JP2010077407A - 熱伝導性樹脂組成物、その製造方法及び熱伝導性樹脂成形体 - Google Patents

熱伝導性樹脂組成物、その製造方法及び熱伝導性樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】混練や成形等の製造過程における炭素繊維の破損や切断を抑制し、連続的な量産が可能で工業的製造を行うことができ、炭素繊維特有の優れた熱伝導性を有する熱伝導性樹脂組成物やその製造方法を提供し、これを用いた熱伝導性に優れた熱伝導性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】母材の樹脂成分(A)と、これに非相溶な有機化合物(E)と、炭素繊維(B)とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、炭素繊維(B)が、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440nm未満である。
【選択図】なし

Description

本発明は、製造工程における混練や成形において破損や切断が抑制される炭素繊維を含み、炭素繊維特有の優れた熱伝導性を有する熱導電性樹脂組成物やその製造方法、及びこれを用いた熱伝導性樹脂成形体に関する。
熱可塑性樹脂は、優れた成形加工性、低コスト性、耐食性等を有することから、電子部品、機械部品、自動車用部品、事務用品、家庭用の食器や電化製品の内・外装材等、様々な産業分野で重要な材料として利用されている。特に、電子機器用途では、各種のデバイスから発生する熱を効率よく放熱させるための熱伝導性が要求されるが、熱可塑性樹脂は一般的に熱伝導性が充分ではない。このような熱伝導性の乏しい樹脂材料は、電子機器等の部品や筐体材料にこれらを適用した場合、放熱を妨げ、これらの機器や素子における故障や破壊を誘発することになる。
樹脂の熱伝導性を向上する方法として、熱伝導性フィラーを添加する方法が一般に知られている。例えば、アルミナ、窒化ホウ素、カーボン等の熱伝導率の高い無機フィラーが広く用いられており、とりわけ、炭素繊維は、他のフィラーに比べて軽量であることに加え、環境へ及ぼす影響がほとんどないことから、実用性に優れた材料として注目されている。
例えば、特許文献1に開示された方法によれば、高分子材料としてのポリアセタール樹脂に、黒鉛層間の平均層面間隔(d002)が0.3360未満の高結晶性かつホウ素を含有する黒鉛化炭素繊維を70重量部及び酸化アルミニウム粉末30重量部を二軸押出機で混練し、射出成形した熱伝導性成形体にて、2.3W/m・Kの熱伝導率を得ている。特許文献2には、全面的又は部分的に弾性材料で被覆された炭素長繊維を合成樹脂に含浸した炭素長繊維強化合成樹脂製品成形用ペレットが開示されており、弾性材料被覆の作用により、射出成形や射出圧縮成形等における成形時の強化用炭素長繊維の切断を抑制できることが記されている。更に、特許文献3には、直径が50〜200nmの微細な気相法炭素繊維(VGCF)を熱可塑性樹脂にVGCFの破断を極力押さえて混練することにより、70重量%の配合比で最大7.5W/m・Kの熱伝導率が得られることが報告されている。
また、特許文献4には、炭素繊維を選択的に分散させることで樹脂組成物を高熱伝導化する方法が開示されている。具体的には、2種以上の樹脂混合物において、1種の樹脂相に直径1μm以下の炭素繊維を選択的に分散させることで、10重量%の配合比で最大0.73W/m・Kの熱伝導率を得ている。このような異種の樹脂同士の混合物中において、特定の樹脂相にフィラーを偏在させ、局所的な特性領域を持たせる方法は、ダブルパーコレーションとも呼ばれ、特許文献5、非特許文献1に導電性樹脂の製造方法として記されている。
しかしながら、上記特許文献1〜4に開示された方法には、いくつかの問題がある。
特許文献1に開示された熱伝導性成形体は、高結晶性かつ、高熱伝導性を有する炭素繊維を高配合比で添加しても、高い熱伝導率が得られない傾向にある。例えば、樹脂100重量部に対し、炭素繊維を160重量部と高配合しても、せいぜい3.2W/m・K程度の熱伝導率しか得られておらず、この値はセラミックスや金属材料に比べると1桁〜2桁も低い。
特許文献2に記載される樹脂ペレットは、確かにペレット長の炭素繊維を含有するが、炭素繊維を弾性材料で被覆するための特殊なペレット製造装置や、長繊維の炭素繊維(ロービング)を使用する必要があり、実用性に欠ける。特許文献3に記載される熱伝導性樹脂は、気相法炭素繊維(VGCF)を破損させないために、加圧ニーダーのような高せん断力をかけずに、長時間に亘って炭素繊維を分散させる特殊な混練機を使用する必要があることから、生産性に問題が生じる。さらにVGCFは、ピッチ系炭素繊維に比べて優れた熱伝導率を有することが知られているが、気相法で得られる微細な炭素繊維を樹脂に高配合比で添加した場合、その強い凝集力により溶融粘度が著しく増加し、成形加工性が低下するという問題がある。
一方、特許文献4に記載される熱伝導性樹脂組成物においては、局所的に特性の異なる領域が形成されることにより、機械的強度が低下する傾向がある。具体的には、炭素繊維が偏在する樹脂相と母材の樹脂成分相とでは、それぞれの力学的特性が大きく異なるため、界面破壊が生じやすくなり、実用材料として重大な欠点を含むことになる。更に、熱伝導率についても、一般的な配合方法に比べれば向上しているものの、いずれも1W/m・K未満の値でしかなく、熱伝導性材料としての実用的な要求レベルには至っていない。
以上のように、炭素繊維長を保持しながら、炭素繊維を樹脂中に効率よく均一に分散させた樹脂組成物を効率よく製造することは、困難である。炭素繊維が有する優れた熱伝導性や導電性等の機能を樹脂材料に付与するために、その繊維の破損及び短尺化を抑制して、樹脂組成物中にネットワークを形成することができる繊維長を有する炭素繊維を含む熱伝導性樹脂組成物とその製造方法、及びこれを用いた熱伝導性樹脂成形体が求められている。
特開2002−97371号公報 特開平6−270142号公報 特開2005−325345号公報 特開2005−54094号公報 第2603511号
東工大テクノロジー,Vol.3,2000年3月,pp.7
本発明の課題は、混練や成形等の製造過程における炭素繊維の破損や切断を抑制し、連続的な量産が可能で工業的製造を行うことができ、炭素繊維特有の優れた熱伝導性を有する熱伝導樹脂組成物やその製造方法を提供し、これを用いた熱伝導性に優れた熱伝導性樹脂成形体を提供することにある。
本発明者らは、炭素繊維を含む熱伝導性樹脂組成物の製造において、その製造工程で生じる炭素繊維の破損や切断が前記組成物の熱伝導性に強く影響することに着目し、炭素繊維の破損と切断を防止できる方法を検討した。その結果、特定の結晶子サイズを有し、また、特定の結晶面間隔を有する特定構造を有する炭素繊維を、特定の有機化合物と同時に用いることにより、当該熱伝導性樹脂組成物の製造工程、すなわち樹脂と炭素繊維を含む組成物の混練や成形工程において炭素繊維の破損や切断を防止でき、当該組成物の熱伝導性を著しく向上できることを見出した。
本発明者らが見出した特定構造の炭素繊維は、その構造の大部分が欠陥の少ない結晶性のグラファイト構造で構成されているため、結晶格子の格子振動に基づく高い熱伝導率を備えている。このような高い熱伝導率を有する炭素繊維は、少ない添加量で樹脂に優れた熱伝導性を付与できる。また、本発明の特定構造の炭素繊維は、その構造の一部に、結晶性の低い領域を同時に有しているため、適度な柔軟性を備えている。このような適度な柔軟性を備えた炭素繊維は、樹脂との混練や成形工程において破損や切断を有効に防止できる。
また、本発明の特定の有機化合物は、母材樹脂に対して適度な非相溶性を有し、かつ炭素繊維に対して良好な親和性を有している。このような有機化合物は、母材樹脂中に微分散しつつ、炭素繊維との相互作用により、炭素繊維を分散させると同時に炭素繊維同士を部分的に結合させる働きがある。すなわち、炭素繊維同士が樹脂中で部分的に結合した網目構造、すなわち、熱伝導のネットワーク構造が形成されるため、当該組成物の熱伝導性を著しく向上できる。さらに、上記有機化合物の添加によって、母材樹脂の溶融粘度が低下するため、混練や成形工程で炭素繊維が受けるせん断力が低下し、炭素繊維の破損や切断を一層抑制できるようになる。
すなわち、本発明の高熱伝導化のメカニズムは、炭素繊維が高い熱伝導性と適度な柔軟性を同時に有することにより、樹脂との混練や成形工程での破損や切断が抑えられ、炭素繊維本来の優れた高熱伝導性を樹脂に付与できると同時に、適切な結合剤の存在により、熱伝導性樹脂組成物中での炭素繊維の網目構造、すなわち、熱伝導のネットワーク構造が形成されるため、より少ない炭素繊維の添加量で高熱伝導化できるものと考えられる。
即ち、本発明は、母材の樹脂成分(A)と、これに非相溶な有機化合物(E)と、炭素繊維(B)とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、炭素繊維(B)が、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440nm未満である熱伝導性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、上記熱伝導性樹脂組成物の製造方法であって、溶融した樹脂成分(A)及び有機化合物(E)に炭素繊維(B)を供給し、混合することを特徴とする熱伝導性樹脂組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、上記熱伝導性樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする熱伝導性樹脂成形体に関する。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、混練や成形等の製造過程における炭素繊維の破損や切断が抑制され、これを用いて炭素繊維特有の優れた熱伝導性、電磁波シールド性、導電性を有する成形体を得ることができる。また、本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法は、連続的な工業製造が可能であり、効率よく熱伝導性樹脂組成物の製造を行うことができる。
本発明の熱伝導性樹脂成形体の一例の熱伝導性をステンレスとの比較において示すサーモグラフィーを示す図である。 実施例1について光学顕微鏡により得られた画像を示す図である。 実施例4について光学顕微鏡により得られた画像を示す図である。 比較例1について光学顕微鏡により得られた画像を示す図である。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、母材の樹脂成分(A)と、これに非相溶な有機化合物(E)と、炭素繊維(B)とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、炭素繊維(B)が、炭素繊維(B)が、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440nm未満であることを特徴とする。
本発明の熱伝導性樹脂組成物に用いられる母材の樹脂成分(A)は熱伝導性樹脂組成物の母材となるものであり、成形分野で使用される熱可塑性樹脂であれば、いずれも適用することができる。かかる樹脂成分(A)としては、例えば、ABS等のポリスチレン系樹脂や、ポリエステル系樹脂を好ましいものとして挙げることができ、これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ポリスチレン系樹脂は、電気製品等に幅広く用いられ、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、加工性等の実用特性に優れているばかりでなく、種々のフィラーや他の樹脂との配合や成形加工が容易に行える等の利点を有する。
また、上記ポリエステル系樹脂としては、合成ポリエステルであってもよいが、生分解性のポリエステル系樹脂が環境破壊を抑制することができる点から好ましい。生分解性のポリエステル系樹脂としては、バイオマス由来の樹脂やその誘導体を挙げることができる。バイオマス由来の樹脂とは、バイオマスを原料として作られる樹脂を主成分に含む樹脂のことをいい、その誘導体とは、分子構造の一部が、他の化合物や官能基により置換され、あるいは変性されたものをいう。バイオマス由来の樹脂は、石油系樹脂に比べて、生体親和性に優れており、人体や生物に直接接触するような機器あるいは部品材料等に特に好ましい。また、省資源対策、CO2排出低減といったような材料自体に内在する環境負荷を大幅に削減できる効果がある。このようなバイオマス由来系樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、酢酸セルロース、澱粉樹脂等を挙げることができ、その誘導体としては、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等との共重合体を挙げることができる。
これらのうち、特に、ポリ乳酸(PLA)やその誘導体を好ましいものとして挙げることができる。ポリ乳酸誘導体としては、ポリエチレングリコール変性PLA、アクリル酸エステル変性PLA等を挙げることができる。また、ポリ乳酸アロイとしてはPCL、PBS、ポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル等とのアロイを挙げることができる。上記ポリエステル系樹脂はこれらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、更に、他の熱可塑性樹脂と任意に組み合わせて用いることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物に用いられる炭素繊維(B)は、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440nm未満であり、より好ましくは、0.3390nm以上0.3440nm未満である。
X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)とは、炭素の六員環縮合構造を有する網目状の炭素層が積層されたベンゼノイド構造における炭素層面間の距離であり、炭素層面が真平面のグラファイトの場合は、0.3354nmである。
炭素繊維(B)の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上であれば、炭素繊維の過剰な結晶化による剛直化を防止できるので、樹脂との混練や成形工程での炭素繊維の破損や切断を抑制できる。また、平均層面間隔(d002)が0.3440nm未満であれば、高結晶性のグラファイト構造を形成する上で層間距離は十分に小さく、熱の伝導が良好になるため、樹脂組成物に高い熱伝導性を付与することができる。さらに、0.3367nm以上0.3440nm未満の平均層面間隔(d002)を有する炭素繊維は、その結晶化(黒鉛化)のための処理温度を比較的低温の2500℃以下にできるので、製造エネルギーやコストを低く抑えることができる。
また、炭素繊維(B)の平均層面間隔(d002)は以下のように求めた値を採用することができる。炭素繊維を粉末にし、アルミニウム製試料セルに充填し、グラファイトモノクロメ−タ−により単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得る。(002)回折線のピ−ク位置は、重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピ−ク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線(28.466°)を用いて補正し、Braggの公式 d002=λ/2・sinθ よりd002を算出する。ここでCuKα線の波長λは、0.15418nmとする。
上記炭素繊維(B)は、C軸方向の結晶子サイズLcが10nm以上35nm以下であり、好ましくは、10nm以上20nm以下である。
結晶子とは、一つの固体粒子を構成する単結晶とみなせる単位であり、即ち、固体を構成する一つの粒子は複数の結晶子が一体化されて構成されており、結晶子のサイズが大きくなる程、結晶格子数が増加し結晶性が高くなる。また、C軸方向とは、ベンゼノイド構造における炭素層面に垂直方向をいう。
炭素繊維のC軸方向の結晶子サイズLcが10nm以上であれば、結晶格子の格子振動による高熱伝導性を得るのに十分なサイズとなり、当該樹脂組成物に高い熱伝導性を付与することができる。また、結晶子サイズLcが35nm以下であれば、炭素繊維の過剰な結晶化による剛直化を防止できるので、樹脂との混練や成形工程での炭素繊維の破損や切断を抑制できる。さらに、10nm以上35nm以下の結晶子サイズLcを有する炭素繊維は、その結晶化(黒鉛化)のための処理温度を比較的低温の2500℃以下にできるので、製造エネルギーやコストを低く抑えることができる。
ここで、炭素繊維(B)のC軸方向の結晶子サイズLc(nm)は、広角X線回折法によって求めた値を採用することができる。具体的には、炭素繊維を長さ4cmに切り出し、それを金型とコロジオンのアルコール溶液とを用いて角柱形に固め、試料とする。X線源としてはCuKα(Niフィルタ)を用い、出力は40kV、20mAとする。そして、透過法により得られた面指数(002)のピークの半値幅から、シェルラー(Scherrer)の式、Lc(hkl)=K・λ/β0・cosθBを用いて、結晶サイズを算出する。ここで、Lc(hkl)は(hkl)面に垂直な方向の結晶の平均サイズであり、Kは1.0、λはX線の波長であり、β0は(βE2−β121/2であり、θBはブラッグ角であり、βEは見かけの半値幅(測定値)であり、β1は1.05×10-2radである。
上記のように本発明の熱伝導性樹脂組成物に用いられる炭素繊維(B)は、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440nm未満であり、C軸方向の結晶子サイズLcが10nm以上35nm以下であることが好ましいが、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が上記範囲外のものでもC軸方向の結晶子サイズLcが10nm以上35nm以下であれば、樹脂組成物に好ましい熱伝導性を付与することができ、また、樹脂との混練や成形工程での炭素繊維の破損や切断を抑制し、熱伝導性、電磁波シールド性、導電性に優れる成形体が得られる熱伝導性樹脂組成物を与えることができる。
上記炭素繊維(B)の平均繊維長は、面配向、即ち、2次元的なネットワーク構造を形成できる長さが好ましく、0.1mm以上50mm以下のものが好ましい。このような平均繊維長を有する炭素繊維(B)は、有機化合物(E)の存在下において、低配合比においても、ネットワーク構造を非常に容易に形成し、炭素繊維(B)同士極めて接近した状態、若しくは直接接触した状態を形成し、熱エネルギーの伝搬ロスを著しく低減し、効率よく熱伝導を行わせる。一方、炭素繊維(B)の平均繊維長が50mm以下であれば、炭素繊維(B)同士の絡み合いによって、樹脂との混合や成形が困難になるのを抑制し、射出成形の際にノズル詰まりを抑制することができる。また、成形時に、樹脂の流動方向や面方向に配向し易いため、得られる成形体において従来と比較して熱伝導化と異方的な熱伝導性の両方を著しく向上させることができる。これは、成形体において炭素繊維(B)同士が、接触あるいは極めて接近した状態を維持して配向し、ネットワーク構造が形成されることにより、炭素繊維(B)間の接触面積、あるいはその熱伝導にかかわる炭素繊維(B)の実効面積が増加して熱抵抗が大幅に低下するためである。
炭素繊維(B)の平均繊維長は、顕微鏡法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法等の測定方法により求めた値を採用することができる。
上記炭素繊維(B)として、平均直径が1μm以上50μm以下のものを用いることが好ましい。炭素繊維(B)の平均径が1μm以上であれば、凝集する傾向が少なく、樹脂との混合において容易に分散させることができる。一方、平均径が50μm以下であれば、樹脂中に均一に分散させることができ、成形体の表面に炭素繊維(B)の凝集体が露出することによる外観不良の発生を抑制することができる。このような炭素繊維(B)の平均径は顕微鏡法により求めることができる。
上記炭素繊維(B)は、アスペクト比が2以上50000以下であることが好ましく、より好ましくは、10以上50000以下である。アスペクト比は、炭素繊維(B)の平均直径に対する繊維長の比である。
上記炭素繊維(B)は、熱伝導率が70W/m・K以600W/m・K以上であることが好ましい。炭素繊維(B)の熱伝導率が上記範囲にあれば、樹脂成分との混練の際の破損を抑制できる柔軟性を有し、かつそれ自体が十分な熱伝導性を有するため、高熱伝導性を有する樹脂組成物が得られる。炭素繊維(B)が上記範囲の熱伝導率を有することにより、繊維軸方向に特に優れた熱伝導性を有し、射出成形等で樹脂の流動方向に配向し、得られる成形体において異方的な熱伝導性を備えたものとなり、熱伝導の方向や移動量の制御が可能となる。
熱伝導率はレーザーフラッシュ法、平板熱流計法、温度波熱分析法(TWA法)、温度傾斜法(平板比較法)等の測定方法による測定値を採用することができる。
上記炭素繊維(B)としては、ピッチ系、PAN系、アーク放電法 、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成されたものを用いることができる。これらのうちピッチ系、更に黒鉛化処理を行って得られる炭素繊維は、結晶性に優れ、繊維軸方向の熱伝導性に優れており、好ましい。特にメソフェーズ(異方性)ピッチ系及び気相で作製されたカーボン(ナノ)チューブ、カーボン(ナノ)ホーン、炭素繊維等は、繊維軸方向に対して異方的なグラファイト構造を持つため、金属以上の熱伝導率を有しており、等方的なグラファイト構造を有する炭素繊維に比べ、母材の熱可塑性樹脂(A)に対してより高い熱伝導性を付与することができる。
次に、上記炭素繊維(B)の製造方法について記述する。炭素繊維の原料としては、黒鉛化が容易な任意の炭化水素化合物を使用することができる。例えば、ナフタレン、フェナントレンなどの縮合多環炭化水素化合物や石油、石炭系ピッチなどの縮合複素環化合物などを挙げることができる。特に、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、好ましくは光学的異方性ピッチ、すなわちメソフェーズピッチを用いることによって、高い熱伝導性の高分子組成物及び熱伝導性成形体が得られる。このメソフェーズピッチとしては、紡糸可能ならば特に限定されるものでないが、メソフェーズ含有量100%のものが、高熱伝導化と、紡糸性、品質の安定性の面からも好ましい。上記の原料を、紡糸方法(メルトスピニング法、メルトブロー法、遠心紡糸法、渦流紡糸法等)により紡糸してピッチ系炭素繊維を得る。次いで、例えば、二酸化窒素や酸素などの酸化性ガス雰囲気中で200〜400℃の比較的低温で熱処理する方法や、硝酸やクロム酸などの酸化性水溶液中で処理する方法、さらには光やγ線などにより重合処理する方法などを用いて不融化繊維とする。さらに該不融化繊維を黒鉛化触媒を添加して黒鉛化処理を行う。黒鉛化触媒としては、炭化ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素などのホウ素化合物及びホウ素単体から選ばれる少なくとも一種が使用される。黒鉛化触媒の添加量は、炭素繊維に対して、ホウ素含有量として0.1〜10質量%が好ましい。ホウ素含有量が上記範囲であれば触媒効果を十分発揮し、かつホウ素化合物の残留も少ないため好ましい。また、黒鉛化処理温度は1500℃以上2500℃以下が好ましい。黒鉛化処理温度が1500℃以上であれば、上記結晶子サイズLc、上記平均層面間隔を有する炭素繊維を実用的な処理時間で作製可能である。また、2500℃以下であれば、加熱に投入する余剰のエネルギーを抑えることができ、製造コストを低く抑えることができる。
原料炭素繊維は、そのままで用いてもよいが、必要に応じて、サイジング剤処理して用いてもよい。
上記炭素繊維(B)は、必要に応じて、その一部又は全部を表面処理して用いることができる。表面処理としては、具体的には、酸化処理や窒化処理、ニトロ化、スルホン化、あるいはこれらの処理によって表面に導入された官能基若しくは炭素繊維(B)の表面に、金属、金属化合物、有機化合物等を付着あるいは結合させる処理を挙げることができる。上記官能基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基等の酸素含有基や窒素含有基が挙げられる。このような官能基や化合物が表面の一部に導入された炭素繊維(B)において、ポリエステル樹脂等の母材熱可塑性樹脂(A)との化学的な相互作用が強化されるため、得られる成形体において機械的強度が向上する。
また、炭素繊維(B)の表面処理としては、有機化合物(E)と相互作用を有する官能基又は化合物を表面に結合若しくは付着させる処理を挙げることができる。このような表面処理を行った炭素繊維(B)は、有機化合物(E)との結合が強化され、成形体において熱伝導性を一層向上させることができる。具体的には、各種カルボン酸等による表面処理を挙げることができる。
更に、表面処理として炭素繊維(B)表面の疎水化処理を挙げることができる。疎水化処理としては、例えば、不活性ガス雰囲気中で熱処理を行う方法やフッ素化処理等を挙げることができる。このような疎水化処理された炭素繊維(B)は、極性の低い樹脂とより強い相互作用を示すようになる。
上記炭素繊維(B)は、熱伝導性樹脂組成物の総質量に対して1質量%以上40質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。含有量が1質量%以上であれば、充分な熱伝導性を得ることができる。一方、40質量%以下であれば、特に低密度の炭素繊維(B)を含有する熱伝導性樹脂組成物においても、体積分率の増加を抑制し、炭素繊維同士の絡み合いによる組成物の溶融粘度の上昇を抑制することができ、優れた成形加工性を有するものとなる。
また、本発明の熱伝導樹脂組成物には、上記炭素繊維(B)の平均繊維長より短い繊維長を有する炭素繊維(C)や炭素化合物(D)を含有させてもよい。繊維長の短い炭素繊維(C)としては、結晶性の高い炭素繊維等の集合体を好ましいものとして例示することができる。炭素繊維(C)の平均繊維長としては、5nm以上100μm未満を挙げることができる。
また、炭素化合物(D)としては、黒鉛や膨張化黒鉛、薄片化黒鉛等を好ましいものとして挙げることができる。炭素化合物(D)の平均粒子径としては、1μm以上300μm以下が、樹脂成分(A)との混合が容易であることから好ましい。
このような炭素繊維(C)や炭素化合物(D)を併用することにより、得られる成形体において帯電防止性や電磁波遮蔽性をより一層向上させることができる。これは、配向する長繊維長の炭素繊維(B)に対して、ランダムな状態で存在する短繊維長の炭素繊維(C)や炭素化合物(D)を含むことにより、樹脂の導電性を向上させ、得られる成形体の熱伝導性等を高度に制御することが可能になる。
このような短繊維長の炭素繊維(C)や炭素化合物(D)の含有量としては、熱伝導性樹脂組成物の総質量に対して0.5質量%以上20質量%以下とすることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物に用いる有機化合物(E)は、上記母材の樹脂成分(A)に対して非相溶であり、母材の熱可塑性樹脂(A)中において粒子状の分散相を形成するものである。ここで非相溶とは、母材の樹脂成分(A)に対して0.1μm以上のサイズで分散相を形成し、可視光域において光学的な非相溶性を呈するものをいう。なお、異種の樹脂同士又は樹脂と有機化合物との混合においては、熱力学的に完全相溶すること(分子レベルで一相になること)は極めてまれであり、部分相溶して均一に見える場合であっても、サブミクロン以下のミクロ的視野においては分散状態で存在しているのが一般的である。したがって、「非相溶性」あるいは「完全相溶でない」ということは、異種樹脂又は樹脂と有機化合物の混合系を包括することになる。本発明に用いる有機化合物(E)における非相溶は、部分相溶の状態も含め、上記のようにマクロ的視野における非相溶状態を示す。
上記有機化合物(E)が、樹脂成分(A)中において、平均粒子径としては、0.1μm以上500μm以下の範囲で分散していることが好ましい。有機化合物(E)の平均粒子径が0.1μm以上であれば、可視光域での光学的な非相溶性が認められ、非相溶性に基づき、後述する炭素繊維(B)とのネットワーク構造を形成し、熱伝導性の向上を図ることができる。一方、平均粒子径が500μm以下であれば、樹脂成分(A)中での凝集を抑制することができ、マクロ相分離による界面破壊等を抑制することができる。
ここで平均粒子径は顕微鏡法による測定値とすることができる。
また、このような平均粒子径を有する上記有機化合物(E)は、炭素繊維(B)との相互作用により、2つ以上の炭素繊維(B)がその表面又は内部に配位した接合体を形成する。この接合体の形態としては、炭素繊維(B)が有機化合物(E)粒子中若しくは粒子を貫通した状態、又は表面に接触した状態のいずれであってもよい。この接合体が母材樹脂中に分散することにより、有機化合物(E)の粒子が複数の炭素繊維(B)を集結させるバインダーとなって、母材の樹脂成分(A)中にネットワーク構造を形成することができる。有機化合物(E)の平均粒子径が、炭素繊維(B)の平均繊維長の1/2以下であると、粒子状有機化合物(E)への炭素繊維(B)の凝集を抑制し、炭素繊維(B)の粒子状有機化合物(E)への2次元的な配位を促進させることができる。このため、母材樹脂成分(A)中に分散した炭素繊維(B)と有機化合物(E)によるネットワーク構造が容易に形成され、炭素繊維(B)の配合量が少量であっても、充分に高い熱伝導性が得られる。有機化合物(E)への炭素繊維(B)の配位を形成する接合形態としては、水素結合や配位結合等の化学結合に加え、物理吸着、静電吸着、疎水性相互作用、磁性吸着、幾何学的要因による接合等のいずれであってもよい。
上記有機化合物(E)は、溶融粘度が樹脂成分(A)よりも低く、且つ融点が樹脂成分(A)よりも低いことが好ましい。このような有機化合物(E)を用いることにより、樹脂成分(A)との溶融混合において、混合物の溶融粘度が低下し、流動性が向上し、固体の炭素繊維(B)を母材の樹脂成分(A)中に容易に均一に分散させることができる。有機化合物(E)の融点としては、具体的には、80〜200℃であることが好ましい。有機化合物(E)の融点が80℃以上であれば、電子機器等の発熱を伴う製品の部品や筐体に用いた場合においても、熱による軟化や、溶出を抑制することができる。一方、融点が200℃以下であれば、成形加工が高温になることにより熱分解し易いポリ乳酸等の生分解性ポリエステル樹脂を樹脂成分(A)に使用した場合においても分解、ガスの発生、変色等を抑制することができる。
上記有機化合物(E)は、極性あるいは溶解度パラメーター(以下、SP値と表記する)が母材の樹脂成分(A)と同等又はそれ以下であり、その差が熱可塑性樹脂(A)のSP値に対して30%以内の範囲にあることが好ましい。SP値が同値を有する有機化合物同士は、一般的には相溶となるが、分子量や立体構造等の影響により非相溶となる場合もある。ここで、有機化合物(E)が樹脂成分(A)のSP値と同等の場合は、その分子量や立体構造等のこれらの相溶性を阻害する因子を有し、樹脂成分(A)との非相溶性を有することが必要である。上記SP値の差が母材の樹脂成分(A)の値に対し30%以下であれば、有機化合物(E)の分子構造の一部に反応活性を有する官能基が含まれる場合であっても、樹脂成分(A)中でのマクロ相分離を抑制することができ、熱伝導性の低下を抑制することができる。
また、上記有機化合物(E)が母材の樹脂成分(A)より低い極性あるいはSP値を有することにより、化学的に不活性な疎水構造の表面を有する炭素繊維(B)が、樹脂成分(A)より極性やSP値が低い有機化合物(E)との強い疎水相互作用により、凝集することを抑制することができる。更に、上記範囲のSP値を有する有機化合物(E)は、樹脂成分(A)中で炭素繊維(B)を伴って微分散するため、炭素繊維(B)の分散性をより向上することができる。
ここで、SP値としては、定性的な見地から、汎用的に用いられる原子団寄与法(the group contribution method)を用いて理論的に算出した値を適用することができる。具体的には、式(1)を用いて算出することができる。算出に必要となる各物性値については、文献値(例えば、D.W.Van Krevelen and P.J.Hoftyzer,PROPERTY OF POLYMERS:THEIR ESTIMATION AND CORRELATION WITH CHEMICAL STRUCTURE,Elsevier,New York,1976に記載)、あるいは実験値の何れを用いてもよい。
δ = (ΣEcohi/ΣVmi)1/2 (1)
δ:溶解度パラメーター(SP値)
Ecohi:各原子団のモル凝集エネルギー
EVmi:各原子団のモル体積
上記有機化合物(E)としては、エステル化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物、アミド化合物、シリコーン化合物、水素添加油脂、合成ワックス、およびこれらの混合物から選ばれる融点が80℃〜200℃であり、分子量が2000以下の低分子化合物であることが好ましい。このような種類の有機化合物は、ポリエステル樹脂等の母材樹脂に対して、加水分解やエステル交換反応等による分子量低下の問題を生じ難く、溶融粘度も低いため、母材樹脂に容易に微分散するという利点がある。
これらのうち、分子構造の主鎖の炭素数が8〜44であり、分子量が200〜1500、より好ましくは300〜1000である脂肪族カルボン酸アミド、芳香族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等から選ばれる結晶性の有機化合物を好ましいものとして挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような特定の炭素数と分子量を持つ結晶性の有機化合物は、植物性油脂や動物性油脂等の天然油脂から合成できるものが多く、取り扱いが容易であることに加えて、安価で得られることが多い。しかも、母材の樹脂成分(A)が結晶性樹脂の場合には、結晶核剤として作用し、成形サイクルを大幅に短縮できる効果が得られる。上記脂肪族カルボン酸アミド、芳香族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルは分子中に1つあるいは2つ以上の極性基が導入されたものが好ましい。かかる極性基としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、グリシジル基等の酸素含有基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基等の窒素含有基、フッ素含有基等を挙げることができる。これらの極性基が部分的に導入された上記化合物において、炭素繊維(B)と相互作用を持ちつつ、母材の樹脂成分(A)に対しては水素結合等の物理化学的作用を持つため、母材の樹脂成分(A)と炭素繊維(B)の双方に対してそれぞれの相互作用を強化するバインダー的な効果が発現し、機械的強度が向上する。
上記の有機化合物(E)としては、具体的に、リシノール酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド及びこれらの分子中の一部に極性基が導入された化合物、また、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、エルカ酸エステル、N−オレイルパルミチン酸エステル、N−オレイルオレイン酸エステル、N−オレイルステアリン酸エステル、N−ステアリルオレイン酸エステル、N−ステアリルステアリン酸エステル、N−ステアリルエルカ酸エステル、メチレンビスステアリン酸エステル、エチレンビスラウリン酸エステル、エチレンビスカプリン酸エステル、エチレンビスオレイン酸エステル、エチレンビスステアリン酸エステル、エチレンビスエルカ酸エステル、エチレンビスイソステアリン酸エステル、ブチレンビスステアリン酸エステル、p−キシリレンビスステアリン酸エステル等のカルボン酸エステル及びこれらの分子中の一部に極性基が導入された化合物などを挙げることができる。
上記で挙げた有機化合物(E)のうち、特に、ひまし油から誘導されたカルボン酸アミド化合物が好ましい。具体的には、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキン酸アミド、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。これらは極めて優れた熱伝導性に加えて、バイオマス由来であることから環境適合性に優れ、安全性、生産性、コスト性、生体親和性を有し、更に、ポリエステル樹脂に対して分散制御性に優れ、結晶核剤として作用し、炭素繊維(B)とネットワーク構造を形成することができる。
上記有機化合物(E)の熱伝導性樹脂組成物中の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上15質量%以下である。有機化合物(E)の含有量が0.5質量%以上であれば、組成物の溶融粘度を充分に低くすることができ、炭素繊維(B)を充分に分散させることができる。一方、有機化合物(E)の含有量が20質量%以下であれば、微分散した有機化合物(E)の再凝集を抑制し、マクロ相分離による機械的強度の低下を抑制することができ、得られる成形体において凝集した有機化合物(E)が表面に露出することを抑制し、外観不良や塗装不良の発生を抑制することができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、補強剤、難燃剤、発泡剤、劣化防止剤、結晶核剤、着色剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、耐光剤、加工安定剤、抗菌剤、防かび剤、可塑剤等を挙げることができる。補強剤としては、具体的には、マイカやタルク等の充填剤、アラミドやポリアリレート等の有機繊維やガラス繊維、さらにケナフのような植物繊維を使用することができる。また、難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、メラミンやイソシアヌル酸化合物等の窒素系難燃剤、リン酸化合物等のリン系難燃剤等を挙げることができる。また、種々の無機系あるいは有機系結晶核剤、酸化チタン等の着色剤、ラジカルトラップ剤、酸化防止剤、加水分解抑制剤等の安定剤、銀イオン等の抗菌剤を、適宜、配合することができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物を製造する方法としては、上記各種成分を混合する方法によることができる。かかる混合方法としては、公知の混合機、例えばタンブラーミキサー、リボンブレンダー、単軸や多軸混合押出機、ロール等を用いることができる。特に、溶融させた樹脂成分(A)及びこれに非相溶な有機化合物(E)に、炭素繊維(B)をサイドフィード等から供給し、混合する方法であれば、より炭素繊維(B)の破断や粉砕を抑制し、炭素繊維(B)本来の繊維軸方向の高い熱伝導性が反映された樹脂組成物を得ることができるため好ましい。また、樹脂成分(A)に複数の添加物を加える場合等は、炭素繊維(B)以外の添加物を予め加えて混合しておき、その後にサイドフィードを用いて炭素繊維(B)を添加する等、炭素繊維(B)の混合時間の短縮を図り、これらの破断や粉砕を低減する方法も有効である。また、溶融混合時に充分な流動性を確保するため、混合機のシリンダ内のクリアランス調整や、スクリューや撹拌翼の回転数、溶融温度条件等の装置条件を適宜設定することが好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、上記熱伝導性樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする。熱伝導性樹脂成形体の成形方法としては、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形法等、熱可塑性樹脂の成形に用いられる方法を適用することができる。これらの溶融混合や成形時における温度は、母材となる樹脂成分(A)の融点以上で、かつそれぞれの成分が劣化しない範囲であることが好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂成形体には、熱伝導性樹脂成形体の上部あるいは下部に、熱伝導性の異なる樹脂からなる被膜を形成することができる。被膜としては、具体的には、フィラー濃度、添加量、配向方向等が異なる樹脂、配合成分の異なる樹脂、種類の異なる樹脂等を原料とし、積層あるいは薄膜に成形したものを挙げることができる。このような積層構造あるいは薄膜からなる被膜が形成された熱伝導性樹脂成形体は、熱伝導性の方向性を3次元的に制御することも可能である。特に、熱伝導性樹脂成形体の上部あるいは下部に設けた熱伝導性の低い樹脂被膜は、熱源から成形体表面に直接熱が伝わる状態を回避でき、電子機器の筐体等での低温火傷防止対策には、特に有効である。
また、本発明の熱伝導性樹脂成形体の表面に、熱放射作用に優れた材料あるいは塗料からなる積層構造あるいは被膜を設けることができる。このような被膜を有することにより放熱特性を向上させることができる。
また、本発明の熱伝導性樹脂成形体の表面に、熱容量の異なる材料からなる積層構造あるいは被膜を設けることができる。このような被膜を有することにより表面における温度変化を鈍くすることができるため、人体や生物に直接触れるような機器、あるいは熱の変化を嫌うような精密機器等において有効である。
以下に、本発明の熱伝導性樹脂組成物及びこれを用いた成形体を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
[熱伝導性樹脂組成物の作製及び射出成形体の作製]
樹脂成分(A)として市販のポリ乳酸(ユニチカ製:融点170℃、以下、PLA)85質量%と有機化合物(E)として、N.N’−エチレンビスオレイルアミド(伊藤製油(株)製 ITOHWAX J-500)5質量%とをドライブレンドした。得られた混合物を、シリンダー温度が190℃に設定された連続混練押出機(ベルストルフ製、ZE40A×40D、L/D=40、スクリュー径φ40)のホッパー口から供給し、更に、炭素繊維(B)として、繊維長6mmの異方性を有するピッチ系の炭素繊維(表1に示すB−2)10質量%をサイドフィード口から、1時間当たりの樹脂と炭素繊維の合計量が15〜20kg/hとなるように供給した。そして、スクリューを150rpmで回転させ、溶融剪断下において混合撹拌した後、押出機のダイス口からストランド状に押出し、それを水中で冷却した後、ペレット状に切断し、熱伝導性樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、100℃で5時間乾燥した後、20tの射出成形機(東芝機械製EC20P−0.4A)を用いて、シリンダー温度190℃、金型設定温度25℃の条件で成形し、試験片(125mmx13mmx1.6mm及び125mm×13mm×3.2mm)を得た。得られた1.6mm厚の試験片にて、熱伝導性評価と炭素繊維の顕微鏡観察を行い、3.2mm厚の試験片を用いて、曲げ強さ、曲げ弾性率、IZOD衝撃試験を行った。
[熱伝導性評価]
試験片を支持台に固定し、予め80℃に加熱したラバーヒーターで試験片の一部に定常熱を負荷した。ラバーヒーターとの接触部分から試験片全体に熱が拡散していく様子を赤外線サーモトレーサー(NEC三栄製、サーモスキャナTS5304)で測定し、図1に示すサーモグラフィー解析により、面内熱伝導性を評価した。試験片の熱伝導性aを、試験片と同形のステンレス板の熱伝導性bに対する比、a/bの値として、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
◎:a/bが0.9以上1.1以下
○:a/bが0.5以上0.9未満
△:a/bが0.3以上0.5未満
×:a/bが0.3未満。
[炭素繊維の評価]
得られた試験片の一部を切りとり、200℃ホットプレートにて融解しプレパラートを作成し、光学顕微鏡(KEYENCE製、VHX−500)により得られた画像を、図2に示す。光学顕微鏡にて200倍に拡大した画像を10視野撮影し、各50本の長さを測定、計500本の炭素繊維の長さの平均値を求め、以下の基準により評価した。なお、倍率が合わない場合は繊維長に応じて適宜調整した。上記熱伝導性樹脂組成物のペレットに対して、上記と同様にして炭素繊維について評価した。
◎:平均繊維長が500μm以上
○:平均繊維長が300μm以上500μm未満
△:平均繊維長が100μm以上300μm未満
×:平均繊維長が100μm未満。
[曲げ特性]
試験片を110℃で2時間処理して結晶化させ、室温に戻した後、JIS K7203に準拠して万能試験機(5567:インストロン社製)により、曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。結果を表2に示す。
[IZOD衝撃強度]
試験片を110℃で2時間処理して結晶化させ、室温に戻した後、JIS K7110に準拠して、IZOD衝撃強度を測定した。結果を表2に示す。
[実施例2〜4、9、10、比較例1、2、5]
炭素繊維(B−2)に替えて、表1に示す炭素繊維B−1、B−3〜B−9を用いた他は、実施例1と同様に、ペレットを作成し、試験片を成形し、熱導電性及び炭素繊維の評価を行った。実施例4については、実施例1と同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、IZOD衝撃強度を測定した。結果を表2に示す。実施例4、比較例1について、光学顕微鏡により得られた画像をそれぞれ、図3、図4に示す。
[実施例5〜8、11、12、比較例3、4、6]
PLAを75質量%、炭素繊維を20質量%用いた他は実施例1と同様に、ペレットを作成し、試験片を成形し、熱導電性及び炭素繊維の評価を行った。実施例5、6、8については、実施例1と同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、IZOD衝撃試験を測定した。結果を表3に示す。
[実施例13]
樹脂成分(A)として、PLAと、市販のポリカーボネート樹脂(住友ダウ製カリバー301−22)と、炭素繊維(B−5)とを表4に示す質量%を用い、連続混練押出機及び射出成形機のシリンダー温度を260℃に設定した他は、実施例1と同様にして、試験片を作成し、得られた試験片について、熱伝導性、炭素繊維について評価した。結果を表4に示す。
[実施例14]
樹脂成分(A)として、PLAと、市販のポリカーボネート樹脂(住友ダウ製カリバー301−22)と、炭素繊維(B−5)とを表4に示す質量%を用い、連続混練押出機及び射出成形機のシリンダー温度を270℃に設定した他は、実施例1と同様にして、試験片を作成し、得られた試験片について、熱伝導性、炭素繊維について評価した。結果を表4に示す。
結果から、光学顕微鏡により得られた画像により、実施例4において、炭素繊維(B−5)の平均繊維長が500μm以上に保持され、結晶性が高い炭素繊維(B−2)を用いた実施例1より、炭素繊維の破砕が抑制されていることがわかる。
平均層面間隔(d002)が0.3367nm未満の炭素繊維を使用した比較例1、3、5、6では炭素繊維の結晶性が高く、連続混練押出及び射出成形時に炭素繊維が平均繊維長100μm未満まで破壊し、炭素繊維同士のネットワーク構造が形成されにくくなり、面内熱伝導性が低く、熱抵抗が著しく増大したことが分かる。一方、平均層面間隔(d002)が0.3440nmの炭素繊維を使用した比較例2、4においては炭素繊維は平均繊維長が500μm以上と繊維の破損は抑制されているものの、炭素繊維の結晶性が低く、面内の高い熱伝導性が得られず、樹脂成分(A)の熱伝導性を向上させることができないことが分かる。
これに対し、平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440未満の炭素繊維を用いた実施例1から14においては、樹脂成分が異なっても熱伝導性に優れることが分かる。

Claims (24)

  1. 母材の樹脂成分(A)と、これに非相溶な有機化合物(E)と、炭素繊維(B)とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、炭素繊維(B)が、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3367nm以上0.3440nm未満であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
  2. 炭素繊維(B)のX線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が、0.3390nm以上0.3440nm未満であることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂組成物。
  3. 炭素繊維(B)のC軸方向の結晶子サイズLcが10nm以上35nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性樹脂組成物。
  4. 炭素繊維(B)のC軸方向の結晶子サイズLcが10nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項3記載の熱伝導性樹脂組成物。
  5. 炭素繊維(B)が、0.1mm以上50mm以下の平均繊維長を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  6. 炭素繊維(B)が、1μm以上50μm以下の平均直径を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  7. 炭素繊維(B)が、10以上50000以下のアスペクト比を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  8. 炭素繊維(B)が、総質量に対して1質量%以上40質量%以下で含有されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  9. 炭素繊維(B)が、ピッチ系炭素繊維であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  10. 有機化合物(E)が、0.1μm以上500μm以下の範囲の平均粒子径を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  11. 有機化合物(E)が、分子量が2000以下の低分子化合物であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  12. 有機化合物(E)が、エステル化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物およびアミド化合物から選ばれる1種又は2種以上を含み、80℃以上200℃以下の融点を有することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  13. 有機化合物(E)が、植物性油脂、動物性油脂、及びこれらから合成される物質から選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  14. 有機化合物(E)が、主鎖の炭素数が8以上44以下であり、分子量が300以上1000以下であり、極性基を有していてもよい脂肪族カルボン酸アミド、芳香族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸エステル及び芳香族カルボン酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  15. 極性基が、酸素含有基及び窒素含有基から選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項14記載の熱伝導樹脂組成物。
  16. 有機化合物(E)が、ひまし油から誘導されたカルボン酸アミド化合物を含むことを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の熱伝導樹脂組成物。
  17. 有機化合物(E)が、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキン酸アミド、又はこれらの誘導体を含むことを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の熱伝導樹脂組成物。
  18. 有機化合物(E)が、総質量に対して0.5質量%以上20質量%以下で含有されることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  19. 樹脂成分(A)が、ポリスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  20. 樹脂成分(A)が、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、酢酸セルロース、澱粉樹脂、これらの誘導体、及び、これらの石油系ポリエステル樹脂とのアロイから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  21. 樹脂成分(A)が、ポリ乳酸、ポリ乳酸誘導体及びポリ乳酸アロイの1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から20のいずれかに記載の熱伝導性樹組成物。
  22. 請求項1から21のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物の製造方法であって、溶融した樹脂成分(A)及び有機化合物(E)に炭素繊維(B)を供給し、混合することを特徴とする熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
  23. 請求項1から21のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
  24. 射出成形により成形されたことを特徴とする請求項23記載の熱伝導性樹脂成形体。
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