物の分布が不均一となって、電解処理時に未エッチング部が発生し、ピットの形成を不均一にするおそれがある。0.7%を超えると、粗大な化合物が生成し、粗面化構造の均一性が低下するおそれがある。
Mgは、大部分がアルミニウムに固溶して、強度および耐熱軟化性を向上させるよう機能する。また、Mgは、Mg−Si系化合物(Mg2Si)を形成して、粗面化構造の均一性を低下させる単体Siの析出を抑制するよう作用する。
強度とは、印刷版用支持体としての常限における引張り強さのことである。上述したように、本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体は、引っ張り強度が170〜225MPaである。
耐熱軟化性は、耐バーニング性ともいわれ、280℃程度の温度で加熱された後の0.2%耐力のことである。本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体は、280℃程度の温度で加熱された後の0.2%耐力が100〜225MPaである。Mgの好ましい含有量は0.01〜0.4%の範囲である。Mg含有量が0.01%未満だと充分な引っ張り強度と0.2%耐力が得られないおそれがあり、0.4%を超えると、アルミニウム板圧延時に、酸化マグネシウム粉が発生しやすく、アルミニウム合金板表面のキズ故障の原因となるおそれがあり、好ましくない。
更に好ましいMg含有量は、0.03〜0.20%であり、最も好ましくは0.05%を超え〜0.10%未満である。
Mgを含有するアルミニウム合金においては、とくに均質化処理、熱間圧延時の加熱などの熱処理によりMg酸化物(MgO系酸化物)を主体とする酸化皮膜が形成され易く、この酸化皮腰は活性且つポーラスであるため、電解粗面化処理において処理液との濡れ性が良くなり粗面化が促進される。この効果を得るためには、アルミニウム合金板の表面から0.2μmの深さまでの表層部のMg濃度が平均Mg濃度の5〜50倍であることが好ましい。50倍を超えると、粗面化が過剰に進行してピットが不均一になり易い。また、Mgはアルミニウム板の引っ張り強度や耐力を向上させる効果がある。
また、固溶しているMgは粗面化を促進し、Mg−Si系化合物(Mg2Si)の析出は、粗面化構造の均一性を低下させる単体Siの析出を抑制する。アルミニウム含金板のマトリックス中に析出しているMg量は、平均Mg濃度の50%以下であることが好ましく、Mgの固溶と析出がこの比率の場合、好ましい粗面化を達成することが可能となる。
Tiは、鋳塊組織を微細にし、また結晶粒を微細化し、その結果、電解処理時のピット形成を均一にして、印刷版としての処理を行ったときのストリ−クの発生を防止する。Tiの好ましい含有量は0.003〜0.05%の範囲である。0.003%未満ではその効果が小さく、0.05%を超えて含有すると、Al−Ti系の粗大な化合物が生成して粗面化構造が不均一となり易い。なお、鋳塊組織の微紬化のために、TiとともにBを添加する揚合にはTiを0.01%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
Cuは、アルミニウムに固溶し易く、0.05%以下の含有でピットを微細化する効果を有する。アルミニウム合金板に含まれるCuは、0.00〜0.05%が好ましく、0.01〜0.02%が特に好ましい。
0.05%を超えて含有すると、電解処理時のピットを粗大且つ不均一にし易くなり、未エッチング部が発生し易くなる。なお、上記のFeおよびSiの含有量を得るために採用される地金から混入されるCu量は5〜100ppm(0.0005〜0.01%)程度である。
Mnは、アルミニウム合金板の引っ張り強度や耐力を向上させる働きがあり、0.000〜1.5%添加することが可能であるが、アルカリ液中にMnの酸化物や水酸化物がスラッジとして析出してアルミニウム合金板の粗面化処理工程を汚染するため、粗面化プロセスの安定性の観点からは0.05%以下、特に0.01%以下であることが好ましい。
アルミニウム合金板の残部は、アルミニウム(Al)と不可避不純物からなる。不可避不純物の大部分は、アルミニウム地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、アルミニウム純度99.7%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。アルミニウム合金板に含有される不可避不純物としては、例えば、Zn、Ti、B、G a、Niが挙げられる。
Znは、新地金の中に極微量含有される。Znは、比較的アルミニウム合金中に固溶しやすい。Znは、アルミニウム合金板の電気化学的粗面化性に影響を及ぼす。本発明においては、Znは、含有量が0.05%以下が好ましく、0.01%以下が特に好ましい。
Bは、結晶微細化材として、Tiとともに添加されることがある。本発明においては、Bは、含有量が0.05%以下が好ましく、0.04%以下が特に好ましい。
GaおよびNiは、いずれも地金の不純物として微量含有される場合がある。それぞれ含有量が0.05%以下が好ましく、0.03%以下が特に好ましい。
また、アルミニウム合金板は、表層部の圧延方向と直交する方向における平均再結晶粒径が0.05mm以下であることが好ましく、更に、表層部の圧延方向に引き延ばされた結晶長さが0.3mm以上であることが好ましい。ここで、表層部とは、アルミニウム合金板の全板厚に対して表層から25%の深さをいう。
表層部の圧延方向と直交する方向における平均再結晶粒径は0.01〜0.05mmが好ましく、0.02〜0.04mmが特に好ましい。
表層部の圧延方向に引き延ばされた結晶長さは、0.3mm〜200mm(ファイバ状)の範囲から選択されることが好ましく、0.3〜2.0mmがより好ましく、0.5〜0.9mmが特に好ましい。引き延ばされた結晶長さが200mmを超えると粗面化処理後の面質が低下するおそれがある。0.3mm未満だとアルミニウムの引っ張り強度が所望のものとなりにくい。
結晶粒の確認方法としては、一般的なマクロエッチングによる方法を用いることができる。結晶粒を観察するためのエッチング液としては、フッ化水素酸の水溶液、複数の酸を混ぜた水溶液等が使用できる。結晶粒の観察は、鏡面研磨をおこなった後に、フッ化水素酸の水溶液でエッチングを行ったサンプルを偏光フィルタを用いた光学顕微鏡を用いて写真撮影を行う方法によることがとくに好ましい。この写真を用いて結晶粒の幅と長さを測定し、平均値および最大値を求めることができる。
また、アルミニウム合金板は、断面形状が以下のものであるのが好ましい。
通常、アルミニウム板は、コイルとして巻かれた状態で所定期間保管される。板断面において、板の端部、即ち、耳部の厚みが厚すぎると、数千mにわたってコイル状に巻かれて保管されている間に、厚い部分が塑性変形を起こし、耳歪みと称される端部の歪みが発生する。同様に、板の内側の厚みが厚すぎると、塑性変形を起こし、腹歪みと称される内側の歪みが発生する。
腹歪みの発生は耳歪みに比べて発生しにくい傾向にあるため、本発明においては、耳歪みの発生防止を優先し、板の内側の板厚を板の端部よりやや厚く仕上げるのが好ましい。具体的には、板の平均板厚に対する耳部の板厚を一定以下にするため、以下のように定義されるa値を1.0以下にすることが好ましい。
a=h/c
h:耳部板厚と最小板厚との差
c:中央部最大板厚と最小板厚との差
また、板の内側の板厚を平均板厚に対して厚くしすぎないため、以下のように定義されるpc値を2.0%以下にするのが好ましい。
pc=c/tc×100(%)
c:中央部最大板厚と最小板厚との差
tc:中央部最大板厚
なお、これらの値は、特開平11−254847号公報の図2を参照することにより、より容易に理解される。
また、後述する冷間圧延工程において、冷間圧延ロールのたわみ形状を調整することで、a値およびpc値を所望の値に調整することができる。
また、アルミニウム合金板は、長さ4mあたりの曲がりが0.3mm以下であるのが好ましい。アルミニウム合金板の曲がりが大きいと、コイルとして巻いた場合に、巻いていくに従って徐々に巻きズレが大きくなり、巻きズレに起因する板端部の折れや歪みが発生する。冷間圧延ロールの平行度および冷間圧延機でのアルミニウム板の送り出し精度をコントロールすることにより上記曲がりの目標数値は達成できる。また、本発明においては、板の端部のバリの高さが10μm以下であるのが好ましい。断面形状の説明で述べたのと同様の理由により、端部のバリが大きいと、コイルとして巻かれて保管される間に、端部での塑性変形が起こりやすい。また、平版印刷版用支持体を得るための表面処理や、平版印刷版原版とするための画像記録層塗布工程において、バリは、パスロールや塗布装置といった平版印刷版原版製造設備に傷を付けやすいので、好ましくない。したがって、上述したように、バリの高さを10μm以下とするのが好ましい。コイルの耳部を切り落とすスリッタ工程における刃のクリアランスのコントロールにより、バリの高さを10μm以下とすることができる。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通すことも通常行われる。スリッタによって切られた板の端面には、スリッタ刃に切られるときに、せん断面と破断面の一方または両方が生じる。
また、アルミニウム板の板厚は0.10〜0.50mmの範囲であることが好ましく、その精度は、コイル全長にわたっての板厚差が、20μm以内であるのが好ましく、12μm以内であるのがより好ましい。また、幅方向の板厚差は、6μm以内であるのが好ましく、3μm以内であるのがより好ましい。また、板幅の精度は、2.0mm以内であるのが好ましく、1.0mm以内であるのがより好ましい。
新聞用印刷版としては、0.285〜0.315mmの板厚のものが通常用いられる。
上記のアルミニウム合金板は、上述した成分組成を有するアルミニウム合金の鋳塊を連続鋳造またはDC鋳造などにより造塊し、得られた鋳塊を均質化処理後、熱間圧延・冷間圧延することにより製造することができる。ここで、熱間粗圧延と熱間仕上げ圧延からなる熱間圧延工程において、熱間粗圧延における圧延開始温度、圧延終了温度、粗圧延から仕上げ圧延に移行するまでの保持時間、熱間仕上げ圧延の終了温度を特定し、熱間仕上げ圧延後・コイルとして巻き取った時の再結晶粒を制御することにより、熱間仕上げ圧延後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延のみで所定の厚さの板材とすることが好ましい。
まず、上述した成分組成を有するアルミニウム合金の鋳塊の圧延面表層を面削して、ストリークスの原因となる不均一な組織を除去した後、500〜600℃の温度域で1時問以上の均質化処理を行うことが好ましい。この均質化処理により、過飽和に固溶しているFe,Siを均一に析出させ、電解処理時に形成されるエッチングピットが微細な円形となり耐刷性が向上する。均質化処理温度が500℃未満では、Fe,Siの析出が十分でなく、ピットパターンが不均一になり易い。610℃を越える温度で均質化処理を行うと、Feの固溶量が増大するため、結果的にピット発生の起点となる微細化析出物が減少する。均質化処理の保持時間が1hr未満では、Fe,Siの析出が不十分となりピットパターンが不均一となり易い。
熱間圧延は、通常、熱間圧延ラインにおいて、粗圧延スタンドで熱間粗圧延をおこなった後、圧延材を仕上げ圧延スタンドに移行して、仕上げ圧延スタンドで熱間仕上げ圧延を行い、熱間圧延材としてコイルに巻き取ることにより行なわれるが、本発明においては、熱間粗圧延を400〜520℃で開始し、400℃以上の温度で終了して、熱間粗圧延終了後、仕上げスタンドに移行して熱間仕上げ圧延を開始する前に、熱間粗圧延材を60〜300秒間保持して熱間粗圧延材の表面を再結晶させることが好ましい。これにより、上述した表層部におけるMgの濃度を得ることができる。すなわち、アルミニウム合金板表面から0〜2μmmの深さまでの表層部のMgの濃度を平均Mgの5〜50倍に調整することができる。
熱間粗圧延の開始温度が400℃未満では、材料の変形抵抗が大きく圧延パス回数が増加して生産性を低下させるおそれがある。520℃を超える温度では、圧延中に粗大な再結晶粒が生成して筋状の不均一組織となり易い。
熱間粗圧延の終了温度が400℃未満では、熱間粗延終了後の保持による再結晶が不十分となり、均一な表層組織が得難くなるとともに、上述した表層部におけるMgの濃度が得難くなる。
また、熱問粗圧延終了後熱間仕上げ圧延開始前の保持時間が60秒未満では、再結晶が不十分となり、均一な表層組織が得難くなる。300秒を超える時問保持すると、再結晶粒が成長して部分的に粗大な再結晶粒が生成し、熱間圧延終了段階で微細な再結晶粒が得難くなる。
ついで、熱間仕上げ圧延を行い、熱間仕上げ圧延を330℃以上の温度で終了してコイルとして巻き取ることが好ましい。熱問仕上げ圧延の終了温度が330℃未満では、再結晶が部分的にしか生ぜず、ストリークの原因となるおそれがある。
熱間仕上げ圧延の終了温度は370℃以下が好ましい。熱間仕上げ圧延の終了温度が370℃を超えると、再結晶粒が粗大となり、ストリ−クが生じ易くなる。
上記の熱間圧延を行った後、コイルとして巻き取ることによって、熱間仕上げ圧延材の表層部の圧延方同と直交する方向における平均再結晶粒径を50μm以下とすることができ、熱間仕上げ圧延後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延のみで所定の厚さの板材とすることが可能となり、生産性の向上とそれに伴って製造コストの低減が達成でき、旦つ冷間圧延後の最終圧延材において、表層部の圧延材の圧延方向と直交する方向における平均再結晶粒径を50μm以下として、印刷板のアルミ結晶起因の面質ムラを防止することができる。
また、冷間圧延後の最終圧延材において、表面の圧延方向と直交する方向における平均表面粗さRaを0.03〜0.5μmとすることにより、耐インキ汚れ性を向上させる効果を得ることができる。Raが0.03μm未満では、印刷版として適用した場合、湿し水の保水量が急激に減少するおそれがあり、画像部のインキが非画像部上に移動し易くなって耐インキ汚れ性が低下する。Raが0.5μmを超えると、プランケット胴の汚れが生じるおそれがある。耐インキ汚れ性を向上させるためには、十分な保水量を保持し得る平均表面粗さRaを有していることが必要で、そのために粗面化仕上げ面の算術平均粗さは0.03〜0.5μmの範囲とするのが好ましく、0.10〜0.40μmとするのがさらに好ましい。
板面の圧延方向と直交する方向における算術平均表面粗さRaを0.03〜0.5μmとするためには、外径250〜700mmで、圧延方向と直交する方向 におけるRaが0.03〜0.6μmのワークロール(WR)を用いて最終冷間圧延を行い、合金組成に応じて、最終冷間加工度、圧延速度、圧延油の性状、圧延油の供給量を調整することが必要である。
本発明においては、最終冷間圧延後の圧延板表面のアルミパウダー量が0.1〜3.0mg/m2に調整されていることが好ましい。アルミパウダーは、最終冷間圧延中にアルミニウム合金圧延材から生じた圧延後の板表面に残存するアルミニウム合金の粉体であり、Mgを含有するアルミニウム合金の場合には、アルミパウダー量が0.1mg/mm2未満では、最終冷間圧延後にコイルとして巻き取られた時、コイル内の擦れ傷防止効果が十分でないおそれがある。3.0mg/m2を超えると、脱脂過程においてアルミパウダーが十分に除去されず板面に残留し、電解粗面化処理時に、アルミパウダーが残留している部分のピット形成が不十分または不均一となり、電解粗面化後に未エッチング部やムラ模様による外観不良が生じる原因となる。また、過剰なアルミパウダーはライン汚染の原因ともなる。
最終冷間圧延後におけるアルミニウム合金板表面のアルミパウダー量を上記の範囲に調整するためには、前記成分への調整とともに、組成に応じて最終冷問圧延加工度、圧延油の性状、圧延油の供給量を調整することが必要である。とくに、最終冷間圧延の圧延油の粘度は重要で、粘度1〜6cStの圧延油を使用するのが好ましい。粘度が1cSt未満では、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が少なくなって潤滑不艮が生じ、過剰なアルミパウダーが生じ易くなる。粘度が6.0cStを超えると、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が過剰となって、アルミパウダーの発生が少なくなる傾向がある。なお、アルミパウダー量は、アルミニウム合金板表面の残留摩耗粉の定量分析として、板表面の一定面績をアルコールなどの有機溶剤で浸した脱脂綿で拭き取り、脱脂綿中のアルミニウム含有量を測定する方法により測定することができる。
また、最終冷間圧延における圧延油としては、アルミニウム合金中のMg含有量(Mg%)と最終冷間圧延において使用する圧延油の粘度ρとの関係が、ρ≦2×Mg%+4を満足する圧延油を用いるのが好ましい。ρ>(2×Mg%+4)では、変形抵抗が小さく、また、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が多くなるため、オイルピットと呼ぶ粗大なピットが圧延工程で過剰に形成され易くなる。
本発明においては、最終冷間圧延後のアルミニウム合金板の表面において、直径(円相当直径)が30μm以上のオイルピットの数を50個/mm2以下に調整することにより、粗面化処理において形成されるエッチングピットをより均一にすることができる。
アルミニウム合金板がMgを含有する場合、直径30μm以上の大きなオイルピットは、粗面化後も粗大なピットとして残留し易く、このような粗大なピットが50個/mm2を超えると、粗面化後の表面が不均一となり易い。
直径(円相当直径)が30μm以上のオイルピットの数を50個/mm2以下に調整するためには、最終冷間圧延加工度、圧延ロール面の形態、圧延油の性状、圧延油の供給量を調整することが必要である。Mgを含有し、変形抵抗が比較的大きいアルミニウム合金板の場合には、最終冷間圧延においてロール面粗度が算術平均粗さRa=0.2〜0.5μmの圧延ロールを用い、粘度1.0〜6.0cStの圧延油を使用して冷間圧延を行うことが望ましい。
ロール面粗度が算術平均粗さRaで0.5μmを超えると、接触弧長内での局部的な面圧が高くなり、油膜が切れて金属接触領城が増大するため潤滑不良が生じ易くなる。Raが0.2μm未満では、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が過剰となり大きなオイルピットの数が増加する。圧延油の粘度が1.0cSt未満では、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が少なくなって潤滑不良が生じ易く、6.0cStを超えると、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が過剰となり大きなオイルピットの数が増加する。なお、オイルピットについては、アルミニウム合金板の表面を脱脂洗浄後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、500倍の倍率で表面を観察し、切断法によりオイルピットの数および分布量を測定することができる。
アルミニウム合金板は、熱間仕上げ圧延終了後、コイルとして巻き取った段階において、板表層部の再結晶の度合いが均一で、再結晶粒が微細、かつ均一であり、熱間圧延以降に中間焼鈍を行うことなく最終厚さまで冷間圧延することができ、板表層部において適度なMgの濃度が得られ、電気化学的エッチング処理時のピットの発生が均一旦つ微細で、粗面化処理を行った場合にストリ−クの発生がなく、優れた強度特性を有する平版印刷版用アルミニウム支持体が提供される。
冷間圧延で所定の厚さ、0.10〜0.50mmに仕上げられたアルミニウム合金板は、更にローラレベラ、テンション レベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。
また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通すことも通常行われる。
アルミニウム合金板の強度(引っ張り強度、0.2%耐力)を上げる方法として、固溶強化(添加物に依る方法)、加工硬化(冷間圧延の圧下率を上げる方法)、析出硬化、結晶組織微細化による硬化があるが、本発明に於いては、固溶強化させる方法が好ましく、固溶強化と加工硬化を併用する方法が最も好ましい。
アルミニウム合金板の強度(引っ張り強度、0.2%耐力)を上げる合金成分としてMn、Mg、Fe、Cuなどが知られているが、Mgを0.05〜0.40%、または、Mnを0.05〜1.50%添加する方法が好ましく、Mgを添加する方法が更に好ましい。Mnを添加するとアルミニウム合金板の強度(引っ張り強度、0.2%耐力)は上がるものの、粗面化処理に使用するアルカリエッチング液がMnによって真っ黒に汚染され、汚染物質(Mn)がアルミニウム合金板に再付着して故障の原因となるおそれがある。
とくに好ましい方法としては、Mgを0.05%以上0.10%未満添加するとともに、冷間圧延の圧下率をアップすることによる加工硬化を併用させて、アルミニウム合金板の表層部の、圧延方向と直交する方向における平均再結晶粒径を0.01〜0.05mmとし、圧延方向に引き延ばされた結晶長さを平均で0.50〜0.90mmとすることである。
[平版印刷板用アルミニウム支持体の作製]
上記のアルミニウム合金板の表面を電気的な砂目立て法などの公知の方法により粗面化処理し、さらに、陽極酸化することにより、本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体を得ることができる。
ここで、アルミニウム支持体の、原子間力顕微鏡を用いて測定された三次元データによる実面積から下記式(I)による算出された表面積比(比表面積とも言う)ΔSは、画像記録層の密着性の観点から、45%以上であることを要し、とくに好ましくは50%以上である。
更に、ΔSは70%以下であることが好ましく、60%以下であることがとくに好ましい。ΔSが70%を超えると表面の急峻度が高くなり、耐汚れ性能が低下するおそれがある。ここで、ΔSは、原子間力顕微鏡を用い25μm平方を256×256点測定して得られる3次元データから、以下の式(I)より算出される値である。
ΔS=(近似三点法により求めた表面積−幾何学的面積)
/幾何学的面積×100(%) 式(I)
ΔSは、幾何学的測定面積に対する、粗面化処理による実面積の増加の程度を示すファクターである。ΔSが大きくなると、画像記録層との接触面積が大きくなり、結果として耐刷性を向上させることができる。表面積比を所定の範囲とすることで、画像記録層とアルミニウム支持体との接触面積を十分にとることで、耐刷性を向上させることができる。
このようなΔSの範囲を達成するためには、例えば、塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化を行う方法、ブラシロールと研磨剤を用いて機械的粗面化を行う方法、化学的なエッチングをおこなう方法などの公知の方法を適用し、上記表面の凹凸を形成しうる条件により処理を行えばよい。
アルミニウム支持体表面の白色度は、0.30〜0.55が好ましく、0.35〜0.50が特に好ましい。0.30未満だと耐刷性能が低下し、0.55を超えると、耐汚れ性能が低下する。
本発明においては、アルミニウム支持体表面に対して触針式粗さ計(例えば、sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均表面粗さRaを5回測定し、その平均値を平均表面粗さRaとする。2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
<測定条件>
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
アルミニウム支持体の表面性状を上記の好ましい範囲にする、特に好ましい粗面化処理方法について以下に述べる。
具体的には、アルミニウム合金板を順に、
(1)酸性水溶液中で交流を用いて電気化学的に粗面化処理し(第1電解粗面化処理)、
(2)酸性水溶液中で交流を用いて電気化学的に粗面化処理し(第2電解粗面化処理)、
(3)陽極酸化処理(陽極酸化処理)
する方法が好ましい。
最も好ましくは、アルミニウム合金板を順に、
(1)機械的に粗面化処理し(機械的粗面化処理)、
(2)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理し(第1エッチング処理)、
(3)硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的に粗面化処理し(第1電解粗面化処理)、
(4)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理し(第2エッチング処理)、
(5)塩酸水溶液中で交流を用いて電気化学的に粗面化処理し(第2電解粗面化処理)、
(6)アルカリ水溶液中で化学的にエッチング処理し(第3アルカリエッチング処理)、
(7)陽極酸化処理(陽極酸化処理)
する方法である。
上記のアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理の後には、酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理、第2デスマット処理、第3デスマット処理)をおこなうことが更に好ましい。
また、陽極酸化処理の後には、必要に応じて珪酸ソーダ水溶液に浸せきする親水化処理をおこなう。
以下、好ましい粗面化処理方法について説明する。
<機械的粗面化処理>
本発明においては、ブラシと研磨剤を含有するスラリー液とを用いて、上述したアルミニウム合金板の平均表面粗さRaが0.35〜0.65μm、好ましくは0.40〜0.60μmとなるように機械的に粗面化する機械的粗面化処理を施すことが好ましい。
上記機械的粗面化処理は、1種類または毛径が異なる2種以上のブラシを用いて、研磨剤を含有するスラリー液をアルミニウム合金板表面に供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイン法)であり、具体的には、アルミニウム合金板の表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、ナイロンブラシを用いてアルミニウム合金板の表面を砂目立てするブラシグレイン法等が好適に例示される。
また、ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(登録商標)、ポリプロピレン、および塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなる合成樹脂毛や、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ毛(材)を、ローラ状の台部に均一な毛長および植毛分布をもって植え込んだもの、台部に小穴を開けてブラシ毛束を植込んだもの、チャンネルローラ型のもの等のローラ状ブラシ(ブラシロール)を用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を吹き付けながら、上述したアルミニウム合金板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。
ブラシ毛の曲げ弾性率は、10,000〜40,000kgf/cm2であるのが好ましく、15,000〜35,000kgf/cm2であるのがより好ましい。また、ブラシ毛の毛腰の強さは、500gf以下であるのが好ましく、400gf以下であるのがより好ましい。
このような特性を十分に満足するブラシ毛の材質としては、ナイロンが好ましく、具体的には、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10等を用いることができる。中でも、引っ張り強さ、耐摩耗性、吸水による寸法安定性、曲げ強さ、耐熱性、回復性などの観点からナイロン6・10を用いるのが特に好ましい。
このようなナイロン製のブラシは、吸水率が低いものが好ましく、その具体例としては、東レ社製のナイロンブリッスル200T(ナイロン6・10、軟化点:180℃、融点:212〜214℃、比重:1.08〜1.09、水分率:20℃・相対湿度65%において1.4〜1.8、20℃・相対湿度100%において2.2〜2.8、乾引っ張り強度:4.5〜6g/d、乾引っ張り伸度:20〜35%、沸騰水収縮率:1〜4%、乾引っ張り抵抗度:39〜45g/d、ヤング率(乾):380〜440kg/mm2)が好適に挙げられる。
また、ブラシ毛の植毛後の毛長は、10〜200mmであるのが好ましい。なお、ローラ台部に植え込む際の植毛密度は、1cm2当り30〜1000本であるのが好ましく、50〜300本であるのがより好ましい。
また、ブラシと研磨剤を含有するスラリー液とを用いて平均表面粗さRaが0.35〜0.65μmの粗面を得るためには、ブラシ毛の毛径は、0.24〜0.83mmであるのが好ましく、0.26〜0.50mmが特に好ましい。毛径がこの範囲であれば、所望の平均表面粗さが得られ、ブランケット上の耐汚れ性も良好となる。
また、ブラシ毛の断面形状は円形が好ましい。
ブラシの本数は、1〜10本であるのが好ましく、3〜6本であるのがより好ましい。
更に、毛径の異なる2種類のブラシを用いることがより好ましい。そのとき、最初に毛径の太いブラシを用いて平均ピッチの大きな凹凸を作り、その後、最初のブラシよりも毛径の細いブラシを用いて、表面の不均一な凹凸の急峻な部分を均すことが特に好ましい。
ブラシとしてローラ状ブラシを用いた場合のブラシの回転数は、100〜500rpmの範囲で任意に選ばれるのが好ましい。
ローラ状ブラシの回転方向は、アルミニウム合金板の搬送方向に順転に行うのが好ましいが、ローラ状ブラシが多数本の場合は一部のローラ状ブラシを逆転としてもよい。
研磨スラリー液は、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載の公知の研磨剤、具体的には、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、軽石、カーボランダム、金剛砂等の平均粒子径1〜100μm(好ましくは15〜45μm)の研磨剤を、比重1.05〜1.3となるような範囲で水に分散させたものが好ましい。
また、研磨スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。
パミストンを用いることは、安価で工業用の研磨剤として用いられているために供給が安定している点で好ましい。
パミストンとしては、以下に示す成分を含有するものを用いることが好ましい。
<パミストン成分>
シリカ(ケイ酸分:SiO2) 70〜80質量%
アルミナ(Al23) 10〜20質量%
酸化鉄(Fe23) 3質量%以下
その他 残り
このような研磨スラリー液をアルミニウム合金板の表面に供給する方法としては、例えば、スラリー液を吹き付ける方法が好適に挙げられる。また、特開昭55−74898号公報、同61−162351号公報、同63−104889号公報に記載されている方法を用いてもよい。更に、特表平9−509108号公報に記載されているように、アルミナおよび石英からなる粒子の混合物を95:5〜5:95の範囲の質量比で含んでなる水性スラリー中で、アルミニウム合金板の表面をブラシ研磨する方法を用いることもできる。このときの上記混合物の平均粒子径は、1〜100μm、特に15〜45μmの範囲内であるのが好ましい。
本発明においては、ブラシの回転数、ブラシの本数、ブラシの回転方向、ブラシの毛径、ブラシの毛長、ブラシを植え付けるローラ(ブラシローラ)の直径、研磨剤の種類、研磨剤の粒度、研磨剤の比重、研磨剤の流量、ブラシの押さえつける力(押し込み量)、アルミニウム板の移動速度等の条件を適宜調節することによって、機械的粗面化処理後のアルミニウム板の平均表面粗さRaを0.35〜0.65μmにすることができる。
<第1エッチング処理>
第1エッチング処理は、上述した機械的粗面化処理が施されたアルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、アルミニウム合金板の表層を溶解する処理である。
本発明では、上記機械的粗面化を施したアルミニウム合金板に、第1エッチング処理を施すことが好ましい。機械的粗面化処理を行った後に第1エッチング処理を行うと、機械的粗面化処理によってアルミニウム合金板の表面に生じた研磨剤、アルミニウムの屑、圧延油、汚れ、および自然酸化皮膜等が取り除かれるために、第1電解粗面化処理によって表面により均一な凹凸が形成され、また、第1電解粗面化処理を効果的に達成することができる。
第1エッチング処理においては、エッチング量は、0.5g/m2以上であるのが好ましく、2g/m2以上であるのがより好ましく、3g/m2以上であるのが更に好ましく、また、20g/m2以下であるのが好ましく、15g/m2以下であるのがより好ましく、11g/m2以下であるのが更に好ましい。エッチング量が少なすぎると、第1電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が多すぎると、耐刷性能、耐クリーナー性能が低下する。また、エッチング量が多すぎると、アルカリ水溶液の使用量が多くなり、経済的に不利となる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
第1エッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、300g/L以上であるのがより好ましく、また、500g/L以下であるのが好ましく、450g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1エッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、30℃以上であるのが好ましく、50℃以上であるのがより好ましく、また、80℃以下であるのが好ましく、75℃以下であるのがより好ましい。
第1エッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
アルカリエッチング処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
<第1デスマット処理>
第1エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第1デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させることにより行う。
用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
第1エッチング処理の後に行われる第1デスマット処理においては、引き続き行われる第1電解粗面化処理に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いるのが好ましい。
デスマット処理液の組成管理においては、酸性溶液濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と温度で管理する方法、電導度と比重と温度とで管理する方法、および、電導度と超音波の伝搬速度と温度とで管理する方法のいずれかを選択して用いることができる。
第1デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.1〜5g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。濃度10〜100g/L、液温20〜60℃の硝酸を用いることが更に好ましく、12〜20g/L、30〜50℃の硝酸を用いることが特に好ましい。工業的には、第1電気化学的粗面化のオーバーフロー廃液を用いることが特に好ましい。
酸性溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
第1デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム合金板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム合金板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
なお、第1デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる第1電解粗面化処理に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理をおこなわず、アルミニウム合金板の表面が乾かないように、必要に応じて適宜デスマット処理液をスプレーしながら、第1電解粗面化処理工程までアルミニウム板をハンドリングするのが好ましい。
<第1電解粗面化処理>
第1電解粗面化処理は、アルミニウム合金板の表面に平均直径0.5〜5μmのハニカムピットを生成し、耐刷性能と耐汚れ性能を満足する支持体を得るためにおこなう。
本発明においては、第1電解粗面化処理は、硝酸を5.0〜15.0g/L、アルミニウムイオンを3.0〜8.0g/L含有する、液温30〜60℃の水溶液中で交流電流を用いて粗面化を施す電気化学的粗面化処理をいう。
アルミニウムイオン濃度は、例えば、硝酸アルミニウム(9水塩)を添加して調整することができる。
第1電解粗面化処理に用いられる交流電流の波形は、特に限定されず、正弦波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、正弦波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は0.5〜3msecであるのが好ましい。TPが3msecを超えると、特に硝酸を含有する水溶液を用いると、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
第1電解粗面化処理における電流密度は、主電解層での平均電流密度で10〜300A/dm2であるのが好ましく、15〜200A/dm2であるのがより好ましく、20〜125A/dm2であるのがさらに好ましい。上記範囲である場合には、生産性がより優れたものとなり、また、電圧が高くならず、電源容量が大きすぎないために、電源コストを低くすることができる。
本発明で言う平均電流密度とは、主極と対向するアルミニウム合金板と主極の間に流れる交流電流により、アルミニウム板の陽極反応に預かる総電気量を電解処理時間と処理面積で割ったものをいう。
また、用いることができる台形波のdutyは0.33〜0.67であることが好ましい。なお、dutyとは、1周期のうちアルミニウム合金板がアノード反応している時間を、1周期の時間で割った値をいう。
また、用いることができる台形波の周波数は0.1〜120Hzであることが好ましいが、設備上50〜70Hzの交流を用いることがより好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
第1電解粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム合金板の陽極時の電気量の総和が、50〜300C/dm2であるのが好ましく100〜250C/dm2であるのがより好ましい。
第1電解粗面化処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
また、電源装置としては、例えば、商用交流を用いたもの、インバータ制御電源等を用いることができる。中でも、IGBT(Insulted Gate Bipolar Transistor)素子を用いたインバータ制御電源が、PWM(Pulse Width Moduration)制御により任意の波形を発生でき、アルミニウム合金板の幅および厚さ、電解液中の各成分の濃度の変動等に対して電圧を変動させて、電流値(アルミニウム板の電流密度)を一定に制御する際に、追従性に優れる点で好ましい。
また、第1電解粗面化処理として、塩酸水溶液中で交流を用いた電解粗面化を用いることができる。このときは、機械的な粗面化処理を省略することが可能である。
第1電解粗面化処理として、塩酸水溶液中での交流を用いた電解粗面化を用いるときの好ましい範囲を下記に示す。
電解液の塩酸濃度は、5.0〜20.0g/Lであり、10.0〜18.0g/Lであるのが好ましい。
また、電解液のアルミニウムイオン濃度は、5.0〜20.0g/Lであり、10.0〜18.0g/Lであるのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、例えば、塩化アルミニウムを添加して調整することができる。
また、上記塩酸を主体とした水溶液中に硫酸を1〜10g/l、特に1〜5g/l添加した電解液を用いて交流を用いて電気化学的に粗面化することが好ましい。硫酸を添加することでクレーター状のピットをより均一に生成することが可能となる。
また、電解液は、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩素化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、電解液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
電解液の液温は、25〜45℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。
電解粗面化処理に用いられる交流電流の波形は、特に限定されず、正弦波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、正弦波が特に好ましい。
アルミニウム合金板に加わる電流波形は、正と負が対称であることが好ましい。
電解粗面化処理における電流密度は、交流電流波形のピーク電流値で10〜400A/dm2であるのが好ましく、15〜350A/dm2であるのがより好ましく、20〜300A/dm2であるのがさらに好ましい。
また、電気化学的な粗面化に用いることができる交流の周波数は0.1〜120Hzであることが好ましいが、40〜70Hzの交流を用いることがより好ましい。
電気量は、アルミニウム板の陽極反応に預かる電気量の総和で250〜800C/dm2が好ましく、300〜600C/dm2がより好ましい。
電解槽としては、電解槽の中に複数の電極が配置された、公知の縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能である。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
電解槽は1槽から10槽をアルミニウム合金板の進行方向に直列に並べて使用することが好ましく、とくに2槽から6槽を用いることが好ましい。移動するアルミニウム合金板の進行方向における、アルミニウム合金板上の任意の点を基準にすると、電解槽中に複数設置された電極と電極の間隔は0.001〜0.5秒であることが好ましく、複数設置された電解槽と電解槽の間隔は1秒から10秒の間隔であることが好ましい。電極1本あたりからアルミニウム板に加わる電気量は、1〜10C/dm2であることが好ましい。複数の電解槽を用いたときに、電解槽1槽あたりに加わる電気量は80〜200C/dm2であることがより好ましい。
<第2エッチング処理>
第2エッチング処理は、第1電解粗面化処理が施されたアルミニウム合金板をアルカリ溶液または酸溶液に接触させることにより、アルミニウム合金板の表層を溶解する化学的エッチング処理であるが、第1エッチング処理と同様であって溶解効率にも優れる、アルカリ溶液を用いたアルカリエッチング処理であるのが好ましい。
第2エッチング処理においては、アルミニウム合金板の溶解量(エッチング量)が0.0.05〜7.0g/m2であることが好ましく、0.1〜0.6g/m2であることがより好ましい。0.05g/m2未満だと、第1電解粗面化処理で生成したピットのエッジ部分が滑らかとならず、インキがひっかかりやすくなるため、充分な耐汚れ性能が得られず、7.0g/m2を超えると、第1電解粗面化処理で生成した凹凸が小さくなるため、充分な耐刷力が得られない。
第2エッチング処理は、第1電解粗面化処理が施されたアルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、第1電解粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、第1電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。第2エッチング処理は、基本的に第1エッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第2エッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、300g/L以上であるのがより好ましく、また、500g/L以下であるのが好ましく、450g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第2エッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、30℃以上であるのが好ましく、35℃以上であるのがより好ましく、また、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。
第2エッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
<第2デスマット処理>
第2エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第2デスマット処理)を行うのが好ましい。第2デスマット処理は、基本的に第1デスマット処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第2デスマット処理においては、硝酸または硫酸を用いるのが好ましい。
第2デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.5〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
第2デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、4秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
<第2電解粗面化処理>
上記第2エッチング処理が行われた後には、第2電解粗面化処理を行うことが好ましい。第2電解粗面化処理は、塩酸を含有する水溶液(以下、「第2電解液」という。)中での交流電流を用いた電気化学的粗面化処理である。第2電解粗面化処理を施すことで、平均開口径0.05〜0.4μmのピットを有する凹凸構造をアルミニウム合金板の表面に形成させることができる。その結果、耐クリーナー性がより優れたものになる。
第2電解粗面化処理は、電解液が異なるほかは、上述した第1電解粗面化処理とほぼ同様の方法で行うことができる。以下、異なる点のみ説明する。
第2電解液は、濃度1〜100g/Lの塩酸の水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、第2電解液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、塩酸濃度2〜10g/Lの硝酸水溶液に、塩化アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を3〜7g/Lとなるように調整した液が好ましい。
第2電解液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、55℃以下であるのが好ましく、40℃以下であるのがより好ましい。
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、10C/dm2以上であるのが好ましく、50C/dm2以上であるのがより好ましく、また、100C/dm2以下であるのが好ましく、80C/dm2以下であるのがより好ましい。
<第3アルカリエッチング処理>
第2電解粗面化処理の後には第3アルカリエッチング処理が行われることが好ましい。第3アルカリエッチング処理は、第2電解粗面化処理が施されたアルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、第2電解粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、第2電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。第3アルカリエッチング処理は、基本的に第1エッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第3アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.01g/m2以上であるのが好ましく、0.05g/m2以上であるのがより好ましく、また、0.3g/m2以下であるのが好ましく、0.25g/m2以下であるのがより好ましい。エッチング量が少なすぎると、平版印刷版の非画像部において、第2電解粗面化処理で生成したピットのエッジ部分が滑らかとならず、インキがひっかかりやすくなるため、耐汚れ性が悪くなる場合がある。一方、エッチング量が多すぎると、第1電解粗面化処理および第2電解粗面化処理で生成した凹凸が小さくなるため、耐刷性が悪くなる場合がある。
第3アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、また、前段の第2電解粗面化処理によって生じた凹凸を小さくしすぎないようにするため、100g/L以下であるのが好ましく、70g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、3g/L以上であるのがより好ましく、また、50g/L以下であるのが好ましく、8g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第3アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
<第3デスマット処理>
第3アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第3デスマット処理)を行うのが好ましい。第3デスマット処理は、基本的に第1デスマット処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第3デスマット処理においては、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液(例えば、硫酸)と同じ種類の液を用いるのが、第3デスマット処理と陽極酸化処理との間の水洗工程を省略することができる点で好ましい。
第3デスマット処理においては、5〜400g/Lの酸および0.5〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
第3デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
第3デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液と同じ種類の液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を省略することができる。
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム合金板には、更に、陽極酸化処理が施されることが好ましい。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム合金板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、50〜200g/L(5〜20質量%)であるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
電解液の液温は、25〜55℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム合金板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム合金板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム合金板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
具体的には、直流電源の電流配分を、下流側の直流電源の電流が上流側の直流電源の電流以上にするのが好ましい。このような電流配分とすることにより、いわゆる焼けが生じにくくなり、その結果、高速での陽極酸化処理が可能となる。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム合金板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2あるのが好ましい。1g/m2未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号、特開2001−11698号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後に、親水化処理を行うことが好ましい。
親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられ、1号ケイ酸ソーダまたは3号ケイ酸ソーダを用いることが好ましく、1号ケイ酸ソーダを用いることがより好ましい。
親水化処理に用いる水溶液に1号ケイ酸ソーダを用いる場合には、1号ケイ酸ソーダの濃度は1〜10質量%であることが好ましく、液温は10〜30℃であるのが好ましい。また、処理時間は1〜15秒であるのが好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜10.0mg/m2であるのが好ましく、3〜10mg/m2であるのがより好ましい。吸着するSi量が3〜10mg/m2である場合には、網点部の耐汚れ性が良好になる。
具体的に説明すると、印刷物のシャドー部(網点部)においては、網点の面積率が高く(70〜90%)、平版印刷版のそれに相当する領域では、画像部(画像記録層)の面積が大きく、非画像部(支持体の露出部分)の面積が相対的に小さくなっている。このような場合、印刷時に、隣接する画像部に載せられたインキ同士が接触して(即ち、絡んで)、その間の非画像部にインキが付着し、印刷物の非画像部がつぶれてしまう(即ち、汚れてしまう)という現象が、発生しやすい。
しかし、親水化処理を行い、アルミニウム支持体の表面に付着するSi量を3〜10mg/m2とすることにより、非画像部の親水性が向上するために、得られたアルミニウム支持体を用いて平版印刷版を作製し、印刷を行った場合に、網点部の耐汚れ性を良好にすることができる。
以上説明したアルカリ金属ケイ酸塩処理により、アルミニウム支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
<乾燥>
上述したようにしてアルミニウム支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、アルミニウム支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、2〜15秒であるのが好ましい。
[平版印刷板原版の作製]
上記の手順で作成したアルミニウム支持体上に画像記録層を設けることで、本発明の感光性平版印刷版原版とすることができる。サーマルネガ型感光性組成物を用いたサーマルネガタイプの画像記録層を設ける場合と、サーマルポジ型感光性組成物を用いたサーマルポジタイプの画像記録層を設ける場合について以下に好適例を示す。
<サーマルネガタイプの画像記録層>
アルミニウム支持体上に設けるサーマルネガタイプの画像記録層としては、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び所望によりバインダーポリマーを含有し、更に必要に応じて、着色剤や他の任意成分を含むものが挙げられる。
上記のサーマルネガタイプの画像記録層は、増感色素の吸収波長に応じたレーザに感応するため、CTPに有用な種々のレーザに感光することができる。例えば、増感色素として赤外線吸収剤を用いた場合について述べれば、ここに含まれる赤外線吸収剤は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、記録層中に併存する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させる。
この場合のラジカルの生成機構としては、1.赤外線吸収剤の光熱変換機能により発生した熱が、後述する重合開始剤(例えば、スルホニウム塩)を熱分解しラジカルを発生させる、2.赤外線吸収剤が発生した励起電子が、重合開始剤(例えば、活性ハロゲン化合物)に移動しラジカルを発生させる、3.励起した赤外線吸収剤に重合開始剤(例えば、ボレート化合物)から電子移動してラジカルが発生する、等が挙げられる。そして、生成したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部となる。
上記のサーマルネガタイプの画像記録層は、増感色素として赤外線吸収剤を含有することにより、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザ光での直接描画される製版に特に好適に用いられるようになり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
以下に、サーマルネガタイプの画像記録層を構成する各成分について説明する。
(増感色素)
サーマルネガタイプの画像記録層は、感度の観点から、レーザ露光における露光波長に適合する所定の波長の光を吸収する増感色素を含有する。
この増感色素が吸収し得る波長の露光により後述する重合開始剤のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。この増感色素が適合する波長のレーザ露光により高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動などが、後述する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
増感色素の吸収する光の波長により、サーマルネガタイプの画像記録層は、紫外線から可視光線及び赤外線まで種々の波長に感応することができる。例えば、増感色素として赤外線吸収剤を用いる場合には、波長760nmから1200nmの赤外光に対して感応することになる。また、波長350nmから450nmに極大吸収波長を有する色素を用いることで、青色〜紫の可視光に対して感応することになる。
サーマルネガタイプの画像記録層に用いられる増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)等が挙げられ、これらは、例えば、特開2005−250438公報の段落番号〔0188〕〜〔0258〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を適宜選択して本発明における増感色素として使用することができる。
なかでも、サーマルネガタイプの画像記録層には、増感色素として以下に詳述する赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
赤外線吸収剤は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、先にのべた電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動に加え、光熱変換機能により熱エネルギーが生成されるため、重合開始剤により高感度で化学変化を生起させるのに有用である。
サーマルネガタイプの画像記録層に使用される特に好ましい増感色素である赤外線吸収剤としては、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく挙げられる。
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、サーマルネガタイプの画像記録層における赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2010023402
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2010023402
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
以下に示す基において、Xa -は後述するZa -と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2010023402
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za -は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa -は必要ない。好ましいZa -は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
サーマルネガタイプの画像記録層において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。また、特に好ましい他の例として更に、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
サーマルネガタイプの画像記録層において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、画像記録層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な画像記録層が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、画像記録層に用いる場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
これらの増感色素、好ましくは赤外線吸収剤の添加量は、記録層中における均一性や記録層の耐久性の観点から、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲であり、増感色素として染料を用いる場合には、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料を用いる場合には、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
(重合開始剤)
サーマルネガタイプの画像記録層に用いられる重合開始剤は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有し、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギーを付与することでラジカルを生成させるものであればいかなる化合物を用いてもよい。例えば、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これらは併用してもよい。本発明ではオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
本発明において好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(I)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2010023402
一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
以下に、一般式(I)で表されるオニウム塩の具体例([OS−1]〜[OS−12])を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2010023402
Figure 2010023402
上記したものの他、特開2002−148790公報、特開2002−148790公報、特開2002−350207公報、特開2002−6482公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
サーマルネガタイプの画像記録層においては、上記スルホニウム塩重合開始剤の他にも、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を用いることができる。他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられ、中でも、高感度であることから、オニウム塩が好ましい。また、上記のスルホニウム塩重合開始剤を必須成分として、これらの重合開始剤(ラジカル発生剤)を併用することもできる。
サーマルネガタイプの画像記録層において好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。サーマルネガタイプの画像記録層において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
平版印刷版原版(1)における他のオニウム塩としては、下記一般式(II)及び(III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2010023402
一般式(II)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z21-は(Z11-と同義の対イオンを表す。
一般式(III)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z31-は(Z11-と同義の対イオンを表す。
以下に、サーマルネガタイプの画像記録層において、好適に用いることのできる一般式(II)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−10])、及び一般式(III)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−5])の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2010023402
Figure 2010023402
Figure 2010023402
サーマルネガタイプの画像記録層において重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報に記載されたもの等を挙げることができる。
なお、サーマルネガタイプの画像記録層において用いられる重合開始剤(ラジカル発生剤)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
サーマルネガタイプの画像記録層における重合開始剤の総含有量は、感度及び印刷時の非画像部に汚れの発生の観点から、記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
サーマルネガタイプの画像記録層における重合開始剤としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、例えば、好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合、その含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
サーマルネガタイプの画像記録層に、重合開始剤として好ましい、高感度のスルホニウム塩重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。従って、後述する保護層の高い酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が一層向上する。また、スルホニウム塩重合開始剤はそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
(重合性化合物)
サーマルネガタイプの画像記録層に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、サーマルネガタイプの画像記録層においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(Ra)COOCH2CH(Rb)OH・・・一般式
(ただし、Ra及びRbは、H又はCH2を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、記録層組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
また、サーマルネガタイプの画像記録層では、アルミニウム支持体や保護層等との密着性を向上せしめる目的で後述の特定の構造を選択することもあり得る。
画像記録層中の付加重合性化合物の含有量に関しては、感度、相分離の発生、記録層の粘着性、更には、現像液からの析出性の観点から、記録層組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは40〜75質量%の範囲で使用される。
また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、サーマルネガタイプの画像記録層では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
(バインダーポリマー)
サーマルネガタイプの画像記録層に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。中でも、本発明において好適なバインダーポリマーとしては、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマーと称し、詳細に説明する。
Figure 2010023402
(一般式(i)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
まず、一般式(i)におけるR1は、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。ここで示す総原子数は、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本明細書において、「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
また、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
この中でも、一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、R2は、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、R2は縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
2で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl)2)、ジアリールボリル基(−B(aryl)2)、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH)2)及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
サーマルネガタイプの画像記録層では、記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
一般式(i)におけるAがNR3−である場合のR3は、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このR3で表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
一般式(i)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
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一般式(i)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における特定バインダーポリマーは、一般式(i)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、記録層組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
サーマルネガタイプの画像記録層における特定バインダーポリマーの分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
サーマルネガタイプの画像記録層において用いられるバインダーポリマーは、特定バインダーポリマー単独であってもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%の範囲で用いられる。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。
画像記録層中での特定バインダーポリマー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、記録層組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meg/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
−併用可能な他のバインダーポリマー−
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CH2Z)=CH2、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
かかるバインダーポリマー中のラジカル重合性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
また、併用可能な他のバインダーポリマーは、更に、アルカリ可溶性基を有するものが好ましい。バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、現像カスの析出性や耐刷性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜3.0mmol、より好ましくは0.2〜2.0mmol、最も好ましくは0.45〜1.0mmolである。
このようなバインダーポリマーの質量平均分子量は、皮膜性(耐刷性)や、塗布溶剤への溶解性の観点から、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは20,000〜200,000の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性、耐刷性、及び感度の観点から、好ましくは70〜300℃、より好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜200℃の範囲である。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドやメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
(その他の成分)
サーマルネガタイプの画像記録層には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
−着色剤−
サーマルネガタイプの画像記録層には、その着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料があり、中でも、カチオン性染料が好ましい。
着色剤としての染料及び顔料の添加量は、全記録層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
−重合禁止剤−
サーマルネガタイプの画像記録層には、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、画像記録層中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
−その他の添加剤−
更に、サーマルネガタイプの画像記録層には、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、記録層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、サーマルネガタイプの画像記録層には、膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
<サーマルポジタイプの画像記録層>
サーマルポジタイプの画像記録層としては、水不溶性かつアルカリ可溶性の高分子化合物(以下本明細書において「アルカリ可溶性高分子化合物」という。)と光熱変換物質とを含有するものが挙げられる。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、分子中に酸性基を含有する樹脂およびその2種以上の混合物が挙げられる。特に、フェノール性ヒドロキシ基、スルホンアミド基(−SO2NH−R(式中、Rは炭化水素基を表す。))、活性イミノ基(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R(各式中、Rは上記と同様の意味である。))等の酸性基を有する樹脂がアルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
光熱変換物質としては、記録感度の点で、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好適に挙げられる。染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、とりわけ特開2001−305722号公報に記載されている一般式(I)で表されるシアニン染料が好ましい。
サーマルポジタイプの画像記録層中には、溶解阻止剤を含有させることができる。溶解阻止剤としては、例えば、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0055]に記載されているような溶解阻止剤が好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が画像記録層に好ましく用いられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
<中間層>
サーマルポジタイプの画像記録層とアルミニウム支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
<その他>
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<画像記録層の保護層>
上記のサーマルネガタイプの画像記録層、および、サーマルポジタイプの画像記録層は、通常、露光を大気中で行うために、画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や水分、塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止する目的で、該画像記録層上に保護層を設けることが好ましい。
このような目的で設ける保護層としては、シリカで表面被覆した有機樹脂微粒子(以下、適宜、シリカ被覆微粒子と称する)と、親水性ポリマーとを含有する保護層が好ましい。
なお、サーマルポジタイプの画像記録層上に設ける保護層としては、特開2002−3233769号公報に記載されているものも好ましく用いることができる。
このような目的のために設けられている保護層に、親水性ポリマー、好ましくは、ポリビニルアルコールを主成分とする親水性ポリマーと、シリカで表面被覆された有機樹脂微粒子とを含有させることで、塗布液中での有機樹脂微粒子の安定性が飛躍的に高まり、この塗布液を用いて保護層を形成した平版印刷版原版は、常に優れた膜強度を達成することができ、更に、保護層にマット性を付与することができる。その結果、保護層は、感度の向上だけではなく、経時保存性の向上や、セーフライト適性の向上が達成できると共に、変形などによる劣化やキズの発生を抑制することが可能となる。また、保護層に優れたマット性が付与されることから、平版印刷版原版を積層した場合、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版の支持体裏面との接着及び、保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを抑制することが可能となる。
なお、上記のように保護層は、マット性を付与しうることから、平版印刷版原版の最上層として存在することを要する。
また、保護層は単層の場合には当該層中に、また、保護層が積層構造を有する場合には、保護層を形成する複数の層のいずれかに、雲母化合物を含有することが、酸素遮断性、外部圧力耐性、及び、耐接着性の諸特性を向上させるといった観点から好ましい。
以下、保護層に用いられる各成分について順次説明する。
(シリカ被覆有機樹脂微粒子)
シリカ被覆微粒子は、有機樹脂からなる微粒子をシリカで表面被覆してなる。コアとなる有機樹脂微粒子は、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版のアルミニウム支持体裏面との接着及び、保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを抑制するために添加するものである。このような、マット剤として働く微粒子に望まれる基本的特性は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、空気中の湿分や、温度によって、軟化したり、ベトついたりすることがない樹脂であって、保護層に添加することで、その表面に適当な凹凸を付与し、接着表面積を減少させるものが好ましい。
また、こすりキズ抑制の観点からは、マット剤として働く粒子は、硬いAl面とこすれた時に生じる応力を緩和できるものが好ましい。さらに、微粒子は保護層のバインダーとなる親水性ポリマー、好ましくは、保護層に汎用のポリビニルアルコールと親和性が高く、膜中に良く混練され、且つ、被膜形成後においても、膜表面から脱離し難いものが好ましい。
シリカ被覆微粒子のコアとなる有機樹脂微粒子を構成する有機樹脂としては、先述べたような物性を有する樹脂であれば制限なく使用することができ、例えば、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも、好ましいバインダーであるポリビニルアルコールとの親和性の観点から、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びメラミン樹脂などが好ましい。
また、該有機樹脂微粒子表面を被覆するシリカ層を形成する材料としては、アルコキシシロキサン系化合物の縮合物などのアルコキシシリル基を有する化合物、特に、ゾル−ゲル法にて使用するシロキサン系材料、具体的には、シリカゾル、コロイダルシリカ、シリカナノ粒子などのシリカ微粒子などが好ましく挙げられる。
シリカ被覆微粒子の構成としては、有機樹脂微粒子表面にシリカ微粒子が固体成分として付着しているものであっても、アルコキシシロキサン系化合物を縮合反応させて有機樹脂微粒子表面にシロキサン系化合物層を形成したものであってもよい。
シリカは必ずしも有機樹脂微粒子表面全域を被覆している必要はなく、少なくとも有機樹脂微粒子に対し、0.5質量%以上の量で表面被覆していれば本発明の効果を得ることができる。即ち、有機樹脂微粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在することで、有機微粒子表面におけるPVAとの親和性向上が達成され、外部応力を受けた場合でも微粒子の脱落が抑制され、優れた耐傷性、耐接着性を維持することができる。このため、本明細書における「シリカ被覆」とは、このように有機樹脂微粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在する状態をも包含するものとする。
シリカの表面被覆状態は、走査型電子顕微鏡(TEM)等による形態観察により確認することができ、また、シリカの被覆量は、蛍光X線分析などの元素分析によりSi原子を検知し、そこに存在するシリカの量を算出することで確認することができる。
シリカ被覆微粒子の製造方法としては特に制限はなく、シリカ微粒子あるいはシリカ前駆体化合物を、樹脂微粒子の原料となるモノマー成分と共存させて有機樹脂微粒子形成と同時にシリカ表面被覆層を形成させる方法であってもよく、また、有機樹脂微粒子を形成した後、シリカ微粒子を物理的に表面に付着させ、その後、固定化する方法をとってもよい。
製造方法の一例を挙げれば、まず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸などの水溶性高分子やリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機系懸濁剤などから適宜選択される懸濁安定剤を含む水中に、シリカと、原料樹脂(より具体的には、前記した有機樹脂を構成する、懸濁重合が可能なモノマー、懸濁架橋が可能なプレポリマー、または樹脂液などの原料樹脂)と、を添加、攪拌、混合して、シリカと疎水性原料樹脂とを分散させてなる懸濁液を調製する。その際、懸濁安定剤の種類、その濃度、攪拌回転数などを調節することにより、目的の粒径を有するエマルジョン(懸濁液)を形成することができる。次いで、この懸濁液を加温して反応を開始させ、樹脂原料を、懸濁重合または懸濁架橋させることにより樹脂粒子を生成させる。このとき、共存するシリカが重合或いは架橋反応により硬化する樹脂粒子に、特に、その物性に起因して樹脂粒子表面近傍に、固定化される。その後、これを固液分離し、洗浄により粒子に付着している懸濁安定剤を取り除いて、乾燥させる。これにより、シリカが固定化された所望粒径の略球状の有機樹脂粒子が得られる。
このように、懸濁重合、或いは懸濁架橋の際に条件を制御して所望の大きさの樹脂を得ることもできるが、このような制御を厳密に行うことなくシリカ付着有機樹脂微粒子を生成した後、メッシュ濾過法により所望の大きさのシリカ被覆微粒子を得ることもできる。
上記方法によりシリカ被覆微粒子を製造する際の混合物における原料の添加量としては、原料樹脂とシリカとの総量が100重量部の場合、まず、分散媒である水200〜800重量部に懸濁安定剤0.1〜20重量部を添加し、十分に溶解または分散させ、その液中に、前記した100重量部の原料樹脂とシリカとの混合物を投入し、分散粒子が所定の粒度になるように攪拌速度を調整しながら攪拌し、この粒度調整を行った後に液温を30〜90℃に昇温し、1〜8時間反応させればよい。
シリカ被覆微粒子の製造方法については、前記した方法はその一例であり、例えば、特開2002−327036公報、特開2002−173410公報、特開2004−307837公報、及び、特開2006−38246公報などに詳細に記載され、ここに記載の方法により得られるシリカ被覆微粒子はいずれも平版印刷版原版に好適に使用することができる。
また、保護層に使用しうるシリカ被覆微粒子は市販品としても入手可能であり、具体的な例としては、シリカ/メラミン複合微粒子としては、日産化学工業(株)オプトビーズ2000M,オプトビーズ3500M,オプトビーズ6500M,オプトビーズ10500M,オプトビーズ3500S,オプトビーズ6500Sが挙げられる。シリカ/アクリル複合微粒子としては、根上工業(株)アートパールG−200透明,アートパールG−400透明,アートパールG−800透明,アートパールGR−400透明,アートパールGR−600透明,アートパールGR−800透明,アートパールJ−7Pが挙げられる。シリカ/ウレタン複合微粒子としては、根上工業(株)アートパールC−400透明,C−800透明,P−800T,U−600T,U−800T,CF−600T,CF800T,大日精化(株)ダイナミックビーズCN5070D,ダンプラコートTHUが挙げられる。
シリカ被覆微粒子の形状は、真球状形状が好ましいが、平板形状もしくは投影図が楕円形状となるような所謂紡錘形状であってもよい。
好ましい平均粒子径は1〜30μmφであり、更に好ましくは、1.5〜20μmφであり、もっとも好ましくは、2〜15μmφである。この範囲において十分なスペーサ機能、マット性能を発現することができ、保護層表面への固定化が容易で、外部からの接触応力に対しても優れた保持機能を有する。
保護層におけるシリカ被覆微粒子の好ましい添加量は、5〜1000mg/m2であり、更に好ましくは、10〜500mg/m2であり、もっとも好ましくは、20〜200mg/m2である。
また、保護層全体に対する好ましい添加量としては、保護層全固形分に対し、0.5〜95質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、もっとも好ましくは2〜20質量%の範囲である。
(他の有機樹脂微粒子)
保護層には、前記シリカ被覆有機樹脂微粒子に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の(シリカ被覆層を有しない)有機樹脂微粒子を併用することができる。
併用可能な有機樹脂微粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル類などの合成樹脂からなる微粒子、及び、キチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロース等の天然高分子からなる微粒子などが好ましく挙げられる。
なかでも、合成樹脂微粒子は、粒子サイズ制御の容易さや、表面改質により所望の表面特性を制御し易いなどの利点がある。
このような、有機樹脂微粒子の製造方法は、PMMAのような比較的に硬い樹脂では、破砕法による微粒子化も可能であるが、乳化・懸濁重合法により粒子を合成する方法が、粒子径制御の容易性、精度から現在主流に採用されている。
これら微粒子粉体の製造方法は、「超微粒子と材料」日本材料科学会編、裳華房1993年発刊、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版2005年発刊等に詳細に記載されている。
保護層においてシリカ被覆微粒子と併用可能な有機樹脂微粒子は市販品としても入手可能であり、例えば、綜研化学株式会社製、架橋アクリル樹脂MX−300、MX−500、MX−1000、MX−1500H、MR−2HG、MR−7HG,MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−7G、MR−10G、MR−5C、MR−7GC、スチリル樹脂系のSX−350H、SX−500H、積水化成品工業製アクリル樹脂、MBX−5、MBX−8、MBX−12MBX−15、MBX−20,MB20X−5、MB30X−5、MB30X−8、MB30X−20、SBX−6、SBX−8、SBX−12、SBX−17三井化学製ポリオレフィン樹脂、ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W405、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100などがあげられる。
保護層に任意成分として含まれる他の有機樹脂微粒子の真比重は、0.90から1.30の範囲にあり、平均粒子径が2.0〜15μmであることが好ましく、真比重が、0.90から1.20の範囲にあり、3.0〜12μmであることがより好ましい。
これらの粒子の保護層固形分中の含有量は、1.0〜30質量%が好ましく、2.0〜〜20質量%がより好ましい。また、必須成分であるシリカ被覆微粒子に対して、5.0〜50質量%の範囲であることが好ましい。
これら任意成分としての有機樹脂微粒子は、これを併用することにより、表面マット効果、接着防止効果及び耐キズ性効果が向上するが、添加量が上記好ましい範囲を超えた場合には、感度低下や、保護層表面から有機微粒子が離脱しやすくなるといった問題を生じる懸念がある。
(親水性ポリマー)
保護層を形成するバインダーとしては、均一な皮膜を形成し得るものであれば特に制限はないが、除去性の観点から親水性であることを要し、さらに、以下に詳述する観点から、水溶性ポリマーであることが好ましい。しかしながらこれに限定されるわけではなく、水不溶性ポリマーを本発明の効果を損なわない限りにおいて適宜選択して併用することも可能である。
保護層のバインダーとして使用しうる各種ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
なかでも、保護層の形成に用いられるバインダーポリマーとしては、画像記録層との密着性に優れ、その表面(最表面)は他の材料との接着性が低く、且つ、露光後の現像工程で容易に除去できるポリマーが好ましい。
このような観点から、保護層のバインダー成分としては親水性ポリマーの中でも水溶性ポリマーが好ましく、特に、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが好ましい。ポリビニルアルコールは優れた被膜形成性と比較的低接着性の表面を有する。
保護層において好ましい水溶性ポリマーとして用いられるポリビニルアルコール(PVA)は、ケン化度85から99、好ましくは91.0〜99の化合物が好ましい。ケン化度がこの範囲であれば、必要な酸素遮断性と低接着性表面を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、いずれの構成を有していてもよい。即ち、ポリビニルアルコールの一部が、エステル、エーテル及びアセタールなどで置換されているものでもよいし、また、一部が変性されていてもよいし、更に、他の共重合成分を含むものであってもよい。
一般には、使用するPVAのケン化度が高い程、言い換えれば、未置換ビニルアルコール単位含率が高い程、酸素遮断性が高くなる。このため、保護層は、例えば、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールを主成分とすることが好ましく、後述するように、さらに保護層のいずれかに雲母化合物を併用することにより、保護層の酸素遮断性が一層向上する。
ポリビニルアルコールは、重合度が200〜2400の範囲のものが好ましい。このようなポリマーは市販品としても入手可能であり、具体的には、株式会社クラレ製の、PVA−102、PVA−103、PVA−104、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−117H、PVA−135H、PVA−HC、PVA−617、PVA−624、PVA−706、PVA−613、PVA−CS、PVA−CST、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセノールNL−05、NM−11、NM−14、AL−06、P−610、C−500、A−300、AH−17、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、JF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JM−05、JM−10、JM−17、JM−17L、JT−05、JT−13、JT−15等が挙げられる。
さらに、保護層に用いられる好ましい水溶性ポリマーとしては、例えば、イタコン酸やマレイン酸変性のカルボキシ変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコール等も好適なものとして挙げられ、これら酸変性ポリビニルアルコールも、より好ましく使用できる。
保護層の形成に好適に用いうる酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製の、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、AF−17、AT−17等が挙げられる。
水溶性ポリマー(好ましくはポリビニルアルコール)は、保護層中の全固形分量に対して、45〜95質量%の範囲で含有されることが好ましく、50〜90質量%の範囲で含有されることがより好ましい。この含有量の範囲において、優れた被膜形成性と、それに起因する高感度化及び低接着性が達成され、積層した平版印刷版原版同士の接着を抑制する効果が発現する。
保護層を形成する水溶性ポリマーは1種のみを用いてもよく、目的に応じて複数種を併用してもよい。例えば、PVAにポリビニルピロリドンを併用することで酸素透過性を制御することができる。複数種の水溶性ポリマーを用いる場合においても、それらの総含有量が上記の質量範囲であることが好ましい。
保護層中のポリビニルアルコールの塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。
保護層は、25℃−60%RH1気圧における酸素透過度が、0.5ml/m2・day以上100ml/m2・day以下であることが好ましく、この酸素透過度を達成する組成を選択する。
(保護層形成用塗布液の調製)
保護層の形成にあたっては、シリカ被覆微粒子及び所望により併用される有機樹脂微粒子は、粉体で供給されるものは、保護層の主成分であるポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの水溶液中に、直接添加して分散すればよい。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル、ペイントシェーカーなどの公知の簡易な分散機により分散する方法をとればよい。
このとき、分散安定性向上の目的で所望により界面活性剤を加えることができる。分散安定性向上に用いる界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、何れも使用可能である。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルエステル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類などが挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキルまたはアリールスルホン酸塩型、アルキルまたはアリール硫酸エステル塩型、アルキルまたはアリールリン酸塩エステル型、アルキルまたはアリールカルボン酸塩型の界面活性剤が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩型、アルキルピリジニウム塩型、アルキルアンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。
より具体的には、これら界面活性剤の更に多くの具体例については「最新・界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」堀内照夫、鈴木敏幸編集 技術教育出版社に記載されるものを挙げることができる。
また、シリカ被覆微粒子として、三井化学製ケミーパルシリーズの微粒子を用いる場合、この微粒子は、水に分散した状態で供給されるため、これらの分散物を直接、保護層水溶液中に添加撹拌し、保護層塗布液を作製することができる。
保護層には、前記各成分の他、本発明の効果を損なわない範囲において、種々の添加剤を目的に応じて添加することができる。
例えば、画像記録層を露光する際に用いる光(本発明においては赤外光)の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
〔保護層の層構成〕
保護層は単層構造であっても、複数の層を有する積層構造であってもよい。複数の層を有する場合には、最上層にシリカ被覆微粒子を含有することを要する。
(雲母化合物)
保護層には、雲母化合物を用いることが、酸素遮断性向上の観点から好ましい。雲母化合物を併用する場合、雲母化合物は保護層を構成する層のうち、いずれか一層に含まれていればよい。
例えば、単層構造の特定保護層のみを有する場合、これが最上層となるので、該保護層には、水溶性ポリマー、シリカ被覆微粒子に加え、雲母化合物を添加すればよく、積層構造の保護層の場合には、その最上層は水溶性ポリマーとシリカ被覆微粒子とを含有するが、雲母化合物は最上層に含まれていても、記録層近傍側の他の層中にバインダー、好ましくは水溶性ポリマーとともに含まれていてもよい。
保護層に用いられる雲母化合物とは、例えば、一般式:A(B,C)2-5410(OH,F,O)2〔ただし、Aは、K,Na,Caの何れか、B及びCは、Fe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される如き天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
保護層に用いうる雲母化合物は、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に、合成スメクタイトも有用である。
雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、この膨潤性合成雲母は、100〜150nm(10〜15Å)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明において有用であり、特に、均一な品質の粒子が入手容易であるという観点からも膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、平板状の粒子形状を有するものであり、有機樹脂微粒子への吸着の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
保護層に使用される雲母化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは、厚さが1〜50nm、面サイズ(長径)が1〜20μm程度である。
雲母化合物の保護層に含有される量は、雲母化合物がシリカ被覆微粒子と同一の層に含まれる場合には、シリカ被覆微粒子の添加量及び種類により変動するものの、一般的にはシリカ被覆微粒子の重量に対して雲母粒子の重量比が3:1から2:3の範囲であることが好ましく、2:1から1:1の範囲がより好ましい。
シリカ被覆微粒子に対し、上記範囲において、分散性向上効果及びAl支持体裏面と擦り合わせた時の耐キズ性の向上を両立することができる。複数種の雲母化合物を併用した場合でも、これらの雲母化合物の合計の量が上記の重量比であることが必要である。
また、積層構造を有する保護層の場合、複数ある層のいずれかに雲母化合物を用いればよいが、当該層がシリカ被覆微粒子を含まない層である場合には、水溶性ポリマー100質量部に対して、雲母化合物を5〜50質量部の割合で添加することが好ましい。
(保護層の形成)
保護層は、シリカ被覆微粒子を分散させた分散液と所望により併用される雲母化合物を分散させた分散液とを攪拌混合し、その分散液と、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分(又は、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分を溶解した水溶液)と、を配合してなる保護層用塗布液を、画像記録層上に塗布することで形成することができる。なお、保護層塗布液の調製時におけるシリカ被覆微粒子、雲母化合物及び親水性ポリマーの配合順序は、目的に応じて適宜変更することも可能である。具体的には、例えば、既述の如く、粉体で供給される粒子成分を、親水性ポリマー溶液中に直接添加して分散させることもできる。また、予め調製された粒子分散液に併用する他の粒子を直接添加して分散させることもできる。
なお、複数の層構成を有する保護層であって、雲母化合物が最上層ではなく、より記録層の近傍に存在する層に添加される場合には、当該層には、シリカ被覆微粒子を配合する必要がないことから、最上層の保護層塗布液は記述のように調製し、雲母化合物を含む層は、以下に詳述する方法により雲母化合物を分散させた塗布液を用いて形成すればよい。
保護層に用いる雲母化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に雲母化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性雲母化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。
ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。
上記の方法で分散した雲母化合物の2〜15質量%の分散物は高粘度或いはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、シリカ被覆微粒子や有機樹脂微粒子と併用する場合にはこれらの水分散物とを混合し、充分攪拌した後、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分(又は、特定ポリビニルアルコールを含むバインダー成分を溶解した水溶液)と配合して調製するのが好ましい。同一層においてシリカ被覆微粒子などと共存しない場合には、この分散物とバインダー成分とを配合して調製すればよい。
この保護層用塗布液には、塗布性を向上させための界面活性剤や被膜の物性改良のための水溶性の可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。更に、この塗布液には、記録層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号又は特開昭55−49729号に記載されている方法を適用することができる。
保護層の塗布量は、単層構造の保護層の場合、0.1g/m2〜4.0g/m2であることが好ましく、0.3g/m2〜3.0g/m2であることがさらに好ましい。この塗布量の範囲において、保護層の膜強度が良好に維持され、耐キズ性に優れる。また、露光により保護層に入射した光の透過性、酸素遮断性が適切な範囲に保たれるため、画質悪化やセーフライト適性が悪化する懸念もない。
保護層が積層構造を有する場合、シリカ被覆微粒子を含有する最上層の塗布量は、0.1g/m2〜3.0g/m2であることが好ましく、0.5g/m2〜2.0g/m2であることがさらに好ましい。最上層と記録層との間に設けられる保護層の塗布量は0.1g/m2〜2.0g/m2であることが好ましく、0.2g/m2〜1.0g/m2であることがさらに好ましい。
保護層が積層構造を有する場合、最上層と画像記録層との間に設けられる層には、酸素遮断性に優れた水溶性ポリマーと雲母化合物とを含有することが、酸素遮断性とマット性の両立という観点から好ましい。
(アルミニウム支持体の裏面処理)
本発明の平版印刷版原版には、耐傷性をより向上させる目的で、アルミニウム支持体裏面を修飾することが好ましい。アルミニウム支持体裏面の修飾方法としては、例えば、アルミニウム支持体の裏面に、記録層側と同じ様に全面に均一に陽極酸化皮膜を形成する方法や、バックコート層を形成する方法などが挙げられる。陽極酸化皮膜を形成する方法をとる場合の被膜形成量としては、0.6g/m2以上であることが好ましく、0.7〜6g/m2の範囲であることが好ましい。これらのうち、バックコート層を設ける方法がより有効であり好ましい。以下、これらの裏面処理方法について説明する。
(1.裏面陽極酸化皮膜の形成方法)
最初に、アルミニウム支持体裏面に、画像記録層側と同じ様に全面に均一に陽極酸化皮膜を0.6g/m2以上形成する方法について記載する。陽極酸化皮膜の形成は、アルミニウム支持体の表面処理において説明したのと同様の手段により行われる。支持体裏面に設けられる陽極酸化皮膜の厚みは、0.6g/m2以上であれば有効であり、性能上の観点からはその上限には特に制限はないが、皮膜形成時の電力などのエネルギー、形成に要する時間などを考慮すれば6g/m2程度であればよく、実用的な好ましい皮膜量は0.7g〜6g/m2であり、より好ましい範囲としては1.0g〜3g/m2である。
陽極酸化皮膜の量は、蛍光X線を用い、Al23のピークを測定し、ピーク高さと被膜量の検量線により、換算することができる。
アルミニウム支持体の面に陽極酸化皮膜が全面に設けられ、その量が0.6g/m2以上であることは、平版印刷版原版におけるアルミニウム支持体の画像記録層と反対側の陽極酸化皮膜を有する面の中央部と、その中央部を通り、処理方向(Machine Direction)に直交する方向(Transverse Direction)における両端から各々5cmの端部について、いずれもが陽極酸化皮膜量0.6g/m2以上であることにより確認される。
(2.バックコート層の形成方法)
次に、アルミニウム支持体裏面にバックコート層を設ける方法について記載する。バックコート層としては、どのような組成のものを用いてもよいが、特に、以下に詳述する有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物と、コロイダルシリカゾルとを含むバックコート層や有機樹脂被膜からなるバックコート層が好ましく挙げられる。
(2−1.金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層)
バックコート層の好ましい第1の態様として、金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層が挙げられる。
より具体的には、有機金属化合物あるいは無機金属化合物を水および有機溶媒中で、酸、またはアルカリなどの触媒で加水分解、及び縮重合反応を起こさせたいわゆるゾル−ゲル反応液により形成されるバックコート層が好ましい。
バックコート層形成に用いる有機金属化合物あるいは無機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物およびこれらを部分加水分解してオリゴマー化した縮合物が挙げられる。
金属アルコキシドはM(OR)nの一般式で表される(Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数を示す)。具体例としては、例えば、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494、Al(OCH33、Al(OC253、Al(OC373、Al(OC493、B(OCH33、B(OC253、B(OC373、B(OC493、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(OC374、Ti(OC494、Zr(OCH34、Zr(OC254、Zr(OC374、Zr(OC494などが挙げられ、その他にも、例えば、Ge、Li、Na、Fe、Ga、Mg、P、Sb、Sn、Ta、Vなどの原子のアルコキシドが挙げられる。さらに、CH3Si(OCH33、C25Si(OCH33、CH3Si(OC253、C25Si(OCC253などのモノ置換珪素アルコキシドも用いられる。
これらの有機金属化合物あるいは無機金属化合物は単独、または二つ以上のものを組み合わせて用いることができる。これらの有機金属化合物あるいは無機金属化合物のなかでは金属アルコキシドが反応性に富み、金属−酸素の結合からできた重合体を生成しやすく好ましい。それらのうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494、などの珪素のアルコキシド化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が優れており特に好ましい。また、これらの珪素のアルコキシド化合物を部分加水分解して縮合したオリゴマーも好ましい。この例としては、約40質量%のSiO2を含有する平均5量体のエチルシリケートオリゴマーが挙げられる。
さらに、前記珪素のテトラアルコキシ化合物の一個または二個のアルコキシ基をアルキル基や反応性を持った基で置換したいわゆるシランカップリング剤を、これら金属アルコキシドと併用することも好ましい例として挙げられる。本発明におけるバックコート層に添加するシランカップリング剤としては、前記珪素のテトラアルコキシ化合物における一個または二個のアルコキシ基を炭素数4〜20の長鎖アルキル、フッ素置換アルキル基などの疎水性の置換基で置換したシランカップリング剤が挙げられ、特にフッ素置換アルキル基を有するシランカップリング剤が好ましい。この様なシランカップリング剤の具体例としては、CF3CH2CH2Si(OCH33、CF3CF2CH2CH2Si(OCH33、CF3CH2CH2Si(OC253などが挙げられ、市販品では、信越化学株式会社製LS−1090等が挙げられる。このようなシランカップリング剤の好ましい含有量は、バックコート層全固形分の5〜90質量%であり、より好ましく10〜80質量%の範囲である。
バックコート層のゾル−ゲル塗布液を形成する際に有用な触媒としては、有機、無機の酸およびアルカリが用いられる。その例としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素酸、リン酸、亜リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フロロ酢酸、ブロモ酢酸、メトキシ酢酸、オキサロ酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、アスコルビン酸、安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸のような置換安息香酸、フェノキシ酢酸、フタル酸、ピクリン酸、ニコチン酸、ピコリン酸、ピラジン、ピラゾール、ジピコリン酸、アジピン酸、p−トルイル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸などの有機酸、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリが挙げられる。
他の好ましい触媒として、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、およびリン酸エステル類など、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニルなどの有機酸も使用できる。
これらの触媒は単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。触媒は原料の金属化合物に対して0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。触媒量がこの範囲より少ないとゾル−ゲル反応の開始が遅くなり、この範囲より多いと反応が急速に進み、不均一なゾル−ゲル粒子ができるため、得られる被覆層は剥離しやすいものとなる。
ゾル−ゲル反応を開始させるには更に適量の水が必要であり、その好ましい添加量は原料の金属化合物を完全に加水分解するのに必要な水の量の0.05〜50倍モルが好ましく、より好ましくは0.5〜30倍モルである。水の量がこの範囲より少ないと加水分解が進みにくく、この範囲より多いと原料が薄められるためか、やはり反応が進みにくくなる。
ゾル−ゲル反応液には更に溶媒が添加される。溶媒は原料の金属化合物を溶解し、反応で生じたゾル−ゲル粒子を溶解または分散するものであればよく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類が用いられる。またバックコート層の塗布面質向上等の目的でエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールなどのグリコール類のモノまたはジアルキルエーテルおよび酢酸エステルを用いることができる。これらの溶媒の中で水と混合可能な低級アルコール類が好ましい。ゾル−ゲル反応液は塗布するのに適した濃度に溶媒で調製されるが、溶媒の全量を最初から反応液に加えると原料が希釈されるためか加水分解反応が進みにくくなる。そこで溶媒の一部をゾル−ゲル反応液に加え、反応が進んだ時点で残りの溶媒を加える方法が好ましい。
このようにして形成された金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層の塗布量としては、0.01〜3.0g/m2であることが好ましく、0.03〜1.0g/m2であることがさらに好ましい。
(2−2.有機樹脂被膜からなるバックコート層)
バックコート層の他の好ましい例としては、支持体裏面に形成された有機樹脂被膜からなるバックコート層が挙げられる。
バックコート層を形成しうる好ましい樹脂としては、例えば、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、形成される層の物理的強度が高いという観点から、フェノール樹脂が好ましく、より具体的には、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
また、フェノール樹脂としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
フェノール樹脂としては、その重量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
また、これらのフェノール樹脂は単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有する有機樹脂などを併用してもよい。
バックコート層には、塗布面状性の改良や表面物性制御の目的で、界面活性剤添加することができる。ここで用いられる界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル及び燐酸エステルのいずれかを有するアニオン型の界面活性剤;脂肪族アミン、第4級アンモニウム塩のようなカチオン型の界面活性剤;ベタイン型の両性界面活性剤;又は、ポリオキシ化合物の脂肪酸エステル、ポリアルキンレンオキシド縮合型、ポリエチレンイミン縮合型の様なノニオン型界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、特にフッ素系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、バックコート層中に0.1〜10.0質量%の範囲で添加することができる。
フッ素系界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤が特に好ましい。このようなフッ素系界面活性剤について詳細に述べる。
バックコート層に特に好適に使用しうるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。更にこれらの中でも前記フルオロ脂肪族基が下記一般式(1)で表される基であることが好ましい。
Figure 2010023402
(前記一般式(1)中、R2及びR3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基を表し、Xは単結合もしくはアルキレン基、アリーレン基などから選択される2価の連結基を表し、mは0以上の整数、nは1以上の整数を表す。)
ここで、Xが2価の連結基を表すとき、アルキレン基、アリーレン基等の連結基は、置換基を有するものであってもよく、また、その構造中に、エーテル基、エステル基、アミド基などから選ばれる連結基を有するものであってもよい。アルキレン基、アリーレン基に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これらはさらに置換基を有するものであってもよい。これらのうち、Xとしては、アルキレン基、アリーレン基、又は、エーテル基、エステル基、アミド基などから選ばれる連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、又は、内部にエーテル基或いはエステル基を有するアルキレン基がより好ましく、無置換のアルキレン基、又は、内部にエーテル基或いはエステル基を有するアルキレン基が最も好ましい。
このようなフッ素系界面活性剤をバックコート層中に0.5〜10質量%程度含むことが好ましい。
有機樹脂被膜からなるバックコート層をアルミニウム支持体の裏面に被覆するには種々の方法が適用できる。バックコート層成分、具体的には、有機樹脂を主成分とする各原料に所望によりシリカゲル等の微粒子を添加した後、例えば適当な溶媒に溶解して、または乳化分散液にして塗布液を調製し、支持体裏面に塗布し、乾燥する方法や、予めフィルム状に成形した有機樹脂膜を、接着剤を介して或いは加熱により、アルミニウム支持体に貼り合わせる方法、溶融押し出し機で溶融皮膜を形成し、支持体に貼り合わせる方法等が挙げられる。なかでも、塗布量制御の容易性の観点から最も好ましいのは溶液にして塗布、乾燥する方法である。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。
バックコート層塗布液をアルミニウム支持体表面に塗布する手段としては、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、あるいはカーテンコーター、エクストルーダ、スライドホッパー等公知の計量塗布装置を挙げることができるが、アルミニウム支持体裏面に傷を付け無い点からカーテンコーター、エクストルーダ、スライドホッパー等の非接触型定量コーターが特に好ましい。
バックコート層の厚さは、金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層、有機樹脂からなるバックコート層のいずれにおいても、形成された膜厚が0.1〜8μmの範囲であることが好ましい。この厚さの範囲において、アルミニウム支持体裏面の表面滑り性が向上し、且つ、印刷中、印刷周辺で用いられる薬品によるバックコート層の溶解や膨潤による厚みの変動、及び、それに起因する印圧が変化による印刷特性の劣化を抑制することができる。
上記バックコート層において、最も好ましいのは、有機樹脂からなるバックコート層である。
〔平版印刷版原版の作製〕
平版印刷版原版は、アルミニウム支持体上に、画像記録層に設け、更に必要に応じて、保護層および下塗り層等を設けてなる。かかる平版印刷版原版は、上述の各種成分を含む塗布液を、それぞれ、適当な溶媒に溶かして、アルミニウム支持体上に、順次塗布することにより製造することができる。
画像記録層を塗設する際には、前記画像記録層の成分を種々の有機溶剤に溶かして、画像記録層塗布液とし、アルミニウム支持体又は下塗り層上に塗布される。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、画像記録層塗布液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
前記画像記録層の被覆量は、主に、画像記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。走査露光用平版印刷版原版としては、その被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
〔中間層(下塗り層)〕
平版印刷版原版には、画像記録層とアルミニウム支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層(下塗り層)を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−84674号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352854号、特開2001−209170号、特願平11−284091号等に記載のものを挙げることができる。
<製版方法>
以下、平版印刷版原版の製版方法の一例について説明する。
平版印刷版原版の製版方法は、上述の平版印刷版原版を複数枚積層してなる積層体(好ましくは、画像記録層上に保護層が形成されており、該保護層とアルミニウム支持体裏面とが接触するように平版印刷版を積層させる)を、プレートセッター内にセットし、該平版印刷版原版を1枚ずつ自動搬送した後に、750nm〜1400nmの波長で露光処理した後、実質的に加熱処理を経ることなく、搬送速度が1.25m/分以上の条件にて現像処理を行なうことが好ましい。
上述の平版印刷版原版は、中間に合紙を挟み込むことなく積層しても、平版印刷版原版の間の密着性や、保護層へのキズの発生が抑制されるため、上記のような製版方法に適用することができる。
上述の平版印刷版の製版方法によれば、平版印刷版原版を、合紙を挟み込むことなく積層した積層体を用いることから、合紙の除去が不必要となり、製版工程における生産性が向上する。
露光処理に用いられる光源としては、750nm〜1400nmの波長で露光し得るものであれば、如何なるものでもよいが、赤外線レーザが好適なものとして挙げられる。中でも、本発明においては、750nm〜1400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると、サーマルネガタイプの画像記録層の場合、画像記録層の硬化が十分に進行しない。また、サーマルポジタイプの画像記録層の場合、アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用が十分解除されない。また、また、露光のエネルギーが高すぎると記録層がレーザブレーションされ、画像が損傷することがある。
露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
本発明においては、上述のように、露光処理された平版印刷版原版は、特段の加熱処理及び水洗処理を行なうことなく、現像処理に供される。この加熱処理を行なわないことで、加熱処理に起因する画像の不均一性を抑制することができる。また、加熱処理及び水洗処理を行なわないことで、現像処理において安定な高速処理が可能となる。
〔現像〕
現像処理では、現像液を用いて、画像記録層の非画像部を除去する。
なお、本発明においては、上述のように、現像処理における処理速度、即ち、現像処理における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることが好ましく、より好ましくは、1.35m/分以上である。また、搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
以下、本発明に用いられる現像液について説明する。
(現像液)
本発明に用いられる現像液は、pH14以下のアルカリ水溶液であることが好ましく、また、芳香族アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
(芳香族アニオン界面活性剤)
現像液に用いられる芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の記録層成分及び保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化において好ましい。中でも、芳香族アニオン界面活性剤としては、下記一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2010023402
上記一般式(A)又は一般式(B)において、R1、R3は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
m、nは、それぞれ独立に、1〜100から選択される整数を表し、中でも、1〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、mが2以上の場合、複数存在するR1は同一でも異なっていてもよい。同じく、nが2以上の場合、複数存在するR3は同一でも異なっていてもよい。
t、uは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
2、R4は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y1、Y2は、それぞれ単結合、又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましく、特に単結合が好ましい。
(Z1r+、(Z2s+は、それぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、或いは、無置換又はアルキル基で置換されたアンモニウムイオンを表し、具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜20の範囲の、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基が置換した2級〜4級のアンモニウムイオンなどが挙げられ、特に、ナトリウムイオンが好ましい。r、sはそれぞれ、1又は2を表す。
以下に、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2010023402
Figure 2010023402
これら芳香族アニオン界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。芳香族アニオン界面活性剤の添加量は、現像液中における芳香族アニオン界面活性剤の濃度が1.0〜10質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%の範囲とすることが効果的である。ここで、含有量が1.0質量%以下であると、現像性低下及び画像記録層成分の溶解性低下を招き、含有量が10質量%以上であると、平版印刷版の耐刷性を低下させる。
現像液には、前記芳香族アニオン界面活性剤以外に、その他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤である。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から10質量%が好ましい。
(2価金属に対するキレート剤)
現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na227、Na533、Na339、Na24P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
また、現像液には、現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。例えば、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
(アルカリ剤)
現像液に用いられるアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、及び同リチウムなどの無機アルカリ剤及び、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
また、上記以外のアルカリ剤として、アルカリ珪酸塩を挙げることができる。アルカリ珪酸塩は塩基と組み合わせて使用してもよい。使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液は、アルミニウム支持体の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2と、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す)との混合比率、及び濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2Oのモル比)は、アルミニウム支持体の陽極酸化皮膜が過度に溶解(エッチング)されることに起因する放置汚れや、溶解アルミニウムと珪酸塩との錯体形成に起因する不溶性ガスの発生を抑制するといった観点から、好ましくは0.75〜4.0の範囲であり、より好ましくは0.75〜3.5の範囲で使用される。
また、現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、アルミニウム支持体の陽極酸化皮膜の溶解(エッチング)抑制効果、現像性、沈殿や結晶生成の抑制効果、及び廃液時における中和の際のゲル化防止効果などの観点から、現像液の質量に対して、SiO2量として、0.01〜1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8mol/Lの範囲で使用される。
現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下のような成分を併用することができる。例えば、安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;プロピレングリコール等の有機溶剤;この他、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
現像液は、25℃におけるpHが10〜12.5の範囲であることが好ましく、pH11〜12.5の範囲であることがより好ましい。本発明における現像液は、前記界面活性剤を含むため、このような低pHの現像液を用いても、非画像部において優れた現像性を発現する。このように、現像液のpHを比較的低い値とすることにより、現像時における画像部へのダメージを軽減するとともに、現像液の取扱い性にも優れる。
また、該現像液の導電率xは、2<x<30mS/cmであることが好ましく、5〜25mS/cmであることがより好ましい。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
上記の現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液及び現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
更に、自動現像機を用いて、現像液の処理能力を回復させるためには、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各公報に記載されている現像液も好ましい。
より好ましい現像補充液は、アルミニウムイオンと水溶性キレート化合物形成能を有するオキシカルボン酸キレート剤と、アルカリ金属の水酸化物と、界面活性剤とを含有し、ケイ酸塩を含有せず、pH11〜13.5の水溶液であることを特徴とする現像補充液である。このような現像補充液を使用することにより、優れた現像性と版材の画像部の強度を損なうことの無い特性を有し、現像液のアルカリによりアルミニウム支持体が溶出されて形成する水酸化アルミニウムの析出が効果的に抑制され、自動現像機の現像浴ローラ表面への水酸化アルミニウムを主成分とする汚れの付着や、引き続く水洗浴内への水酸化アルミニウム析出物の蓄積が低減され、長期間安定に処理することができる。
このようにして現像処理された平版印刷版原版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。
平版印刷版の製版方法においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うこともできる。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合にはアルミニウム支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来公知のPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、マルチクリーナー、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、本発明の効果を実証する。これらの
実施例は、本発明の好ましい一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1−1〜1−20、比較例1−1]
組成がFe:0.30wt%、Si:0.09wt%、Cu:0.015wt%、Ti:0.03wt%、MgおよびMn:表1に示す含有量、残部がAlおよび不可避不純物のアルミニウム合金を溶解、鋳造し、得られた鋳塊の圧延面を5mm/片面ずつ面削して厚さ500mmとし、各鋳塊について均質化処理(温度:540℃、3時間)、熱間粗圧延(開始温度:455℃、終了温度:460℃)、熱間仕上げ圧延をおこない、板厚4.5mmのアルミニウム合金板としてコイルに巻き取った。なお、熱間圧延終了後且つ熱間圧延開始前の保持時間:100秒、熱間仕上げ圧延終了温度:345℃であった。
このアルミニウム合金板を、更に冷間圧延処理、平面性矯正処理をおこない、板厚0.297mmに仕上げた。
このアルミニウム合金板表層部の圧延方向と直交する方向における平均再結晶粒径は0.02〜0.04mmであった。
また、このアルミニウム合金板表層部の圧延方向に引き延ばされた結晶長さは平均で0.55〜0.85mmであった。
平均再結晶粒径および結晶長さの測定は、得られた各アルミニウム合金板について、表面を#800の耐水研磨紙で表面粗さRa(JIS B0601−1994に規定される算術平均粗さ(カットオフ値0.8mm、評価長さ4mm))が0.2となる程度に仕上げ、更にアルミナ懸濁液(粒子径0.05μm)を用いて約1〜1.5μmバフ研磨した後、10%フッ化水素酸水溶液で約0.5〜1.0μmエッチング処理を行った。このようにして、結晶粒界を観察することができるようにし、偏光顕微鏡で結晶組織を写真撮影して、アルミニウム合金板の表面から深さ50μmまでの表層部に位置する結晶粒20個について幅と長さを測定し、平均値および最大値を求めた。
上記の手順で得たアルミニウム合金板を、下記粗面化方法AまたはBにより粗面化処理することで平版印刷版用アルミニウム支持体を得た。
粗面化方法A
アルミニウム合金板に、以下の(a)〜(j)の各種表面処理を連続的におこなった。
以下、各表面処理(a)〜(j)を説明する。
(a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン)<機械的粗面化処理>
研磨剤(パミス、メジアン径25μm)の水懸濁液(比重1.1g/cm3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。
ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ400mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。
ブラシの回転数を調整して、所望のRaとなるようにした。
(b)アルカリエッチング処理 <第1エッチング処理>
アルカリエッチング処理は、カセイソーダ濃度26質量%およびアルミニウムイオン濃度6.5質量%、液温70℃のカセイソーダ水溶液を用いスプレーにより、10g/m2のアルミニウム溶解量となるようにエッチング処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(c)デスマット処理<第1デスマット処理>
硝酸10g/l、アルミニウムイオン5g/l、液温35℃の水溶液中に10秒間浸せきしてデスマット処理をおこなった。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(d)電気化学的粗面化処理(硝酸水溶液中での電解粗面化処理電解)<第1電解粗面化処理>
周波数60Hzの台形波形の交流電流を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、硝酸10g/l、アルミニウムイオン5g/l、液温50℃であった。使用した台形の交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty0.5、電流密度は電流波形のピーク値で50A/dm2であった。
電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dm2であった。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(e)アルカリエッチング処理<第2エッチング処理>
アルカリエッチング処理は、カセイソーダ濃度26質量%およびアルミニウムイオン濃度6.5質量%、液温35℃のカセイソーダ水溶液を用いスプレーにより、0.2g/m2のアルミニウム溶解量となるようにエッチング処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(f)デスマット処理<第2デスマット処理>
硫酸170g/L、アルミニウムイオン7g/lの水溶液、35℃に10秒間浸せきしてデスマット処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(g)電気化学的粗面化処理(塩酸水溶液中での電解粗面化処理)<第2電解粗面化処理>
周波数60Hzの台形波形の交流電流を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、塩酸7g/l、アルミニウムイオン5g/l、液温35℃であった。使用した台形の交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty0.5、電流密度は電流波形のピーク値で50A/dm2であった。
電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dm2であった。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(h)アルカリエッチング処理<第3アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、カセイソーダ濃度5質量%およびアルミニウムイオン濃度0.5質量%、液温35℃のカセイソーダ水溶液を用いスプレーにより、0.1g/m2のアルミニウム溶解量となるようにエッチング処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(i)デスマット処理<第3デスマット処理>
硫酸170g/L、アルミニウムイオン 7g/lの水溶液、35℃に10秒間浸せきしてデスマット処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
(j)陽極酸化処理<陽極酸化処理>
硫酸 170g/l、アルミニウムイオン 7g/l、液温 50℃、の電解液中で、電流密度 30A/dm2の直流電流を用いて、陽極酸化皮膜量が2.9g/m2となるように陽極酸化処理をおこなった。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
粗面化方法B
前記、粗面化方法Aの、(a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン)、(g)電気化学的粗面化処理(塩酸水溶液中での電解粗面化処理)、(h)アルカリエッチング処理、(i)デスマット処理をおこなわなかった以外は、粗面化方法Aと同様に粗面化処理をおこなった。
粗面化方法AまたはBにより粗面化処理することでアルミニウム支持体の中心線平均表面粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定した。結果を表1に示す。粗面化方法AのRaは、ブラシの回転数を調整することで所望のものを得た。
(i)引っ張り強度および0.2%耐力の測定
粗面化方法AまたはBにより粗面化処理することで得られたアルミニウム支持体について、JIS Z2241(金属材料引張試験方法)に基づき、島津製作所製オートグラフ(AGS−5KNH)を用いて、引張速度:2mm/分の条件で引っ張り強度および0.2%耐力を測定した。
得られた結果を表1に示す。
(ii)粗面化処理後のアルミニウム支持体の比表面積の測定。
粗面化方法AまたはBにより粗面化処理することで得られたアルミニウム支持体について、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて測定された三次元データによる実面積から下記式(I)による算出された比表面積ΔSを求めた。なお、ΔSは 原子間力顕微鏡を用い25μm平方を256×256点測定して得られる3次元データから、以下の式(I)より算出される値である。
ΔS=(近似三点法により求めた表面積−幾何学的面積)/幾何学的面積 ×100(%) 式(I)
本発明で測定に使用した原子間力顕微鏡は、セイコー電子工業(株)製であり、コントローラSPI−3000、測定装置がSPA−400で、測定は1cm角の大きさに切り取ったアルミニウム板をピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾ変位でとらえた。カンチレバーはオリンパス社製 OMCL−AC160TS−C2 で、共振周波数300kHz、バネ定数42N/mのもので、DFMモード(Dinamic Force 00)で測定した。また、得られた3次元データを最小2乗近似することで試料の僅かな傾きを補正し、基準面を求めた。
また、粗面化処理後のアルカリエッチング液の汚染を目視で観察し、以下の判定項目で評価した。得られた結果を表1に示す。
○:液の色がグレーである
△:液の色がグレーから黒色
サーマルネガタイプの平版印刷版原版の作成
上記の手順で得られたアルミニウム支持体に、以下の手順でサーマルネガタイプの画像記録層を形成して平版印刷版原版を得た。
<下塗り層>
上記の手順で得られたアルミニウム支持体に、下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/m2であった。
(下塗り層用塗布液)
・下記構造の高分子化合物A(重量平均分子量:3万) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
Figure 2010023402
(画像記録層の形成)
下記記録層塗布液[P−1]を調製し、上記のアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行い、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.4g/m2であった。
<記録層塗布液[P−1]>
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.074g
・重合開始剤(OS−12) 0.280g
・添加剤(PM−1) 0.151g
・重合性化合物(AM−1) 1.00g
・特定バインダーポリマー(BT−1) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
なお、上記記録層塗布液に用いた重合開始剤(OS−12)は、前述の一般式(1)で表されるオニウム塩の化合物例として挙げられているものを指す。また、赤外線吸収剤(IR−1)、添加剤(PM−1)、重合性化合物(AM−1)、バインダーポリマー(BT−1)、及びエチルバイオレット(C−1)の構造を以下に示す。
Figure 2010023402
(保護層の形成)
前記の如く、記録層塗布液[P−1]を用いて形成した記録層の表面に、下記保護層塗布液[1]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させたて保護層を形成し平版印刷版原版を得た。
この保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.6g/m2であった。
<保護層塗布液[1]>
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製) 94g
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
58g
・第一工業製薬(株)セロゲンPR 24g
・界面活性剤−1(BASF社製、プルロニックP−84) 2.5g
・界面活性剤−2(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・シリカ複合有機樹脂微粒子水分散物(オプトビーズ6500M水分散物) 15g
・純水 1364g
上記の手順で得られた平版印刷版原版に対して、以下の手順で露光、現像および印刷を行い、版ズレ、耐汚れ性能、耐刷性を評価した。
露光、現像
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter800II Quantumにて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数200rpm、出力7Wで露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。露光後、加熱処理、水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液はDH−Nの1:4水希釈液を用い、現像 補充液はFCT−421の1:1.4水希釈、フィニッシャーは富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1水希釈液を用いた。
印刷
この版を、東京機械製作所製の輪転印刷機「Color Top 6000」の版胴に装着した後、版と版胴にまたがる形で罫書きをし、10万部/ 時の印刷速度で、5万部刷了した。その後、版上の罫書きと版胴の罫書きのずれを、版ズレとして目視で観察し、以下の判定項目で評価した。
○:版ズレ無し
○△:やや版ズレあり
△:版ズレはあるが許容レベル(下限)
×:版ズレ有り、不可。
得られた結果を表1に示す。
同時に、印刷物非画像部の汚れ具合(インキの付着具合)を、耐汚れ性能として目視で評価した。判定項目は以下の通り。
○:ほとんど汚れていない
△:やや汚れているが許容範囲
得られた結果を表1に示す。
同時に、印刷物画像部の(インキの付着具合)を、耐刷性能として目視で評価した。
○:良好に印刷されている
△:ややかすれているが許容範囲
得られた結果を表1に示す。
また、得られた平版印刷版原版に対して以下の手順で耐キズ性を評価した。
得られた平版印刷版原版20枚の間に合紙を挟むことなく積層して積層体を形成した。この積層体を、既にカセットにセットしてある平版印刷版原版の上にエッジから5cmずらして(積層した20枚の版材がカセット内の版材のエッジから5cm外側へ飛び出した状態で)重ねた後、飛び出した20枚の版材のエッジを水平方向に押し込んで、積層した20枚の一番下の版の裏面アルミニウム支持体が、カセット中の最上の平版印刷版原版の保護層表面をこするようにしながら、カセット内へ設置した。この保護層表面を、アルミニウム支持体裏面でこすられた版材を、耐キズ性の評価用版材とした。この版材をセッティング部分からオートローダーにて、Creo社製Trendsetter3244に搬送し、解像度2400dpiで50%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cm2で露光した。露光後、上記版ズレ評価と同様に現像処理を行なった。得られた平版印刷版の平網画像中に発生したキズの有無を目視評価した。評価は1点(悪い)〜5点(優良)の官能評価で行い、3点が実用下限レベルとした。
また、得られた平版印刷版原版に対して以下の手順で版の曲げやすさを評価した。
アルミニウム合金板のような金属の板を曲げ加工すると、加工後、板は弾性によって曲げ変形が幾分元に戻る。この現象をスプリングバックという。通常平版印刷版原版は、両端を折り曲げて、オフセット印刷機の版胴と呼ばれるドラムに折り曲げ部分を固定して使用されるが、折り曲げた角度に対して、板に残った曲げ部分の角度が充分でないと版胴に取り付け難いという不具合が生じる。そのため、一般的に所定の角度Aに曲げを与えた後、板に残った曲げ部分の角度Bを測定し、AとBの差をスプリングバック量として評価する。
本実施例では、平版印刷版原版を角度135度(角度A)、先端の曲率半径1mmの治具に巻き付けて折り曲げた。その後力をかけるのを止めて、平版印刷版原版に残った曲げ角度Bを測定した。AとBの差が15度以下のものを○、15度を超え20度以下を○△、20度を超えるものを△とした。
サーマルポジタイプの平版印刷版原版の作成
上記の手順で得られたアルミニウム支持体に、以下の手順でサーマルポジタイプの画像記録層を形成して平版印刷版原版を得た。
上記の手順で得られたアルミニウム支持体に、35℃の3号ケイ酸ソーダ水溶液(Na2O:SiO2=1:3、SiO2含有量30質量%、日本化学工業社製、濃度1質量%)に10秒間浸せきさせた。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その後、水洗、乾燥したアルミニウム支持体に下記に示すサーマルポジタイプの画像記録層を形成した。
(下塗層の形成)
アルミニウム支持体に下記組成の下塗液Iを塗布し、80℃で30秒間乾燥させ、下塗層を形成させた。乾燥後の被覆量は30mg/m2であった。
<下塗液I組成>
・下記式で表される高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2010023402
下塗層の上に下記組成の画像記録層用塗布液Aを塗布し、TABAI社製のPERFECT OVEN PH200を用いてWind Controlを7に設定して140℃で50秒間乾燥させてA層を形成させた。乾燥後の被覆量は0.85g/m2であった。
<画像記録層用塗布液A組成>
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチルの共重合体(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000) 1.896g
・クレゾール−ノボラック樹脂(m/p=6/4、重量平均分子量4,500、残存モノマー0.8質量%) 0.237g
・下記式で表されるシアニン染料A 0.109g
・4,4′−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.063g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシナフタレンスルホンに変えたもの 0.05g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製) 0.035g
・メチルエチルケトン 26.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.6g
・γ−ブチロラクトン 13.8g
Figure 2010023402
A層の上に下記組成の画像記録層用塗布液Bを塗布し、120℃で1分間乾燥させてB層を形成させ、2層構造のサーマルポジタイプの画像記録層を形成させて、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は0.15g/m2であった。
<画像記録層用塗布液B組成>
・m,p−クレゾールノボラック樹脂(m/p比=6/4、重量平均分子量4500、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.237g
・上記式で表されるシアニン染料A 0.047g
・ステアリン酸ドデシル 0.060g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート 0.030g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製) 0.110g
・フッ素系界面活性剤(メガファックMCF−312(30質量%)、大日本インキ化学工業社製) 0.120g
・メチルエチルケトン 15.1g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.7 g
上記で得られた平版印刷版原版を以下の方法で露光、現像処理した。
得られた各平版印刷版原版を出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザを装備したCREO社製TrenndSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cm2で像様露光した。その後、非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウム(K2O)からなるカリウム塩5.0質量%および消泡剤(オルフィンAK−02、日信化学社製)0.015質量%を含有する水溶液1Lに、C1225N(CH2CH2COONa)21.0gを添加したアルカリ現像液を用いて現像処理を行った。現像処理 は、現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒 の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
この版を用いて、サーマルネガタイプの平版印刷版と同様に版ズレ評価をおこなった。その結果、実施例1−1〜1−18では版ズレが発生していなかったが、比較例1−1では版ズレの発生が認められた。
Figure 2010023402

Claims (3)

  1. アルミニウム合金板の表面を粗面化処理して得られた平版印刷版用のアルミニウム支持体であって、粗面化処理後のアルミニウム支持体のJIS Z2241による引張試験(引張速度:2mm/分)における引っ張り強度が、170〜225MPaである、平版印刷版用アルミニウム支持体。
  2. 前記アルミニウム支持体の表面の算術的平均表面粗さRaが0.35〜0.65μmである、請求項1に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体。
  3. 請求項1または2に記載のアルミニウム支持体上に画像記録層を設けてなる感光性平版印刷版原版。
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